JP4501267B2 - 自動車の前部車体構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、左右一対のフロントサイドフレームを備えた自動車の前部車体構造に関し、特に正面衝突時に乗員に作用する減速度を低減することができる自動車の前部車体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上述例の自動車の前部車体構造としては、例えば特開2000−53022号公報に記載のものがある。
すなわち、図11、図12に示すように車体前部において前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム91,91を設け、これら両フロントサイドフレーム91,91の外部には斜め前方外部に延びる副ビーム92,92(斜め方向ビーム)を取付け、ノーマル時(衝突前の通常時)においてはバンパレインフォースメント93と副ビーム92,92前端との間に間隔94,94を形成したものである。
【0003】
そして、この従来構造によれば、車両の正面衝突時に衝突荷重をバンパレインフォースメント93を介してフロントサイドフレーム91,91に伝達し、衝突初期においてはフロントサイドフレーム91,91の前部(バンパレインフォースメント93に対する結合部近傍)が圧壊する比較的変形荷重の大きい変形が開始され、車体減速度が急峻に立上がる。
【0004】
このフロントサイドフレーム91,91の圧縮変形により上記間隔94,94がなくなり、バンパレインフォースメント93からの入力荷重は斜め方向に延びる副ビーム92,92に伝達されるので、フロントサイドフレーム91,91は該副ビーム92,92からの側方荷重を受けて図12に示すように車幅方向内方へ折り曲がり変形し、車体減速度が減少する。
【0005】
そこで、上述車体減速度が急速に低下する領域でシートベルトの伸びがピークに達するように設定することで、乗員減速度を大幅に低減すべく構成したものである。
【0006】
上記従来の自動車の前部車体構造にはペリメータフレームは設けられていないが、仮にフロントサイドフレーム91,91の下部にエンジンやフロントサスペンションを支持するようなペリメータフレームを取付けた場合には、ペリメータフレームの取付位置によりフロントサイドフレーム91,91の図12に実線で示すような折り曲がりが阻害され、良好なフロントサイドフレーム91,91の折曲状態が確保されなくなり、乗員に付勢される荷重値を充分に低下させることとが困難となる問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、ペリメータフレームを備えた自動車の前部車体構造において、該ペリメータフレームの前部から車体前方に突出する衝撃吸収部材を設けることで、正面衝突初期にペリメータフレーム前部の衝撃吸収部材により車体減速度(つぶれ初期の減速度)を高め、エネルギ吸収荷重を増大して、乗員に付勢される荷重値の低減を図ることができ、また衝突初期の荷重をフロントサイドフレームとペリメータフレームとの両方で受けてフロントサイドフレームの不所望の曲がりを防止することができる自動車の前部車体構造の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明による自動車の前部車体構造は、左右一対のフロントサイドフレームと、少なくとも前部が上記フロントサイドフレーム前部に取付けられたペリメータフレームとを備えた自動車の前部車体構造であって、上記左右一対のフロントサイドフレームの先端に第1の衝撃吸収部材を設け、左右の第一の衝撃吸収部材間をバンパレインフォースメントで連結し、上記ペリメータフレームは、上記フロントサイドフレーム下部の前部間において車幅方向に延びる前側部材と、該前側部材より後方で上記フロントサイドフレーム下部において車幅方向に延びる後側部材と、上記フロントサイドフレーム下部において車両の前後方向に延びる側部部材と、から構成され、上記側部部材が車両の前後方向前側が前方に向うに従って上記フロントサイドフレームに近づくように傾斜して設けられており、上記ペリメータフレームの側部部材の前部から車体前方に突出する第2の衝撃吸収部材を設けると共に、第2の衝撃吸収部材の前端部が上記バンパレインフォースメントの前端部よりも車両の前後方向後側に位置するように設けられた
ものである。
【0009】
上記構成の衝撃吸収部材は、オフセット衝突(車体前部の何れかの片側で衝突エネルギを受けるような衝突)にも対応できる強度をもったフレーム部材に設定することができる。
【0010】
上記構成によれば、正面衝突初期にペリメータフレーム前部の上記衝撃吸収部材により車体減速度(つぶれ初期の減速度)を高め、エネルギ吸収荷重を増大して、乗員に付勢される荷重値の低減を図ることができる。
【0011】
つまり、衝突荷重をペリメータフレーム側の第2の衝撃吸収部材とフロントサイドフレームとの双方で受けることができるので、衝突初期の耐力が向上して、つぶれ初期の減速度を高めることができる。
【0012】
また、衝突初期の荷重とフロントサイドフレームとペリメータフレームとの両方で受けてフロントサイドフレームの不所望の曲がりを防止することができる。因に、衝突初期においてフロントサイドフレームが不所望に曲がると、つぶれ初期の減速度が低下する。
【0013】
さらに、上記左右一対のフロントサイドフレームの先端に第1の衝撃吸収部材を設け、左右の第1の衝撃吸収部材間をバンパレインフォースメントで連結したものであるから、第1の衝撃吸収部材の配設部分がクラッシュスペースとなり、これによって、ストロークをかせぎつつエネルギ吸収を行なうことができる。
【0014】
加えて、上記ペリメータフレーム側の第2の衝撃吸収部材は、上記フロントサイドフレーム側の第1の衝撃吸収部材よりも下方に設けられることになり、これにより、上述の両衝撃吸収部材が上下に対応する部分に配置される構造となって、衝撃の初期から両衝撃吸収部材(換言すればペリメータフレームとフロントサイドフレームとの双方)により確実に荷重を受けもつことができる。
【0015】
また、上記ペリメータフレームは該ペリメータフレームに設けられた第2の衝撃吸収部材の後部において、車幅方向に延びる部材(前側部材参照)を備えているので、ペリメータフレームの衝突時における左右方向の曲がりや広がりを、上記車幅方向に延びる部材(前側部材参照)にて防止することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記ペリメータフレーム前部の第2の衝撃吸収部材はその下面が先端になる程、上方位置となる先細状に形成されたものである。
上記構成によれば、アプローチアングル(approach angle、前オーバハング角のことで、自動車の前部下端から前輪タイヤ外周への接平面が地面と成す最小角度のこと)を確保しつつ、上述の衝撃吸収構造を達成することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記ペリメータフレーム側の第2の衝撃吸収部材と上記フロントサイドフレーム側の第1の衝撃吸収部材とは互に略平行に延出されたものである。
上記構成によれば、衝撃荷重の入力方向が両衝撃吸収部材において互に平行となるので、フロントサイドフレームの不要な曲がりを防止することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記ペリメータフレームの前部をフロントサイドフレーム前部に取付けるマウント部を設け、上記マウント部の後部ペリメータフレームとが補強部材で連結されたものである。
上記構成によれば、上述の補強部材で衝突荷重をペリメータフレームに良好に伝達することができる。
【0019】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は自動車の前部車体構造を示し、図1〜図3において車両の前後方向に延びる左右一対の鋼板製のフロントサイドフレーム11,11を設け、これら各フロントサイドフレーム11,11の後部にはフロアフレーム部12,12を一体的に形成している。
【0020】
上述のフロントサイドフレーム11,11の前端部には接合フランジ部13,13を設ける一方、後端部に接合フランジ部14,14を有する衝撃吸収部材15,15を設けて、これら両接合フランジ部13,14を連結固定することで、フロントサイドフレーム11,11の先端に上述の衝撃吸収部材15,15を取付けている。
また左右一対の衝撃吸収部材15,15相互間には車幅方向に延びるバンパレインフォースメント16を張架している。
【0021】
ここで、上述のバンパレインフォースメント16およびフロントサイドフレーム11は何れも閉断面構造を有する強度部材であり、また上述の衝撃吸収部材15はクラッシュカン等により構成される。
【0022】
上述のフロントサイドフレーム11の後部上方には図2に示すように、車幅方向に延びるダッシュロアパネル17が設けられ、このダッシュロアパネル17よりも前部がエンジンルーム18に設定され、ダッシュロアパネル17よりも後部が車室19に設定されている。
【0023】
さらに上述のフロントサイドフレーム11の下部にはエンジン20(図2参照)およびフロントサスペンションを支持する鋼板製のペリメータフレーム21(perimeter frame、枠型フレーム)が設けられている。
【0024】
このペリメータフレーム21は図1、図6に示すように、フロントサイドフレーム11,11の前部間において車幅方向に延びる前側部材22と、ダッシュロアパネル17の近傍位置においてフロントサイドフレーム11,11間に車幅方向に延びる後側部材23と、右側のフロントサイドフレーム11の下方において車両の略前後方向に延びる右側部材24と、左側のフロントサイドフレーム11の下方において車両の略前後方向に延びる左側部材25とを、略井桁状に一体形成した枠型フレームであって、上記各部材22,23,24,25はそれぞれ閉断面構造に構成されている。
【0025】
ここで、上述のペリメータフレーム21における右側部材24および左側部材25の前後両部にはそれぞれマウント部26,26,27,27(但し、マウントラバーを有さないマウント部)が設けられ、前側のマウント部26,26はその上下方向に対向するフロントサイドフレーム11,11の前側下部にリジットに取付けられ、後側のマウント部27,27は車体側のダッシュロアレインフォースメントまたはトルクボックスにリジットに取付けられている。
【0026】
また、図3に斜め下方から見た状態の斜視図で示すように、ペリメータフレーム21において前側部材22の右部下面と、右側部材24の中間部下面との間には平板28を張架し、同様に前側部材22の左部下面と、左側部材25の中間部下面との間にも平板29を張架している。
さらに左右の各部材24,25の後部下面には平板30,30を張架すると共に、後側部材23の下部にも平板31を張架している。
【0027】
しかも、上述のペリメータフレーム21を構成する右側部材24および左側部材25の前部には車体前方の突出する衝撃吸収部材32,32を一体または一体的に取付けている。
【0028】
このペリメータフレーム21側の衝撃吸収部材32はオフセット衝突(全衝突エネルギを片側で受ける必要がある衝突)にも対応できる強度をもったフレーム部材により構成されている。
【0029】
また、上述の各衝撃吸収部材32,32はフロントサイドフレーム11,11の前部に取付けた衝撃吸収部材15,15と上下方向で対向するようにその下方に設けられると共に、これら上下の各衝撃吸収部材15,32のは互に略平行となるように延出されている。またペリメータフレーム21側の衝撃吸収部材32の延出位置はバンパレインフォースメント16の前端部と略対応するように前方位置に設定されている。
【0030】
さらにペリメータフレーム21前部の衝撃吸収部材32は図1、図2、図3から明かなように、その下面が先端になる程、上方位置となる先細状に形成されている。つまり上述の衝撃吸収部材32の下面は前高後低状に傾斜するスラント面に形成されており、所定のアプローチアングルを確保すべく構成している。
【0031】
ところで、ペリメータフレーム21の前部は上述のマウント部26,26を用いてフロントサイドフレーム11の前部下面に取付けられているが、このマウント部26の後部と右側部材24および左側部材25とを側面視逆L字状の補強部材33,33(いわゆるガセットプレート)で連結して、衝突荷重をペリメータフレーム21を構成するこれらの右側部材24、左側部材25に伝達すべく構成している。
【0032】
また、上述のペリメータフレーム21は該ペリメータフレーム21に設けられた衝撃吸収部材32,32の直後部において車幅方向に延びる前述の前側部材22で連結されている。
【0033】
要するに、上述のペリメータフレーム21の前部にバンパレインフォースメント16と対応する位置まで車体前方へ突出するフレーム部材製の衝撃吸収部材32,32を設け、この衝撃吸収部材32フロントサイドフレーム11との双方で衝突荷重を受けるように構成して、衝突初期の耐力を向上し、つぶれ初期の減速度を高めるように成したものである。
【0034】
このように構成した自動車の前部車体構造の作用を以下に説明する。
上記構成の車体構造においては、フロントサイドフレーム11の吸収荷重に加えてペリメータフレーム21の吸収荷重が加算されるので、図4にこの実施例の特性aと衝撃吸収部材15,32を有さない比較例の特性bとを対比して示すように、この実施例ではつぶれ初期の減速度を大幅に向上させることができる。
【0035】
ここで、図4は横軸に車体つぶれをとり、縦軸に車体に作用する減速度いわゆる車体Gをとった特性図で、図中のαはフロントサイドフレーム11よりも前側の部材のつぶれ領域を示し、βはフロントサイドフレーム11のつぶれ領域を示す。
【0036】
車両が正面衝突すると、その衝突荷重はバンパレインフォースメント16および衝撃吸収部材15を介して左右一対のフロントサイドフレーム11に入力されると共に、ペリメータフレーム21側の衝撃吸収部材32を介してペリメータフレーム21にも入力される。
【0037】
このように衝撃荷重を両者11,21で受けることにより、図4に実線の特性aで示すように、つぶれ初期の減速度を高めることができ、この結果、衝突エネルギの吸収量を同様に高めることができて、乗員に付勢される荷重値の大幅な低減を達成することができる。
【0038】
このように図1〜図3で示した実施例の自動車の前部車体構造は、左右一対のフロントサイドフレーム11,11と、少なくとも前部が上記フロントサイドフレーム11,11の前部に取付けられたペリメータフレーム21とを備えた自動車の前部車体構造であって、上記ペリメータフレーム21の前部から車体前方に突出するフレーム部材製の衝撃吸収部材32,32を設けたものである。
【0039】
この構成によれば、正面衝突初期にペリメータフレーム21前部の上記衝撃吸収部材32,32により図4に特性aで示すように、車体減速度(つぶれ初期の減速度)を高め、エネルギ吸収荷重を増大して、乗員に付勢される荷重値の低減を図ることができる。
【0040】
つまり、衝突荷重をペリメータフレーム21側の衝撃吸収部材32,32とフロントサイドフレームとの双方で受けることができるので、衝突初期の耐力が向上して、つぶれ初期の減速度を高めることができる。
【0041】
また、衝突初期の荷重とフロントサイドフレーム11,11とペリメータフレーム21との両方で略真っ直ぐに受けてフロントサイドフレームの不所望の曲がりを防止することができる。
【0042】
さらに、上記左右一対のフロントサイドフレーム11,11の先端に衝撃吸収部材15,15を設け、左右の衝撃吸収部材15,15間をバンパレインフォースメント16で連結したものであるから、衝撃吸収部材15,15の配設部分がクラッシュスペースとなるので、ストロークをかせぎつつエネルギ吸収を行なうことができる。
【0043】
加えて、上記ペリメータフレーム21側の衝撃吸収部材32,32は、上記フロントサイドフレーム11側の衝撃吸収部材15,15の下方に設けられたものである。つまり、上述の両衝撃吸収部材15,32が上下に対応する部分に配置されているので、衝撃の初期から両衝撃吸収部材15,32(換言すればペリメータフレーム21とフロントサイドフレーム11との双方)により確実に荷重を受けもつことができる。
【0044】
また、上記ペリメータフレーム21前部の衝撃吸収部材32はその下面が先端になる程、上方位置となる先細状に形成されたものであるから、アプローチアングルを確保しつつ、上述の衝撃吸収構造を達成することができる。
【0045】
さらに、上記ペリメータフレーム21側の衝撃吸収部材32と上記フロントサイドフレーム11側の衝撃吸収部材15とは互に略平行に延出されたものであるから、衝撃荷重の入力方向が両衝撃吸収部材15,32において互に平行となり、この結果、フロントサイドフレーム11の不要な曲がりを防止することができる。
【0046】
そのうえ、上記ペリメータフレーム21は該ペリメータフレーム21に設けられた衝撃吸収部材32の後部において、車幅方向に延びる前側部材22で連結されたものであるから、ペリメータフレーム21の衝突時における左右方向の曲がりや広がりを、上記車幅方向に延びる前側部材22にて防止することができる。
【0047】
また、上記ペリメータフレーム21の前部をフロントサイドフレーム11の前部に取付けるマウント部26を設け、上記マウント部26の後部ペリメータフレーム21なかんずく左右の両部材25,24とが補強部材33で連結されたものであるから、上述の補強部材33で衝突荷重をペリメータフレーム21それ自体に良好に伝達することができる。
【0048】
図5〜図9は自動車の前部車体構造の他の実施例を示し、この実施例においては、図1〜図3で示した先の実施例の構成に加えて、鋼板製のフロントサイドフレーム11および鋼板製のペリメータフレーム21の所定部に、初期荷重を高め、かつ低歪みで破断し得る特性をもつように焼入れ処理部35,36(なお、図示の便宜上、ハッチングを施して示す)を形成したものである。
【0049】
ここで、フロントサイドフレーム11側における焼入れ処理部35の形成箇所は該フロントサイドフレーム11の前後方向においてエンジン支持部(図2に示すエンジンマウント34が取付けられる箇所参照)とダッシュロアパネル17との間に設定され、この焼入れ処理部35は所定の幅でフロントサイドフレーム11の上下方向全体に形成されている。
【0050】
さらに詳しくは、上述の焼入れ処理部35は図9に底面図で示すように、前車輪37の操舵と干渉しないようにフロントサイドフレーム11が細く形成された部分に設定されている。
【0051】
また、このペリメータフレーム21側における焼入れ処理部36の形成箇所は、上述のフロントサイドフレーム11の焼入れ処理部35と同様に、ペリメータフレーム21の前後方向においてエンジン支持部とダッシュロアパネル17との間に設定され、この焼入れ処理部36は所定の幅で部材24,25の上下方向全体に形成されている。また、フロントサイドフレーム11側の焼入れ処理部35とペリメータフレーム21側の焼入れ処理部36とが上下方向で略対向するように形成されている。
【0052】
上述の各焼入れ処理部35,36はフロントサイドフレーム11、およびペリメータフレーム21の右側部材24、左側部材25に対して部分焼入れ処理により形成され、例えば車両前後方向における焼入れ幅が約40〜50mm程度で、破断歪みが約10%程度となるように形成される。
【0053】
この焼入れ処理部35,36を形成することで、フロントサイドフレーム11およびペリメータフレーム21の所定部を高強度化することができ、車両衝突時のつぶれ初期の荷重をさらに高めることができると共に、上述の焼入れ処理部35,36は低歪みで破断するので、衝突時にフロントサイドフレーム11およびペリメータフレーム21を大きく座屈(図6〜図9の仮想線参照)させることができる。
【0054】
図10は焼入れ処理を施した鋼板材料と、焼入れ処理を施さない通常の鋼板材料との材料特性を比較して示す図で、横軸に歪みをとり、縦軸に応力をとっている。
【0055】
同図から明らかなように点線dで示す通常の鋼板は応力が小さく、材料破断までに要する時間が比較的長いのに対して、実線cで示す焼入れ処理が施された鋼板材料は初期応力が高く、強度が向上し、この分、衝突時に強い荷重に耐えることができ、かつ材料破断までに要する時間が比較的短くなる。
上述の焼入れ処理部35,36が形成されたフロントサイドフレーム11およびペリメータフレーム21は図10に実線cで示す材料特性を有することになる。
【0056】
このように、フロントサイドフレーム11の所定部に焼入れ処理部35を形成すると、この焼入れ処理部35にてフロントサイドフレーム11,11の前後方向の初期荷重がさらに高められ、かつ低歪みで破断し得る金属構造となるので、車両の正面衝突時においてフロントサイドフレーム11,11の焼入れ処理部35は所定の高荷重まで破断せず、該焼入れ処理部35により衝突初期のつぶれ初期荷重およびエネルギ吸収荷重をより一層高めることができ、しかも焼入れ処理部35の低歪みによる破断後においては、フロントサイドフレーム11,11の座屈(図7、図8、図9の仮想線参照)とクラッシュスペースの拡大(破断によりその後の変形が容易となること)により、衝突車体つぶれ後半での減速度の上昇を防止して、乗員に付勢される荷重値を低減することができる。
【0057】
また、エンジン20およびフロントサスペンションを支持するペリメータフレーム21にも焼入れ処理部36を形成すると、このペリメータフレーム21も低歪みで破断、座屈(図6の仮想線参照)するので、フロントサイドフレーム11は所期の特性を確保することができる。
【0058】
さらに、フロントサイドフレーム11側の焼入れ処理部35とペリメータフレーム21側の焼入れ処理部36とが同一箇所または略同一箇所に設定されると、衝突時においてはフロントサイドフレーム11およびペリメータフレーム21の双方が略同一位置にて破断され、つぶれ後半での変形挙動の拘束が少なく、フロントサイドフレーム11およびペリメータフレーム21の変形が容易となる。
【0059】
なお、図5〜図9で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については図1〜図3で示した先の実施例とほぼ同様であるから、図5〜図9において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略するが、図7において38はタイヤハウス、39はサスペンションタワー部、40はホイールエプロンレインフォースメントである。
【0060】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の衝撃吸収部材の後部において車幅方向に延びる部材は、実施例の前側部材22に対応するものであるが、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0061】
【発明の効果】
この発明によれば、ペリメータフレームを備えた自動車の前部車体構造において、該ペリメータフレームの前部から車体前方に突出する衝撃吸収部材を設けたので、正面衝突初期にペリメータフレーム前部の衝撃吸収部材により車体減速度(つぶれ初期の減速度)を高め、エネルギ吸収荷重を増大して、乗員に付勢される荷重値の低減を図ることができ、また衝突初期の荷重をフロントサイドフレームとペリメータフレームとの両方で受けてフロントサイドフレームの不所望の曲がりを防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の自動車の前部車体構造を示す斜視図。
【図2】 図1の側面図。
【図3】 自動車の前部車体構造を斜め下方から見た状態で示す斜視図。
【図4】 車体つぶれに対する車体減速度の変化を示す特性図。
【図5】 自動車の前部車体構造の他の実施例を示す斜視図。
【図6】 ペリメータフレームの斜視図。
【図7】 フロントサイドフレームの衝突前・衝突後の状態を示す部分斜視図。
【図8】 図7の要部側面図。
【図9】 フロントサイドフレームの衝突前・衝突後の状態を示す底面図。
【図10】 焼入れ処理の有無による材料特性の差異を示す説明図。
【図11】 従来の自動車の前部車体構造を示す平面図。
【図12】 従来構造の衝突時の状態を示す平面図。
【符号の説明】
11…フロントサイドフレーム
5…衝撃吸収部材(第1の衝撃吸収部材)
16…バンパレインフォースメント
21…ペリメータフレーム
22…前側部材
23…後側部材
24…右側部材(側部部材)
25…左側部材(側部部材)
26…マウント部
32…衝撃吸収部材(第2の衝撃吸収部材)
33…補強部材

Claims (4)

  1. 左右一対のフロントサイドフレームと、
    少なくとも前部が上記フロントサイドフレーム前部に取付けられたペリメータフレームとを備えた
    自動車の前部車体構造であって、
    上記左右一対のフロントサイドフレームの先端に第1の衝撃吸収部材を設け、
    左右の第一の衝撃吸収部材間をバンパレインフォースメントで連結し、
    上記ペリメータフレームは、上記フロントサイドフレーム下部の前部間において車幅方向に延びる前側部材と、該前側部材より後方で上記フロントサイドフレーム下部において車幅方向に延びる後側部材と、上記フロントサイドフレーム下部において車両の前後方向に延びる側部部材と、から構成され、
    上記側部部材が車両の前後方向前側が前方に向うに従って上記フロントサイドフレームに近づくように傾斜して設けられており、
    上記ペリメータフレームの側部部材の前部から車体前方に突出する第2の衝撃吸収部材を設けると共に、
    第2の衝撃吸収部材の前端部が上記バンパレインフォースメントの前端部よりも車両の前後方向後側に位置するように設けられた
    自動車の前部車体構造。
  2. 上記ペリメータフレーム前部の第2の衝撃吸収部材はその下面が先端になる程、上方位置となる先細状に形成された
    請求項1記載の自動車の前部車体構造。
  3. 上記ペリメータフレーム側の第2の衝撃吸収部材と上記フロントサイドフレーム側の第1の衝撃吸収部材とは互に略平行に延出された
    請求項1または2記載の自動車の前部車体構造。
  4. 上記ペリメータフレームの前部をフロントサイドフレーム前部に取付けるマウント部を設け、
    上記マウント部の後部とペリメータフレームとが補強部材で連結された
    請求項1〜3の何れか1に記載の自動車の前部車体構造。
JP2000312814A 2000-10-13 2000-10-13 自動車の前部車体構造 Expired - Fee Related JP4501267B2 (ja)

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