JP4505007B2 - 穴明け工具 - Google Patents

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Description

本発明は、穴明け工具に関するものである。
プリント配線板(PCB)の穴明け加工には、図1に図示したような刃部Cを有するボデーAとシャンク部Bとで構成されるドリルが使用される。具体的には、刃部Cには、図2に図示したように本体20の外周にドリル先端から基端側に向かう螺旋状の切り屑排出溝22が形成され、この切り屑排出溝22のすくい面と先端に設けられた第一の逃げ面24との交差稜線部には切れ刃21が形成されている。尚、符号23は切り屑排出溝22の溝底を連ねて形成される心厚、d’はドリル直径、l’は切り屑排出溝の溝長、α’はねじれ角、β’は先端角、γ’は第一逃げ角である。
ところで、PCBにおいては、要求される穴径が年々小径化しており、近年では直径が0.4mm以下の穴加工が大半を占めている。また、穴深さがドリル直径の10倍を超えるような深穴加工も多い。
そのため、このような小径・深穴加工に使用されるドリルは、一般的に折損防止や穴曲がり性改善のため、刃部の心厚をドリル直径の30%〜60%とし、心厚がドリル基端側に向かって徐々に大きくなるようにウェブテーパを0.010/mm〜0.040/mmとして、心厚が溝全体に渡って一定のテーパ度合いで大きくなるような形状が採用されている。
また、穴曲がり性(穴位置精度)を改善するため、喰いつき時のドリルのスラストを低減させることを狙って心厚を小さめにし、図3に図示したように、第一のウェブテーパを有する第一のテーパ領域31と第二のウェブテーパを有する第二のテーパ領域33を設けてウェブテーパを二段に変化させたものもある(例えば特許文献1参照)。尚、図中、符号32はウェブテーパの変化点(第一のウェブテーパと第二のウェブテーパとの連設部)である。
ウェブテーパを二段に変化させる場合は、近年では、ドリル先端の心厚をドリル直径の20%〜50%と小さめにし、先端側のウェブテーパを大きくし(0.050/mm〜0.150/mm程度)、ウェブテーパ変化点(第一のウェブテーパと第二のウェブテーパとの連設部)をドリル先端から溝長の約30%以内に設け、ウェブテーパ変化点から切り屑排出溝のドリル基端側のウェブテーパを小さくして(0.003/mm〜0.020/mm程度)切り屑排出溝のドリル基端側の溝容積を確保する方法が採用されている。
しかしながら、この場合、心厚のテーパ度合いがドリル先端付近で大きく変化しているため、ドリル先端で発生する切り屑がスムーズに排出されず、穴位置精度を改善することができる反面、切り屑詰まりが起こり易く、良好な穴内壁粗さを得られないことがある。
このように、ドリルにおいては、剛性(穴位置精度)と切り屑排出性(穴内壁粗さ)は相反する因子となっている。
この相反する因子の双方を改善するために、一般的には、ねじれ角を大きくしてドリルの回転運動によるポンプ作用を利用し、剛性を保ちつつ切り屑を強制的に押し出す改善方法が採られることが多い。
しかしながら、ねじれ角が大きくなると先端切れ刃が鋭利になり過ぎて欠け易くなったり、ドリルのねじれ剛性が低下して折損に至ったりする場合がある。具体的には、従来多く採用されていたねじれ角が30°〜35°程度であったのに対し、近年では、ドリルの小径化が進んでいることから、ねじれ角を40°〜45°程度とする強ねじれタイプのドリルが多くなっている。
また、ねじれ角を大きくしたとしても、心厚及びウェブテーパが大きい場合は溝容積が小さくなり、切り屑詰まりが起こり易く、穴内壁粗さが改善できない場合がある。
更に、ねじれ角が大きくなると、図4に図示したように当て板41のアルミやPCB42の銅箔を切削したときに生じる切り屑が紐状となり、切り屑がドリルの溝基端位置(溝根元位置)に巻き付く原因となる。尚、図中、符号43は捨て板である。
切り屑が紐状になるのは、図5に図示したようにねじれ角はドリルの外周部における切れ刃のすくい角aとみなすことができ、ねじれ角を大きくした場合には切れ刃のすくい角aも大きくなり、これによりアルミや銅の切り屑の剪断角aが大きくなって、切り屑51が薄く長くなるためである。尚、図中、符号52は第一逃げ面、53は被削物、54はすくい面、aは刃物角、aは第一逃げ角である。
この切り屑の巻き付きは加工穴開口部における切り屑排出の阻害要因となり、しばしばドリル折損や穴位置精度悪化等のトラブルの原因となる。即ち、ねじれ角を大きくすることによるポンプ作用も切り屑排出性と相反する因子となる。
実開昭62−161916号公報
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、剛性と切り屑排出性を両立させ、且つ、切り屑の巻き付きも防止でき、0.4mm以下の小径ドリルであっても穴位置精度及び穴内壁粗さの良好な穴加工が実現可能な極めて実用性に秀れた穴明け工具を提供するものである。
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
工具本体1の外周に工具先端から基端側に向かう螺旋状の切り屑排出溝2が一若しくは複数形成された穴明け工具であって、前記切り屑排出溝2は、30°〜40°の範囲で設定される第一のねじれ角αを有する第一のねじれ領域3と、この第一のねじれ領域3の工具基端側に連設され前記第一のねじれ角αより5°〜20°大きい第二のねじれ角αを有する第二のねじれ領域4とを備え、前記工具本体1は、心厚wが工具基端側に向かって徐々に大きくなるように構成され、0.020/mm〜0.100/mmの範囲で設定される第一のウェブテーパを有する第一のテーパ領域6と、この第一のテーパ領域6の工具基端側に連設され前記第一のウェブテーパより小さい0.003/mm〜0.020/mmの範囲で設定される第二のウェブテーパを有する第二のテーパ領域7とを有し、前記第一のねじれ領域3と前記第二のねじれ領域4との連設部5は、前記工具本体1の先端から前記切り屑排出溝の溝長lの30%未満の位置に設けられ、前記第一のテーパ領域6と前記第二のテーパ領域7との連設部8は、前記第一のねじれ領域3と前記第二のねじれ領域4との連設部5よりも工具基端側に設けられていることを特徴とする穴明け工具に係るものである。
また、請求項記載の穴明け工具において、前記第一のテーパ領域6と前記第二のテーパ領域7との連設部8は、前記工具本体1の先端から前記切り屑排出溝の溝長lの30%〜90%の位置に設けられていることを特徴とする穴明け工具に係るものである。
また、請求項記載の穴明け工具において、前記第一のテーパ領域6と前記第二のテーパ領域7との連設部8は、前記工具本体1の先端から前記切り屑排出溝の溝長lの50%〜90%の位置に設けられていることを特徴とする穴明け工具に係るものである。
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の穴明け工具において、前記工具本体の心厚wは、工具直径dの20%〜60%に設定されていることを特徴とする穴明け工具に係るものである。
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の穴明け工具において、工具直径dが0.4mm以下であることを特徴とする穴明け工具に係るものである。
また、請求項1〜5いずれか1項に記載の穴明け工具において、前記第一のねじれ領域3と前記第二のねじれ領域4との連設部5は、前記工具本体1の先端から0.3mm以上の位置に設けられていることを特徴とする穴明け工具に係るものである。
本発明は上述のように構成したから、剛性と切り屑排出性を両立させ、且つ、切り屑の巻き付きも防止でき、0.4mm以下の小径ドリルであっても穴位置精度及び穴内壁粗さの良好な穴加工が実現可能な極めて実用性に秀れた穴明け工具となる。
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
工具先端のねじれ角を小さくすることで、切り屑が薄く長くならずに厚く短くなり、工具本体1への巻き付きを防止でき、それだけドリルの折損防止や穴位置精度を向上させることが可能となり、工具基端側のねじれ角を大きくすることで、良好なポンプ作用により工具先端で生じた厚く短い切り屑をスムーズに排出でき、切り屑詰まりを防止して穴内壁粗さを改善することが可能となる。
また、第一のテーパ領域6の工具基端側に第二のテーパ領域7を設けることで、工具本体1の剛性を確保するとともに切り屑排出溝2の基端側においてもある程度溝容積を確保することができ、それだけ切り屑をスムーズに排出させることが可能となる。
更に、第一のテーパ領域6と第二のテーパ領域7との連設部8を、従来より工具基端側となる例えば工具本体の先端から切り屑排出溝2の溝長lの30%〜90%の位置に設けることで、工具先端部の切り屑排出溝2内での切り屑流れがスムーズとなり、この点からも穴内壁粗さを改善することが可能となる。
また、第一のテーパ領域6と第二のテーパ領域7との連設部8を、第一のねじれ領域3と第二のねじれ領域4との連設部5より工具基端側にずらして設けることで、切り屑の排出性を阻害するウェブテーパの変化点(連設部8)とねじれ角の変化点(連設部5)とをずらすことができ、切り屑排出性が急激に悪化する部位が生ぜず、よって、切り屑排出性を可及的に低下させることなく、穴位置精度と穴内壁粗さの双方を改善することが可能となる。
本発明の具体的な実施例について図6〜図12に基づいて説明する。
本実施例は、工具本体1の外周に工具先端から基端側に向かう螺旋状の切り屑排出溝2が一若しくは複数形成された穴明け工具であって、前記切り屑排出溝2は、第一のねじれ角αを有する第一のねじれ領域3と、この第一のねじれ領域3の工具基端側に連設され前記第一のねじれ角αより大きい第二のねじれ角αを有する第二のねじれ領域4とを備え、前記工具本体1は、心厚wが工具基端側に向かって徐々に大きくなるように構成され、第一のウェブテーパを有する第一のテーパ領域6と、この第一のテーパ領域6の工具基端側に連設され前記第一のウェブテーパより小さい第二のウェブテーパを有する第二のテーパ領域7とを有し、前記第一のねじれ領域3と前記第二のねじれ領域4との連設部5は、前記工具本体1の先端から前記切り屑排出溝2の溝長lの30%未満の位置に設けられ、前記第一のテーパ領域6と前記第二のテーパ領域7との連設部8は、前記工具本体1の先端から前記切り屑排出溝2の溝長lの30%〜90%の位置に設けられているものである。
具体的には、本実施例は、工具直径dが0.3mmで切り屑排出溝の溝長lが5.5mmのドリルであり、PCBの穴明け加工に使用されるものである。更に具体的には、図2に図示した工具を改良したものであり、ドリルの切り屑排出溝2に前記第一のねじれ領域3と前記第二のねじれ領域4とを設け、工具本体1の心厚wに前記第一のテーパ領域6と前記第二のテーパ領域7とを設けたものである。尚、先端角は130°に設定されている。
各部を具体的に説明する。
工具本体1の心厚wは、工具直径dの20%〜60%に設定されている。これは、20%未満であると工具先端の切れ刃9が加工により摩滅し易く、また、適度な剛性を得られないことから穴位置精度が悪化してしまい、60%を超えると工具先端においてスムーズな切り屑流れを得ることができず、穴内壁粗さの悪化が懸念されるためである。本実施例においては38%に設定されている。
第一のねじれ角αは30°〜40°に設定されている。これは、被削物上面にアルミ板を載置するような場合や、被削物の内外層などに銅箔が多い場合には、ねじれ角が40°を超える場合に切り屑排出溝2の基端部(根元部)に著しい切り屑の巻き付きが見られるため、切削を行う工具先端の切れ刃部分はねじれ角を40°以下の角度(30°〜40°)として発生する切り屑を短くして切り屑が巻き付かないようにするためである。本実施例においては38°に設定されている。
第二のねじれ角αは第一のねじれ角αより5°〜20°大きい角度に設定されている。これは、切り屑を短くするためにねじれ角を小さめにした第一のねじれ領域3より良好なポンプ作用を得るためであり、20°以下としたのは、20°より大きくすると過度の強ねじれ角による工具のねじれ剛性の低下が懸念されるためである。本実施例においては45°に設定されている。
また、切り屑を良好に排出するためには、できるだけ工具先端側で第二のねじれ角αへ変化することが望ましいが、一般的にPCB用のドリルは使用後に先端を研ぎ直して使用するため(再研磨)、第一のねじれ領域3と第二のねじれ領域4との連設部5は、研磨量を考慮して工具先端から0.3mm〜切り屑排出溝の溝長lの30%未満の位置に設定するのが好ましい。本実施例においては、第一のねじれ角αと第二のねじれ角αとの変化点が工具先端から溝長lの20%の位置(C)となるように設定されている。
工具本体1(心厚w)の第一のウェブテーパは0.020/mm〜0.100/mmに設定され、第二のウェブテーパは0.003/mm〜0.020/mmに設定されている。これらのウェブテーパは、試験結果などを元に適宜設定する。本実施例においては、第一のウェブテーパは0.028/mmに設定され、第二のウェブテーパは0.007/mmに設定されている。
第一のテーパ領域6と第二のテーパ領域7との連設部8は、工具本体1の先端から切り屑排出溝2の溝長lの30%〜90%の位置に設けている。これは、30%未満であると、ねじれ角の変化点とウェブテーパの変化点とが重複する可能性があり、重複点で切り屑排出性が急激に悪化してしまうことを防ぐためであり、更に、30%未満であると、工具先端側で溝容積を十分に確保できず切り屑詰まりが発生し易くなり、90%を超えると、第二のテーパ領域7にして心厚の大きい領域が小さく(工具軸方向に短く)なって工具本体1の剛性の確保が困難となるだけでなく、製造時の溝加工においてウェブテーパ変化点の位置決め誤差による溝の切れ上げ位置不良が生じるためである。尚、更に一層良好な切り屑排出性を得たい場合には、工具先端側における溝容積を大きくするため、工具本体1の先端から溝長lの50%以上の位置に設けるのが好ましい。本実施例においては、第一のウェブテーパと第二のウェブテーパとの変化点が工具先端から溝長lの82%の位置(C)となるように設定されている。
本実施例は上述のように構成したから、工具先端のねじれ角を小さくすることで、切り屑が薄く長くならずに厚く短くなり、工具本体1への巻き付きを防止でき、それだけドリルの折損防止や穴位置精度を向上させることが可能となり、工具基端側のねじれ角を大きくすることで、良好なポンプ作用により工具先端で生じた厚く短い切り屑をスムーズに排出でき、切り屑詰まりを防止して穴内壁粗さを改善することが可能となる。
また、第一のテーパ領域6の工具基端側に第二のテーパ領域7を設けることで、工具本体1の剛性を確保するとともに切り屑排出溝2の基端側においてもある程度溝容積を確保することができ、それだけ切り屑をスムーズに排出させることが可能となる。
更に、第一のテーパ領域6と第二のテーパ領域7との連設部8を、従来より工具基端側となる工具本体の先端から切り屑排出溝2の溝長lの30%〜90%の位置に設けることで、工具先端部の切り屑排出溝2内での切り屑流れがスムーズとなり、この点からも穴内壁粗さを改善することが可能となる。
また、第一のテーパ領域6と第二のテーパ領域7との連設部8を、第一のねじれ領域3と第二のねじれ領域4との連設部5より工具基端側にずらして設けることで、切り屑の排出性を阻害するウェブテーパの変化点とねじれ角の変化点とをずらすことができ、切り屑排出性が急激に悪化する部位が生ぜず、よって、切り屑排出性を可及的に低下させることなく、穴位置精度と穴内壁粗さの双方を改善することが可能となる。
また、一般にPCB用のドリルは、工具先端に先端角を有した4面加工を施し切れ刃を形成する。ドリルの溝形状は、切れ刃が直線をなすように形成されており、具体的にはドリルの軸直角断面視における溝形状(前記断面と溝(すくい面)との交差稜線)は所定の曲線状とされ、溝加工用砥石はその曲線を得られるように整形(ツルーイング)される必要がある。ねじれ角が大きくなると理想的な切れ刃を形成する砥石形状となるようにツルーイングすることが作業上困難となり、切れ刃形状不良(切れ刃の反り、膨らみ、歪み)が発生し易く、近年では大きくても45°程度が一般的である。この点、本実施例においては、工具先端部のねじれ角を45°より小さく設定しているため、比較的容易に砥石のツルーイングを行うことが可能となる。
また、工具先端のねじれ角を大きくした場合、図5に図示したように、第一逃げ面52とすくい面54とがなす刃物角aが小さくなり、切れ刃が欠け易くなる。これを防ぐためには第一逃げ角aを小さく設定する必要があるが、この場合、第一逃げ面52と被削物53とが接触し易くなり、ドリル軸方向の摩耗進行によって切れ刃上の摩耗幅が大きくなる。そのため、PCB用のドリルにおいてはねじれ角が45°の場合、第一逃げ角を10°〜12°に設定することが一般的である。12°より大きくするとドリル加工時に切れ刃の欠けや異常摩耗を発生する場合があり、10°未満とすると第一逃げ面が被削物に接触し易くなり、切れ刃上の摩耗幅が大きくなる。この点、本実施例においては工具先端部のねじれ角を30°〜40°とすることで、第一逃げ角を12°より大きく設定することが可能となり、それだけPCB材質や加工特性を考慮した切れ刃逃げ角設定の自由度が増すことになる。
よって、本実施例は、剛性と切り屑排出性を両立させ、且つ、切り屑の巻き付きも防止でき、0.4mm以下の小径ドリルであっても穴位置精度及び穴内壁粗さの良好な穴加工が実現可能な極めて実用性に秀れたものとなる。
本実施例の効果を裏付ける実験例について説明する。
図8に本実施例と従来例の形状比較データを示す。ここで本実施例と従来例は、同じ直径、溝長、先端角を有するものである。
実験は、図4に図示したような状態で行い、具体的な加工条件は、PCB(基板):FR−4/厚さ1.6mm/4層Cu、当て板:厚さ0.2mmのアルミ板、回転数:150krpm、送り速度:2.54m/min、設定ヒット数:6000とした。
図9に本実施例の、図10に従来例の穴内壁粗さの測定結果を示す。両者を比較すると本実施例では従来例に比して穴内壁荒さの改善が見られる。尚、評価は、穴加工されたPCBを電解銅メッキ処理し、測定位置付近のPCBを切り抜き樹脂でモールドし、評価穴直径の50%付近の穴の縦断面が観察できるように研磨して測定を行った。また一般に穴内壁粗さは、PCBの絶縁層に使用されているガラスクロスの網目方向に対して45°方向に大きく観察される傾向にあるため、本評価においては、45°方向に断面をとり観察を行った。2枚重ねて加工を行ったPCBの上下において、最終ヒット数(6,000ヒット)付近の5穴の最大荒れ箇所を対象とし、測定方法は内壁面から荒れの最大点までの距離を測定した。トータルの平均値は3本の平均値の平均を示し、最大値は3本中の最大値の最大を示す。
また、図11に本実施例の、図12に従来例の穴位置精度の測定結果を示す。両者を比較すると本実施例では従来例に比して穴位置精度の改善が見られる。尚、通常穴曲がりは2枚重ねて加工を行ったPCBの下PCBの裏側で大きくなる。穴位置精度はAOI測定機を用いて基板の裏側において設定ヒット数全穴を測定するのが一般的である。測定値はNCで指定された目標座標からのずれ量であり、測定値は穴明け機位置決め精度等の外乱による分布のずれを補正するために重心法により補正を行っている。穴位置精度は設定ヒット数内で目標座標からのずれの最大値と、穴位置精度分布は正規分布となることが一般的であるため、「平均値+3σ(σは標準偏差を示す。)」が評価データとして用いられる。トータルの「平均値+3σ」は3本の「平均値+3σ」の平均を示し、最大値は3本中の最大値の最大を示す。
更に、PCBに本実施例及び従来例で3本ずつ穴明け加工を施し、この際の切り屑の巻き付きの有無を目視評価したところ、従来例では3本全てに巻き付きが見られたが、本実施例では1本も巻き付きは見られなかった。
従って、本実施例によれば、小径ドリルにおいて相反する因子である穴内壁粗さと穴位置精度との双方を改善できることが確認できた。
尚、本実施例の構成は小径ドリル、特に工具直径が0.4mm以下のドリルに好適であることを確認している。
PCB用ドリルの概略説明側面図である。 従来例の要部の拡大概略説明図である。 従来例の概略説明図である。 穴明け工具による加工状態を示す概略説明図である。 加工部の拡大概略説明図である。 本実施例の要部の拡大概略説明側面図である。 本実施例の要部の拡大概略説明図である。 本実施例と従来例の形状比較データを示す表である。 本実施例の穴内壁粗さの測定結果を示す表である。 従来例の穴内壁粗さの測定結果を示す表である。 本実施例の穴位置精度の測定結果を示す表である。 従来例の穴位置精度の測定結果を示す表である。
1 工具本体
2 切り屑排出溝
3 第一のねじれ領域
4 第二のねじれ領域
5 連設部
6 第一のテーパ領域
7 第二のテーパ領域
8 連設部
α 第一のねじれ角
α 第二のねじれ角
l 溝長
w 心厚
d 工具直径

Claims (6)

  1. 工具本体の外周に工具先端から基端側に向かう螺旋状の切り屑排出溝が一若しくは複数形成された穴明け工具であって、前記切り屑排出溝は、30°〜40°の範囲で設定される第一のねじれ角を有する第一のねじれ領域と、この第一のねじれ領域の工具基端側に連設され前記第一のねじれ角より5°〜20°大きい第二のねじれ角を有する第二のねじれ領域とを備え、前記工具本体は、心厚が工具基端側に向かって徐々に大きくなるように構成され、0.020/mm〜0.100/mmの範囲で設定される第一のウェブテーパを有する第一のテーパ領域と、この第一のテーパ領域の工具基端側に連設され前記第一のウェブテーパより小さい0.003/mm〜0.020/mmの範囲で設定される第二のウェブテーパを有する第二のテーパ領域とを有し、前記第一のねじれ領域と前記第二のねじれ領域との連設部は、前記工具本体の先端から前記切り屑排出溝の溝長の30%未満の位置に設けられ、前記第一のテーパ領域と前記第二のテーパ領域との連設部は、前記第一のねじれ領域と前記第二のねじれ領域との連設部よりも工具基端側に設けられていることを特徴とする穴明け工具。
  2. 請求項記載の穴明け工具において、前記第一のテーパ領域と前記第二のテーパ領域との連設部は、前記工具本体の先端から前記切り屑排出溝の溝長の30%〜90%の位置に設けられていることを特徴とする穴明け工具。
  3. 請求項記載の穴明け工具において、前記第一のテーパ領域と前記第二のテーパ領域との連設部は、前記工具本体の先端から前記切り屑排出溝の溝長の50%〜90%の位置に設けられていることを特徴とする穴明け工具。
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載の穴明け工具において、前記工具本体の心厚は、工具直径の20%〜60%に設定されていることを特徴とする穴明け工具。
  5. 請求項1〜4いずれか1項に記載の穴明け工具において、工具直径が0.4mm以下であることを特徴とする穴明け工具。
  6. 請求項1〜5いずれか1項に記載の穴明け工具において、前記第一のねじれ領域と前記第二のねじれ領域との連設部は、前記工具本体の先端から0.3mm以上の位置に設けられていることを特徴とする穴明け工具。
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