JP4497712B2 - 機械式粉砕機及びトナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法による画像形成に用いられる結着樹脂から形成されるトナーを製造する装置及びその装置を利用してトナーを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法、静電写真法及び静電印刷法の如き画像形成方法では、静電荷像を現像するためのトナーが使用される。
【0003】
一般に静電荷像現像用トナーの製造方法としては、被転写材に定着させるための結着樹脂、トナーとしての色味を出させる各種着色剤、粒子に電荷を付与させるための荷電制御剤を原料とし、或いは特開昭54−42141号公報及び特開昭55−18656号公報に示される様な所謂一成分現像法においては、これらに加えてトナー自身に搬送性等を付与するための各種磁性材料が用いられ、更に必要に応じて、例えば、離型剤及び流動性付与剤等の他の添加剤を加えて乾式混合し、しかる後、ロールミル、エクストルーダー等の汎用混練装置にて溶融混練し、冷却固化した後、混練物をジェット気流式粉砕機、機械衝突式粉砕機等の各種粉砕装置により微細化し、得られた粗粉砕物を各種風力分級機に導入して分級を行うことにより、トナーとして必要な粒径に揃えられた分級品を得、更に、必要に応じて流動化剤や滑剤等を外添し乾式混合して、画像形成に供するトナーとしている。また、二成分現像方法に用いるトナーの場合には、各種磁性キャリアと上記トナーとを混ぜ合わせた後、画像形成に供される。
【0004】
粉砕手段としては、各種粉砕装置が用いられるが、その中でも結着樹脂を主とするトナー粗砕物の粉砕には、図5に示す如きジェット気流を用いたジェット気流式粉砕機、特に衝突式気流粉砕機が用いられている。
【0005】
ジェット気流の如き高圧気体を用いた衝突式気流粉砕機は、ジェット気流で粉体原料を搬送し、加速管の出口より噴射し、粉体原料を加速管の出口の開口面に対向して設けた衝突部材の衝突面に衝突させて、その衝撃力により粉体原料を粉砕している。
【0006】
例えば、図5に示す衝突式気流粉砕機では、高圧気体供給ノズル161を接続した加速管162の出口163に対向して衝突部材164を設け、加速管162に供給した高圧気体により、加速管162の中途に連通させた粉体原料供給口165から加速管162内に粉体原料を吸引し、粉体原料を高圧気体とともに噴出して衝突部材164の衝突面166に衝突させ、その衝撃によって粉砕し、粉砕物を粉砕物排出口167より排出させている。
【0007】
しかしながら、上記の衝突式気流粉砕機は、粉体原料を高圧気体とともに噴出して衝突部材の衝突面に衝突させ、その衝撃によって粉砕するという構成のため、小粒径のトナーを生産するためには多量のエアーを必要とする。そのため電力消費が極めて多く、エネルギーコストという面において問題を抱えている。
【0008】
特に近年、環境問題への対応から、装置の省エネルギー化が求められている。
【0009】
そこで、従来の衝突式気流粉砕機に代わり、多量のエアーを必要せず、電力消費の少ない機械式粉砕機が着目されている。
【0010】
例えば、図1に示す機械式粉砕機では、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転体である回転子と、該回転子表面と一定間隔を保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを有し、且つ該間隔を保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている。
【0011】
このような機械式粉砕機は、従来の衝突式気流粉砕機に比べ電力消費が少ないため、近年叫ばれている装置の省エネルギー化に対応できる。また、機械式粉砕機により粉砕されたトナーは、機械的衝撃力によりその形状は丸みを帯びるので、クリーナーレスや廃トナー量削減といった環境問題にも対応できる。
【0012】
しかしながら、近年、複写機やプリンター等の高画質化・高精細化に伴い、トナーとしてのトナーに要求される性能も一段と厳しくなり、トナーの粒子径は小さくなり、トナーの粒度分布としては、粗大な粒子が含有されず且つ超微粉体の少ないシャープなものが要求される様になってきている。また、そのトナー表面形状においても、高いレベルでの環境安定性の要求に伴い、更なるトナー表面形状のコントロールが求められている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決したトナーが得られる機械式粉砕機及びトナーの製造方法を提供することにある。
【0014】
即ち、本発明の目的は、上記問題点を解決して、粉体原料を効率よく粉砕でき、シャープな粒度分布が得られ、トナーの製造に用いるのに適した機械式粉砕機を提供することにある。
【0015】
また、本発明の目的は、機械式粉砕機において、粉砕時の衝撃を適切に制御することにより、トナーの粒度分布をシャープ化し、微粉発生を抑えることにより、特に低温低湿環境下において、非画像部にカブリがないか又はカブリの発生が抑制されており、トナーが効率よく得られるトナーの製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、粗粉砕物を微粉砕するために粉砕手段内に投入するための粉体投入口と、固定子と、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転子と、微粉砕された粉体を粉砕手段から排出するための粉体排出口とを少なくとも有し、該固定子は該回転子を内包しており、該固定子の表面と該回転子の表面とは所定の間隙を有するように回転子は配置されて粉砕ゾーンを形成しており、粉砕ゾーンにおいて、該回転子の回転に伴って粗粉砕物が粉砕されるよう構成されている機械式粉砕機において、
該回転子の粉砕面及び該固定子の粉砕面がそれぞれ耐摩耗処理されたものであり、
該回転子の耐摩耗処理後の硬化層の硬度が、ロックウェルC硬度HRC30乃至50の範囲にあり、該固定子の耐摩耗処理後の硬化層の硬度が、ロックウェルC硬度HRC55乃至85の範囲にあることを特徴とする機械式粉砕機に関する。
【0017】
また、本発明は、結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を冷却し、冷却物を粗粉砕し、粗粉砕物を粉砕手段で微粉砕して微粉砕物を得、得られた微粉砕物から重量平均粒径4乃至12μmのトナーを製造するトナーの製造方法において、
該粉砕手段は、粗粉砕物を微粉砕するために粉砕手段内に投入するための粉体投入口と、固定子と、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転子と、微粉砕された粉体を粉砕手段から排出するための粉体排出口とを少なくとも有し、該固定子は該回転子を内包しており、該固定子の表面と該回転子の表面とは所定の間隙を有するように回転子は配置されて粉砕ゾーンを形成しており、粉砕ゾーンにおいて、該回転子の回転に伴って粗粉砕物が粉砕されるよう構成されている機械式粉砕機であり、
該回転子の粉砕面及び該固定子の粉砕面がそれぞれ耐摩耗処理されたものであり、
該回転子の耐摩耗処理後の硬化層の硬度が、ロックウェルC硬度HRC30乃至50の範囲にあり、該固定子の耐摩耗処理後の硬化層の硬度が、ロックウェルC硬度HRC55乃至85の範囲にある機械式粉砕機で微粉砕することを特徴とするトナーの製造方法に関する。
【0018】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討の結果、機械式粉砕機内の回転子と固定子の硬化層の硬度を異ならせることにより、トナーの過度な粉砕を防ぎ、トナーの粒度分布をシャープ化することが可能となることを知見して本発明に至った。
【0019】
即ち、機械式粉砕機において、粉砕処理室内で高速回転する表面に多数の溝が設けられている回転子と、表面に多数の溝が設けられている固定子の硬化層の硬度を異ならせることにより、トナーの過度な粉砕を防ぎ、トナーの粒度分布をシャープ化することが可能となることを知見して本発明に到った。
【0020】
更に、上記の回転子と固定子の硬度を異ならせることにより、粉砕時の衝撃を適切に制御することが可能となり、トナーの粒度分布をシャープ化し、微粉発生を抑えることができるため、特に低温低湿環境下において、非画像部にカブリがないか又はカブリの発生が抑制されており、トナーが効率よく得られることを知見して本発明に到った。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0022】
まず、本発明で使用する少なくとも結着樹脂及び着色剤を含むトナー粒子の原材料について説明する。
【0023】
〔ワックス〕
本発明に用いられるワックスには、従来より離型剤として知られている種々のワックス成分を用いることができ、次のようなものがある。例えば炭化水素系ワックスとしては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス等がある。
【0024】
官能基を有するワックスとしては、酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;または、それらのブロック共重合物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪族エステルを主成分とするワックス類:脱酸カルナバワックスの如き脂肪族エステルを一部または全部を脱酸化したものが挙げられる。
【0025】
更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、または更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カウナビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、または更に長鎖のアルキル基を有するアルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪族アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪族ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等が挙げられる。
【0026】
ビニルモノマーでグラフトされたワックスとしては、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックスがある。
【0027】
好ましく用いられるワックスとしては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン;高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン;低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン;放射線、電磁波または光を利用して重合したポリオレフィン;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス;ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス;炭素数一個の化合物をモノマーとする合成ワックス;水酸基、カルボキシル基またはエステル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス;炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物;これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0028】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法または融液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0029】
〔樹脂〕
本発明に用いられる結着樹脂としては、従来より結着樹脂として知られている種々の樹脂化合物を使用することができ、例えば、ビニル系樹脂、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。中でもビニル系樹脂とポリエステル系樹脂が帯電性や定着性の点で好ましい。
【0030】
ビニル系樹脂としては、例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチレンスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、沸化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類:アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸またはメタクリル酸誘導体;α,β−不飽和酸のエステル、二塩基酸のジエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ビニル酢酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸等のアクリル酸及びそのα−またはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体または無水物等のビニル系モノマーを用いた重合体が挙げられる。上記ビニル系樹脂では、前述したようなビニル系モノマーが単独または二つ以上で用いられる。これらの中でもスチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0031】
また、本発明に用いられる結着樹脂は、必要に応じて以下に例示するような架橋性モノマーで架橋された重合体または共重合体であってもよい。
【0032】
前記架橋性モノマーとしては、架橋可能な二以上の不飽和結合を有するモノマーを用いることができる。このような架橋性モノマーとしては、以下に示すような種々のモノマーが従来より知られており、本発明のトナーに好適に用いることができる。
【0033】
前記架橋性モノマーには、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルべンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートの代えたものが挙げられ;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートの代えたものが挙げられ;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロバンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートの代えたものが挙げられ;ポリエステル型ジアクリレート類として例えば、商品名MANDA(日本化薬)等が挙げられる。
【0034】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートの代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等が挙げられる。
【0035】
本発明に用いられる結着樹脂としては、以下に示すポリエステル樹脂も好ましい。ポリエステル樹脂は、全成分中45〜55mol%がアルコール成分であり、55〜45mol%が酸成分であることが好ましい。
【0036】
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記(B)式で表されるビスフェノール誘導体;
【0037】
【化1】
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基を示し、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。)
(C)式で示されるジオール類;
【0038】
【化2】
【0039】
またはグリセリン、ソルビット、ソルビタン等の多価アルコール類等が挙げられる。
【0040】
また、酸成分としてはカルボン酸が好ましくは例示することができ、二価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きべンゼンジカルボン酸類またはその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類またはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物等が挙げられ、また、3価以上のカルボン酸としてはトリメリット酸、ピロメリット酸、べンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等が挙げられる。
【0041】
特に好ましいポリエステル樹脂のアルコール成分としては前記(B)式で示されるビスフェノール誘導体であり、酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸またはその無水物、コハク酸、n−ドデセニルコハク酸またはその無水物、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸の如きジカルボン酸類;トリメリット酸またはその無水物のトリカルボン酸類が挙げられる。これらの酸成分及びアルコール成分から得られたポリエステル樹脂を結着樹脂として使用した熱ローラ定着用トナーとして定着性が良好で、耐オフセット性に優れているからである。
【0042】
〔磁性体〕
本発明のトナーを磁性トナーとして用いる場合、磁性トナーに含まれる磁性材料としては、通常使用されている磁性体であれば特に限定されないが、例えばマグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe、Co、Niのような金属、または、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0043】
具体的には、磁性材料としては、四三酸化鉄(Fe3O4)、三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe5O12)、酸化鉄カドミウム(CdFe2O4)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe5O12)、酸化鉄銅(CuFe2O4)、酸化鉄鉛(PbFe12O19)、酸化鉄ニッケル(NiFe2O4)、酸化鉄ニオジム(NdFe2O3)、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2O4)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)等が挙げられる。上述した磁性材料を単独でまたは二種以上組み合わせて使用する。特に好適な磁性材料は、四三酸化鉄またはγ−三二酸化鉄の微粉末である。
【0044】
これらの強磁性体は平均粒径が0.05〜2μmで、795.8kA/m印加での磁気特性が抗磁力1.6〜12.0kA/m、飽和磁化50〜200Am2/kg(好ましくは50〜100Am2/kg)、残留磁化2〜20Am2/kgのものが、本発明の画像形成方法、特に電子写真画像形成方法に用いる上で好ましい。
【0045】
更に、これらの磁性体は、結着樹脂100質量部に対して、60〜200質量部、さらに好ましくは80〜150質量部含有させることが好ましい。
【0046】
〔着色剤〕
前述したように本発明のトナーでは磁性体を着色剤として用いても良いが、その他の着色剤として非磁性の着色剤等も用いることができる。このような非磁性の着色剤としては、任意の適当な顔料または染料が挙げられる。例えば顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、べンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。これらは結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部の添加量が良い。また、同様に染料が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
【0047】
本発明に用いられる着色剤は、黒色着色剤として、カーボンブラック、磁性体、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い、黒色に調色されたものが利用される。
【0048】
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、168、174、176、180、181、191等が好適に用いられる。
【0049】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクドリン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0050】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が特に好適に利用できる。
【0051】
〔荷電制御剤〕
本発明のトナーは、その帯電性を更に安定化させる為に、必要に応じて荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤は、結着樹脂100質量部当たり0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部使用するのが、トナーの帯電性を制御する上で好ましい。
【0052】
荷電制御剤としては、従来より知られている種々の荷電制御剤を使用することができるが、例えば以下のものが挙げられる。
【0053】
トナーを負荷電性にする負荷電性制御剤として、例えば有機金属錯体またはキレート化合物が有効である。モノアゾ金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属錯体、芳香族ジカルボン酸系の金属錯体が挙げられる。他には、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、その無水物、またはそのエステル類、または、ビスフェノールのフェノール誘導体類等が挙げられる。好ましいものとしては、モノアゾ金属化合物で、置換基としてアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、カルバモイル基等を有するフェノール、ナフトールから合成されるモノアゾ染料の、Cr、Co、Feの金属策化合物が挙げられる。また芳香族カルボン酸の金属化合物も好ましく用いられ、アルキル基、ハロゲン、ニトロ基等を有する、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンのカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸の金属化合物が挙げられる。
【0054】
トナーを正荷電性にする正荷電性制御剤としては、ニグロシン、ニグロシン誘導体、トリフェニルメタン化合物、有機四級アンモニウム塩等が挙げられる。例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート類;これらを単独で或いは2種類以上組合せて用いることができる。
【0055】
〔外添剤〕
本発明のトナーは、前述したように、トナー粒子の他に、トナーの流動性や帯電性等を調整するための外添剤を含むことが一般的である。このような外添剤として、本発明のトナーに流動性向上剤を添加しても良い。流動性向上剤は、トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得るものである。例えば、フッ化ビニリデン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ、それらをシラン化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施した処理微粉末等がある。
【0056】
疎水化方法としては、微粉体と反応または物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的に処理することによって付与される。
【0057】
有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、べンジルジメチルクロロシラン、ブロモメトリジメチルクロロシラン、α−クロロエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当たり2〜12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ一個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは一種または二種以上の混合物で用いられる。
【0058】
本発明で用いられる0.1〜5.0μmの粒子としては無機微粒子、有機微粒子、及びこれらの混合物及び複合物が使用可能である。具体的には、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物、及び、フッ素樹脂粉末、樹脂微粒子等が挙げられる。特に帯電特性的にもチタン酸ストロンチウム、酸化セリウムが好ましい。
【0059】
〔荷電制御剤II〕
本発明のトナーは荷電制御剤を含有することが好ましい。
【0060】
トナーを負荷電性に制御するものとして下記化合物が挙げられる。
【0061】
有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸の金属錯体が挙げられる。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールのフェノール誘導体類が挙げられる。
【0062】
中でも、下記式(1)で表されるアゾ系金属錯体が好ましい。
【0063】
【化3】
〔式中、Mは配位中心金属を表し、Sc,Ti,V,Cr,Co,Ni,MnまたはFe等が挙げられる。Arはアリール基であり、フェニル基、ナフチル基の如きアリール基であり、置換基を有してもよい。この場合の置換基としては、ニトロ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アニリド基及び炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基がある。X,X’,Y及びY’は−O−,−CO−,−NH−,−NR−(Rは炭素数1〜4のアルキル基)である。C+はカウンターイオンを示し、水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、脂肪族アンモニウム或いはそれらの混合イオンを示す。〕
【0064】
特に中心金属としてはFeまたはCrが好ましく、置換基としてはハロゲン、アルキル基またはアニリド基が好ましく、カウンターイオンとしては水素、アルカリ金属、アンモニウムまたは脂肪族アンモニウムが好ましい。カウンターイオンの異なる錯塩の混合物も好ましく用いられる。
【0065】
下記式(2)に示した塩基性有機金属錯体も負帯電性を与える荷電制御剤として好ましい。
【0066】
【化4】
【0067】
トナーを正荷電性に制御するものとして下記の化合物がある。
【0068】
ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドの如きジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物;イミダゾール化合物が挙げられる。これらを単独で或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0069】
これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。下記式(3)
【0070】
【化5】
〔式中R1はHまたはCH3を示し、R2及びR3は置換または未置換のアルキル基(好ましくは、C1〜C4)を示す。〕
で表されるモノマーの単重合体;前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合、この単重合体及び共重合体は荷電制御剤としての機能と、結着樹脂(の全部または一部)としての機能を有する。
【0071】
特に下記式(4)で表される化合物が本発明のトナー正荷電性制御剤として好ましい。
【0072】
【化6】
〔式中、R1,R2,R3,R4,R5及びR6は、各々互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基または、置換もしくは未置換のアリール基を表す。R7,R8及びR9は、各々互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。A-は、硫酸イオン、硝酸イオン、ほう酸イオン、りん酸イオン、水酸イオン、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機りん酸イオン、カルボン酸イオン、有機ほう酸イオン、テトラフルオロボレートの如き陰イオンを示す。〕
【0073】
電荷制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と外添する方法がある。これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
【0074】
次に、上記に挙げたようなトナー粒子の形成材料及び外添剤等を用いて、本発明のトナーの製造方法でトナーを製造する手順について説明する。まず、原料混合工程では、トナー内添剤として、少なくとも樹脂、着色剤を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
【0075】
更に、上記で配合し、混合したトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、1軸または2軸押出機が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、池貝鉄工社製PCM型2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0076】
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、機械式粉砕機で微粉砕される。粉砕工程では、このように段階的に所定のトナー粒度まで粉砕される。更に、粉砕後、慣性分級方式のエルボージェット、遠心力分級方式のミクロプレックス、DSセパレーター等の分級機を用い、トナーを分級して重量平均粒子径4〜12μmのトナーを得る。この中で、分級機として、多分割気流式分級機が特に好ましい。
【0077】
好ましい多分割気流式分級機の一例として、図4(断面図)に示す形式の装置を一具体例として例示し説明する。
【0078】
図4において、側壁22及びGブロック23は分級室の一部を形成し、分級エッジブロック24及び25は分級エッジ17及び18を具備している。Gブロック23は左右に設置位置をスライドさせることが可能である。また、分級エッジ17及び18は、軸17a及び18aを中心にして、回動可能であり、分級エッジを回動して分級エッジ先端位置を変えることができる。各分級エッジブロック24及び25は左右に設置位置をスライドさせることが可能であり、それにともなってそれぞれのナイフエッジ型の分級エッジ17及び18も左右にスライドする。この分級エッジ17及び18により、分級室32の分級域30は3分画されている。
【0079】
原料粉体を導入するための原料供給口40を原料供給ノズル16の最後端部に有し、該原料供給ノズル16の後端部に高圧エアー供給ノズル41と原料粉体導入ノズル42とを有し且つ分級室32に開口部を有する原料供給ノズル16を側壁22の右側に設け、該原料供給ノズル16の下部接線の延長方向に対して長楕円弧を描く様にコアンダブロック26が設置されている。分級室32の左部ブロック27は、分級室32の右側方向にナイフエッジ型の入気エッジ19を具備し、更に分級室32の左側には分級室32に開口する入気管14及び15を設けてある。また、図4に示すように入気管14及び15には、ダンパーのごとき第1気体導入調節手段20及び第2気体導入調節手段21と静圧計28及び静圧計29を設けてある。
【0080】
分級エッジ17,18、Gブロック23及び入気エッジ19の位置は、被分級処理原料であるトナーの種類及び所望の粒径により調整される。
【0081】
また、分級室32の上面にはそれぞれの分画域に対応させて、分級室内に開口する排出口11,12及び13を有し、排出口11,12及び13にはパイプの如き連通手段が接続されており、それぞれにバルブ手段のごとき開閉手段を設けてよい。
【0082】
原料供給ノズル16は直角筒部と角錘筒部とからなり、直角筒部の内径と角錘筒部の最も狭い箇所の内径の比を20:1から1:1、好ましくは10:1から2:1に設定すると、良好な導入速度が得られる。
【0083】
以上のように構成してなる多分割分級域での分級操作は、例えば次のようにして行なう。即ち、排出口11,12及び13の少なくとも1つを介して分級室内を減圧し、分級室内に開口部を有する原料供給ノズル16中を該減圧によって流動する気流と高圧エアー供給ノズル41から噴射される圧縮エアーのエゼクター効果により、好ましくは流速10〜350m/秒の速度で粉体を原料供給ノズル16を介して分級室に噴出し、分散する。
【0084】
分級室に導入された粉体中の粒子は、コアンダブロック26のコアンダ効果による作用と、その際流入する空気のごとき気体の作用とにより湾曲線を描いて移動し、それぞれの粒子の粒径及び慣性力の大小に応じて、大きい粒子(粗粒子)は気流の外側、すなわち分級エッジ18の外側の第1分画、中間の粒子は分級エッジ18と17の間の第2分画、小さい粒子は分級エッジ17の内側の第3分画に分級され、分級された大きい粒子は排出口11より排出され、分級された中間の粒子は排出口12より排出され、分級された小さい粒子は排出口13よりそれぞれ排出される。
【0085】
上記の粉体の分級において、分級点は、粉体が分級室32内へ飛び出す位置であるコアンダブロック26の下端部分に対する分級エッジ17及び18のエッジ先端位置によって主に決定される。さらに、分級点は分級気流の吸引流量あるいは原料供給ノズル16からの粉体の噴出速度等の影響を受ける。
【0086】
以上説明した多分割気流式分級機は、特に電子写真法による画像形成法に用いられるトナー又はトナー用着色樹脂粉体を分級する場合に有効である。
【0087】
更に、図4に示す形式の多分割気流式分級機では、原料供給ノズル,原料粉体導入ノズル,高圧エアー供給ノズルを多分割気流式分級機の上面部に具備し、該分級エッジを具備する分級エッジブロックが、分級域の形状を変更できるようにその位置を変更し得るようにしたため、従来の気流式分級装置よりも分級精度を飛躍的に向上させることができる。
【0088】
尚、分級工程で分級されて発生したトナー粗粉は、再度粉砕工程に戻して粉砕する。また分級工程で発生した微粉は、トナー原料の配合工程に戻して再利用してもよい。
【0089】
更に、本発明のトナー製造方法においては、上記のようにして得られたトナー粒子に、少なくとも平均粒径が50nm以下の無機微粒子を外添剤として外添する。トナーに外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナーと公知の各種外添剤を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合することが好ましい。この際、外添機内部で発熱を生じ、凝集物を生成し易くなるので、外添機の容器部周囲を水で冷却する等の手段で温度調整をする方が好ましい。
【0090】
本発明のトナー粒子の粉砕工程で使用される機械式粉砕機及び該機械式粉砕機を利用したトナーの製造方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0091】
図1は、本発明に使用する機械式粉砕機を組込んだトナー粒子の粉砕装置システムの一例を示し、図2は図1におけるD−D'面での該略的断面図を示し、図3は図1において高速回転する回転子の斜視図を示す。
【0092】
図1に示す機械式粉砕機では、ケーシング313、ケーシング313内にあって冷却水を通水できるジャケット(不図示)、ケーシング313内にあって中心回転軸312に取り付けられた回転体からなる高速回転する表面に多数の溝が設けられている回転子314、回転子314の外周に一定間隔を保持して配置されている表面に多数の溝が設けられている固定子310、更に、被処理原料を導入する為の原料投入口311、処理後の粉体を排出する為の原料排出口302とから構成されている。回転子314と固定子310との間隔部分が粉砕ゾーンである。
【0093】
以上のように構成してなる機械式粉砕機では、図1に示した定量供給機315から機械式粉砕機の原料投入口311へ所定量の粉体原料が投入されると、粒子は、粉砕処理室内に導入され、該粉砕処理室内で高速回転する表面に多数の溝が設けられている回転子314と、表面に多数の溝が設けられている固定子310との間の発生する衝撃と、この背後に生じる多数の超高速渦流、並びにこれによって発生する高周波の圧力振動によって瞬間的に粉砕される。その後、原料排出口302を通り、排出される。トナー粒子を搬送しているエアー(空気)は粉砕処理室を経由し、原料排出口302、パイプ219、補集サイクロン229、バグフィルター222、及び吸引フィルター224を通って装置システムの系外に排出される。本発明においては、この様にして、粉体原料の粉砕が行われる為、微粉及び粗粉を増やすことなく所望の粉砕処理を容易に行うことが出来る。
【0094】
このような機械式粉砕としては、例えば、ホソカワミクロン(株)製粉砕機イノマイザー、川崎重工業(株)製粉砕機クリプトロン,ターボ工業(株)製ターボミルのP−型、M−型、B−型、E−型、R−型、EX−型、RS−型などを挙げることができる。
【0095】
本発明の機械式粉砕機の特徴は、回転子及び固定子の粉砕面の母材が耐摩耗処理されており、耐摩耗処理後の該回転子の硬化層の硬度と該固定子の硬化層の硬度が、それぞれ異なることである。
【0096】
更に、本発明のトナーの製造方法の特徴は、回転子及び固定子の粉砕面の母材が耐摩耗処理されており、耐摩耗処理後の該回転子の硬化層の硬度と該固定子の硬化層の硬度が、それぞれ異なるよう制御された機械式粉砕機を用いてトナーを粉砕することである。
【0097】
即ち、本発明者が検討した結果、回転子及び固定子の粉砕面の母材を耐摩耗処理し、耐摩耗処理後の回転子の硬化層の硬度と固定子の硬化層の硬度が異なる機械式粉砕機を用いて、トナーを粉砕することにより、粉砕時の衝撃を適切な状態に制御して、過度の粉砕を防ぐことができ、トナーの粒度分布がシャープかつ、微粉発生が少なくすることができる。また、特に低温低湿環境下において、非画像部にカブリがないか又はカブリの発生が抑制されるトナーを効率よく得ることができる。
【0098】
更に、本発明の機械式粉砕機及びトナーの製造方法においては、回転子の耐摩耗処理後の硬化層の硬度が、ロックウェルC硬度HRC30〜50の範囲であり、固定子の耐摩耗処理後の硬化層の硬度が、ロックウェルC硬度HRC55〜85の範囲のものを使用することが好ましい。
【0099】
すなわち、本発明者が検討した結果、回転子の硬度が、固定子の硬度より低い組み合わせのものを使用することにより、粉砕時の衝撃を適切な状態に制御して、過度の粉砕を防ぐことができ、トナーの粒度分布がシャープかつ、微粉発生が少なくすることができる。
【0100】
上記したロックウェルC硬度とは、試料の試験面を頂角120度,先端半径0.2mmのダイヤモンド錐体を用い、まず98N(10kg)の荷重を加えて押圧し、次に1470N(150kg)の荷重とし、再び98N(10kg)の荷重に戻した時の凹みの深さ(1/500mmを単位として表す。)を100より減じた数のことである。
【0101】
更に、本発明の機械式粉砕機及びトナーの製造方法においては、該機械式粉砕機の回転子及び固定子の粉砕面に耐摩耗処理を施すことにより、回転子及び固定子の粉砕面の硬化層の硬度を上記の範囲に制御できる。
【0102】
前記耐摩耗処理としては、公知の方法が用いられるが、本発明者が検討した結果、回転子の粉砕面の耐摩耗処理に関しては、Ni、Crを主成分とする自溶性合金を母材に肉盛溶接して耐摩耗性を形成させる処理が好ましく、固定子の粉砕面の耐摩耗処理に関しては、溶射用粉末を溶融した状態で母材に向けて高速度で噴射し、溶射皮膜を形成させた後、再度溶射皮膜を加熱して溶融させ耐摩耗面を形成させる処理あるいは、混合触媒を用い、母材に分子間結合度の高い炭化クロム合金をコーティングした硬質炭化クロムメッキ処理が好ましい。
【0103】
即ち、上記の耐摩耗処理を回転子及び固定子にそれぞれ施すことにより、粉砕時の衝撃を適切な状態に制御し、過度の粉砕を防ぐことができ、微粉量の少ないシャープな粒度分布有をするトナーが得られ、更には低温低湿環境下において、非画像部にカブリがないかまたはカブリの発生が抑制されるトナーを得ることができる。
【0104】
なお、固定子及び回転子の形状は、何ら限定される必要はない。
【0105】
次に、回転子及び/又は固定子の粉砕面を上記に記した耐磨耗処理を施し、回転子及び固定子の硬化層の硬度を、上記の条件に制御した機械式粉砕機で粉砕原料を粉砕する際には、冷風発生手段(不図示)により、粉体原料と共に、機械式粉砕機内に冷風を送風することが好ましい。更に、その冷風の温度は、0乃至−30℃であることが好ましい。更に、機械式粉砕機本体の機内冷却手段として、機械式粉砕機はジャケット構造を有する構造とし、冷却水(好ましくはエチレングリコール等の不凍液)を通水することが好ましい。更に、上記の冷風装置及びジャケット構造により、機械式粉砕機内の粉体導入口に連通する渦巻室212内の室温T1を0℃以下、より好ましくは−5〜−15℃、更に好ましくは−7〜−12℃とすることがトナー生産性という点から好ましい。粉砕機内の渦巻室の室温T1を0℃以下、より好ましくは−5〜−15℃、更に好ましくは−7〜−12℃とすることにより、熱によるトナーの表面変質を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。粉砕機内の渦巻室の室温T1が0℃を越えるの場合、粉砕時に熱によるトナーの表面変質や機内融着を起こしやすいのでトナー生産性という点から好ましくない。
【0106】
また、上記冷風発生手段で使用する冷媒としては、地球全体の環境問題という点から代替フロンが好ましい。
【0107】
代替フロンとしては、R134a、R404A、R407c、R410A、R507A、R717等が挙げられるが、この中で、省エネルギー性や安全性という点から、特にR404Aが好ましい。
【0108】
尚、冷却水(好ましくはエチレングリコール等の不凍液)は、冷却水供給口よりジャケット内部に供給され、冷却水排出口より排出される。
【0109】
また、機械式粉砕機内で生成した微粉砕物は、機械式粉砕機の後室320を経由して粉体排出口302から機外へ排出される。その際、機械式粉砕機の後室320の室温T2が30乃至60℃であることがトナー生産性という点から好ましい。機械式粉砕機の後室320の室温T2を30乃至60℃とすることにより、熱によるトナーの表面変質を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。機械式粉砕機の温度T2が30℃より小さい場合、粉砕されずにショートパスを起こしている可能性があり、トナー性能という点から好ましくない。また、60℃より大きい場合、粉砕時に過粉砕されている可能性があり、熱によるトナーの表面変質や機内融着を起こしやすいのでトナー生産性という点から好ましくない。
【0110】
また、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕する際に、機械式粉砕機の渦巻室212の室温T1と後室320の室温T2の温度差ΔT(T2−T1)を30〜80℃とすることが好ましく、より好ましくは35〜75℃、更に好ましくは37〜72℃とすることがトナー生産性という点から好ましい。機械式粉砕機の温度T1と温度T2とのΔTを30〜80℃、より好ましくは35〜75℃、更に好ましくは37〜72℃とすることにより、熱によるトナーの表面変質を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。機械式粉砕機の温度T1と温度T2とのΔTが40℃より小さい場合、粉砕されずにショートパスを起こしている可能性があり、トナー性能という点から好ましくない。また、70℃より大きい場合、粉砕時に過粉砕されている可能性があり、熱によるトナーの表面変質や機内融着を起こしやすいのでトナー生産性という点から好ましくない。
【0111】
また、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕する際に、結着樹脂のガラス点移転(Tg)は、45乃至75℃、更には、55乃至65℃が好ましい。また、機械式粉砕機の渦巻室212の室温T1は、Tgに対して、0℃以下であり且つTgよりも60乃至75℃低くすることがトナー生産性という点から好ましい。機械式粉砕機の渦巻室212の室温T1を0℃以下であり且つTgよりも60乃至75℃低くすることにより、熱によるトナーの表面変質を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。また、機械式粉砕機の後室320の室温T2は、Tgよりも5乃至30℃、更には、10乃至20℃低いことが好ましい。機械式粉砕機の後室320の室温T2をTgよりも5乃至30℃、より好ましくは10乃至20℃低くすることにより、熱によるトナーの表面変質を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。
【0112】
尚、本発明において、結着樹脂のガラス転移点Tgは示差熱分析装置(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)を用い、下記の条件で測定した。
【0113】
また、回転する回転子314の先端周速としては80〜180m/secであることが好ましく、より好ましくは90〜170m/sec、更に好ましくは100〜160m/secとすることがトナー生産性という点から好ましい。回転する回転子314の周速を80〜180m/sec、より好ましくは90〜170m/sec、更に好ましくは、100〜160m/secとすることで、トナーの粉砕不足や過粉砕を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。回転子の周速が80m/secより遅い場合、粉砕されずにショートパスを起こしやすいのでトナー性能という点から好ましくない。また、回転子314の周速が180m/secより速い場合、装置自体の負荷が大きくなるのと同時に、粉砕時に過粉砕され熱によるトナーの表面変質や機内融着を起こしやすいのでトナー生産性という点から好ましくない。
【0114】
また、回転子314と固定子310との間の最小間隔は0.5〜10.0mmであることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0mm、更に好ましくは1.0〜3.0mmとすることが好ましい。回転子314と固定子310との間の間隔を0.5〜10.0mm、より好ましくは1.0〜5.0mm、更に好ましくは1.0〜3.0mmとすることで、トナーの粉砕不足や過粉砕を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。回転子314と固定子310との間の間隔が10.0mmより大きい場合、粉砕されずにショートパスを起こしやすいのでトナー性能という点から好ましくない。また回転子314と固定子310との間の間隔が0.5mmより小さい場合、装置自体の負荷が大きくなるのと同時に、粉砕時に過粉砕され熱によるトナーの表面変質や機内融着を起こしやすいのでトナー生産性という点から好ましくない。
【0115】
【実施例】
次に、本発明の実施例及び参考例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0116】
[実施例1]
・結着樹脂(ポリエステル樹脂): 100質量部
(Tg59℃、酸価20mgKOH/g、水酸基価30mgKOH/g、分子
量:Mp6800、Mn2900、Mw53000)
・磁性酸化鉄: 90質量部
(平均粒子径0.20μm、795.8kA/m磁場での特性Hc9.1kA
/m、σs82.1Am2/kg、σr11.4Am2/kg)
・モノアゾ金属錯体(負荷電制御剤): 2質量部
・低分子量エチレン−プロピレン共重合体: 3質量部
上記の処方の材料を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)でよく混合した後、温度150℃に設定した2軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー製造用粉体原料である粉体原料(粗粉砕物)を得た。
【0117】
得られた粉体原料を図1に示す機械式粉砕機301(ターボ工業社製ターボミルT250−RS型を以下の通り改造した改造機)で微粉砕し、得られた微粉砕品を図4に示す多分割気流式分級機1にて分級した。
【0118】
本実施例では、機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕面の母材が耐磨耗処理されており、回転子の粉砕面には、Ni、Crを主成分とする自溶性合金を母材に肉盛溶接して耐磨耗面を形成させる処理を施し、固定子の粉砕面には、溶射用粉末を溶融した状態で母材に向けて高速度で噴射し、溶射皮膜を形成させた後、再度溶射皮膜を加熱して溶融させ耐磨耗面を形成させる処理を施した。またこの時の、回転子のロックウェルC硬度は40、固定子のロックウェルC硬度は65であった。また、回転子314の周速を115m/s、回転子314と固定子310の間隙を1.5mm、粉砕供給量を15kg/hrとして粉砕した。
【0119】
尚、この際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は40℃、T1とT2のΔTは50℃であった。また、Tg−T1は69℃、Tg−T2は19℃であった。また、この時に機械式粉砕機301で粉砕されて得られた微粉砕品は、重量平均径が7.2μm、4μm↓が50.2%、10μm↑が8.9%であった。
【0120】
ここで、トナーの平均粒径及び4μm↓、10μm↑について説明する。
【0121】
トナーの平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型或いはコールターマルチサイザー(コールター社製)等、種々の方法で測定可能であるが、本発明においてはコールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用い、個数分布及び体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続し、電解質液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)を使用することが出来る。
【0122】
測定法としては、前記電解質水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解質液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記コールターカウンターTA−II型によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積及び個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから、本発明に係わる体積分布から求めた体積基準の重量平均粒径(D4:各チャンネルの中央値をチャンネルの代表値とする)と体積分布から求めた10μm以上のトナーの累積個数(10μm↑)と個数分布から求めた4μm以下のトナーの累積個数(4μm↓)を求めた。
【0123】
ここで、粗粉を10μm以上、微粉を4μm以下と定義する。すなわち、10μm↑と4μm↓の値が小さいほど粒度分布がシャープなことを示し、大きいとブロードな粒度分布であることを示す。
【0124】
次に、上記の機械式粉砕機301で粉砕されて得られた微粉砕品を、図4の構成を有する気流式分級機1に導入し分級することで、重量平均粒径が7.2μmのトナーを得た。
【0125】
このトナー100質量部に対して、ヘキサメチルジシラザンとシリコーンオイルで疎水化処理された一次粒径12nmの乾式シリカを1.0質量部添加し、ヘンシェルミキサーにて外添混合して評価用トナーとした。
【0126】
このトナーを用いて、キヤノン製NP6350複写機改造機を使用して以下の項目の評価を行なった。
【0127】
<評価−1>
評価用トナーを現像器中に330g入れ、低温低湿室(15℃,10%)に一晩(12時間以上)放置する。濃度評価用チャートを使用して200枚の画出しを行なう。この前後でベタ白画像におけるカブリを測定する。評価レベルは以下に示す。
【0128】
カブリ測定用反射測定機REFLECTMETER(東京電色(株))にて、上記の白画像及び未使用紙の反射率を測定し、両者の差をカブリとする。本実施例においては、表1に示したように、評価1について、カブリの差は0.1%以下と非常に良好な結果が得られた。
未使用紙反射率−ベタ白反射率=カブリ%
◎ :カブリ0.1%以下
○ :カブリ0.1〜0.5%
○△:カブリ0.5〜1.0%
△ :カブリ1.0〜1.5%
△×:カブリ1.5〜2.0%
× :カブリ2.0%以上
【0129】
運転終了後の回転子及び固定子の粉砕面の摩耗状況については、10倍及び50倍のルーペを使用して目視で確認し、下記の基準で判断した。本実施例においては、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
○:回転子及び固定子の粉砕面に摩耗がない
△:回転子及び固定子の粉砕面に摩耗がやや見られるが実用可
×:回転子及び固定子の粉砕面に摩耗が顕著に見られ、実用不可
【0130】
[実施例2]
機械式粉砕機への粉体原料の供給量を20kg/hrとした以外は実施例1と同様にしてトナー2を得た。尚、粉体原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は52℃、T1とT2のΔTは62℃であった。また、Tg−T1は69℃、Tg−T2は7℃であった。また、この時に機械式粉砕機301で粉砕されて得られた微粉砕品は、重量平均径が7.4μm、4μm↓が45.3%、10μm↑が9.8%であり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.4μmであった。
【0131】
得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー2とした。その結果、表1に示すように、評価1について非常に良好な結果が得られた。
【0132】
また、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0133】
[実施例3]
機械式粉砕機への粉体原料の供給量を10kg/hrとした以外は実施例1と同様にしてトナー3を得た。尚、粉体原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は30℃、T1とT2のΔTは40℃であった。また、Tg−T1は69℃、Tg−T2は27℃であった。また、この時に機械式粉砕機301で粉砕されて得られた微粉砕品は、7.0μm、4μm↓が55.2%、10μm↑が8.0%であり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.0μmであった。
【0134】
得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー3とした。その結果、表1に示すように、評価1について非常に良好な結果が得られた。
【0135】
また、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0136】
[実施例4]
機械式粉砕機301の回転子314のロックウェルC硬度を30、固定子310のロックウェルC硬度を55とした以外は実施例1と同様にしてトナー4を得た。尚、粉体原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は41℃、T1とT2のΔTは51℃であった。また、Tg−T1は69℃、Tg−T2は18℃であった。また、この時に機械式粉砕機301で粉砕されて得られた微粉砕品は、重量平均径が7.3μm、4μm↓が51.0%、10μm↑が9.5%であり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.3μmであった。
【0137】
得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー4とした。その結果、表1に示すように、評価1について非常に良好な結果が得られた。
【0138】
また、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0139】
[実施例5]
機械式粉砕機への粉体原料の供給量を20kg/hrとした以外は実施例4と同様にしてトナー5を得た。尚、粉体原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は53℃、T1とT2のΔTは63℃であった。また、Tg−T1は69℃、Tg−T2は6℃であった。また、この時に機械式粉砕機301で粉砕されて得られた微粉砕品は、重量平均径が7.5μm、4μm↓が46.0%、10μm↑が10.3%であり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.5μmであった。
【0140】
得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー5とした。その結果、表1に示すように、評価1について非常に良好な結果が得られた。
【0141】
また、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0142】
[実施例6]
機械式粉砕機への粉体原料の供給量を10kg/hrとした以外は実施例4と同様にしてトナー6を得た。尚、粉体原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は31℃、T1とT2のΔTは41℃であった。また、Tg−T1は69℃、Tg−T2は28℃であった。また、この時に機械式粉砕機301で粉砕されて得られた微粉砕品は、重量平均径が6.9μm、4μm↓が55.9%、10μm↑が8.4%であり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が6.9μmであった。
【0143】
得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー6とした。その結果、表1に示すように、評価1について非常に良好な結果が得られた。
【0144】
また、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0145】
[実施例7]
機械式粉砕機301の回転子314のロックウェルC硬度を25、固定子310のロックウェルC硬度を90とした以外は実施例1と同様にしてトナー7を得た。尚、粉体原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は40℃、T1とT2のΔTは50℃であった。また、Tg−T1は69℃、Tg−T2は19℃であった。また、この時に機械式粉砕機301で粉砕されて得られた微粉砕品は、重量平均径が7.3μm、4μm↓が53.1%、10μm↑が10.9%であり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.3μmであった。
【0146】
得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー7とした。その結果、表1に示すように、評価1について好ましい結果が得られた。
【0147】
また、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0148】
【表1】
【0149】
[参考例1]
機械式粉砕機301の回転子314のロックウェルC硬度を40、固定子310のロックウェルC硬度を40とした以外は実施例1と同様にして参考用トナー1を得た。尚、粉体原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は42℃、T1とT2のΔTは52℃であった。また、Tg−T1は69℃、Tg−T2は17℃であった。また、この時に機械式粉砕機301で粉砕されて得られた微粉砕品は、重量平均径が7.2μm、4μm↓が54.0%、10μm↑が11.6%であり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.2μmであった。
【0150】
得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し参考用トナー1とした。その結果、表1に示すように、評価1については、多少カブリがあったものの、実用上問題ない結果であった。
【0151】
また、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0152】
[参考例2]
機械式粉砕機への粉体原料の供給量を20kg/hrとした以外は参考例1と同様にして参考用トナー2を得た。尚、粉体原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は52℃、T1とT2のΔTは62℃であった。また、Tg−T1は69℃、Tg−T2は7℃であった。また、この時に機械式粉砕機301で粉砕されて得られた微粉砕品は、重量平均径が7.5μm、4μm↓が49.1%、10μm↑が13.0%であり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.5μmであった。
【0153】
得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し参考用トナー2とした。その結果、表1に示すように、評価1については、多少カブリがあったものの、実用上問題ない結果であった。
【0154】
また、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0155】
[参考例3]
機械式粉砕機への粉体原料の供給量を10kg/hrとした以外は参考例1と同様にして参考用トナー3を得た。尚、粉体原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は31℃、T1とT2のΔTは41℃であった。また、Tg−T1は69℃、Tg−T2は28℃であった。また、この時に機械式粉砕機301で粉砕されて得られた微粉砕品は、重量平均径が7.0μm、4μm↓が59.7%、10μm↑が10.1%でであり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.0μmであった。
【0156】
得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し参考用トナー3とした。その結果、表1に示すように、評価1については、多少カブリがあったものの、実用上問題ない結果であった。
【0157】
また、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0158】
【表2】
【0159】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、回転子及び固定子の粉砕面の母材を耐摩耗処理し、耐摩耗処理後の回転子の硬化層の硬度と固定子の硬化層の硬度が異なる機械式粉砕機を用いて、トナーを粉砕することにより、粉砕時の衝撃を適切な状態に制御して、過度の粉砕を防ぐことができ、トナーの粒度分布がシャープかつ、微粉発生が少なくすることが可能な機械式粉砕機及びトナーの製造方法が提供される。
【0160】
更に本発明によれば、上記の表面処理により、特に低温低湿環境下において、非画像部にカブリがないか又はカブリの発生が抑制されたトナーを得られるトナーの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のトナーの粉砕工程において使用される一例の機械式粉砕機の概略断面図である。
【図2】 図1におけるD−D’面での概略的断面図である。
【図3】 図1に示す回転子の斜視図である。
【図4】 本発明のトナーの分級工程に好ましく用いられる多分割気流式分級装置の概略断面図である。
【図5】 従来の衝突式気流粉砕機の概略断面図である。
【符号の説明】
1: 多分割分級機
11,12,13: 排出口
1la,12a,13a: 排出導管
16: 原料供給ノズル
18,117,118: 分級エッジ
19: 入気エッジ
22,23: 側壁
24,25: 分級エッジブロック
26: コアンダブロック
27: 左部ブロック
30: 分級域
32: 分級室
40: 原料供給口
41: 高圧エアー供給ノズル
42: 原料粉体導入ノズル
161: 高圧気体供給ノズル
162: 加速管
163: 加速管出口
164: 衝突部材
165: 粉体原料供給口
166: 衝突面
167: 粉砕物排出口
168: 粉砕室
212: 渦巻室
219: パイプ
220: デイストリビュータ
222: バグフィルター
224: 吸引フィルター
229: 捕集サイクロン
301: 機械式粉砕機
302: 粉体排出口
310: 固定子
311: 粉体投入口
312: 回転軸
313: ケーシング
314: 回転子
315: 第1定量供給機
320: 後室
Claims (3)
- 粗粉砕物を微粉砕するために粉砕手段内に投入するための粉体投入口と、固定子と、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転子と、微粉砕された粉体を粉砕手段から排出するための粉体排出口とを少なくとも有し、該固定子は該回転子を内包しており、該固定子の表面と該回転子の表面とは所定の間隙を有するように回転子は配置されて粉砕ゾーンを形成しており、粉砕ゾーンにおいて、該回転子の回転に伴って粗粉砕物が粉砕されるよう構成されている機械式粉砕機において、
該回転子の粉砕面及び該固定子の粉砕面がそれぞれ耐摩耗処理されたものであり、
該回転子の耐摩耗処理後の硬化層の硬度が、ロックウェルC硬度HRC30乃至50の範囲にあり、該固定子の耐摩耗処理後の硬化層の硬度が、ロックウェルC硬度HRC55乃至85の範囲にあることを特徴とする機械式粉砕機。 - 結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を冷却し、冷却物を粗粉砕し、粗粉砕物を粉砕手段で微粉砕して微粉砕物を得、得られた微粉砕物から重量平均粒径4乃至12μmのトナーを製造するトナーの製造方法において、
該粉砕手段は、粗粉砕物を微粉砕するために粉砕手段内に投入するための粉体投入口と、固定子と、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転子と、微粉砕された粉体を粉砕手段から排出するための粉体排出口とを少なくとも有し、該固定子は該回転子を内包しており、該固定子の表面と該回転子の表面とは所定の間隙を有するように回転子は配置されて粉砕ゾーンを形成しており、粉砕ゾーンにおいて、該回転子の回転に伴って粗粉砕物が粉砕されるよう構成されている機械式粉砕機であり、
該回転子の粉砕面及び該固定子の粉砕面がそれぞれ耐摩耗処理されたものであり、
該回転子の耐摩耗処理後の硬化層の硬度が、ロックウェルC硬度HRC30乃至50の範囲にあり、該固定子の耐摩耗処理後の硬化層の硬度が、ロックウェルC硬度HRC55乃至85の範囲にある機械式粉砕機で微粉砕することを特徴とするトナーの製造方法。 - 該回転子の粉砕面の耐摩耗処理は、Ni、Crを主成分とする自溶性合金を母材に肉盛溶接して耐磨耗面を形成させる処理であることを特徴とし、固定子の粉砕面の耐摩耗処理は、溶射用粉末を溶融した状態で母材に向けて高速度で噴射し、溶射皮膜を形成させた後、再度溶射皮膜を加熱して溶融させ耐磨耗面を形成させる処理であることを特徴とする請求項2に記載のトナーの製造方法。
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