JP4505663B2 - 走査型共焦点顕微鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は走査型光学顕微鏡、特に共焦点走査型光学顕微鏡に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の走査型共焦点顕微鏡を図2(a)、(b)を用いて落射型の構成で簡単に説明する。レーザ光源201からの光は、ビームエキスパンダ202で必要なビーム径の平行光束となり、ビームスプリッタ203を透過し、走査ユニット204に入る。走査ユニット204は、図3のように、回転軸方向の直交する1組のミラー204a,204bからなる。これらのミラー204a,204bを回転させることにより、光軸231に直交する2方向(x、y方向)について光を走査する。走査ユニット204を出た平行光束は、走査レンズ210により一次像面211に結像された後、リレーレンズ212を通過することにより再び平行光束となり、対物レンズ214によって標本215上に結像される。リレーレンズ212と対物レンズ214との間に配置されたミラー213は単純に光の方向を変化させているだけであり必須のものではない。
【0003】
標本215上に結像されたレーザービームの像は点像となっており、点像の径は、対物レンズ214のNAで決まる大きさである。標本215上の点像(照射領域)からの反射光は、再び対物レンズ214で集められ、照明光の光路を逆に進み、リレーレンズ212で一次像面に結像した後、走査レンズ210で平行光束となる。その後、走査ユニット204を通り、ビームスプリッター203で反射され、検出器レンズ206により遮光板207の開口208上に集光される。この開口208を通過した光のみが光検出器209に到達できる。
【0004】
ここで、開口208上にできる集光点は、標本215上での光スポットの像となっているため、この像は、開口208を通過できる。よって、走査ユニット204の走査に同期させて、光検出器で光信号を検出することにより、標本215の二次元的な像を得ることができる。このとき、標本215上の他の点から発生した光は、遮光板207の開口208からずれた位置に像を結ぶため、遮光板207により遮られ、光検出器209には、ほとんど到達できない。これにより、走査型共焦点顕微鏡では、高い横分解能だけでなく、高い縦分解能(深さ方向分解能)で標本215を観察できる顕微鏡となる。
【0005】
また、このような反射光による観察だけではなく、標本215の照明光の照射領域で発生した蛍光や散乱光についても、遮光板207の開口208を通過させることにより、光検出器209で捉えることができる。例えば、蛍光観察の場合には、検出器レンズ206とビームスプリッタ203との間に、標本215からの反射光をカットするフィルタ231を挿入して、蛍光のみを検出器レンズ206で集光させ、蛍光の集光位置に開口208を配置する。
【0006】
なお、透過型顕微鏡の構成の場合には、蛍光,散乱光,及び透過光の吸収の程度を捉えることができる。
【0007】
さらに、走査型共焦点顕微鏡の高い縦分解能の特徴を利用し、不図示の標本ステージを上下させながら、そのつど二次元像を取得していくと、標本215の三次元的な観察も可能になる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、走査型共焦点顕微鏡では、標本215で発生する蛍光観察が可能であるが、蛍光の波長は、照明レーザー光の波長とは異なる。このため、標本215からの蛍光と照明レーザー光の反射光とでは、対物レンズ214、リレーレンズ212および走査レンズ210に倍率の色収差と焦点距離の色収差(軸上色収差)が生じる。走査ユニット204でレーザー光を大きな範囲で走査すると、色収差により、蛍光の点像が遮光板207上を移動する。これの理由を更に説明する。
【0009】
一次像面211には標本215の反射光の像と蛍光の像とが結像されるが、対物レンズ214とリレーレンズ212の倍率の色収差があるため、蛍光の像点と反射光の像点とは光軸からの距離が異なる。このため、一次像面211から光検出器209までの反射光の光路と蛍光の光路が異なってしまい、蛍光の点像は、走査ユニット204による走査に応じて遮光板207の面上を移動する。
【0010】
また、対物レンズ214の軸上色収差のために、対物レンズ214の瞳位置220がレーザー光と蛍光とで異なる。従来の走査ユニット204のミラー204a,204bは、対物レンズの瞳位置220とほぼ共役な位置に配置されているため、レーザー光と蛍光とで瞳位置220が異なると、ミラー204a,204bの反射角がレーザー光と蛍光とで異なってしまう。このため標本215からの蛍光が、照明レーザー光と同じ光路を逆にたどることができなくなり、この理由によっても遮光板207に蛍光の点像が、走査に応じて遮光板207上で移動する。
【0011】
このように蛍光の点像が遮光板207を移動すると、蛍光の点像が開口208からはずれ、蛍光による観察像の周囲が暗くなってしまう、いわゆるシェーディングが起こる。この現象は、レーザー光と蛍光の2波長を同じ光学系を通過させなければならない蛍光観察に特有の問題である。これを避けるためには、光学系内部で色収差を補正してゼロにするか、遮光板207の開口208を極めて大きくする必要があった。しかしながら、同じ波長のレーザー光を照射した場合であっても、発せられる蛍光は標本215によりさまざまであることから、光学系の色収差を補正するのは非常に困難である。また、遮光板207の開口208を大きくすることは、開口208を通過した光のみを捉えることで高い縦横分解能を達成している共焦点顕微鏡の特長を失うことになる。これらの理由により、従来の技術ではシェーディングを十分小さく抑えた汎用の共焦点顕微鏡光学系を用意することが困難であった。
【0012】
本発明は、これらの従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、蛍光観察により、広い領域を観察した場合でもシェーディングを生じさせることなく良好な観察画像を得ることのできる走査型共焦点顕微鏡を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によれば以下のような走査型共焦点顕微鏡が提供される。すなわち、
光源と、前記光源からの光束を標本上に集光する対物レンズと、前記光源からの光束を前記標本上で走査させるための走査光学系と、前記標本からの光束を検出するための光検出器と、前記光検出器の出力を演算する演算部とを有し、
前記光検出器は、少なくとも一方向に配列された複数の受光部を備え、
前記演算部は、前記複数の受光部の出力から、入射した光の強度および位置を対応させて検出し、前記光検出器に入射した光束の中心から予め設定された範囲の光強度の和を求めることを特徴とする走査型共焦点顕微鏡
である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
まず、図1(a),(b)および図3(a),(b)を用いて本実施の形態の走査型共焦点顕微鏡の構成について説明する。図1(a),(b)のように、光軸231上には、レーザー光源201、ビームエキスパンダ202、ビームスプリッタ203、走査ユニット204、走査レンズ210、リレーレンズ212、ミラー213、対物レンズ214が順に配置されている。また、ビームスプリッタ203により、光軸231から分離された光軸232上には、ビームスプリッタ203側から順に、抜き差し可能なフィルタ241、検出器レンズ206、迷光除去板107、光検出器109が配置されている。光検出器109および走査ユニット204には、データ処理装置105が接続されている。
【0016】
本実施の形態の光検出器109およびデータ処理装置105は、従来とは異なる構成である。光検出器109は、図3(b)のように、光増幅パネル30を前面に備えたフォトダイオードアレイ34である。この光検出器109は、光増幅パネル30の上面が、検出器レンズ206の焦点(焦点距離f)に位置するように配置されている。光増幅パネル30は、検出器レンズ206側から順に光電変換層31、マイクロチャンネルプレート32、蛍光層33を備える。この構成により、検出器レンズ206から入射した光を、光電変換層31でいったん電子に変換し、マイクロチャンネルプレート32で増倍し、増倍した電子で蛍光層33を発光させ、フォトダイオードアレイ34に入射させる。光増幅パネル30では、入射した光と増幅された出射光との位置関係は、光増幅パネル30の面内方向で維持される。また、光増幅パネル30の増幅率は、面内方向で一様である。
【0017】
フォトダイオードアレイ34は、図3(a)のように多数の受光セル35をxy方向に2次元にアレイ状に配列したものである。x方向の配列のピッチはPx、y方向の配列のピッチはPyである。また、受光セル35のxy方向の受光面サイズはWx,Wyである。よって、光検出器109の開口率は、(Wx/Px)・(Wy/Py)で表される。データ処理装置105は、フォトダイオードアレイ34を構成する受光セル35の出力を処理する。処理方法については、後で詳しく説明する。
【0018】
なお、迷光除去板107は、迷光を排除するために配置されたものであり、必須のものではない。
【0019】
走査ユニット204は、本実施の形態では、回転軸方向の直交する反射ミラー204aと反射ミラー204b、および、これらの反射ミラー204a,204bをそれぞれ回転駆動する駆動源を備えている。反射ミラー204a,204bは、対物レンズ214の瞳位置220と共役な、走査レンズ210の光源201側焦点位置付近に配置されている。
【0020】
このような構成において、レーザ光源201から出射された光は、ビームエキスパンダ202で必要なビーム径の平行光束にされ、ビームスプリッタ203を透過する。その後、走査ユニット204で、反射ミラー204a,204bにより反射される。これにより、光軸231に直交する2方向(x、y方向)について任意の走査角で走査される。
【0021】
走査ユニット204を出た平行光束は、走査レンズ210により一次像面211に結像された後、リレーレンズ212を通過することにより再び平行光束となる。そして、対物レンズ214によって標本215上に結像され、標本215上の点を照明する。リレーレンズ212と対物レンズ214との間に配置されたミラー213は、単純に光の方向を変化させている。
【0022】
標本215からの反射光および標本215で発生した蛍光は、再び対物レンズ214で集められ、照明光の光路を逆に進み、リレーレンズ212で一次像面に結像した後、走査レンズ210で平行光束となる。その後、走査ユニット601を照明光とは逆の光路で通り、ビームスプリッター203で反射され、検出器レンズ206により、光検出器109の光増幅パネル30の上面に集光される。その際、検出器レンズ206と光検出器109との間に配置されている迷光除去板107の径の大きな開口108を通過することにより迷光が除去される。標本215の蛍光像を観察する場合には、フィルタ241を光軸232上に配置し、標本215からの反射光をカットする。
【0023】
このときの、検出器レンズ206により、光検出器109の光増幅パネル30上に形成される光スポット300(図3(a))の強度分布をI(x,y)とすると、x方向にm番目、y方向にn番目の受光セル35に入射する光強度Imnは、下記数1のように表される。ただし、光増幅パネル30が配置されているので、実際の受光セル35に入射する光強度は、光強度Imnに光増幅パネル30の増幅率をかけたものであるが、光増幅パネル30の増幅率は、面内方向に一様であるので、ここでは、増幅率を無視して説明する。
【0024】
【数1】
【0025】
ここで、光スポット300の径が、セルのピッチPx,Pyに対して数倍〜数十倍であれば、下記数2の光強度Imnの重心計算により、光スポット300の重心301の座標(Sx,Sy)を、セルピッチの1/10程度の精度で求めることができる。
【0026】
【数2】
【0027】
また、重心301を中心とした、予め定めた半径r0の範囲の光強度Ixyは、光強度分布I(x、y)から、下記数3から求めることができる。
【0028】
【数3】
【0029】
そこで、データ処理装置105は、実際に光検出器109の各受光セル35から、受光した光強度Imnを示す出力を受け取り、これを上記数2に代入する。これにより、データ処理装置105は、光検出器109に集光されている光スポット300の重心301の座標(Sx,Sy)を得る。つぎに、データ処理装置105は、各受光セル35の受光した光強度Imnをフィッティングもしくは補間計算することにより、光スポット300の光強度分布I(x、y)を求める。求めた光強度分布I(x、y)と、オペレータから入力部105aを介して予め設定されている半径r0の値とを上記数3に代入することにより、データ処理装置105は重心301を中心とした半径r0の範囲に照射された光強度Ixyを求める。
【0030】
データ処理装置105は、走査ユニット204の走査量をモニタするか、もしくは、走査ユニット204の走査のタイミングに同期させたタイミング生成回路を用いて、走査と同じタイミングで上記光強度Ixyを検出し、画像表示装置に光強度Ixyを表示させる。これにより、標本215の蛍光の2次元画像を得ることができる。
【0031】
上記光強度Ixyは、光スポット300の重心301を中心に半径r0のピンホールを配置して光スポット300の光強度を計測したのと同等である。しかも、重心301の座標(Sx,Sy)は、計測のつどデータ処理装置105が上記数2により計算するから、光スポット300が光検出器109上で移動した場合でも、その移動に追従して、重心301を中心とした半径r0の範囲の光強度Ixyを求めることができる。したがって、照明レーザー光を大きな走査角で標本215上を走査させることにより、光学系の色収差により蛍光の光スポット300が光検出器109上を移動しても、移動量に関わらず常に重心301を中心とした半径r0の範囲で光強度Ixyを求めることができる。よって、シェーディングを生じさせることなく、標本215の広い範囲を観察することができる。
【0032】
また、蛍光観察ではなく、標本215からの反射光を観察する場合は、フィルタ241を光軸232から外すだけでよく、同様に標本215の広い範囲を観察することができる。よって、本実施の形態の走査型共焦点顕微鏡では、従来のように蛍光像観察時と反射光像観察時とで開口208(図2(a))の位置を変更する必要はない。
【0033】
また、上述の構成では、データ処理装置105が走査ユニット204の走査量に同期させて強度Ixyを画像表示装置に表示させることにより、蛍光の二次元観察像を構築しているが、蛍光の光スポット300の重心301の座標(Sx,Sy)が、光学系の色収差量と走査ユニット204の走査角との積に比例することを利用することにより、走査ユニット204の走査量を用いずに二次元画像を構築することもできる。すなわち、一画面内で観察する蛍光の波長は、通常一波長であるから、光学系の色収差量は一定値になり、重心301の座標(Sx,Sy)は、走査ユニット204の走査量のみに比例すると考えてよい。したがって、データ処理装置105が求めた重心301の座標(Sx,Sy)と、オペレータが入力部105aに入力した色収差量(一定値)とをもとに、走査角を求め、これに対応させて光強度Ixyを表示させることにより、二次元観察画像を構築することができる。このように二次元観察画像を構成すると、走査ユニット204の走査量をモニターする必要がなくなるため、走査ユニット204の走査量の線形性が良好でない場合でも正確な画像を構築できるという効果が得られる。
【0034】
なお、データ処理装置105としては、デジタルシグナルプロセッサー等の積和演算に特化した演算装置を用いることにより、上述した計算を、1点あたり数m秒以下の高速で行うことが可能である。
【0035】
また、数2を用いる代わりに、受光セル35のうち出力が最も大きいいくつかのセル35の出力を用いることにより、重心301の座標を高速に推定することもできる。例えば、出力が最大のセル35(x方向m番目y方向n番目)の出力をI0とし、x方向についてその隣のセル35(x方向(m+1)番目y方向n番目)の出力をI1、逆隣のセル35(x方向(m−1)番目y方向n番目)の出力をI-1とする。このとき、光スポット300の重心301が、x方向m番目y方向n番目のセル35の中心から距離Δxだけ、x方向(m+1)番目y方向n番目のセル35側にずれているとする。また、光スポット300の径は、セルピッチPxの2.5倍であるとすると、隣り合うセル35の信号強度比I1/I0、I-1/I0と、距離Δxとの関係は、以下のようになる。
【0036】
Δx 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
I1/I0 0.55 0.62 0.70 0.79 0.89 1.00
I-1/I0 0.55 0.48 0.42 0.37 0.32 0.27
このように、I1/I0は単調増加、I-1/I0は単調減少となる。よって、予め上記関係を計算により求めておき、実際のセル35の出力うち出力最大のセルおよびその両隣のセルの出力から求めたI1/I0、I-1/I0に最も近い組み合わせを選択することにより、△xを求めることができる。同様に、y方向についても、予め上記関係を求めておき、実際のセル35の出力から最も近い組み合わせを選択することによりΔyを求めることができる。これにより、重心301の座標(Sx,Sy)の近似値を求めることができる。
【0038】
また、上述の実施の形態では、セル35の出力から強度分布I(x,y)と重心301の座標とを計算により求め、これらを用いて積分により光強度Ixyを求めているが、出力最大のセル35の位置を中心に、予め定めた半径r0の範囲にあるセル35の出力を単に合計する演算処理によって、光強度Ixyを求めることもできる。この処理方法の場合、簡単な計算で光強度Ixyを求めることができ、セル35の大きさが、光スポット300に対して十分に小さい場合には特に有効である。
【0039】
また、上述の実施の形態では、光増幅パネル30を配置し、光を増幅してからフォトダイオードアレイ34で検出しているため、光検出器109に到達した蛍光光束が微弱であってもフォトン単位で増幅して検出できる。微弱な蛍光も、高感度に検出して蛍光観察画像を構築できる。
【0040】
また、光検出器109としてCCD等の蓄積作用のある光検出器を用いることも可能であり、この場合には、光増幅パネル30を省略することができる。
【0041】
また、光検出器109として、蛍光層33およびフォトダイオードアレイ34を用いず、図4のようにマイクロチャンネルプレート32の増幅した電子を面内方向に流すレジスティブアノード401を設け、流れる電流のパルスの大きさ(波高)およびパルス数を波高検出器402で検出する構成にすることができる。この構成では、電子一つで電流パルス一つが発生し、電流パルスの波高が、レジスティブアノード401を流れた距離(抵抗の大きさ)に相関するため、波高の大きさから入射した光の位置を検出することができる。また、その位置に入射した光の強度は、発生した電子の数に相関するため、パルスの数により入射光の大きさを検出できる。これにより、光強度分布I(x,y)を直接求めることができる。また、求めた入射光の位置および強度を、数2のΣ記号を積分記号に変えた数式に代入することにより、重心301の座標を求めることができる。
【0042】
上述してきたように、本実施の形態の走査型共焦点顕微鏡は、光検出器109として、複数のフォトダイオードアレイやCCDや位置検出機能のある検出器を用いることにより、光スポット300が移動した場合であっても、その重心から予め定めた半径r0の領域の光強度を常に検出することができる。このため、色収差により光スポット300が移動しても、従来のように遮光板の開口208(図2(a))によって光束が蹴られるおそれがなく、一定の半径r0の開口を光スポット300の移動にともなって移動させながら検出したのと同じ観察画像が得られる。
【0043】
また、光強度を検出する半径r0の値は解像度に影響し、半径r0の値が小さいほど高解像度に、半径r0の値が大きいほど検出感度が高くなるため、標本215の状態に応じて、十分な検出感度が得られる程度の小さなr0に設定することが好ましい。本実施の形態の走査型共焦点顕微鏡では、半径r0は数3の計算により用いる値であるため、入力部105aからオペレータが任意の値を設定するだけで容易に半径r0を設定することができる。また、光検出器209の測定結果をデータ処理装置205内のメモリに格納しておくことにより、異なる半径r0が設定された場合にはメモリ内のデータを用いて再計算するだけで、解像度の異なる観察画像を得ることができる。これにより、従来のように、開口の径を変更するために、遮光板207を開口径の異なるものに交換して測定をやり直す必要がないため、劣化しやすい標本215であっても再測定することなく、高解像度で観察することができる。また、従来のように検出感度を向上させるために、必要以上に大きな開口208の遮光板207を配置する必要もない。
【0044】
以上のように、本実施の形態の走査型共焦点顕微鏡は、色収差を持つ対物レンズ214等の光学系を使っても、シェーディングを生じさせることがなく、しかも、縦分解能が悪化することもない。このため、励起レーザー光の波長と蛍光波長が離れている場合でも、高い分解能での標本の観察が可能になる。また、対物レンズの色収差の許容範囲が拡がるので、共焦点走査型蛍光顕微鏡用対物レンズの設計が容易になる。さらに、光検出器109として、光増幅機能もしくは蓄積型の検出器を使うことにより、信号光が弱い場合でも、標本215の観察画像の画質を良好にできる。
【0045】
【発明の効果】
上述してきたように、本発明によれば、蛍光観察により、広い領域を観察した場合でもシェーディングを生じさせることなく良好な観察画像を得ることのできる走査型共焦点顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b)本発明の一実施の形態の走査型共焦点顕微鏡の構成を示すブロック図。
【図2】(a),(b)従来の走査型共焦点顕微鏡の構成を示すブロック図。
【図3】図1の走査型共焦点顕微鏡の光検出器109についての(a)フォトダイオードアレイの受光セル35の配列を示す説明図、(b)断面の構成を示す説明図。
【図4】図1の走査型共焦点顕微鏡の光検出器109として用いることができる別の光検出器の構成を示す説明図。
【符号の説明】
30・・・光増幅プレート、31・・・光電変換層、32・・・マイクロチャンネルプレート、33・・・蛍光層、34・・・フォトダイオードアレイ、35・・・受光セル、105・・・データ処理装置、105a・・・入力部、107・・・迷光除去板、108・・・開口、109・・・光検出器、201・・・レーザー光源、202・・・ビームエキスパンダ、203・・・ビームスプリッタ、204・・・走査ユニット、204a、204b・・・反射ミラー、205・・・データ処理装置、206・・・検出器レンズ、207・・・遮光板、208・・・開口、209・・・光検出器、210・・・走査レンズ、211・・・一次像面、212・・・リレーレンズ、213・・・ミラー、214・・・対物レンズ、215・・・標本、220・・・対物レンズの瞳位置、231、232・・・光軸、241・・・フィルタ、300・・・光スポット、301・・・重心、401・・・レジスティブアノード、402・・・波高検出器。
Claims (3)
- 光源と、前記光源からの光束を標本上に集光する対物レンズと、前記光源からの光束を前記標本上で走査させるための走査光学系と、前記標本からの光束を検出するための光検出器と、前記光検出器の出力を演算する演算部とを有し、
前記光検出器は、少なくとも一方向に配列された複数の受光部を備え、
前記演算部は、前記複数の受光部の出力から、入射した光の強度および位置を対応させて検出し、前記光検出器に入射した光束の中心から予め設定された範囲の光強度の和を求めることを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。 - 請求項1に記載の走査型共焦点顕微鏡において、前記光検出器は、前記標本からの光束を増幅して前記受光部に入射させる光増幅部を有することを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
- 請求項1に記載の走査型共焦点顕微鏡において、前記受光部は、入射した光により電荷を発生させ、それを蓄積して検出するものであることを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
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