JP4506565B2 - 希土類金属−鉄−窒素系磁性材料 - Google Patents

希土類金属−鉄−窒素系磁性材料 Download PDF

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本発明は、希土類金属−鉄窒化物の粉末による磁性材料、特に安定的に高い保磁力を有する磁性材料に関する。
希土類金属R−鉄Fe−窒素N系の磁性材料は、希土類金属R−鉄Fe合金に窒素を吸収させた窒化物系の粉末状の磁性材料で、磁性体の粉末は、樹脂等により固形化されたり、焼結されたりして、永久磁石として利用される。希土類金属−鉄−窒素系磁性材料は、残留磁化とさらに保磁力とが共に大きく、その用途が注目されている。
希土類金属−鉄−窒素系磁性材料の製造には、従来は、溶解法と、還元拡散法とが知られている。溶解法は、原料として希土類金属と鉄とを溶解してインゴットに鋳造し、このインゴットを粉砕して希土類金属−鉄合金の粉末にし、この粉末を窒素中で加熱して窒化処理して窒素を含有させる方法である。
還元拡散法は、原料として希土類金属酸化物粉末と金属鉄ないし酸化鉄の粉末との混合粉にCa粒を混合して、不活性雰囲気中で加熱することにより、Caによるこれら酸化物粉末を還元して、希土類金属−鉄合金粉末にし、これを窒化することにより、希土類金属−鉄−窒素系材料を粉末状で得る方法である(例えば、特許文献1)。
これらの磁性体粉末は、例えば、合成樹脂等のバインダと混練され、成形されるが、成形硬化過程で磁化することにより、所望の形状の強磁石として利用される。
特開平6−81010号公報
これらの製造方法で形成された希土類金属−鉄−窒素系磁性体粉末は、一般的には、高い残留磁化と高い保磁力とを備えているが、製造方法に依存してその製造ロットによっては、期待される程にはその磁気特性が高くなく、特に、保磁力が低くそのバラツキが大きくなることがあった。さらに、保磁力の低下は、製造工程で、微粉化のための粉砕や混合の過程と関連していることが明らかになった。この問題は、磁性体粉末とこれを使用した磁石の品質の保持のために重要である。
本発明は、以上の如く、永久磁石に使用可能な磁性体粉末に関して、保磁力が安定して高く、そのバラツキが小さい希土類金属−鉄−窒素系磁性体粉末を提供することを目的としている。
本発明は、希土類金属−鉄−窒素系磁性体粉末の保磁力の低下が窒化物系磁性体中の遊離金属鉄の存在に起因することの知見に基づくものである。即ち、本発明の希土類金属−鉄−窒素系磁性材料は、窒化物磁性体粉末中の金属鉄含有量をX線回折強度比で3%以下に低減させ、これにより遊離金属鉄に起因した保磁力の低下を防止するものである。
希土類金属−鉄−窒素系磁性体粉末は、希土類金属−鉄窒化物から粉末に形成されているが、粉末中に存在する金属鉄は、希土類鉄窒化物から遊離されて、bcc構造の純鉄又はその固溶体の結晶(即ち、α−Fe)である。金属鉄(α−Fe)は、軟磁性を示すので、上記磁性体粉末中の金属鉄の存在は、上記希土類金属−鉄窒化物の磁気特性、特に、保磁力を低下させる。本発明は、磁性体粉末中のこの金属鉄含有量を3%以下に規制して、この材料の優れた磁気特性を発揮させるものである。
ここに、金属鉄の含有量は、X線回折強度比によるが、これは、X線回折法による磁性体粉末の回折最大強度に対する上記磁性体粉末のα−Fe相結晶の回折強度の比の100分率で示される。このように定義された金属鉄の含有量は、遊離したα−Feの含有量に対応している。X線回折強度から測定された金属鉄の含有量は、図2に示す検量線のように、この含有量と磁性体粉末中に混合された金属鉄(α−Fe)の重量で表した含有量と線形の関係があり、この検量線から重量%が容易に求められる。
本発明の希土類金属−鉄−窒素系磁性材料は、上記の希土類金属−鉄−窒素系磁性体粉末が、原子%で、3〜30%の希土類金属と、5〜15%のNと、残部Fe及び不可避的不純物とからなるものが好ましい。この組成の磁性材料は、一般式
xFe100-x-yy・・・・・・・(1)
で表される組成の窒化物を含み、ここに、Rは希土類金属元素を示し、xは、希土類金属元素Rの原子%で3<x<30の範囲で、yは、窒素Nの原子%で5<y<15の範囲にある。
希土類金属−鉄−窒素系の磁性材料の粉末粒子は微細である程優れた磁気特性を示すので、磁性体の粒子径は、10μm以下とする必要があり、特に、5μm以下とするのが好ましい。
希土類金属−鉄−窒素系磁性材料の製造方法は、還元拡散法において、希土類金属酸化物粉末と金属鉄粉末と酸化鉄と金属カルシウム粒とから成る混合物を不活性雰囲気中で加熱してカルシウム還元を行う還元過程と、その生成物を窒素含有雰囲気中で加熱して窒化する窒化過程とを含み、希土類金属−鉄−窒素系磁性体粉末とする方法が利用される。
本発明は、上記の還元拡散法において、原料混合物の希土類金属酸化物粉末と金属鉄粉末とを、平均粒径5μm以下に規制し、且つ混合されて均一に分布させることを特徴としている。還元拡散法は、上記の還元過程及び窒化過程は、いずれも結晶粒の成長が比較的少ない。そこで予め希土類金属酸化物粉末と金属鉄粉末とを平均粒径5μm以下に調製しておくと、窒化後に生成した希土類金属−鉄−窒素系磁性体粉末も、粒子径おおよそ5μm以下の微細な粒径が得られる。これにより、磁性体粉末は、微細粒であることによる磁気的特性の改善と、且つ、粉砕を要しないので遊離鉄が析出しないことによる磁気特性低下防止により、希土類金属−鉄−窒素系磁性材料の方法は、高い保磁力を有する微粉末磁性体を得ることができる。
この系の磁性材料中の金属鉄含有による保磁力の低下は、金属鉄粒子が磁性粒子中ないし磁石中のボイドであると仮定したときのボイドによる保磁力の低下よりも遙かに顕著に起こる。この理由は、金属鉄が、軟磁性を示すので、上記磁石を構成する希土類金属−鉄窒化物粉末中の金属鉄は、反対強磁場中に曝されると、低い磁界でも金属鉄の磁区の移動・回転が容易に生じ、これを起点として周辺の窒化物粒子への磁区の移動・回転が誘導されて、磁化を低下させ、従って、含有金属鉄の分布が上記希土類金属−鉄窒化物の磁気特性、特に、保磁力が著しく低下させるからである。
磁性材料中の金属鉄は、希土類金属−鉄−窒素系磁性材料、又は窒化前の希土類金属−鉄合金を製造工程で粉砕することによって生成し増加することが判ってきた。従来の還元拡散法において、原料粒子が粗粒である場合に、磁性体粉末も粗粒となり、これを微細粒に調製する必要があるが、このために、磁性体粉末を微粉砕すると、α−鉄が析出し易くなり、却って磁性体粉末の磁気特性を低下させていた。磁性体粉末を粉砕すると、磁性体粉末の希土類金属−鉄窒化物粒子が歪み変形を受けて、他の中間相に変態し、この過程で、α−Feが析出するので、磁性体粉末粒子中にα−Feが増加するからである。
希土類金属−鉄−窒素系磁性材料の製造方法は、還元拡散法を利用して、原料の金属鉄粉末を平均粒径5μm以下に予め調製するので、還元されて後に窒化されて成る磁性体粉末は、粉砕をすることなく所望の粒径の微粒子に調製できる。従って、窒化処理後の磁性材料は、金属鉄含有量を3%以下に規制し得て、これが磁性体粉末に高い保磁力を与える。
本発明は、希土類金属−鉄−窒素系磁性粉末中の金属鉄の含有量がX線回折強度比で3%以下とするので、磁気的に特に保磁力の高い安定な希土類金属−鉄−窒素系磁性材料を提供することができる。
さらに、希土類金属−鉄−窒素系磁性材料の製造方法は、希土類金属酸化物粉末と金属鉄粉末と酸化鉄と金属カルシウム粒とから成る混合物をカルシウム還元過程と、窒化する過程とにより、希土類金属酸化物粉末と金属鉄粉末とが、平均粒径5μm以下で、且つ均一に分布させるので、粉砕を回避して、磁気的に特に保磁力の高い安定な希土類金属−鉄−窒素系磁性材料を提供することができる。
さらに、本発明方法は、原料混合物中の当該金属鉄が、酸化鉄微粉末の一部を還元ガスにより還元した還元鉄とするので、酸化鉄からの金属鉄への還元率が、酸化鉄の酸素除去率で、50%以上としておくので、カルシウム還元が安定化され、粉砕をすることなく、平均粒径5μm以下で且つ金属鉄の含有量がX線回折強度比で3%以下とすることが容易にできる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための希土類金属−鉄−窒素系磁性材料を例示するものであって、本発明は希土類金属−鉄−窒素系磁性材料を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一又は同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
本発明の実施の形態では、希土類金属−鉄−窒素系磁性体粉末が、原子%で、3〜30%の希土類金属と、5〜15%のNと、残部Fe及び不可避的不純物とから成るものが使用される。磁性体粉末中の遊離金属鉄(α−Fe)は、X線回折強度比で、3%以下とする。
上記の磁性体粉末の主たる成分は、上記の式(1)を再掲すると、一般式
xFe100-x-yy・・・・(1)
で表される希土類金属Rと鉄Feと窒素Nから成る窒化物であり、希土類金属Rのxは、原子%xは、3〜30の範囲に、Nの原子%yは、5〜15(原子%)の範囲に、残部が主としてFeとされる。
ここに、希土類金属Rを3〜30原子%と規定するのは、3原子%未満では、α−Fe相が分離して窒化物の保磁力が低下し、実用的磁石ではなくなり、30原子%を越えると、希土類金属が析出し、合金粉末が大気中で不安定になり、残留磁化が低下するからである。他方、窒素Nを5〜15(原子%)の範囲と規定するのは、3原子%未満では、殆ど保磁力が発現せず、15原子%を超えると、希土類金属、鉄及びアルカリ金属それ自体の窒化物が生成するからである。
本発明の磁性体粉末においては、希土類金属元素Rとしては、Ce、Pr、Nd、Smが利用できるが、特に、Smが、磁性体の飽和磁化、磁気異方性を大きくし、永久磁石とするために好ましいので、採用される。この場合、特に、上記式(1)の一般式SmxFe100-x-yyにおいて、SmのxとNのyは原子%で表して、xは8.1〜10.0、yは13.5〜13.9の範囲が特に好ましい。
磁性体粉末の平均粒子径は、1〜5μmの範囲が好ましい。これより粗粒であると、保磁力が5kOe以下となり、他方、これより細粒であると、酸化し易く式(1)の組成を保持するのが難しい。
本発明において、遊離金属鉄を3%以下とするが、3%を超えると、著しく保磁力が低下するからである。ここに、X線回折強度比は、粉末X線回折法により、その磁性体粉末の最大回折強度(窒化物からの最大回折強度)IRTNを求め、その粉末のα−Fe相の最大回折強度IFeを計測し、100×IFe/IRTNをもって表す。α−Fe相の最大回折強度IFeは、CuKαのX線条件で、回折角2θ/θ=44〜46°について、回折強度の平滑化と加重平均を行い、バックグラウンドを除去し、ピークトップ強度をIFeとされる。
X線回折強度比は、希土類金属−鉄−窒素系磁性体粉末中の金属鉄の重量%とで表した含有量と直線関係がある。X線回折強度比でα−Feが0%の磁性体粉末中に同じ粒子径程度の金属鉄粉末を一定の重量%で配合し、この混合粉を上記の要領で同じく粉末X線回折法により、α−FeのX線回折強度比を求めた。図2には、このようにして求めた金属鉄の重量%の含有量と、X線回折強度比の含有量との検量線を示している。図2は、SmxFe100-x-yy磁性体の粉末における検量線である。この検量線から、X線回折強度比の測定値から、希土類金属−鉄−窒素系の遊離鉄含有量を求めることができる。
本発明の磁性材料を製造するには、上記の組成式から選ばれた組成を得るために配合量が調製された希土類金属酸化物粉末と金属鉄粉末及び酸化鉄と、さらに、これら酸化物を還元するに充分な量の金属カルシウム粒とから成る混合物が準備される。
還元拡散法による希土類金属−鉄−窒素系磁性材料の製造方法では、特開平6−081011号公報により開示したように、概して言えば、上記原料混合物は、不活性雰囲気中で加熱して酸化物をカルシウムが還元する還元過程と、還元された生成粉を窒素含有ガス中で加熱して窒化する窒化過程とを経て、希土類金属−鉄−窒素系磁性粉末が得られる。
希土類金属−鉄−窒素系磁性材料の方法は、上記混合物中の希土類金属酸化物粉末と金属鉄粉末とが、平均粒径5μm以下に予め調製されている。さらに、混合粉中には、希土類金属酸化物粉末と金属鉄粉末とは、均一に分布されるように混合処理がなされる。
金属鉄の粉末は、予め平均粒径5μm以下に調製されて原料として使用されるが、市販の金属鉄は、最小径のカーボニル鉄でさえ5μm程度の大きさがあり、これを鉄源として、カルシウム還元拡散法を利用しても、得られる磁性粉末は、粒径が5μm以上の粗粒となる。そこで磁気特性を高めるには、さらに、微粉砕が必要であるが、この場合には、従来法と同様に、最終的に生成された磁性粉末中には、金属鉄含有量が増加して、却って、保磁力が低下してしまう。
希土類金属−鉄−窒素系磁性材料の製造方法は、好ましくは、金属鉄粉末を使用せずに、粒度調製された希土類金属酸化物粉末と酸化鉄粉末とを、金属カルシウム粒で完全に還元することが可能である。この場合には、その混合物中の酸化物とその還元に必要な多量の金属カルシウムとが爆発的に反応するおそれがあり、上記組成の反応生成物を得るのが難しい。
そこで、希土類金属−鉄−窒素系磁性材料の製造方法は、鉄源として、粒度調製された金属鉄粉末と酸化鉄粉末との混合物が好ましく使用される。希土類金属−鉄−窒素系磁性材料の製造方法には、好ましくは、カルシウムによる還元拡散処理に先立って、酸化鉄予備還元処理過程を設けられる。金属鉄粉末には、酸化鉄粉末の一部を還元ガスにより予め還元した還元鉄が、極めて微細で、しかも、未還元の酸化鉄粉末と分離せずに一体化しているので、好ましく利用される。酸化鉄粉末の粒度を5μm以下とすることは製造上容易であるから、これにより、部分的に還元された金属鉄粉末も5μm以下とすることができる。
酸化鉄からの金属鉄への還元率は、酸化鉄の酸素除去率で、50%以上であるのが好ましい。好ましくは、還元率は、70%以上がよい。ここに、酸化鉄の酸素除去率は、原料酸化鉄中に含まれる酸素量に対して、還元により除去された酸素量の割合を言う。原料としての酸化鉄は、ヘマタイト型(Fe23を主成分)でもマグネタイト型(Fe34を主成分)でもよく、その他の酸化鉄でもよい。好ましくは、Fe23型が使用される。予備還元処理過程では、水素還元又は一酸化炭素還元が利用されるが、水素還元の場合には、酸化鉄を水素気流中に300〜900℃の温度で一定時間保持して、その一部を鉄に還元させて、酸化鉄−金属鉄混合粉が得られる。予備還元処理に先立って、酸化鉄と希土類金属酸化物は、予め混合しておいてもよい。
還元拡散処理は、反応容器中で、上記の酸化鉄−金属鉄混合粉に、微粒子の希土類金属酸化物粉末とを所定の配合に混合される。酸化物の酸素除去に必要且つ充分な量の金属カルシウム粒を均一に混合して、不活性雰囲気中でその混合物を600〜1100℃の温度で加熱すると、カルシウムとこれら酸化物とが反応し、酸化物を還元しながら発熱により高温になり、酸化物を合金粉末に還元する。この反応生成物を、冷却する。
さらに、この反応生成物は、典型的にはそのまま、窒化処理のために、反応容器内で、雰囲気を窒素ガス又は窒素元素を含むガスに置換し、250〜800℃の温度範囲で加熱して保持して窒化され、希土類金属−鉄窒化物の粉末が形成される。
この窒化処理された生成物は、洗浄処理により、水と弱酸溶液中で洗浄され、未反応カルシウムやその生成酸化物が除去されて、乾燥されて、希土類金属−鉄窒化物磁性粉末が得られる。このようにして得られた希土類金属−鉄窒化物磁性粉末は、粒径が5μm以下で、金属鉄含有量がX線回折強度比で3%以下である磁性粉末が得られる。
ところで、従来の磁性粉末中の金属鉄の起源は、以下のように幾つか列挙することができる。第1の起源は、特に、溶解法におけるインゴットからの粉砕過程での金属α−鉄の析出である。溶解法では、インゴットの破砕と、窒化処理後の微粉砕の過程が利用されるが、これらの粉砕過程では、粒子表面が酸化され易く、α−鉄が析出し易くなる。
第2の起源は、これも粉砕過程と関連があるが、還元拡散法において、原料粒子径が粗粒である場合に、磁性粉末を微細粒に調製するために、微粉砕する場合がある。この時にも、α−Feが析出し易くなる。
第3の起源は、磁性粉末中のFe成分の偏析によるα−Feの析出である。還元拡散法において、原料の希土類金属酸化物と金属鉄ないし酸化鉄の混合が不十分で、粉末中部分的にFe成分が濃化偏析していると、α−Feが遊離鉄として析出し易くなる。
本発明は、その製造過程で、このような従来の粉砕過程を必要としないので、α−Feの遊離がなく、α−Feに起因した保磁力の低下を防止することが容易にできるのである。
純度99.9%で平均粒径1.2μmの酸化サマリウムSm23と、純度99.9%で平均粒径1.3μmの酸化鉄Fe23とを、湿式ボールミルにより1h(時間)の混合を行った。
酸化鉄の予備還元過程として、上記の混合原料を水素気流中で、600℃の温度に保持して、酸化鉄の一部を鉄に還元した。酸化鉄の酸素除去率は、71%であった。
カルシウム還元過程は、予備還元後の混合原料にカルシウム粒を、混合原料中の酸化物の酸素量の2倍量を混合し、このような混合原料を、真空加熱可能な容器に装入し、予め真空排気した後、Arガス気流中に1100℃に昇温し3h加熱保持して、カルシウム還元処理をおこない、容器内で50℃まで冷却した。次いで、窒化過程は、カルシウム還元後の粉末を容器内で真空排気後に、窒素ガスを流通させて、450℃に加熱して20h保持して、窒化処理を行い、その後冷却した。
得られた窒化生成物は、多孔質の塊状であるが、イオン交換水中で容易に崩壊し粉化する。洗浄過程においては、この崩壊を利用して、生成物中のカルシアや窒化カルシウム、未反応のカルシウム等の副生成物が、イオン交換水中で水酸化カルシウムの形で除去される。デカンテーションを数回繰り返し、目的の磁性体粉末が、沈澱物として回収した。さらに、副生成物を完全に除くために、pH4.5に調製した酢酸水溶液中でデカンテーションを行い、水洗した。スラリー状の沈澱物は、遠心分離され、アルコールで置換され、得られたケーキは、80℃で真空乾燥され、磁性体粉末が得られた。以上の過程では、粉砕は、一切行わなかった。
得られた磁性体粉末の組成と、α−Feの含有量、及び、粉末の残留磁化Brと保磁力iHcとを表1に示した。
磁性体粉末は、X線回折法により、金属鉄(α−Fe)の含有量を測定した。X線回折強度測定の条件は、X線Cu−Kα、印加電圧40kV、電流40mA、発散スリット1°、散乱スリット1°、受光スリット0.15mm、走査を連続とし、走査速度4°/min、走査ステップ0.02°、走査範囲15〜70°とした。
X線回折強度のデータから、その磁性体粉末の最大回折強度(窒化物からの最大回折強度)IRTNを求めた。α−Fe相の最大回折強度IFeは、回折角2θ/θ=44〜46°について回折強度の平滑化と加重平均を行い、バックグラウンドを除去し、ピークトップ強度をIFeを求めて、100×IFe/IRTNをもって、遊離金属鉄(α−Fe)の含有量とした。
検量線は、組成Sm9.10Fe77.2413.64(金属鉄含有量0.06%;X線回折強度比)の粉末に、カルボニル鉄(粒径5μm)を、重量%で、1%、2%、3%及び5%をそれぞれ混合して、標準試料を作り、上記の方法でその試料混合粉の鉄含有量をX線回折強度で測定した。図2は、磁性粉末中に混合された金属鉄(α−Fe)の重量で表した含有量とこの試料のX線回折強度比から測定された金属鉄の含有量との間の直線関係を示しており、良好な直線性が得られている。この直線を検量線として、X線回折強度比からの金属鉄含有量から、金属鉄の重量パーセントが求められる。
実施例と比較例の磁性体粉末の残留磁化Brと保磁力iHcは、粉末をカプセルに充填し溶解させたパラフィン中で、20kOeで磁場を印加した50kOeパルス磁場で着磁した後、VSM磁気特性測定装置で調べた。
実施例1は、表1に示すように、SmとFeとの原子%10.72%と89.28%の配合で、得られた磁性体粉末は、金属鉄の含有量がX線回折強度比で0.29%(換算した重量パーセントで、0.2%)、残留磁化13.8kG、保磁力15.8kOeであった。他の実施例は、実施例1の試料と比較して、Smの配合組成を順次高めたものである。
比較例1は、溶融法による製造した磁性体粉末に関するものであるが、純度99.9%で金属サマリウムSmと、純度99.9%の金属鉄とを、原子%で、10.72%と89.28%になるように、高周波炉で溶解した合金をインゴットに鋳造し、インゴットを3cmの小塊にまで破砕した。この合金小塊は、Ar気流中で1400℃で、5hの均質化を行った。得られた合金小塊を、ボールミルにより、5μmの微粉に粉砕した。この微粉末を、窒素気流中で450℃で20hの加熱と窒化をおこない、窒化粉末をさらに5μmにまで粉砕して、サマリウム鉄窒化物磁性体粉末を得た。
比較例2は、還元拡散法に粉砕過程を設定した例であるが、純度99.9%で平均粒径1.2μmの酸化サマリウムSm23と、純度99.9%で平均粒径50μmの粗大な還元鉄とを、SmとFeとの比が、原子%で、10.72%と89.72%になるように混合調製し、混合粉末に、実施例1同様に、酸素原子当量の2倍の当量の金属カルシウム粒を混合して還元し、窒化過程を経て磁性体粉末を製造した。この粉末は、平均60μmの粒径であったので、ボールミル6Hで粉砕し、平均粒子径5.2μmに調製した。この粉末は、Sm8.12Fe77.9613.84Ca0.08の組成式であった。α−Feの含有量は、X線回折強度比で、4.6%で、残留磁化12.1kG、保磁力6.8kOeを示した。
比較例3は、還元拡散法により、鉄源に金属鉄を利用し粉砕過程を設けた方法であるが、純度99.9%で平均粒径1.2μmの酸化サマリウムSm23と、純度99.9%で平均粒径5.2μmのカルボニル鉄とを、SmとFeとの比が、原子%で、10.72%と89.28%になるように混合調製し、混合粉末に、実施例1同様に、酸素原子当量の2倍量の金属カルシウムCaを混合し、実施例1と同様に還元過程と窒化過程により、磁性体粉末を製造した。この粉末は、平均8.2μmの粒径であったので、ボールミル6Hで粉砕し、平均粒子径3.2μmに調製した。この粉末は、Sm8.22Fe78.0413.69Ca0.05の組成式であった。α−Feの含有量は、X線回折強度比で、3.6%で、残留磁化13.1kG、保磁力9.8kOeを示した。
比較例4は、混合不十分の原料粉から、還元拡散法により製造する方法であるが、純度99.9%で平均粒径1.2μmの酸化サマリウムSm23と、純度99.9%で平均粒径1.3μmの酸化鉄(Fe23)とを、SmとFeとの比が、原子%で、10.72%と89.72%になるように配合し、合成樹脂フィルムの袋内で2min程度の混合を行った。この混合粉末は、EPMA観察により、SmとFeの偏析部分が全体の75%以上あることが認められた。この混合粉末を、水素気流中で予備還元したあと、実施例1同様に、酸素原子当量の2倍量の金属カルシウムCaを混合し、実施例1と同様に還元過程と窒化過程により、磁性体粉末を製造した。この粉末は、Sm8.14Fe78.1913.61Ca0.06の平均組成であった。α−Feの含有量は、X線回折強度比で、3.12%で、残留磁化13.1kG、保磁力9.8kOeを示した。
比較例1と実施例1の粉末法によるX線回折チャートを、それぞれ図3と図4に示すが、比較例1(図3)は、主結晶からの回折強度に対して、比較的大きなα−Fe相の回折ピークが検出されている。上記のX線回折強度では、α−Feの含有量は4.6%にも達する。これに対して実施例1(図4)は、α−Fe相の回折強度が小さく、X線回折強度で見たα−Feの含有量は、0.3%程度で極めて少ないことがわかる。
Figure 0004506565
上記の実施例と比較例の以上の結果を、表1と図1に示す。これから、磁性体粉末中の金属鉄(α−Fe)の含有量と保磁力(iHc)とは顕著な関係を有し、特に、X線回折強度比で見た金属鉄の含有量が3%以下の範囲で、金属鉄含有量の増加とともに、保磁力が著しく低下していることが判る。この結果から、金属鉄(α−Fe)の含有量は、3%以下とすべきことがわかる。特に、実施例1〜5のように、金属鉄(α−Fe)の含有量は、1%程度ないしは、それ以下とすべきである。
本発明の実施例にかかる希土類金属元素−鉄−窒素系の磁性体粉末中の遊離鉄含有量と保磁力の関係を示す図。 希土類金属元素−鉄−窒素系の磁性体粉末中の遊離鉄のX線回折強度比で表した含有量と、重量%との関係を示す図。 比較例の磁性体粉末のX線回折チャートを示す。 本発明の実施例の磁性体粉末のX線回折チャートを示す。

Claims (1)

  1. 希土類金属−鉄−窒素系磁性材料中の遊離金属鉄の含有量が、X線回折強度比で3%以下であり、前記希土類金属−鉄−窒素系磁性材料の平均粒径は、1〜5μmであり、
    前記磁性材料が、下記の一般式で表されることを特徴とする希土類金属−鉄−窒素系磁性材料。
    x Fe 100-x-y y ・・・・・(1)
    (Rは希土類金属元素を示し、xは、希土類金属元素の原子%で3<x<30の範囲で、
    yは、窒素Nの原子%で5<y<15の範囲にある)。
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