JP4507807B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなるフィルム - Google Patents
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特に、レトルト食品の包装材料には、高温処理が施されるレトルト殺菌に対応できる耐熱性と、低温での使用に対応できる低温での耐衝撃性の両立が求められる。
また、近年は、レトルト食品の包装材料が多様化しており、内容物を確認できることが求められていることから、レトルト食品の包装材料としては、内容物を確認できる透明性に優れたフィルムが用いられている。
かかる状況の下、本発明の目的は、剛性、透明性、耐衝撃性およびヒートシール強度のいずれにも優れているレトルト食品包装用フィルムの材料として好適なポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなるフィルムを提供することにある。
すなわち、本発明は、
プロピレンが主成分である単量体の重合体部分と、プロピレンとエチレンとの共重合体部分からなり、下記要件(A−1)、(A−2)および(A−3)を満たすプロピレン系共重合体(A)83〜95重量%と、下記要件(B−1)および(B−2)を満たすエチレン重合体(B)5〜17重量%とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物(但し、ポリプロピレン系樹脂組成物の全重量を100重量%とする)およびそれからなるフィルムに係るものである。
要件(A−1)20℃キシレン可溶部(CXS)が10重量%以上30重量%未満である。
要件(A−2)20℃キシレン可溶部の極限粘度([η]CXS)が、2.0(dL/g)以上である。
要件(A−3)230℃でのメルトフローレート(g/10分)が1.5以上5未満である。
要件(B−1)密度が0.93g/cm3以上である。
要件(B−2)190℃でのメルトフローレート(g/10分)が10以上である。
本発明で用いられるプロピレン系共重合体(A)は、プロピレンが主成分である単量体の重合体部分と、プロピレンとエチレンとの共重合体部分からなる共重合体である。
共重合体(A)のプロピレンが主成分である単量体の重合体部分は、耐熱性の観点から、融点が160℃以上であるプロピレン単独重合体が好ましい。また、融点が155℃以上であれば、少量のエチレンやブテン−1などが共重合されていても良い。
共重合体(A)の重合方法としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの不活性溶剤中で重合する方法、液状のプロピレンやエチレン中で重合する方法、気体であるプロピレンやエチレン中に触媒を添加し、気相状態で重合する方法、またはこれらを組み合わせて重合する方法が挙げられる。
本発明で用いられるエチレン重合体(B)は、エチレン単独重合体またはエチレンを主成分とするエチレンα−オレフィン共重合体である。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
また、本発明のフィルムは、複合フィルムの一層としても好適に使用される。複合フィルムは、本発明のフィルムとその他のフィルムからなるフィルムであって、その他のフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン二軸延伸フィルム、未延伸ナイロンフィルム、延伸ポリテレフタル酸エチルフィルムやアルミニウム箔等が挙げられ、複合フィルムの製造方法としては、ドライラミネート法や押出ラミネート法が挙げられる。
(1)プロピレン系共重合体(A)に含まれるプロピレンとエチレンとの共重合体部分の含有量(単位:重量%)
重合時の物質収支から求めた。
プロピレン系共重合体(A)に含まれるエチレン含量を、高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法に従って求めた。
そして、プロピレン系共重合体(A)中のプロピレンとエチレンとの共重合体部分に含まれるエチレンの含有量を、次式から計算した。
(エチレンの含有量)=((A)に含まれるエチレン含有量)×100/((A)中のプロピレンとエチレンとの共重合体部分の含有量)
重合体1gに対してキシレン200mLを加え、沸騰させて完全に溶解させた後降温し、20℃で1時間以上状態調整を行った。その後、ろ紙を用いて可溶部と不溶部に分離した。ろ液から溶剤を除去して乾固して可溶部の試料とし、試料の重量を測定して含有量を求めた。
JIS K7210に準拠して測定した。プロピレン系共重合体のMFRは、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。エチレン重合体のMFRは、温度190℃、荷重2.16kgで測定した。
JIS K6760に従って測定した。融点100℃以上のものはJIS K6760にあるアニーリングを行った後測定した。
ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定を行った。
50mm押出機にTダイを取り付け、樹脂温度280℃で溶融押出を行った。溶融押出されたものを50℃の冷却水を通水した冷却ロールで冷却して、厚さ30μmを得た。さらに引取の速度を2分の1にして60μmのフィルムを得た。60μmのフィルムを加工時にはコロナ処理をフィルム表面の濡れ張力が42ダイン以上となるように行った。
JIS K7105に従い測定した。
−10℃において、東洋精機製フィルムインパクトテスターを使用して、直径15mmの半球状衝撃頭を用いて、フィルムの衝撃強度を測定した。
120mm×30mmのフィルム(製膜方向と長辺方向が一致するように採取した。)を用いて、23℃、湿度50%の雰囲気下において、安田精機製作所製オートストレインを用いて、つかみ間隔60mm、引張速度5mm/分で引張り試験を行い、引張−応力カーブのゼロ点での接線から初期弾性率を測定した。
康井精機製卓上型テストコーターを用いて、厚さ15μmの延伸ナイロン基材フィルム(ユニチカ製エンブレム)に、エステル系接着剤(主剤:タケラックA−310(武田薬品製)、硬化剤:タケネートA−3(武田薬品製)、主剤:硬化剤=12:1)を固形分が3.7g/m2となるように酢酸エチルを溶剤として塗布した後85℃で乾燥させ、(7)で得られた60μmのフィルムを、コロナ処理側を接着面として40℃、3kg/cm2で圧着させた後、40℃で2日間、加熱熟成することによりドライラミネーションフィルムを得た。
ドライラミネーションフィルムを2枚重ねに幅15mm×長さ80mm(フィルムの製膜方向と長辺方向が一致)で切り取り、TP−701B型ヒートシールテスター(テスター産業株式会社製)を用いて幅10mmのヒートシールを上部ヒータ200℃、下部ヒーター55℃、1.0Kg/cm2の条件で1.0秒間行った。
シールされたサンプルをORIENTEC社製STA−1225型引張試験機を用いて、引張速度200mm/分で引張試験を行い、剥離進行時の引張荷重をヒートシール強度とした。
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で気相中で極限粘度が1.8dL/gのプロピレン単独重合体部分を製造し、次いで第二工程を気相中で極限粘度が3.1dL/g、エチレン含有量が25重量%のプロピレンとエチレンとの共重合体部分を製造した。プロピレンとエチレンとの共重合体部分の割合は23重量%であった。
得られた共重合体100重量部に水酸化カルシウム0.005重量部、イルガノックス1010を0.2重量部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキサン0.0008重量部を加えて単軸押出機で250℃で溶融混練して、プロピレン系共重合体(A1)を得た。
プロピレン系共重合体(A1)のCXSは14重量%、極限粘度は2.0dL/g、[η]CXSは2.4dL/g、MFRは2.8g/10分であった。
プロピレン系共重合体(A1)90重量部にエチレン重合体(B1)として、KEIYOポリエチレンG1900(京葉ポリエチレン株式会社製、MFR=16g/10分、密度=0.96g/cm3)を10重量部を添加し、フィルム加工を行った。得られたフィルムの特性を表1に示した。
エチレン重合体(B2)として、KEIYOポリエチレンM6910(京葉ポリエチレン株式会社製、MFR=22g/10分、密度=0.96g/cm3)を10重量部を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの特性を表1に示した。
プロピレン系共重合体(A1)の量を95重量部、エチレン重合体(B1)を5重量部とした以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの特性を表1に示した。
実施例1に相当するプロピレン系共重合体(A1)90重量部にエチレン重合体(B1)10重量部を溶融混練した組成物100重量部に、エチレン−プロピレン共重合エラストマー(C1)として商品名タフマーP0280(三井化学株式会社製、密度が0.87g/cm3、MFR(190℃)=2.9g/10分)を3.1重量部添加し、フィルム加工を行った。得られたフィルムの特性を表1に示した。
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で気相中で極限粘度が1.8dL/gのプロピレン単独重合体部分を製造し、次いで第二工程を気相中で極限粘度が3.0dL/g、エチレン含有量が30重量%のプロピレンとエチレンとの共重合体部分を製造した。
プロピレンとエチレンとの共重合体部分の割合は22重量%であった。得られた共重合体100重量部に水酸化カルシウム0.01重量部、イルガノックス1010を0.2重量部を加えて単軸押出機で溶融混練して、プロピレン系共重合体(A2)を得た。CXSは13重量%、極限粘度は2.0dL/g、[η]CXSは2.7dL/g、MFRは2.8g/10分であった。
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて気相中でプロピレン単独重合体を製造した。得られた単独重合体100重量部にイルガノックス1010 0.15重量部を加えて溶融混練して、プロピレン単独重合体(A3)を得た。CXSは0.7%、極限粘度は1.7dL/g、MFRは7.2g/10分であった。
上記プロピレン系共重合体(A2)50重量部に、プロピレン単独重合体(A3)50重量部を均一に混合し、プロピレン系共重合体(A4)とし、フィルム加工を行った。得られたフィルムの特性を表1に示した。
数値計算で求められたプロピレン系共重合体(A4)のCXSは6.9重量%、極限粘度は1.9dL/g、[η]CXSは2.7dL/g、MFRは4.4g/10分であった。
プロピレン系共重合体(A1)の量を100重量部とし、エチレン重合体を添加しなかった以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの特性を表1に示した。
プロピレン系共重合体(A1)の量を80重量部、エチレン重合体(B1)を20重量部とした以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの特性を表1に示した。
エチレン重合体(B3)として、KEIYOポリエチレンG2502(京葉ポリエチレン株式会社製、MFR=5g/10分、密度=0.96g/cm3)を10重量部を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの特性を表1に示した。
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で気相中で極限粘度が2.8dL/gのプロピレン単独重合体部分を製造し、次いで第二工程を気相中で極限粘度が2.8dL/g、エチレン含有量が36重量%のプロピレンとエチレンとの共重合体部分を製造した。プロピレンとエチレンとの共重合体部分の割合は21重量%であった。
得られた共重合体100重量部に水酸化カルシウム0.005重量部、イルガノックス1010を0.2重量部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキサン0.024重量部を加えて単軸押出機で溶融混練して、プロピレン系共重合体(A5)を得た。
プロピレン系共重合体(A5)のCXSは13重量%、極限粘度は2.0dL/g、[η]CXSは1.8dL/g、MFRは3.3g/10分であった。
プロピレン系共重合体(A5)90重量部にエチレン重合体(B1)として、KEIYOポリエチレンG1900(京葉ポリエチレン株式会社製、MFR=16g/10分、密度=0.96g/cm3)を10重量部を添加し、フィルム加工を行った。得られたフィルムの特性を表1に示した。
エチレン重合体(B4)として、スミカセンG801(住友化学工業株式会社製、MFR=20g/10分、密度=0.92g/cm3)を10重量部を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの特性を表1に示した。
これに対して、プロピレン系共重合体(A)が要件(A−1)を満たさず、エチレン重合体(B)を用いていない比較例1は透明性、耐衝撃性に劣り、
エチレン重合体(B)を用いていない比較例2は剛性、透明性に劣り、
プロピレン系共重合体(A)とエチレン重合体(B)の量比が本発明の要件を満たしていない比較例3はヒートシール強度に劣り、
本発明の要件(B−2)を満たさない比較例4は透明性に劣り、
本発明の要件(A−2)を満たさない比較例5はヒートシール強度に劣り、
本発明の要件(B−1)を満たさない比較例6は剛性、ヒートシール強度に劣ることが分かる。
Claims (6)
- プロピレンが主成分である単量体の重合体部分と、プロピレンとエチレンとの共重合体部分からなり、下記要件(A−1)、(A−2)および(A−3)を満たすプロピレン系共重合体(A)83〜95重量%と、下記要件(B−1)および(B−2)を満たすエチレン重合体(B)5〜17重量%とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物(但し、ポリプロピレン系樹脂組成物の全重量を100重量%とする)。
要件(A−1)20℃キシレン可溶部(CXS)が10重量%以上30重量%未満である。
要件(A−2)20℃キシレン可溶部の極限粘度([η]CXS)が、2.0(dL/g)以上である。
要件(A−3)230℃でのメルトフローレート(g/10分)が1.5以上5未満である。
要件(B−1)密度が0.93g/cm3以上である。
要件(B−2)190℃でのメルトフローレート(g/10分)が10以上である。 - エチレン重合体(B)の190℃でのメルトフローレート(g/10分)が15以上である請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
- プロピレン系共重合体(A)が、不活性溶剤の不存在下に、プロピレンが主成分である単量体を重合する第一工程で、プロピレンが主成分である単量体の重合体部分を製造し、次いで、気相中でプロピレンとエチレンを重合する第二工程で、プロピレンとエチレンとの共重合体部分を製造して得られた共重合体である請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物と、当該ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、密度が0.90g/cm3以下のエチレン−α−オレフィン共重合エラストマー(C)0.5〜5重量部とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなるフィルム。
- 200℃でのヒートシール強度が4.0Kg以上である請求項5記載のフィルム(ただし、ORIENTEC社製STA−1225型引張試験機を用いて、引張速度200mm/分で引張試験を行い、剥離進行時の引張荷重をヒートシール強度とした。)。
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