JP4218665B2 - 超音波モータ駆動回路および電子機器 - Google Patents
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すなわち、自励発振回路で速度制御を行った場合、速度の指令値がある一定値以下になると発振が停止してしまう。一度発振が停止すると、発振の開始には数〜数百波のパルス信号(駆動信号)を入力しなければならず、その分の再起動時間が必要で、その間は駆動が不安定となり、速度制御を行うことができない。
また、特許文献3に示すように、PWM等により駆動速度を制御しようとすると、発振周波数の制御が不安定になる傾向があり、速度制御と発振周波数制御の両立は一般的に困難である。
ここで、速度調整手段は、駆動信号のパルス幅のみを制御してもよいし、パルス振幅のみを制御してもよいし、パルス幅およびパルス振幅の両方を制御してもよく、少なくともパルス幅またはパルス振幅の一方を制御できればよい。
また、移相手段は検出信号を平均化する信号平均化部を備えているので、速度制御等によって検出信号にノイズや急激な変動が生じても、その影響を吸収でき、速度制御時の急峻な変動や不安定な挙動を防止できる。このため、駆動速度の制御を安定して行うことができる。
さらに、速度調整手段は、駆動信号のパルス幅またはパルス振幅の少なくとも一方を制御するようにしたので、速度調整時に超音波モータの発振が停止することを防止できる。このため、再起動に伴う速度制御不能状態を回避でき、安定してかつ迅速な速度制御を行うことができる。
超音波モータが縦振動および屈曲振動(二次振動)の2つの振動モードを有し、楕円運動を行う場合には、各振動モード毎に多少共振周波数が異なる。ここで、縦振動および屈曲振動の各共振周波数のうち、周波数が高いほうの共振周波数をfH、低いほうの共振周波数をfL、各共振周波数の差をΔf=fH-fLとした場合、駆動信号の周波数fは、fH+Δf≧f≧fL-Δfの範囲とすることが好ましい。駆動信号の周波数を、このような周波数範囲に設定すれば、縦振動および屈曲振動の2つの振動モードを有する場合に、各振動モードの振幅を適切な大きさにできて超音波モータの駆動効率を向上できる。
特に、駆動信号の周波数は、縦振動および屈曲振動の各共振周波数のうち、低い共振周波数以上でかつ高い共振周波数以下(fH≧f≧fL)であることが好ましい。この場合には、各振動モードの共振周波数に近い駆動信号を入力できるため、超音波モータの駆動効率をより一層向上できる。
但し、超音波モータの固定構造等の影響により、fH≧f≧fLの範囲に無くても超音波モータとして駆動できる場合も多い。従って、通常は、前記各共振周波数範囲(fH≧f≧fL)から各共振周波数の差分Δfだけ広がった範囲(fH+Δf≧f≧fL-Δf)に設定すれば超音波モータとして利用が可能である。
従って、回路構成が非常に簡易になり、コストも低減できる。その上、駆動信号の振幅の変動量は、前記プッシュプル回路の出力側抵抗と前記振幅制限用抵抗との比率で制御できるため、その設定を容易にかつ細かく行うことができる。このため、超音波モータの発振が停止しない限界近くまで駆動信号の振幅(電圧)を制限でき、その分、速度調整幅を大きくでき、超音波モータの駆動速度の制御も迅速に行うことができる。
本構成の駆動回路は、リニアモータや回転モータのいずれの超音波モータにも適用できるが、特に回転モータつまり超音波モータがロータを備えている場合には、超音波モータをより一層小型化でき、腕時計、携帯電話等の様々な小型電子機器に組む込むことができる。
信号平均化部を積分回路で構成すれば、積分回路はローパス特性を持つため、別途ハイパスフィルタのみを追加するだけで、移相手段をバンドパス特性にすることができる。このため、信号平均化部を構成する回路の他に、ローパスフィルタを別途設ける場合に比べて、回路構成を簡易化できてコストを低減できる。
このような電子機器によれば、回路構成が簡易で低コストにでき、かつ超音波モータの速度制御を安定して行うことができる。さらに、圧電素子を用いた超音波モータで構成しているので、小型化が容易であり、腕時計、携帯電話、ハードディスクやCDドライブ等の各種アクチュエータとして利用できる。
図1は本実施形態に係る超音波モータおよびその駆動回路の構成を示すブロック図である。
超音波モータ1は、圧電素子11を備えた振動体10と、この振動体10の振動によって回転される駆動体としてのロータ20とを備えて構成されている。
振動体10は、補強板12およびこの補強板12を挟んで配置された圧電素子11を積層して構成されている。補強板12は、例えば、ステンレス鋼等により略矩形平板状に形成され、振動体10全体を補強する。補強板12には、長手方向の一端側に突起部(接触部)17が一体的に形成されている。また、補強板12は、図示しない支持部を介して筐体に取り付けられている。この際、前記支持部にばね性を持たせることなどで、突起部17がロータ20の外周面に所定の付勢力で当接するように設けることが好ましい。
これら圧電素子11の表面は、例えば、蒸着等によりニッケルめっき層および金めっき層が形成され、電圧を印加するための電極が設けられている。また、各圧電素子11の表面は、該圧電素子11を幅方向に略三等分するように二本の溝が形成されている。さらに、これらの溝で分割された三つの領域のうち、両側の領域では長手方向を略二等分するように溝が形成されている。
このため、電極は、互いに電気的に絶縁された五つの電極13A,13B,13C,13D,13Eで構成される。そして、本実施形態では、幅方向中心の電極13Cと、この電極13Cを挟んで対角線上に配置された2つの電極13A,13Eとで超音波モータ1の駆動電極が構成されている。一方、残りの2つの電極13B,13Dで振動検出用電極が構成されている。
なお、図2の回路図に示すように、補強板12に対向する各圧電素子11の裏面に設けられた電極(Co1)13Fは、前記のように区分けされておらず、駆動電極(DR1)に対応するものと振動検出用電極(Pi1)に対応するものとが共通化されて接地(GND、グランド)されている。
ここで、超音波モータ1つまり振動体10の共振周波数は、振動体10の形状等によって設定される。例えば、本実施形態では、縦振動の共振周波数は295kHz、屈曲振動の共振周波数は300kHzとされている。
なお、この振動は、振動体10の振動状態によって変化し、例えば、振動体10が共振状態の場合、駆動信号に対して振動検出信号はその電圧が10倍程度になるように設定することもできる。従って、振動検出信号の位相を振動体10が共振するように適宜移相して駆動電極に戻せば、振動体10を自励発振させることができる。
振動体10の突起部17が楕円軌道を描くと、突起部17が接触するロータ20に円周方向の分力が働き、ロータ20が回転する。このロータ20の回転速度は、前記振動体10の振動周波数や振動量(変位量)によって調整することができる。
速度調整手段60は、前記ロータ20の回転速度を検出するセンサ61と、ロータの目標回転速度を設定する目標値設定部62と、前記センサ61で検出された回転速度および前記目標値の差に基づく制御信号を出力するCPUからなる制御指示部63と、駆動信号制御部70とを備えている。
なお、図2において、Vccは正電源の電位を、Vddは負電源の電位を示している。また、駆動信号制御部70のVclは制御指示部63の正電源の電位を示している。
超音波モータ1の振動検出用電極13B,13Dから得られた検出信号は、出力インピーダンスが非常に高い。また、駆動条件によっては電源電位Vccよりも高い電位やVddよりも低い電位が出力される場合もある。このため、検出信号は、保護ダイオード31,32を介して、FET35に入力されている。この信号は、FET35で増幅され、次段のフィルタ・移相部40に信号を伝達するのに充分な電流が得られる。
フィルタ・移相部40の積分回路40Aは、波形整形・インピーダンス整合部30からの入力信号を積分し、検出信号の急激な変動を吸収している。従って、積分回路40Aによって信号平均化部が構成されている。
また、ハイパスフィルタ40Bは、検出信号の不要な低周波成分を除去する。ここで、積分回路40Aはローパス特性を持つので、フィルタ・移相部40全体としてはバンドパス特性となる。
フィルタ・移相部40で変化させる位相の所定角度は、具体的には各超音波モータ1に応じて設定される。例えば、超音波モータ1における縦振動の共振周波数が295kHz、屈曲振動の共振周波数が300kHzの場合、超音波モータ1の駆動信号の周波数が、前記各周波数範囲295〜300kHzを、各周波数の差(300-295=5kHz)だけ拡大した範囲、つまり290〜305kHzの範囲内となるように制御すればよい。さらに、より好ましいのは、駆動信号の周波数が各周波数範囲295〜300kHz内となるように制御することである。超音波モータ1の振動体10は、各周波数範囲295〜300kHzの駆動信号を入力すると最も効率的に振動し、モータ1の駆動効率も向上する。また、前記範囲から僅かに、例えば各周波数の差分程度外れていても、多少効率は低下するが超音波モータ1として駆動可能である。一方、前記範囲(290〜305kHz)を外れると、振動体10の振動振幅が非常に小さくなり、超音波モータ1としての利用が困難になる。なお、最も効率的に駆動できる周波数は、振動体10の形状、固定構造などによって相違するため、超音波モータ1の設計時に適宜設定すればよい。
フィルタ・移相部40から出力された信号は、演算増幅器51で電圧増幅された後、プッシュプル回路55で電流増幅され、抵抗58を介して回路出力端子59から駆動信号として出力される。この駆動信号は、超音波モータ1の駆動電極13A,13C,13Eに入力される。従って、電力増幅部50によって本発明の増幅手段が構成されている。演算増幅器51の出力信号(図2の点Cで測定される信号)を図3(E)に示し、回路出力端子(Cout)59の駆動信号を図3(F)に示す。
センサ61からの検出信号は、制御指示部63に送られ、ロータ20の回転速度が検出される。また、制御指示部63には、ロータ20の目標回転速度を設定する目標値設定部62からの目標値も入力される。この目標値設定部62で設定される目標値は、利用者が手動で設定してもよいし、ロータ20で駆動される機器の状態に応じて自動的に設定されるものでもよい。
また、フィルタ・移相部40の可変抵抗41と抵抗43の抵抗値の和(R41+R43)や、抵抗45の抵抗値(R45)は、振幅制限用抵抗71の抵抗値(R71)よりも大きくされている。
なお、フィルタ・移相部40での移相量は、約30度から240度とされている。
超音波モータ1の停止状態から所定のスイッチを接続するなどして駆動すると、回路出力端子59から駆動信号が超音波モータ1の駆動電極13A,13C,13Eに入力される。この入力に伴い、前記振動体10が振動し、その振動に応じた検出信号が振動検出用電極13B,13Dから回路入力端子37に入力される。この検出信号は、波形整形・インピーダンス整合部30、フィルタ・移相部40、電力増幅部50を介して超音波モータ1の駆動電極に入力される。この信号のループで電圧ゲイン1以上の条件を満たせば、この回路は正帰還となり、ループの位相差が360度の整数倍になる周波数で発振が継続し、自励発振回路となる。
波形整形・インピーダンス整合部30で増幅、整形された信号は、フィルタ・移相部40で積分され、不要な高周波成分および低周波成分が除去される。入力信号が積分されることで、図3(D)に示すように、前記切替時のノイズも除去される。さらに、超音波モータ1の共振周波数付近で回路30,40,50および超音波モータ1で構成されるループの位相遅れが360度の整数倍となるように、信号の位相が変更される。
この信号は、電力増幅部50の演算増幅器51で増幅、整形され、図3(E)に示す略矩形波状のパルス信号とされる。このパルス信号により、プッシュプル回路55のFET56,57が交互に作動して、回路出力端子59からの駆動信号を正電位Vccおよび負電位Vdd間で切り替え、出力電流が増幅される。この駆動信号が超音波モータ1の駆動電極13A,13C,13Eに入力されることで、自励発振状態が継続する。
まず、制御指示部63は、センサ61で検出した回転速度および目標値設定部62の目標値の差に基づく制御信号PWMin を駆動信号制御部70に出力する。
駆動信号制御部70では、制御信号PWMin がハイレベル信号の場合、FET72が切替回路73によってオンされる。このため、FET57は負電源Vddに直結し、回路出力端子59からの駆動信号は、図3(F)に示すように、正電位Vccおよび負電位Vdd間で変動する。
一方、駆動信号制御部70では、制御信号PWMin がローレベル信号の場合、FET72が切替回路73によってオフされる。このため、FET57は振幅制限用抵抗71を介して負電源Vddに接続する。ここで、振幅制限用抵抗71の抵抗値が抵抗58に比べて非常に大きいため、回路出力端子59からの駆動信号(パルス信号)は負電位Vddまで低下することができず、正電位から僅かに降下した電圧(振幅)となる。そして、駆動信号は変位(振幅)は小さいがその電圧値は僅かに変化しているため、圧電素子11も僅かに伸縮し、振動を継続する。すなわち、抵抗58と振幅制限用抵抗71との抵抗比を適切に設定すれば、FET56がオンされた場合と、FET57がオンされた場合とで駆動信号の電圧変位を前記振動体10が停止しない限度まで小さくできる。このため、前記振動体10は発振を継続し、かつ振動変位が小さくなるためにロータ20の回転速度が低減、つまりブレーキを掛けることができる。従って、ロータ20の速度調整と発振継続とを両立することができる。
(1)自励発振回路を利用しながらも、速度調整が行えるため、発信源や位相比較回路などが不要となり、超音波モータ1の駆動回路2の構成を簡易にできる。このため、コストを低減でき、かつ回路構成が簡易になることで、部品の故障発生の確率も低減できて信頼性も向上できる。
例えば、波形整形・インピーダンス整合部30、フィルタ・移相部40、電力増幅部50、駆動信号制御部70等の具体的な回路構成は、前記実施形態に記載されたものに限らず、他の構成を採用してもよい。
さらに、駆動信号制御部70は、駆動信号のパルス幅および振幅の両方を制御するものでもよい。この場合には、より効率的な速度制御を行うことができる。
要するに、駆動信号制御部70つまり速度調整手段60は、駆動信号のパルス幅および振幅の少なくとも一方を制御できればよく、特に、ブレーキ制御する際に、その駆動信号の振幅を僅かに変動させるなどで振動が停止しない状態に維持できるものであればよい。
但し、前記実施形態のように、振幅のみを制御するように構成すれば、駆動信号制御部70等の回路構成を簡易にできてコストを低減できる利点がある。
さらに、本発明の駆動回路は、前記実施形態のような薄板状の振動体10を用いた超音波モータ1の駆動回路に限らず、リング状の超音波モータや円筒状の超音波モータ、リニアモータ等の公知の各種超音波モータの駆動回路として広く利用することができる。従って、駆動体としては、ロータ20に限らず、リニア駆動されるもの等でもよく、各種超音波モータに応じて設定すればよい。また、圧電素子は、駆動体側に取り付けられていてもよく、要するに駆動体およびこの駆動体をガイドする案内部材の一方に設けられていればよい。
Claims (4)
- 圧電素子を備えた振動体を有する超音波モータを駆動する駆動回路であって、
前記振動体は、駆動体に当接する突起部を備えた補強板と、この補強板を挟んで配置された圧電素子とを積層して構成され、
前記各圧電素子の表面には、
各圧電素子の幅方向略中心に形成された電極と、
この電極の両側に形成されて圧電素子の長手方向に略二等分された各2つの電極とが設けられ、
前記各圧電素子の幅方向略中心に形成された電極は駆動電極として用いられ、
前記幅方向略中心の電極を挟んで対角線上に配置された各2つの電極でそれぞれ構成された2組の電極は、それぞれ駆動電極および振動検出用電極に切替可能に構成され、
前記各圧電素子の裏面には、駆動電極に対応するものと振動検出用電極に対応するものとが共通化された電極が設けられ、
前記各圧電素子において、前記対角線上に配置された2組の電極のうち、一方を駆動電極、他方を振動検出用電極に設定した状態と、一方を振動検出用電極、他方を駆動電極に設定した状態とに切り替えることで、前記突起部の楕円軌道を正方向または逆方向に切替可能に構成されたことを特徴とする超音波モータ駆動回路。 - 請求項1に記載の超音波モータ駆動回路において、
前記駆動体は、前記圧電素子の振動によって回転するロータであり、
前記各圧電素子において、前記対角線上に配置された2組の電極の一方を駆動電極、他方を振動検出用電極に設定した状態と、一方を振動検出用電極、他方を駆動電極に設定した状態とに切り替えることで、前記ロータの回転方向を切替可能に構成されたことを特徴とする超音波モータ駆動回路。 - 請求項1または請求項2に記載の超音波モータ駆動回路において、
前記各圧電素子の表面に形成された電極は、圧電素子を幅方向にほぼ三等分するように形成された二本の溝で三つの電極に分割され、この三つの電極のうち二本の溝間に形成された電極によって前記幅方向略中心の電極が構成され、
前記幅方向略中心の電極の両側の電極は、圧電素子の長手方向にほぼ二等分するように形成された溝で二つの電極に分割され、この四つの電極のうち幅方向略中心の電極を挟んで対角線上に配置された2つの電極によって1組の電極が構成され、他の2つの電極によって他の1組の電極が構成されていることを特徴とする超音波モータ駆動回路。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の超音波モータ駆動回路と、この超音波モータ駆動回路で駆動される超音波モータとを備えることを特徴とする電子機器。
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