JP2001006526A - 冷陰極電子源 - Google Patents

冷陰極電子源

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JP2001006526A
JP2001006526A JP17293199A JP17293199A JP2001006526A JP 2001006526 A JP2001006526 A JP 2001006526A JP 17293199 A JP17293199 A JP 17293199A JP 17293199 A JP17293199 A JP 17293199A JP 2001006526 A JP2001006526 A JP 2001006526A
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JP
Japan
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thin film
diamond thin
electron
electrode
cathode
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JP17293199A
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English (en)
Inventor
Takeshi Okano
健 岡野
Toshiro Yamagishi
敏郎 山岸
Masakazu Nanba
正和 難波
Saburo Okazaki
三郎 岡崎
Norio Okamura
憲伯 岡村
Yukinori Katsuhara
幸典 勝原
Shigeru Inoue
茂 井上
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Hitachi Denshi KK
Japan Broadcasting Corp
Original Assignee
Hitachi Denshi KK
Nippon Hoso Kyokai NHK
Japan Broadcasting Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 二次元化が容易で、低電圧で動作するダイヤ
モンド型の冷陰極電子源を提供すること。 【解決手段】 絶縁基板2上にストライプ状のカソード
電極3と多結晶ダイヤモンド薄膜4、それにストライプ
状のゲート電極5を順次形成する。このときカソード電
極3とゲート電極5は互いに直交するようにして配置す
る。ゲート電極3のカソード電極5と交差している領域
には、底部がダイヤモンド薄膜4の表面に接した孔7が
形成されている。カソード電極3とゲート電極5に電圧
が印加されると、これらが交差している領域のダイヤモ
ンド薄膜4の表面で、孔7が存在する部分から電界によ
る電子10が放出され、二次元の冷陰極電子源としての
動作が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイヤモンドを電
子放出材料として用いた冷陰極電子源に係り、特に平面
上に複数の電子放出領域を区画配置した冷陰極電子源お
よびそれを用いた撮像素子及び表示器に関する。
【0002】
【従来の技術】フラットパネルディスプレイなどに使用
される代表的な冷陰極電子源として、従来から知られて
いるものにスピント(spindt)型がある。このスピント型
の冷陰極電子源は、真空中に保持した円錐状のエミッタ
チップを有し、その先端を鋭く形成させることにより、
先端近傍の電界強度が強められるようにし、これにより
電界放出を起こさせ、電子が放出されるようにしたもの
である。
【0003】図6にその1チップの断面構造を示す。同
図において、2は絶縁基板、3はカソード電極、5はゲ
ート電極、10は電子、31はエミッタチップ、32は
絶縁体である。
【0004】そして、このときに必要な電界は、エミッ
タチップの先端を取り巻くように配置した電子引出し電
極に電圧を印加することにより、作りだされるようにな
っているが、このとき、充分な電子放出を得るための条
件としては、印加電圧をより高くすること、または電子
引出し電極とエミッタチップ先端との間隔をせまくする
こと、または、エミッタチップの先端をより鋭くするこ
となどがある。
【0005】しかし、このスピント型の電子源は、電子
放出によりエミッタチップの先端の尖鋭さが徐々に失わ
れてゆくこと、真空中に残留する気体分子がエミッタチ
ップの表面に付着してしまうことなどの理由により、電
子放出能力が経時的に低下してしまうという性質があ
る。
【0006】このため電子引出し電極に、より高い電圧
を印加する必要があり、その結果、駆動電圧発生回路に
大きな負担が課せられてしまうことと、高電圧印加に必
要な耐圧を持たせるのが困難で、装置が破壊しやすいな
どの問題がある上、寿命も考慮しなければならないとい
う問題がある。
【0007】そこで、これらの問題を解決するため、電
界による電子放出材料としてダイヤモンドを用いた冷陰
極電子源が従来から提案されており、その例を、例えば
以下の文献に見ることができる。 文献:特開平7−94081号公報 特開平9−161655号公報 米国特許第547321号明細書
【0008】ここで、よく知られているように、ダイヤ
モンドは熱伝導率が大きい、気体分子の付着が少なく気
体分子と反応し難い、電子親和力が負であるなどの優れ
た特質を有しているので冷陰極電子源として極めて有用
な上、前述のように、スピント型の電子源は、エミッタ
チップの存在により立体的な素子構造になるのに対し
て、ダイヤモンドを使用した電子源は、平面構成が容易
であるという利点があり、このため、近年、大いに期待
されている。
【0009】また、従来テレビジョンカメラには光情報
を電気的な映像信号に変換する装置として、撮像管、お
よび電荷転送型撮像素子あるいはXYアドレス型撮像素
子などのいわゆる固体撮像素子が用いられている。
【0010】図7に示す撮像管は、光電変換部71に光
情報に応じて蓄積された電荷を、磁界、電界により偏向
集束された電子ビーム73で順次走査することにより、
信号出力として外部に取り出される。電子ビーム73
は、熱電子放出カソードとヒータを含む電子ビーム放出
源72から射出される。
【0011】光電変換部71は、室温において金属イン
ジウムを介してガラスからなる外囲器と圧着封止され
る。このため目的に応じた性能を有する光導電材料を選
択することができるので、可視光だけではなくX線や紫
外線など不可視光にも感度をもたせることができる。
【0012】また固体撮像素子は光電変換部と走査部が
同一基板上に形成され、蓄積された電荷を順次転送ある
いはアドレス選択スイッチにより順次選択され、外部に
信号出力として取り出される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記ダイヤ
モンドを使用した電子源の従来技術は、電子放出領域の
区画及び電子放出領域内での電子放出位置の制御および
電子放出に必要な電圧の制御について配慮がされている
とは言えず、電子源の二次元化が困難であり、且つ比較
的高電圧の印加を要するという問題があった。
【0014】すなわち、従来技術では、まず、そのダイ
ヤモンドがB(硼素)或いはP(燐)などの材料が不純物と
して添加され、これにより比抵抗が小さくされた状態で
使用されているため、電子放出の領域を区画するために
は、ダイヤモンド薄膜自体を加工して領域ごとに分離
し、区切らなければならない。
【0015】さらに区画された領域から電子を引き出す
ための電極をダイヤモンドの表面から離して配置する必
要があり、従って、電子を引き出すために必要な電圧が
比較的高くなってしまうのである。なお、従来技術で、
このように比抵抗が小さくされたダイヤモンドが用いら
れていた理由は、そうしないと、必要とする電子放出機
能が得られなかったためである。
【0016】また、ダイヤモンドは、例えばプラズマエ
ッチング或いはイオンビームエッチングなどにより加工
は可能ではあるが、マスクとする金、アルミニウム等を
除去した後、その表面をダイヤモンド薄膜形成直後の状
態に復帰することが極めて困難であるため、ダイヤモン
ド自体を領域に区切るのは極めて難しい。しかるに、従
来技術では、電子放出領域の区画のため、ダイヤモンド
自体を加工して領域に区画しているので製造が難しい。
【0017】また、ダイヤモンドからの電子の放出は、
その表面上のエミッションサイトとよばれる多数の位置
から無作為にスポット状に現れるので、個々の位置と放
出点個数の制御が困難である。しかるに、従来技術で
は、この制御について特に配慮がされていないので、領
域間の放出電子量のばらつきの抑制が難しい。
【0018】例えばフラットパネルディスプレイなどに
使用した場合、全画面中各画素に対応する放出素子の領
域から、それぞれの画素に必要な放出電子を一様に得る
必要があるが、従来技術では難しく、このため、従来技
術では、電子源の二次元化が困難になってしまうのであ
る。
【0019】また、従来から用いられている固体撮像素
子は光電変換部の材質が制約されるため、超低照度光、
紫外光、X線などに十分な感度を有することは極めて困
難である。また、撮像管は電子ビームの偏向集束に大き
な空間を要し、さらに電子放出のため大きな電力を必要
とするため、小型低電力とすることが難しい。
【0020】本発明は、これらの従来技術の問題点に配
慮してなされたもので、二次元化が容易なダイヤモンド
型の冷陰極電子源、および二次元化が容易で、且つ低電
圧で動作するダイヤモンド型の冷陰極電子源および該冷
陰極電子源を用いて低電圧で動作し小型で信頼性の高い
撮像素子、表示器の提供を目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】上記目的は、ダイヤモン
ド薄膜の一方の表面から電界により電子を放出させる方
式の冷陰極電子源において、陰極材料に比抵抗の高いダ
イヤモンド薄膜を用い、該陰極材料自体を加工して分離
することなく、1つまたは複数の電子放出領域に区画
し、該領域の1つまたは複数を選択して電子を放出する
ようにして達成される。
【0022】また上記目的は、ダイヤモンド薄膜の一方
の表面から電界により電子を放出させる方式の冷陰極電
子源において、陰極材料に不純物を含まない完全結晶か
らなるダイヤモンドを用い、このことにより該ダイヤモ
ンド薄膜の比抵抗を高くして、該陰極材料自体を加工分
離することなく、1つまたは複数の電子放出領域に区画
し、該領域の1つまたは複数を選択して電子を放出する
ようにして達成される。
【0023】また上記目的は、ダイヤモンド薄膜の一方
の表面から電界により電子を放出させる方式の冷陰極電
子源において、陰極材料にドナー不純物として、炭素原
子より価電子が1個多い原子、すなわち窒素、リン、リ
チウム、イオウ、ナトリウム、砒素、アンチモン、ビス
マス、また、アクセプタ不純物として、炭素原子よりも
価電子が1個少ない原子、すなわち硼素、アルミニウ
ム、ガリウム、インジウム、タリウムのうち、1種ある
いは複数種を適量加え、ドナーとアクセプタの効果を打
ち消し合わせるいわゆる補償効果により比抵抗を高くし
たダイヤモンド薄膜を用い、該陰極材料自体を加工し分
離することなく、1つまたは複数の電子放出領域に区画
し、該領域の1つまたは複数を選択して電子を放出する
ようにして達成される。
【0024】また上記目的は、タイヤモンド薄膜の一方
の表面から電界により電子を放出させる方式の冷陰極電
子源において、前記ダイヤモンド薄膜の電子放出面と反
対側の面の少なくとも一部に接触配置した1個または複
数個のカソード電極と、該電子放出面に所要の距離をお
き、対向して配置した1個または複数個のアノード電極
を設け、前記カソード電極とアノード電極の、前記ダイ
ヤモンド薄膜の厚み方向での重畳部分により前記ダイヤ
モンド薄膜の電子放出領域を区画されるようにして達成
される。
【0025】また上記目的は、タイヤモンド薄膜の一方
の表面から電界により電子を放出させる方式の冷陰極電
子源において、前記ダイヤモンド薄膜の電子放出面と反
対側の面の少なくとも一部に接触配置した1個または複
数個のカソード電極と、該電子放出面の少なくとも一部
に接触配置した1個または複数個のゲート電極を設け、
前記カソード電極とゲート電極の、前記ダイヤモンド薄
膜の厚み方向での重畳部分により前記ダイヤモンド薄膜
の電子放出面が区画され、前記ゲート電極の前記電子放
出領域の含まれる部分に孔を設け、該孔により前記電子
放出領域内での放出部分が規定されるように構成するこ
とにより達成される。
【0026】また上記目的は、タイヤモンド薄膜の一方
の表面から電界により電子を放出させる方式の冷陰極電
子源において、前記カソード電極と、前記ゲート電極あ
るいはアノード電極が各々複数本の細条として形成さ
れ、且つこれらの細条が前記ダイヤモンド薄膜の両方の
面の側で相互に直交するように配置され、前記電子放出
領域がこれら一方と他方の細条が交差する部分により区
画されるように構成することにより達成される。
【0027】また上記目的は、少なくとも光電変換部と
電子ビーム放出源とこれらを保持する外囲器とからなる
撮像素子において、該電子ビーム放出源を、前記カソー
ド電極と前記ゲート電極が各々複数本の細条として形成
され、且つこれらの細条が前記ダイヤモンド薄膜の両面
で相互に直交するように配置され、前記電子放出領域が
これら一方と他方の細条が交差する部分により区画され
るようになされた冷陰極電子源により構成したことによ
り達成される。
【0028】その結果、二次元化が容易なダイヤモンド
型の冷陰極電子源、および二次元化が容易で且つ低電圧
で動作するダイヤモンド型の冷陰極電子源、また小型で
消費電力が少なく信頼性の高い撮像素子や表示器を得る
ことができる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明による冷陰極装置に
ついて、図示の実施の形態により詳細に説明する。図1
は本発明の一実施形態による冷陰極装置1の平面図で、
図2は、図1の一部を拡大して示した断面図であり、こ
れらの図において、2は絶縁基板で、例えば所定の厚さ
の硼珪酸ガラスなどで作られている。そして、まず、こ
の絶縁基板2の一方の面に、例えば10μm幅のストラ
イプ状(細条状)の複数本のカソード電極3が形成され
る。
【0030】このカソード電極3は厚さ約200nmで
あり、最初、Mo (モリブデン)、Cr (クローム)などの
導電材料を、スパッタ法、真空蒸着法などにより、絶縁
基板2の表面に一様な厚さの膜状に堆積させ、次いで、
これをフォトリソグラフィ法、イオンエッチング法など
により、絶縁基板2の表面で一方の方向、例えば図では
左右方向に延びるストライプ状に分割して形成したもの
である。
【0031】次に、このカソード電極3が形成された絶
縁基板2の表面にダイヤモンド薄膜4を15μmに形成
する。このダイヤモンド薄膜4は、多量のN(窒素)の添
加により温度500Kのとき100GΩcm以上という
高い比抵抗を有しながら、電界による電子放出機能が充
分に高く得られるようにした粒径7〜8μmの多結晶ダ
イヤモンド構造の膜であり、以下のようにして形成され
る。
【0032】すなわち、カソード電極3が形成された絶
縁基板2を窒素、アンモニア、尿素などを不純物源とし
て添加したメタノール、アセトン、メタンなどの有機ガ
スの雰囲気中において、高温に加熱し、化学反応により
多結晶膜を生成するホットフィラメントCVD法や他の
プラズマCVD法、或いは粒径5nm〜1μmのダイヤ
モンド微粒子をメチルアルコールに尿素を飽和するまで
溶かし込んだ溶液などに分散させた縣濁液中に前記基板
を配置し、粒子の自然沈降により堆積させる自然堆積法
ないしは該縣濁液を前記基板に塗布する塗布法、或いは
前記ダイヤモンド微粒子にアルコール、アセトンなどの
溶媒を少量加え前記基板に塗布した後高温処理して前記
微粒子を焼結して膜を形成する焼結法などにより、成膜
形成するのである。
【0033】次に、このダイヤモンド薄膜4の上にスト
ライプ状の複数本のゲート電極5を形成する。なお、こ
のゲート電極5は厚さ約200nmで、いわゆる電子引
き出し電極となるものである。このゲート電極5も、最
初、スパッタ法、真空蒸着法などにより、Mo 、Crな
どの導電材料を一様な厚さの膜として堆積させ、その
後、この膜を、フォトリソグラフィ法、或いはイオンエ
ッチング法などにより、カソード電極3と交差する方向
に延びる例えば10μm幅のストライプ状に分割して形
成される。
【0034】次に、絶縁膜6を形成する。この絶縁膜6
は、Si O2 (二酸化シリコン)、Si34 (シリコンナ
イトライド)、PSG(リンガラス)などの薄膜で、図示
のように、複数本のストライプ状ゲート電極5の間に露
出したダイヤモンド薄膜4の表面を覆うようにして形成
されている。
【0035】最後に、孔7をゲート電極5に形成する。
この孔7は、例えば径が1μm〜8μm程度のもので、
フォトリソグラフィ法、イオンエッチング法、或いは電
解研磨法などにより、ストライプ状ゲート電極5のカソ
ード電極3と交差する領域に、それぞれの底部がダイヤ
モンド薄膜4の上面に開口するようにして設けられてい
る。
【0036】こうして作られた冷陰極装置1は、その各
カソード電極3が夫々Xアドレス選択駆動回路8又はY
アドレス選択駆動回路9の一方に電気的に接続され、各
ゲート電極5が、それらの他方に電気的に接続された状
態で使用される。なお、図2では、各アドレス選択駆動
回路8、9が、個別の電池とスイッチで表してある。
【0037】次に、この図1と図2に示した冷陰極装置
1の動作について説明する。この冷陰極装置1では、ダ
イヤモンド薄膜4を挟んで、ストライプ状のカソード電
極3とストライプ状のゲート電極5が交差する領域単位
で、この部分に存在する孔7が各々単位電子源としての
働きをし、図2に示すように、選ばれた領域にある複数
個の孔7から電子10が放出され、従って、この領域が
電子放出領域となる。
【0038】このときの各領域の選択は、該当するカソ
ード電極3とゲート電極5にアドレス選択駆動回路8、
9から電圧が印加されることにより行なわれる。すなわ
ち、カソード電極3とゲート電極5に対する電圧印加に
より、それらの間の電位差が、ダイヤモンド薄膜4の表
面から電子が放出される閾値より高くなる領域が選択さ
れ、この領域にある孔7から電子10が放出されること
により領域単位の電子束が得られることになるのであ
る。
【0039】カソード電極3とゲート電極5に約20V
の電圧を印加することにより2〜3μAの放出電流が得
られることになる。
【0040】従って、この実施形態によれば、ダイヤモ
ンド薄膜4を切離して複数の部分に分離させることな
く、連続した1層のダイヤモンド薄膜4のままで、スト
ライプ状に形成されたカソード電極3とゲート電極5、
及びそれらに印加すべき電圧により、電子放出が得られ
る領域を選択することができる。
【0041】このとき、選択された領域にあるダイヤモ
ンド薄膜4の表面でも、孔7により開口されていない部
分はゲート電極5で覆われたままなので、電子の放出は
生じない。従って、この実施形態によれば、選択された
領域内での電子放出点は、そこに形成した孔7により決
められるので、領域内での電子放出点個々の位置と放出
点個数が正確に制御でき、この結果、各領域の電子放出
量が均等化され、領域間でのばらつきを確実に無くすこ
とができる。
【0042】ここで、図1に示した実施形態では、孔7
の形状が円形になっているが、楕円形、矩形、多角形な
ど任意の形状にしても良い。このときのダイヤモンド薄
膜4面での電子の放出位置は、孔7の開口端がダイヤモ
ンド薄膜4の面に接している部分の近傍になっているも
のと考えられるが、何れにしても、これらの孔7は、小
さな径の孔に容易にでき、従って、小さな径にしておく
ことにより、各孔7から均一に電子を放出させることが
できる。
【0043】また、この実施形態では、ダイヤモンド薄
膜4が、真空と同程度の高い比抵抗になるようにして形
成されているので、ゲート電極5、すなわち電気引き出
し電極をダイヤモンド薄膜4の表面に密着して設けるこ
とができ、この結果、低い電圧で高い電界を与えること
ができる。
【0044】従って、この実施形態によれば、カソード
電極3とゲート電極5の間に印加すべき電圧が小さくて
も充分に電子を放出させることができ、低電圧で動作す
る電子源を容易に得ることができる。ダイヤモンド薄膜
の厚さを薄くすることにより前記電圧を低くすることが
でき5V以下とすることも可能である。
【0045】従来のスピント型で適当な量の放出電子を
得るための電圧が約100Vであるのに対し、本発明に
よれば、ゲート電極、すなわち、電子引き出し電極がダ
イヤモンド薄膜に密着しているので数V〜20Vで適当
な量の放出電子を得ることができるため、駆動回路を作
る上で大変に有利となる。
【0046】また、上記したように、ダイヤモンドは残
留気体分子による汚染に強く、表面が汚染されない。従
って、この実施形態によれば、真空度が低下し、ガス圧
が高くなっも、電子放出能力が低下する虞れがない。
【0047】また、ダイヤモンドは熱伝導率が大きいの
で熱放散が良く、電子放出量が多くなってジュール熱に
よる発熱が多くなっても、温度上昇が少なくて済む。従
って、この実施形態によれば、温度上昇による破壊の虞
れがない。
【0048】次に、本発明による冷陰極電子源を撮像素
子に適用した場合の一例について、図3により説明す
る。まず、この図3において、冷陰極電子源1及びXア
ドレス選択駆動回路8、Yアドレス選択駆動回路9は、
図1、図2で説明した実施形態と同じである。次に、こ
の図3において、21は光電変換部で、図示のように、
冷陰極電子源1に真空中で対向するようにして配置され
ている。
【0049】この光電変換部21は、ガラス基板22に
ITO(三酸化インジウム)、Sn O2 (二酸化スズ)など
からなる透明電極23と、Sb23 (三硫化アンチモ
ン)、Se −As −Te (セレン−砒素−テルル)、Cd
Se (セレン化カドミウム)、Pb O(酸化鉛)などからな
る光導電膜24を順次堆積して形成したものである。
【0050】そして、この光導電膜24に冷陰極電子源
1の電子放出面が対向するようにして、図示されていな
い、内部が真空の容器の中に保持されている。ガラス基
板22の外側(図では上側)から光導電膜24の表面に光
が入射され、光学像が結ばれると、この光学像が二次元
の電荷像に変換されて冷陰極電子源1側の表面に現れ
る。
【0051】冷陰極電子源1のカソード電極3とゲート
電極5が交差する部分は、それぞれ1画素を形成する領
域となり、各領域はXアドレス選択駆動回路8とYアド
レス選択駆動回路9により順次選択され、選択された領
域から電子10が放出されると、この電子10により光
導電膜24の表面がX方向とY方向に順次走査され、こ
の結果、二次元の電荷像が時系列的な電気信号に変換さ
れ、透明電極23から映像出力信号として外部に取り出
される。
【0052】従って、この図3の撮像素子は、周知のビ
ジコンなどとして知られている光導電型撮像管における
電子銃に代えて、冷陰極電子源1を設けたものに相当
し、ここで、ガラス基板22は、撮像管ではフェースプ
レート(面板)と呼ばれているものである。
【0053】この図3の実施形態によれば、冷陰極電子
源1が充分に低い電圧で動作し、走査に必要な電子束が
得られるので、駆動回路の負担が少なくなり、回路を小
さくすることができる。また、この撮像素子では、電子
銃と電子偏向装置が不要になるので、小型化することが
できる。
【0054】ところで、以上の実施形態では、冷陰極電
子源1とXアドレス選択駆動回路8及びYアドレス選択
駆動回路9が別構成されているが、これらを一体化する
ことも可能である。このためには、絶縁基板2の代り
に、ダイヤモンド薄膜4が形成される部分に絶縁層が形
成されたSi基板を用い、ここに冷陰極電子源1を設け
ると共に、その余白部分にXアドレス選択駆動回路8及
びYアドレス選択駆動回路9を形成してやれば良い。
【0055】ところで、この実施形態による冷陰極電子
源1は、上記した撮像素子への適用に限らず、他にも画
像表示素子、光源装置(ランプ)、マイクロ真空管などに
適用できることはいうまでもない。なお、ここにいう画
像表示素子や光源装置とは陰極線管と同じ原理で発光す
る装置のことで、マイクロ真空管とは、冷陰極電子源の
電子放出領域単位に対応して、この単位領域を陰極とし
て形成される微小な真空管のことである。
【0056】次に、他の実施形態による冷陰極装置を説
明する。この実施例は表示器に関するものである。図4
は電子を引き出すアノード電極と、該アノード電極をダ
イヤモンド薄膜の電子放出面から離して配置された冷陰
極の一例であり、表示装置に応用した例である。図5は
図4の断面図で、これらの図において、41は絶縁基板
でたとえば所定の厚さの硼珪酸ガラスなどで作られてい
る。
【0057】そしてまず、この絶縁基板41の一方の面
に、カソード電極42、および該カソード電極42に電
圧を印加するための配線43を形成する。カソード電極
42は表示文字を構成するエレメントの形に形成する。
【0058】カソード電極42および配線43はMo、
Crなどの導電材料をスパッタ法、真空蒸着法などによ
り、絶縁基板41の表面に一様な厚さに堆積させ、次い
でこれをフォトグラフィ法、イオンエッチング法などに
より所要の形状に形成したものであり、ここで、カソー
ド電極42の所要の形状とは、ダイヤモンド薄膜45の
表面の電子放出領域と同一の形状のことである。
【0059】次に、スパッタ法、CVD法などによにり
SiO2、Si33、PSGなどの絶縁層を形成し、そ
の後、フォトリソグラフィ法、イオンエッチング法など
により前記配線43の部分を覆うような形状にした絶縁
膜44を形成する。
【0060】次に、これらのカソード電極42、配線4
3、絶縁膜44が形成された絶縁基板41の表面に、図
1および図2の実施形態で説明した方法と同様の方法で
ダイヤモンド薄膜45を形成し、冷陰極40を完成す
る。
【0061】次に、46はアノード電極であり、これ
は、例えば硼珪酸ガラスなどからなる透明絶縁基板47
の表面に、ITO、SnO2 などからなる透明電極4
8、及び蛍光体49を順次堆積して形成したもので、こ
のアノード電極46と冷陰極40を、真空中で約100
μmの間隔で対向するように配置する。
【0062】次に、この図4と図5に示した冷陰極40
とアノード電極46の動作について説明する。この冷陰
極40は、ダインモンド薄膜45のカソード電極42に
接した面と反対側の表面において、カソード電極42を
覆った領域が電子放出領域となるもので、このため、ア
ノード電極46の一部である透明電極48に約100V
の電圧を印加する。
【0063】この状態で、カソード電極42の電位を0
Vにすると、電子放出領域とアノード電極の間の電位差
が充分に高くなり、電子放出領域から電子50が放出さ
れ、蛍光体49に衝突し、発光する。一方、カソード電
極42に約50Vの電圧を印加した場合には、電子放出
領域とアノード電極の間の電位差は十分に高くはなら
ず、蛍光体49を発光させるに足る十分な電子放出量が
得られない。この結果、蛍光体49は発光しない。
【0064】従って、この図4と図5の実施形態によれ
ば、ダイヤモンド薄膜を切り離して複数の部分に分離す
ることなく、連続した1層のダイヤモンド薄膜のままで
電子放出領域を区画することができ、ゲート電極41に
印加する電圧により電子を放出する領域を選択すること
ができる。
【0065】また、前記のように、ダイヤモンドは、残
留気体による汚染に強く、表面が汚染されにくい。従っ
て、この図4、図5の実施形態によれば、真空度が低下
しガス圧が高くなっても、電子放出能力が低下する虞れ
がない。更に、ダイヤモンドは熱伝導率が大きいので熱
放散がよく、電子放出量が多くなってジュール熱による
発熱量が多くなっても温度上昇が少なくて済む。
【0066】ところで、この冷陰極電子源の実施形態で
は、表示素子に適用した場合について説明したが、表示
素子に限らず、他にも、照明光源、マイクロ真空管など
にも適用できることはいうまでもない。
【0067】
【発明の効果】発明によれば、ダイヤモンド自体の加工
を要することなく電子放出領域が区分でき、区分された
領域内の必要な位置から、低い電圧で充分な量の一様な
電子放出を容易に得ることができる。
【0068】また、本発明によれば、残留気体分子やジ
ュール熱などによる経時的な劣化及び破壊がないという
ダイヤモンド型冷陰極の特質を充分に活かしながら、低
電圧で電流密度の高い電子束が得られるので、ダイナミ
ックレンジが広い撮像素子や高輝度の画像表示素子及び
光源装置が実現でき、さらにはマイクロ真空管などの実
現にも大いに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるダイヤモンド型冷陰極電子源の一
実施形態を示す平面図。
【図2】本発明によるダイヤモンド型冷陰極電子源の一
実施形態の一部を示す断面図。
【図3】本発明によるダイヤモンド型冷陰極電子源の一
実施形態が適用された撮像素子の一例を示す説明図。
【図4】本発明によるダイヤモンド型冷陰極電子源の一
実施形態を示す平面図。
【図5】本発明によるダイヤモンド型冷陰極電子源の一
実施形態の一部を示す断面図。
【図6】従来例の1チップ断面図。
【図7】撮像管の一例を示す説明図。
【符号の説明】
1、40 冷陰極電子源 2、41 絶縁基板 3、42 カソード電極 4、45 ダイヤモンド薄膜 5 ゲート電極 6 絶縁膜 7 孔 8 Xアドレス選択駆動回路 9 Yアドレス選択駆動回路 10 電子(束)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山岸 敏郎 東京都世田谷区砧1−10−11 日本放送協 会 放送技術研究所内 (72)発明者 難波 正和 東京都世田谷区砧1−10−11 日本放送協 会 放送技術研究所内 (72)発明者 岡崎 三郎 東京都世田谷区砧1−10−11 日本放送協 会 放送技術研究所内 (72)発明者 岡村 憲伯 山梨県北巨摩郡小渕沢町上笹尾3434−1 日立電子株式会社小渕沢工場内 (72)発明者 勝原 幸典 山梨県北巨摩郡小渕沢町上笹尾3434−1 日立電子株式会社小渕沢工場内 (72)発明者 井上 茂 山梨県北巨摩郡小渕沢町上笹尾3434−1 日立電子株式会社小渕沢工場内 Fターム(参考) 5C036 EE03 EE14 EF01 EF06 EF09 EG12 EH04 EH11

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ダイヤモンド薄膜の一方の表面から電界
    により電子を放出させる方式の冷陰極電子源において、 陰極材料に比抵抗の高いダイヤモンド薄膜を用い、1つ
    以上の電子放出領域に区画し、該領域の少なくとも1つ
    を選択して電子を放出することを特徴とする冷陰極電子
    源。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の発明において、 陰極材料に不純物を含まない完全結晶からなるダイヤモ
    ンドを用いたことを特徴とする冷陰極電子源。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の発明において、 陰極材料にドナー不純物として、炭素原子より価電子が
    1個多い原子、また、アクセプタ不純物として炭素原子
    より価電子が1個少ない原子のうち、1種あるいは複数
    種を含め、ドナーとアクセプタの補償効果により高抵抗
    としたダイヤモンドを用いることを特徴とした冷陰極電
    子源。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の発明において、 ダイヤモンド薄膜の電子放出面と反対側の面の少なくと
    も一部に接触配置したカソード電極と、該電子放出面に
    所要の距離をおき、対向して配置したアノード電極を設
    け、前記カソード電極とアノード電極の、前記ダイヤモ
    ンド薄膜の厚み方向での重畳部分により前記ダイヤモン
    ド薄膜の電子放出領域が区画されることを特徴とする冷
    陰極電子源。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載の発明において、 ダイヤモンド薄膜の電子放出面と反対側の面の少なくと
    も一部に接触配置したカソード電極と、該電子放出面の
    少なくとも一部に接触配置したゲート電極を設け、前記
    カソード電極とゲート電極の、前記ダイヤモンド薄膜の
    厚み方向での重畳部分により前記ダイヤモンド薄膜の電
    子放出面が区画され、前記ゲート電極の前記電子放出領
    域の含まれる部分に孔を設け、該孔により前記電子放出
    領域内での放出部分が規定されるように構成したことを
    特徴とする冷陰極電子源。
  6. 【請求項6】 請求項5または請求項4に記載の発明に
    おいて、 前記カソード電極と、前記ゲート電極またはアノード電
    極が、各々複数本の細条として形成され、且つこれらの
    細条が前記ダイヤモンド薄膜の両方の面の側で相互に直
    交するように配置され、前記電子放出領域がこれら一方
    と他方の細条が交差する部分により区画されるように構
    成されたことを特徴とする冷陰極電子源。
  7. 【請求項7】 ダイヤモンド薄膜を、比抵抗の高いダイ
    ヤモンドで形成し、 前記ダイヤモンド薄膜の一方の面の少なくとも一部に接
    触配置した一方の電極と、前記ダイヤモンド薄膜の他方
    の面の少なくとも一部に接触配置した他方の電極とを設
    け、 前記一方と他方の電極の、前記ダイヤモンド薄膜の厚み
    方向での重畳部分により前記ダイヤモンド薄膜の電子放
    出領域が区画され、 前記電極の一方の前記電子放出領域に含まれる部分に孔
    を設け、 前記孔により、前記電子放出領域内での電子放出部分が
    規定されるように構成した電子ビーム放出源と、該電子
    ビーム放出源から発生する電子ビームにより走査される
    光電変換部とを有することを特徴とする撮像素子。
  8. 【請求項8】 ダイヤモンド薄膜の一方の表面から電界
    により電子を放出させる方式の冷陰極電子源において、 陰極材料に比抵抗の高いダイヤモンド薄膜を用い、1つ
    以上の電子放出領域に区画し、該領域の少なくとも1つ
    を選択して電子を放出する電子ビーム放出源と、該電子
    ビーム放出源から発生する電子ビームにより走査される
    光電変換部とを有することを特徴とする撮像素子。
  9. 【請求項9】 ダイヤモンド薄膜を、比抵抗の高いダイ
    ヤモンドで形成し、 前記ダイヤモンド薄膜の一方の面の少なくとも一部に接
    触配置した一方の電極と、前記ダイヤモンド薄膜の他方
    の面に対向して他方の電極を設け、該他方の電極の前記
    一方の電極と対向する面には蛍光体を有し、前記一方と
    他方の電極の、前記ダイヤモンド薄膜の厚み方向での重
    畳部分により、前記ダイヤモンド薄膜の電子放出領域が
    区画され、 該区画された電子放出領域内での電子の放出部分が規定
    されるように構成したことを特徴とする冷陰極電子源を
    有する表示器。
  10. 【請求項10】 ダイヤモンド薄膜の一方の表面から電
    界により電子を放出させる方式の冷陰極電子源におい
    て、 陰極材料に比抵抗の高いダイヤモンド薄膜を用い、1つ
    以上の電子放出領域に区画し、該領域の少なくとも1つ
    を選択して電子を放出する電子ビーム源と、該電子ビー
    ム源から発生する電子ビームを受け発光する蛍光体とを
    有することを特徴とする表示器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP4496748B2 (ja) * 2003-09-30 2010-07-07 住友電気工業株式会社 電子放出素子及びそれを用いた電子素子

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