JP4356375B2 - 圧縮機 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、業務用及び家庭用の空気調和機等に使用される圧縮機に関するもので、特にその駆動軸の支持構造に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来例として、密閉型電動横置きスクロール圧縮機を例にとり、図面とともに説明する。
【０００３】
従来、主軸〜主軸受と副軸〜副軸受とによりクランク軸の支持機構を持つ、２軸受構造のスクロール圧縮機の副軸受は、主軸〜主軸受と副軸〜副軸受間の軸中心位置合わせ（以降、上下心出しと記載）を容易にし、使用時のクランク軸のたわみによる軸〜軸受面の片当たりを回避する為、ボール〜レース間のガタ（ラジアル内部隙間より発生する角隙間）を利用した、ボールベアリングを用いることが一般的であった（例えば特許文献１参照）。
【０００４】
図６は、前記特許文献１に記載された従来の副軸〜副軸受廻りの支持構造を示すスクロール圧縮機の断面図である。
【０００５】
図６に示すように、密閉容器１０１の内部には、圧縮機構部１０２と、電動機部１０３と、クランク軸１０６と、プレート１１６とが設置されている。電動機部１０３は、固定子１０４と、回転子１０５とから構成されており、この電動機部１０３で発生する回転力は、クランク軸１０６によって圧縮機構部１０２へ伝達される。圧縮機構部１０２は、主軸受ブッシュ１０８を設置した主軸受１０９と、固定スクロール１１０と、旋回スクロール１１３と、オルダムリング１１５とから構成されている。前記回転力がこの圧縮機構部１０２へ伝達されると、これらの部品によって圧縮作用が発生する。その結果、密閉容器１０１に設けられた吸い込み管１１１から低圧冷媒が吸い込まれ、圧縮機構部１０２で圧縮された後、吐き出し管１１２から高圧冷媒として吐き出される。なお、スクロール圧縮機の圧縮原理については、すでに公知であるので、ここでは省略する。
【０００６】
クランク軸１０６は、圧縮機構部１０２に設置された主軸受１０９と、密閉容器１０１に固定されたプレート１１６に設けられた副軸受１１４とによって、回転自在に支承されている。副軸受１１４としては、一般的にボールベアリングが用いられており、図６に示した例では、密閉容器１０１に溶接固定されたプレート１１６の凹部１１８に圧入固定されている。
【０００７】
また、クランク軸１０６には、回転子１０５が焼き嵌め固定されており、その磁気中心位置は、密閉容器１０１に焼き嵌め固定された固定子１０４の磁気中心位置よりも主軸受１０９側としている。これにより、固定子１０４に対して、回転子１０５に磁気吸引力が作用し、クランク軸１０６に副軸受１１４方向へのスラスト荷重（以下、この力を予圧という。）が作用することで、実運転時の副軸受（ボールベアリング）１１４から発生する騒音を低減すると共に、クランク軸１０６のスラスト方向振動を抑制することが出来る。
【０００８】
ここで、副軸受１１４は、圧縮機の実運転時にはクランク軸１０６の回転によるラジアル荷重と予圧によるスラスト荷重を同時に支承することとなる。
【０００９】
一方、プレート１１６には、ポンプ装置１１７が設置されており、クランク軸１０６が回転することにより、密閉容器１０１内部に溜められた潤滑油１０７を汲み上げ、クランク軸１０６の中心に設けた給油穴を通って、圧縮機構部１０２の各部を潤滑する。
【００１０】
【特許文献１】
特開平９−１５８８７２号公報（第２頁、図６）
【００１１】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の構成のように、スクロール圧縮機の副軸受としてボールベアリングを用いた場合、ボールとレースは基本的に点接触である為、ボール〜レース間の面圧が大きい。この為、疲労による異常摩耗や凝着（焼き付き）が発生し易く、騒音異常や入力増大等の圧縮機品質不良の要因とも成り得る。特にスクロール圧縮機のような密閉容器内で一般的に有限寿命とされるボールベアリングを軸受に用いる場合、前述のような異常摩耗や凝着（焼き付き）が発生してしまった時には、取り替えが困難であり、かつ冷媒・潤滑油混合状態中で使用する過酷な使用状況でもある為、長期間の信頼性に欠ける点が多い。
【００１２】
更に、高能力化等の為、スクロール圧縮機の容積が増大した場合、副軸受へのラジアル荷重も増大し、同一のボールベアリングを用いた場合は著しく信頼性が劣る傾向となる。これを解決する手段として、点接触による負荷を緩和する為に、ボールベアリングのボール径を拡大、或いはボールベアリング全体のサイズを拡大する等の方法が考えられるが、この場合、大幅な仕様変更が必要となり、コスト高ともなる為、量産性に欠ける。
【００１３】
その一方で、近年増加しているインバータ駆動のように、１０Ｈｚ近辺の低周波数域から１００Ｈｚを越える高周波数域まで広範囲に使用されるようになって来ている。特にスクロール圧縮機の場合は、圧縮機構部がクランク軸端部に有るため、クランク軸の回転運動時に圧縮反力による副軸〜副軸受部を支点とするみそ擂り運動（図４参照）となり易く、また、インバータ駆動による運転周波数の変化時等には、なお不安定な回転運動となるため、前述のように使用時に生じるロータの遠心力による荷重変化で発生するクランク軸自体のたわみ（図５参照）と合わさり、副軸受ラジアル軸受面に更に片当たりが生じ易くなる。この為、前述のように問題点は有るものの、副軸受としてボールベアリングが用いられることが多かった。
【００１４】
本発明はこれらのような複数の課題を全て解決するものであり、遠心力によるクランク軸のたわみにより生じるクランク軸の片当たりや、圧縮反力によるクランク軸のみそ擂り運動による片当たり等を回避し、副軸〜副軸受間への給油を容易に行い、更に信頼性・騒音・振動・組立性等にも優れた、安価な圧縮機のすべり副軸受支持構造を提供する事を目的とする。
【００１５】
【課題を解決する為の手段】
前記従来の課題を解決する為に、本発明による圧縮機の副軸受は、クランク軸よりかかるスラスト荷重とクランク軸の回転によるラジアル荷重とを受けるすべり軸受構造と給油機構の一部を同一部材として併せ持ち、密閉容器内には溶接等で固定されたプレートを介して、ボルト等により上下心出し後に支持固定され、前記給油機構より圧縮機構と副軸〜副軸受面間に潤滑油を分岐して同時に潤滑する給油経路を設けた副軸〜副軸受間のすべり軸受構造を備え、副軸受ラジアル軸受面の内径が両端に向かってそれぞれ順次微少拡大し、逃げ部を設けた形状となっている。
【００１６】
本構成によって、遠心力によるクランク軸のたわみにより生じるクランク軸の片当たりや、圧縮反力によるクランク軸のみそ擂り運動により生じる片当たり等を回避し、圧縮機構部と副軸〜副軸受面間への潤滑油の供給を容易に構成可能とし、信頼性・騒音・振動・組立性等に優れた、安価な副軸〜副軸受面間のすべり軸受構造、及びそれを備えた圧縮機を提供することが出来る。
【００１７】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【００１８】
（実施の形態１）
図１は、本発明の実施の形態１における密閉型電動縦置きスクロール圧縮機の断面図の一例で、図２は副軸〜副軸受部位の拡大図である。図１、図２また従来の図６と同じ構成要素については同じ符号を用い、従来の図６と同じ構成要素については説明を省略する。
【００１９】
図２において、副軸受２０２は密閉容器１０１に固定された穴付のプレート２０１に、上下心出し後ボルト２０３にて組み付け固定されている。副軸受２０２には給油機構１１７の主要部品である歯車２０７が組み付けられる穴が設けられている。この歯車２０７はクランク軸１０６の末端に設けたポンプ軸２０６と嵌合しており、クランク軸１０６の回転と共に回転し前記従来例のような給油機構（強制給油）を成すよう構成されている。本実施例の場合は、特にこの強制給油時に、副軸受２０２にポンプ軸２０６が貫通する為設けられたポンプ軸穴２０８とポンプ軸２０６との隙間２０９から潤滑油１０７を分岐させ、クランク軸１０６の副軸２０４に設けた油溝２０５により、副軸２０４と副軸受２０２間のスラスト面２１１とラジアル面２１０に潤滑油１０７の給油を行うことが可能となる構成となっており、これにより、スラスト荷重とラジアル荷重とを受けることが可能なすべり副軸受構造を構成している。
【００２０】
また、この副軸受２０２のラジアル面２１０は図４の様にクランク軸１０６が圧縮機構部１０２から受けた荷重分α°傾いたとき、また図５の様にクランク軸１０６の回転運動時に生じるたわみ分β°傾いたときを考慮した逃げ２１４を軸受面の両端に設けており、これにより副軸の片当たりを防止する。なお、図４および５は説明のため、クランク軸の撓み変形や傾きを実際よりも極端に大きく描いた概念図である。
【００２１】
更に、本実施例の場合の副軸受２０２は部品点数を削減し、コスト安とする為に、焼結材を材料に用い油保持性向上による自己潤滑特性向上を狙った仕様となっている。
【００２２】
かかる構成によれば、前記スラスト荷重とラジアル荷重とを受ける、騒音・振動・組立性に優れた、安価なすべり副軸受構造を可能とし、副軸受（ボールベアリング）１１４のような有限寿命ではなく、永久寿命を実現できる為、高信頼性を実現可能としている。
なお、本実施の形態において、油溝２０５として副軸２０４側に設けたが、副軸受２０２側に設けても良く、また、副軸受２０２のプレート２０１への固定方法は溶接等でも良い。
【００２３】
（実施の形態２）
図３は、本発明の実施の形態２における副軸〜副軸受部位の拡大断面図である。図３において、図１、図２、図６と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【００２４】
図３において、副軸受２０２には、より大きなラジアル方向荷重やスラスト荷重が受けられるように、軸受摺動部材２１２，２１３が組み込まれており、このラジアル方向軸受摺動部材２１２の軸受面には前記実施の形態１で記載したような逃げ２１４が設けられている。
【００２５】
また、本実施例の場合の副軸受２０２はコスト安とする為に、鋳鉄材を材料に用いた仕様となっている。
【００２６】
前記副軸受にラジアル方向軸受摺動部材２１２やスラスト方向軸受摺動部材２１３を組み込むことにより、簡単な仕様変更で、圧縮機構部１０２の容積拡大や高効率化された電動機部１０３を採用可能とし、圧縮機の高能力化、高効率化、更には初期なじみ性の向上による高信頼性化等が容易に実現できる。
【００２７】
なお、本実施の形態２において、ラジアル方向軸受摺動部材２１２やスラスト方向軸受摺動部材２１３を同時に組み込んだ場合を記載したが、軸受材料を前記焼結材のような自己潤滑性が期待できる材料とすることで、ラジアル方向荷重への補強のために軸受摺動部材２１２のみを用いたり、また、スラスト方向荷重の補強のためにスラスト方向軸受摺動部材２１３のみを用いて、ラジアル面２１０は前記実施の形態１の様な構成としても良い。
【００２８】
【発明の効果】
以上のように、本発明の副軸〜副軸受面間のすべり軸受構造によれば、圧縮機構部と副軸〜副軸受面間への潤滑油の供給を容易に構成可能とし、信頼性・騒音・振動・組立性等に優れた、安価な副軸〜副軸受面間のすべり軸受構造、及びそれを備えたスクロール圧縮機を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態１におけるスクロール圧縮機の縦断面図
【図２】本発明の実施の形態１におけるスクロール圧縮機の副軸〜副軸受拡大断面図
【図３】本発明の実施の形態２におけるスクロール圧縮機の副軸〜副軸受拡大断面図
【図４】スクロール圧縮機のクランク軸みそ擂り運動の状態を表した概念図
【図５】スクロール圧縮機のクランク軸たわみ状態を表した概念図
【図６】従来のスクロール圧縮機の断面図
【符号の説明】
１０１ 密閉容器
１０２ 圧縮機構部
１０３ 電動機部
１０４ 固定子
１０５ 回転子
１０６ クランク軸
１０７ 潤滑油
１０８ 軸受ブッシュ
１０９ 主軸受
１１０ 固定スクロール
１１１ 吸い込み管
１１２ 吐き出し管
１１３ 旋回スクロール
１１４ 副軸受（ボールベアリング）
１１５ オルダムリング
１１６ プレート
１１７ 給油機構
１１８ プレート凹部
２０１ プレート（穴付）
２０２ 副軸受（すべり）
２０３ ボルト
２０４ 副軸
２０５ 油溝
２０６ ポンプ軸
２０７ 歯車
２０８ ポンプ軸穴
２０９ ポンプ軸〜ポンプ軸穴間隙間
２１０ ラジアル面
２１１ スラスト面
２１２ ラジアル方向軸受摺動部材
２１３ スラスト方向軸受摺動部材
２１４ ラジアル軸受面逃げ部

Claims (3)

1. 密閉容器内にクランク軸により連結された電動機と圧縮機構とを収納し、
   前記クランク軸は圧縮機構側に設けた主軸受けと、電動機を挟んで圧縮機構とは反対側に配置された滑り軸受けである副軸受とで回転自在に支承され、
   前記副軸受はクランク軸に対して圧縮機構から副軸受側に向かって作用するスラスト荷重を支承するスラスト軸受部と、クランク軸の回転によるラジアル荷重とを支承する内径が両端に向かって順次微少拡大してなるラジアル軸受部とを併せ持ち、
   前記副軸受と同一部材で一部分が構成され、前記副軸受の反圧縮機構側に配置されてクランク軸の回転によって駆動される給油機構と、クランク軸の軸中心を貫通して配置され、前記給油機構と圧縮機構の摺動部とを連通する給油穴とを有し、
   前記給油機構により供給される油が前記給油穴と副軸受け摺動部とに分岐給油され、
   前記副軸受け摺動部に分岐給油された油は前記スラスト軸受部に供給された後、ラジアル軸受部に対向するクランク軸外周面に軸方向に設けた油溝を通って密閉容器内に排出されることを特徴とする圧縮機。
2. 副軸受のラジアル軸受部とスラスト軸受部はそれぞれの軸受面に軸受摺動部材が配置され、前記ラジアル軸受部に配置された軸受摺動部材が両端に向かって軸受内径が順次微小拡大していることを特徴とする請求項１記載の圧縮機。
3. 圧縮機構がスクロール圧縮機構である、請求項１または２記載の圧縮機。

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