JP4505301B2

JP4505301B2 - 合皮シート

Info

Publication number: JP4505301B2
Application number: JP2004289861A
Authority: JP
Inventors: 岩雄神藤
Original assignee: 株式会社テクノシントウ
Priority date: 2004-10-01
Filing date: 2004-10-01
Publication date: 2010-07-21
Anticipated expiration: 2024-10-01
Also published as: JP2006104251A

Description

この発明は、柔軟性、弾力性、強度、伸縮性および通気性を兼ね備えた合皮シート用発泡エマルジョン樹脂組成物およびその組成物から得られた合皮シートに関する。

合成皮革を用いた商品、例えば袋物やシューズなどに用いられる合皮シートあるいはフィルムは、その使用環境・条件から柔軟性、反発弾性、強度、伸縮性および通気性が求められる。

一方、こうした合皮シートの製造は、ドクターコート法のように開放状態で基布または離型紙にコーティングされるものであるから、上記樹脂組成物をコーティングする際に有機溶剤が蒸散するようなものでは、環境問題、労働安全衛生上の問題が発生し、この問題の対策のための設備が必要となり設備投資が嵩むなどの問題がであった。

上記問題に鑑みこの発明は、柔軟性、反発弾性、強度、伸縮性および通気性を兼ね備え、製造に際しては、有機溶剤の蒸散による環境問題や労働安全衛生上の問題が発生せず、設備投資が嵩むなどの問題を解決した合皮シート形成用樹脂組成物と、この組成物から得られる合皮シートあるいはフィルムを提供することを課題とする。

上記課題を解決するためにこの発明は、下記「Ａ」に記載の水性発泡エマルジョン樹脂組成物と、下記「Ｂ」に記載の水性エマルジョン樹脂組成物とを、４０〜６０／６０〜４０の割合で混合してなる（請求項１）。
記
「Ａ」アクリル酸アルキル・アクリロニトリル共重合水性エマルジョン１００重量部１００重量部に、発泡剤および整泡剤を添加して密閉容器中で１．５〜２．５倍に機械発泡させた水性発泡エマルジョン樹脂組成物。
「Ｂ」ポリウレタン水性エマルジョン８０重量部にシリコンオイル１重量部および変性ポリイソシアネート（架橋剤）を添加したポリウレタン水性エマルジョン組成物。

下記「Ｃ」に記載の水性エマルジョン樹脂組成物と、下記「Ｂ」に記載の水性エマルジョン樹脂組成物とを、４０〜６０／６０〜４０の割合で混合し、この混合物を密閉容器中で１．５〜３．０倍に機械発泡させてなる（請求項２）。
記
「Ｃ」アクリル酸アルキル・アクリロニトリル共重合水性エマルジョン１００重量部に、発泡剤および整泡剤を添加した水性エマルジョン樹脂組成物。
「Ｂ」ポリウレタン水性エマルジョン８０重量部にシリコンオイル１重量部および変性ポリイソシアネートを添加したポリウレタン水性エマルジョン組成物。

また、上記合皮シート形成用樹脂組成物を、シボを形成した離型紙の表面に０．１〜２．０ｍｍの厚さでコーティングすると共に、コーティング層の表面に基布を重ね合わせ、上記離型紙をコーティング層から剥がした後にコーティング層を加熱・架橋してなり（請求項３）、さらに上記基布として不織布、織布、編布のいずれかを採用してなる（請求項４）ものである。

上記の如く構成するこの発明によれば、完成した合皮シートの柔軟性、反発弾性、強度、伸縮性および通気性を兼ね備えており、衣料、袋物、履物の素材として最適で、長期間の使用に耐えるものとなる。

なお、上記樹脂組成物Ａ／ＢおよびＣ／Ｂの混合比が、４０／６０未満では、反発弾性と柔軟性が得られず、６０／４０を超えると強度が低下し、基布となる不織布や織布との密着性が低下する。

また、上記発泡エマルジョン樹脂組成物「Ａ」の発泡倍率が大きすぎるときは、強度と耐屈曲性が低下し、織布、不織布、編布を素材とする基布との密着性が低下し、発泡倍率が小さすぎるときは柔軟性と通気性が低下する。従って、要求される強度、耐屈曲性、基布との密着性、柔軟性、通気性、耐久性などを考慮して配合比率および発泡率を決定する。

次にこの発明の実施の形態を説明する。アクリル酸アルキル・アクリロニトリル共重合水性エマルジョン（パラケムジャパン株式会社製商品名：パラボンドＢ＝樹脂固形分４９％、高級アルコールサルフェートナトリウム塩０．５％、水５０．５％）１００重量部に、発泡剤（日本エヌエスシー株式会社製商品名：ＹＣ−１００）３重量部および整泡剤（日本エヌエスシー株式会社製商品名：ＹＣ−８１）３重量部を添加し、密閉容器に投入して高速攪拌して２倍に発泡させた水性発泡エマルジョン樹脂組成物Ａを調整する。なお、上記発泡剤と整泡剤は、要求される発泡条件により２〜５重量部の範囲で適宜増減することができる。

次に、ポリウレタン水性エマルジョン（大日本インキ化学工業株式会社製商品名：ハイドランＨＷ−９３０＝樹脂固形分５０％、水５０％）８０重量部にシリコンオイル（ポリアルキルシロキサン東芝シリコーン株式会社製商品名：ＴＳＦ４５１−１００）１重量部および変性ポリイソシアネート（架橋剤ＰＣカサマツ社製商品名：ＰＣフィクサーＭ−４１）２重量部を添加混合して水性エマルジョン樹脂組成物Ｂを調整する。

なお、この発明の実施例で採用したアクリル酸アルキル・アクリロニトリル共重合水性エマルジョン、およびポリウレタン水性エマルジョンは、乳化重合法により得られた水性エマルジョン樹脂で、無溶剤タイプであるから、ドクターコーティング作業において有機溶剤の蒸散の心配はなく、環境の悪化、労働安全衛生上の問題はない。

また、発泡エマルジョン樹脂組成物「Ａ」の機械発泡は、高速撹拌中に樹脂組成物内に余分の空気が取り込まれると粗大発泡が形成されるので気密容器内で行う必要があり、樹脂組成物ＡとＢとを混合するときは、容器の内容積の５０％〜８０％になるように樹脂組成物Ａ、Ｂを投入し、１２０ｒｐｍで１０分間撹拌する。上記条件は、要するに混合中に樹脂組成物内に余分の空気を取り込まないように、かつ、樹脂組成物が老化しないようにするためである。

〔実施例１〜３、比較例１，２〕
上記のようにして得た水性発泡エマルジョン樹脂組成物Ａと水性エマルジョン樹脂組成物とを表１に示す割合で混合した実施例１，２，３と比較例１，２の合皮シート用樹脂組成物を調整した。

また、表１では、上記水性発泡エマルジョン樹脂組成物「Ａ」の発泡倍率を２倍としたが、発泡倍率を大きくするときはＡ／Ｂを小さく、発泡倍率を小さくするときはＡ／Ｂを大きくする。

次に図１を参照しながら合皮シートの製造について説明する。上記実施例１，２，３および比較例１，２の合皮シート用樹脂組成物１２をドクターコーター１３に供給し、サプライ１０から繰り出された離型紙１１（表面にシボを形成）をドクターナイフ１３ａとエンドレスシート１３ｃが周回するバックアップテーブル１３ｂとの間に通し、厚さ０．５ｍｍになるようにドクターナイフ１３ａを調節し、上記離型紙１１のシボ形成面にコーティングし、その直後でサプライ１４から繰り出された基布１５（経糸に、基本的に伸縮性のない糸、緯糸に、伸縮性のある糸を用いた織布）を押し当て、次いで予熱ゾーン１７で９０℃±１０ｄｅｇ、３０秒予熱し、加熱架橋ゾーン１８で１２０℃±５ｄｅｇ、１分加熱処理し、２０℃に保った冷却ゾーン１９で冷却してテイクアップ２０に巻きとって各実施例と各比較例の合皮シートを試作し、所要の特性を有するか否かを試験した結果を表１の下欄に示した。

なお、表１の反発弾性の試験は、各実施例、比較例から試料を採取し外径１５ｍｍφの鋼球を同一箇所に５０ｃｍの高さから１０回連続して落下させ、試験後、該部分に永久変形があるか否かを観察した。引張強さと伸び試験は、ＪＩＳＢ７７２１に準じて行い、縦方向７８Ｎ、横方向４９Ｎ以上あれば良、伸びは縦方向２０％以上、横方向９０％以上あれば良とし、柔軟性試験は、従来品との比較において良好な柔軟性があれば良、基布との密着性試験は、経糸が長手方向になるようにし幅２０ｍｍのテープ状サンプル作成し、５ｍｍφのマンドレルに１７０度掛け回して２００Ｎの張力を加えながら５００回擦るように往復させた後、塗布層と基布との間に剥がれまたは浮き上がりが無ければ良とした。

〔実施例４〕
上記実施例２の合皮シート用樹脂組成物１２を、図１に示すドクターコーター１３に供給し、コーティング厚さ０．２ｍｍになるようにドクターナイフ１３ａを調節し、サプライ１０から繰り出された離型紙のシボ形成面に上記組成物をコーティングし、その直後にサプライ１４から繰り出された０．２ｍｍ編布１５を押しつけ、バックアップテーブル１３ｂを出たところで離型紙１１を剥いでテイクアップ１６に巻き取り、基布１５と共にコーティング層を予熱ゾーン１７で９０℃±１０ｄｅｇ、３０秒予熱し、加熱架橋ゾーン１８で１２０℃±５ｄｅｇ、１分間加熱処理し、２０℃に保った冷却ゾーン１９で冷却し、テイクアップ２０に巻きとって合皮シートを試作したところ、通気性良好でしなやかな感触の衣服用生地を得ることができた。

〔実施例５〕
アクリル酸アルキル・アクリロニトリル共重合水性エマルジョン（パラケムジャパン株式会社製商品名：パラボンドＢ＝樹脂固形分４９％、高級アルコールサルフェートナトリウム塩０．５％、水５０．５％）１００重量部に、発泡剤（日本エヌエスシー株式会社製商品名：ＹＣ−１００）３重量部および整泡剤（日本エヌエスシー株式会社製商品名：ＹＣ−８１）３重量部を添加した水性エマルジョン樹脂組成物Ｃと、ポリウレタン水性エマルジョン（大日本インキ化学工業株式会社製商品名：ハイドランＨＷ−９３０＝樹脂固形分５０％、水５０％）８０重量部にシリコンオイル（ポリアルキルシロキサン東芝シリコーン株式会社製商品名：ＴＳＦ４５１−１００）１重量部および変性ポリイソシアネート（架橋剤ＰＣカサマツ社製商品名：ＰＣフィクサーＭ−４１）２重量部を添加混合して水性エマルジョン樹脂組成物Ｂとを、密閉容器中で１．５〜３．０倍に機械発泡させて水性発泡エマルジョン樹脂組成物を調整し、上記と同様に合皮シートを試作して特性試験を行なったところ上記と同様の結果を得ることが出来た。なお、上記発泡剤と整泡剤は、要求される発泡条件により２〜５重量部の範囲で適宜増減することができる。

〔実施例６〕
また、公知の起毛手段により、上記実施例４の衣服用生地の編布側の表面に起毛を施すとバックスキンのような合皮シートを得ることができた。

以上説明したようにこの発明によれば、無溶剤タイプの水性発泡エマルジョン樹脂組成物を採用することによって、有機溶剤の蒸散による環境問題や労働安全衛生上の問題を解決し、反発弾性、強度、柔軟性、基布密着性、通気性のいずれも良好な特性を有する合皮シートあるいはフィルムが得られ、産業上の利用価値は極めて高いものといえる。

ドクターコーターを含む装置の配置図

符号の説明

１０サプライ（離型紙用）
１１離型紙
１２合皮シート用樹脂組成物
１３ドクターコーター
１３ａドクターナイフ
１３ｂバックアップテーブル
１３ｃエンドレスシート
１４サプライ（基布用）
１５基布
１６テイクアップ（離型紙用）
１７余熱ゾーン
１８加熱架橋ゾーン
１９冷却ゾーン
２０テイクアップ

Claims

下記「Ａ」に記載の水性発泡エマルジョン樹脂組成物と、下記「Ｂ」に記載の水性エマルジョン樹脂組成物とを、４０〜６０／６０〜４０の割合で混合してなる合皮シート形成用樹脂組成物。
記
「Ａ」アクリル酸アルキル・アクリロニトリル共重合水性エマルジョン１００重量部に、発泡剤および整泡剤を添加し、密閉容器中で１．５〜２．５倍に機械発泡させた水性発泡エマルジョン樹脂組成物。
「Ｂ」ポリウレタン水性エマルジョン８０重量部にシリコンオイル１重量部および変性ポリイソシアネートを添加したポリウレタン水性エマルジョン組成物。
下記「Ｃ」に記載の水性エマルジョン樹脂組成物と、下記「Ｂ」に記載の水性エマルジョン樹脂組成物とを、４０〜６０／６０〜４０の割合で混合し、この混合物を密閉容器中で１．５〜３．０倍に機械発泡させてなる合皮シート形成用樹脂組成物。
記
「Ｃ」アクリル酸アルキル・アクリロニトリル共重合水性エマルジョン１００重量部に、発泡剤および整泡剤を添加した水性エマルジョン樹脂組成物。
「Ｂ」ポリウレタン水性エマルジョン８０重量部にシリコンオイル１重量部および変性ポリイソシアネートを添加したポリウレタン水性エマルジョン組成物。
請求項１又は２に記載の上記合皮シート形成用樹脂組成物を、シボを形成した離型紙の表面に０．１〜２．０ｍｍの厚さでコーティングすると共に、コーティング層の表面に基布を重ね合わせ、上記離型紙をコーティング層から剥がしたのちにコーティング層を加熱・架橋してなる合皮シート。
上記基布として不織布、織布、編布のいずれかを採用してなる請求項３に記載の合皮シート。