JP5891964B2 - 回転機の制御装置 - Google Patents

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本発明は、回転機の制御量を制御すべく、互いに相違する電圧値を有する各別の電圧印加手段のそれぞれおよび前記回転機の各端子間を開閉するスイッチング素子が備えられた直流交流変換回路を操作する回転機の制御装置に関する。
この種の制御装置としては、たとえば下記特許文献1に見られるように、規定周期毎に、インバータのスイッチングモードを仮設定し、仮設定に応じて回転機を流れる電流を予測し、その予測される電流と指令値との差が小さくなるようにスイッチングモードを更新する、いわゆるモデル予測制御を行なうものも提案されている。
特開2008−228419号公報
ところで、インバータの出力線間電圧の基本波振幅がインバータの入力電圧と比較して十分に小さい低変調率領域においては、スイッチングモードが無効電圧ベクトルである場合と比較して有効電圧ベクトルである場合に、回転機を流れる電流の変化速度が過度に大きくなる。このため、無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードから有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードに切り替えられることで、回転機を流れる電流が急激に変化する。そして、これにより回転機を流れる電流と指令値との差が大きくなり、この差を解消するために、無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードが採用されると、そのスイッチングモードの採用時間が過度に長くなる。このため、回転機を流れる電流のリップルに応じて生じるノイズの周波数が低下する。そしてこれにより、リップルに応じたノイズが可聴周波数帯域に入る場合には騒音の問題が生じる。
こうした問題を解消する上では、スイッチングモードの更新周期を短縮することが有効である。ただし、モデル予測制御による有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードの採用期間が三角波PWM処理において可能な最小値となるように更新周期を短縮すると、演算負荷が過度に大きくなる。これは、更新周期毎に電流の予測演算を1度行なう必要があるためである。
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、回転機の制御量を制御すべく、互いに相違する電圧値を有する各別の電圧印加手段のそれぞれおよび前記回転機の各端子間を開閉するスイッチング素子が備えられた直流交流変換回路を操作する新たな回転機の制御装置について、これを提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
第1の発明は、回転機(10)の制御量を制御すべく、互いに相違する電圧値を有する各別の電圧印加手段のそれぞれおよび前記回転機の各端子間を開閉するスイッチング素子(S¥#)が備えられた直流交流変換回路(INV)を操作する操作手段(20)を備え、前記制御量は、前記回転機を流れる電流、前記回転機のトルク、および前記回転機の磁束の少なくとも1つを有し、前記操作手段は、前記スイッチング素子のそれぞれがオンであるかオフであるかを表現するスイッチングモードを、規定周期に1度、変更可能とするものであり、前記スイッチングモードの変更がなされる場合、前記規定周期の始点および終点の間で前記変更後のスイッチングモードの採用が開始されるタイミングを可変とすることで、前記変更がなされるタイミングに対応する前記規定周期において、変更後のスイッチングモードが採用される時間の占める割合を可変とする採用時間可変手段を備えることを特徴とする。
スイッチングモードを規定周期に一度変更可能とする場合、スイッチングモードを定めるための演算を規定周期毎に行なうこととなる傾向がある。一方、スイッチングモードを規定周期に一度変更可能とする場合、変更タイミングを一律規定したのでは、変更タイミングを、規定周期の精度でしか設定できないこととなり、制御量のオーバーシュート等を招くおそれがある。この点、上記発明では、採用時間可変手段を備えることで、演算周期を規定周期としつつも、変更タイミングの設定の自由度を向上させることができ、ひいては制御量のオーバーシュート等を好適に抑制することができる。
なお、本発明にかかる以下の代表的な実施形態に関する概念の拡張については、代表的な実施形態の後の「その他の実施形態」の欄に記載してある。
第1の実施形態にかかるシステム構成図。 同実施形態にかかるスイッチングモードを示す図。 同実施形態にかかるモデル予測制御の処理手順を示す流れ図。 同実施形態にかかるスイッチングモードの仮設定候補を示す図。 同実施形態の効果を示すタイムチャート。 第2の実施形態にかかるモデル予測制御の処理手順を示す流れ図。 第3の実施形態にかかるシステム構成図。
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる回転機の制御装置を、車載主機としての回転機の制御装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかるモータジェネレータの制御システムの全体構成を示す。モータジェネレータ10は、車載主機であり、その回転子が駆動輪に機械的に連結される。また、モータジェネレータ10は、3相の永久磁石同期モータである。詳しくは、モータジェネレータ10は、表面磁石同期モータ(SPMSM)である。
モータジェネレータ10は、インバータINVを介して高電圧バッテリ12に接続されている。インバータINVは、スイッチング素子S¥p,S¥n(¥=u,v,w)の直列接続体を3組備えており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子S¥#(¥=u,v,w;#=p,n)として、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードD¥#が逆並列に接続されている。
本実施形態では、モータジェネレータ10やインバータINVの状態を検出する検出手段として、以下のものを備えている。まずモータジェネレータ10の回転角度(電気角θ)を検出する回転角度センサ14を備えている。また、モータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwを検出する電流センサ16を備えている。さらに、インバータINVの入力電圧(電源電圧VDC)を検出する電圧センサ18を備えている。
上記各種センサの検出値は、制御装置20に取り込まれる。制御装置20では、これら各種センサの検出値に基づき、インバータINVを操作する操作信号を生成して出力する。ここで、インバータINVのスイッチング素子S¥#を操作する信号が、操作信号g¥#である。
上記制御装置20は、モータジェネレータ10のトルクをトルク指令値Trq*に制御すべく、インバータINVを操作する。詳しくは、制御装置20は、トルク指令値Trq*を実現するための電流指令値とモータジェネレータ10を流れる電流とが一致するように、インバータINVを操作する。すなわち、本実施形態では、モータジェネレータ10のトルクが最終的な制御量となるものであるが、トルクを制御すべく、モータジェネレータ10を流れる電流を直接の制御量として、これを電流指令値に制御する。特に、本実施形態では、モータジェネレータ10を流れる電流を電流指令値に制御すべく、スイッチングモードを複数通りのそれぞれに仮設定した場合についてのモータジェネレータ10の電流を予測し、インバータINVの実際のスイッチングモードを決定するモデル予測制御を行う。
上記スイッチングモードは、インバータINVを構成するスイッチング素子S¥#のそれぞれがオンであるかオフであるかを示すものであり、図2(a)に示される8通りのスイッチングモード0〜7からなる。例えば、低電位側のスイッチング素子Sun,Svn,Swnの全てがオン状態となるスイッチングモードがスイッチングモード0であり、高電位側のスイッチング素子Sup,Svp,Swpの全てがオン状態となるスイッチングモードがスイッチングモード7である。これらスイッチングモード0,7は、モータジェネレータ10の全相を短絡させるものであり、インバータINVからモータジェネレータ10に印加される電圧がゼロとなるものであるため、インバータINVの出力電圧ベクトルを無効電圧ベクトルとするものである。これに対し、残りの6つのスイッチングモード1〜6は、上側アームおよび下側アームの双方にオン状態となるスイッチング素子が存在する操作パターンによって規定されるものであり、インバータINVの出力電圧ベクトルを有効電圧ベクトルとするものである。
図2(b)に、各スイッチングモード0〜7のそれぞれに対応する電圧ベクトルV0〜V7を示す。電圧ベクトルV0〜V7は、スイッチングモード0〜7のそれぞれにおけるインバータINVの出力電圧ベクトルを示すものである。なお、図示されるように、スイッチングモード1,3,5のそれぞれに対応する電圧ベクトルV1,V3,V5がU相、V相、W相の正側にそれぞれ対応している。
ここで、モデル予測制御について詳述する。
先の図1に示す電流センサ16によって検出された相電流iu,iv,iwは、dq変換部22において、回転座標系の電流id,iqに変換される。また、回転角度センサ14によって検出される回転角度(電気角θ)は、速度算出部24の入力となり、これにより、回転速度(電気角速度ω)が算出される。一方、電流指令値設定部26は、トルク指令値Trq*を入力とし、dq座標系での電流指令値id*,iq*を出力する。これら電流指令値id*,iq*、実電流id,iq、電気角速度ωおよび電気角θは、モデル予測制御部30の入力となる。モデル予測制御部30では、これら入力パラメータに基づき、インバータINVのスイッチングモードを決定し、操作部28に出力する。操作部28では、入力されたスイッチングモードに基づき、上記操作信号g¥#を生成してインバータINVに出力する。
次に、モデル予測制御部30の処理の詳細について説明する。モード設定部31では、先の図2(a)に示したインバータINVのスイッチングモードを仮設定する。この処理は、実際には、スイッチングモードに対応する電圧ベクトルを仮設定する処理となる。dq変換部32では、モード設定部31によって仮設定された電圧ベクトルをdq変換することで、dq座標系の電圧ベクトルVdq=(vd,vq)を算出する。こうした変換を行うべく、モード設定部31において仮設定された電圧ベクトルV0〜V7を、例えば上側アームがオンである場合を「VDC/2」として且つ下側アームがオンである場合を「−VDC/2」とすることで表現すればよい。この場合、例えば、電圧ベクトルV0は、(−VDC/2,−VDC/2,−VDC/2)となり、電圧ベクトルV1は、(VDC/2,−VDC/2,−VDC/2)となる。
予測部33では、電圧ベクトル(vd,vq)と、実電流id,iqと、電気角速度ωとに基づき、インバータINVのスイッチングモードをモード設定部31によって仮設定される状態とした場合の電流id,iqを予測する。この電流の予測は、以下の式(c1),(c2)にて表現されるモデル式に基づき、モード設定部31によって仮設定される複数通りのスイッチングモードのそれぞれについて行われる。
vd=R・id+Ld・(did/dt)−ω・Lq・iq …(c1)
vq=R・iq+Lq・(diq/dt)+ω・Ld・id+ω・φ …(c2)
ここで、抵抗R、逆起電圧定数φ、d軸のインダクタンスLd、q軸のインダクタンスLqを用いた。
一方、モード決定部34では、予測部33によって予測された予測電流ide,iqeと、電流指令値id*,iq*とを入力として、インバータINVのスイッチングモードを決定する。こうして決定されたスイッチングモードに基づき、操作部28では、操作信号g¥#を生成して出力する。
図3に、本実施形態にかかるモデル予測制御の処理手順を示す。この処理は、予め定められた長さを有する時間周期(制御周期Tc)で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS10において、電気角θ(n)、実電流id(n),iq(n)を検出し、前回の制御周期で決定された電圧ベクトルV(n)を出力する。すなわち、インバータINVのスイッチングモードを、前回の制御周期で決定されたスイッチングモード(電圧ベクトルV(n)に対応するスイッチングモード)に更新する。ただし、この更新によってスイッチングモードが変更される場合、実際には、デッドタイムDTが設けられるため、デッドタイムDT期間においては、先の図2(a)に示したスイッチングモードのいずれにも該当しない期間が存在することとなる。
続くステップS12においては、1制御周期先における電流(ide(n+1),iqe(n+1))を予測する。これは、上記ステップS10によって出力された電圧ベクトルV(n)によって、1制御周期先の電流がどうなるかを予測する処理である。これは、上記の式(c1),(c2)を離散化したものを用いて行なうことができる。ここで、上記の式(c1),(c2)の電圧ベクトル(vd,vq)は、基本的には、ステップS10において出力された電圧ベクトルV(n)である。ただし、電圧ベクトルV(n)が電圧ベクトルV(n−1)と相違する場合には、デッドタイムDTが設けられることに起因して、制御周期TcにおけるインバータINVの出力電圧ベクトルが電圧ベクトルV(n)と相違しうる。このため、この場合には、デッドタイム補償を行なう。この処理は、たとえば特願2009−096444号公報に記載されているものとすればよい。
続くステップS14では、次回の制御周期Tcにおけるスイッチングモード(電圧ベクトルV(n+1))を仮設定する。本実施形態では、仮設定されるスイッチングモードを、現在のスイッチングモードからスイッチング状態が切り替えられるモータジェネレータ10の端子数が「1」以下となるものに制限する。詳しくは、現在のスイッチングモードに対応する電圧ベクトルV(n)が有効電圧ベクトルVi(i=1〜6)である場合、仮設定されるスイッチングモードに対応する電圧ベクトルV(n+1)を、電圧ベクトルVi−1、Vi,Vi+1(i:mod 6)とするか、無効電圧ベクトルとする。ただし、無効電圧ベクトルとしては、「V(n)=V2k(k=1〜3)」であるなら、無効電圧ベクトルV7を選択し、「V(n)=V2k−1」であるなら、無効電圧ベクトルV0を選択する。図4(a)に、「V(n)=V1」の場合について、電圧ベクトルV(n+1)として仮設定可能な4つの電圧ベクトルを示した。また、現在のスイッチングモードに対応する電圧ベクトルV(n)が無効電圧ベクトルV0である場合、図4(b)に示すように、仮設定されるスイッチングモードに対応する電圧ベクトルV(n+1)を、奇数の電圧ベクトルV1,V3,V5または無効電圧ベクトルV0とする。さらに、現在のスイッチングモードに対応する電圧ベクトルV(n)が無効電圧ベクトルV7である場合、
図4(c)に示すように、仮設定されるスイッチングモードに対応する電圧ベクトルV(n+1)を、偶数の電圧ベクトルV2,V4,V6または無効電圧ベクトルV7とする。
続くステップS16では、インバータINVの出力電圧の変調率Mが規定比率Mth未満であることと、仮設定された電圧ベクトルV(n+1)が電圧ベクトルV(n)と相違することと、これらの切り替えに伴うデッドタイムDT期間の電圧ベクトル(デッドタイム電圧ベクトルVDT)が無効電圧ベクトルであることとの論理積が真であるか否かを判断する。この処理は、スイッチングモードとして有効電圧ベクトルに対応するものを採用することで、制御量(電流id,iq)のオーバーシュートを招くおそれがある場合、有効電圧ベクトルの採用期間を制限するためのものである。ここで、変調率Mが規定比率Mth未満であることは、上記オーバーシュートが生じると判断するための条件である。これは、変調率が低い領域においては、スイッチングモードが有効電圧ベクトルに対応するものである場合、無効電圧ベクトルに対応するものである場合と比較して、制御量(電流id,iq)の変化速度が大きいことに鑑みたものである。
すなわち、インバータINVの平均的な出力電圧ベクトル(出力線間電圧の基本波成分)は、上記の式(c1)、(c2)から電流の微分値の項を除いた式に、電流id,iqを代入した以下の式(c3)、(c4)にて算出される。
vda=R・id−ω・Lqs・iq …(c3)
vqa=R・iq+ω・Lds・id+ω・φ …(c4)
ここで、スイッチングモードによって定まるインバータINVの出力電圧ベクトル(vd,vq)は、平均電圧ベクトル(vda,vqa)と瞬時電圧ベクトル(vd−vda,vq−vqa)とに分解される。そして、瞬時電圧ベクトル(vd−vda,vq−vqa)と、上記の式(c1)、(c2)の電流の微分の項とが等しいとすることで、下記の式(c5),(c6)を得る。
vd−vda=Ld・(did/dt) …(c5)
vq−vqa=Lq・(diq/dt) …(c6)
上記の式(c5),(c6)によれば、電流id,iqのそれぞれの変化速度の大きさは、瞬時電圧ベクトル(vd−vda,vq−vqa)の対応する成分の大きさに依存することがわかる。ここで、変調率Mが小さい領域では、平均電圧ベクトル(vda,vqa)が小さい。また、電圧ベクトル(vd,vq)が無効電圧ベクトルである場合、それらの各成分はゼロであるため、無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードが採用される場合の瞬時電圧ベクトルは、平均電圧ベクトルとなる。したがって、変調率Mが小さい領域においては、有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードが採用される場合の瞬時電圧ベクトルは、電圧ベクトル(vd,vq)程度のノルムを有する一方、無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードが採用される場合の瞬時電圧ベクトルは、これよりも十分に小さい平均電圧ベクトルのノルムを有する。したがって、変調率Mが小さい領域においては、無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードが採用される場合と比較して有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードが採用される場合に、電流の変化速度が過度に大きくなる。
一方、上記ステップS16においてデッドタイム電圧ベクトルVDTが有効電圧ベクトルとなるか否かは、電流ベクトル(id,iq)の方向と平行な成分が正である有効電圧ベクトルと無効電圧ベクトルとの間の切り替えであるか否かによって判断できる。
すなわち、たとえば先の図2(a)において、モータジェネレータ10の各相について、高電圧バッテリ12の正極と接続される場合を「1」、負極と接続される場合を「0」とすると、電圧ベクトルV3は、(0,1,0)と表記できる。また、電流ベクトルが電圧ベクトルV3と同一方向である場合、電流ベクトルの方向と平行な成分が正となるのは、電圧ベクトルV2,V3,V4である。そして、上記定義によれば、これらは、それぞれ(1,1,0),(0,1,0),(0,1,1)と記載される。ここで、スイッチングモードの変更に際してスイッチング状態が切り替えられる端子数を「1」に制限する場合、電圧ベクトルV2、V3,V4のそれぞれと無効電圧ベクトルとの切り替えに際してスイッチング状態が切り替えられるのは、W相、V相およびU相のそれぞれとなる。そして、インバータINVの全スイッチング素子をオフとする場合の電圧ベクトルが(1,0,1)となることに鑑みれば、電圧ベクトルV2、V3,V4のそれぞれから無効電圧ベクトルへの切り替えに伴うデッドタイム期間における電圧ベクトル(デッドタイム電圧ベクトルVDT)は、それぞれ(1,1,1,),(0,0,0),(1,1,1)となり、全て無効電圧ベクトルとなる。なお、インバータINVの全スイッチング素子をオフとする場合の電圧ベクトルが(1,0,1)でなくなるのと同期して、電流ベクトルの方向と平行な成分が正となる3つの電圧ベクトルの組合せが変更される。このため、上記の議論は、電流ベクトルの方向にかかわらず成立する。
ステップS16において否定判断される場合、ステップS18においてデッドタイムDTをデッドタイムベース値DT0とする。一方、肯定判断される場合、ステップS20において、デッドタイムDTを制限用デッドタイム値DT1(>DT0)とする。この処理は、無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードから有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードに変更された場合において、その制御周期Tcに占める変更後のスイッチングモードの採用時間の割合を短縮するためのものである。なお、ステップS20の処理は、本実施形態においてデッドタイム操作手段を構成する。
ステップS18,S20の処理が完了する場合、ステップS22において、上記ステップS12において算出された予測電流ide(n+1),iqe(n+1)を用いて2制御周期先の予測電流ide(n+2),iqe(n+2)を算出する。ここで、電圧ベクトルV(n+1)と電圧ベクトルV(n)とが相違する場合には、デッドタイムDTの期間におけるインバータINVの出力電圧ベクトルを考慮する。
ステップS24においては、仮設定候補となるスイッチングモード(電圧ベクトル)のすべてについて、予測電流ide(n+2),iqe(n+2)の算出が完了したか否かを判断する。ステップS24において否定判断される場合には、ステップS14に戻る。これに対し、ステップS24において肯定判断される場合には、ステップS26に移行する。
ステップS26においては、次回の制御周期におけるスイッチングモード(電圧ベクトルV(n+1))を決定する処理を行う。ここでは、評価関数Jによる評価の最も高いスイッチングモードを最終的なスイッチングモード(電圧ベクトルV(n+1))とする。本実施形態では、指令電流ベクトルと予測電流ベクトルとの各成分の差が大きいほど評価が低くなる評価関数Jを用いてスイッチングモードを評価する。詳しくは、評価関数Jとして、評価が低いほど値が大きくなるものを採用する。具体的には、評価関数Jを、指令電流ベクトル(id*,iq*)と、予測電流ベクトル(ide,iqe)との差のノルムの2乗(内積値)に基づき算出する。これは、指令電流ベクトルと予測電流ベクトルとの各成分の偏差が正、負の双方の値となりえることに鑑み、値が大きいほど評価が低いことを表現するための一手法である。
続くステップS28においては、変調率Mが規定比率Mth以上であるか否かを判断する。そして否定判断される場合、ステップS30において、ステップS26によって決定された電圧ベクトルV(n+1)と、ステップS10において出力された電圧ベクトルV(n)とが相違して且つ、これらの切り替えに際して設けられるデッドタイム期間における電圧ベクトルであるデッドタイム電圧ベクトルVDTが有効電圧ベクトルであるか否かを判断する。この処理は、上記ステップS20の処理によっては、有効電圧ベクトルの出力期間を低減することができない状況を判断するためのものである。
上記ステップS30において肯定判断される場合、ステップS32において、電圧ベクトルV(n+1)を、現在の電圧ベクトルV(n)からのスイッチング状態の切り替え端子数が「2」以上となる無効電圧ベクトルとする。この処理は、インバータINVの出力電圧ベクトルが有効電圧ベクトルとなる時間を制限するための処方である。
すなわち、電圧ベクトルV(n)が無効電圧ベクトルである場合であって且つ、スイッチング状態の切り替え端子数を「1」以下とした場合のデッドタイム電圧ベクトルVDTが有効電圧ベクトルとなる場合、これと相違する無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードを一旦採用することで(強制切替手段)、この切り替えに際して有効電圧ベクトルが出力される期間をデッドタイムDTの期間に制限することができる。しかも、スイッチング状態の切り替え端子数を「1」以下とする場合には、次回の制御周期TcにおけるステップS26の処理によって決定される電圧ベクトルを、ステップS32の処理を用いない場合とは相違させることもできる。
また、この処理によれば、有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードから別の有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードへの切り替えを禁止することもできる(連続設定禁止手段)。すなわち、スイッチング状態の切り替え端子数を「1」以下とした場合、有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードから別の有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードへの切り替えに際してのデッドタイム電圧ベクトルVDTは、必ず有効電圧ベクトルとなるため、ステップS30において肯定判断される。この処理によれば、制御量(電流id,iq)の変化が過度に大きくなる状況の継続を回避することができる。ちなみに、この処理によって採用されるスイッチングモードは、一対の無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードのうち、現在のスイッチングモードが採用される直前の無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードとは相違するものとなる。
なお、ステップS32の処理が完了する場合や、ステップS28において肯定判断される場合、さらにはステップS30において否定判断される場合には、電圧ベクトルや電流、電気角のサンプリング番号を指定するパラメータnを更新(デクリメント)し、この一連の処理を一旦終了する。
ちなみに、上記ステップS10の処理においてスイッチング状態の切り替えを伴う場合、最終的に決定されたスイッチングモードに対応する予測電流ide(n+2),iq(n+2)の算出に用いられたデッドタイムDTに基づき、デッドタイムが設けられる。ただし、ステップS32の処理がなされた場合には、デッドタイムDTを、デッドタイムベース値DT0とする。こうした処理によれば、デッドタイムDTが制限用デッドタイム値DT1とされる場合、ステップS10の処理がなされるタイミング(規定周期の始点)に対して、変更後のスイッチングモードの採用が開始されるタイミング(デッドタイムDTの経過時)が遅延する。このため、この制御周期Tcにおいて、変更後のスイッチングモードが採用される時間の占める割合が低下する。
図5に、本実施形態の効果を、デッドタイムDTを可変とする処理等を行わない比較例と対比して示す。なお、図5に示す電流挙動は、変調率が低い領域におけるものである。
図示されるように、本実施形態によれば、電流のリップルを低減することができる。そして、これにより、低周波数領域におけるノイズを低減することができる。
以下、本実施形態の効果のいくつかを記載する。
(1)低変調率領域において、無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードから有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードに変更するに際して設けられるデッドタイムDT期間における電圧ベクトルが無効電圧ベクトルとなることを条件に、デッドタイムDTを伸張操作した(ステップS20)。これにより、インバータINVの出力電圧ベクトルが有効電圧ベクトルとなる期間を短縮することができる。したがって、スイッチングモードを設定するための演算処理(図3のステップS10〜S14,S22,S24,S26)の周期(制御周期Tc)を固定しつつも、有効電圧ベクトルが出力される期間を制御周期Tcによる制約を越えて縮小することができる。
(2)無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードから有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードに変更するに際して設けられるデッドタイム期間における電圧ベクトルが有効電圧ベクトルとなる場合、現在のスイッチングモード(V(n))からのスイッチング状態の切り替え端子数が「2」以上となる無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードに変更した(ステップS30,S32)。これにより、有効電圧ベクトルの出力期間を制限することができる。
(3)有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードが採用された後、別の有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードに決定される場合、この決定を無効とし、現在のスイッチングモードからのスイッチング状態の切り替え端子数が「2」以上となる無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードに一旦切り替えた(ステップS30,S32)。これにより、有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードが連続して採用されることを回避することができ、ひいては、制御量とその指令値との乖離が過度に大きくなる事態を回避することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図6に、本実施形態にかかるモデル予測制御の処理手順を示す。この処理は、予め定められた長さを有する周期(制御周期Tc)で繰り返し実行される。なお、図6において、先の図3に示した処理に対応するものについては、便宜上、同一のステップ番号を付している。
本実施形態では、スイッチングモードの決定に利用する予測電流ide(n+2),iqe(n+2)を、デッドタイムDTがデッドタイムベース値DT0となる場合と、制限用デッドタイム値DT1となる場合との双方について算出する。すなわち、ステップS24の処理において肯定判断される場合、ステップS34において、デッドタイムベース値DT0となる場合と、制限用デッドタイム値DT1となる場合との双方について予測電流の算出が完了したか否かを判断する。そして、未だデッドタイムベース値DT0についてのみ予測電流ide(n+2),iqe(n+2)が算出されたに過ぎない場合には、ステップS14に戻る。一方、ステップS34において肯定判断される場合には、ステップS26aにおいて、次回の制御周期Tcにおけるスイッチングモード(電圧ベクトルV(n+1))を決定するとともに、このスイッチングモードがスイッチング状態の切り替えを伴う場合、デッドタイムDTをデッドタイムベース値DT0とするか制限用デッドタイム値DT1とするかを決定する。この処理は、評価関数Jの評価が最大となるものに対応する予測電流ide(n+2),iqe(n+2)について、その算出に利用されたデッドタイムDTに決定するものである。
こうした処理によっても、低変調率時においては、有効電圧ベクトルの出力期間を低減するように制限用デッドタイム値DT1が選択される。さらに、本実施形態によれば、変調率とは無関係に有効電圧ベクトルのみならず無効電圧ベクトルの出力期間の調整の自由度を向上させることができるため、制御性の向上が期待できる。もっとも、この場合、デッドタイムベース値DT0と制限用デッドタイム値DT1との双方について予測電流ide(n+2),iqe(n+2)を算出するため、演算負荷は増加する。しかし、この増加は、たとえば制御周期Tcを半減させる場合と比較すれば小さい。なぜなら、第1に、予測電流ide(n+2),iqe(n+2)の算出に際してデッドタイムDTを考慮すべきなのは、スイッチングモードの切り替えがなされる場合のみであるためである。このため、スイッチング状態の切り替え端子数を「1」以下とする本実施形態の場合、予測電流ide(n+2),iqe(n+2)の演算回数は、「7/4」倍に増加するものの、2倍には満たない。第2に、ステップS10,S12の処理については、7通りの予測電流ide(n+2),iqe(n+2)の算出処理の全てで共有することができるためである。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図7に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図7において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
本実施形態においてモータジェネレータ10を制御対象とする制御装置40は、ダイレクトトルク制御(DTC:Direct Torque Control)を行なう。すなわち、αβ変換部42では、電流iu,iwをα軸の電流iαとβ軸の電流iβとに変換する。一方、出力電圧算出部44では、インバータINVのスイッチングモードに基づき、インバータINVの出力電圧ベクトルのαβ座標系での成分(vα、vβ)を算出する。磁束算出部46では、インバータINVの出力電圧ベクトル(vα、vβ)と、電流iα,iβとを入力とし、磁束ベクトル(ψα,ψβ)を算出する。ここで磁束ベクトルのα軸成分ψαは、基本的には電圧ベクトルのα軸成分vαの時間積分値に応じたものとなるが、α軸における抵抗Rに電流iαによる電圧降下が生じることを考慮して、電流iαを入力パラメータとしている。なお、磁束ベクトルのβ軸成分ψβの算出に電流iβを用いる理由も同様である。
トルク算出部48では、磁束ベクトル(ψα,ψβ)と、電流iα,iβとを入力とし、トルクTrqを算出する。一方、偏差算出部50では、磁束ベクトル(ψα,ψβ)のノルム|ψ|とノルム指令値|ψ*|との差を算出する。偏差算出部50の出力信号は、ヒス幅パラメータ算出部52に入力され、ヒス幅パラメータ算出部52では、これに基づきヒス幅パラメータξを算出する。ヒス幅パラメータξは、偏差算出部50の出力信号が第1閾値以上の値に移行することで、「1」となって且つ、第2閾値未満の値に移行することで、「0」となる。また、偏差算出部54では、トルクTrqとトルク指令値Trq*との差を算出する。偏差算出部54の出力信号は、ヒス幅パラメータ算出部56に入力され、ヒス幅パラメータ算出部56では、これに基づきヒス幅パラメータτを算出する。ヒス幅パラメータτは、偏差算出部54の出力信号が第1閾値以上の値に移行することで、「1」となって且つ、第2閾値未満の値に移行することで、「0」となる。
スイッチングモード決定部58では、現在の電気角θが図中の角度領域θ1〜θ6のいずれにあるかに応じて、また、ヒス幅パラメータξ,τの値に応じて、スイッチングモードを、電圧ベクトルV1〜V6のいずれに対応するものとするかを決定する。ここでは、現在の電気角θ、およびヒス幅パラメータξ,τと、スイッチングモードとの関係を定めるマップを用いる。このマップは、偏差算出部50,54の出力信号の絶対値を低減するスイッチングモードを定めるものである。
こうしてスイッチングモードが決定されると、決定されたスイッチングモードがデッドタイム生成部60に入力される。デッドタイム生成部60では、新たに入力されたスイッチングモードが、スイッチング状態の変更を伴うモードである場合、デッドタイムを付与する。この際、デッドタイムの長さを、偏差算出部54の出力信号に応じて可変とする。この処理は、トルクTrqがトルク指令値Trq*から乖離する度合いを低減するためのものである。すなわち、通常のDTCでは、スイッチングモード決定部58によってスイッチングモードが制御周期Tcで決定されると、これに応じてスイッチングモードが更新されるため、各スイッチングモードの採用時間の最小値は、制御周期Tcで制限される。この場合、上記採用時間を小さくできないことに起因して、上記モデル予測制御と同様、制御量(トルク)のオーバーシュートが生じやすくなると考えられる。そこで本実施形態では、デッドタイムDTを操作することで、スイッチングモードの採用時間の最小値を制御周期Tcによって規定されるものよりも小さくする。なお、デッドタイム生成部60は、本実施形態において、採用時間可変手段を構成する。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
「デッドタイム操作手段について」
デッドタイムベース値DT0、および制限用デッドタイム値DT1のいずれかとするものに限らない。たとえば、互いに相違する3つ以上の値のいずれかを選択的に用いるものであってもよい。
デッドタイムDTにおけるインバータINVの出力電圧ベクトルが無効電圧ベクトルとなるか否かを判断する手段としては、電流ベクトル(id,iq)を入力とするものに限らない。たとえば、電流指令値ベクトル(id*,iq*)で代用してもよい。
「強制切替手段(図3、ステップS30,S32)について」
デッドタイム操作手段にとって、強制切替手段は必須ではない。たとえば、モード設定手段が、スイッチングモードの変更に伴ってスイッチング状態が切り替えられる回転機の端子数を「1」以下に制限せず且つ、先の図3のステップS26の処理において、デッドタイム期間中のインバータINVの出力電圧ベクトルを無効電圧ベクトルとするスイッチングモードの評価を高くすることで対処してもよい。この場合、強制切替手段を備えなくても、無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードから有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードに切り替えるに際し、デッドタイム期間中のインバータINVの出力電圧ベクトルを必ず無効電圧ベクトルとすることも可能となる。
「連続設定禁止手段について」
上記第1の実施形態(図3、ステップS30,S32)において例示したものに限らない。たとえば、スイッチングモードの変更に伴ってスイッチング状態が切り替えられる回転機の端子数を「1」以下に制限しない場合、有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードから別の有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードへの切り替えであるにもかかわらず、先の図3のステップS30において否定判断されない場合がある。このため、連続して有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードが選択されたか否かを判断するには、ステップS30の処理とは別の処理を行なう必要がある。
「有効電圧制限手段について」
デッドタイムDTの長さを操作するものに限らない。たとえば、デッドタイムDTについては固定値とし、無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードから有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードに切り替える場合、その切り替えタイミングを遅延させるものであってもよい。この場合、デッドタイム期間におけるインバータINVの出力電圧ベクトル(デッドタイム電圧ベクトルVDT)が無効電圧ベクトルとなるか有効電圧ベクトルとなるかにかかわらず、有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードの採用時間を制限することができるため、スイッチングモードの切り替えに際してスイッチング状態が切り替えられるモータジェネレータ10の端子数を「1」に常時制限することも可能となる。
有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードの採用時間を制限する処理の実行の有無の判断手段としては、変調率Mを算出し、これと規定比率Mthとの大小を比較する処理を行なうものに限らない。たとえば、回転機の回転速度の検出値が規定速度未満であることを条件に、上記制限を実行すると判断するものであってもよい。これは、低回転速度領域においては高回転速度領域と比較して変調率が低くなることに鑑みたものである。また、たとえば回転機の電流から推定されるトルクが規定値以下であることを条件に、上記制限を実行すると判断するものであってもよい。これは、低トルク領域では高トルク領域と比較して変調率が低くなることに鑑みたものである。なお、回転機の回転速度を指令値に制御する制御系を採用するなら、回転速度の検出値に代えて指令値を入力として上記判断をしてもよい。同様、推定されるトルクに代えてトルクの指令値としてもよい。またたとえば、トルクに代えて、これと相関を有するパラメータとして、電流の検出値や電流の指令値を用いてもよい。
「採用時間可変手段について」
制御周期Tcにおける変更後のスイッチングモードが採用される時間の割合を、2通りの値のいずれとするかを切り替えるものに限らないことについては、「デッドタイム操作手段について」に記載したとおりである。
「モード設定手段について」
モデル予測制御を行なう場合であっても、変更後のスイッチングモードを、変更前のスイッチングモードからのスイッチング状態の切り替えを伴う前記回転機の端子数が「1」以下となるようにするものに限らない。
「DTCについて」
無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードを採用しないものに限らず、これを採用可能なものであってもよい。この場合、低変調率時における制御量のオーバーシュートを回避するうえでは、有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードの採用時間を短縮する処理(有効電圧制限手段による処理)を行なうことが望ましい。
「モデル予測制御手段について」
次回のスイッチングモードに対応する電圧ベクトルV(n+1)によって生じる制御量のみを予測するものに限らない。たとえば、数制御周期先の更新タイミングにおけるインバータINVの操作による制御量まで順次予測するものであってもよい。
たとえば、上記第1の実施形態において、予測電流ide(n+2)と電流指令値id*(n+2)との差の絶対値と、予測電流iqe(n+2)と電流指令値iq*(n+2)との差の絶対値との加重平均処理値を、予測電流と電流指令値との乖離度合いの定量値としてもよい。要は、乖離度合いが大きいほど評価が低くなることを定量化すべく、乖離度合いとの間に正または負の相関関係があるパラメータによって定量化すればよい。
指令値と予測値とに基づきインバータINVのスイッチングモードを決定するために用いる制御量としては電流に限らない。例えば、トルクおよび鎖交磁束としたり、トルクのみまたは鎖交磁束のみとしたりしてもよい。また例えば、トルクおよびd軸電流またはトルクおよびq軸電流等、トルクおよび電流であってもよい。ここで、制御量を電流以外とする場合等において、センサによる直接の検出対象を電流以外としてもよい。
上記各実施形態では、回転機の究極の制御量(予測対象であるか否かにかかわらず、最終的に所望の量とされることが要求される制御量)を、トルクとしたが、これに限らず、例えば回転速度等としてもよい。
「回転機について」
回転機としては、3相回転機に限らず、5相回転機等、4相以上の回転機であってもよい。
上記実施形態では、固定子巻線がスター結線されたものを想定したがこれに限らず、デルタ結線されたものであってもよい。この場合、回転機の端子と相とは一致しない。
回転機としては、表面磁石同期機に限らず、埋め込み磁石同期機や、界磁巻線型同期機等、任意の同期機であってよい。さらに、同期機にも限らず、誘導モータ等、誘導回転機であってもよい。
「そのほか」
直流電圧源としては、高電圧バッテリ12に限らず、例えば高電圧バッテリ12の電圧を昇圧するコンバータの出力端子であってもよい。
互いに相違する電圧値の電圧のそれぞれを印加する各別の電圧印加手段と回転機の端子との間を開閉するスイッチング素子を備えて構成される直流交流変換回路としては、回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子を備えるもの(インバータINV)に限らない。例えば、多相回転機の各相に3つ以上の互いに相違する値の電圧のそれぞれを印加する電圧印加手段と回転機の端子との間を選択的に開閉するスイッチング素子を備えるものであってもよい。なお、回転機の端子に3つ以上の互いに相違する値の電圧のそれぞれを印加するための直流交流変換回路としては、例えば特開2006−174697号公報に例示されているものがある。
10…モータジェネレータ(回転機の一実施形態)、20,40…制御装置、INV…インバータ(直流交流変換回路の一実施形態)。

Claims (7)

  1. 回転機(10)の制御量を制御すべく、互いに相違する電圧値を有する各別の電圧印加手段のそれぞれおよび前記回転機の各端子間を開閉するスイッチング素子(S¥#)が備えられた直流交流変換回路(INV)を操作する操作手段(20)を備え、
    前記制御量は、前記回転機を流れる電流、前記回転機のトルク、および前記回転機の磁束の少なくとも1つを有し、
    前記操作手段は、
    前記スイッチング素子のそれぞれがオンであるかオフであるかを表現するスイッチングモードを、規定周期に1度、変更可能とするものであり、
    前記スイッチングモードの変更がなされる場合、前記規定周期の始点および終点の間で前記変更後のスイッチングモードの採用が開始されるタイミングを可変とすることで、前記変更がなされるタイミングに対応する前記規定周期において、変更後のスイッチングモードが採用される時間の占める割合を可変とする採用時間可変手段を備え
    前記採用時間可変手段は、前記スイッチングモードが無効電圧ベクトルに対応するものから有効電圧ベクトルに対応するものに変更される場合、前記変更後のスイッチングモードが採用される時間の占める前記割合を可変とする有効電圧制限手段を備える
    ことを特徴とする回転機の制御装置。
  2. 前記電圧印加手段は、直流電圧源の正極および負極であり、
    前記直流交流変換回路は、直流電圧源の正極および負極のそれぞれと前記回転機の各端子との間を開閉するスイッチング素子を備え、
    前記有効電圧制限手段は、前記直流交流変換回路の出力線間電圧の基本波振幅を前記直流電圧源の端子電圧で除算した除算値が小さい領域である低変調率領域において、前記変更後のスイッチングモードが採用される時間の占める前記割合を低減することを特徴とする請求項記載の回転機の制御装置。
  3. 前記有効電圧制限手段は、無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードから有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードに変更するに際して設けられるデッドタイム期間における電圧ベクトルが無効電圧ベクトルとなることを条件に該デッドタイム期間を伸張操作することで、前記有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードが採用される時間の占める前記割合を低減するデッドタイム操作手段を備えることを特徴とする請求項記載の回転機の制御装置。
  4. 前記操作手段は、前記制御量を制御する上で適切なスイッチングモードを前記規定周期毎に設定するモード設定手段を備え、
    前記モード設定手段は、変更後のスイッチングモードを、変更前のスイッチングモードからのスイッチング状態の切り替えを伴う前記回転機の端子数が1以下となるようにすることを特徴とする請求項記載の回転機の制御装置。
  5. 前記有効電圧制限手段は、無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードから有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードに変更するに際して設けられるデッドタイム期間における電圧ベクトルが有効電圧ベクトルとなる場合、前記モード設定手段によって設定されたモードを無視し、一対の無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードのうち現在のスイッチングモードとは相違する側のものに一旦切り替える強制切替手段を備えることを特徴とする請求項記載の回転機の制御装置。
  6. 前記有効電圧制限手段は、前記モード設定手段によって有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードが採用された直後の前記変更可能な規定周期において、該有効電圧ベクトルとは別の有効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードが設定される場合、該設定を無視し、一対の無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードのうち、現在のスイッチングモードに切り替えられる直前における無効電圧ベクトルに対応するスイッチングモードとは相違するものに一旦切り替える連続設定禁止手段を備えることを特徴とする請求項または記載の回転機の制御装置。
  7. 前記操作手段は、前記スイッチングモードを仮に設定した場合の前記回転機の制御量の挙動を予測し、該予測の結果に基づき前記規定周期毎に採用すべき前記スイッチングモードを決定するモデル予測制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
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