JP4508236B2 - 回転機の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電力変換回路のスイッチング素子を操作することで回転機を実際に流れる電流とその指令値との差を許容領域内に制御する回転機の制御装置に関する。
この種の制御装置としては、例えば下記特許文献1に見られるように、非ゼロベクトルを用いて電動機を実際に流れる電流とその指令値との差を略ゼロとした後、電力変換回路(インバータ)の操作状態をゼロベクトルとすることも提案されている。そしてこれにより、ゼロベクトルの出力期間を増大させることができ、ひいては同一のスイッチング周波数における電流リプルを低減することができるとしている。
特開2003−235270号公報
ところで、上記態様にてスイッチングを行う場合、電動機の低回転速度時においては、周知の三角波PWM処理よりもゼロベクトル期間の割合が小さくなることが発明者らによって見出されている。そしてこのため、スイッチング周波数の増加や、高調波の増加を招くおそれがある。更に、上記技術の場合、実際に流れる電流をその指令値から引いた減算値が許容範囲外となる場合に上記減算値をゼロとするようにスイッチング制御を行い、その後ゼロベクトルとするため、電動機を実際に流れる電流が指令値よりも大きい側又は小さい側のいずれか一方にずれる状態が長期化するおそれがある。そしてこの場合には、電動機のトルクの制御精度が低下する。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電力変換回路のスイッチング素子を操作することで回転機を実際に流れる電流とその指令値との差を許容領域内に制御するに際し、電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとする期間をより適切に拡大することのできる回転機の制御装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
請求項記載の発明は、電力変換回路のスイッチング素子を操作することで回転機を実際に流れる電流とその指令値との差を許容領域内に制御する回転機の制御装置において、前記電力変換回路の操作状態がゼロベクトルである場合の前記差の変化方向を予測する予測手段と、前記差がゼロである点から前記変化方向及びその逆方向に伸びる直線を前記差が横切る場合、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとするゼロベクトル出力手段とを備えることを特徴とする。
電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすると、上記差は上記予測される変化方向へと変化すると考えられる。一方、上記差を上記許容領域内とするとの条件の下、電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることができる期間は、ゼロベクトルとする時点での上記差に依存する。ここで、上記差が上記直線に沿って変化する場合には、ゼロベクトルとすることができる期間を拡大しやすい。上記発明は、この点に鑑み、上記直線を上記差が横切る場合に電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることで、ゼロベクトル期間を簡易且つ適切に拡大することができる。
請求項記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記予測される変化方向及び前記差を入力とし、前記差がゼロである点を中心として電圧ベクトルにて区画される領域のうちの前記ゼロである点に対して前記変化方向とは逆方向にある領域へと前記差を制御する逆方向制御手段を更に備えることを特徴とする。
上記発明では、逆方向制御手段を備えることで、ゼロベクトル出力手段によって電力変換回路の操作状態がゼロベクトルとされる場合において、上記差を許容範囲内とするとの条件の下、ゼロベクトルとすることのできる期間を好適に拡大することができる。
請求項3記載の発明は、請求項記載の発明において、前記逆方向制御手段は、前記差が前記許容領域外に存在して且つ、前記操作状態を表現する電圧ベクトルのうちその始点を前記差がゼロとなる点とした場合に実際に流れる電流をその指令値から引いた減算値に最近接するもの、前記区画される領域のうち前記差がゼロとなる点を始点とした前記変化方向のベクトルを含む領域の境界となる場合、前記最近接する電圧ベクトルを第1スイッチングベクトルとして且つ、前記変化方向のベクトルを含む領域の境界となる電圧ベクトルのうち前記第1スイッチングベクトルでないものを第2スイッチングベクトルとし、これら第1スイッチングベクトル及び第2スイッチングベクトルにて前記電力変換回路を順次操作する手段であることを特徴とする。
電力変換回路の操作状態が非ゼロベクトルである場合、上記差がゼロである点を始点とする上記減算値の変化方向のベクトルからこの非ゼロベクトルを引いたベクトルの方向に上記減算値が変化すると考えられる。このため、第1スイッチングベクトル及び第2スイッチングベクトルを順次用いることで、上記逆方向にある領域側へと上記差を制御することができる。
請求項記載の発明は、請求項記載の発明において、前記第1スイッチングベクトルから前記第2スイッチングベクトルへの切り替えを、前記差が前記区画される領域のうちの前記変化方向とは逆方向の領域に存在せずして且つ前記区画される領域のうちの前記差の存在する領域が2回変化する場合に行うことを特徴とする。
上記発明では、第2スイッチングベクトルによって、上記差を上記逆方向にある領域側へと適切に制御することができる。
請求項記載の発明は、請求項又は記載の発明において、前記第1スイッチングベクトルから前記第2スイッチングベクトルへの切り替えを、前記差が前記区画される領域のうちの前記変化方向とは逆方向の領域に存在せずして且つ前記差が前記許容領域外で増加する場合に行うことを特徴とする。
上記差が許容領域外で増加するということは、電力変換回路の現在の操作状態が適切でないことを意味する。この点、上記発明では、こうした場合に第2スイッチングベクトルに切り替えることで操作状態を改善することができる。
請求項記載の発明は、請求項のいずれか1項に記載の発明において、前記ゼロベクトル出力手段は、前記電力変換回路の操作状態が前記逆方向制御手段によって第2スイッチングベクトルとされている状況下、前記ゼロである点から前記変化方向及びその逆方向に伸びる直線を前記差が横切る場合、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることを特徴とする。
上記差を上記許容領域内とするとの条件の下、電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることができる期間は、ゼロベクトルとする時点での上記差に依存する。ここで、上記差が上記直線に沿って変化する場合には、ゼロベクトルとすることができる期間を拡大しやすい。上記発明は、この点に鑑み、上記直線を上記差が横切る場合に電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることで、ゼロベクトル期間を簡易且つ適切に拡大することができる。
請求項記載の発明は、請求項のいずれか1項に記載の発明において、前記ゼロベクトル出力手段は、前記電力変換回路が前記逆方向制御手段によって第2スイッチングベクトルに操作されている状況下、前記区画される領域のうちの前記ゼロである点に対して前記変化方向とは逆方向にある領域に前記差が存在して且つ前記差が許容領域外にある場合、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることを特徴とする。
上記差がゼロである点に対して上記変化方向とは逆方向にある領域に上記差が存在する場合、ゼロベクトルとすることで上記差は上記変化方向に沿って変化し、しかも許容領域内に上記差が存在する期間を十分に確保しやすい。特に、上記差が許容領域外にある場合にゼロベクトルとすることで、許容領域内にある際にゼロベクトルとする場合と比較して、許容領域内に上記差が存在する期間を拡大することができる。
請求項記載の発明は、請求項のいずれか1項に記載の発明において、前記電力変換回路の操作状態が前記逆方向制御手段によって第2スイッチングベクトルとされている状況下、前記区画される領域のうちの前記ゼロである点に対して前記変化方向とは逆方向にある領域以外の領域に前記差が存在して且つ前記差が前記許容領域外で増加する場合、前記電力変換回路の操作状態を前記減算値に最近接する電圧ベクトルとする過渡時出力手段を更に備えることを特徴とする。
一般に、上記減算値に最近接する電圧ベクトルを用いるなら、上記差を許容領域内に適切に制御することが可能となる。上記発明では、この点に鑑み、過渡時出力手段を備えることで、第2スイッチングベクトルとされている際に、上記差の挙動が、逆方向制御手段にとって想定外のものとなったとしても、上記差を許容領域内へと制御することが可能となる。
請求項記載の発明は、請求項3〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記電力変換回路の操作状態が前記逆方向制御手段によってゼロベクトルとされている状況下、前記差が前記許容領域外で増加して且つ、前記減算値に最近接する電圧ベクトルが前記変化方向を含む領域の境界とならない場合、前記電力変換回路の操作状態を前記減算値に最近接する電圧ベクトルとする過渡時出力手段を更に備えることを特徴とする。
一般に、上記減算値に最近接する電圧ベクトルを用いるなら、上記差を許容領域内に適切に制御することが可能となる。上記発明では、この点に鑑み、過渡時出力手段を備えることで、ゼロベクトルとされている際に、上記差の挙動が、逆方向制御手段にとって想定外なものとなったとしても、上記差を許容領域内へと制御することが可能となる。
請求項1記載の発明は、請求項8又は9記載の発明において、前記過渡時出力手段は、該過渡時出力手段による前記電力変換回路の操作中において、前記減算値に最近接する電圧ベクトルが前記変化方向のベクトルを含む領域の境界とならない場合であって、前記区画される領域のうちの前記ゼロである点に対して前記変化方向とは逆方向にある領域に前記差が存在せずして且つ該差が前記許容領域外で増加するとき、前記電力変換回路の操作状態を現在の前記減算値に最近接する電圧ベクトルに更新することを特徴とする。
一般に、上記減算値に最近接する電圧ベクトルを用いるなら、上記差を許容領域内に適切に制御することが可能となる。ここで、過渡時出力手段による操作中において上記差が許容領域外で増加する場合には、現在の操作状態が上記差を許容領域内に制御するうえで適切なものでなくなったことを意味する。この点、上記発明では、こうした状況下、電圧ベクトルを更新することで上記差を許容領域内に制御することができる。
請求項1記載の発明は、請求項〜1のいずれか1項に記載の発明において、前記ゼロベクトル出力手段は、前記電力変換回路が前記過渡時出力手段によって操作されている状況下、前記ゼロである点から前記変化方向及びその逆方向に伸びる直線を前記差が横切る場合、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることを特徴とする。
上記差が上記伸びる直線を横切る際に電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとする場合、上記差は上記伸びる直線に沿って変化すると考えられる。そして、この場合には、上記差が許容領域の外へと変化する時点においては、上記逆方向制御手段によって第1スイッチングベクトルの設定を行うことが可能となる。すなわち、上記発明では、電力変換回路の操作状態を適切なタイミングでゼロベクトルとすることができる。
請求項1記載の発明は、請求項〜1のいずれか1項に記載の発明において、前記ゼロベクトル出力手段は、前記電力変換回路が前記過渡時出力手段によって操作されている状況下、前記区画される領域のうちの前記ゼロである点に対して前記変化方向とは逆方向にある領域に前記差が存在して且つ前記差が増加する場合、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることを特徴とする。
上記差が上記逆方向にある領域内に存在する際に電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとする場合、上記差は上記変化方向に沿って変化して且つ、上記差が許容領域内に存在する期間を長期化させることができると考えられる。そして、この場合には、上記差が許容領域の外へと変化する時点においては、上記逆方向制御手段によって第1スイッチングベクトルの設定を行える可能性が高い。すなわち、上記発明では、電力変換回路の操作状態を適切なタイミングでゼロベクトルとすることができる。
請求項1記載の発明は、請求項〜1のいずれか1項に記載の発明において、前記ゼロベクトル出力手段は、前記電力変換回路の操作状態が前記逆方向制御手段によって前記第1スイッチングベクトルとされている状況下、前記差が前記変化方向とは逆方向にある領域に存在する場合であって且つ、前記ゼロである点から前記予測される変化方向及びその逆方向に伸びる直線を前記差が横切るとき、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることを特徴とする。
上記差が上記逆方向にある領域内に存在する際に電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとする場合、上記差は上記変化方向に沿って変化し、上記差が許容領域の外へと変化する時点においては、上記逆方向制御手段によって第1スイッチングベクトルの設定を行うことが可能となると考えられる。特に、上記差が上記伸びる直線を横切る際に電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることで、上記差が上記変化方向側の領域において許容範囲外となるまでの時間を長くすることができる。
請求項1記載の発明は、請求項〜1のいずれか1項に記載の発明において、前記ゼロベクトル出力手段は、前記電力変換回路の操作状態が前記逆方向制御手段によって前記第1スイッチングベクトルとされている状況下、前記差が前記変化方向とは逆方向にある領域に存在する場合であって且つ、前記差が前記許容領域外で増加するとき、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることを特徴とする。
上記差が上記逆方向にある領域内に存在する際に電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとする場合、上記差は上記変化方向に沿って変化し、上記差が許容領域の外へと変化する時点においては、上記逆方向制御手段によって第1スイッチングベクトルの設定を行うことが可能となると考えられる。特に、上記差が許容領域の外で増加するときには、電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることで、上記差が上記変化方向側の領域において許容範囲外となるまでの時間を長くすることができる。
請求項1記載の発明は、請求項3〜14のいずれか1項に記載の発明において、前記逆方向制御手段は、前記領域を区画する電圧ベクトルの任意の2つのそれぞれ及び前記減算値を成分とするベクトルの各内積値同士の大小関係に基づき、前記第1スイッチングベクトルを特定する特定手段を備えることを特徴とする。
上記発明では、内積演算を利用することで、比較的簡易な処理によって第1スイッチングベクトルを特定することができる。
請求項1記載の発明は、請求項〜1のいずれか1項に記載の発明において、前記領域を区画する電圧ベクトルの任意の2つのそれぞれ及び前記減算値を成分とするベクトルの各内積値同士の大小関係に基づき、前記減算値の存在領域を判断する減算値存在領域判断手段を更に備えることを特徴とする。
上記発明では、内積演算を利用することで、比較的簡易な処理によって減算値の存在領域を判断することができる。
請求項1記載の発明は、請求項〜1のいずれか1項に記載の発明において、前記領域を区画する電圧ベクトルの任意の2つのそれぞれ及び前記変化方向を示すベクトルの各内積値同士の大小関係に基づき、前記差がゼロである点を始点とする前記変化方向のベクトルの存在領域を判断する変化方向領域判断手段を更に備えることを特徴とする。
上記発明では、内積演算を利用することで、比較的簡易な処理によって上記ベクトルの存在領域を判断することができる。
請求項18記載の発明は、請求項〜1のいずれか1項に記載の発明において、前記領域を区画する電圧ベクトルの任意の2つのそれぞれ及び前記減算値を成分とするベクトルの各内積値同士の大小関係と、前記減算値のベクトル成分の符号とに基づき、前記第1スイッチングベクトルを特定する特定手段と、前記領域を区画する電圧ベクトルの任意の2つのそれぞれ及び前記減算値のベクトルの各内積値同士の大小関係と、前記減算値のベクトル成分の符号とに基づき、前記減算値の存在領域を判断する減算値存在領域判断手段と、前記領域を区画する電圧ベクトルの任意の2つのそれぞれ及び前記変化方向を示すベクトルの各内積値同士の大小関係と、前記変化方向を示すベクトルの成分の符号とに基づき、前記差がゼロである点を始点とする前記変化方向のベクトルの存在領域を判断する変化方向領域判断手段とを更に備え、前記特定手段、前記減算値存在領域判断手段、及び前記変化方向領域判断手段は、共通のロジック関数を用いて且つ、前記符号の判断対象となるベクトルと、前記内積の演算対象となるベクトル、及び出力値を切り替えることで構成されてなることを特徴とする。
上記発明では、内積演算を行うことで、比較的簡易な処理によって第1スイッチングベクトルを特定したり、減算値の存在領域を判断したり、上記ベクトルの存在領域を判断したりすることができる。しかも、これらの処理を共通のロジック関数にて行うために、処理設計を簡素化することができる。
請求項19記載の発明は、請求項1〜18のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記ゼロベクトル期間における前記差の変化方向の検出値に基づき、次回以降のゼロベクトル期間における前記変化方向を予測することを特徴とする。
上記発明では、予測手段を簡易且つ適切に構成することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる回転機の制御装置を、ハイブリッド車に搭載される3相電動機の制御装置に適用した一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1に、上記3相電動機及びその制御装置の全体構成を示す。
図示されるように、3相電動機であるブラシレスモータ(モータ10)の3つの相(U相、V相、W相)には、インバータIVが接続されている。このインバータIVは、3相インバータであり、3つの相のそれぞれに対応したスイッチング素子12,14とスイッチング素子16,18とスイッチング素子20,22との並列接続体を備えて構成されている。更に、インバータIVは、各スイッチング素子12〜22に逆並列に接続されたダイオード24〜34を備えている。そして、スイッチング素子12及びスイッチング素子14を直列接続する接続点がモータ10のU相と接続されている。また、スイッチング素子16及びスイッチング素子18を直列接続する接続点がモータ10のV相と接続されている。更に、スイッチング素子20及びスイッチング素子22を直列接続する接続点がモータ10のW相と接続されている。ちなみに、これらスイッチング素子12〜22は、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)によって構成されている。
インバータIVの各1組のスイッチング素子12,14とスイッチング素子16,18とスイッチング素子20,22との両端には、平滑コンデンサ40を介してバッテリ42の電圧が印加されている。
一方、制御装置50は、モータ10の出力軸の回転角度を検出する位置センサ52や、U相及びW相に流れる電流を検出する電流センサ54,56の検出結果、更にはトルク指令部60からのトルク指令値を取り込む。そして、制御装置50は、上記モータ10の出力軸の回転角度や上記電流、指令値等に基づき、ゲート駆動回路58a〜58fを介してスイッチング素子12〜22を操作する。詳しくは、操作信号gupにてスイッチング素子12を操作し、操作信号gunにてスイッチング素子14を操作する。また、操作信号gvpにてスイッチング素子16を操作し、操作信号gvnにてスイッチング素子18を操作する。更に、操作信号gwpにてスイッチング素子20を操作し、操作信号gwnにてスイッチング素子22を操作する。
ここで、インバータIVの操作について、図2を用いて更に説明する。
図2(a)は、本実施形態にかかるインバータIVの操作状態を表現する電圧ベクトルをαβ平面上に示すものである。ここで、電圧ベクトルは、2個のゼロベクトル(電圧ベクトルV0,V7)と、6個の非ゼロベクトル(電圧ベクトルV1〜V6)とからなる。そしてこれらは、インバータIVの操作状態を表現する。すなわち、電圧ベクトルを3相の座標成分で表記する場合、上側アームのスイッチング素子12,16,20のオン状態を「1」、下側アームのスイッチング素子14,18,22のオン状態を「0」として、成分中、少なくとも1つが「1」、少なくとも1つが「0」となるベクトルとして表現される。これは、同一相については上下アームの同時オン状態及び同時オフ状態が存在しないことを前提としている。図2(b)に、各電圧ベクトルとスイッチング素子12〜22の操作状態との対応関係を示す。例えば、電圧ベクトルV0は、下側アームのスイッチング素子14,18,22の全てがオン状態であることを表現する。また例えば、電圧ベクトルV7は、上側アームのスイッチング素子12,16,20の全てがオン状態である状態を表現する。
図2(a)では、3相座標系での電圧ベクトルの成分を、周知の3相2相変換によって2相座標系の成分に変換することにより、電圧ベクトルをαβ平面上に表現している。そして、6個の非ゼロベクトル(電圧ベクトルV1〜V6)によって区画される6個の領域を領域R1〜R6としている。
上記3相2相変換を用いれば、同様に、モータ10を実際に流れる電流やその指令値についても、αβ平面上で表現することができる。このことは、実電流の指令値に対する誤差についてもαβ平面上で表現することができることを意味する。そこで本実施形態では、モータ10に対する電流の指令値(指令電流iαc、iβc)から実際に流れる電流(実電流iα、iβ)を引いた減算値ΔI(=(iαc−iα、iβc−iβ))を許容領域内に制御するようにインバータIVを操作する。そして、この許容領域を、減算値ΔIがゼロとなる点を中心とする所定の半径Hを有する円内の領域(許容領域)とする。以下、本実施形態にかかる電流の制御原理について説明する。
ここでは、まずαβ上での上記減算値ΔIの挙動を示す方程式を導出する。電圧ベクトルV0〜V7を電圧ベクトルVk(k=0〜7)として且つ、実電流I(=(iα、iβ))と、αβ上での誘起電圧ベクトルEと、モータ10のインダクタンスLとを用いると、実電流Iの挙動を示す電圧方程式(ベクトル表記)は、下記の式(c1)となる。
Vk=L・(dI/dt)+R・I+E …(c1)
一方、指令電流Ic(=(iαc、iβc))を用いると、減算値ΔIの定義から、下記の式(c2)が成立する。
L・(dΔI/dt)
=L・(d(Ic−I)・dt)
=L・(dIc/dt)−L・(dI/dt) …(c2)
上記の式(c2)を変形することで下記の式(c3)を得る。
L・(dI/dt)=L/(dIc/dt)−L・(dΔI/dt) …(c3)
上記の式(c3)により上記の式(c1)から実電流Iの時間微分の項を消去して変形すると、下記の式(c4)を得る。
L・(dΔI/dt)=L・(dIc/dt)+R・I+E−Vk …(c4)
更に、減算値ΔIの定義を用いて上記の式(c4)から実電流Iを消去すると、下記の式(c5)を得る。
L・(dΔI/dt)
=L/(dIc/dt)+R・Ic+E−Vk−R・ΔI …(c5)
ここで、「Vc=L/(dIc/dt)+R・Ic+E−R・ΔI」と定義すると、上記の式(c5)は、下記の式(c6)となる。
L・(dΔI/dt)=Vc−Vk …(c6)
上記の式(c6)より、減算値ΔIの変化は、2つのベクトルの差にて表現できる。特に、電圧ベクトルVkがゼロベクトルである場合には、減算値ΔIの変化方向は、単一のベクトルにて表現される。このため、このベクトルを変化方向ベクトルVcと命名する。この変化方向ベクトルVcは、減算値ΔIがゼロである点を始点として且つ、インバータIVの操作状態がゼロベクトルである場合の減算値ΔIの変化方向を示している。ちなみに、上記の式(c5)において、インバータIVの操作状態がゼロベクトルである際に「R・ΔI」の項が無視し得るとすれば、変化方向ベクトルVcは、上記の式(c1)において実電流Iに代えて指令電流Icとした際の電圧方程式の右辺となっているため、電圧指令値とみなすこともできる。
上述したように、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとした場合、減算値ΔIが変化方向ベクトルVcに従って変化する。このため、減算値ΔIを、変化方向ベクトルVcとは逆側の領域に制御した後、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとするなら、ゼロベクトルとしてから長期にわたって減算値ΔIを許容領域に存在させることができると考えられる。すなわち、ゼロベクトル期間を拡大することができると考えられる。こうした観点に鑑みた定常時における電流の制御手法を、図3に示す。図3は、本実施形態における定常時のスイッチングパターンを示す。
図3では、変化方向ベクトルVc及び減算値ΔIが領域R1にあって且つ減算値ΔIが許容領域から外れる場合に、これを変化方向ベクトルVcとは逆方向の領域R4に制御した後、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとする例を示している。ここでは、まず、減算値ΔIに最近接する電圧ベクトルを第1スイッチングベクトルSv1として且つ、変化方向ベクトルVcを含む領域を区画する電圧ベクトルのうち第1スイッチングベクトルSv1でないものを第2スイッチングベクトルSv2とする。すなわち、電圧ベクトルV6が第1スイッチングベクトルSv1とされて且つ、電圧ベクトルV4が第2スイッチングベクトルSv2とされる。そして、以下の順序でスイッチング状態を切り替える。
(a)まずインバータIVの操作状態を第1スイッチングベクトルSv1とする。これにより、上記の式(c6)からわかるように、減算値ΔIは、変化方向ベクトルVcから第1スイッチングベクトルSv1を減算した方向に変化する。
(b)減算値ΔIの存在領域が2回変化する時点で、インバータIVの操作状態を第2スイッチングベクトルSv2とする。これにより、上記の式(c6)からわかるように、減算値ΔIは、変化方向ベクトルVcから第2スイッチングベクトルSv2を減算した方向に変化する。
(c)減算値ΔIがゼロである点を通って且つ変化方向ベクトルVcと平行な直線を減算値ΔIが横切る時点で、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとする。これにより、減算値ΔIは、上記直線に沿って変化方向ベクトルVcと同一の方向に変化する。
上記スイッチングパターンによれば、ゼロベクトルとすることで減算値ΔIが変化し許容領域から外れる場合には、上記(a)の時点と同一の状態となるため、変化方向ベクトルVcの方向が変化しない限り、上記(a)〜(c)の状態を繰り返すことができると考えられる。特に、こうした制御を行うことで、減算値ΔIを許容領域内に収めつつもゼロベクトル期間を好適に拡大することができる。
ここで、本実施形態では、インバータIVの操作状態がゼロベクトルとされる際の減算値ΔIの変化に基づき変化方向ベクトルVcを算出する。これにより、定常時においては、上記(d)の行程において毎回変化方向ベクトルVcを算出することができる。
以下、上記原理に基づく電流の制御に関する処理について更に詳述する。
図4に、本実施形態にかかる電流制御の処理に関するブロック図を示す。
電流指令値算出部70は、上記トルク指令部60からのトルク指令値と、上記位置センサ52の検出値(電気角)を入力として、αβ軸上での指令電流iαc、iβcを算出する。詳しくは、図5に示すように、d軸指令値算出部70aにて、トルク指令値からd軸上の指令電流idcをマップ演算するとともに、q軸指令値算出部70bにて、トルク指令値からq軸の指令電流iqcをマップ演算する。ここで、マップは、例えばモータ10がIPMである場合、極対数p、トルク定数Tk、d軸インダクタンスLd、及びq軸インダクタンスLqを用いて「トルク指令値=p{Tk・iqc−(Ld−Lq)idc・iqc}」を満たすように適合すればよい。そして、これらdq軸上の指令電流idc,iqcは、回転座標変換器70cにてαβ軸上での指令電流iαc、iβcに変換される。
先の図4に示す3相2相変換部74は、電流センサ54の検出値(実電流iu)と電流センサ56の検出値(実電流iw)と、これらから減算部72にて算出される実電流ivとに基づき、周知の3相2相変換を用いて、3相の実電流iu,iv,iwを、αβ軸上での実電流iα、iβに変換する。なお、この3相2相変換は、上記αβ軸上での電圧ベクトルを表現する際に用いたものと同一であり、その具体的な式については、図の左端に示した。
そして、減算部76においてα軸上の指令電流iαcから実電流iαが減算され、減算部78においてβ軸上の指令電流iβcから実電流iβが減算されることで、減算値ΔIが算出される。そして、減算値ΔIは、第1スイッチングベクトル選択部80、変化方向ベクトル算出部82、及び誤差状態監視部86に取り込まれる。
第1スイッチングベクトル選択部80では、減算値ΔIに基づき、これに最近接するベクトルを第1スイッチングベクトルSv1として且つ、減算値ΔIの存在する領域を特定する処理を行う。変化方向ベクトル算出部82では、減算値ΔIに基づき、変化方向ベクトルVcを算出するとともに、変化方向ベクトルVcの存在領域を特定する処理を行う。誤差状態監視部86では、減算値ΔIに基づき、減算値ΔIが誤差領域内にあるか否かの判定(領域内外判定)や、減算値ΔIが増加するか否かの判定(誤差増減判定)を行う。
一方、第2スイッチングベクトル選択部84では、上記第1スイッチングベクトル選択部80によって選択された第1スイッチングベクトルSv1と、変化方向ベクトル算出部82にて特定された変化方向ベクトルVcの存在領域とに基づき、第2スイッチングベクトルSv2を算出する。
スイッチングベクトル選択部88では、第1スイッチングベクトル選択部80、変化方向ベクトル算出部82、第2スイッチングベクトル選択部84、及び誤差状態監視部86の出力に基づき、インバータIVのスイッチング状態を定めるための信号を生成して出力する。これら信号は、3相のそれぞれについて各1つの信号であり、それぞれデッドタイム生成器90〜94に取り込まれる。これにより、デッドタイム生成器90〜94では、上記操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成して出力する。
以下、第1スイッチングベクトル選択部80、変化方向ベクトル算出部82、第2スイッチングベクトル選択部84、及び誤差状態監視部86の処理について詳述した後、スイッチングベクトル選択部88の処理について詳述する。
<第1スイッチングベクトル選択部80の処理>
図6に例示するように減算値ΔIが与えられると、第1スイッチングベクトル選択部80では、減算値ΔIに最近接する非ゼロベクトル(ここでは、電圧ベクトルV6)を第1スイッチングベクトルSv1として選択する。この処理は、減算値ΔIのベクトルの各成分の符号により減算値ΔIに最近接する可能性のある電圧ベクトルを2つに絞り込んだ後、これら絞り込まれた2つの電圧ベクトルのそれぞれと減算値ΔIとの内積演算に基づき、最近接する電圧ベクトルを特定する処理である。
図7に、第1スイッチングベクトルSv1の選択にかかる処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS10において、減算値ΔIが第1象限に入っているか否かを判断する。換言すれば、減算値ΔIのベクトルのα軸上の成分Δiαとβ軸上の成分Δiβとがともにゼロ以上であるか否かを判断する。そして、第1象限に入っていると判断される場合には、減算値ΔIに最近接するのは電圧ベクトルV4、V6のいずれかであると考えられるため、これら2つのうちのいずれであるかを特定する処理を行う。すなわち、ステップS12において、減算値ΔIのベクトルと、電圧ベクトルV4、V6とのそれぞれの内積値ΔI・V4,ΔI・V6を算出し、その大小関係を比較する。そして、内積値ΔI・V4が内積値ΔI・V6以上である場合、ステップS14において第1スイッチングベクトルSv1として電圧ベクトルV4を選択し、そうでない場合、ステップS16において、第1スイッチングベクトルSv1として電圧ベクトルV6を選択する。
一方、減算値ΔIが第1象限に入っていない場合、ステップS18において、第2象限に入っているか否かを判断する。換言すれば、減算値ΔIのベクトルのα軸上の成分Δiαが負で且つβ軸上の成分Δiβがゼロ以上であるか否かを判断する。そして、第2象限に入っていると判断される場合には、減算値ΔIに最近接するのは電圧ベクトルV2、V3のいずれかであると考えられるため、これら2つのうちのいずれであるかを特定する処理を行う。すなわち、ステップS20において、減算値ΔIのベクトルと、電圧ベクトルV3、V2とのそれぞれの内積値ΔI・V3,ΔI・V2を算出し、その大小関係を比較する。そして、内積値ΔI・V3が内積値ΔI・V2以上である場合、ステップS22において第1スイッチングベクトルSv1として電圧ベクトルV3を選択し、そうでない場合、ステップS24において、第1スイッチングベクトルSv1として電圧ベクトルV2を選択する。
また、減算値ΔIが第2象限に入っていない場合、ステップS26において、第3象限に入っているか否かを判断する。換言すれば、減算値ΔIのベクトルのα軸上の成分Δiα及びβ軸上の成分Δiβがともに負であるか否かを判断する。そして、第3象限に入っていると判断される場合には、減算値ΔIに最近接するのは電圧ベクトルV3、V1のいずれかであると考えられるため、これら2つのうちのいずれであるかを特定する処理を行う。すなわち、ステップS28において、減算値ΔIのベクトルと、電圧ベクトルV3、V1とのそれぞれの内積値ΔI・V3,ΔI・V1を算出し、その大小関係を比較する。そして、内積値ΔI・V3が内積値ΔI・V1以上である場合、ステップS30において第1スイッチングベクトルSv1として電圧ベクトルV3を選択し、そうでない場合、ステップS32において、第1スイッチングベクトルSv1として電圧ベクトルV1を選択する。
上記ステップS26にて否定判断される場合、減算値ΔIが第4象限にあることになるから、減算値ΔIに最近接するのは電圧ベクトルV4、V5のいずれかであると考えられるため、これら2つのうちのいずれであるかを特定する処理を行う。すなわち、ステップS34において、減算値ΔIのベクトルと、電圧ベクトルV4、V5とのそれぞれの内積値ΔI・V4,ΔI・V5を算出し、その大小関係を比較する。そして、内積値ΔI・V4が内積値ΔI・V5以上である場合、ステップS36において第1スイッチングベクトルSv1として電圧ベクトルV4を選択し、そうでない場合、ステップS38において、第1スイッチングベクトルSv1として電圧ベクトルV5を選択する。
次に、減算値ΔIの存在領域を特定する処理について説明する。先の図6に例示したように減算値ΔIが与えられると、これに基づき6個の非ゼロベクトル(電圧ベクトルV1〜V6)にて区画される領域R1〜R6のいずれの領域に減算値ΔIが存在するかを特定する。この処理は、減算値ΔIのベクトル成分の符号に基づき、存在する可能性のある領域を2つに絞り込んだ後、これら絞り込まれた2つの領域を区画する電圧ベクトルのうちの互いに共有されない2つの電圧ベクトルのそれぞれと減算値ΔIとの内積演算を行うことで、減算値ΔIの存在領域を特定する処理となる。ちなみに、図6に示した例では、領域R1と特定されることとなる。
図8に、減算値ΔIの存在領域を特定する処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS40において、減算値ΔIが第1象限に入っているか否かを判断する。換言すれば、減算値ΔIのベクトルのα軸上の成分Δiαとβ軸上の成分Δiβとがともにゼロ以上であるか否かを判断する。そして、第1象限に入っていると判断される場合には、領域R1にあるか領域R2にあるかを特定する処理を行う。すなわち、ステップS42において、領域R1及び領域R2を区画して且つこれら2つの領域R1、R2間で共有されない電圧ベクトルV4、V2のそれぞれと減算値ΔIのベクトルとの内積値ΔI・V4,ΔI・V2を算出し、その大小関係を比較する。そして、内積値ΔI・V4が内積値ΔI・V2以上である場合、ステップS44において領域R1に存在するとし、そうでない場合、ステップS46において、領域R2に存在するとする。
一方、減算値ΔIが第1象限に入っていない場合、ステップS48において、第2象限に入っているか否かを判断する。換言すれば、減算値ΔIのベクトルのα軸上の成分Δiαが負で且つβ軸上の成分Δiβがゼロ以上であるか否かを判断する。そして、第2象限に入っていると判断される場合には、領域R2にあるか領域R3にあるかを特定する処理を行う。すなわち、ステップS50において、領域R2及び領域R3を区画して且つこれら2つの領域R2、R3間で共有されない電圧ベクトルV3、V6のそれぞれと減算値ΔIのベクトルとの大小関係を比較する。そして、内積値ΔI・V3が内積値ΔI・V6以上である場合、ステップS52において領域R3にあるとし、そうでない場合、ステップS54において、領域R2にあるとする。
また、減算値ΔIが第2象限に入っていない場合、ステップS56において、第3象限に入っているか否かを判断する。換言すれば、減算値ΔIのベクトルのα軸上の成分Δiα及びβ軸上の成分Δiβがともに負であるか否かを判断する。そして、第3象限に入っていると判断される場合には、領域R4にあるか領域R5にあるかを特定する処理を行う。すなわち、ステップS58において、領域R4及び領域R5を区画して且つこれら2つの領域R4、R5間で共有されない電圧ベクトルV3、V5のそれぞれと減算値ΔIのベクトルとの内積値ΔI・V3,ΔI・V5を算出し、その大小関係を比較する。そして、内積値ΔI・V3が内積値ΔI・V5以上である場合、ステップS60において領域R4とし、そうでない場合、ステップS62において、領域R5とする。
上記ステップS56にて否定判断される場合、減算値ΔIが第4象限にあることになるから、領域R5にあるか領域R6にあるかを特定する処理を行う。すなわち、ステップS64において、領域R5及び領域R6を区画して且つこれら2つの領域R5、R6間で共有されない電圧ベクトルV4、V1のそれぞれと減算値ΔIのベクトルとの内積値ΔI・V4,ΔI・V1を算出し、その大小関係を比較する。そして、内積値ΔI・V4が内積値ΔI・V1以上である場合、ステップS66において領域R5とし、そうでない場合、ステップS68において、領域R6とする。
<変化方向ベクトル算出部82の処理>
図9に、変化方向ベクトル算出部82の行う変化方向ベクトルVcの算出にかかる処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り替えし実行される。
この一連の処理では、まずステップS70において、先の図4に示したスイッチングベクトル選択部88がゼロベクトルを出力している旨のフラグであるゼロベクトル出力中フラグがオン状態であるか否かを判断する。そして、ゼロベクトル出力中フラグがオン状態であると判断される場合、ステップS72において、現在の減算値ΔIを減算値ΔIoとして保持する。続くステップS74では、この一連の処理の前回の処理時においてゼロベクトル出力中フラグがオフであったか否かを判断する。この処理は、非ゼロベクトルからゼロベクトルに切り替わったタイミングであるか否かを判断するためのものである。そして、ステップS74において肯定判断される場合、切り替わりタイミングであることから、ステップS76において、減算値ΔIを切り替わり時の減算値ΔIsとして保持する。
一方、ステップS70においてゼロベクトル出力中フラグがオフであると判断される場合、ステップS80において、この一連の処理の前回の処理時においてゼロベクトル出力中フラグがオンであったか否かを判断する。この処理は、ゼロベクトルから非ゼロベクトルへの切り替えタイミングであるか否かを判断するためのものである。そしてステップS80において肯定判断される場合、切り替えタイミングであると判断し、ステップS82において、変化方向ベクトルVcを算出する。ここでは、ゼロベクトルから非ゼロベクトルへの切り替えタイミング時の減算値ΔIoから非ゼロベクトルからゼロベクトルへの切り替えタイミングにおける減算値ΔIsを引くことで、変化方向ベクトルVcを算出する。こうして変化方向ベクトルVcが算出されると、ステップS84において、変化方向ベクトルVcの存在領域を特定する。
なお、ステップS74,S80にて否定判断される場合や、ステップS76,S84の処理が完了する場合には、ステップS78において、ゼロベクトル出力中フラグの値を保持してこの一連の処理を一旦終了する。
図10に、上記処理によって算出される変化方向ベクトルVcを例示する。この変化方向ベクトルVcについても、減算値ΔIと同様、ベクトル成分の符号に基づき存在する可能性があると考えられる2つの領域の境界を区画して且つこれら2つの領域で互いに共有されない2つの電圧ベクトルと減算値ΔIとの内積演算に基づき、存在領域を特定することができる。図11に、本実施形態にかかる変化方向ベクトルVcの存在領域の特定にかかる処理の手順を示す。この処理は、先の図9のステップS84の処理の詳細である。この処理は、先の図8に示した減算値ΔIの存在領域を特定する処理と同様にして行うことができる。ちなみに、図10に示した例では、変化方向ベクトルVcは、領域R2に存在すると判断されることとなる。
<第2スイッチングベクトル選択部84の処理>
本実施形態では、図12に示すマップに基づき、第2スイッチングベクトルSv2を算出する。図12に示すマップは、次のようにして構成されている。すなわち、第1スイッチングベクトル選択部80の出力する第1スイッチングベクトルSv1が変化方向ベクトルVcを含む領域の境界の一方を区画するベクトルの場合、境界の他方を区画するベクトルを第2スイッチングベクトルSv2とする。一方、そうでない場合には、ゼロベクトルとする。すなわち、第2スイッチングベクトル選択部84の出力がゼロベクトルの場合、第1スイッチングベクトル選択部80の出力する第1スイッチングベクトルSv1が変化方向ベクトルVcを含む領域の境界を区画しないことを意味する。
<誤差状態監視部86>
図13に、誤差状態監視部86の行う処理を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS120において、減算値ΔIのベクトルノルムdを算出する。続くステップS121では、ノルムdが閾値H・Hよりも大きいか否かを判断する。この処理は、減算値ΔIが半径Hの円から外れている否かを、換言すれば、許容領域の外に出ているか否かを判断するものである。そして肯定判断される場合、ステップS122において、減算値ΔIが許容領域から外れている旨を示す許容領域外フラグをオンとする。一方、否定判断される場合、ステップS123において許容領域外フラグをオフとする。
上記ステップS122,S123の処理が完了する場合、ステップS124において、ノルムdがその前回値doldよりも大きいか否かを判断する。この処理は、実電流Iの指令電流Icに対する誤差が増加しているか否かを判断するものである。そして、ステップS124において肯定判断される場合には、ステップS125において、誤差が増加する旨の誤差増加フラグをオンとする。一方、否定判断される場合には、ステップS126において、誤差増加フラグをオフとする。
そして、上記ステップS125,S126の処理が完了する場合には、ステップS127において、現在のノルムdを前回値doldとし、この一連の処理を一旦終了する。ちなみに、上記一連の処理においてノイズ等の影響による誤判断を抑制する観点からは、ステップS121やステップS124において複数回連続して肯定判断される場合にステップS122,S125に移行するようにしてもよい。また、これに代えて、ノルムdを算出するステップS120において、ノルムdの変化を緩和する処理を施しつつこれを算出してもよい。これは、前回値doldと今回の算出値(Δiα・Δiα+Δiβ・Δiβ)との加重平均値を今回のノルムdとする処理をしたり、移動平均処理を施したりすることで行うことができる。
<スイッチングベクトル選択部88の処理>
図14に、スイッチングベクトル選択部88によるインバータIVの操作手法を示す。図示されるように、スイッチングベクトル選択部88では、インバータIVを操作する以下の4つの状態を有する。そのうち、状態A,B,Cが先の図3に示した定常時の制御に対応している。
状態A.第1スイッチングベクトルSv1が変化方向ベクトルVcを含む領域の境界を区画する場合に、第1スイッチングベクトルSv1を出力する状態である。
状態B.上記状態Aにおいて変化方向ベクトルVcを含む領域の境界を区画するもうひとつの非ゼロベクトルとしての第2スイッチングベクトルSv2を出力する状態である。一般に、ここで出力するベクトルは、状態Bへの切り替え直前に上記第2スイッチングベクトル選択部84の出力する第2スイッチングベクトルSv2とは相違する。スイッチングベクトル選択部88では、状態Aにおける第2スイッチングベクトルSv2を記憶することでこの処理を行っている。
状態C.ゼロベクトルを出力する状態である。
状態D.減算値ΔIが、先の図3に示した定常時の制御にとって想定外の挙動を示す過渡時におけるインバータIVの操作状態を示す。
以下、これら状態A〜状態D間の遷移に関する処理の手順について説明する。
図15は、状態A時の処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS130において、減算値ΔIがゼロベクトル出力領域にあるか否かを判断する。ここで、本実施形態では、ゼロベクトル出力領域を、変化方向ベクトルVcとは逆方向にある領域、換言すれば、変化方向ベクトルVcを含む領域と点対称の領域としている。具体的には、この処理は、図16に示すマップに基づき行われる。図16に示すマップは、現在の減算値ΔIと変化方向ベクトルVcとからゼロベクトル出力領域であるか否かを判断するものである。図示されるマップにおいて、「1」がゼロベクトル出力領域を示し、「0」がゼロベクトル出力領域ではないことを示す。
先の図15のステップS130においてゼロベクトル出力領域でないと判断される場合、ステップS132に移行する。ステップS132においては、減算値ΔIの存在領域が2回変化したことと、減算値ΔIが許容領域外で増加していることとの論理和条件が成立するか否かを判断する。この論理和条件が、先の図14に示した遷移条件Tr1である。ここで、前者の条件は、第2スイッチングベクトルSv2への切り替え条件として、先の図3に示したスイッチングパターンとって理想的なものである。一方、後者は、減算値ΔIが、先の図3に示したパターンにとって想定外の挙動を示した場合について、第2スイッチングベクトルSv2への切り替えタイミングを定めるためのものである。すなわち、減算値ΔIが許容領域外であって且つ増加している場合、現在のスイッチング状態が減算値ΔIを許容領域内に制御するうえで適切な値でないと考えられることから、この場合には第2スイッチングベクトルSv2に切り替えることとした。ステップS132において肯定判断される場合、遷移条件Tr1が成立することから、ステップS134において、状態Bに遷移し、インバータIVの操作状態を第2スイッチングベクトルSv2とする。なお、上述したようにこの第2スイッチングベクトルSv2は、状態Aの遷移時等において第2スイッチングベクトル選択部84が出力しているベクトルであって、状態Bへの遷移直前に第2スイッチングベクトル選択部84が出力するベクトルとは一般には相違すると考えられる。
一方、上記ステップS130において減算値ΔIがゼロベクトル出力領域内にあると判断される場合、ステップS136において減算値ΔIの存在領域が2回変化したか否かを判断する。そして2回変化したと判断される場合には、ステップS138において、減算値ΔIが許容範囲外で増加することと、減算値ΔIがゼロである点を通り変化方向ベクトルVcに平行な直線を減算値ΔIが横切ることとの論理和条件が成立するか否かを判断する。この論理和条件が、先の図14に示す遷移条件Tr4である。すなわち、ゼロベクトル出力領域において減算値ΔIが許容領域外にあって且つ増加する場合、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとすることで、減算値ΔIは一旦許容領域内に入り且つ、許容領域内に比較的長期にわたって留まると考えられる。このため、この場合には、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとすることが適切である。また、減算値ΔIが上記直線を横切る際にインバータIVの操作状態をゼロベクトルとすると、減算値ΔIは、直線に沿って変化するため、ゼロベクトルとした状態で減算値ΔIを許容領域内に比較的長期にわたって留めることができると考えられる。しかも、減算値ΔIが許容領域外に出る際には、先の図14に示した遷移条件Tr3が成立すると考えられる。このため、この場合にも、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとすることが適切である。以上から、ステップ138において肯定判断される場合、ステップS140に移行し、状態Cへと遷移させ、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとする。
これに対し、ステップS132,S136、S138において否定判断される場合、ステップS142において、状態Aを維持する。なお、ステップS134、S140,S142の処理が完了する場合、この一連の処理を一旦終了する。
図17は、状態B時の処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS150において、減算値ΔIがゼロである点を通って且つ変化方向ベクトルVcに平行な直線を減算値ΔIが横切るか否かを判断する。そして、ステップS150において否定判断される場合には、ステップS152において、減算値ΔIが許容領域外で増加するか否かを判断する。そして許容領域外で増加すると判断される場合、ステップS154において減算値ΔIがゼロベクトル出力領域にあるか否かを判断する。この処理は、先の図15のステップS130と同様にして行うことができる。このステップS154において肯定判断されるとの条件と、上記ステップS150において肯定判断されるとの条件との論理和条件が、先の図14に示した遷移条件Tr2である。この論理和条件の成立時にインバータIVの操作状態をゼロベクトルとすることが適切であることの理由については、先の図15のステップS138の記載と同一である。そして、上記論理和条件が成立する場合、ステップS156において状態Cに遷移し、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとする。
一方、上記ステップS154にて否定判断される場合、ステップS158において状態Dに遷移し、インバータIVの操作状態を第1スイッチングベクトル選択部80の出力する最新の第1スイッチングベクトルSv1とする。ここで、ステップS154において否定判断されるとの条件が、先の図14に示す遷移条件Tr5である。これは、減算値ΔIが、先の図3に示した定常時の制御にとって想定外の挙動を示しているか否かを判断する条件である。そして、想定外の挙動を示す場合には、インバータIVの操作状態を、減算値ΔIに最近接する非ゼロベクトルとすることで減算値ΔIを許容領域内に制御する。この場合のインバータIVの操作状態は、周知のヒステリシスコンパレータによる瞬時電流値制御による操作状態と一致する。
これに対し、上記ステップS152において否定判断される場合、ステップS160において状態Bを維持する。なお、上記ステップS156,S158,S160の処理が完了する場合、この一連の処理を一旦終了する。
図18に、状態C時の処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS170において、減算値ΔIが許容領域外で増加しているか否かを判断する。そして、ステップS170において肯定判断される場合、ステップS172において第1スイッチングベクトルが変化方向ベクトルVcを含む領域の境界を区画するか否かを判断する。この処理は、第2スイッチングベクトル選択部84の出力が「0」でないか否かに基づき行われる。このステップS172において肯定判断されるとの条件が、先の図14に示す遷移条件Tr3である。この条件が成立する場合、ステップS174において状態Aに遷移し、第1スイッチングベクトルSv1を出力する。
これに対し、上記ステップS172において否定判断される場合、ステップS176において状態Dに遷移し、インバータIVの操作状態を第1スイッチングベクトル選択部80の出力する最新の第1スイッチングベクトルSv1とする。ここで、ステップS172において否定判断されるとの条件が、先の図14に示す遷移条件Tr6である。この遷移条件Tr6及び状態Dについては、先の図17のステップS154において否定判断される場合についての説明と同一である。
また、上記ステップS170において否定判断される場合、ステップS178において状態Cを維持する。なお、ステップS174,S176,S178の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
図19に、状態D時の処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS180において、減算値ΔIがゼロである点を通り変化方向ベクトルVcに平行な直線を減算値ΔIが横切るか否かを判断する。そして、ステップS180において否定判断される場合、ステップS182において減算値ΔIが許容領域外であって且つ増加しているか否かを判断する。そしてステップS182において肯定判断される場合、ステップS184においてゼロベクトル出力領域であるか否かを判断する。この処理は、先の図15のステップS130に示した処理と同一である。
上記ステップS180において肯定判断されるとの条件と、上記ステップS184において肯定判断されるとの条件との論理和条件が、先の図14に示した遷移条件Tr7である。なお、この条件が成立する場合にゼロベクトルを出力するのが適切な理由については、先の図15のステップS138の説明における記載と同一である。この条件が成立する場合、ステップS186において状態Cに遷移し、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとする。すなわち、過渡時の状態Dの処理によってインバータIVの操作状態をゼロベクトルとすることが適切な状況となる場合にゼロベクトルとすることで、ゼロベクトル期間を確保するとともに、変化方向ベクトルVcを更新する機会を確保する。
一方、上記ステップS184において否定判断される場合、ステップS188おいて第1スイッチングベクトルSv1が変化方向ベクトルVcを含む領域の境界であるか否かを判断する。そして、ステップS188において肯定判断される場合には、ステップS190において状態Aに遷移し、インバータIVの操作状態を第1スイッチングベクトルSv1とする。このステップS188において肯定判断されるとの条件が、先の図14に示す遷移条件Tr8である。これに対し、上記ステップS188において否定判断される場合には、ステップS192において状態Dを維持して且つ、インバータIVの操作状態を最新の第1スイッチングベクトルSv1に更新する。このステップS188において否定判断されるとの条件が、先の図14に示す遷移条件Tr9である。
また、上記ステップS182において否定判断される場合には、ステップS194において状態Dを維持し、インバータIVの操作状態を更新しない。なお、上記ステップS186、S190,S192,S194の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
以上説明した処理によれば、定常時においては、先の図3に示したスイッチングパターンに従ってスイッチングがなされるために、ゼロベクトル期間を極力拡大することができる。そして、上記スイッチングパターンから外れる過渡時においても、迅速に先の図3に示したパターンへと復帰させることができる。図20に、過去のゼロベクトル期間から予測した変化方向ベクトルVcと現在の変化方向ベクトルとの差が大きくなる過渡時における処理を例示する。
ここで、減算値ΔIが点Aにあるとすると、第1スイッチングベクトルSv1は、電圧ベクトルV5であり、変化方向ベクトルVcを含む領域の境界を区画する。このため、状態Aとなる。この場合、インバータIVの操作状態が電圧ベクトルV5とされることで、減算値ΔIは、図中破線にて示す真の変化方向ベクトルから電圧ベクトルV5を引いたベクトルの方向に変化する。
減算値ΔIが点Bに変化すると、減算値ΔIの存在領域が2回変化することで上記遷移条件Tr1(図15のステップS132:YES)が成立し、インバータIVの操作状態が第2スイッチングベクトルSv2とされる。これにより、減算値ΔIは、真の変化方向ベクトルから電圧ベクトルV4を引いたベクトルの方向に変化する。
そして、減算値ΔIが点Cとなると、減算値ΔIは、変化方向ベクトルVcを含む直線を横切ることなく許容領域から外れてしまう。そして、この点Cの存在する領域R2は、変化方向ベクトルVcの方向とは逆方向の領域(ゼロベクトル出力領域)でないため、上記遷移条件Tr5(図17、ステップS154:NO)によって状態Dに遷移する。これにより、減算値ΔIは、真の変化方向ベクトルから電圧ベクトルV2を引いたベクトルの方向に変化する。
点Dにおいて、上記遷移条件Tr9(図19、ステップS188:NO)により状態DにおいてインバータIVの操作状態が電圧ベクトルV6に更新されるため、減算値ΔIは、真の変化方向ベクトルから電圧ベクトルV6を引いたベクトルの方向に変化する。
点Eにおいて、減算値ΔIは、変化方向ベクトルVcを横切るため、上記遷移条件Tr7(図19、ステップS180:YES)によって、状態Cに遷移する。これにより、インバータIVの操作状態がゼロベクトルとされる。これにより、減算値ΔIは真の変化方向ベクトルの方向に変化する。そして、これにより変化方向ベクトルVcを、図中破線にて示した真の変化方向ベクトルに更新することができる。
そして、減算値ΔIが許容領域の外に出る点Fにおいて、第1スイッチングベクトルSv1が更新された変化方向ベクトルVcを含む領域を区画する。このため、上記遷移条件Tr3(図18:ステップS172:YES)によって状態Aに遷移する。これにより、これ以降、先の図3に示した態様にてインバータIVがスイッチング操作される。
図21に、本実施形態にかかる電流制御のシミュレーション結果を示す。図21では、本実施形態による電流制御と周知の三角波PWM処理とのそれぞれについてのゼロベクトル期間の割合を示す。図示されるように、どの運転領域においても三角波PWM処理と略同じ割合でゼロベクトルを使用することができている。このため、高調波についても三角波PWM処理と同程度に抑制できていると考えられる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)減算値ΔIがゼロである点を中心として電圧ベクトルにて区画される領域のうちの変化方向ベクトルVcとは逆方向にある領域に減算値ΔIが存在する場合、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとした。これにより、ゼロベクトルとした際に減算値ΔIが許容範囲内に存在する期間を長くすることができる。更に、ゼロベクトル期間において、指令電流Icに対して実際に流れる電流Iが大きい側と小さい側との双方の値をとるために、トルクの制御精度を向上させることもできる。
(2)減算値ΔIが変化方向ベクトルVcを含む直線を横切る場合、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとした。これにより、ゼロベクトル期間を簡易且つ適切に拡大することができる。
(3)減算値ΔIがゼロである点を中心として電圧ベクトルにて区画される領域のうちの変化方向ベクトルVcとは逆方向にある領域へと減算値ΔIを制御する手段を備えた。これにより、逆方向にある領域へと減算値ΔIを制御した後インバータIVの操作状態をゼロベクトルとすることで、ゼロベクトルとすることのできる期間を好適に拡大することができる。
(4)減算値ΔIに最近接する電圧ベクトルが変化方向ベクトルVcを含む領域の境界となる場合、この最近接する電圧ベクトルを第1スイッチングベクトルSv1として且つ、変化方向ベクトルVcを含む領域の境界となる電圧ベクトルのうち第1スイッチングベクトルSv1でないものを第2スイッチングベクトルSv2とし、これら第1スイッチングベクトルSv1及び第2スイッチングベクトルSv2にてインバータIVを操作した。これにより、上記逆方向にある領域側へと減算値ΔIを制御することができる。
(5)第1スイッチングベクトルSv1から第2スイッチングベクトルSv2への切り替えを、減算値ΔIが変化方向ベクトルVcとは逆方向の領域に存在せずして且つ減算値ΔIの存在する領域が2回変化する場合に行った。これにより、第2スイッチングベクトルSv2によって、減算値ΔIを上記逆方向にある領域側へと適切に制御することができる。
(6)第1スイッチングベクトルSv1から第2スイッチングベクトルSv2への切り替えを、減算値ΔIが変化方向ベクトルVcとは逆方向の領域に存在せずして且つ減算値ΔIが許容領域外で増加する場合に行った。これにより、先の図3に示すスイッチングパターンにとって想定外の事態が生じた場合に操作状態を改善することができる。
(7)インバータIVの操作状態が第2スイッチングベクトルSv2とされている状況下、減算値ΔIが変化方向ベクトルVcを含む直線を横切る場合、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとした。これにより、ゼロベクトル期間を簡易且つ適切に拡大することができる。
(8)インバータIVの操作状態が第2スイッチングベクトルSv2とされている状況下、変化方向ベクトルVcとは逆方向にある領域に減算値ΔIが存在して且つ減算値ΔIが許容領域外にある場合、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとした。これにより、減算値ΔIが許容領域内にある際にゼロベクトルとする場合と比較して、ゼロベクトル期間を拡大することができる。
(9)インバータIVの操作状態が第2スイッチングベクトルSv2とされている状況下、変化方向ベクトルVcとは逆方向にある領域以外の領域に減算値ΔIが存在して且つ減算値ΔIが許容領域外で増加する場合、インバータIVの操作状態を減算値に最近接する電圧ベクトルとした(状態D)。これにより、減算値ΔIが、先の図3に示したパターンにとって想定外の挙動を示したとしても、減算値ΔIを許容領域内へと制御することが可能となる。
(10)インバータIVの操作状態がゼロベクトルとされている状況下、減算値ΔIが許容領域外で増加して且つ、減算値ΔIに最近接する電圧ベクトルが減算値ΔIの変化方向を含む領域の境界とならない場合、インバータIVの操作状態を減算値ΔIに最近接する電圧ベクトルとした(状態D)。これにより、減算値ΔIが、先の図3に示したパターンにとって想定外の挙動をとったとしても、減算値ΔIを許容領域内へと制御することが可能となる。
(11)状態Dにおいて、減算値ΔIに最近接する電圧ベクトルが変化方向ベクトルVcを含む領域の境界とならない場合であって、減算値ΔIがゼロベクトル出力領域に存在せずして且つ減算値ΔIが許容領域外で増加するとき、インバータIVの操作状態を現在の減算値ΔIに最近接する電圧ベクトルに更新した。これにより、現在の操作状態が減算値ΔIを許容領域内に制御するうえで適切なものでなくなる場合に適切に対処することができ、ひいては、減算値ΔIを許容領域内に制御することができる。
(12)状態Dにおいて、変化方向ベクトルを含む直線を減算値ΔIが横切る場合、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとした。これにより、インバータIVの操作状態を適切なタイミングでゼロベクトルとすることができる。
(13)状態Dにおいて、変化方向ベクトルVcとは逆方向にある領域に減算値ΔIが存在して且つ減算値ΔIが増加する場合、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとした。これにより、インバータIVの操作状態を適切なタイミングでゼロベクトルとすることができる。
(14)インバータIVの操作状態が第1スイッチングベクトルSv1とされている状況下、減算値ΔIが変化方向ベクトルVcとは逆方向にある領域に存在する場合であって且つ、変化方向ベクトルVcを含む直線を減算値ΔIが横切るとき、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとした。これにより、減算値ΔIが上記変化方向ベクトル側の領域において許容範囲外となるまでの時間を長くすることができる。
(15)インバータIVの操作状態が第1スイッチングベクトルSv1とされている状況下、減算値ΔIが変化方向ベクトルVcとは逆方向にある領域に存在する場合であって且つ、減算値ΔIが許容領域外で増加するとき、インバータIVの操作状態をゼロベクトルとした。これにより、減算値ΔIが変化方向ベクトルVc側の領域において許容範囲外となるまでの時間を長くすることができる。
(16)減算値ΔIのベクトル成分の符号に基づき減算値ΔIに最近接する可能性のある電圧ベクトルを2つに絞込み、絞り込まれた2つの電圧ベクトルのそれぞれと減算値ΔIのベクトルとの内積値同士の大小関係に基づき第1スイッチングベクトルSv1を特定した。これにより、比較的簡易な処理によって第1スイッチングベクトルSv1を特定することができる。特に、初めに電圧ベクトルを2つに絞り込むことで、減算値ΔIと各電圧ベクトルとの内積値の大小を直接比較する処理を行う場合と比較して、処理を簡素化することができる。
(17)減算値ΔIのベクトルの成分の符号から減算値ΔIの存在する可能性のある領域を2つに絞り込み、絞り込まれた2つの領域を区画する電圧ベクトルであって且つこれら2つの領域によって共有されない電圧ベクトルのそれぞれと減算値ΔIのベクトルとの内積値同士の大小関係に基づき、減算値ΔIの存在領域を判断した。これにより、比較的簡易な処理によって減算値ΔIの存在領域を判断することができる。
(18)変化方向ベクトルVcの成分の符号から減算値ΔIの存在する可能性のある領域を2つに絞り込み、絞り込まれた2つの領域を区画する電圧ベクトルであって且つこれら2つの領域によって共有されない電圧ベクトルのそれぞれと変化方向ベクトルVcとの内積値同士の大小関係に基づき、変化方向ベクトルVcの存在領域を判断した。これにより、比較的簡易な処理によって変化方向ベクトルVcの存在領域を判断することができる。
(19)ゼロベクトル期間における減算値Δの変化方向の検出値に基づき、次回以降のゼロベクトル期間における変化方向ベクトルVcを予測した。これにより、変化方向ベクトルVcを簡易且つ適切に予測することができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、上記第1スイッチングベクトル選択部80の行う第1スイッチングベクトルSv1の選択にかかる処理(図7)及び減算値ΔIの存在領域を特定する処理(図8)、並びに上記変化方向ベクトル算出部82の行う変化方向ベクトルVcの存在領域を特定する処理(図11)を、図22に示す単一のロジック関数で共有する。すなわち、これらの処理は、成分の符号を調べるベクトル、内積演算対象となるベクトル、及び出力が相違するのみであってロジック構成としては同一となる。このため、ソフトウェアにて実装する際、これらのパラメータを引数として、上記3つの処理のそれぞれに応じてこれら引数を切り替えて図22に示すロジック関数に渡すことで、図22に示す単一のロジック関数によって3つの処理を行うことができる。
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記各効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(20)上記第1スイッチングベクトル選択部80の行う第1スイッチングベクトルSv1の選択にかかる処理(図7)及び減算値ΔIの存在領域を特定する処理(図8)、並びに上記変化方向ベクトル算出部82の行う変化方向ベクトルVcの存在領域を特定する処理(図11)を、図22に示す単一のロジック関数で共有した。これにより、処理設計を簡素化することができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記各実施形態では、定常状態における状態Aへの遷移条件Tr3を、第1スイッチングベクトルSv1が変化方向ベクトルVcを含む領域の境界となる場合等としたが、これに限らない。例えば、こうした条件に更に、減算値Δが変化方向ベクトルVcを含む領域と同一の領域内にある場合との条件を加えてもよい。
・第2スイッチングベクトルSv2を出力する状態Bからゼロベクトルを出力する状態Cへの遷移条件Tr2としては、上記実施形態で例示したものに限らない。例えば、変化方向ベクトルVcを含む直線を減算値Δが横切るとの条件に代えて、減算値Δがゼロベクトル出力領域に入ったとの条件を用いてもよい。
・上記各実施形態では、第2スイッチングベクトルSv2を出力する状態Bからゼロベクトルを出力する状態Cへの遷移条件Tr2として、減算値Δが許容領域外で増加するとの条件を用いたが、これに代えて、減算値Δが許容領域外にあるとの条件としてもよい。換言すれば、許容領域外にあるならその増減を問題としなくてもよい。
・上記各実施形態では、第1スイッチングベクトルSv1を出力する状態Aからゼロベクトルを出力する状態Cへの遷移条件Tr4として、「減算値Δの存在領域が2回変化する」との条件(図15、ステップS136)を設けたがこれを設けなくてもよい。
・回転機を実際に流れる電流とその指令値との差と予測される変化方向とを入力として、変化方向とは逆方向にある領域へと上記差を制御する逆方向制御手段としては、上記実施形態で例示したものに限らない。例えば、上記実施形態における状態Aにある際に、図23に例示するスイッチングパターンに従って電圧ベクトルを切り替えるようにしてもよい。ここでは、第1スイッチングベクトルSv1、第2スイッチングベクトルSv2、第1スイッチングベクトルSv1、ゼロベクトルの時系列パターンに従ってスイッチングがなされている。この場合、電圧ベクトルの各切り替えを、1相ずつのスイッチングの切り替えによって行うことができるため、サージを低減することができる。
・また、逆方向制御手段としては、特定のスイッチングパターンに従って上記制御を行うものに限らず、特定のスイッチングパターンを有することなく減算値ベクトルを変化方向ベクトルの逆方向へとフィードバック制御するフィードバック制御手段であってもよい。この場合であっても、減算値Δが変化方向ベクトルVcとは逆方向にある場合や、減算値Δがゼロである点を始点として変化方向ベクトルVcの方向及び逆方向に伸びる直線を減算値Δが横切る場合に、ゼロベクトルとするゼロベクトル出力手段を備えることで、ゼロベクトル期間を好適に拡大することができる。
・更に、上記逆方向制御手段を備えるものにも限らない。例えば通常の瞬時電流値制御を基本とするものであっても、減算値Δが変化方向ベクトルVcとは逆方向にある場合や、減算値Δがゼロである点を始点として変化方向ベクトルVcの方向及び逆方向に伸びる直線を減算値Δが横切る場合に、ゼロベクトルとするゼロベクトル出力手段を備えることで、ゼロベクトル期間を拡大することはできる。
・上記実施形態では、減算値Δを用いてスイッチング制御のための演算を行ったがこれに限らない。例えば実電流ベクトルI(iα、iβ)から指令電流ベクトル(iαc、iβc)を減算することで実電流の誤差を算出し、これを用いてもよい。ただしこの場合、第1スイッチングベクトルSv1を、誤差に最も近接する電圧ベクトルとは逆方向のベクトルとし、第2スイッチングベクトルSv2を、誤差に2番目に近接する電圧ベクトルとは逆方向のベクトルとする。
・電力変換回路の操作状態がゼロベクトルである場合についての回転機を実際に流れる電流とその指令値との差の変化方向を予測する予測手段としては、上記各実施形態で例示したものに限らない。例えば、上記の式に基づき、指令電流とモータ10のインダクタンスLと誘起電圧とに基づき変化方向を推定算出してもよい。この際、上記の式(c5)において「R・ΔI」の項を無視することで、変化方向ベクトルVcを指令電圧ベクトルとしてもよい。また、低回転速度制御時には、上記の式において誘起電圧の項が支配的となることに鑑み、低回転速度制御時には変化方向を誘起電圧のみに基づき推定してもよい。ただし、変化方向ベクトルVcを、広回転速度領域において適切なものとするためには、変化方向ベクトルVcに指令電流に起因するベクトル成分を含ませることが望ましい。
・許容領域としては、上記αβ座標上で誤差がゼロとなる点を中心とする円にて定義されるものに限らない。例えば3相座標系における実電流と指令電流とについての各相の誤差を規定値内とすべく、αβ座標上で誤差がゼロとなる点を中心とする6角形状の領域としてもよい。
・回転機としては、モータ10に限らず、例えば、発電機であってもよい。
第1の実施形態にかかるシステム構成図。 電圧ベクトルを説明するための図。 上記実施形態における電流制御の原理を説明する図。 同実施形態にかかる電流制御の処理に関するブロック図。 同実施形態にかかる電流指令値算出部の処理を示すブロック図。 同実施形態にかかる減算値ベクトルを例示する図。 同実施形態にかかる第1スイッチングベクトルの設定処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかる減算値の存在領域の特定処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかる変化方向ベクトルの算出処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかる変化方向ベクトルを例示する図。 同実施形態にかかる変化方向ベクトルの存在領域を特定する処理手順を示す流れ図。 同実施形態にかかる第2スイッチングベクトルの設定手法を示す図。 同実施形態にかかる減算値の状態算出の処理手順を示す流れ図。 同実施形態にかかるスイッチング状態を模式的に示す図。 同実施形態にかかるスイッチング状態の切り替え処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかるゼロベクトル出力領域の設定を示す図。 同実施形態にかかるスイッチング状態の切り替え処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかるスイッチング状態の切り替え処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかるスイッチング状態の切り替え処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかる過渡時のスイッチング制御の態様を示す図。 同実施形態にかかるゼロベクトル期間のシミュレーション結果を示す図。 第2の実施形態にかかる処理プログラムを示す流れ図。 上記各実施形態の変形例にかかるスイッチング制御態様を示す図。
符号の説明
10…モータ、12〜22…スイッチング素子、50…制御装置、80…第1スイッチングベクトル選択部、82…変化方向ベクトル算出部、84…第2スイッチングベクトル選択部、86…誤差状態監視部、88…スイッチングベクトル選択部、IV…インバータ。

Claims (19)

  1. 電力変換回路のスイッチング素子を操作することで回転機を実際に流れる電流とその指令値との差を許容領域内に制御する回転機の制御装置において、
    前記電力変換回路の操作状態がゼロベクトルである場合の前記差の変化方向を予測する予測手段と、
    前記差がゼロである点から前記変化方向及びその逆方向に伸びる直線を前記差が横切る場合、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとするゼロベクトル出力手段とを備えることを特徴とする回転機の制御装置。
  2. 前記予測される変化方向及び前記差を入力とし、前記差がゼロである点を中心として電圧ベクトルにて区画される領域のうちの前記ゼロである点に対して前記変化方向とは逆方向にある領域へと前記差を制御する逆方向制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
  3. 前記逆方向制御手段は、前記差が前記許容領域外に存在して且つ、前記操作状態を表現する電圧ベクトルのうちその始点を前記差がゼロとなる点とした場合に実際に流れる電流をその指令値から引いた減算値に最近接するものが、前記区画される領域のうち前記差がゼロとなる点を始点とした前記変化方向のベクトルを含む領域の境界となる場合、前記最近接する電圧ベクトルを第1スイッチングベクトルとして且つ、前記変化方向のベクトルを含む領域の境界となる電圧ベクトルのうち前記第1スイッチングベクトルでないものを第2スイッチングベクトルとし、これら第1スイッチングベクトル及び第2スイッチングベクトルにて前記電力変換回路を順次操作する手段であることを特徴とする請求項2記載の回転機の制御装置。
  4. 前記第1スイッチングベクトルから前記第2スイッチングベクトルへの切り替えを、前記差が前記区画される領域のうちの前記変化方向とは逆方向の領域に存在せずして且つ前記区画される領域のうちの前記差の存在する領域が2回変化する場合に行うことを特徴とする請求項3記載の回転機の制御装置。
  5. 前記第1スイッチングベクトルから前記第2スイッチングベクトルへの切り替えを、前記差が前記区画される領域のうちの前記変化方向とは逆方向の領域に存在せずして且つ前記差が前記許容領域外で増加する場合に行うことを特徴とする請求項3又は4記載の回転機の制御装置。
  6. 前記ゼロベクトル出力手段は、前記電力変換回路の操作状態が前記逆方向制御手段によって第2スイッチングベクトルとされている状況下、前記ゼロである点から前記変化方向及びその逆方向に伸びる直線を前記差が横切る場合、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  7. 前記ゼロベクトル出力手段は、前記電力変換回路が前記逆方向制御手段によって第2スイッチングベクトルに操作されている状況下、前記区画される領域のうちの前記ゼロである点に対して前記変化方向とは逆方向にある領域に前記差が存在して且つ前記差が許容領域外にある場合、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  8. 前記電力変換回路の操作状態が前記逆方向制御手段によって第2スイッチングベクトルとされている状況下、前記区画される領域のうちの前記ゼロである点に対して前記変化方向とは逆方向にある領域以外の領域に前記差が存在して且つ前記差が前記許容領域外で増加する場合、前記電力変換回路の操作状態を前記減算値に最近接する電圧ベクトルとする過渡時出力手段を更に備えることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  9. 前記電力変換回路の操作状態が前記逆方向制御手段によってゼロベクトルとされている状況下、前記差が前記許容領域外で増加して且つ、前記減算値に最近接する電圧ベクトルが前記変化方向を含む領域の境界とならない場合、前記電力変換回路の操作状態を前記減算値に最近接する電圧ベクトルとする過渡時出力手段を更に備えることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  10. 前記過渡時出力手段は、該過渡時出力手段による前記電力変換回路の操作中において、前記減算値に最近接する電圧ベクトルが前記変化方向のベクトルを含む領域の境界とならない場合であって、前記区画される領域のうちの前記ゼロである点に対して前記変化方向とは逆方向にある領域に前記差が存在せずして且つ該差が前記許容領域外で増加するとき、前記電力変換回路の操作状態を現在の前記減算値に最近接する電圧ベクトルに更新することを特徴とする請求項8又は9記載の回転機の制御装置。
  11. 前記ゼロベクトル出力手段は、前記電力変換回路が前記過渡時出力手段によって操作されている状況下、前記ゼロである点から前記変化方向及びその逆方向に伸びる直線を前記差が横切る場合、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  12. 前記ゼロベクトル出力手段は、前記電力変換回路が前記過渡時出力手段によって操作されている状況下、前記区画される領域のうちの前記ゼロである点に対して前記変化方向とは逆方向にある領域に前記差が存在して且つ前記差が増加する場合、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  13. 前記ゼロベクトル出力手段は、前記電力変換回路の操作状態が前記逆方向制御手段によって前記第1スイッチングベクトルとされている状況下、前記差が前記変化方向とは逆方向にある領域に存在する場合であって且つ、前記ゼロである点から前記予測される変化方向及びその逆方向に伸びる直線を前記差が横切るとき、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることを特徴とする請求項3〜12のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  14. 前記ゼロベクトル出力手段は、前記電力変換回路の操作状態が前記逆方向制御手段によって前記第1スイッチングベクトルとされている状況下、前記差が前記変化方向とは逆方向にある領域に存在する場合であって且つ、前記差が前記許容領域外で増加するとき、前記電力変換回路の操作状態をゼロベクトルとすることを特徴とする請求項3〜13のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  15. 前記逆方向制御手段は、前記領域を区画する電圧ベクトルの任意の2つのそれぞれ及び前記減算値を成分とするベクトルの各内積値同士の大小関係に基づき、前記第1スイッチングベクトルを特定する特定手段を備えることを特徴とする請求項3〜14のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  16. 前記領域を区画する電圧ベクトルの任意の2つのそれぞれ及び前記減算値を成分とするベクトルの各内積値同士の大小関係に基づき、前記減算値の存在領域を判断する減算値存在領域判断手段を更に備えることを特徴とする請求項3〜15のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  17. 前記領域を区画する電圧ベクトルの任意の2つのそれぞれ及び前記変化方向を示すベクトルの各内積値同士の大小関係に基づき、前記差がゼロである点を始点とする前記変化方向のベクトルの存在領域を判断する変化方向領域判断手段を更に備えることを特徴とする請求項3〜16のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  18. 前記領域を区画する電圧ベクトルの任意の2つのそれぞれ及び前記減算値を成分とするベクトルの各内積値同士の大小関係と、前記減算値のベクトル成分の符号とに基づき、前記第1スイッチングベクトルを特定する特定手段と、
    前記領域を区画する電圧ベクトルの任意の2つのそれぞれ及び前記減算値のベクトルの各内積値同士の大小関係と、前記減算値のベクトル成分の符号とに基づき、前記減算値の存在領域を判断する減算値存在領域判断手段と、
    前記領域を区画する電圧ベクトルの任意の2つのそれぞれ及び前記変化方向を示すベクトルの各内積値同士の大小関係と、前記変化方向を示すベクトルの成分の符号とに基づき、前記差がゼロである点を始点とする前記変化方向のベクトルの存在領域を判断する変化方向領域判断手段とを更に備え、
    前記特定手段、前記減算値存在領域判断手段、及び前記変化方向領域判断手段は、共通のロジック関数を用いて且つ、前記符号の判断対象となるベクトルと、前記内積の演算対象となるベクトル、及び出力値を切り替えることで構成されてなることを特徴とする請求項3〜14のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  19. 前記予測手段は、前記ゼロベクトル期間における前記差の変化方向の検出値に基づき、次回以降のゼロベクトル期間における前記変化方向を予測することを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
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