JP4496748B2 - 電子放出素子及びそれを用いた電子素子 - Google Patents

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Description

本発明は、ディスプレイ、電子銃、蛍光管、及び真空管等の他、種々のパワーデバイスに適用可能な電子放出素子及びそれを用いた電子素子に関する。
従来の電子放出素子の一例として、下記の特許文献1に記載されたものがある。この電子放出素子は、ダイヤモンドの表面に設けられた電子供給部(金属層)と電子入射板(アノード)との間に所定の電圧を印加することで、ダイヤモンドの表面の電子放出部から電子入射板に向けて電子を放出するものである。
特開2001−266736号公報
しかしながら、上述した従来の電子放出素子にあっては、電子供給部がエミッタ用電極として機能しているので、ダイヤモンドの表面の電子放出部から電子を放出させるためには、上記所定の電圧を比較的高くする必要がある。
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電子を放出するためにアノードとの間に印加する電圧を低くすることができる電子放出素子及びそれを用いた電子素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る電子放出素子は、略真空中においてアノードとの間に電圧が印加されることにより電子を放出する電子放出素子であって、n型ダイヤモンド層を含むダイヤモンド層、ダイヤモンド層の表面に対して電子の放出側に配置され、電子通過開口が形成されたゲート電極とを備え、n型ダイヤモンド層の抵抗率は、10 Ω・cm以下であり、ゲート電極は、導電性部材のみからなり、ダイヤモンド層の表面に直接形成されていることを特徴とする。
この電子放出素子においては、例えばシリコンに比べn型ダイヤモンドの仕事関数は小さく、n型ダイヤモンド層の表面における電子親和力も小さくなっている(負の電子親和力となる場合もある)。これにより、ゲート電極にn型ダイヤモンド層より高い電位が与えられると、n型ダイヤモンド層の伝導帯下端のエネルギー準位に存在する電子がゲート電極の配置表面に容易に達する。このとき、アノードにゲート電極より高い電位が与えられていると、ゲート電極の配置表面に達した電子は、電子通過開口を通ってアノードに向かって進行することになる。従って、この電子放出素子によれば、電子を放出するためにアノードとの間に印加する電圧を低くすることが可能になる。また、ゲート電極がダイヤモンド層の表面に形成されているので、電子放出素子の小型化、及びその構造の単純化を図ることができる。
また、ダイヤモンド層は、ダイヤモンド層とゲート電極との間において、n型ダイヤモンド層の表面に形成されたi型ダイヤモンド層及びp型ダイヤモンド層の少なくとも一方を含んでもよい。つまり、i型ダイヤモンド層上にp型ダイヤモンド層が形成されても勿論よい。これにより、ダイヤモンド層の表面における電子親和力は、ダイヤモンド層がn型ダイヤモンド層のみからなる場合に比べて更に小さくなる。そのため、電子を放出するためにアノードとの間に印加する電圧をより一層低くすることが可能になる。
また、電子通過開口は正方形状であり、その一辺の長さは500nm以下であることが好ましい。これは、一辺の長さが500nmを超えると、電子通過開口から放出される電子が著しく減少してしまうためである。なお、電子通過開口は、三角形状であっても、六角形状であっても、円形状であってもよい。これらの場合には、電子通過開口の内接円の半径が500nm以下であることが好ましい。
また、上記目的を達成するために、本発明に係る電子素子は、略真空中において電子放出素子とアノードとの間に電圧が印加されることにより、電子放出素子からアノードに電子が放出される電子素子であって、電子放出素子は、n型ダイヤモンド層を含むダイヤモンド層、ダイヤモンド層の表面に対して電子の放出側に配置され、電子通過開口が形成されたゲート電極とを備え、n型ダイヤモンド層の抵抗率は、10 Ω・cm以下であり、ゲート電極は、導電性部材のみからなり、ダイヤモンド層の表面に直接形成されていることを特徴とする。
この電子素子は、上述した本発明に係る電子放出素子を利用したものであるため、上記電子放出素子と同様の理由から、電子放出素子とアノードとの間に印加する電圧を低くすることが可能になる。
以上説明したように、本発明によれば、電子を放出するためにアノードとの間に印加する電圧を低くすることができる。
以下、本発明に係る電子放出素子及び電子素子の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態の電子放出素子1においては、単結晶ダイヤモンド基板2上に、P又はS等がドープされたn型ダイヤモンド層3が形成されている。このn型ダイヤモンド層3の表面3aには、Auからなる格子状のゲート電極4と、このゲート電極4に接続された矩形状の共通電極5とが形成されている。ゲート電極4は、マトリックス状に配置された正方形状の電子通過開口6を多数有し、各電子通過開口6からは、n型ダイヤモンド層3の表面3aが露出している。なお、n型ダイヤモンド層3は、P又はS以外がドープされたものであってもよい。この場合、ドープ層は抵抗率10Ω・cm以下であることが好ましい。
このように、n型ダイヤモンド層3の表面3aにゲート電極4を直接配置することで、電子放出素子1の小型化、及びその構造の単純化を図ることができる。
次に、電子放出素子1を利用した電子素子10について説明する。図2に示すように、第1実施形態の電子放出素子10は、電子放出素子1のn型ダイヤモンド層3の表面3aと対面するように配置された板状のアノード11を有している。なお、電子放出素子1とアノード11との間に形成された空間Sは略真空とされる。
また、n型ダイヤモンド層3の側面にはオーミック電極12が設けられている。このオーミック電極12と共通電極3との間には電源13が接続されており、この電源13によって、ゲート電極4にn型ダイヤモンド層3より高い電位が与えられる。更に、オーミック電極12とアノード11との間には電源14が接続されており、この電源14によって、アノード11にゲート電極4より高い電位が与えられる。
以上のように構成された電子放出素子1及び電子素子10における電子放出動作について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、電源13,14により電圧が印加されていない場合のエネルギーバンド構造を示す図であり、図4は、電源13,14により電圧が印加されている場合のエネルギーバンド構造を示す図である。各図において、(a)は電子放出素子1の要部断面図、(b)は(a)の線分b−bに沿ってのエネルギーバンド図、(c)は(a)の線分c−cに沿ってのエネルギーバンド図である。また、各図において、Eは価電子帯上端のエネルギー準位、Eは伝導帯下端のエネルギー準位、Eはフェルミ準位である。
図3に示すように、電源13,14により電圧が印加されていないと、n型ダイヤモンド層3の価電子帯上端のエネルギー準位E及び伝導帯下端のエネルギー準位Eは、ゲート電極4との接触面において正の方向へシフトしている(ショットキー接触、表面付近の空乏化)。そのため、電子放出素子1の内部には、エネルギー準位Eに存在する電子がゲート電極4側に進行し難いポテンシャルの障壁が形成されていることになる。なお、ゲート電極4との接触面における伝導帯下端のエネルギー準位Eは真空準位より高いため、n型ダイヤモンド層3の表面3aでは負の電子親和力となっている。このように負の電子親和力となるのは、例えばシリコンに比べダイヤモンドのバンドギャップが大きく、特殊な表面状態を形成できるからである。ただし、正の小さい電子親和力を持つ状態もある。
図3に示す状態から電源13,14により電圧が印加されると、n型ダイヤモンド層3の伝導帯下端のエネルギー準位Eに電子が充填される。そして、図4に示すように、n型ダイヤモンド層3の価電子帯上端のエネルギー準位E及び伝導帯下端のエネルギー準位E並びに真空準位は、ゲート電極4に引き摺られるようにしてゲート電極4との接触面において負の方向へシフトする。これにより、上述したポテンシャルの障壁が無くなり、しかも、負の電子親和力であるため、エネルギー準位Eに存在する電子がゲート電極4側に進行して、略真空である空間S中に放出され易くなる。なお、正の電子親和力の場合であっても、真空との障壁は小さいので、通常の金属よりはずっと真空中に電子が出易くなる。
従って、ゲート電極4にn型ダイヤモンド層3より高い電位が電極13により与えられると、n型ダイヤモンド層3の伝導帯下端のエネルギー準位Eに存在する電子がn型ダイヤモンド層3の表面3a(ゲート電極4の配置表面)に容易に達する。このとき、アノード11にはゲート電極4より高い電位が電極14により与えられているため、表面3aに達した電子は、各電子通過開口6を通ってアノード11に向かって進行することになる。よって、第1実施形態の電子放出素子1及び電子素子10によれば、電子を放出するために電子放出素子1とアノード11との間に印加する電圧を低くすることが可能になる。
次に、第1実施形態の実施例について説明する。まず、電子放出素子1を次のように製造した。単結晶ダイヤモンド基板2の(111)面上にPドープエピ膜を形成して、当該膜をn型ダイヤモンド層3とした。具体的なn型ダイヤモンド層3形成条件は、メタンガス(CH)/水素ガス(H)比が0.5%、フォスフィン(PH)/メタンガス(CH)比が10000ppm、圧力100Torr、基板温度870℃、成長時間5時間であって、これにより、n型ダイヤモンド層3の厚さは1〜2μmとなった。続いて、n型ダイヤモンド層3の表面3aに約200nmの厚さでレジストを塗布し、電子線露光技術を使ってレジストをパターニングした。そして、その上からAuを蒸着し、リフトオフ技術でAuの微細パターンを形成して、当該微細パターンをゲート電極4とした。このゲート電極4においては、縦横の線幅を60nmとし、正方形状の電子通過開口6の一辺の長さを80nmとした。
このようにして製造した電子放出素子1に対し200μm離してアノード11を設置し、電子素子10を構成した。そして、アノード11をアースとしてn型ダイヤモンド層3に−1kVの電圧を電源14により印加しながら、電源13によりn型ダイヤモンド層3とゲート電極4との間に電流を流した。10Vの電圧で10μA程度の電流を流すと、アノード11において1μAの電子放出電流が検出された。一方、電源13により電圧を印加せずゲート電極4に電流を流さないと、アノード11において電子放出電流は検出されなかった。
ところで、ゲート電極4における縦横の線幅を200nmとし、正方形状の電子通過開口6の一辺の長さを500nmとして、上述した条件で各電源13,14により電圧を印加すると、アノード11において0.01μAの電子放出電流が検出された。また、ゲート電極4における縦横の線幅を200nmとし、正方形状の電子通過開口6の一辺の長さを2μmとして、上述した条件で各電源13,14により電圧を印加すると、アノード11において電子放出電流は1nAのレンジでは検出されなかった。
このように、正方形状の電子通過開口6の一辺の長さが500nmを超えると、電子通過開口6から放出される電子が著しく減少してしまうため、電子通過開口6の一辺の長さは500nm以下であることが好ましい。このとき、ゲート電極4における縦横の線幅と電子通過開口6の一辺の長さとの比において、例えば「1:3」や「1:5」等というように電子通過開口6の一辺の長さ側を大きくすれば、各電子通過開口6から効率良く電子を放出させることができる。
[第2実施形態]
図5に示すように、第2実施形態の電子放出素子1は、n型ダイヤモンド層3上にp型ダイヤモンド層7が形成されている点、並びにそのp型ダイヤモンド層7上にゲート電極4及び共通電極5が形成されている点で第1実施形態の電子放出素子1と異なっている。第2実施形態の電子放出素子1の他の構成及び電子素子10の構成は第1実施形態の電子放出素子1及び電子素子10と同様であるため、それらについての説明を省略する。
次に、第2実施形態の実施例について説明する。まず、第1実施形態の実施例と同様の条件で、単結晶ダイヤモンド基板2上にPドープエピ膜を形成して、当該膜をn型ダイヤモンド層3とした。続いて、n型ダイヤモンド層3上に、メタンガス(CH)/水素ガス(H)比が0.5%、ジボラン(B)/メタンガス(CH)比が5000ppm、圧力100Torr、基板温度870℃、成長時間1時間の条件で、厚さ1μm程度のボロンドープ層を形成して、当該層をp型ダイヤモンド層7とした。続いて、p型ダイヤモンド層7上に、第1実施形態の実施例と同様のサイズで、Auからなる格子状のゲート電極4を形成した。
このようにして製造した電子放出素子1に対し200μm離してアノード11を設置し、電子素子10を構成した。そして、アノード11をアースとしてn型ダイヤモンド層3に−300Vの電圧を電源14により印加しながら、電源13によりp型ダイヤモンド層7とゲート電極4との間に電流を流した。10Vの電圧で3μAの電流を流すと、アノード11において0.1μAの電子放出電流が検出された。一方、電源13により電圧を印加せずゲート電極4に電流を流さないと、アノード11において電子放出電流は検出されなかった。
以上のように、n型ダイヤモンド層3上にp型ダイヤモンド層7を形成することで、ダイヤモンド層の表面における電子親和力は、ダイヤモンド層がn型ダイヤモンド層3のみからなる場合に比べ更に小さくなる。従って、第2実施形態の電子放出素子1及び電子素子10によれば、電子を放出するために電子放出素子1とアノード11との間に印加する電圧をより一層低くすることが可能になる。
[第3実施形態]
図6に示すように、第3実施形態の電子放出素子1は、n型ダイヤモンド層3上にi型ダイヤモンド層(すなわち、ノンドープダイヤモンド層)8が形成されている点、並びにそのi型ダイヤモンド層8上にゲート電極4及び共通電極5が形成されている点で第1実施形態の電子放出素子1と異なっている。第3実施形態の電子放出素子1の他の構成及び電子素子10の構成は第1実施形態の電子放出素子1及び電子素子10と同様であるため、それらについての説明を省略する。
次に、第3実施形態の実施例について説明する。まず、第1実施形態の実施例と同様の条件で、単結晶ダイヤモンド基板2上にPドープエピ膜を形成して、当該膜をn型ダイヤモンド層3とした。続いて、n型ダイヤモンド層3上に、メタンガス(CH)/水素ガス(H)比が1%、圧力100Torr、基板温度870℃、成長時間1時間の条件で、厚さ0.2μm程度のノンドープ層を形成して、当該層をi型ダイヤモンド層8とした。続いて、i型ダイヤモンド層8上に、第1実施形態の実施例と同様のサイズで、Auからなる格子状のゲート電極4を形成した。
このようにして製造した電子放出素子1に対し200μm離してアノード11を設置し、電子素子10を構成した。そして、アノード11をアースとしてn型ダイヤモンド層3に−500Vの電圧を電源14により印加しながら、電源13によりp型ダイヤモンド層7とゲート電極4との間に電流を流した。10Vの電圧で1μAの電流を流すと、アノード11において0.2μAの電子放出電流が検出された。一方、電源13により電圧を印加せずゲート電極4に電流を流さないと、アノード11において電子放出電流は検出されなかった。
以上のように、n型ダイヤモンド層3上にi型ダイヤモンド層8を形成することで、ダイヤモンド層の表面における電子親和力は、ダイヤモンド層がn型ダイヤモンド層3のみからなる場合に比べ更に小さくなる。従って、第3実施形態の電子放出素子1及び電子素子10によれば、電子を放出するために電子放出素子1とアノード11との間に印加する電圧をより一層低くすることが可能になる。
[第4実施形態]
図7に示すように、第4実施形態の電子放出素子1は、ゲート電極4が導電性部材4aと絶縁性部材4bとにより2層構造となっている点で第3実施形態の電子放出素子1と異なっている。第4実施形態の電子放出素子1の他の構成及び電子素子10の構成は第3実施形態の電子放出素子1及び電子素子10と同様であるため、それらについての説明を省略する。
第4実施形態の電子放出素子1において、ゲート電極4は、Au製の導電性部材4aと、この導電性部材4aのn型ダイヤモンド3側の表面を覆うSiO製の絶縁性部材4bとを有している。同様に、共通電極5も、Au製の導電性部材5aと、この導電性部材5aのn型ダイヤモンド3側の表面を覆うSiO製の絶縁性部材5bとを有している。なお、絶縁性部材4b,5bの材料としてCaFやMgFを用いてもよい。
次に、第4実施形態の実施例について説明する。まず、第3実施形態の実施例と同様の条件で、単結晶ダイヤモンド基板2上にPドープエピ膜を形成して、当該膜をn型ダイヤモンド層3とし、更に、n型ダイヤモンド層3上にノンドープ層を形成して、当該層をi型ダイヤモンド層8とした。続いて、i型ダイヤモンド層8上に、第3実施形態の実施例と同様のサイズで、Au製の導電性部材4aとSiO製の絶縁性部材4bとにより2層構造となっている格子状のゲート電極4を形成した。
このようにして製造した電子放出素子1に対し200μm離してアノード11を設置し、電子素子10を構成した。そして、アノード11をアースとしてn型ダイヤモンド層3に−500Vの電圧を電源14により印加しながら、電源13によりp型ダイヤモンド層7とゲート電極4の導電性部材4aとの間に電圧を印加した。20Vの電圧では電流は流れなかったが、アノード11において0.4μAの電子放出電流が検出された。一方、電源13により電圧を印加せずゲート電極4に電流を流さないと、アノード11において電子放出電流は検出されなかった。
以上のように、ゲート電極4において、導電性部材4aのn型ダイヤモンド3側の表面を絶縁性部材4bにより覆うことで、図7に示すように、n型ダイヤモンド層3からゲート電極4側に進行した電子がゲート電極4の導電性部材4aに流れ込むのを防止することができる。従って、各電子通過開口6から効率良く電子を放出させることが可能になる。
なお、第1実施形態及び第2実施形態の電子放出素子1のゲート電極4に、第4実施形態のゲート電極4の構成を採用してもよい。それらの場合にも同様の理由から、各電子通過開口6から効率良く電子を放出させることが可能になる。
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば、単結晶ダイヤモンド基板2に替えて多結晶ダイヤモンド基板を用いてもよい。ただし、(100)面、(110)面、(111)面等の各面方位によって電子放出特性が異なってくるため、最も電子放出特性が良くなる面方位に揃えることが重要となる。従って、面方位を制御して揃えることが可能な単結晶基板、ヘテロエピ基板或いは高配向膜等の方が通常の多結晶基板よりも好ましい。なお、ダイヤモンド基板は高圧合成ダイヤモンドでも気相合成ダイヤモンドでも原理的には構わないが、面積を大きくしたり、含有不純物を減少したりするには気相合成法によるものの方がよい。
また、ゲート電極4の配置表面(すなわち、第1実施形態ではn型ダイヤモンド層3の表面3a、第2実施形態ではp型ダイヤモンド層7の表面、第3及び第4実施形態ではi型ダイヤモンド層8の表面)は平坦に限らず、電子通過開口6から露出する部分が突起状に形成されていてもよい。突起状に形成されていると、配置表面が平坦の場合に比べ、アノード11との間に生じる電界が大きくなり低電圧で電子を放出させることができるからである。なお、電子親和力を更に小さくすることができるため、ゲート電極4の配置表面は水素終端していることが好ましい。
また、ゲート電極4の電子通過開口6は正方形状に限らず、円形状や六角形状等であってもよい。このとき、ゲート電極4に電子通過開口6を多数形成すれば、各電子通過開口4の面積が小さくても、アノード11における電子放出電流の値を大きくすることが可能になる。なお、ゲート電極4を櫛歯状に形成することで、電子通過開口6をスリット状に形成してもよい。
また、電子放出素子1は、ディスプレイ、電子銃、蛍光管、及び真空管等の他、SCR(silicon controlled rectifier)、GTO(gate turn-off)、SIT(static induction transistor)、IGBT(insulated gate bipolar transistor)、及びMISFET(metal insulator semiconductor / field effect transistor)等のパワーデバイスに適用可能である。
本発明に係る電子放出素子の第1実施形態を示す斜視図ある。 本発明に係る電子放出素子及び電子素子の第1実施形態を示す断面図である。 電源により電圧が印加されていない場合のエネルギーバンド構造を示す図であり、(a)は電子放出素子の要部断面図、(b)は(a)の線分b−bに沿ってのエネルギーバンド図、(c)は(a)の線分c−cに沿ってのエネルギーバンド図である。 電源により電圧が印加されている場合のエネルギーバンド構造を示す図であり、(a)は電子放出素子の要部断面図、(b)は(a)の線分b−bに沿ってのエネルギーバンド図、(c)は(a)の線分c−cに沿ってのエネルギーバンド図である。 本発明に係る電子放出素子及び電子素子の第2実施形態を示す断面図である。 本発明に係る電子放出素子及び電子素子の第3実施形態を示す断面図である。 本発明に係る電子放出素子及び電子素子の第4実施形態を示す断面図である。
符号の説明
1…電子放出素子、3…n型ダイヤモンド層、4…ゲート電極、4a…導電性部材、4b…絶縁性部材、6…電子通過開口、7…p型ダイヤモンド層、8…i型ダイヤモンド層、10…電子素子、11…アノード。

Claims (4)

  1. 略真空中においてアノードとの間に電圧が印加されることにより電子を放出する電子放出素子であって
    n型ダイヤモンド層を含むダイヤモンド層と、
    記ダイヤモンド層の表面に対して前記電子の放出側に配置され、電子通過開口が形成されたゲート電極とを備え
    前記n型ダイヤモンド層の抵抗率は、10 Ω・cm以下であり、
    前記ゲート電極は、導電性部材のみからなり、前記ダイヤモンド層の前記表面に直接形成されていることを特徴とする電子放出素子。
  2. 前記ダイヤモンド層は、前記n型ダイヤモンド層と前記ゲート電極との間において、前記n型ダイヤモンド層の表面に形成されたi型ダイヤモンド層及びp型ダイヤモンド層の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子。
  3. 前記電子通過開口は正方形状であり、その一辺の長さは500nm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子放出素子。
  4. 略真空中において電子放出素子とアノードとの間に電圧が印加されることにより、前記電子放出素子から前記アノードに電子が放出される電子素子であって、
    前記電子放出素子は、
    n型ダイヤモンド層を含むダイヤモンド層と、
    記ダイヤモンド層の表面に対して前記電子の放出側に配置され、電子通過開口が形成されたゲート電極とを備え
    前記n型ダイヤモンド層の抵抗率は、10 Ω・cm以下であり、
    前記ゲート電極は、導電性部材のみからなり、前記ダイヤモンド層の前記表面に直接形成されていることを特徴とする電子素子。
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