JP4507735B2 - 湿式摩擦部材及び湿式摩擦部材ユニット - Google Patents
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Description
第2の技術的課題は、上記湿式摩擦部材を用いた湿式摩擦部材ユニットを提供することにある。
摩擦調整剤が含有された潤滑油中で、相手方部材に摺接させて用いられる湿式摩擦部材であって、
前記相手方部材に対して摺接する摺接部に、前記摩擦調整剤を吸着する性質を有する第1組成物と、該第1組成物よりも前記摩擦調整剤の吸着性が低い性質を有する第2組成物とが含有されている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2〜10に記載の通りとなる。
第1,第2摩擦部材を備え、摩擦調整剤が含有された潤滑油中で、該第1摩擦部材と該第2摩擦部材とを互いに摺接させて使用する摩擦部材ユニットであって、
前記第2摩擦部材が、前記第1摩擦部材に対して摺接する摺接部において、前記摩擦調整剤を吸着する性質を有する第1組成物と、該第1組成物よりも前記摩擦調整剤の吸着性が低い性質を有する第2組成物とを含有している構成としてある。この請求項11の好ましい態様としては、請求項12以下の記載の通りとなる。
図1は、実施形態に係る湿式摩擦部材ユニットを示す模式図である。この摩擦部材ユニット1は、第1摩擦部材2と第2摩擦部材3とを備えており、この第1摩擦部材2の摺接部4と第2摩擦部材3の摺接部5とを、潤滑油(図示略)中において、開放状態から締結状態に移行させることにより摩擦を発生させ、これにより、いずれか一方の側(本実施形態においては第1摩擦部材2)からのトルクが他方の側(本実施形態においては第2摩擦部材3)に伝達できることになっている。このような湿式摩擦部材ユニット1は、自動変速機のロックアップクラッチ、多板クラッチ、ブレーキバンド、AT&CVTの発進クラッチ等に用いられる。
この摩擦調整剤FMとしては、例えば、
アミンとして、CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7NH2
アミドとして、CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7CONH2
が用いられる。
具体的には、C−H基含有層4は、繊維、充填材、バインダー等により構成されており、その構成に基づき多孔質性が確保され、その繊維(有機繊維)に基づきC−H基が確保されている(いわゆるペーパー摩擦材を構成)。この場合、例えば、繊維としては、セルロース、アラミド等の有機繊維や、チタン酸カリ、アルミナ、カーボン等の無機繊維が用いられ、充填材としては、エラストマーが用いられ、バインダーとしては、フェノール樹脂、アラミド樹脂が用いられる。また、多孔質なC−H基含有層4の別の態様として、基材6表面にセルロース繊維シート等の天然繊維シート又はポリアミド系の合成繊維シートをバインダ等をもって貼り付けることにより形成してもよい。基材6としては、鉄系、アルミニウム系、銅系等の金属部材が用いられる。
この摩擦係数と金属原子番号との関係は、低速すべり試験機((株)オリエンテック 型式ATF−S)を使用して、下記共通条件の下で、各種金属、酸化物、炭化物、窒化物の各面について摩擦係数μを測定した。
(1)規定形状の相手方部材、試験片を使用
(2)相手方部材:ベース材にセルロース繊維シートを貼り付けたもの
(3)試験片:スチール上に表面処理(各種酸化物、炭化物、窒化物の被膜処理)
(4)面圧 1MPa
(5)周速 0.1m/s
(6)大気中、無潤滑
すなわち、前記摩擦調整剤FMの極性基の反応性(吸着性)は、
反応性(吸着性): 金属 > 酸化物 > 炭素
とされ、酸化物に対する摩擦調整剤FMの極性基の吸着性がある程度確保されるのに対して、炭素Cに対する摩擦調整剤FMの極性基の吸着性は低くなっている。このため、図2に示すように、第2摩擦部材3の摺接部5において、酸化物と炭素Cとを存在させれば、酸化物に対しては潤滑油中の摩擦調整剤FMが吸着して積層膜FMFが形成されることになる一方、炭素Cに対しては摩擦調整剤FMが吸着せずそこには積層膜FMFが形成されないことになる。このことから、潤滑油中に摩擦調整剤FMを多めに添加した状況の下で、第2摩擦部材3における摺接部5の炭素Cの存在比率を調整することにより、摩擦調整剤FMの添加意義(μ−V特性をdμ/dV>0とする)を生かしつつ(残しつつ)、μ−V特性がdμ/dV<0にならない範囲で第2摩擦部材3における摺接部5表面の積層膜FMFの形成量を減らすことができることになり、これにより、ジャダーを防止しつつ、摩擦係数μの低下をも防止でき、ひいては、第1,第2摩擦部材3間のトルク容量(伝達できる上限のトルク)の低下を防止できることになる。
静摩擦: 炭素 > 酸化物 > 金属
とされ、C−H基含有層4に対する炭素Cの静摩擦は高い。このため、前述の如く、炭素Cを利用して、積層膜FMFの形成量を抑制することに基づきトルク容量の低下を防止できるにとどまらず、むしろ、その炭素Cの存在に基づきトルク容量を高めることができることになる。
(1)JASO M349−2001 規定形状のフリクションプレート、スチールプレートを使用
(2)フリクションプレート(第1摩擦部材):ペーパー摩擦材 ダイナックス D0880
(3)スチールプレート(第2摩擦部材):スチール上に表面処理(Cr2O3/Cr2O3+C)
(4)荷重 0.5MPa
(5)回転数 250rpm→0に落として各時点の摩擦係数測定
(6)潤滑油 マツダ純正ATFSuper
(7)油量 150cc
(8)油温 120℃
潤滑油 :ヘ゛ースオイル
油温:80℃
面圧:1MPa
相手摩擦材(C−H基含有):D0530-70 タ゛イナックス製
(1)JASO M349−2001 規定形状のフリクションプレート、スチールプレートを使用
(2)フリクションプレート(第1摩擦部材):ペーパー摩擦材 ダイナックス D0880
(3)スチールプレート(第2摩擦部材):スチール上に表面処理 (Cr2O3/Cr2O3+C)
(4)荷重 0.5MPa
(5)回転数 1rpm 保持
(6)潤滑油 マツダ純正ATFSuper
(7)潤滑油量 150cc
(8)潤滑油温 120℃
(1)JASO M349−2001 規定形状のフリクションプレート(第1摩擦部材)、スチールプレート(第2摩擦部材)を使用
(2)フリクションプレート:ペーパー摩擦材 ダイナックス D0880
(3)スチールプレート:スチール上に表面処理 (Cr2O3/Cr2O3+C)
(4)荷重 0.5MPa
(5)潤滑油 マツダ純正ATFSuper
(6)油量 150cc
(7)油温 120℃
尚、炭素含有割合の好ましい下限については、実際に要求されるトルク容量から、図7に基づき、総重量に対して30wt%として設定した。
PVDより被膜を形成する方法
酸化物と炭素からなる被膜(層)の処理は、プラズマを利用したイオンプレーティングを用いることにより、プレート(基材7)にクロム酸化物と炭素とが複合化された被膜を形成することができる。真空容器にベンゼン(C6H6)ガスやメタン(CH4)などの炭化水素ガスを導入し、電極間に直流アーク放電させることで、そのプラズマ中で炭化水素イオンや励起されたラジカルが生成される。その際、電極をCrターゲットとしておくことでCrもターゲットから蒸発し、炭化水素イオンと伴に直流の負電圧がかけられたコーティングされる製品に電極間電圧に応じたエネルギーで衝突し固体化し成膜される。その移動中に雰囲気に残存している酸素でCrの金属酸化物とすることで、カーボンとクロム酸化物とからなる複合化膜が形成される。ターゲットの材質を変えることで他の酸化物との複合化被膜を作ることができる。この方法によれば、基材表面の必要個所に酸化物と炭素とを簡単に形成でき、また、金属により酸化物及び炭素を強固に保持でき、基材への密着性、耐久性、放熱性等を向上させることができる。
溶射により被膜を形成する方法
溶射により被膜を形成することができる。この場合、例えば、エアロプラズマ株式会社製のツインアノード溶射機を用い、市販のクロム酸化物粉末とダイヤモンド粉末とを基材であるスチール上に形成する。この方法においては、あらかじめ所定の量に配合した粉末を造粒したものを用意した上で、各電極に140Aの電流を流しながらフィーダーによりプラズマ中にその粉末を供給し、プラズマ溶射カ゛ンの2倍のエネルギーを加えることで酸化物と炭素とを半溶融の状態にして、薄く、緻密で基材と密着性のよいクロム酸化物と炭素の被膜を形成する。
めっきにより被膜を形成する方法
複合めっきによりクロム酸化物と炭素Cとを含有する被膜を形成することができる。ニッケル浴中に所定量クロム酸化物粒子とダイヤモンド粉末を懸濁させて、被処理物である基材にめっきをすることで、表面にクロム酸化物粒子及びダイヤモンド粉末を含有しためっき被膜を形成する。この方法によれば、基材表面の必要個所に酸化物と炭素とを簡単に形成でき、また、金属により酸化物及び炭素を強固に保持でき、基材への密着性、耐久性、放熱性等を向上させることができる。
焼結により被膜を形成する方法
焼結により基材上に被膜を形成することができる。所定の比率に調整した酸化物粉末と炭素粉末と金属粉末の予備成形体を用意し、これらをプレート状の部品として不活性雰囲気中で焼結するか、あるいは、金属プレート(基材)上に粉末をセットして焼結することで2層構造の部材とする。さらには、鉄とダイヤモンド粒子とからなる焼結部品を予め用意し、その部材の気孔中に重クロム酸溶液を含浸させた後、その部材を電気炉中で加熱することで焼結材表面にクロム酸化物を形成させる。この方法によれば、基材表面の必要個所に酸化物と炭素とを簡単に形成でき、また、金属により酸化物及び炭素を強固に保持でき、基材への密着性、耐久性、放熱性等を向上させることができる。
スプレー塗装法(コーティング)による皮膜の形成。
溶剤(N-M-Pノルマルメチルピロリドン)、バインダー:ポリアミドイミドなどの耐熱性樹脂分をベースに、クロム酸化物粉末とダイヤモンド粒子とを所定量配合した塗料を用意し、施工物である基材に塗布した後、電気炉を用いて230℃にて乾燥させることで被膜を形成する。この方法によれば、基材表面の必要個所に酸化物と炭素とを簡単に形成でき、また、耐熱性樹脂バインダーにより酸化物及び炭素を強固に保持でき、基材への密着性、耐久性、放熱性等を向上させることができる。
2 第1摩擦部材(相手方部材)
3 第2摩擦部材
4 第1摩擦部材の摺接部
5 第2摩擦部材の摺接部
7 第2摩擦部材の基材
Claims (16)
- 摩擦調整剤が含有された潤滑油中で、相手方部材に摺接させて用いられる湿式摩擦部材であって、
前記相手方部材に対して摺接する摺接部に、前記摩擦調整剤を吸着する性質を有する第1組成物と、該第1組成物よりも前記摩擦調整剤の吸着性が低い性質を有する第2組成物とが含有されている、
ことを特徴とする湿式摩擦部材。 - 請求項1において、
前記相手方部材がC−H基を含有することを前提として、前記第2組成物が炭素からなる、
ことを特徴とする湿式摩擦部材。 - 請求項2において、
前記第1組成物が酸化物である、
ことを特徴とする湿式摩擦部材。 - 請求項3において、
前記酸化物が、遷移金属の酸化物とされている、
ことを特徴とする湿式摩擦部材。 - 請求項3において、
前記炭素の炭素含有割合が、総重量を示す前記炭素の炭素量と前記酸化物の酸化物量との和に対して30〜70重量%に設定されている、
ことを特徴とする湿式摩擦部材。 - 請求項3において、
前記摺接部が、酸化物及び炭素を含有する被膜層をもって形成されている、
ことを特徴とする湿式摩擦部材。 - 請求項6において、
前記摺接部が、基材金属と酸化物と炭素とが複合化して形成され、或いは金属と酸化物と炭素とを複合化した被膜層をもって形成されている、
ことを特徴とする湿式摩擦部材。 - 請求項6において、
前記被膜層が、溶射、めっき、PVD、焼結、スプレー塗装法の1つ以上の手段に基づいて形成されている、
ことを特徴とする湿式摩擦部材。 - 請求項1において、
前記相手方部材がC−H基を含有することを前提として、前記第1組成物が酸化物からなる、
ことを特徴とする湿式摩擦部材。 - 請求項9において、
前記酸化物が、遷移金属の酸化物とされている、
ことを特徴とする湿式摩擦部材。 - 第1,第2摩擦部材を備え、摩擦調整剤が含有された潤滑油中で、該第1摩擦部材と該第2摩擦部材とを互いに摺接させて使用する摩擦部材ユニットであって、
前記第2摩擦部材が、前記第1摩擦部材に対して摺接する摺接部において、前記摩擦調整剤を吸着する性質を有する第1組成物と、該第1組成物よりも前記摩擦調整剤の吸着性が低い性質を有する第2組成物とを含有している、
ことを特徴とする湿式摩擦部材ユニット。 - 請求項11において、
前記第1摩擦部材が、前記第2摩擦部材に対して摺接する摺接部において、C−H基を含有し、
前記第2摩擦部材における前記第2組成物が炭素とされている、
ことを特徴とする湿式摩擦部材ユニット。 - 請求項12において、
前記第2摩擦部材における前記第1組成物が酸化物とされている、
ことを特徴とする湿式摩擦部材ユニット。 - 請求項13において、
前記酸化物が、遷移金属の酸化物とされている、
ことを特徴とする湿式摩擦部材ユニット。 - 請求項13において、
前記摺接部が、基材金属と酸化物と炭素とが複合化して形成され、或いは金属と酸化物と炭素とを複合化した被膜層をもって形成されている、
ことを特徴とする湿式摩擦部材ユニット。 - 請求項11〜15のいずれかにおいて、
前記第1,第2摩擦部材がクラッチの摩擦要素に用いられる、
ことを特徴とする湿式摩擦部材ユニット。
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