JP4499226B2 - 高速走行車両用クローラベルト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クローラベルトと路面とのスリップを抑制し、車体振動を低減するのに好適な高速走行車両用クローラベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
駆動輪と遊動輪とに掛けるゴム製等のクローラベルトとしては、例えば、(1)実開平1−65772号公報「ゴムクローラ装置」、(2)実開昭61−129683号公報「ゴム製無限軌道帯の芯金」に記載されたものが知られている。
【0003】
上記技術(1)には、同公報の第3図に示される通り、ゴムクローラ本体4の厚さの略中央に複数のスチールコード7を一列に埋め込んだゴムクローラ装置が記載されている。
上記技術(2)には、同公報の第1図Bに示される通り、上記技術(1)と同様なスチールコードを埋め込んだゴム製無限軌道帯が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記技術(1)では、例えば、同公報の第1図に示されるように、駆動輪1と遊動輪2とにゴムクローラ本体4を掛け、駆動輪1を前にして路面を走行中に、ゴムクローラ本体4では、駆動輪1及び遊動輪2に巻き付いた部分、特に、その外表面で大きな伸びが発生するため、ゴムクローラ本体4の駆動輪1の前方に掛かる部分が、伸びている状態から駆動輪1の下方に来ると、伸びる前の状態に戻ろうとする、即ち縮むため、路面とゴムクローラ本体4との間にスリップが生じる。
上記技術(2)においても、同様にスリップが生じる。
【0005】
このような、スリップが生じると、ゴムクローラ本体4やゴム製無限軌道帯の外周面の摩耗、騒音が発生したり、スリップがブレーキとなって旋回性を損なうことが考えられる。
【0006】
また、上記技術(2)では、同公報の第2図Bで示されるように、ゴム製無限軌道帯の長手方向に芯金1を複数個埋め込むため、走行中に、中転輪4がゴム製無限軌道帯の芯金1とゴム部分とに交互に接触し、ゴム部分との接触時にはゴム部分にへこみが生じるため、中転輪4はゴム製無限軌道帯の内面に生じる凹凸によって回転しながら上下動することになる。
このような中転輪4の上下動によって、車体が振動し、乗り心地を損なうことが予想される。
【0007】
そこで、本発明の目的は、クローラベルトの伸びを小さくすることで、クローラベルトと路面とのスリップを抑制し、クローラベルトの摩耗の低減、騒音の防止及び旋回性の向上を図り、更に、駆動輪及び遊動輪との組合わせで車体に伝わる振動をより低減することができる高速走行車両用クローラベルトを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、高速走行が可能で、前後に同一径の駆動輪及び遊動輪を配置し、これらの駆動輪及び遊動輪にゴム製クローラベルトを掛けた高速走行車両において、前記クローラベルトは、内部に芯金を埋め込むとともに、この芯金から路面側へ向かって、複数の芯線からなる芯線層と、この芯線層を保護する衝撃緩和層とをこの順に埋め込み、且つこの衝撃緩和層を、各層の密度、厚さを異ならせて路面から遠い第1層と、路面から近い第2層からなる2層構造とし、路面から遠い第1層を、密度が大きく厚さが小さいものとし、路面から近い第2層を、密度が小さく厚さが大きいものにしたことを特徴とする。
【0009】
前後に配置した同一径の駆動輪及び遊動輪に高速走行車両用のゴム製クローラベルトを掛け、クローラベルト内に、内部に埋め込んだ芯金から路面側へ向かって、複数の芯線からなる芯線層と、この芯線層を保護する衝撃緩和層とをこの順に埋め込む。
また、衝撃緩和層を第1層、第2層からなる2層構造とする。
【0010】
この結果、クローラベルト内に周方向に撓みのない中立面を形成する芯線層をより路面側に配置することが可能になり、クローラベルトの外周面が芯線層と近くなるため、クローラベルトの外周面の伸びを小さくすることができる。
従って、外周面の伸びによって発生するクローラベルトと路面とのスリップを抑制することができ、スリップによるクローラベルトの摩耗、騒音の発生を低減することができる。
【0011】
また、スリップはクローラベルトの回転方向とは逆の方向に発生するため、ブレーキとして作用するが、本発明では、このようなスリップを抑えたので、例えば、旋回性を向上させることができる。
【0012】
更に、衝撃緩和層を2層構造としたことで、各層の密度、厚さを異ならせることができ、これらの第1層、第2層の密度、厚さの組合わせを変えることで、車両の走行条件や車両の仕様、路面状態に応じて使い分けることができる。
特に、衝撃緩和層を、各層の密度、厚さを異ならせて路面から遠い第1層と、路面から近い第2層からなる2層構造とし、路面から遠い第1層を、密度が大きく厚さが小さいものとし、路面から近い第2層を、密度が小さく厚さが大きいものにしたので、第2層は、密度が小さく厚いことによる大きなクッション効果で路面の細かな凹凸による衝撃を吸収し、第1層は、密度が大きいことによる大きな強度で第2層で吸収しきれなかった大きな衝撃を吸収し、芯線層に伝えないようにし、このような衝撃緩和層を設けたことで、衝撃緩和層全体の厚さを必要最小限にするとともに層の枚数を必要以上に多くすることなしに、効果的に路面からの衝撃を緩和し、芯線層を保護することができる。
【0013】
請求項2は、駆動輪及び遊動輪の外径Dと、駆動輪及び遊動輪における軸間距離Lとの比をD/L=raとするときに、この比raを0.5≦ra<1.0に設定したことを特徴とする。
【0014】
ra≧1.0では、駆動輪と遊動輪とが干渉する。
ra<0.5では、外径Dに対する軸間距離Lが長くなって、駆動輪及び遊動輪を車両の下方に配置することができなくなる。例えば、外径Dを小さくすることにより、ra<0.5を満たすことができるが、この場合にはクローラベルトの屈曲の曲率半径が小さくなり、クローラベルトの屈曲抵抗が大きくなって、最高速度の低下、燃費の悪化を招き、また、クローラベルトの過度の屈曲の繰り返しによって、クローラベルトの寿命が短くなる。
【0015】
従って、0.5≦ra<1.0とすることで、車両の下方に駆動輪と遊動輪とを干渉させずに、且つ無理なく配置することができる。
また、駆動輪及び遊動輪の外径Dを比較的大きく設定することができ、クローラベルトの屈曲の曲率半径を大きくすることができる。従って、クローラベルトの屈曲抵抗が小さくなって、高速走行が可能になり、且つ燃費を向上させることができ、しかも、クローラベルトの寿命を延ばすことができる。
【0016】
請求項3は、駆動輪と遊動輪との少なくとも一方を空気入りタイヤで構成し、これらの駆動輪及び遊動輪にゴム製クローラベルトを掛けた高速走行車両において、前記クローラベルトが、内部に芯金を埋め込むとともに、この芯金から路面側へ向かって、複数の芯線からなる芯線層と、この芯線層を保護する衝撃緩和層とをこの順に埋め込み、且つこの衝撃緩和層を、各層の密度、厚さを異ならせて路面から遠い第1層と、路面から近い第2層からなる2層構造とし、路面から遠い第1層を、密度が大きく厚さが小さいものとし、路面から近い第2層を、密度が小さく厚さが大きいものにしたことを特徴とする。
【0017】
駆動輪と遊動輪との少なくとも一方を空気入りタイヤで構成したことで、駆動輪と遊動輪との少なくとも一方のクッション性能を向上させる。
このような駆動輪、遊動輪を、路面とのスリップを抑制することができるクローラベルトと組合わせることにより、路面やクローラベルト自体から車体へ伝わる振動をより低減することができ、車両の乗り心地を向上させることができる。
【0018】
また、衝撃緩和層を2層構造としたことで、各層の密度、厚さを異ならせることができ、これらの第1層、第2層の密度、厚さの組合わせを変えることで、車両の走行条件や車両の仕様、路面状態に応じて使い分けることができる。
特に、衝撃緩和層を、各層の密度、厚さを異ならせて路面から遠い第1層と、路面から近い第2層からなる2層構造とし、路面から遠い第1層を、密度が大きく厚さが小さいものとし、路面から近い第2層を、密度が小さく厚さが大きいものにしたので、第2層は、密度が小さく厚いことによる大きなクッション効果で路面の細かな凹凸による衝撃を吸収し、第1層は、密度が大きいことによる大きな強度で第2層で吸収しきれなかった大きな衝撃を吸収し、芯線層に伝えないようにし、このような衝撃緩和層を設けたことで、衝撃緩和層全体の厚さを必要最小限にするとともに層の枚数を必要以上に多くすることなしに、効果的に路面からの衝撃を緩和し、芯線層を保護することができる。
【0020】
請求項4は、芯金が、クローラベルトの長手方向に所定ピッチで複数個設けたものであり、隣り合う芯金と芯金との間にて、クローラベルトの内面側に、屈曲抵抗を低減するための凹部を形成し、隣り合う凹部と凹部との間で、芯金が無い部分に、接触面から突出する突出部を設けたことを特徴とする。
【0021】
クローラベルトの内面側に形成した凹部によって、クローラベルトの屈曲抵抗をより小さくする。これにより、より高速に走行することが可能になり、また、燃費をより向上させることができる。
また、接触面から突出する突出部を設けることで、駆動輪、遊動輪あるいはこれらの駆動輪と遊動輪との間に配置した転輪が突出部を通過するときに、突出部が駆動輪、遊動輪、転輪によって圧縮され、突出部の上面が芯金の有る部分の接触面と同じ高さになり、駆動輪、遊動輪あるいは転輪がクローラベルトの内面をスムーズに移動することができ、駆動輪、遊動輪あるいは転輪の上下動を防止することができ、車体振動を抑えることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るクローラベルト(第1の実施の形態)を装着した高速走行車両の側面図である。
高速走行車両10は、クローラベルト式車両であり、車体11と、この車体11に載せた前部のキャビン12及び荷台13と、車体11の前側に懸架した前輪14と、車体11の後側に懸架した駆動輪15及び遊動輪16と、駆動輪15及び遊動輪16のそれぞれに掛けたクローラベルト17とからなる。なお、21,22,23はそれぞれ前輪14、駆動輪15、遊動輪16を構成する空気入りタイヤである。なお、15a,16aは駆動輪15及び遊動輪16のそれぞれの回転軸であり、これらの回転軸15a,16aのそれぞれの距離(軸間距離)をLとする。また、Eは地面である。
以上に示した前輪14、駆動輪15、遊動輪16、クローラベルト17、空気入りタイヤ21,22,23は、左右一対ずつ設けたものであり、それぞれ奥側は省略する。
【0023】
図2は図1の2−2線断面図である。
クローラベルト17は、ベルト本体25と、このベルト本体25に埋め込んだ芯金26と、タイヤ23を挟み込むために芯金26の両端部に固定したガイド板27,28と、芯金26の両側部から延ばした突出部31,32と、芯金26から接地面33…(…は複数個を示す。以下同様。)に向かってベルト本体25内に順に埋め込んだ芯線34…、衝撃緩和層35とからなる。なお、25a,25bは接地面33に設けた溝、36はベルト本体25におけるタイヤ23との接触面である。
【0024】
ベルト本体25は、ゴム等の可撓性を有する部材である。
芯金26は、それの長手方向を車幅方向に延ばした略コ字形状の鋼製や樹脂製の部材である。
芯線34…は、スチール製等のワイヤであり、ベルト本体25の周方向の撓みを抑えるとともに補強を行うものである。一列に並べた複数の芯線34は、芯線層34Aを形成する。
衝撃緩和層35は、不織布としてのナイロン帆布等で構成し、路面から芯線34…が受ける衝撃を緩和するものであり、密度、厚さの組合わせを場合に応じて異ならせることのできる第1層35aと第2層35bとの2層構造にしたことで上記衝撃緩和機能を更に高めることができる。
【0025】
また、クローラベルト17は、芯金26及びガイド板27,28の側部にベルト本体25と一体に外・内ベルトサイド部37,38を設けたものである。
上記した芯金26と、ガイド板27,28と、突出部31,32と、外・内ベルトサイド部37,38とは、外側サイドガイド部41及び内側サイドガイド部42を構成するものであり、外側サイドガイド部41及び内側サイドガイド部42は、クローラベルト17に複数個設けることで、タイヤ23のショルダ部23a,23aを挟み込んで案内する部分である。
【0026】
ここで、ベルト本体25の厚さ、即ち、ベルト本体25におけるタイヤ23との接触面36と接地面33との距離をTH1、接地面33から芯線34…までの距離をM1とする。
【0027】
図3は図1の3矢視図であり、外側ベルトガイド部41及び内側ベルトガイド部42をクローラベルト17の幅の両端部にそれぞれ設けるとともに、周方向に所定の間隔毎に一対の外側ベルトガイド部41及び内側ベルトガイド部42を配置し、幅方向に延ばした芯金26の両端部にそれぞれガイド板27,28を取付け、芯金26,26間のクローラベルト17の内面、即ち接触面36に、クローラベルト17の屈曲抵抗を低減するための幅方向に延びる凹部としての内面溝44…を形成した状態を示す。
【0028】
図4は図3の4−4線断面図であり、クローラベルト17の接触面36に、且つ、芯金26と芯金26との間、詳しくはガイド板27…,28…(符号27…は図2参照)の両側方に内面溝44…を形成したことを示す。なお、25c…は接地面33に設けた溝である。
【0029】
内面溝44は、クローラベルト17が駆動輪15(図1参照)及び遊動輪16(図1参照)に巻き付くときの屈曲抵抗を低減するための溝であり、内面溝44の幅をWD、深さをDPとすると、幅WDは、1mm≦WD≦15mm、深さDPは、ベルト本体25の厚さTH1(図2参照)によりDP≧1mmの範囲で任意に決定する。
【0030】
WD<1mmの場合は、クローラベルト17の屈曲抵抗の低減効果が小さく、WD>15mmの場合は、凹部が振動源となり、車体振動が発生する。
また、DP<1mmの場合は、クローラベルト17の屈曲抵抗の低減効果が小さい。
【0031】
このように、本発明は、芯金26を、クローラベルト17の長手方向に所定ピッチで複数個設けたものであり、隣り合う芯金26と芯金26との間にて、クローラベルト17の内面側としての接触面36に、屈曲抵抗を低減するための内面溝44…を形成したことを特徴とする。
【0032】
上記構成により、クローラベルト17の内面溝44…によって、クローラベルト17の屈曲抵抗をより小さくすることができる。
従って、車両10(図1参照)をより高速に走行させることが可能になり、また、燃費をより向上させることができる。
更に、ベルト本体25が曲り易い位置であるガイド板27,28の両側方部分に内面溝44…を形成したので、クローラベルト17の屈曲抵抗を効果的に小さくすることができる。
【0033】
また更に、車両10が走行中には、上記した内面溝44…を駆動輪15及び遊動輪16の外周面が飛び越すことになるが、内面溝44…により接触面36に形成される段差を空気入りタイヤで構成した駆動輪15及び遊動輪16で吸収するため、内周溝44…により車体に振動が発生する心配はない。
【0034】
そして更に、空気入りタイヤで、駆動輪15及び遊動輪16若しくは駆動輪15又は遊動輪16を構成したので、走行中の路面の突起を乗り上げても、そのときの衝撃を空気入りタイヤで吸収し、車体の上下振動を抑えることができる。
【0035】
本発明のクローラベルト17はまた、クローラ内面である接触面36に、駆動輪、遊動輪に噛み合う駆動突起を持たないものである。即ち、クローラベルト17は、駆動輪15及び遊動輪16との摩擦によって駆動される摩擦駆動式のベルトである。
【0036】
図5はクローラベルトの比較例を示す断面図であり、クローラベルト100は、このベルト本体101に芯金102を埋め込み、この芯金102の両端部にガイド板103,104を固定し、芯金102の両側部から突出部105,106を延ばし、ベルト本体101内において、芯金102の上方に芯線107…及び不織布108を埋め込み、芯金102の突出部105側に芯線111…及び不織布112を埋め込み、芯金102の突出部106側に芯線113…及び不織布114を埋め込み、芯金102の路面側に不織布115を埋め込んだものである。なお、116は図示せぬ駆動輪とにクローラベルト100を掛ける遊動輪、117は遊動輪116を構成するタイヤ、118はベルト本体101におけるタイヤ117との接触面、121…はベルト本体101の接地面である。
【0037】
この比較例のベルト本体101の厚さ、即ち、ベルト本体101におけるタイヤ117との接触面118と接地面121との距離をTH2とし、接地面121から芯線107…、111…、113…までの距離をM2とする。
【0038】
図2に示した本実施の形態のベルト本体25の厚さTH1に対する距離M1の割合は、比較例のベルト本体101の厚さTH2に対する距離M2の割合に比べて小さい。即ち、本実施の形態の芯線34…の方が、比較例の芯線107…,111…,113…よりも路面に近くなる。
【0039】
更に、図2の本実施の形態では、0.3<M1/TH1≦0.5とした。
M1/TH1≦0.3では、クローラベルト17の外周面の溝25a,25b内に芯線34が露出して具合が悪い。
M1/TH1>0.5では、後述するクローラベルト17のスリップが大きくなる。
【0040】
図6はクローラベルトの周長変化率を説明する説明図である。
図において、車輪Wの半径をR、この車輪Wに掛けたクローラベルトBにおける厚さの中間位置を結んだ線を中立面NS、クローラベルトBが車輪Wに巻き付いたときの中立面NSの半径をR1、クローラベルトBが車輪Wに巻き付いたときのクローラベルトBの外周面GSの半径をR2、中立面NS上での基準円弧長さをL1、この基準円弧長さL1に対応する外周面GS上での外周面円弧長さをL2、クローラベルトBの中立面NSから内側の厚さをT1、中立面NSから外側の厚さをT2とする。
【0041】
上記した中立面NSは、クローラベルトBを屈曲させた場合も長さが周方向に変化しない面である。この中立面NSより屈曲の外周側では伸び、屈曲の内周側では縮む。
【0042】
外周面円弧長さL2と基準円弧長さL1との比は、L2:L1=R2:R1=(R+T1)+T2:(R+T1)となる。
従って、周長変化率ηはη=L2/L1=R2/R1=((R+T1)+T2)/(R+T1)となる。
L2>L1であるから、周長変化率ηはη=L2/L1>1となる。
【0043】
以上に説明したクローラベルト17には、車両が走行中に、路面との間にスリップが生じる。このクローラベルト17のスリップの原理を次に説明する。
図7(a)〜(c)はクローラベルトのスリップの原理を説明するための第1説明図であり、理解を容易にするために、まず、クローラベルトを直線状のベルトに置き換えて説明する。
(a)において、例えば、水平面HS上に弾性を有するベルトBを、一端を壁W1に取付け、他端を壁W2に取付けて真直な状態にして置く。ベルトBの側面にはベルトBを等分する印を付け、各分割部p1〜p7に分割する。このとき、各分割部p1〜p7の長さをdとする。
【0044】
(b)において、例えば、分割部p2,p3間の境界線BL1上をローラRL1で押え、分割部p6,p7間の境界線BL2上をローラRL1と一体的に移動可能なローラRL2で押える。
従って、このローラRL1,RL2の軸間距離はL=4dとなる。
【0045】
次に、一方の壁W1を左方に移動する。分割部p1,p2にはそれぞれ伸びが生じ、壁W1が移動した後の分割部p1,p2の長さをそれぞれd+αとする。
このとき、分割部p3〜p7は、ローラRL1,RL2でベルトBを押えておいたので、長さに変化はない。
【0046】
(c)において、ローラRL1,RL2をそれぞれ回転させながら移動させ、ローラRL1を分割部p1,p2間の境界線BL3上に位置させる、即ち、ローラRL1,RL2を距離d+αだけ左方に移動させる。
これらのローラRL1,RL2の移動中に、分割部p2のうちのローラRL1の直下より右方のベルトBは、次々に縮み、(c)では、分割部p2が伸びる前の長さdに戻る。
従って、以上の(b),(c)より、分割部p2,p3間の境界線BL1の位置は、(a)のときの位置に対して、αだけローラRL1,RL2の進行する方向へ移動する、即ちスリップする。
【0047】
次にベルトBをクローラベルトBとしてスリップの原理を説明する。
図8は(a)〜(c)はクローラベルトのスリップの原理を説明する第2説明図である。
(a)は、遊動輪YWと駆動輪DWとにクローラベルトBを掛けた状態を示す。ここで、SL1,SL2は第1直線部及び第2直線部、PC1,PC2は第1円弧部及び第2円弧部である。
このとき、クローラベルトBにおいて遊動輪YW及び駆動輪DWに巻き付いた部分、即ち第1円弧部PC1及び第2円弧部PC2は、中立面NS上では伸び縮みはないが、外周面GSは伸びた状態になる。
【0048】
また、第1直線部SL1及び第1円弧部PC1の一部の側面にクローラベルトBの中立面NSの長さを等分する印を付け、第1円弧部PC1を各分割部p11〜p12に、第1直線部SL1を各分割部p13〜p16に分割する。このとき、各分割部p11〜p16の中立面NS上の長さを、例えばdとする。
第1円弧部PC1では、分割部p11,p12の外周面GS上の長さを、例えばd+αとする。また、遊動輪YWの軸Aの直下で、且つ外周面GS上の点をGPとする。
第1直線部SL1において、中立面NS上での基準長さがdであるから、遊動輪YWと駆動輪DWとの軸間距離は4dとなる。
【0049】
(b)において、遊動輪YW及び駆動輪DWが一体的に前進する、即ち矢印で示すように外周面GS上の長さでd+αだけ左方へ移動すると、(a)で伸びた状態にあった分割部p12は、(b)では元の長さdまで縮む。
【0050】
(c)において、更に、遊動輪YW及び駆動輪DWが前進して、前進距離が4dになると、(b)で説明したスリップ量αが積算されることで点GPは更に左方へ移動し、遊動輪YW及び駆動輪DWの軸間距離L=4d当りのスリップ量はSとなる。
この場合に、遊動輪YWと駆動輪DWとへの車両重量配分比や前述した周長変化率によって、クローラベルトBと路面とのスリップ状態が変化するため、単純にS=4・αとはならず、S=k・4・αとなる。(kは定数)
【0051】
このスリップ量Sは、車両進行方向(左方向)に発生するものであり、クローラベルトBの回転方向(路面側の第1直線部SL1では右方向)と逆になるため、走行中はブレーキとして作用する。従って、クローラベルトBにおいて、スリップ量をより小さくして、ブレーキ作用を抑えることが技術課題の一つとなる。
【0052】
図9(a),(b)はクローラベルトのスリップ量を比較する説明図であり、(a)は本実施の形態(第1の実施の形態)、(b)は比較例を示す。
(a)に示した本実施の形態において、遊動輪16に巻き付けたクローラベルト17の中立面NSの半径をR11、外周面GSの半径をR12とすると、クローラベルト17の周長変化率η1はη1=R12/R11となる。
この場合の中立面NS(図2に示した芯線34…に相当する。)は、前述したように、外周面GS側、即ち路面側により近づけたものである。
このときに、遊動輪16が、外周面GS上での長さd+α(中立面NS上での長さd)分だけ左方へ移動すると、遊動輪16の回転軸16a直下の点GPはクローラベルト17が縮むことにより左方へ移動し、スリップ量はαとなる。
【0053】
(b)に示した比較例では、遊動輪116に巻き付けたクローラベルト100の中立面NSの半径をR21とすると、外周面GSの半径は本実施の形態と同じR12であるから、クローラベルト100の周長変化率η2はη2=R12/R21となる。
この場合の中立面NSは、(a)の本実施の形態のものに比べて外周面GS、即ち路面からより離れている。即ち、R11>R21である。
【0054】
このときに、遊動輪116が、外周面GS上での長さd+β(中立面NS上での長さd)分だけ左方へ移動すると、遊動輪116の軸Aの直下の点GPはクローラベルト100が縮むことにより左方へ移動し、スリップ量はβとなる。
【0055】
上記した、R11>R21、η1=R12/R11、η2=R12/R21の関係より、R11=R12/η1、R21=R12/η2であるから、これらより、R12/η1>R12/η2となる。従って、η1<η2となる。
【0056】
この結果、比較例の周長変化率η2が、本実施の形態の周長変化率η1よりも大きくなるため、比較例のスリップ量βは、本実施の形態のスリップ量αよりも大きくなり、これらをそれぞれ積算した単位長さL(図1参照)当りのスリップ量も、比較例のほうが本実施の形態よりも大きくなる。
【0057】
以上の図1に説明したように、本発明は、高速走行が可能で、前後に同一径の駆動輪15及び遊動輪16を配置し、これらの駆動輪15及び遊動輪16にゴム製クローラベルト17を掛けた高速走行車両10において、図2に示したように、クローラベルト17を、内部に芯金26を埋め込むとともに、この芯金26から路面側へ向かって、複数の芯線34からなる芯線層34Aと、この芯線層34Aを保護する衝撃緩和層35とをこの順に埋め込み、且つこの衝撃緩和層35を第1層35a、第2層35bからなる2層構造としたことを特徴とする。
【0058】
上記構成により、クローラベルト17内に周方向に撓みのない中立面を形成する芯線層34Aをより路面E側に配置することが可能になり、クローラベルト17の外周面が芯線層34Aと近くなるため、クローラベルト17の外周面の伸びを小さくすることができる。
【0059】
従って、外周面の伸びによって発生するクローラベルト17と路面とのスリップを抑制することができ、スリップによるクローラベルト17の摩耗、騒音の発生を低減することができる。
【0060】
また、スリップはクローラベルト17の回転方向とは逆の方向に発生するため、ブレーキとして作用するが、本発明では、このようなスリップを抑えたので、例えば、旋回性を向上させることができる。
【0061】
更に、衝撃緩和層35を2層構造としたことで、各層35a,35bの密度、厚さを異ならせることができ、これらの第1層35a、第2層35bの密度、厚さの組合わせを変えることで、車両の走行条件や車両の仕様、路面状態に応じてクローラベルト17を使い分けることができる。
【0062】
例えば、路面Eから遠い第1層35aを、密度が大きく厚さが小さいものとし、路面Eから近い第2層35bを、密度が小さく厚さが大きいものにすると、第2層35bは、密度が小さく厚いことによる大きなクッション効果で路面Eの細かな凹凸による衝撃を吸収し、第1層35aは、密度が大きいことによる大きな強度で第2層35bで吸収しきれなかった大きな衝撃を吸収し、芯線層34Aに伝えないようにする。
【0063】
このような衝撃緩和層35を設けたことで、衝撃緩和層35全体の厚さを必要最小限にするとともに層の枚数を必要以上に多くすることなしに、効果的に路面からの衝撃を緩和し、芯線層34Aを保護することができる。
【0064】
次に車両にクローラベルト17を装着して行った実験の結果を説明する。
図10は本発明に係るクローラベルト(第1の実施の形態)の走行距離に対する摩耗量を表すグラフであり、縦軸はクローラベルト17の外周面、即ち接地面の摩耗量(単位はmm)、横軸はクローラベルト17を装着した車両の走行距離(単位はkm)を表す。また、実線は本実施の形態、破線は図5及び図9に示した比較例のデータである。
このグラフから、比較例に対して本実施の形態では、同一走行距離でクローラベルト17の摩耗量が約1/2に減少したことが分る。
【0065】
図11は本発明に係るクローラベルト(第1の実施の形態)を装着した車両のヨーレートに対する旋回車速を表すグラフであり、縦軸にヨーレート(単位はdeg/sec)、横軸は旋回車速(単位はkm/h)を表す。また、実線は本実施の形態、破線は図5及び図9(b)に示した比較例のデータである。
このグラフから、比較例に対して本実施の形態では、同一ヨーレートにおいて、旋回車速が大幅に高まったことが分る。
【0066】
また、この他に、本実施の形態のクローラベルト17を装着した車両の定常走行時の騒音測定では、測定した音圧レベルが、目標値の70db(A)に対して68db(A)となり、目標値をクリアした。
【0067】
次にクローラベルト17を車両に装着する場合の条件について説明する。
図12は本発明に係る高速走行車両の駆動輪及び遊動輪の径と軸間距離との関係を説明する説明図である。
高速走行車両10の荷台13の下方には、他の部品との干渉を考慮して駆動輪及び遊動輪を配置することができる、側面視で水平方向に長さH、垂直方向に高さVの有効空間SPが存在する。
【0068】
この有効空間SP内に駆動輪及び遊動輪を配置する場合、まず、クローラベルトの屈曲の曲率半径を大きくするために、駆動輪及び遊動輪の径Dを最大にするためにD=Vと決める。
D=Vとした場合は、このようなトラックタイプの車両10には、空間SP内に駆動輪又は遊動輪を最大で3個分収めることができる。従って、H=3Dとなる。
【0069】
即ち、駆動輪と遊動輪との軸間距離をLとすると、L≦2Dとなる。
また、駆動輪と遊動輪とが干渉しないようにするには、L>Dにする。
以上に示したL≦2D、L>Dより、0.5L≦D<Lとなる。
従って、0.5≦D/L<1となる。
【0070】
以上に説明したように、本発明は、駆動輪及び遊動輪の外径Dと、駆動輪及び遊動輪における軸間距離Lとの比をD/L=raとするときに、この比raを0.5≦ra<1.0に設定したことを特徴とする。
【0071】
この結果、高速走行車両10の下方に駆動輪と遊動輪とを干渉させずに、且つ無理なく配置することができる。
また、駆動輪及び遊動輪の外径Dを比較的大きく設定することができ、クローラベルトの屈曲の曲率半径を大きくすることができる。従って、高速走行が可能になり、且つ燃費を向上させることができ、しかも、クローラベルトの寿命を延ばすことができる。
【0072】
図13は本発明に係るクローラベルト(第2の実施の形態)を示す断面図であり、第1の実施の形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図13は、クローラベルト61の内面に、且つ、芯金26と芯金26との間に接触面36から高さPRだけ突出する突出部62…を形成したことを示す。
詳しくは、突出部62…は、内面溝44と内面溝44との間で、芯金26が無い部分に形成したものである。
【0073】
このような突出部62…を設けることで、駆動輪15(図1参照)、遊動輪16(図1参照)あるいはこれらの駆動輪15と遊動輪16との間に配置した転輪が突出部62…を通過するときに、突出部62…が駆動輪15、遊動輪16、転輪によって圧縮され、突出部62…の上面が芯金26の有る部分の接触面36と同じ高さになり、駆動輪15、遊動輪16あるいは転輪がクローラベルト61の内面をスムーズに移動することができ、駆動輪15、遊動輪16あるいは転輪の上下動を防止することができ、車体振動を抑えることができる。
【0074】
図14は本発明に係るクローラベルト(第3の実施の形態)を示す平面図であり、図3に示した第1の実施の形態の凹部としての内面溝44をクローラベルトの幅方向に連続して形成せず、分断してもよい例を示す。なお、第1の実施の形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図14は、クローラベルト64の内面で、芯金26,26間の接触面36に、クローラベルト64の屈曲抵抗を低減するための幅方向に延びる凹部としての内面溝65…、66…を形成した状態を示す。
詳しくは、ガイド板27…のそれぞれの両側方に内面溝65,65を形成し、ガイド板28…のそれぞれの両側方に内面溝66,66を形成したことを示す。
【0075】
図15は本発明に係るクローラベルト(第4の実施の形態)を示す平面図であり、第1の実施の形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図15は、クローラベルト67の内面で、芯金26,26間の接触面36に、クローラベルト67の屈曲抵抗を低減するための幅方向に延びる凹部68…を形成した状態を示す。
詳しくは、芯金26のそれぞれの両側方に近接させて凹部68…を形成したことを示す。
また、凹部68は、走行中にクローラベルト67が繰り返し屈曲して、ベルト本体25の芯金26に近い部分が切れるのを防止するために、ベルト本体25を薄くし曲げ易くするものである。
【0076】
尚、図1に示した本発明のクローラベルト17は、駆動輪と遊動輪との二輪に装着したが、これに限らず、多数の転輪を有する車両の駆動輪と多数の転輪と遊動輪とに装着してもよい。
【0077】
図4には内面溝44を芯金26,26間に2本形成した例を示したが、本数はこれに限らない。また、内面溝44の断面形状、大きさもこれに限らず、例えば、断面形状をU字形、V字形、半円形、矩形やこれに近い断面形状としてもよい。
【0078】
更に、請求項4に記載した凹部は、図4に示したような溝状のものに限らず、要はクローラベルトの断面の断面積(特に、車幅方向の断面の断面積)を小さくするものであればよく、例えば、クローラベルトの接地面に設ける溝や窪みでもよい。
【0079】
更にまた、図4に示したクローラベルト17、図13に示したクローラベルト61は、内面溝44を設けないものでも差し支えない。
そして更に、本発明のクローラベルト17は、トラックタイプの車両に装着したが、これに限らず、汎用機、農業用車両、産業機械等に装着してもよい。
【0080】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1の高速走行車両用クローラベルトは、クローラベルトを、内部に芯金を埋め込むとともに、この芯金から路面側へ向かって、複数の芯線からなる芯線層と、この芯線層を保護する衝撃緩和層とをこの順に埋め込み、且つこの衝撃緩和層を各層の密度、厚さを異ならせて路面から遠い第1層と、路面から近い第2層からなる2層構造とし、路面から遠い第1層を、密度が大きく厚さが小さいものとし、路面から近い第2層を、密度が小さく厚さが大きいものにしたので、芯線層をより路面側に配置することが可能になり、クローラベルトの外周面が芯線層と近くなるため、クローラベルトの外周面の伸びを小さくすることができる。
【0081】
従って、外周面の伸びによって発生するクローラベルトと路面とのスリップを抑制することができ、スリップによるクローラベルトの摩耗、騒音の発生を低減することができる。
【0082】
また、スリップはクローラベルトの回転方向とは逆の方向に発生するため、ブレーキとして作用するが、本発明では、このようなスリップを抑えたので、例えば、旋回性を向上させることができる。
特に、衝撃緩和層を、各層の密度、厚さを異ならせて路面から遠い第1層と、路面から近い第2層からなる2層構造とし、路面から遠い第1層を、密度が大きく厚さが小さいものとし、路面から近い第2層を、密度が小さく厚さが大きいものにしたので、第2層は、密度が小さく厚いことによる大きなクッション効果で路面の細かな凹凸による衝撃を吸収し、第1層は、密度が大きいことによる大きな強度で第2層で吸収しきれなかった大きな衝撃を吸収し、芯線層に伝えないようにし、このような衝撃緩和層を設けたことで、衝撃緩和層全体の厚さを必要最小限にするとともに層の枚数を必要以上に多くすることなしに、効果的に路面からの衝撃を緩和し、芯線層を保護することができる。
【0083】
更に、衝撃緩和層を2層構造としたことで、各層の密度、厚さを異ならせることができ、これらの密度、厚さの組合わせを変えることで、車両の走行条件や車両の仕様、路面状態に応じて使い分けることができる。
【0084】
請求項2の高速走行車両用クローラベルトは、駆動輪及び遊動輪の外径と、駆動輪及び遊動輪における軸間距離との比をraとするときに、この比raを0.5≦ra<1.0に設定したので、車両の下方に駆動輪と遊動輪とを干渉させずに、且つ無理なく配置することができる。
【0085】
また、駆動輪及び遊動輪の外径Dを比較的大きく設定することができ、クローラベルトの屈曲の曲率半径を大きくすることができる。従って、高速走行が可能になり、且つ燃費を向上させることができ、しかも、クローラベルトの寿命を延ばすことができる。
【0086】
請求項3の高速走行車両用クローラベルトは、駆動輪と遊動輪との少なくとも一方を空気入りタイヤで構成し、これらの駆動輪及び遊動輪にゴム製クローラベルトを掛けた高速走行車両において、クローラベルトが、内部に芯金を埋め込むとともに、この芯金から路面側へ向かって、複数の芯線からなる芯線層と、この芯線層を保護する衝撃緩和層とをこの順に埋め込み、且つこの衝撃緩和層を各層の密度、厚さを異ならせて路面から遠い第1層と、路面から近い第2層からなる2層構造とし、路面から遠い第1層を、密度が大きく厚さが小さいものとし、路面から近い第2層を、密度が小さく厚さが大きいものにしたので、駆動輪と遊動輪との少なくとも一方を空気入りタイヤで構成したことで、駆動輪と遊動輪との少なくとも一方のクッション性能を向上させることができ、このような駆動輪及び遊動輪を、路面とのスリップを抑制することができるクローラベルトと組合わせることにより、路面やクローラベルト自体から車体へ伝わる振動をより効果的に低減することができ、車両の乗り心地を向上させることができる。
【0087】
また、衝撃緩和層を2層構造としたことで、各層の密度、厚さを異ならせて路面から遠い第1層と、路面から近い第2層からなる2層構造とし、路面から遠い第1層を、密度が大きく厚さが小さいものとし、路面から近い第2層を、密度が小さく厚さが大きいものにしたので、各層の密度、厚さを異ならせることで、これらの密度、厚さの組合わせを変えることで、車両の走行条件や車両の仕様、路面状態に応じて使い分けることができる。
特に、衝撃緩和層を、各層の密度、厚さを異ならせて路面から遠い第1層と、路面から近い第2層からなる2層構造とし、路面から遠い第1層を、密度が大きく厚さが小さいものとし、路面から近い第2層を、密度が小さく厚さが大きいものにしたので、第2層は、密度が小さく厚いことによる大きなクッション効果で路面の細かな凹凸による衝撃を吸収し、第1層は、密度が大きいことによる大きな強度で第2層で吸収しきれなかった大きな衝撃を吸収し、芯線層に伝えないようにし、このような衝撃緩和層を設けたことで、衝撃緩和層全体の厚さを必要最小限にするとともに層の枚数を必要以上に多くすることなしに、効果的に路面からの衝撃を緩和し、芯線層を保護することができる。
【0089】
請求項4の高速走行車両用クローラベルトは、芯金が、クローラベルトの長手方向に所定ピッチで複数個設けたものであり、隣り合う芯金と芯金との間にて、クローラベルトの内面側に凹部を形成し、隣り合う凹部と凹部との間で、芯金が無い部分に、接触面から突出する突出部を設けたので、凹部によって、クローラベルトの屈曲抵抗をより小さくすることができ、これによって、より高速に走行することが可能になり、また、燃費をより向上させることができる。
また、接触面から突出する突出部を設けることで、駆動輪、遊動輪あるいはこれらの駆動輪と遊動輪との間に配置した転輪が突出部を通過するときに、突出部が駆動輪、遊動輪、転輪によって圧縮され、突出部の上面が芯金の有る部分の接触面と同じ高さになり、駆動輪、遊動輪あるいは転輪がクローラベルトの内面をスムーズに移動することができ、駆動輪、遊動輪あるいは転輪の上下動を防止することができ、車体振動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るクローラベルト(第1の実施の形態)を装着した高速走行車両の側面図
【図2】 図1の2−2線断面図
【図3】 図1の3矢視図
【図4】 図3の4−4線断面図
【図5】 クローラベルトの比較例を示す断面図
【図6】 クローラベルトの周長変化率を説明する説明図
【図7】 クローラベルトのスリップの原理を説明するための第1説明図
【図8】 クローラベルトのスリップの原理を説明する第2説明図
【図9】 クローラベルトのスリップ量を比較する説明図
【図10】 本発明に係るクローラベルト(第1の実施の形態)の走行距離に対する摩耗量を表すグラフ
【図11】 本発明に係るクローラベルト(第1の実施の形態)を装着した車両のヨーレートに対する旋回車速を表すグラフ
【図12】 本発明に係る高速走行車両の駆動輪及び遊動輪の径と軸間距離との関係を説明する説明図
【図13】 本発明に係るクローラベルト(第2の実施の形態)を示す断面図
【図14】 本発明に係るクローラベルト(第3の実施の形態)を示す平面図
【図15】 本発明に係るクローラベルト(第4の実施の形態)を示す平面図
【符号の説明】
10…高速走行車両、15…駆動輪、16…遊動輪、17,61,64,67…クローラベルト、21,22,23…空気入りタイヤ、26…芯金、34…芯線、34A…芯線層、35…衝撃緩和層、35a…第1層、35b…第2層、36…内面側(接触面)、44,65,68…凹部、ra…駆動輪及び遊動輪の外径と、駆動輪及び遊動輪における軸間距離との比。
Claims (4)
- 高速走行が可能で、前後に同一径の駆動輪(15)及び遊動輪(16)を配置し、これらの駆動輪(15)及び遊動輪(16)にゴム製クローラベルト(17)を掛けた高速走行車両(10)において、
前記クローラベルト(17)は、内部に芯金(26)を埋め込むとともに、この芯金(26)から路面側へ向かって、複数の芯線(34)からなる芯線層(34A)と、この芯線層(34A)を保護する衝撃緩和層(35)とをこの順に埋め込み、且つこの衝撃緩和層(35)を、各層の密度、厚さを異ならせて路面から遠い第1層(35a)と、路面から近い第2層(35b)からなる2層構造とし、
路面から遠い第1層(35a)を、密度が大きく厚さが小さいものとし、路面から近い第2層(35b)を、密度が小さく厚さが大きいものにした、
ことを特徴とする高速走行車両用クローラベルト。 - 前記駆動輪(15)及び遊動輪(16)の外径と、駆動輪(15)及び遊動輪(16)における軸間距離との比をraとするときに、この比raを以下のように設定したことを特徴とする請求項1記載の高速走行車両用クローラベルト。
0.5≦ra<1.0 - 駆動輪(15)と遊動輪(16)との少なくとも一方を空気入りタイヤ(22,23)で構成し、これらの駆動輪(15)及び遊動輪(16)にゴム製クローラベルト(17)を掛けた高速走行車両において、
前記クローラベルト(17)は、内部に芯金(26)を埋め込むとともに、この芯金(26)から路面側へ向かって、複数の芯線(34)からなる芯線層(34A)と、この芯線層(34A)を保護する衝撃緩和層(35)とをこの順に埋め込み、且つこの衝撃緩和層(35)を、各層の密度、厚さを異ならせて路面から遠い第1層(35a)と、路面から近い第2層(35b)からなる2層構造とし、
路面から遠い第1層(35a)を、密度が大きく厚さが小さいものとし、路面から近い第2層(35b)を、密度が小さく厚さが大きいものにした、
ことを特徴とする高速走行車両用クローラベルト。 - 前記芯金(26)は、クローラベルト(17)の長手方向に所定ピッチで複数個設けたものであり、隣り合う芯金(26)と芯金(26)との間で、クローラベルト(17)の内面側(36)に、屈曲抵抗を低減するための凹部(44)を形成し、
隣り合う前記凹部(44)と凹部(44)との間で、前記芯金(26)が無い部分に、接触面(36)から突出する突出部(62)を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の高速走行車両用クローラベルト。
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