JP3943793B2 - トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法による画像形成に用いられる結着樹脂及び着色剤等から形成されるトナーを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法、静電写真法及び静電印刷法の如き画像形成方法では、静電荷像を現像するためのトナーが使用される。一般に静電荷像現像用トナーの製造方法としては、被転写材に定着させるための結着樹脂、トナーとしての色味を出させる各種着色剤、粒子に電荷を付与させるための荷電制御剤を原料とし、或いは特開昭54−42141号公報及び特開昭55−18656号公報に示されるような所謂一成分現像法においては、これらに加えてトナー自身に搬送性等を付与するための各種磁性材料が用いられ、更に必要に応じて、例えば、離型剤及び流動性付与剤等の他の添加剤を加えて乾式混合する。
【0003】
しかる後、ロールミル、エクストルーダー等の汎用混練装置にて前記混合物を溶融混練し、冷却固化した後、混練物をジェット気流式粉砕機、機械衝突式粉砕機等の各種粉砕装置により微細化し、得られた粗粉砕物を各種風力分級機に導入して分級を行うことにより、トナーとして必要な粒径に揃えられた分級品を得、更に必要に応じて流動化剤や滑剤等を外添し乾式混合して、画像形成に供するトナーとしている。又、二成分現像方法に用いるトナーの場合には、各種磁性キャリアと上記トナーとを混ぜ合わせた後、画像形成に供される。
【0004】
粉砕手段としては、各種粉砕装置が用いられるが、その中でも結着樹脂を主とするトナー粗砕物の粉砕には、図7に示す如きジェット気流を用いた気流式粉砕機、特に衝突式気流粉砕機が用いられている。ジェット気流の如き高圧気体を用いた衝突式気流粉砕機は、ジェット気流で粉砕原料を搬送し、加速管の出口より噴射し、粉砕原料を加速管の出口の開口面に対向して設けた衝突部材の衝突面に衝突させて、その衝撃力により粉砕原料を粉砕している。
【0005】
例えば、図7に示す衝突式気流粉砕機では、高圧気体供給ノズル161を接続した加速管162の出口163に対向して衝突部材164を設け、加速管162に供給した高圧気体により、加速管162の中途に連通させた粉砕原料供給口165から加速管162内に粉砕原料を吸引し、粉砕原料を高圧気体とともに噴出して衝突部材164の衝突面166に衝突させ、その衝撃によって粉砕し、粉砕物を粉砕物排出口167より排出させている。
【0006】
しかしながら、上記の衝突式気流粉砕機は、粉砕原料を高圧気体とともに噴出して衝突部材の衝突面に衝突させ、その衝撃によって粉砕するという構成のため、小粒径のトナーを生産するためには多量のエアーを必要とする。そのため電力消費が極めて多く、エネルギーコストという面において問題を抱えている。特に近年、環境問題への対応から、装置の省エネルギー化が求められている。
【0007】
そこで、従来の衝突式気流粉砕機に代わり、多量のエアーを必要せず、電力消費の少ない機械式粉砕機が着目されている。例えば、図1に示す機械式粉砕機では、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転体である回転子と、該回転子表面と一定間隔を保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを有し、且つ上記間隔を保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている。このような機械式粉砕機は、従来の衝突式気流粉砕機に比べ電力消費が少ないため、近年叫ばれている装置の省エネルギー化に対応できる。又、機械式粉砕機により粉砕されたトナーは、機械的衝撃力によりその形状は丸みを帯びるので、クリーナーレスや廃トナー量削減といった環境間題にも対応できる。
【0008】
しかしながら、上記の機械式粉砕機において回転子及び固定子の粉砕用表面が短時間で摩耗し、回転子及び固定子の交換頻度が高くなってしまうと、交換時間のための装置稼働率の低下やランニングコスト高等、トナー生産効率の低下を招いてしまう。このような観点から、機械式粉砕機においては、回転子及び固定子の粉砕用表面が短時間で摩耗することなく、長期に渡り安定的にトナーを粉砕し得る機械式粉砕機が求められている。
【0009】
又、近年、複写機やプリンター等の高画質化及び高精細化に伴い、現像剤としてのトナーに要求される性能も一段と厳しくなり、トナーの粒子径は小さくなり、トナーの粒度分布としては、粗大な粒子が含有されず且つ超微粉体の少ないシャープなものが要求されるようになってきている。又、そのトナー表面形状においても、高いレベルでの環境安定性の要求に伴い、更なるトナー表面形状のコントロールが求められている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決したトナーが得られるトナーの製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、機械式粉砕機において回転子及び固定子の粉砕用表面の摩耗を低下させ、長期に渡り安定的にトナーを粉砕することが可能となるトナーの製造方法を提供することにある。
更に本発明の目的は、機械式粉砕機においてトナーの表面形状をコントロールすることにより、低温低湿環境下でも初期から良好な現像性、転写性、並びに安定した帯電性を有する長寿命なトナーが得られるトナーの製造方法を提供することにある。
更に本発明の日的は、機械式粉砕機においてトナーの表面形状をコントロールすることにより、特に低温低湿環境下において、非画像部にカブリがないか又はカブリの発生が抑制されており、トナーを現像剤担持体上に均一に塗布し得、トナー粒子を効率良く、均一に摩擦帯電し得るトナーが得られるトナーの製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を冷却した後、冷却物を粉砕手段によって粉砕して微粉砕物を得、得られた該微粉砕物を分級してトナーを生成させるトナーの製造方法において、
上記粉砕手段が、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転体である回転子と、該回転子表面と一定間隔を保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを有し、且つ上記間隔を保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている機械式粉砕機であり、
上記回転子及び/又は固定子の表面がショットブラスト処理によって粗面化処理され、該粗面化処理された表面が耐摩耗処理されており、
得られるトナーが、該トナーのBET法によって測定された単位体積当たりの比表面積Sb(m 2 /cm 3 )と、トナーを真球と仮定した際の重量平均径から算出した単位体積当たりの比表面積St(m 2 /cm 3 )との関係が下記条件を満足していることを特徴とするトナーの製造方法を提供する。
Sb/St≧1.8
【0012】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明者は、上記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討の結果、機械式粉砕機内の回転子及び/又は固定子の粉砕用表面に特定の表面処理を施すことにより、粉砕用表面の摩耗を低下させ、長期に渡り安定的にトナーを粉砕することが可能となることを知見して本発明に至った。更に本発明者は、上記の表面処理を施すことにより、回転子及び/又は固定子の粉砕用表面の表面粗さを制御でき、環境安定性に優れたトナーを得られることを知見して本発明に至った。
【0013】
即ち、本発明者は、機械式粉砕機において、粉砕処理室内で高速回転する、表面に多数の溝が設けられている回転子と、表面に多数の溝が設けられている固定子の両方或いはどちらか一方の粉砕用表面を前処理として粗面化処理し、後処理として該粗面化処理された表面を更に耐摩耗処理することにより、回転子及び/又は固定子の粉砕用表面の摩耗を低下させることができ、長期に渡り安定的にトナーを粉砕することが可能となることを知見して本発明に至った。
【0014】
更に本発明者は、上記の表面処理を施すことにより、回転子及び/又は固定子の表面の表面粗さを適切な状態に制御でき、トナーの表面形状を任意にコントロールすることが可能となり、低温低湿環境下でも初期から良好な現像性、転写性、並びに安定した帯電性を有する長寿命なトナーが得られ、更には非画像部にカブリがないか又はカブリの発生が柳制されており、トナーを現像剤担持体上に均一に塗布し得、トナー粒子を効率良く、均一に摩擦帯電し得るトナーが得られることを知見して本発明に至った。
【0015】
先ず、本発明で得られる少なくとも結着樹脂及び着色剤を含むトナー粒子について説明する。本発明で得られるトナーを構成する結着樹脂としては、通常トナーに用いられるあらゆる樹脂を使用することができるが、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0016】
加熱定着用トナーの場合は、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テンペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が使用できる。これらの中でも、スチレン系共重合体が好ましい。スチレン共重合体の如く、ラジカル重合反応により得られる樹脂は比較的それ自身の主鎖の極性が低く、トナー母体の帯電を安定させるものと考えられる。
【0017】
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のような二重結合を有するモノカルボン酸、若しくはその置換体;アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又は無水マレイン酸等が挙げられる。このようなモノマーを単独、或いは混合して、スチレンモノマーと共重合させることにより所望の共重合体が得られる。
【0018】
これらの中でも、特に不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体のモノエステル誘導体を用いることが好ましい。より具体的には、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニル等のようなα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステル類;n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノメチルエステル等のようなアルケニルジカルボン酸のモノエステル類;フタル酸モノメチルエステル、フタル酸モノエチルエステル、フタル酸モノブチルエステル等のような芳香族ジカルボン酸のモノエステル類;例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のようなビニルエステル類、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のようなエチレン系オレフィン類;例えば、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のようなビニルケトン類;例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のようなビニルエーテル類;等のビニル単量体が単独若しくは組み合わせて用いられる。
【0019】
重合の際に用いることのできる架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物、及び3個以上のビニル基を有する化合物が単独若しくは混合物として使用できる。又、これら結着樹脂の製造方法等はいかなるものでもかまわない。
【0020】
本発明で得られるトナー粒子は、上記に挙げた結着樹脂と共に着色剤を含有するが、着色剤としては、カーボンブラック、チタンホワイトの他、あらゆる顔料及び/又は染料を用いることができる。
【0021】
本発明のトナー製造方法において、磁性体を着色剤として用いた磁性トナーを製造する場合は、以下に挙げるような磁性体を使用することができる。即ち、トナーに含有させる磁性体としては、強磁性の元素を含む合金又は化合物の粉末が好ましい。例えば、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、亜鉛等の合金や化合物、その他の強磁性合金等、従来より磁性材料として知られているもの等を挙げることができる。
【0022】
本発明で使用する磁性体としては、窒素ガス吸着法によるBET比表面積としては、1〜40m2/g、更には2〜30m2/gのものが好ましい。又、平均粒径が0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.6μmのものが好ましい。更にこれらの磁性体は、結着樹脂100質量部に対して60質量部〜200質量部、更に好ましくは80質量部〜150質量部含有させることが好ましい。
【0023】
本発明で得られるトナー粒子には、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子に配合(内添)、又はトナー粒子と混合(外添)することができる。荷電制御剤によって、現像システムに応じた最適の荷電量のコントロールが可能となる。特に、粒度分布と荷電量とのバランスを更に安定させたトナーとすることが可能とある。この際に使用するトナーを負帯電性に制御するものとして、例えば、下記の物質が挙げられる。先ず、トナーが磁性トナーである場合は、有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体が挙げられる。その他、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類等が挙げられる。
【0024】
本発明のトナー製造方法においては、トナーの構成材料として、必要に応じて1種ないし2種以上のワックスを用いても構わない。この際用いることのできるワックスとしては次のものが挙げられる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の脂肪族炭化水素ワックス、又、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素ワックスの酸化物、又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックス等の脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化した物等が挙げられる。
【0025】
更にパルチミン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の飽和直鎖脂肪酸類、ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナン酸等の不飽和脂肪酸類、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の飽和アルコール類、ソルビトール等の多価アルコール類、リノール類アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド類、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、へキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド類、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪族金属塩(一般に金属石鹸と言われている物)、又、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類、又、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、又、植物性油脂の水素添加等によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等が挙げられる。本発明においてこれらのワックスを用いる場合の量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜45質量部が望ましい。
【0026】
更に本発明において製造されるトナーは、示差熱分析によって吸熱ピークを測定した際に、吸熱ピークが120℃以下に1つ以上あるように構成することが好ましい。このような態様とすれば、画像安定性により一層効果があるトナーが得られる。即ち、示差熱分析における吸熱ピークが120℃以下にあるトナーは、その製造方法における原料の溶融混練工程において結着樹脂中の磁性体/荷電制御剤等の分散の状態が、吸熱ピークが120℃以下に有しないトナーとは異なったある特異な状態になるものと推測され、このために特性の優れたトナーが得られるものと考えている。
【0027】
この場合に、示差熱分析における吸熱ピークは、120℃以下に少なくとも一つあれば足り、又、更に吸熱ピークが120℃を超えるところにあっても同様の効果が得られる。但し、示差熱分析における吸熱ピークが、60℃未満(好ましくは70℃未満)に存在しないように構成することが好ましい。即ち、示差熱分析における吸熱ピークが60℃未満に存在するようなトナーを画像形成に用いると、画像濃度が低くなる傾向がある。又、トナーの保全性も不安定になるという傾向もある。
【0028】
本発明において製造されるトナーを、示差熱分析における吸熱ピークを120℃以下に有する形態にする手段としては、トナー中に、示差熱分析における吸熱ピークを120℃以下に有する化合物を用い、該化合物がトナー中に内添される構成とすることが好ましい。この際用いる示差熱分析における吸熱ピークを120℃以下に1つ以上有する物質としては、樹脂或いはワックスを拳げることができる。樹脂としては、結晶性を有するポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。
【0029】
又、ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等、天然ワックス及びそれらの誘導体等で、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含む。高級脂肪族アルコール等のアルコール;ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸或いはその化合物;酸アミド、エステル、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックス等を挙げることができる。いずれにおいても、示差熱分析における吸熱ピークを120℃以下に有しているものであれば用いることできる。
【0030】
これらの中でも、ポリオレフィン若しくはフィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス若しくは石油系ワックス若しくは高級脂肪族アルコールをトナーの構成材料に使用し、これらが含有されたトナーを製造することが特に好ましい。本発明のトナーの製造方法においては、上記の中でも、更にポリオレフィン若しくはフィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス若しくは石油系ワックスをトナーの構成材料に使用することが好ましい。
【0031】
本発明のトナー製造方法においては、上記で説明したような結着樹脂、着色剤等からなるトナー粒子に、少なくとも平均粒径が50nm以下の無機微粒子を外添剤として外添混合することができる。このような無機微粒子をトナー粒子に外添すると、トナーの流動性を向上させることができる。この際用いることのできる無機微粒子としては、以下のものが挙げられるが、これらは単独或いは併用して用いることができる。例えば、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、クロム、マンガン、ストロンチウム、錫、アンチモン、チタン等の金属酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の複合金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム等の金属塩;カオリン等の粘土鉱物;アパタイト等のリン酸化合物;シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のケイ酸化合物等が挙げられる。
【0032】
以上に拳げた無機微粒子の中でも、特にシリカがトナーに対して流動性向上に効果がある。シリカとしては、例えば、硅素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、又、Na20、S03 2-等の製造残滓の少ない乾式シリカを用いることが好ましい。更に乾式シリカにおいては、製造工程において、例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等、他の金属ハロゲン化合物を硅素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらも包含する。
【0033】
本発明において使用するシリカ粒子としては、更にその表面が疎水化処理されたものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粒子と反応或いは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的にシリカ微粒子表面を処理すればよい。疎水化処理の好ましい方法としては、例えば、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粒子をシランカップリング剤で処理した後、或いはシランカップリング剤で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
【0034】
疎水化処理に使用されるシランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当たり2から12個のシロキサン単位を有し、末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のケイ素原子に結合した水酸基を含有したジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0035】
有機ケイ素化合物としてはシリコーンオイルが好ましい。又、好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000センチストークスのものが用いられる。具体的には、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロロフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等を使用することができる。
【0036】
これらのシリコーンオイルを用いて行なうシリコーンオイル処理の方法としては、例えば、シランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、ベースとなるシリカへシリコーンオイルを噴射する方法によってもよい。或いは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解或いは分散せしめた後、ベースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去する方法でもよい。更に本発明においては、上記で説明したような無機微粒子のうち、その平均径が50nm以下であるものを用いる。更に5〜30nm程度のものを用いることが好ましい。
本発明における無機微粒子の平均粒径は、以下の方法で求めたものである。先ず、無機微粒子を透過電子顕微鏡にて1×106以上の倍率で観察し、写真をとる。そして画像上の無機微粒子を100個無作為にサンプリングし、これらの粒子の像の粒径を測定し、その平均を求める。
【0037】
次に上記に挙げたようなトナー粒子の形成材料及び外添剤等を用いて、本発明のトナーの製造方法でトナーを製造する手順について説明する。先ず、原料混合工程では、トナー内添剤として、少なくとも樹脂及び着色剤を所定量秤量して配合し混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、へンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
【0038】
次に上記で配合及び混合したトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、池貝鉄工社製PCM型2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。更にトナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0039】
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、先ず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に機械式粉砕機で微粉砕される。粉砕工程では、このように段階的に所定のトナー粒度まで粉砕される。
【0040】
本発明のトナー粒子の製造方法において、粉砕工程で使用される機械式粉砕機について、図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、本発明で使用する機械式粉砕機を組込んだトナー粒子の粉砕装置システムの一例を示し、図2は、図1におけるD−D’面での概略的断面図を示し、図3は、図1において高速回転する回転子の斜視図を示す。
【0041】
図1に示す機械式粉砕機では、ケーシング313、ケーシング313内にあって冷却水を通水できるジャケット316、ケーシング313内にあって中心回転軸312に取り付けられた回転体からなる高速回転する表面に多数の溝が設けられている回転子314、回転子314の外周に一定間隔を保持して配置されている表面に多数の溝が設けられている固定子310、更に被処理原料を導入するための原料投入口311、処理後の粉体を排出するための粉体排出口302とから構成されている。
【0042】
以上のように構成してなる機械式粉砕機では、図1に示した定量供給機315から機械式粉砕機の原料投入口311へ所定量の粉砕原料が投入されると、粒子は、粉砕処理室内に導入され、該粉砕処理室内で高速回転する表面に多数の溝が設けられている回転子314と、表面に多数の溝が設けられている固定子310との間で発生する衝撃と、この背後に生じる多数の超高速渦流、並びにこれによって発生する高周波の圧力振動によって粉砕原料が瞬間的に粉砕される。
【0043】
その後、粉砕物は、粉体排出口302を通り、排出される。トナー粒子を搬送しているエアー(空気)は粉砕処理室を経由し、粉体排出口302、パイプ219、捕集サイクロン229、バグフィルター222、及び吸引フィルター224を通って装置システムの系外に排出される。本発明においては、このようにして、粉砕原料の粉砕が行われるため、微粉及び粗粉を増やすことなく所望の粉砕処理を容易に行うことができる。
【0044】
このような機械式粉砕機としては、例えば、ホソカワミクロン(株)製粉砕機イノマイザー、川崎重工業(株)製粉砕機クリプトロン、ターボ工業(株)製ターボミルのP−型、M−型、B−型、E−型、R−型、EX−型、RS−型等を挙げることができる。本発明の方法で使用する機械式粉砕機の特徴は、その回転子及び/又は固定子の粉砕用表面(母材)を前処理として粗面化処理し、後処理として該粗面化処理された表面を耐摩耗処理することを特徴とする。
【0045】
本発明において使用する機械式粉砕機の回転子及び/又は固定子の粉砕用表面(母材)を前処理として粗面化処理することにより、回転子及び/又は固定子の粉砕用表面の表面粗さを適切な状態に制御でき、トナーの表面形状を任意にコントロールすることが可能となり、低温低湿環境下でも初期から良好な現像性、転写性、並びに安定した帯電性を有する長寿命なトナーが得られ、更には非画像部のカブリの発生が抑制され、トナーを現像剤担持体上に均一に塗布し得、トナー粒子を効率良く、均一に摩擦帯電し得るトナーが得られる。本発明で使用する機械式粉砕機の回転子及び/又は固定子の粉砕用表面の粗面化処理としては、公知の方法が用いられるが、この中でブラスト処理が最も好ましい。
【0046】
該ブラスト処理とは、粒状の研磨材を高速空気流に乗せてブラストノズルから噴射することによって行われる処理である。研磨材は、一般に角張った形状を有しているグリット(先鋭な稜角を持つ粒径)と呼ばれるものと、球状の形状を有しているショット(丸い球形)と呼ばれるものがある。本発明において回転子及び/又は固定子の粉砕用表面のブラスト処理としては、ショットによるブラスト、つまりショットブラスト処理が好ましい。
【0047】
即ち、本発明者が検討した結果、回転子及び/又は固定子の粉砕用表面を前処理としてショットブラスト処理し、該処理により回転子及び/又は固定子の粉砕用表面の表面粗さを、適切な状態に制御して機械式粉砕機を運転すれば、トナーの表面形状を任意にコントロールでき、低温低湿環境下でも初期から良好な現像性、転写性、並びに安定した帯電性を有する長寿命なトナーが得られ、更には非画像部のカブリの発生が抑制され、トナーを現像剤担持体上に均一に塗布し得、トナー粒子を効率良く、均一に摩擦帯電し得るトナーが得られる。
【0048】
即ち、回転子及び/又は固定子の粉砕用表面をショットブラスト処理することにより、回転子及び固定子の粉砕用表面の中心線平均粗さRaを2.0μm以上、より好ましくは2.0〜10.0μm、又、最大粗さRyを25.0μm以上、より好ましくは25.0〜60.0μm、又、十点平均粗さRzを20.0μm以上、より好ましくは20.0〜40.0μmとする。
【0049】
回転子及び固定子の粉砕用表面の中心線平均粗さRaを2.0μm以上、より好ましくは2.0〜10.0μm、又、最大粗さRyを25.0μm以上、より好ましくは25.0〜60.0μm、又、十点平均粗さRzを20.0μm以上、より好ましくは20.0〜40.0μmとすることにより、低温低湿環境下でも初期から良好な現像性、転写性、並びに安定した帯電性を有する長寿命なトナーが得られ、更には非画像部のカブリの発生が抑制され、トナーを現像剤担持体上に均一に塗布し得、トナー粒子を効率良く、均一に摩擦帯電し得るトナーが得ることができる。尚、ショットブラスト処理による回転子及び/又は固定子粉砕面の表面粗さの調整は、上記ショットブラスト処理作業における、研掃材(ブラスト材)の種類及び粒度、ブラスト圧力、ブラスト時間等を変更することにより可能である。
【0050】
尚、表面粗さの解析パラメータの値は、非接触で測定が可能なレーザーフォーカス変位計LT−81CC((株)キーエンス製)及び表面形状計測ソフトTres−ValleLite(三谷商事(株)社製)を使用して測定し、測定ポイントをランダムにずらしてそれぞれ数回測定し、その平均値から求めた。また、この時、基準長さの設定を8mm、カットオフ値の設定を0.8mm、移動速度の設定を90μm/secとして測定した。尚、表面粗さの解析パラメータの中で、中心線平均粗さRaは、粗さ曲部からその中心線の方向に基準長さLの部分を抜き取り、その抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をZ軸とし、粗さ曲線をZ=f(x)で表した時、以下の式で求めることにより決定する。
Ra=(1/L)・∫|f(x)|dx
【0051】
又、最大粗さRyは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂部と谷底部との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定することによって決定する。又、十点平均粗さRzは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底部から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和を求めることによって決定する。
【0052】
又、回転子及び/又は固定子の粉砕用表面をショットブラスト処理しただけの機械式粉砕機では、回転子及び/又は固定子の粉砕用表面の摩耗が短時間で発生し、トナー生産効率上好ましくなく、回転子及び/又は固定子の粉砕用表面の耐摩耗処理が必要となる。即ち、本発明者が検討した結果、回転子及び/又は固定子の粉砕用表面を前処理としてショットブラスト処理し、後処理として該ショットブラスト処理された表面(母材)を耐摩耗処理することにより、環境安定性(特に低温低湿環境下)に優れたトナーが得られるとともに、回転子及び固定子の粉砕用表面の摩耗を低下させ、長期に渡り安定的にトナーを粉砕することが可能となる。前記回転子及び/又は固定子の粉砕用表面の耐摩耗処理としては、公知の方法が用いられるが、この中で窒化による処理が最も好ましい。
【0053】
前記窒化とは、加工材料の耐摩耗性、耐疲労性を向上させることを目的とする表面硬化処理法で、適当な温度で適当な時間加熱し、加工材料の表面全体又は部分的に窒素を拡散させ、窒化層を形成させる熱処理である。即ち、回転子及び/又は固定子の粉砕用表面を前処理としてショットブラスト処理し、後処理として該ショットブラスト処理された表面を窒化処理することにより、環境安定性(特に低温低湿環境下)に優れたトナーが得られるとともに、回転子及び固定子の粉砕用表面の摩耗を低下させ、長期に渡り安定的にトナーを粉砕することが可能となり、トナー生産効率において好ましい。
【0054】
更に本発明のトナーの製造方法においては、上記表面処理により回転子及び固定子の粉砕用表面の耐摩耗性を向上させ、表面粗さを制御した機械式粉砕機で粉砕し、例えば、図4に示す形式の多分割気流式分級機(後に詳述する)により分級したトナーが、該トナーのBET法によって測定された単位体積当たりの比表面積Sb(m2/cm3)と、トナーを真球と仮定した際の重量平均径から算出した単位体積当たりの比表面積St(m2/cm3)の関係が、Sb/St≧1.8を満足していることが好ましく、更には1.8≦Sb/St≦2.5を満足していることことが好ましい。
【0055】
即ち、機械式粉砕機で粉砕し、例えば、図4に示す形式の多分割気流式分級機により分級したトナーのBET法によって測定された単位体積当たりの比表面積Sbと、トナーを真球と仮定した際の重量平均径(D4)から算出した単位体積当たりの比表面積St(St=6/D4)の関係が、Sb/St≧1.8であり、更には1.8≦Sb/St≦2.5を満足させることにより、低温低湿環境下でも初期から良好な現像性、転写性、並びに安定した帯電性を有する長寿命なトナーが得られ、更には非画像部のカブリの発生が抑制され、トナーを現像剤担持体上に均一に塗布し得、トナー粒子を効率良く、均一に摩擦帯電し得るトナーが得られる。
【0056】
尚、比表面積はBET法に従って、比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出した。又、トナーの平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型或いはコールターマルチサイザー(コールター社製)等を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフエイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。たとえば、ISOTONR−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
【0057】
測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフオン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記コールターカウンターTA−II型によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから、本発明に係わる体積分布から求めた体積基準の重量平均粒径(D4)、個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径(D1)を求めた。
【0058】
次に回転子及び/又は固定子の粉砕用表面を上記の表面処理を施し、回転子及び/又は固定子の粉砕用表面の表面粗さを上式の条件に制御した機械式粉砕機で粉砕原料を粉砕する際には、冷風発生手段321により、粉砕原料と共に、機械式粉砕機内に冷風を送風することが好ましい。更にその冷風の温度は0〜−18℃であることが好ましい。
【0059】
更に機械式粉砕機本体の機内冷却手段として、機械式粉砕機はジャケット構造316を有する構造とし、冷却水(好ましくはエチレングリコール等の不凍液)を通水することが好ましい。更に上記の冷風装置及びジャケット構造により、機械式粉砕機内の粉体導入口に連通する渦巻室212内の室温T1を0℃以下、より好ましくは−5〜−15℃、更に好ましくは−7〜−12℃とすることがトナー生産性という点から好ましい。
【0060】
粉砕機内の渦巻室の室温T1を0℃以下、より好ましくは−5〜−15℃、更に好ましくは−7〜−12℃とすることにより、熱によるトナーの表面変質を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。粉砕機内の渦巻室の室温T1が0℃を越えるの場合、粉砕時に熱によるトナーの表面変質や機内融着を起こしやすいのでトナー生産性という点から好ましくない。
【0061】
又、上記冷風発生手段321で使用する冷媒としては、地球全体の環境問題という点から代替フロンが好ましい。代替フロンとしては、R134a、R404A、R407c、R410A、R507A、R717等が挙げられるが、この中で、省エネルギー性や安全性という点から、特にR404Aが好ましい。尚、冷却水(好ましくはエチレングリコール等の不凍液)は、冷却水供給口317よりジヤケット内部に供給され、冷却水排出口318より排出される。
【0062】
又、機械式粉砕機内で生成した微粉砕物は、機械式粉砕機の後室320を経由して粉体排出口302から機外へ排出される。その際、機械式粉砕機の後室320の室温T2が30〜60℃であることがトナー生産性という点から好ましい。機械式粉砕機の後室320の室温T2を30〜60℃とすることにより、熱によるトナーの表面変質を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。機械式粉砕機の温度T2が30℃より低い場合、粉砕原料が粉砕されずにショートパスを起こしている可能性があり、トナー性能という点から好ましくない。又、60℃より高い場合、粉砕原料が粉砕時に過粉砕されている可能性があり、熱によるトナーの表面変質や機内融着を起こしやすいのでトナー生産性という点から好ましくない。
【0063】
又、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕する際に、機械式粉砕機の渦巻室212の室温T1と後室320の室温T2の温度差ΔT(T2−T1)を40〜70℃とすることが好ましく、より好ましくは42〜67℃、更に45〜65℃とすることがトナー生産性という点から好ましい。機械式粉砕機の温度T1と温度T2とのΔTを40〜70℃、より好ましくは42〜67℃、更に好ましくは45〜65℃とすることにより、熱によるトナーの表面変質を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。機械式粉砕機の温度T1と温度T2とのΔTが40℃より小さい場合、粉砕原料が粉砕されずにショートパスを起こしている可能性があり、トナー性能という点から好ましくない。又、70℃より大きい場合、粉砕原料が粉砕時に過粉砕されている可能性があり、熱によるトナーの表面変質や機内融着を起こしやすいのでトナー生産性という点から好ましくない。
【0064】
又、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕する際に、結着樹脂のガラス転移点(Tg)は45〜75℃、更には55〜65℃が好ましい。又、機械式粉砕機の渦巻室212の室温T1は、Tgに対して0℃以下であり、且つTgよりも60〜75℃低くすることがトナー生産性という点から好ましい。機械式粉砕機の渦巻室212の室温T1を0℃以下とし、且つTgよりも60〜75℃低くすることにより、熱によるトナーの表面変質を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。又、機械式粉砕機の後室320の室温T2は、Tgよりも5〜30℃、更には10〜20℃低いことが好ましい。機械式粉砕機の後室320の室温T2をTgよりも5〜30℃、より好ましくは10〜20℃低くすることにより、熱によるトナーの表面変質を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。
【0065】
尚、本発明において、結着樹脂のガラス転移点Tgは、示差熱分析装置(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)を用い、下記の条件で測定した。
試料:5〜20mg、好ましくは10mg
昇温Iで測定されるTgを測定値とする。
測定法:試料をアルミパン中にいれ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる。吸熱ピークが出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点をガラス転移点Tgとした。
【0066】
又、回転する回転子314の先端周速としては80〜180m/secであることが好ましく、より好ましくは90〜170m/sec、更に好ましくは100〜160m/secとすることがトナー生産性という点から好ましい。回転する回転子314の周速を80〜180m/sec、より好ましくは90〜170m/sec、更に好ましくは100〜160m/secとすることで、トナーの粉砕不足や過粉砕を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。回転子の周速が80m/secより遅い場合、粉砕原料が粉砕されずにショートパスを起こしやすいのでトナー性能という点から好ましくない。又、回転子314の周速が180m/secより早い場合、装置自体の負荷が大きくなるのと同時に、粉砕原料が粉砕時に過粉砕され、熱によるトナーの表面変質や機内融着を起こしやすいのでトナー生産性という点から好ましくない。
【0067】
又、回転子314と固定子310との間の最小間隔は0.5〜10.0mmであることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0mm、更に好ましくは1.0〜3.0mmとする。回転子314と固定子310との間の間隔を0.5〜10.0mm、より好ましくは1.0〜5.0mm、更に好ましくは1.0〜3.0mmとすることで、トナーの粉砕不足や過粉砕を抑えることができ、効率良く粉砕原料を粉砕することができる。回転子314と固定子310との間の間隔が10.0mmより大きい場合、粉砕原料が粉砕されずにショートパスを起こしやすいのでトナー性能という点から好ましくない。又、回転子314と固定子310との間の間隔が0.5mmより小さい場合、装置自体の負荷が大きくなるのと同時に、粉砕原料が粉砕時に過粉砕され熱によるトナーの表面変質や機内融着を起こしやすいのでトナー生産性という点から好ましくない。
【0068】
更に粉砕後、慣性分級方式のエルボージェット、遠心力分級方式のミクロプレックス、DSセパレーター等の分級機を用い、トナーを分級して均粒子径3〜15μmのトナーを得る。この中で分級機として、多分割気流式分級機が特に好ましい。
【0069】
好ましい多分割気流式分級機の一例として、図4(断面図)に示す形式の装置を一具体例として説明する。
図4において、側壁22及びGブロック23は分級室の一部を形成し、分級エッジブロック24及び25は分級エッジ17及び18を具備している。Gブロック23は左右に設置位置をスライドさせることが可能である。又、分級エッジ17及び18は、軸17a及び18aを中心にして、回動可能であり、分級エッジを回動して分級エッジ先端位置を変えることができる。各分級エッジブロック24及び25は左右に設置位置をスライドさせることが可能であり、それにともなってそれぞれのナイフエッジ型の分級エッジ17及び18も左右にスライドする。この分級エッジ17及び18により、分級室32の分級ゾーンは3分画されている。
【0070】
原料粉体を導入するための原料供給口40を、原料供給ノズル16の最後端部に有し、該原料供給ノズル16の後端部に高圧エアー供給ノズル41と原料粉体導入ノズル42とを有し、且つ分級室32に開口部を有する原料供給ノズル16を側壁22の右側に設け、該原料供給ノズル16の下部接線の延長方向に対して長楕円弧を描くようにコアンダブロック26が設置されている。分級室32の左部ブロック27は、分級室32の右側方向にナイフエッジ型の入気エッジ19を具備し、更に分級室32の左側には分級室32に開口する入気管14及び15を設けてある。又、図4に示すように入気管14及び15には、不図示のダンパーのごとき第1気体導入調節手段及び第2気体導入調節手段と静圧計及び静圧計を設けてある。
【0071】
分級エッジ17、18、Gブロック23及び入気エッジ19の位置は、被分級処理原料であるトナーの種類及び所望の粒径により調整される。又、分級室32の上面にはそれぞれの分画域に対応させて、分級室内に開口する排出口11、12及び13を有し、排出口11、12及び13にはパイプの如き連通手段が接続されており、それぞれにバルブ手段のごとき開閉手段を設けてよい。原料供給ノズル16は直角筒部と角錘筒部とから成り、直角筒部の内径と角錘筒部の最も狭い箇所の内径の比を20:1から1:1、好ましくは10:1から2:1に設定すると、良好な導入速度が得られる。
【0072】
以上のように構成してなる多分割分級域での分級操作は、例えば、次のようにして行なう。即ち、排出口11、12及び13の少なくとも1つを介して分級室内を減圧し、分級室内に開口部を有する原料供給ノズル16中を該減圧によって流動する気流と高圧エアー供給ノズル41から噴射される圧縮エアーのエゼクター効果により、好ましくは流速10〜350m/秒の速度で粉体を原料供給ノズル16を介して分級室に噴出し、分散する。
【0073】
分級室に導入された粉体中の粒子はコアンダブロック26のコアンダ効果による作用と、その際流入する空気の如き気体の作用とにより湾曲線を描いて移動し、それぞれの粒子の粒径及び慣性力の大小に応じて、大きい粒子(粗粒子)は気流の外側、即ち分級エッジ18の外側の第1分画、中間の粒子は分級エッジ18と17の間の第2分画、小さい粒子は分級エッジ17の内側の第3分画に分級され、分級された大きい粒子は排出口11より排出され、分級された中間の粒子は排出口12より排出され、分級された小さい粒子は排出口13よりそれぞれ排出される。本例による粉体の分級において、分級点は粉体が分級室32内へ飛び出す位置であるコアンダブロック26の下端部分に対する分級エッジ17及び18のエッジ先端位置によって主に決定される。更に分級点は分級気流の吸引流量或いは原料供給ノズル16からの粉体の噴出速度等の影響を受ける。
【0074】
以上説明した多分割気流式分級機は、特に電子写真法による画像形成法に用いられるトナー又はトナー用着色樹脂粉体を分級する場合に有効である。更に図4に示す形式の多分割気流式分級機では、原料供給ノズル、原料粉体導入ノズル、高圧エアー供給ノズルを多分割気流式分級機の上面部に具備し、該分級エッジを具備する分級エッジブロックが、分級域の形状を変更できるように、その位置を変更し得るようにしたため、従来の気流式分級装置よりも分級精度を飛躍的に向上させることができる。尚、分級工程で分級されて発生したトナー粗粉は、再度粉砕工程に戻して粉砕する。又、分級工程で発生した微粉は、トナー原料の配合工程に戻して再利用してもよい。
【0075】
更に本発明のトナー製造方法においては、上記のようにして得られたトナー粒子に、少なくとも平均粒径が50nm以下の無機微粒子を外添剤として外添する。トナーに外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナーと公知の各種外添剤を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速攪拌機を外添機として用いて、攪拌・混合することが好ましい。この際、外添機内部で発熱を生じ、凝集物を生成し易くなるので、外添機の容器部周囲を水で冷却する等の手段で温度調整をする方が好ましい。
【0076】
以上説明したきたように、本発明によれば、回転子及び/又は固定子の粉砕用表面を前処理としてショットブラスト処理し、後処理として該ショットブラスト処理された表面を窒化処理することにより、粉砕用表面の摩耗を低下させ、長期に渡り安定的にトナーを粉砕することが可能となる。又、トナーの表面形状を任意にコントロールでき、特に低温低湿環境下でも初期から良好な現像性、転写性、並びに安定した帯電性を有する長寿命なトナーが得られ、更には非画像部のカブリの発生が抑制され、トナーを現像剤担持体上に均一に塗布し得、トナー粒子を効率良く、均一に摩擦帯電し得るトナーを得ることができる。
【0077】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
結着樹脂(ポリエステル樹脂):100質量部
(Tg59℃、酸価20mgKOH/g、水酸基価30mgKOH/g、分子量:Mp6800、Mn2900、Mw53000)
磁性酸化鉄:90質量部
(平均粒子径0.20μm、795.8kA/m磁場での特性Hc9.1kA/m、σs82.1Am2/kg、σr11.4Am2/kg)
モノアゾ金属錯体(負荷電制御剤):2質量部
低分子量エチレン−プロピレン共重合体:3質量部
【0078】
上記の処方の材料を、ヘンシェルミキサー(FM75型、三井三池化工機(株)製)でよく混合した後、温度150℃に設定した2軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー製造用粉砕原料(粗粉砕物)を得た。得られた粉砕原料を図1に示す機械式粉砕機301(ターボ工業社製ターボミルT250−RS型を以下の通り改造した改造機)で微粉砕し、得られた微粉砕品を図4に示す多分割気流式分級機1にて分級した。
【0079】
本実施例では、機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面をショットブラスト処理により、その表面粗さ、中心線平均粗さRaを3.5μm、最大粗さRyを27.0μm、十点平均粗さを25.7μmとし、窒化により耐摩耗処理を行った。又、回転子314の周速を115m/s、回転子314と固定子310の間隔を1.5mm、粉砕供給量を15kg/Hrとして粉砕した。尚、この際、冷風温度は15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は40℃、T1とT2の温度差ΔTは50℃であった。又、Tg−T1は69℃、Tg−T2は19℃であった。又、この時に機械式粉砕機301で粉砕して得られた微粉砕品は、重量平均径が7.3μmであった。
【0080】
次に上記の機械式粉砕機301で粉砕して得られた微粉砕品を、図4の構成を有する気流式分級機1に導入し分級することで、重量平均粒径が7.3μmのトナーを得た。得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは1.75m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.82m2/cm3であった。従ってSb/Stは2.1であった。これは機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面の表面粗さを適度に制御したためと考えられる。このトナー100質量部に対して、疎水性シリカ(比表面積200m2/g)1.0質量部及び複合酸化物(M−1)3.0質量部をヘンシェルミキサーにて外添混合して評価用トナー1とした。このトナーを用いてキャノン製NP6350複写機を使用して以下の項目の評価を行なった。
【0081】
[評価−1]
評価用トナーを現像器中に330g入れ、低温低湿室(15℃、50%)に一晩(12時間以上)放置する。外部駆動装置を用いて、現像剤担持体ギアを回転させる。目視にて現像剤担持体表面のトナー塗布状態を回転開始から10分間観察する。評価レベルは以下に示す。本実施例においては、表2に示したように担持体表面状態は極めて均一であった。
○:担持体表面状態は極めて均一である。
○△:担持体表面状態は均一であるが、極一部にさざ波模様が見える。
△:担持体表面の一部分にさざ波模様が見える。
△×:担持体表面全体にさざ波模様が見える。
×:担持体表面のさざ波が成長して、一部凹凸がはっきりわかる。
××:担持体表面の凹凸が全面に広がりはっきりわかる。
【0082】
[評価−2]
評価用トナーを現像器中に330g入れ、低温低湿室(15℃、10%)に一晩(12時間以上)放置する。濃度評価用チャートを使用して200枚の画出しを行なう。この前後でべタ白画像におけるカブリを測定する。評価レベルは以下に示す。カブリ測定用反射測定機REFLECTMETER(東京電気(株))にて、上記の白画像及び未使用紙の反射率を測定し、両者の差をカブリとする。本実施例においては、表2に示したようにカブリの差は0.1%以下であった。
未使用紙反射率−ベタ白反射率=カブリ%
○:カブリ0.1%未満
○△:カブリ0.1%以上0.5%未満
△:カブリ0.5%以上1.0%未満
△×:カブリ1.0%以上1.5%未満
×:カブリ1.5%以上2.0%未満
××:カブリ2.0%以上
【0083】
運転終了後の回転子及び固定子の粉砕用表面の摩耗状況については、10倍及び50倍のルーペを使用して目視で確認し、下記の基準で判断した。本実施例においては、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
○:回転子及び固定子の粉砕用表面に摩耗がない。
△:回転子及び固定子の粉砕用表面に摩耗がやや見られるが実用可。
×:回転子及び固定子の粉砕用表面に摩耗が顕著に見られた。
【0084】
又、本実施例の機械式粉砕機の回転子及び固定子の粉砕用表面の耐摩耗処理である窒化処理を施したテストピースを作成し、ハリマセラミックス(株)内テスト装置:ASTM−C704を使用し、耐摩耗テストを行った。テスト方法としては、上記のテスト装置を使用し、4.48kPaの圧縮空気により整粒炭化けい素粒1000gを6回(計6000g)ノズルを適して一定角度にテストピース表面に噴射し、摩耗を受けたテストピースの重量を測定することにより、耐摩耗性を確認した。
その結果、テスト前後のテストピース重量の減少率は0.3%以下であり、後述する比較例1と比較すると3倍程度の耐摩耗性があることが確認できた。
【0085】
実施例2
機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面の表面粗さ、中心線平均粗さRaを6.8μm、最大粗さRyを45.4μm、十点平均粗さを31.2μmとした以外は実施例1と同様にして評価用トナー2を得た。尚、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は42℃、T1とT2の温度差ΔTは52℃であった。又、Tg−T1は69℃、Tg−T2は17℃であった。又、この時に機械式粉砕機301で粉砕して得られた微粉砕品は、重量平均径が7.3μmであり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.2μmであった。
【0086】
得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは1.72m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.83m2/cm3であった。従ってSb/Stは2.1であった。これは機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面の表面粗さを適度に制御したためと考えられる。得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー2とした。その結果、表2に示すように、評価1及び評価2とも良好な結果が得られた。又、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0087】
実施例3
機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面の表面粗さ、中心線平均粗さRaを8.2μm、最大粗さRyを56.2μm、十点平均粗さを39.9μmとした以外は実施例1と同様にして評価用トナー3を得た。尚、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は43℃、T1とT2の温度差ΔTは53℃であった。又、Tg−T1は69℃、Tg−T2は16℃であった。又、この時に機械式粉砕機301で粉砕して得られた微粉砕品は、重量平均径が7.6μmであり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.4μmであった。
【0088】
得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは1.77m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.81m2/cm3であった。従ってSb/Stは2.2であった。これは機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面の表面粗さを適度に制御したためと考えられる。得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー3とした。その結果、表2に示すように、評価1及び評価2とも良好な結果が得られた。又、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0089】
実施例4
機械式粉砕機への粉砕原料の供給量を20kg/Hrとした以外は実施例1と同様にして評価用トナー4を得た。尚、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は52℃、T1とT2の温度差ΔTは62℃であった。又、Tg−T1は69℃、Tg−T2は7℃であった。又、この時に機械式粉砕機301で粉砕して得られた微粉砕品は、重量平均径が7.7μmであり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.6μmであった。
【0090】
得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは1.45m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.79m2/cm3であった。従ってSb/Stは1.8であった。これは機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面の表面粗さを適度に制御したためと考えられる。得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー4とした。その結果、表2に示すように、評価1及び評価2とも良好な結果が得られた。又、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0091】
実施例5
機械式粉砕機への粉砕原料の供給量を20kg/Hrとした以外は実施例2と同様にして評価用トナー5を得た。尚、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は52℃、T1とT2の温度差ΔTは62℃であった。又、Tg−T1は69℃、Tg−T2は7℃であった。又、この時に機械式粉砕機301で粉砕して得られた微粉砕品は、重量平均径が7.8μmであり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.6μmであった。
【0092】
得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは1.51m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.79m2/cm3であった。従ってSb/Stは1.9であった。これは機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面の表面粗さを適度に制御したためと考えられる。得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー5とした。その結果、表2に示すように、評価1及び評価2とも良好な結果が得られた。又、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0093】
実施例6
機械式粉砕機への粉砕原料の供給量を20kg/Hrとした以外は実施例3と同様にして評価用トナー6を得た。尚、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は54℃、T1とT2の温度差ΔTは64℃であった。又、Tg−T1は69℃、Tg−T2は5℃であった。又、この時に機械式粉砕機301で粉砕して得られた微粉砕品は、重量平均径が7.8μmであり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.7μmであった。
【0094】
得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは1.49m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.78m2/cm3であった。従ってSb/Stは1.9であった。これは機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面の表面粗さを適度に制御したためと考えられる。得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー6とした。その結果、表2に示すように、評価1及び評価2とも良好な結果が得られた。又、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0095】
実施例7
機械式粉砕機への粉砕原料の供給量を10kg/Hrとした以外は実施例1と同様にして評価用トナー7を得た。尚、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は31℃、T1とT2の温度差ΔTは41℃であった。又、Tg−T1は69℃、Tg−T2は28℃であった。又、この時に機械式粉砕機301で粉砕して得られた微粉砕品は、重量平均径が6.9μmであり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が6.8μmであった。
【0096】
得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは2.08m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.88m2/cm3であった。従ってSb/Stは2.4であった。これは機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面の表面粗さを適度に制御したためと考えられる。得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー7とした。その結果、表2に示すように、評価1及び評価2とも良好な結果が得られた。又、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0097】
実施例8
機械式粉砕機への粉砕原料の供給量を10kg/Hrとした以外は実施例2と同様にして評価用トナー8を得た。尚、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は31℃、T1とT2の温度差ΔTは41℃であった。又、Tg−T1は69℃、Tg−T2は28℃であった。又、この時に機械式粉砕機301で粉砕して得られた微粉砕品は、重量平均径が7.0μmであり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が6.9μmであった。
【0098】
得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは1.96m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.87m2/cm3であった。従ってSb/Stは2.3であった。これは機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面の表面粗さを適度に制御したためと考えられる。得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー8とした。その結果、表2に示すように、評価1及び評価2とも良好な結果が得られた。又、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0099】
実施例9
機械式粉砕機への粉砕原料の供給量を10kg/Hrとした以外は実施例3と同様にして評価用トナー9を得た。尚、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は32℃、T1とT2の温度差ΔTは42℃であった。又、Tg−T1は69℃、Tg−T2は27℃であった。又、この時に機械式粉砕機301で粉砕して得られた微粉砕品は、重量平均径が7.2μmであり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が6.9μmであった。
【0100】
得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは1.98m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.87m2/cm3であった。従ってSb/Stは2.3であった。これは機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面の表面粗さを適度に制御したためと考えられる。得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー9とした。その結果、表2に示すように、評価1及び評価2とも良好な結果が得られた。又、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0101】
実施例10
機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕用表面の表面粗さ、中心線平均粗さRaを12.6μm、最大粗さRyを65.8μm、十点平均粗さを41.8μmとした以外は実施例1と同様にして評価用トナー10を得た。尚、粉砕原料Aを機械式粉砕機で粉砕した際、冷風温度は−15℃、機械式粉砕機内の渦巻室内温度T1は−10℃、後室内温度T2は45℃、T1とT2の温度差ΔTは55℃であった。又、Tg−T1は69℃、Tg−T2は14℃であった。又、この時に機械式粉砕機301で粉砕して得られた微粉砕品は、重量平均径が8.1μmであり、分級工程で分級された中粉体(分級品)は、重量平均粒径が7.6μmであった。
【0102】
得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは2.05m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.79m2/cm3であった。従ってSb/Stは2.6であった。得られたトナーを実施例1と同様に外添混合し評価用トナー10とした。その結果、表2に示すように、評価1及び評価2とも実施例1に比べ、レベルダウンしているものの実用範囲内であるという結果が得られた。尚、運転終了後機内点検したところ、回転子及び固定子の摩耗は発生していなかった。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
比較例1
機械式粉砕機内の回転子及び固定子の粉砕用表面を窒化処理しない以外は実施例1と同様にして比較トナー1を得た。運転終了後機内点検したところ、表3に示すように回転子及び固定子の粉砕用表面の一部に摩耗が見られ、実施例1と比較すると耐摩耗性において劣る結果であり、満足な結果は得られなかった。
【0107】
又、本比較例1の機械式粉砕機の回転子及び固定子の粉砕用表面と同様に、耐摩耗処理を施していないテストピースを作成し、実施例1と同様に耐摩耗テストを行った。その結果、テスト前後のテストピース重量の減少率は1.0%以上であり、実施例1と比較すると耐摩耗性は1/3であり、機械式粉砕機の回転子及び固定子の粉砕用表面に耐摩耗処理(特に窒化処理)を施さないと、長期に渡り安定的にトナーを粉砕することが困難であることが確認できた。
【0108】
比較例2
機械式粉砕機内の回転子及び固定子の粉砕用表面を窒化処理しない以外は実施例2と同様にして比較トナー2を得た。運転終了後機内点検したところ、表3に示すように回転子及び固定子の粉砕用表面の一部に摩耗が見られ、実施例2と比較すると耐摩耗性において劣る結果であり、満足な結果は得られなかった。
【0109】
比較例3
機械式粉砕機内の回転子及び固定子の粉砕用表面を窒化処理しない以外は実施例3と同様にして比較トナー3を得た。運転終了後機内点検したところ、表3に示すように回転子及び固定子の粉砕用表面の一部に摩耗が見られ、実施例3と比較すると耐摩耗性において劣る結果であり、満足な結果は得られなかった。
【0110】
比較例4
実施例で使用した粉砕原料を図5に示す装置システムで粉砕及び分級を行った。即ち、粉砕手段として図7に示した衝突式気流粉砕機を用い、第1分級手段及び第2分級手段は図6の構成のものを用いた。
【0111】
図6において、401は筒状の本体ケーシングを示し、402は下部ケーシングを示し、その下部に粗粉排出用のホッパー403が接続されている。本体ケーシング401の内部は、分級室404が形成されており、この分級室404の上部に取り付けた環状の案内室405と中央部が高くなる円錐状(傘状)の上部カバー406によって閉塞されている。
【0112】
分級室404と案内室405の間の仕切壁に円周方向に配列する複数のルーバー407を設け、案内室405に送り込まれた粉体材料とエアーを各ルーバー407の間より分級室404に旋回させて流入させる。案内室405の上部は、円錐状の上部ケーシング413と円錐状の上部カバー406の間の空間からなっている。本体ケーシング401の下部には円周方向に配列する分級ルーバー409を設け、外部から分級室404へ旋回流を起こす分級エアーを分級ルーバー409を介して取り入れている。
【0113】
分級室404の底部に、中央部が高くなる円錐状(傘状)の分級板410を設け、該分級板410の外周囲に粗粉排出口411を形成する。又、分級板410の中央部には微粉排出シュート412を接続し、該シュート412の下端部をL字形に屈曲し、この屈曲端部を下部ケーシング402の側壁より外部に位置させる。更に該シュートはサイクロンや集塵機のような微粉回収手段を介して吸引ファンに接続しており、該吸引ファンにより分級室404に吸引力を作用させ、該ルーバー409間より分級室404に流入する吸引エアーによって分級に要する旋回流を起こしている。
【0114】
気流分級機は上記の構造から成り、供給筒408より案内室405内に上記のトナー製造用の粗砕物を含むエアーを供給すると、この粗砕物を含むエアーは、案内室405から各ルーバー407間を通過して分級室404に旋回しながら均一の濃度で分散されながら流入する。分級室404内に旋回しながら流入した粗砕物は、微粉排出シュート412に接続した吸引ファンにより生起された、分級室下部の分級ルーバー409間より流入する吸引エアー流に乗って旋回を増し、各粒子に作用する遠心力によって粗粉と微粉とに遠心分離され、分級室404内の外周部を旋回する粗粉は粗粉排出口411より排出され、下部のホッパー403より排出される。
【0115】
又、分級板410の上部傾斜面に沿って中央部へと移行する微粉は、微粉排出シュート412により排出される。テーブル式の第1定量供給機21にて粉砕原料を15.0kg/Hrの割合でインジェクションフィーダー35にて、供給管408を介して図6に示した気流分級機に供給し、分級された粗粉は粗粉排出ホッパー403を介して、図7に示した衝突式気流粉砕機の被粉砕物供給口165より供給され、圧力6.0kg/cm2(G)、6.0Nm3/minの圧縮空気を用いて、粉砕された後、原料導入部にて供給されているトナー粉砕原料と混合されながら、再び該気流分級機に循環し、閉回路粉砕を行い、分級された細粉は排気ファンからの吸引エアーに同伴されながら図6の第2分級手段に導入させ、図5のサイクロン31にて捕集される。
【0116】
その結果、重量平均径7.4μmの中粉体を得た。得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは2.43m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.81m2/cm3であった。従ってSb/Stは3.0であった。この中粉体を実施例1と同様に外添混合処理を行ない、比較評価用トナー4を得た。その結果、表4に示すように評価1及び評価2とも実施例1と比較すると大きく劣る結果であり、満足な結果は得られなかった。
【0117】
比較例5
テーブル式の第1定量供給機21からの粉砕原料の供給量を20.0kg/Hrとした以外は比較例4と同様にして図5に示す装置システムで粉砕及び分級を行った。即ち、粉砕手段として図7に示した衝突式気流粉砕機を用い、第1分級手段及び第2分級手段は図6の構成のものを用いた。
【0118】
即ち、本比較例においては、テーブル式の第1定量供給機21にて粉砕原料を20.0kg/Hrの割合でインジエクションフィーダー35にて、供給管408を介して図6に示した気流分級機に供給し、分級された粗粉は粗粉排出ホッパー403を介して、図7に示した衝突式気流粉砕機の被粉砕物供給口165より供給され、圧力6.0kg/cm2(G)、6.0Nm3/minの圧縮空気を用いて、粉砕された後、原料導入部にて供給されているトナー粉砕原料と混合されながら、再び該気流分級機に循環し、閉回路粉砕を行い、分級された細粉は排気ファンからの吸引エアーに同伴されながら図6の第2分級手段に導入させ、図5のサイクロン31にて捕集される。
【0119】
その結果、重量平均径7.9μmの中粉体を得た。得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは2.29m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.81m2/cm3であった。従ってSb/Stは3.0であった。この中粉体を実施例1と同様に外添混合処理を行ない、比較評価用トナー5を得た。その結果、表4に示すように評価1及び評価2とも実施例1と比較すると大きく劣る結果であり、満足な結果は得られなかった。
【0120】
比較例6
テーブル式の第1定量供給機21からの粉砕原料の供給量を10.0kg/Hrとした以外は比較例4と同様にして図5に示す装置システムで粉砕及び分級を行った。即ち、粉砕手段として図7に示した衝突式気流粉砕機を用い、第1分級手段及び第2分級手段は図6の構成のものを用いた。
【0121】
即ち、本比較例においては、テーブル式の第1定量供給機21にて粉砕原料を10.0kg/Hrの割合でインジェクションフィーダー35にて、供給管408を介して図6に示した気流分級機に供給し、分級された粗粉は粗粉排出ホッパー403を介して、図5に示した衝突式気流粉砕機の被粉砕物供給口165より供給され、圧力6.0kg/cm2(G)、6.0Nm3/minの圧縮空気を用いて、粉砕された後、原料導入部にて供給されているトナー粉砕原料と混合されながら、再び該気流分級機に循環し、閉回路粉砕を行い、分級された微粉は排気ファンからの吸引エアーに同伴されながら図6の第2分級手段に導入され、サイクロン31にて捕集される。
【0122】
その結果、重量平均径6.9μmの中粉体を得た。得られたトナーの体積当りのBET比表面積Sbは2.77m2/cm3であり、体積当りの理論比表面積Stは0.81m2/cm3であった。従ってSb/Stは3.2であった。この中粉体を実施例1と同様に外添混合処理を行ない、比較評価用トナー6を得た。その結果、表4に示すように評価1及び評価2とも実施例1と比較すると大きく劣る結果であり、満足な結果は得られなかった。
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
【発明の効果】
以上説明したきたように、本発明によれば、回転子及び固定子の粉砕用表面を前処理として粗面化処理し、後処理として該粗面化処理された表面を耐摩耗処理することにより、粉砕用表面の摩耗を低下させ、長期に渡り安定的にトナーを粉砕することが可能なトナーの製造方法が提供される。
【0126】
更に本発明によれば、上記の表面処理により、トナーの表面形状を任意にコントロールでき、特に低温低湿環境下でも初期から良好な現像性、転写性、並びに安定した帯電性を有する長寿命なトナーが得られ、更には非画像部のカブリの発生が抑制され、トナーを現像剤担持体上に均一に塗布し得、トナー粒子を効率良く、均一に摩擦帯電し得るトナーを得られるトナーの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトナーの粉砕工程において使用される一例の機械式粉砕機の概略断面図である。
【図2】図1におけるD−D’面での概略的断面図である。
【図3】図1に示す回転子の斜視図である。
【図4】本発明のトナーの分級工程に好ましく用いられる多分割気流式分級装置の概略断面図である。
【図5】従来の製造方法を示すシステム図である。
【図6】従来の第1分級手段又は第2分級手段に用いられる分級機の一例の概略断面図である。
【図7】従来の衝突式気流粉砕機の概略断面図である。
【符号の説明】
[図1・2・3]
212:渦巻室
219:パイプ
220:ディストリビュータ
222:バグフィルター
224:吸引フィルター
229:捕集サイクロン
301:機械式粉砕機
302:粉体排出口
310:固定子
311:粉体投入口
312:回転軸
313:ケーシング
314:回転子
315:第1定量供給機
316:ジャケット
317:冷却水供給口
318:冷却水排出口
320:後室
[図4]
1:多分割分級機
11,12,13:排出口
11a,12a,13a:排出導管
16:原料供給ノズル
17,18,117,118:分級エッジ
19:入気エッジ
22,23:側壁
24,25:分級エッジブロック
26:コアンダブロック
27:左部ブロック
30:分級域
32:分級室
40:原料供給口
41:高圧エアー供給ノズル
42:原料粉体導入ノズル
[図5]
1:第1分級機
21:第1定量供給機
22:第2分級機
23、31:捕集サイクロン
28:気流式微粉砕機
33:中粉体(製品)
35:インジェクションフィーダー
158,159:排出管
[図6]
401:本体ケーシング
402:下部ケーシング
403:ホッパー
404:分級室
405:案内室
406:上部カバー
407:ルーバー
408:供給筒
409:分級ルーバー
410:分級板
411:粗粉排出口
412:微粉排出シュート
413:上部ケーシング
[図7]
161:高圧気体供給ノズル
162:加速管
163:加速管出口
164:衝突部材
165:粉砕原料供給日
166:衝突面
167:粉砕物排出口
168:粉砕室
Claims (19)
- 結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を冷却した後、冷却物を粉砕手段によって粉砕して微粉砕物を得、得られた該微粉砕物を分級してトナーを生成させるトナーの製造方法において、
上記粉砕手段が、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転体である回転子と、該回転子表面と一定間隔を保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを有し、且つ上記間隔を保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている機械式粉砕機であり、
上記回転子及び/又は固定子の表面がショットブラスト処理によって粗面化処理され、該粗面化処理された表面が耐摩耗処理されており、
得られるトナーが、該トナーのBET法によって測定された単位体積当たりの比表面積Sb(m 2 /cm 3 )と、トナーを真球と仮定した際の重量平均径から算出した単位体積当たりの比表面積St(m 2 /cm 3 )との関係が下記条件を満足していることを特徴とするトナーの製造方法。
Sb/St≧1.8 - 回転子及び/又は固定子表面の粗面化処理は、ブラスト処理であり、ブラスト処理後の耐摩耗処理は、窒化処理である請求項1に記載のトナーの製造方法。
- 回転子及び/又は固定子表面の表面粗さが下記条件を満足する請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
中心線平均粗さ:Ra≧2.0μm
最大粗さ :Ry≧25.0μm
十点平均粗さ :Rz≧20.0μm - 回転子及び/又は固定子表面の表面粗さが下記条件を満足する請求項3に記載のトナーの製造方法。
中心線平均粗さRa:2.0≦Ra≦10.0μm
最大粗さRy :25.0≦Ry≦60.0μm
十点平均粗さRz :20.0≦Rz≦40.0μm - 得られるトナーが、結着樹脂100質量部に対し、磁性体60〜200質量部を含有する磁性トナーである請求項1〜4のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 混練物の冷却物を、冷風と共に機械式粉砕機内に導入する請求項1〜5のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 冷風の温度が0〜−18.0℃である請求項6に記載のトナーの製造方法。
- 機械式粉砕機は、機内冷却用の冷却手段を具備している請求項1〜7のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 機械式粉砕機は、機内冷却用のジャケットを具備しており、ジャケット内に冷却水を通しながら粉砕原料を粉砕する請求項1〜8のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 機械式粉砕機は、粉体導入口に連通して渦巻室を有し、渦巻室の室温T1が温度0℃以下である請求項1〜9のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 機械式粉砕機の渦巻室の室温T1が、温度−5〜−15℃である請求項10に記載のトナーの製造方法。
- 機械式粉砕機の渦巻室の室温T1が、温度−7〜−12℃である請求項10に記載のトナーの製造方法。
- 機械式粉砕機内で生成した微粉砕物は、機械式粉砕機の後室を経由して粉体排出口から機外へ排出され、該後室の室温T2が温度30〜60℃である請求項10〜12のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 室温T2と室温T1との温度差ΔT(T2−T1)が、40〜70℃である請求項10〜13のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 室温T2と室温T1との温度差ΔT(T2−T1)が、42〜67℃である請求項10〜13のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 室温T2と室温T1との温度差ΔT(T2−T1)が、45〜65℃である請求項10〜13のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 結着樹脂のガラス転移点(Tg)が45〜75℃であり、機械式粉砕機の渦巻室の室温T1が0℃以下であり、且つTgよりも60〜75℃低くなるように温調する請求項10〜16のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 結着樹脂のTgが45〜75℃であり、機械式粉砕機の後室の室温T2が上記Tgよりも5〜30℃低くなるように温調する請求項13〜17のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 回転子の先端周速が80〜180m/secであり、回転子と固定子との間の最小間隔が0.5〜10.0mmである請求項1〜18のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
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