JP4499877B2 - 超音波モータおよび超音波モータ付き電子機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自励発振回路で駆動される超音波モータ、特に位相が異なる二つの信号で駆動される超音波モータおよびそれを用いた電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、圧電素子を用いた超音波モータの開発が活発に行われ、既に多くの種類の超音波モータが市場に提供されている。超音波モータの駆動方式としては一般に、位相が異なる二つの信号を圧電素子に供給して振動体に進行波を発生させる方式か、二つの定在波を利用して振動体端面の変位を楕円運動させる方式が多い。
【0003】
しかしながらこれらの駆動方式は、外部に特定の周波数を得るための発振回路を必要とする、いわゆる他励発振方式であるため、駆動回路が複雑化、大型化していた。
【0004】
そこで近年、圧電素子を有する超音波モータ自身を振動子として利用し、これを増幅回路と組み合わせることで自励発振回路を構成し、超音波モータ自身の発振により駆動する方式が考案され実用化されている。例えば特開平8−251952にこの様な方式の超音波モータが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら特開平8−251952に示したような超音波モータは、1つの定在波のみを利用しているため振動体の変位がほぼ直線動作となり、変換効率が低く、また移動体の摩耗量も多く、寿命も短かった。更に、駆動に用いる圧電素子部の割合が圧電素子全体に対して小さく、大きな出力が取り出せなかった。
【0006】
そこで本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、超音波モータの出力、及び効率を大きくするとともに、移動体の摩耗を小さくし、超音波モータの寿命を長くすることを目的とする。また、このような超音波モータを電子機器に搭載することで、電子機器の小型・薄型化、省電力化等を含めた性能を向上させることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明における超音波モータは、圧電素子を有する振動体の振動により移動体を駆動する超音波モータにおいて、前記圧電素子は一方の面に第一の電極と第二の電極を有し、他方の面に第三の電極を有し、増幅回路と、前記増幅回路の入力側端子に一端を接続され他端が接地された第一のコンデンサと前記増幅回路の出力側端子一端を接続され他端が接地された第二のコンデンサと、を有し、前記第三の電極からの出力信号を前記増幅回路で増幅し、前記第一の電極に帰還することで自励発振回路を構成し、外部からの指令信号に応じて前記増幅回路の出力信号をバッファを介して取り出した前記自励発振回路の発振信号に基づく信号を反転するか、しないか選択可能な位相選択手段を有し、前記位相選択手段の出力信号を前記第二の電極に印加し駆動力を得ることを特徴とする。
【0008】
もしくは、本発明における超音波モータは、圧電素子を有する振動体の振動により移動体を駆動する超音波モータにおいて、前記圧電素子は一方の面に第一の電極と第二の電極を有し、他方の面に第三の電極を有し、増幅回路と、前記増幅回路の入力側端子に一端を接続され他端が接地された第一のコンデンサと前記増幅回路の出力側端子一端を接続され他端が接地された第二のコンデンサと、を有し、前記増幅回路の出力信号を外部からの指令信号に応じて前記第一の電極に出力するか前記第二の電極に出力するかを選択する第一の信号切り換え手段を有し、前記第三の電極と前記増幅回路と前記第一の信号切り換え手段で選択させた電極とで自励発振回路を構成し、前記増幅回路の出力信号をバッファを介して取り出した前記自励発振回路の発振信号に基づく信号を外部からの指令信号に応じて前記第一の電極に出力するか、前記第二の電極に出力するかを選択する第二の信号切り換え手段を有していることを特徴とする。
もしくは、前記圧電素子は一方の面に第一の電極と第二の電極と第三の電極を有し、他方の面に接地された第四の電極を有し、前記第三の電極からの出力信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路の出力信号を外部からの指令信号に応じて前記第一の電極に出力するか前記第二の電極に出力するかを選択する第一の信号切り換え手段を有し、前記第三の電極と前記増幅回路と前記第一の信号切り換え手段で選択させた電極とで自励発振回路を構成し、前記自励発振回路の発振信号に基づく信号を外部からの指令信号に応じて前記第一の電極に出力するか、前記第二の電極に出力するかを選択する第二の信号切り換え手段を有していることを特徴とする。
【0009】
これの超音波モータは、圧電素子の二つの電極間すなわち電気的に単相で、確実な自励発振が得られるような構成となっている。そして、ここで得られた発振信号を例えばバッファ回路を通した後、移相回路を経て第二の電極に与えることで、自励発振の発振安定性に影響を与えずに位相の異なる二つの信号を超音波モータに供給できるようにした。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1
図1は、この発明の実施の形態1に係わる超音波モータ及び超音波モータ駆動回路の構成を示すブロック図である。図2は、本発明に適用可能な超音波モータの構成を表すものである。図3は、本発明に適用可能な超音波モータの圧電素子の電極パターン図である。
【0012】
まず図2及び図3をもとに、超音波モータ1の原理について説明する。図2において、円板形状の振動体2の下面には圧電素子3が接合されている。圧電素子3の一方の面、即ち振動体2との接合面側には、図3(a)に示すように、ほぼ全体に渡って第三の電極3cが設けられている。圧電素子3の他方の面には、図3(b)に示すように、周方向に1/4波長ごとに分割された小電極が設けられている。これら小電極は、隣り合う二つごとに分極方向を変えて(図中+,−は分極方向を示す)分極処理された後、周方向に一つおきに電気的に導通させることで、斜線部3aと非斜線部3bの二つの電極に分けられる。図3(b)では、さらに、内周と外周で一つおきの小電極を短絡する短絡パターンが設けられている。
【0013】
これら第一の電極3aと第三の電極3cの間、並びに第二の電極3bと第三の電極3cの間に夫々位相の異なる信号を印加すると、圧電素子3には位置的、時間的に位相の異なる二つの定在波が発生し、その合成として進行波が発生する。これにより、振動体2に設けられた突起2aと接する移動体5が回転する。振動体2と移動体5の接触圧は、加圧機構4によって得られる。また、二つの信号の位相を反転することで、移動体5の回転方向を変えることができる。
【0014】
以上に、本発明に適用可能な超音波モータ1の構成、並びに駆動原理について示したが、ここに示した例に限るものではなく、位相の異なる二つの信号を印加して駆動される超音波モータであれば、その構成はどのような形態でも構わない。
【0015】
次に、図1を用いて本発明の実施の形態1の動作を説明する。
【0016】
圧電素子3に設けられた第三の電極3cからの出力信号は増幅回路6で増幅され、第一の電極3aに帰還されることで、圧電素子3の固有振動数で発振する自励発振回路10が構成される。ここでは振動体2が記載されていないが、この様に圧電素子3のみで移動体5に駆動力を与える振動体2の役割を兼ねても良いし、図2の様に圧電素子3に振動体2を接合しても構わない。
【0017】
自励発振回路10の発振信号は、移相回路7で位相を(例えば90度)ずらされる。この信号を位相選択手段8に通した後、第二の電極3bに印加する。従って圧電素子3には位相の異なる二つの信号が印加され、時間的に位相の異なる二つの定在波が発生するため、その変位は楕円運動となる。
【0018】
ところで、位相選択手段8は、移相回路7の出力信号を外部からの指令信号に従って更に位相調整するものであり、これにより変位の楕円運動動作の方向を変え、移動体5の移動方向を可変させる。
【0019】
次に具体的な回路構成について図4を用いて説明する。
【0020】
圧電素子3に設けられた第三の電極3cからの出力信号は、スリーステート・インバータ6aと帰還抵抗6bから構成される増幅回路6で増幅され、バッファ11を介して第一の電極3aに帰還される。
【0021】
この際、圧電素子3と抵抗19、コンデンサ12,13およびバッファ11から成る帰還回路により、増幅回路6には圧電素子3を含む振動体2の固有振動数付近の周波数成分の信号が帰還され、発振を維持することで自励発振回路10が構成される。自励発振信号の一部はバッファ9を介して取り出され、移相回路7で所定量だけ位相をシフトされる。ここで、移相回路7には抵抗7aとコンデンサ7bからなるローパスフィルタ回路で構成された例を示したが、これらを複数段並べて移相量を大きくしてもよいし、また別の方式の回路を用いて移相回路7を構成しても構わず、本実施例に限ることはない。
【0022】
その後、移相回路7からの出力信号は、外部からの指令信号に従って移相量を選択できる移相選択回路8を介して第二の電極3bに出力される。ここで、自励発振信号を入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いバッファ9を介して取り出しているので、自励発振回路には影響を及ぼさず、安定な発振が可能となる。本例では、位相選択回路8は、外部からの指令信号に従ってスリーステート・インバータ8aとスリーステートバッファ8bのどちらをイネーブル状態とするかにより、移相回路7からの出力信号の位相をシフトさせずそのまま出力するか、あるいは180度反転するかが決められる。例えば、移相回路7での移相量を90度とすると、外部からの指令信号に従って第二の電極3bには、第一の電極3aに供給される電気信号に対して位相が90度進んだ信号、あるいは90度遅れた信号が供給されることになる。そして、振動体2に発生する振動の楕円運動の方向が変化し、移動体5の移動方向を可変することができる。
【0023】
ところで、移相回路7は場合によっては省略可能である。例えば特開平11−32491に記載してあるような超音波モータ、すなわち矩形板の伸び振動と曲げ振動の合成振動を利用する場合、これら二つの振動を同相とするか、逆相とするかによって移動体5の移動方向を可変できるからである。
【0024】
ここで、特に第一の電極3aおよび第二の電極3bの前には、電気的特性(増幅度、内部インピーダンス、遅延量等)が同等なバッファ11及びスリーステート・インバータ8a、スリーステート・バッファ8bを設けているため、振動体2に発生する二つの定在波の振幅が同等となるとともに、超音波モータ1の特性は移動体5の移動方向に係わらず一定となる。
【0025】
また、図4の回路を変形して図9に示すように昇圧回路を回路中に設けても良い。この場合、二つの電極3aと電極3bの前にはそれぞれ昇圧回路17,18を設けている。そして、これにより低電圧で高出力な超音波モータを得ることができる。また、この昇圧回路は、以下の実施の形態に示す全ての駆動回路に適用可能である。
【0026】
また、以下の実施の形態でも同様であるが、機能・構成が同じであれば本実施の形態に示した部品等を利用しなくとも構わない。例えば増幅回路についていえばオペアンプやトランジスタ等で構成しても構わない。
【0027】
実施の形態2
図5は、この発明の実施の形態2に係わる超音波モータ及び超音波モータ駆動回路の構成を示すブロック図である。
【0028】
圧電素子3に設けられた第三の電極3cからの出力信号は、増幅回路6で増幅され、第一の信号切り換え手段14を通してその出力が第一の電極3aに帰還されるか、第二の電極3bに帰還されるかが決定され、これにより圧電素子3の固有振動数で発振する自励発振回路10が構成される。ここでは振動体2が記載されていないが、この様に圧電素子3のみで移動体5に駆動力を与える振動体2の役割を兼ねても良いし、図2の様に圧電素子3に振動体2を接合しても構わない。その場合、圧電素子3を含む振動体2の固有振動数で発振する。
【0029】
自励発振回路10の発振信号は、移相回路7で位相を(例えば90度)ずらされる。この信号を、第二の信号切り換え手段15を通してその出力が第一の電極3aに帰還するか、第二の電極3bに帰還するかが決定される。従って圧電素子3には位相の異なる二つの信号が印加され、時間的に位相の異なる二つの定在波が発生するため、その変位は楕円運動となる。
【0030】
ところで、第一の信号切り換え手段14は、自励発振回路10を構成するための電極を選択するものであり、第二の信号切り換え手段15は、自励発振回路10の信号に対して位相がシフトされた信号を出力する電極を選択するためのものである。そして、第一の信号切り換え手段により選択される電極と、第二の信号切り換え手段により選択される電極の組み合わせを変えることにより、振動変位の楕円運動の方向を変え、移動体5の移動方向を可変させることができる。
【0031】
次に具体的な回路構成について図6を用いて説明する。圧電素子3に設けられた第三の電極3cからの出力信号は、スリーステート・インバータ6aと帰還抵抗6bから構成される増幅回路6で増幅され、二つのスリーステート・バッファ14a、14bで構成される第一の信号切り換え手段14を介して、第一の電極3aもしくは第二の電極3bに帰還される。ここで、二つのスリーステート・バッファ14a、14bのうち外部からの指令信号によってイネーブル状態となったバッファと接続された電極が選択されることで、自励発振回路10を構成する。この際、圧電素子3と抵抗19、コンデンサ12,13およびスリーステート・バッファ14a、14bの何れかから成る帰還回路により、増幅回路6には圧電素子3を含む振動体2の固有振動数付近の周波数成分の信号が帰還され、発振を維持することにより自励発振回路10が構成される。自励発振信号の一部は、バッファ9を介して取り出され、移相回路7で所定量だけ位相をシフトされる。ここで、移相回路7には抵抗7aとコンデンサ7bからなるローパスフィルタ回路で構成された例を示したが、これらを複数段並べて移相量を大きくしてもよいし、また別の方式の回路を用いて移相回路7を構成しても構わない。
【0032】
その後、移相回路7からの出力信号は、外部からの指令信号に従って第二の信号切り換え手段15を介し、第一の電極3aもしくは第二の電極3bに出力される。ここで、自励発振信号を、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いバッファ9を介して取り出しているために、自励発振回路には影響を及ぼさず、安定な発振が可能となる。本例では、第二の信号切り換え手段15は、二つのスリーステート・バッファ15a、15bによって構成され、外部からの指令信号に従いどちらをイネーブル状態とするかによって移相回路7の出力信号を出力する電極を選択する。例えば、移相回路7での移相量を90度とすると、外部からの指令信号に従って、自励発振信号に対して90度位相が遅れた信号を第一の電極3aに供給するか、第二の電極3bに供給するかが電極が選択されることとなる。そして、振動体2に発生する振動の楕円運動の方向が変化し、移動体5の移動方向が可変できる。
【0033】
ところで、移相回路7は場合によっては省略可能となる。例えば特開平11−32491に記載してあるような超音波モータ、すなわち矩形板の伸び振動と曲げ振動の合成振動を利用する場合、これら二つの振動を同相とするか、逆相とするかによって移動体5の移動方向を可変できるからである。この場合、例えばバッファ9をインバータで構成し、インバータで反転された信号を第二の信号切り換え手段15を介して第一の電極3aと第二の電極3bの何れかに印加するかを選択する方式で駆動しても良いし、また第二の信号切り換え手段15を信号反転手段と兼ねる方式をとっても構わない。
【0034】
例えばスリーステート・バッファ15a、15bを夫々スリーステート・インバータで構成しても良い。ここで、特に第一の信号切り換え手段14および第二の信号切り換え手段15は、電気的特性(増幅度、内部インピーダンス、遅延量等)が同等なスリーステート・バッファ14a、14b並びにスリーステート・バッファ15a、15bで構成しているため、振動体2に発生する二つの定在波の振幅は同等であるとともに、超音波モータ1の特性は移動体5の移動方向に係わらず一定となる。
実施の形態3
図7は、実施の形態3に係わる回路構成を示した図である。基本的には実施の形態1に示したものと変わらないが、圧電素子3に駆動用電極とは別に検出用電極3dを設け、検出用電極からの出力信号を増幅回路で増幅し、駆動用電極に帰還することで自励発振回路を構成する点を特徴とする。
【0035】
圧電素子3の一方の面には、第一の定在波を励振するための駆動用電極3a、及び第二の定在波を励振するための駆動用電極3b、圧電素子3並びに振動体2の振動に応じて信号を出力する検出用電極3dが、そして他方の面には共通電極3cが設けられ接地されている。検出用電極3dからの出力信号は、スリーステート・インバータ6aと帰還抵抗6bから構成される増幅回路6で増幅された後、抵抗16a、コンデンサ16bインバータ16cから成る積分回路16で所定量だけ位相がシフトされ、駆動用電極3aに帰還されて自励発振回路を構成する。ここで、移相回路となる積分回路16は無くても構わないが、例えば抵抗16a、コンデンサ16bの値を適宜選択することによって、発振周波数を調整することが出来る。
【0036】
また、自励発振信号はバッファ9を介して取り出され、移相回路7へ入力される。移相回路7からの出力信号は、外部からの指令信号に従って移相量を選択できる移相選択回路8を介して駆動用電極3bに出力される。ここで、自励発振信号を入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いバッファ9を介して取り出しているために、自励発振回路には影響を及ぼさず、安定な発振が可能となる。本例では外部からの指令信号に従って位相選択回路8はスリーステート・インバータ8aとスリーステートバッファ8bのどちらをイネーブル状態とするかが決められ、移相回路7からの出力信号の位相をシフトさせずそのまま出力するか、180度反転するかが決められる。例えば、移相回路7での移相量を90度とすると、外部からの指令信号に従って第二の電極3bには第一の電極3aに供給される電気信号に対して位相が90度進んだ信号、あるいは90度遅れた信号が供給されることになる。従って、振動体2に発生する振動の楕円運動の動作の方向が変化し、移動体5の移動方向が可変できる。
【0037】
ここで、特に第一の電極3aおよび第二の電極3bの前には、電気的特性(増幅度、内部インピーダンス、遅延量等)が同等なインバータ16c及びスリーステート・インバータ8a、スリーステート・バッファ8bを設けているため、振動体2に発生する二つの定在波の振幅が同等であるとともに、超音波モータ1の特性は移動体5の移動方向に係わらず一定となる。
【0038】
実施の形態4
図8は、実施の形態4に係わる回路構成を示した図である。基本的には実施の形態2に示したものと変わらないが、圧電素子3に駆動用電極とは別に検出用電極3dを設け、検出用電極からの出力信号を増幅回路で増幅し、駆動用電極に帰還することで自励発振回路を構成する点を特徴とする。
【0039】
圧電素子3の一方の面には、第一の定在波を励振するための駆動用電極3a、及び第二の定在波を励振する為の駆動用電極3b、圧電素子3並びに振動体2の振動に応じて信号を出力する検出用電極3dが、そして他方の面には共通電極3cが設けられ接地されている。
【0040】
検出用電極3dからの出力信号は、スリーステート・インバータ6aと帰還抵抗6bから構成される増幅回路6で増幅された後、抵抗16a、コンデンサ16b、インバータ16cから成る積分回路で所定量だけ位相がシフトされ、二つのスリーステート・バッファ14a、14bで構成される第一の信号切り換え手段14を介して駆動用電極3aに帰還され、自励発振回路を構成する。ここで、二つのスリーステート・バッファ14a、14bの何れかのうち、外部からの指令信号によってイネーブル状態となったバッファと接続された電極に駆動信号が印加され、自励発振回路10を構成する。移相回路となる積分回路16は無くても構わないが、例えば抵抗16a、コンデンサ16bの値を適宜選択することによって発振周波数を調整することが出来る。
【0041】
また、自励発振信号はバッファ9を介して取り出され、移相回路7を通る。移相回路7からの出力信号は、第二の信号切り換え手段15を介して駆動用電極3aもしくは3bに出力される。第二の信号切り換え手段15は、二つのスリーステート・バッファ15a、15bによって構成され、外部からの指令信号に従いどちらをイネーブル状態とするかによって移相回路7の出力信号を出力する電極を選択する。例えば、移相回路7での移相量を90度とすると、外部からの指令信号に従って、自励発振信号に対して90度位相が遅れた信号が供給される電極が選択されることとなる。従って、振動体2に発生する振動の楕円運動の方向が変化し、移動体5の移動方向が可変できる。ここで、自励発振信号を入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いバッファ9を介して取り出しているために、自励発振回路には影響を及ぼさず、安定な発振が可能となる。
【0042】
特に、第一の信号切り換え手段14および第二の信号切り換え手段15は、電気的特性(増幅度、内部インピーダンス、遅延量等)が同等なスリーステート・バッファ14a、14b並びにスリーステート・バッファ15a、15bで構成しているため、振動体2に発生する二つの定在波の振幅が同等であるとともに、超音波モータ1の特性は移動体5の移動方向に係わらず一定となる。
実施の形態5
図10は、本発明に係わる超音波モータを電子機器に適用した実施の形態5のブロック図を示す。
【0043】
本電子機器は、前述の振動体2と、振動体2により駆動される移動体5と、移動体5と、振動体2に接触圧を与える加圧手段4と、移動体5と連動して可動する伝達機構20と、伝達機構20の動作に基づいて運動する出力機構21を備えることを特徴とする。
【0044】
ここで、伝達機構20には、例えば、歯車、摩擦車等の伝達車を用いる。伝達機構20を省略し、直接出力機構21を設けても構わない。出力機構21には、例えば、指示装置や、電子時計においては指針あるいは指針駆動機構やカレンダ等の表示板、あるいは表示板駆動機構を、コピー機やプリンタにおいてはレーザーの方向を変えるミラーを、カメラやビデオカメラにおいてはシャッタ駆動機構、絞り駆動機構、レンズ駆動機構、フィルム巻き上げ機構等を、レーザーや光を利用した計測器や製造装置、センサーにおいては光の遮断・透過や特定波長の光のみを透過するスリット板やフィルターを、音響機器のボリュウム等には抵抗値や容量値を可変する接点機構やギャップ板を、ハードディスクや光ディスクにおいてはピックアップ駆動機構を用いる。
【0045】
また、移動体5に出力軸を取り付け、出力軸からトルクを伝達する動力伝達機構を有する構成とすれば、超音波モータ自身で駆動機構が実現できる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の超音波モータの自励発振回路を用いることで、駆動回路の小型・簡素化が可能である。しかも、二つの位相が異なる信号で超音波モータの駆動が出来るため、超音波モータの出力、及び効率を大きくすることができるとともに、移動体の摩耗も小さくなり、超音波モータの寿命を長くすることが可能となる。そして、この超音波モータを電子機器に搭載することにより、電子機器の小型・薄型化、省電力化等を含めた性能の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる超音波モータのブロック図である。
【図2】この発明に適用可能な超音波モータの構造図である。
【図3】この発明に適用可能な超音波モータの圧電素子の電極パターンの図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係わる超音波モータの回路図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係わる超音波モータのブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2にかかる超音波モータの回路図である。
【図7】この発明の実施の形態3にかかる超音波モータの回路図である。
【図8】この発明の実施の形態4にかかる超音波モータの回路図である。
【図9】この発明の実施の形態1にかかる超音波モータの回路図の別の例である。
【図10】この発明の実施の形態5に係わる超音波モータ付き電子機器のブロック図である。
【符号の説明】
1 超音波モータ
2 振動体
3 圧電素子
4 加圧機構
5 移動体
6 増幅回路
7 移相回路
8 位相選択回路
10自励発振回路
14第一の信号切り換え手段
15第二の信号切り換え手段
Claims (8)
- 圧電素子を有する振動体の振動により移動体を駆動する超音波モータにおいて、
前記圧電素子は一方の面に第一の電極と第二の電極を有し、他方の面に第三の電極を有し、
増幅回路と、前記増幅回路の入力側端子に一端を接続され他端が接地された第一のコンデンサと前記増幅回路の出力側端子一端を接続され他端が接地された第二のコンデンサと、を有し、前記第三の電極からの出力信号を前記増幅回路で増幅し、前記第一の電極に帰還することで自励発振回路を構成し、
外部からの指令信号に応じて前記増幅回路の出力信号をバッファを介して取り出した前記自励発振回路の発振信号に基づく信号を反転するか、しないか選択可能な位相選択手段を有し、
前記位相選択手段の出力信号を前記第二の電極に印加し駆動力を得ることを特徴とする超音波モータ。 - 圧電素子を有する振動体の振動により移動体を駆動する超音波モータにおいて、
前記圧電素子は一方の面に第一の電極と第二の電極を有し、他方の面に第三の電極を有し、
増幅回路と、前記増幅回路の入力側端子に一端を接続され他端が接地された第一のコンデンサと前記増幅回路の出力側端子一端を接続され他端が接地された第二のコンデンサと、を有し、 前記増幅回路の出力信号を外部からの指令信号に応じて前記第一の電極に出力するか前記第二の電極に出力するかを選択する第一の信号切り換え手段を有し、
前記第三の電極と前記増幅回路と前記第一の信号切り換え手段で選択させた電極とで自励発振回路を構成し、
前記増幅回路の出力信号をバッファを介して取り出した前記自励発振回路の発振信号に基づく信号を外部からの指令信号に応じて前記第一の電極に出力するか、前記第二の電極に出力するかを選択する第二の信号切り換え手段を有していることを特徴とする超音波モータ。 - 圧電素子を有する振動体の振動により移動体を駆動する超音波モータにおいて、
前記圧電素子は一方の面に第一の電極と第二の電極と第三の電極を有し、他方の面に接地された第四の電極を有し、
前記第三の電極からの出力信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路の出力信号を外部からの指令信号に応じて前記第一の電極に出力するか前記第二の電極に出力するかを選択する第一の信号切り換え手段を有し、 前記第三の電極と前記増幅回路と前記第一の信号切り換え手段で選択させた電極とで自励発振回路を構成し、
前記自励発振回路の発振信号に基づく信号を外部からの指令信号に応じて前記第一の電極に出力するか、前記第二の電極に出力するかを選択する第二の信号切り換え手段を有していることを特徴とする超音波モータ。 - 前記自励発振回路の発振信号に基づく信号は、前記発振信号とは位相が異なる信号であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の超音波モータ
- 前記第二の信号切り換え手段は前記発振信号の位相を反転させることを特徴とする請求項2又は3に記載の超音波モータ
- 前記増幅回路と前記第一の電極の間、並びに前記位相選択手段と前記第二の電極の間には夫々昇圧回路を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の超音波モータ。
- 前記位相選択手段、第一の信号切り換え手段、第二の信号切り換え手段は増幅回路で構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の超音波モータ。
- 請求項1乃至5の何れかに記載の超音波モータを有し、移動体と一体に動作する伝達機構と、前記伝達機構の動作に基づいて動作する出力機構とを有することを特徴とする超音波モータ付き電子機器。
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