JP2013062900A - 回転機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電流センサの出力値に実際の電流の振幅に対して所定の比率(≠1)だけ相違する誤差であるいわゆるゲイン誤差が含まれる場合、これに起因してモデル予測制御の制御性が低下するおそれがあること。
【解決手段】偏差算出部40,44では、予測電流ide,iqeのそれぞれと同位相の実電流id,iqとの差が算出される。フィードバック制御部42,46のそれぞれでは、偏差算出部40,44の出力値をゼロにフィードバック制御するための操作量(補償量idcomp,iqcomp)が算出される。これら補償量idcomp,iqcompによって、予測部33によって予測される予測電流ide,iqeが補正される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、互いに相違する電圧値の電圧のそれぞれを印加する各別の電圧印加手段と回転機の端子との間を開閉するスイッチング素子を備えて構成される電力変換回路について、該電力変換回路を構成するスイッチング素子のオン・オフ操作によって、前記回転機を流れる電流、前記回転機のトルク、および前記回転機の磁束の少なくとも1つを有した制御量を制御する回転機の制御装置に関する。
この種の制御装置としては、たとえば下記特許文献1に見られるように、インバータのスイッチング素子のオン・オフによって規定されるスイッチングモードを様々に設定した場合についての3相電動機の電流をそれぞれ予測し、予測される電流と指令電流との偏差を最小化することのできるスイッチングモードにてインバータを操作する、いわゆるモデル予測制御を行うものが提案されている。これによれば、インバータの出力電圧に基づき予測される電流の挙動を最適化するようにインバータが操作されるため、過渡時における指令電流への追従性が従来の三角波比較PWM制御によるものと比較して向上する。このため、モデル予測制御は、車載主機としてのモータジェネレータの制御装置等、過渡追従特性として特に高い性能が要求される用途にとっては、有用性が高いと考えられる。
特開2008−228419号公報
ところで、上記電流の予測には、その初期値として、電流センサによる電流の検出値が要求される。ただし、電流センサの出力値には、実際の電流の振幅に対して所定の比率(≠1)だけ相違する誤差であるいわゆるゲイン誤差が含まれることがある。そしてこの場合、ゲイン誤差に起因してモデル予測制御の制御性が低下するおそれがある。
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、互いに相違する電圧値の電圧のそれぞれを印加する各別の電圧印加手段と回転機の端子との間を開閉するスイッチング素子を備えて構成される電力変換回路について、該電力変換回路を構成するスイッチング素子のオン・オフ操作によって、前記回転機を流れる電流、前記回転機のトルク、および前記回転機の磁束の少なくとも1つを有した制御量を制御する新たな回転機の制御装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、互いに相違する電圧値の電圧のそれぞれを印加する各別の電圧印加手段と回転機の端子との間を開閉するスイッチング素子を備えて構成される電力変換回路について、該電力変換回路を構成するスイッチング素子のオン・オフ操作によって、前記回転機を流れる電流、前記回転機のトルク、および前記回転機の磁束の少なくとも1つを有した制御量を制御する回転機の制御装置において、前記スイッチング素子のそれぞれがオン状態であるかオフ状態であるかを示すスイッチングモードを仮設定し、該仮設定されたスイッチングモードのそれぞれに応じた前記制御量に関する予測を行なう予測手段と、該予測手段による予測結果に基づき、前記電力変換回路の実際の操作に用いるスイッチングモードを決定する決定手段と、該決定されたスイッチングモードとなるように前記電力変換回路を操作する操作手段と、前記回転機を流れる電流の検出値を取得する取得手段とを備え、前記予測手段による前記予測する処理は、前記制御量または該制御量の算出のためのパラメータとしての前記回転機の電流についての予測を行なう電流予測処理を含み、前記電流の検出値に応じた前記回転機の電流ベクトルのノルムを前記電流予測処理によって予測される電流ベクトルのノルムのうち前記操作手段によって採用されたスイッチングモードに対応するものにフィードバック制御するノルムフィードバック手段をさらに備えることを特徴とする。
検出値にゲイン誤差が重畳される場合、予測手段によって予測された電流のうち前記決定手段によって決定された操作状態に対応するものと検出値との間には、予測手段に予測誤差がなくても、乖離が生じうる。上記発明では、この点に鑑み、上記予測される電流を規範として、検出値に含まれるゲイン誤差を把握し、これに基づき制御量の制御処理を補正する。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ノルムフィードバック手段による前記フィードバック制御は、前記電流の検出値に応じた前記回転機を流れる電流についてのq軸成分を前記電流予測処理によって予測される電流のq軸成分のうちの前記操作手段によって採用されたスイッチングモードに対応するものにフィードバック制御する処理であることを特徴とする。
電流のベクトルノルムと2次元座標系における電流ベクトルの成分の絶対値との間には、正の相関がある。このため、q軸成分もノルムと相関を有するパラメータとなることから、フィードバック制御量として利用可能である。
なお、請求項2記載の発明は、以下のものであってもよい。
・前記ノルムフィードバック手段による前記フィードバック制御は、前記電流の検出値に応じた前記回転機を流れる電流についてのq軸成分の値を前記電流予測処理によって予測される電流のq軸成分の値のうちの前記操作手段によって採用されたスイッチングモードに対応するものにフィードバック制御する処理であることを特徴とする。
・前記予測手段は、前記電力変換回路の出力電圧の平均値を算出する平均電圧算出手段と、該平均電圧算出手段によって算出される平均値に対する前記仮設定されたスイッチングモードに応じた前記電力変換回路の出力電圧の差として瞬時出力電圧を算出する瞬時電圧算出手段と、前記瞬時出力電圧に基づき、前記制御量の変化量を予測する変化量予測手段と、を備え、前記ノルムフィードバック手段による前記フィードバック制御は、前記電流の検出値に応じた前記回転機を流れる電流についてのq軸成分の変化量を、前記予測手段によって予測された変化量のうち前記操作手段によって採用されたスイッチングモードに対応するものにフィードバック制御する処理であることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ノルムフィードバック手段による前記フィードバック制御は、前記電流の検出値に応じた前記回転機の各端子の電流と前記電流予測処理によって予測される前記各端子の電流との比を目標値にフィードバック制御する処理であることを特徴とする。
電流同士の比は、位相ずれがなければ振幅同士の比となることから、ノルム同士の比となる。このため、比を目標値にフィードバック制御することで、ノルムのフィードバック制御を行なうことができる。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記ノルムフィードバック手段は、前記電流の検出値に応じた前記回転機を流れる電流ベクトルと前記電流予測処理によって予測される電流ベクトルとのそれぞれのノルム同士の差または該ノルムと相関を有するパラメータ同士の差を入力とする積分要素の出力に基づき、前記制御量に関する予測を行なう処理において用いられるパラメータを補正することを特徴とする。
上記発明では、積分要素を用いることで、予測される電流ベクトルのノルムと検出値に応じたノルムとの定常的な乖離を補償することが容易となる。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記ノルムフィードバック手段は、前記制御量に関する予測を行なう処理において用いられるパラメータの補正に際し、前記電流の検出値に応じた前記回転機の電流ベクトルと前記電流予測処理によって予測される電流ベクトルとのそれぞれのノルム同士の差または該ノルムと相関を有するパラメータ同士の差を入力とする微分要素の出力をさらに用いることを特徴とする。
上記発明では、微分要素を用いることで、ノルム同士の差または該ノルムと相関を有するパラメータ同士の差に高調波ノイズが重畳した場合であっても、その影響を好適に抑制することができる。
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記回転機の端子のうちの一部を流れる電流としての前記電流の検出値と、dq座標系の電流の算出に必要な残りの端子を流れる電流としての前記予測される電流とを、dq座標系の電流に変換する電流再現手段を備え、該電流再現手段によって再現される電流を前記制御量に関する予測を行なう処理に用いるものであり、前記ノルムフィードバック手段は、前記電流の検出値に応じた前記回転機を流れる電流ベクトルのノルムに関するパラメータとして、前記再現される電流を用いることを特徴とする。
互いに連結された固定子巻線に接続される複数の端子を備える回転機においては、全端子数よりも1つ少ない数の端子のそれぞれを流れる電流情報によって、回転機を流れる電流情報を不足なく取得することができる。ここで、電流の検出値のみでは電流情報として不足している場合、予測される電流を用いることで、不足分を補うことができる。そして、これらをdq座標系の電流に変換するなら、変換された電流は、電流の検出値と予測される電流との双方を含んだものとなる。このため、変換された電流は、電流の検出値を反映した電流となる。上記発明では、この点に鑑み、電流再現手段を備えた。
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記電力変換回路は、直流電圧源の正極および負極のそれぞれに前記回転機の端子を選択的に接続するスイッチング素子を備える直流交流変換回路であり、前記回転機の端子であって且つ前記直流交流変換回路の出力電圧が印加される端子の数は、3であり、前記取得手段は、前記直流交流変換回路の入力端子を流れる電流の検出値を取得するものであり、前記予測処理は、前記操作手段によって採用されたスイッチングモードに対応する電圧ベクトルが有効電圧ベクトルである場合、前記電流の検出値を前記回転機の3つの端子のうちのいずれか1つの端子を流れる電流の初期値として利用するものであり、前記ノルムフィードバック手段は、前記操作手段によって採用されたスイッチングモードに対応する電圧ベクトルが有効電圧ベクトルである場合、前記回転機の3つの端子のうちの前記採用されたスイッチングモードに応じて定まる1つの端子を流れる電流としての前記電流の検出値に基づき、前記電流の検出値に応じた前記回転機を流れる電流ベクトルのノルムに関するパラメータを定めることを特徴とする。
直流交流変換回路の出力電圧の印加される端子数が3である回転機の場合、有効電圧ベクトルにて表現される操作状態においては、1つの端子または2つの端子が直流電圧源の正極に接続されて且つ、残りの端子が直流電圧源の負極に接続される。このため、正極または負極のうち接続される端子数が1であるものについて、その端子を流れる電流と上記電流の検出値とが、少なくとも絶対値については一致する。上記発明では、この点に鑑み、有効電圧ベクトル採用時において、上記電流の検出値を用いてノルムに関するパラメータを定める。
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記取得手段によって取得される電流の検出値に基づく前記予測手段によって予測される電流の評価結果に応じて、前記制御量の予測処理を補正する予測処理補正手段をさらに備え、前記ノルムフィードバック手段のフィードバックゲインは、前記予測処理補正手段のフィードバックゲインよりも小さいことを特徴とする。
予測される電流の精度は、予測対象となるタイミングにおける電流の検出値によって評価することができる。上記発明では、この点に鑑み予測される電流を評価することで、精度が低下していると評価される場合、予測処理を補正することができる。しかも、この際、予測処理補正手段のゲインよりもノルムフィードバック手段のゲインを小さくすることで、ノルムのフィードバック制御との両立を図ることができる。
第1の実施形態にかかるシステム構成図。 同実施形態にかかるスイッチングモードを示す図。 同実施形態にかかるモデル予測制御の処理手順を示す流れ図。 同実施形態にかかる電流再現部の処理の手順を示す流れ図。 同実施形態の効果を示すタイムチャート。 同実施形態の効果を示すタイムチャート。 第2の実施形態にかかるシステム構成図。 第3の実施形態にかかるシステム構成図。 第4の実施形態にかかるシステム構成図。
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる回転機の制御装置を電動機の制御装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかる電動機の制御システムの全体構成を示す。電動機10は、3相の同期機である。
電動機10は、インバータINVを介してバッテリ12に接続されている。インバータINVは、スイッチング素子S¥p,S¥n(¥=u,v,w)の直列接続体を3組備えており、これら各直列接続体の接続点が電動機10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子S¥#(¥=u,v,w;#=p,n)として、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードD¥#が逆並列に接続されている。
本実施形態では、電動機10やインバータINVの状態を検出する検出手段として、以下のものを備えている。まず電動機10の回転角度(電気角θ)を検出する回転角度センサ14を備えている。また、インバータINVの入力端子(ここでは、負極側入力端子)を流れる電流(母線電流IDC)を検出する電流センサ16を備えている。さらに、インバータINVの入力電圧(電源電圧VDC)を検出する電圧センサ18を備えている。
上記各種センサの検出値は、制御装置20に取り込まれる。制御装置20では、これら各種センサの検出値に基づき、インバータINVを操作する操作信号を生成して出力する。ここで、インバータINVのスイッチング素子S¥#を操作する信号が、操作信号g¥#である。
上記制御装置20は、電動機10のトルクを要求トルクT*に制御すべく、インバータINVを操作する。詳しくは、要求トルクT*を実現するための指令電流と電動機10を流れる電流とが一致するように、インバータINVを操作する。すなわち、本実施形態では、電動機10のトルクが最終的な制御量となるものであるが、トルクを制御すべく、電動機10を流れる電流を直接の制御量として、これを指令電流に制御する。特に、本実施形態では、電動機10を流れる電流を指令電流に制御すべく、スイッチングモードを複数通りのそれぞれに仮設定した場合についての電動機10の電流を予測し、インバータINVの実際のスイッチングモードを決定するモデル予測制御を行う。
上記スイッチングモードは、インバータINVを構成するスイッチング素子S¥#のそれぞれがオンであるかオフであるかを示すものであり、図2(a)に示される8通りのスイッチングモード0〜7からなる。例えば、低電位側のスイッチング素子Sun,Svn,Swnの全てがオン状態となるスイッチングモードがスイッチングモード0であり、高電位側のスイッチング素子Sup,Svp,Swpの全てがオン状態となるスイッチングモードがスイッチングモード7である。これらスイッチングモード0,7は、電動機10の全相を短絡させるものであり、インバータINVから電動機10に印加される電圧がゼロとなるものであるため、インバータINVの出力電圧ベクトルをゼロ電圧ベクトルとするものである。これに対し、残りの6つのスイッチングモード1〜6は、上側アームおよび下側アームの双方にオン状態となるスイッチング素子が存在する操作パターンによって規定されるものであり、インバータINVの出力電圧ベクトルを有効電圧ベクトルとするものである。
図2(b)に、各スイッチングモード0〜7のそれぞれに対応する電圧ベクトルV0〜V7を示す。電圧ベクトルV0〜V7のそれぞれは、スイッチングモード0〜7のそれぞれにおけるインバータINVの出力電圧ベクトルを示すものである。なお、図示されるように、スイッチングモード1、3,5のそれぞれに対応する電圧ベクトルV1,V3,V5がU相、V相、W相の正側にそれぞれ対応している。
ここで、モデル予測制御について詳述する。
先の図1に示す電流センサ16によって検出された母線電流IDCに基づき、電流再現部22において、回転座標系の実電流id,iqが算出される。また、回転角度センサ14によって検出される回転角度(電気角θ)は、速度算出部24の入力となり、これにより、回転速度(電気角速度ω)が算出される。一方、指令電流設定部26は、要求トルクT*を入力とし、dq座標系での指令電流id*,iq*を出力する。これら指令電流id*,iq*、実電流id,iq、電気角速度ωおよび電気角θは、モデル予測制御部30の入力となる。モデル予測制御部30では、これら入力パラメータに基づき、インバータINVのスイッチングモードを決定し、操作部28に出力する。操作部28では、入力されたスイッチングモードに基づき、上記操作信号g¥#を生成してインバータINVに出力する。
次に、モデル予測制御部30の処理の詳細について説明する。モード設定部31では、先の図2(a)に示したインバータINVのスイッチングモードを仮設定する。この処理は、実際には、スイッチングモードに対応する電圧ベクトルを仮設定する処理となる。dq変換部32では、モード設定部31によって仮設定された電圧ベクトルをdq変換することで、dq座標系の電圧ベクトルVdq=(vd,vq)を算出する。こうした変換を行うべく、モード設定部31において仮設定された電圧ベクトルV0〜V7を、例えば上側アームがオンである場合を「VDC/2」として且つ下側アームがオンである場合を「−VDC/2」とすることで表現すればよい。この場合、例えば、電圧ベクトルV0は、(−VDC/2,−VDC/2,−VDC/2)となり、電圧ベクトルV1は、(VDC/2,−VDC/2,−VDC/2)となる。
予測部33では、電圧ベクトル(vd,vq)と、実電流id,iqと、電気角速度ωとに基づき、インバータINVのスイッチングモードをモード設定部31によって仮設定される状態とした場合の電流id,iqを予測する。この電流の予測は、以下の式(c1),(c2)にて表現されるモデル式に基づき、モード設定部31によって仮設定される複数通りのスイッチングモードのそれぞれについて行われる。
vd=R・id+Ld・(did/dt)−ω・Lq・iq …(c1)
vq=R・iq+Lq・(diq/dt)+ω・Ld・id+ω・φ …(c2)
ここで、抵抗R、電機子鎖交磁束定数φ、d軸のインダクタンスLd、q軸のインダクタンスLqを用いた。
一方、モード決定部34では、予測部33によって予測された予測電流ide,iqeと、指令電流id*,iq*とを入力として、インバータINVのスイッチングモードを決定する。こうして決定されたスイッチングモードに基づき、操作部28では、操作信号g¥#を生成して出力する。
図3に、本実施形態にかかるモデル予測制御の処理手順を示す。この処理は、予め定められた長さを有する周期(制御周期Tc)で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS10において、電気角θ(n)を検出し、実電流id(n),iq(n)を算出する。また、前回の制御周期で決定された電圧ベクトルV(n)を出力する。すなわち、インバータINVのスイッチングモードを、前回の制御周期で決定されたスイッチングモード(電圧ベクトルV(n)に対応するスイッチングモード)に更新する。
続くステップS12においては、インバータINVの平均的な出力電圧ベクトルである平均電圧ベクトル(vda(n),vqa(n))を算出する。これは、上記の式(c1)、(c2)から電流の微分値の項を除いた式に、実電流id(n),iq(n)を代入した以下の式(c3)、(c4)にて算出することができる。
vda=R・id−ω・Lqs・iq …(c3)
vqa=R・iq+ω・Lds・id+ω・φ …(c4)
続くステップS14においては、1制御周期先における電流(ide(n+1),iqe(n+1))を予測する。これは、上記ステップS10によって出力された電圧ベクトルV(n)によって、1制御周期先の電流がどうなるかを予測する処理である。これは、上記の式(c1)、(c2)の電圧ベクトル(vd,vq)を、平均電圧ベクトル(vda,vqa)と瞬時電圧ベクトル(vd−vda,vq−vqa)とに分解し、瞬時電圧ベクトル(vd−vda,vq−vqa)と、上記の式(c1)、(c2)の電流の微分の項とが等しいとした下記の式(c5),(c6)を用いて行なうことができる。
vd−vda=Ld・(did/dt) …(c5)
vq−vqa=Lq・(diq/dt) …(c6)
詳しくは、上記の式(c5),(c6)を制御周期Tcによって離散化した下記の式(c7),(c8)にて行なうことができる。
ide(n+1)
=Tc・{vd(n)−vda(n)}/Ld+id(n) …(c7)
iqe(n+1)
=Tc・{vq(n)−vqa(n)}/Lq+iq(n) …(c8)
ちなみに、ここでの電圧ベクトル(vd(n),vq(n))は、ステップS10において出力された電圧ベクトルV(n)をステップS10において検出された電気角θ(n)による変換行列を用いて変換することで、dq軸上の電圧成分を算出したものである。
続くステップS16〜S22では、次回の制御周期におけるスイッチングモード(電圧ベクトルV(n+1))を複数通りに仮設定した場合のそれぞれについて、2制御周期先の電流を予測する処理を行う。すなわち、まずステップS16において、電圧ベクトルV(n+1)を仮設定する。続くステップS18においては、実電流id(n),iq(n)に代えて予測電流ide(n+1),iqe(n+1)を用いて上記ステップS12の処理と同様にして平均電圧ベクトル(vda(n+1),vqa(n+1))を算出する。さらに、ステップS20においては、上記ステップS14と同様にして、2制御周期先の予測電流ide(n+2),iqe(n+2)を算出する。ここでは、実電流id(n),iq(n)に代えて予測電流ide(n+1),iqe(n+1)を用いて且つ、瞬時電圧ベクトル(vd(n+1)−vda(n+1),vq(n+1)−vqa(n+1))を用いる。なお、ここでの電圧ベクトル(vd(n+1),vq(n+1))は、ステップS16において仮設定された電圧ベクトルV(n+1)を上記電気角θ(n)に「ωTc」を加算した回転角度による変換行列によって変換することで、dq軸上の電圧成分を算出したものである。
ステップS22においては、スイッチングモード0〜7のすべてについて、予測電流ide(n+2),iqe(n+2)の算出が完了したか否かを判断する。ステップS22において否定判断される場合には、ステップS16に戻る。これに対し、ステップS22において肯定判断される場合には、ステップS24に移行する。
ステップS24においては、次回の制御周期におけるスイッチングモード(電圧ベクトルV(n+1))を決定する処理を行う。ここでは、評価関数Jによる評価の最も高いスイッチングモードを最終的なスイッチングモード(電圧ベクトルV(n+1))とする。本実施形態では、指令電流ベクトルと予測電流ベクトルとの各成分の差が大きいほど評価が低くなる評価関数Jを用いてスイッチングモードを評価する。詳しくは、評価関数Jとして、評価が低いほど値が大きくなるものを採用する。具体的には、評価関数Jを、指令電流ベクトル(id*,iq*)と、予測電流ベクトル(ide,iqe)との差の内積値に基づき算出する。これは、指令電流ベクトルと予測電流ベクトルとの各成分の偏差が正、負の双方の値となりえることに鑑み、値が大きいほど評価が低いことを表現するための一手法である。
ちなみに、ステップS22において肯定判断される時点で、スイッチングモード0〜7のそれぞれについての予測電流ide(n+2),iqe(n+2)が算出されている。このため、これら8通りの予測電流ide(n+2),iqe(n+2)を用いて、評価関数Jの値を8つ算出することができる。
続くステップS26においては、電圧ベクトルや電流、電気角のサンプリング番号を指定するパラメータnを「1」ずつ減少補正することで、パラメータnを更新し、この一連の処理を一旦終了する。
上述したように、本実施形態では、電動機10の電流を検出する手段が、母線電流IDCを検出する電流センサ16のみとなる。母線電流IDCは、インバータINVのスイッチングモードが有効電圧ベクトルに対応するものとなる場合、電動機10のいずれか1相の電流にその絶対値が一致する。一方、3相の回転機を流れる電流を特定するためには、少なくとも2相の電流情報が必要である。このため、本実施形態では、電流検出手段の検出値が、電動機10を流れる電流を特定するうえで必要な数の検出値よりも少ない。このため、本実施形態では、母線電流IDCと、予測電流ide,iqeとの協働で、電動機10を流れる電流を特定し、これを予測部33の入力とする。
すなわち、先の図1に示す3相変換部21では、予測電流ide,iqeを、3相の予測電流iue,ive,iweに変換する。電流再現部22では、インバータINVの現在のスイッチングモードに基づき、母線電流IDCと、予測電流iue,ive,iweとの一部を、3相の電流値として選択的にdq変換することで実電流id,iqを算出し、予測部33に出力する。なお、電流再現部22の出力する実電流id,iqは、母線電流IDCのみならず、予測電流iue,ive,iweが利用されて算出されるものであるため、これは電動機10を流れている電流の検出値というわけではなく、検出値と推定値との混在した値となっている。
図4に、本実施形態にかかる電流再現部22の行なう選択処理の手順を示す。この処理は、先の図3に示した処理と同期して且つ、図3のステップS10の処理に先立ってくり返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS30において、この一連の処理に引き続いて行われる上記ステップS10の処理において出力される電圧ベクトルV(n)が、電圧ベクトルV1,V4のいずれかであるか否かを判断する。この処理は、母線電流IDCの絶対値がU相の相電流の絶対値と一致するか否かを判断するためのものである。すなわち、電圧ベクトルV1の場合、スイッチング素子Sup,Svn,Swnがオン状態となるため、母線電流IDCは、V相下側アームを流れる電流とW相下側アームを流れる電流との和となり、これは、U相上側アームを流れる電流に一致する。一方、電圧ベクトルV4の場合、スイッチング素子Sun,Svp,Swpがオン状態となるため、母線電流IDCは、U相下側アームを流れる電流に一致する。
そしてステップS30において肯定判断される場合、ステップS32において、電圧ベクトルV(n)が電圧ベクトルV4であるか否かを判断する。そして、ステップS32において肯定判断される場合、ステップS34においてU相の実電流iuを「−IDC」とする一方、ステップS32において否定判断される場合、ステップS36においてU相の実電流iuを「IDC」とする。これらの処理は、本実施形態では、相電流の極性を、インバータINVから電動機10へと電流が流出する場合に正と定めたことに対応したものである。ステップS34、S36の処理が完了する場合、ステップS38において、実電流iuと予測電流ive,iweとを選択する。
一方、ステップS30において否定判断される場合、ステップS40において、電圧ベクトルV(n)が電圧ベクトルV3,V6であるか否かを判断する。この処理は、母線電流IDCの絶対値がV相の相電流の絶対値と一致するか否かを判断するためのものである。そして、ステップS40において肯定判断される場合、ステップS42〜S48の処理において、上記ステップS32〜S38の処理の要領で、実電流ivを「IDC」とするか「−IDC」とするかの選択処理等を行なう。
同様、ステップS40において否定判断される場合、ステップS50において、電圧ベクトルV(n)が電圧ベクトルV2,V5であるか否かを判断する。この処理は、母線電流IDCの絶対値がW相の相電流の絶対値と一致するか否かを判断するためのものである。そして、ステップS50において肯定判断される場合、ステップS52〜S58の処理において、上記ステップS32〜S38の処理の要領で、実電流iwを「IDC」とするか「−IDC」とするかの選択処理等を行なう。
これに対し、ステップS50において否定判断される場合、電圧ベクトルV(n)がゼロ電圧ベクトルであることから、ステップS60において、予測電流iue,ive,iweを選択する。
上記ステップS38,S48,S58,S60の処理が完了する場合、ステップS62において、選択された3相の電流値をdq変換し、この一連の処理を一旦終了する。
なお、上記3相の予測電流iue,ive,iweのうちステップS38,S48,S58,S60の処理において採用されたものについては、先の図3に示した処理の前回の周期における予測電流ide(n+1),iqe(n+1)を3相変換した値である。この予測電流ide(n+1),iqe(n+1)は、電流再現部22を介して予測部33に入力される際には、既に未来の電流の予測値ではなく、現在の電流の推定値となっている。このため、母線電流IDCの検出タイミングを、先の図3に示したステップS10の処理に同期させることで、母線電流IDCと、予測電流iue,ive,iweとの位相を同期させることができる。
もっとも、電圧ベクトルが変更される場合、電圧ベクトルV(n)の出力時(更新時)においては、デッドタイムに起因して母線電流IDCがステップS38,S48,S58において想定する相の電流とならないおそれがある。このため、実際には、電圧ベクトルが変更される直前において検出される母線電流IDCをステップS38,S48,S58において選択された実電流iu,iv,iwとすることが望ましい。また、ステップS38,S48,S58の処理時は、電圧ベクトルが変更される直前における母線電流IDCの検出に先立って行われるようにしてもよい。この場合、ステップS38,S48,S58の処理は、近い将来検出される母線電流IDCの扱いを定める処理となる。
ところで、電流センサ16の検出値には、その振幅と実際の電流の振幅との間の比率が「1」とならない誤差であるいわゆるゲイン誤差が生じうる。そこで本実施形態では、予測電流ide,iqeからこの誤差の影響を低減すべく、以下の処理を行なう。
すなわち、先の図1に示す偏差算出部40では、d軸の予測電流ideと実電流idとについての互いに同位相の値同士の差を算出する。ここで、同位相の値とする手法としては、たとえば、実電流idを先の図3のステップS10において算出されたものとし、予測電流ideを、先の図3の一連の処理についての前回の制御周期における予測電流ide(n+1)とすればよい。フィードバック制御部42では、予測電流ideを実電流idにフィードバック制御するための操作量として、補償量idcompを算出する。詳しくは、偏差算出部40の出力値を入力とする比例要素、積分要素および微分要素の各出力同士の和を補償量idcompとする。
同様に、偏差算出部44では、q軸の予測電流iqeと実電流iqとについての互いに同位相の値同士の差を算出する。フィードバック制御部46では、予測電流iqeを実電流iqにフィードバック制御するための操作量として、補償量iqcompを算出する。詳しくは、偏差算出部44の出力値を入力とする比例要素、積分要素および微分要素の各出力同士の和を補償量iqcompとする。
そして、補正部48では、補償量idcompによって電流再現部22の出力する実電流idを補正し、これを予測部33に出力する。また、補正部50では、補償量iqcompによって電流再現部22の出力する実電流iqを補正し、これを予測部33に出力する。これら補正部48,50の出力値が、先の図3のステップS10において算出される実電流id,iqである。
こうした構成によれば、予測部33に入力される実電流id,iqは、予測電流ide,iqeにフィードバック制御される。ここで、予測電流ide,iqeは、モード決定部34によって選択されたスイッチングモードに対応するものである。そして、母線電流IDCにゲイン誤差が生じている場合、予測部33に予測誤差がない場合であっても、予測電流ide,iqeのベクトルノルムと母線電流IDCから算出される実電流id,iqのベクトルノルムとの間に乖離が生じる。このため、この乖離を、ゲイン誤差と相関を有するパラメータとして利用することができる。したがって、実電流id,iqと予測電流ide,iqeとに基づくフィードバック操作量によって予測部33の入力を補正することで、母線電流IDCにゲイン誤差が生じている場合であっても、予測部33によって予測される予測電流ide,iqeの予測精度を高く維持することができる。
図5に、電動機10を表面磁石同期電動機(SPMSM)とした場合についての本実施形態の効果を示し、図6に、電動機10を埋込磁石同期電動機(IPMSM)とした場合についての本実施形態の効果を示す。図示されるように、真の電流値iqRやその平均値iqRaの指令電流iq*に対する誤差は、上記補償量iqcompの利用によって減少する。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)予測部33に入力される実電流id,iqを、これと同位相の予測電流ide,iqeにフィードバック制御した。これにより、電流センサ16のゲイン誤差に起因した予測電流ide,iqeの誤差を低減することができ、ひいては電動機10の電流の制御性を向上させることができる。
(2)フィードバック制御部42,46を、積分要素を備えて構成した。これにより、予測電流ide,iqeのベクトルノルムと母線電流IDCに応じた実電流id,iqのベクトルノルムとの定常的な乖離を補償することが容易となる。
(3)フィードバック制御部42,46を、微分要素を備えて構成した。これにより、予測電流ide,iqeと実電流id,iqとの差に高調波ノイズが重畳した場合であっても、その影響を好適に抑制することができる。
(4)電流再現部22を備えた。これにより、検出値として母線電流IDCのみを用いて、予測電流ide,iqeを算出することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図7に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図7において、先の図1に示した処理や部材に対応するものについては便宜上同一の符号を付している。
本実施形態では、実電流id,iqの変化量を、予測電流ide,iqeの変化量Δide,Δiqe(=ide(n+2)−ide(n+1),iqe(n+2)−iqe(n+1))にフィードバック制御するための操作量として補償量idcomp,iqcompを算出する。
すなわち、変化量算出部53では、d軸の予測電流ide(n+1)と、実電流id(n+2)との差を算出する。ちなみに、ここでのd軸の予測電流ide(n+1)は、先の図3のステップS14において算出されるものであり、実電流id(n+2)は、2制御周期後のステップS10における値である。偏差算出部40では、実電流id(n+2)から予測電流ide(n+1)を減算した値と変化量Δideとの差を算出する。
同様に、変化量算出部52では、q軸の予測電流iqe(n+1)と、実電流iq(n+2)との差を算出する。ちなみに、ここでのq軸の予測電流iqe(n+1)は、先の図3のステップS14において算出されるものであり、実電流iq(n+2)は、2制御周期後のステップS10における値である。偏差算出部44では、実電流iq(n+2)から予測電流iqe(n+1)を減算した値と変化量Δiqeとの差を算出する。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、母線電流IDCを固定座標系の予測電流(予測電流iue,ive,iqe)にフィードバック制御する。
図8に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図8において、先の図1に示した処理や部材に対応するものについては便宜上同一の符号を付している。
図示されるように、母線電流推定部60は、モード決定部34によって決定されたスイッチングモードと、3相変換部21の出力する予測電流iue,ive,iweとを入力とし、予測母線電流IDCeを算出する。ここで、予測母線電流IDCeは、スイッチングモードが有効電圧ベクトルに対応する場合、予測電流iue,ive,iweのいずれかと絶対値が等しい値とされる。詳しくは、電圧ベクトルV1,V3,V5のそれぞれに対応する場合、予測電流iue,ive,iweのそれぞれとし、電圧ベクトルV2,V4,V6のそれぞれに対応する場合、予測電流iue,ive,iweのそれぞれに「−1」を乗算した値とする。
除算部62では、母線電流IDCと予測母線電流IDCeとの比を算出する。偏差算出部64では、上記比と1との差を算出し、フィードバック制御部66に出力する。フィードバック制御部66では、上記比を「1」にフィードバック制御するための母線電流IDCの補正係数Kを算出する。詳しくは、偏差算出部64の出力を入力とする比例要素、積分要素および微分要素の各出力同士の和として補正係数Kを算出する。補正部68では、母線電流IDCに補正係数Kを乗算して電流再現部22に出力する。
なお、スイッチングモードがゼロ電圧ベクトルに対応する場合、補正係数Kの算出処理を停止する。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
上記第1の実施形態の場合、電流センサ16のゲイン誤差を補償するために、予測電流ide,iqeを規範として用いた。しかし、予測部33にモデル誤差がある場合、電流センサ16のゲイン誤差を適切に補償することができない懸念がある。そこで本実施形態では、予測部33のモデル誤差を補償する処理を追加する。
図9に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図9において、先の図1に示した処理や部材に対応するものについては便宜上同一の符号を付している。
偏差算出部70では、予測電流ideと、同位相の実電流idとの差を算出する。フィードバック制御部72では、予測電流ideを実電流idにフィードバック制御するための操作量(モデル補正量Mdcomp)を算出する。詳しくは、偏差算出部70の出力を入力とする比例要素、積分要素および微分要素の各出力同士の和としてモデル補正量Mdcompを算出する。
同様に、偏差算出部74では、予測電流iqeと、同位相の実電流iqとの差を算出する。フィードバック制御部76では、予測電流iqeを実電流iqにフィードバック制御するための操作量(モデル補正量Mqcomp)を算出する。詳しくは、偏差算出部74の出力を入力とする比例要素、積分要素および微分要素の各出力同士の和としてモデル補正量Mqcompを算出する。そして、モデル補正量Mdcomp,Mqcompは、予測電流ide,iqeのそれぞれの補正量として、予測部33に入力される。詳しくは、たとえば、先の図3のステップS14における予測電流ide(n+1),iqe(n+1)を補正する補正量とされる。
ここで、モデル補正量Mdcomp,Mqcompを算出するフィードバック制御部72,76の比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインは、補償量idcomp,iqcompを算出するフィードバック制御部42,46の比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインよりも大きい値に設定されている。これにより、母線電流IDCによって得られる情報を規範として予測電流ide,iqeがモデル補正量Mdcomp,Mqcompによって補正される処理と、予測電流ide,iqeを規範としてゲイン誤差が補償される処理との干渉を好適に回避することができる。ここで、フィードバック制御部42,46のゲインを小さくするのは、ゲイン誤差の変化が非常に緩やかであることに鑑みた設定である。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
「ノルムフィードバック手段について」
上記第2の実施形態において、電動機10をSPMSMとして最小電流最大トルク制御を行なう場合、指令電流id*がゼロとなることに鑑み、q軸電流のみをフィードバック対象(補償量を算出するための入力パラメータ)としてもよい。
上記第3の実施形態においては、目標値を「1」としたが、これに限らない。たとえば図5、図6に示唆されるように、フィードバック制御によってゲイン誤差がゼロとはならないことに鑑みれば、目標値の適合によってゲイン誤差をさらに低減することも可能となると思われる。
補償量idcomp,iqcompや補正係数Kを、比例要素、積分要素および微分要素の各出力同士の和とするものに限らない。たとえば比例要素および積分要素の出力同士の和としたり、積分要素の出力値としたりするものであってもよい。もっとも、積分要素を用いるものにも限らず、比例要素の出力値とするものであってもよい。
積分要素等の入力パラメータとしては、上記各実施形態において例示したものに限らない。たとえば、電流再現部22の出力する電流ベクトルのノルムと、予測部33の予測電流ide,iqeのベクトルノルムとであってもよい。これらの差から算出される単一の補正量を、たとえば指令電流設定部26の設定する指令電流id*,iq*の位相に応じて補償量idcomp,iqcompに割り振るなら、上記第1の実施形態に準じた効果を奏する。また、ノルム同士の比から算出される単一の補正量によって、上記第3の実施形態の要領で母線電流IDCのゲイン補正を行ってもよい。
「予測処理補正手段について」
モデル補正量Mdcomp,Mqcompを、比例要素、積分要素および微分要素の各出力同士の和とするものに限らない。たとえば比例要素および積分要素の出力同士の和としたり、積分要素の出力値としたりするものであってもよい。もっとも、積分要素を用いるものにも限らない。
「電流再現手段について」
母線電流IDCのみでは不足する情報を予測電流から取得するものに限らない。たとえば電流センサとして、3相の電動機10の1つの端子を流れる電流を検出するもののみを備え、不足する情報を予測電流から取得するものであってもよい。
「平均電圧算出手段について」
たとえば、インバータINVの実際の操作に用いるスイッチングモードに対応する電圧ベクトルの所定期間の平均値を平均電圧としてもよい。
「予測手段について」
次回の電圧ベクトルV(n+1)によって生じる制御量のみを予測するものに限らない。たとえば、数制御周期先の更新タイミングにおけるインバータINVの操作による制御量まで順次予測するものであってもよい。
また、dq軸上の電流を予測するものに限らず、固定座標系の電流を予測するものであってもよい。この場合、予測電流ide,iqeを固定座標系の成分に変換する回転座標成分算出手段を備える必要がない。
「決定手段について」
たとえば、上記第1の実施形態において、予測電流ide(n+2)と指令電流id*(n+2)との差の絶対値と、予測電流iqe(n+2)と指令電流iq*(n+2)との差の絶対値との加重平均処理値を、乖離度合いの評価対象とするパラメータとしてもよい。要は、乖離度合いが大きいほど評価が低くなることを定量化すべく、乖離度合いと評価との間に正または負の相関関係があるパラメータによって定量化すればよい。
「制御量について」
インバータINVの操作を決定するために用いる制御量(指令値との乖離度の評価対象となる制御量)としては、電流に限らない。たとえば、トルクおよび磁束であってもよい。またたとえば、トルクのみまたは磁束のみであってもよい。この場合であっても、トルクや磁束の予測に電流を用いる場合には、上記各実施形態の要領で、予測電流を、電流の検出値の誤差を把握する上での規範電流情報とすることができる。
上記各実施形態では、回転機の究極の制御量(予測対象であるか否かにかかわらず、最終的に所望の量とされることが要求される制御量)を、トルクとしたが、これに限らず、例えば回転速度等としてもよい。
「回転機について」
回転機としては、3相回転機に限らず、5相回転機等、4相以上の回転機であってもよい。なお、たとえば5相回転機の場合、4相以上の電流情報が必要である。ただし、電流センサの数としては、4つに限らず、不足分については予測電流等によって補えばよい。
上記実施形態では、固定子巻線がスター結線されたものを想定したがこれに限らず、デルタ結線されたものであってもよい。この場合、回転機の端子と相とは一致しない。
回転機としては、電動機に限らず、発電機であってもよい。
「そのほか」
直流電圧源としては、バッテリ12に限らず、例えばバッテリ12の電圧を昇圧するコンバータの出力端子であってもよい。
互いに相違する電圧値の電圧のそれぞれを印加する各別の電圧印加手段と回転機の端子との間を開閉するスイッチング素子を備えて構成される電力変換回路としては、回転機の端子を直流電圧源の正極および負極のそれぞれに選択的に接続するスイッチング素子を備える直流交流変換回路(インバータINV)に限らない。例えば、多相回転機の各相に3つ以上の互いに相違する値の電圧のそれぞれを印加する電圧印加手段と回転機の端子との間を選択的に開閉するスイッチング素子を備えるものであってもよい。なお、回転機の端子に3つ以上の互いに相違する値の電圧を印加するための電力変換回路としては、例えば特開2006−174697号公報に例示されているものがある。
10…モータジェネレータ、12…バッテリ(直流電圧源の一実施形態)、14…制御装置(回転機の制御装置の一実施形態)。

Claims (8)

  1. 互いに相違する電圧値の電圧のそれぞれを印加する各別の電圧印加手段と回転機の端子との間を開閉するスイッチング素子を備えて構成される電力変換回路について、該電力変換回路を構成するスイッチング素子のオン・オフ操作によって、前記回転機を流れる電流、前記回転機のトルク、および前記回転機の磁束の少なくとも1つを有した制御量を制御する回転機の制御装置において、
    前記スイッチング素子のそれぞれがオン状態であるかオフ状態であるかを示すスイッチングモードを仮設定し、該仮設定されたスイッチングモードのそれぞれに応じた前記制御量に関する予測を行なう予測手段と、
    該予測手段による予測結果に基づき、前記電力変換回路の実際の操作に用いるスイッチングモードを決定する決定手段と、
    該決定されたスイッチングモードとなるように前記電力変換回路を操作する操作手段と、
    前記回転機を流れる電流の検出値を取得する取得手段とを備え、
    前記予測手段による前記予測する処理は、前記制御量または該制御量の算出のためのパラメータとしての前記回転機の電流についての予測を行なう電流予測処理を含み、
    前記電流の検出値に応じた前記回転機の電流ベクトルのノルムを前記電流予測処理によって予測される電流ベクトルのノルムのうち前記操作手段によって採用されたスイッチングモードに対応するものにフィードバック制御するノルムフィードバック手段をさらに備えることを特徴とする回転機の制御装置。
  2. 前記ノルムフィードバック手段による前記フィードバック制御は、前記電流の検出値に応じた前記回転機を流れる電流についてのq軸成分を前記電流予測処理によって予測される電流のq軸成分のうちの前記操作手段によって採用されたスイッチングモードに対応するものにフィードバック制御する処理であることを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
  3. 前記ノルムフィードバック手段による前記フィードバック制御は、前記電流の検出値に応じた前記回転機の各端子の電流と前記電流予測処理によって予測される前記各端子の電流との比を目標値にフィードバック制御する処理であることを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
  4. 前記ノルムフィードバック手段は、前記電流の検出値に応じた前記回転機を流れる電流ベクトルと前記電流予測処理によって予測される電流ベクトルとのそれぞれのノルム同士の差または該ノルムと相関を有するパラメータ同士の差を入力とする積分要素の出力に基づき、前記制御量に関する予測を行なう処理において用いられるパラメータを補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  5. 前記ノルムフィードバック手段は、前記制御量に関する予測を行なう処理において用いられるパラメータの補正に際し、前記電流の検出値に応じた前記回転機の電流ベクトルと前記電流予測処理によって予測される電流ベクトルとのそれぞれのノルム同士の差または該ノルムと相関を有するパラメータ同士の差を入力とする微分要素の出力をさらに用いることを特徴とする請求項4記載の回転機の制御装置。
  6. 前記予測手段は、前記回転機の端子のうちの一部を流れる電流としての前記電流の検出値と、dq座標系の電流の算出に必要な残りの端子を流れる電流としての前記予測される電流とを、dq座標系の電流に変換する電流再現手段を備え、該電流再現手段によって再現される電流を前記制御量に関する予測を行なう処理に用いるものであり、
    前記ノルムフィードバック手段は、前記電流の検出値に応じた前記回転機を流れる電流ベクトルのノルムに関するパラメータとして、前記再現される電流を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  7. 前記電力変換回路は、直流電圧源の正極および負極のそれぞれに前記回転機の端子を選択的に接続するスイッチング素子を備える直流交流変換回路であり、
    前記回転機の端子であって且つ前記直流交流変換回路の出力電圧が印加される端子の数は、3であり、
    前記取得手段は、前記直流交流変換回路の入力端子を流れる電流の検出値を取得するものであり、
    前記予測処理は、前記操作手段によって採用されたスイッチングモードに対応する電圧ベクトルが有効電圧ベクトルである場合、前記電流の検出値を前記回転機の3つの端子のうちのいずれか1つの端子を流れる電流の初期値として利用するものであり、
    前記ノルムフィードバック手段は、前記操作手段によって採用されたスイッチングモードに対応する電圧ベクトルが有効電圧ベクトルである場合、前記回転機の3つの端子のうちの前記採用されたスイッチングモードに応じて定まる1つの端子を流れる電流としての前記電流の検出値に基づき、前記電流の検出値に応じた前記回転機を流れる電流ベクトルのノルムに関するパラメータを定めることを特徴とする請求項6記載の回転機の制御装置。
  8. 前記取得手段によって取得される電流の検出値に基づく前記予測手段によって予測される電流の評価結果に応じて、前記制御量の予測処理を補正する予測処理補正手段をさらに備え、
    前記ノルムフィードバック手段のフィードバックゲインは、前記予測処理補正手段のフィードバックゲインよりも小さいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
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