JP4496617B2 - ディスクブレーキ用パッド保持部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスクブレーキ用パッド保持部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車輪と一体回転するディスクロータと、このディスクロータの一側にて車両の非回転部材に固定され前記ディスクロータを跨いで位置するマウンティング部材と、ディスクロータ周方向に離間した両端の各々から突出する凸部を有しこれら凸部を前記マウンティング部材に形成された対応する凹部に装着されディスクロータ軸線と平行な方向に移動可能な摩擦パッドと、この摩擦パッドを前記ディスクロータに押圧するための押圧手段とを備えたディスクブレーキが既に知られており、例えば特開平8−320037号公報に記載されている。
【0003】
上記公報に記載されたディスクブレーキにおいては、車両走行中の車輪振動による凸部と凹部との衝突によって発生する衝突音や、車両制動開始時にディスクロータの周方向における摩擦パッドとマウンティング部材との衝突によって発生する衝突音を防止する目的で、マウンティング部材と摩擦パッドとの間にディスクブレーキ用パッド保持部材が設けられている。
【0004】
このディスクブレーキ用パッド保持部材は、一片の板状素材を屈曲成形してなるものであり、凸部のディスクロータ半径方向外方向の上面および先端面と凹部との間に介在するように凹部に装着された基部と、この基部から延在して凸部をディスクロータ周方向へ付勢する第1付勢部と、この第1付勢部から延在し凸部をディスクロータ半径方向外方向へ付勢する第2付勢部と、第1付勢部から延在しディスクブレーキ用パッド保持部材をディスクロータ半径方向外方向へ付勢する第3付勢部とを備えており、第3付勢部は、その先端部が屈曲されていて、この屈曲箇所の凸側面でマウンティング部材の凹部の下面に当接しているものである。
【0005】
そのため、このディスクブレーキ用パッド保持部材は、摩擦パッドをディスクロータ半径方向外方向およびディスクロータ周方向へ付勢する機能を備え、しかも材料取りの歩留まりが良く、ディスクブレーキの組立時の作業性がよいものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のディスクブレーキ用パッド保持部材は、車両後進時の制動において、摩擦パッドの凸部が第1付勢部を押圧することによってディスクブレーキ用パッド保持部材に回転モーメントが発生し、ディスクブレーキ用パッド保持部材が凹部内で回動して姿勢が不安定になるとともに、ディスクブレーキ用パッド保持部材による凸部の拘束力が低下して摩擦パッドが動きやすくなり、
いわゆる「ブレーキ鳴き」が発生しやすくなるという問題があった。
【0007】
また、上記従来のディスクブレーキ用パッド保持部材は、制動操作終了時においても、摩擦パッドとディスクロータとが摺接したままになりやすく、いわゆる「ブレーキの引きずり」が発生しやすくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景に為されたものであり、ディスクブレーキ用パッド保持部材の凹部内での回動に起因するブレーキ鳴きを防止できるとともに、制動操作終了後の摩擦パッドとディスクロータとの摺接に起因するブレーキの引きずりを防止できるディスクブレーキ用パッド保持部材を提供することを、その技術的課題とするものである。
【0009】
【課題を解決する手段】
上記技術的課題を解決するために、請求項1に記載のように、車輪と一体に回転するディスクロータと、前記ディスクロータの両側に配設されるとともに前記ディスクロータの周方向に離間した両端の各々から突出する凸部を有する一対のパッドと、前記パッドの前記凸部を収容する凹部を有して前記パッドを前記ディスクロータの軸線と平行な方向に移動可能なように支持するとともに車両の非回転部分に固定されたマウンティング部材と、前記パッドを前記ディスクロータに押圧する押圧手段とを備えたディスクブレーキにおいて、一片の板状素材を屈曲成形してなるディスクブレーキ用パッド保持部材であって、前記凸部の上面および先端面と前記凹部との間に介在するように前記凹部に装着された基部と、前記基部から延在して前記凸部を前記ディスクロータの周方向へ付勢する第1付勢部と、前記第1付勢部から延在して前記凸部を前記ディスクロータの半径方向外方向へ付勢する第2付勢部と、前記基部から延在するとともに前記凸部の上方にて前記パッドを前記ディスクロータの周方向と前記ディスクロータの軸線と平行な方向とへ付勢する第3付勢部とを備えたディスクブレーキ用パッド保持部材を構成した。
【0010】
請求項1にかかる発明においては、ディスクブレーキ用パッド保持部材は、凸部の上面および先端面と凹部との間に介在するように凹部に装着された基部と、基部から延在して凸部をディスクロータの周方向へ付勢する第1付勢部と、第1付勢部から延在して凸部をディスクロータの半径方向外方向へ付勢する第2付勢部と、基部から延在するとともに凸部の上方にてパッドをディスクロータの周方向とディスクロータの軸線と平行な方向とへ付勢する第3付勢部とからなる構成としたため、第3付勢部がパッドをディスクロータの周方向に付勢する付勢力の反力によって、ディスクブレーキ用パッド保持部材の凹部内での回動に起因するブレーキ鳴きが防止されてるとともに、パッドとディスクロータとを引離す方向に第3付勢部がパッドを押圧するため、ブレーキの引きずりが防止される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基いて説明する。
【0012】
図1は、中心線から半分が省略されたディスクブレーキ1の正面図を示す。
【0013】
ディスクブレーキ1は、車輪(図示せず)と一体に回転するディスクロータ5と、ディスクロータ5の摩擦面に対面するとともにディスクロータ5の周方向に離間した両端に突出する凸部32を有するパッド31とを備えている。また、パッド31は、ディスクロータ5を跨ぐようにマウンティング部材11に支持されたキャリパ21のキャリパ爪部23と、キャリパ21内に液密的且つ摺動可能に収容されたピストン23とによって、ディスクロータ5の摩擦面に押圧されるようになっている。
【0014】
マウンティング部材11は、車両の非回転部分(図示せず)に固定されており、パッド31の凸部32を収容する凹部12が形成されている。また、マウンティング部材11の凹部12内には、ディスクブレーキ用パッド保持部材41が配設されている。
【0015】
次に、ディスクブレーキ用パッド保持部材41について、図2乃至図5に基いて説明する。
【0016】
図2は、図1に示されたディスクブレーキ用パッド保持部材41の中心線から半分が省略された正面図を示し、図3は、ディスクブレーキ用パッド保持部材41の側面図を示す。図5は、ディスクブレーキ用パッド保持部材41が凹部12内に装着された状態における図1のA方向からの一部平面図を示し、図4は、凸部32とディスクブレーキ用パッド保持部材41との装着状態を示す拡大図である。
【0017】
ディスクブレーキ用パッド保持部材41は、一片の板状素材を屈曲成形してなるものであり、凸部32の上面32aおよび先端面32bと凹部12との間に介在するようにマウンティング部材11に装着された基部41aを備えている。この基部41aのディスクロータ半径方向内方向端から斜め下方に且つ凸部32に向けて第1付勢部41bが延在しており、第1付勢部41bのディスクロータ半径方向内方向端から第2付勢部41cがディスクロータ周方向に延在している。また、基部41aのの上方(図3中上方)には、接続部41eを介して第3付勢部41dが設けられ、第3付勢部41dは、ディスクロータ軸線と平行な方向へ延在している。なお、図3において、2点鎖線で示した形状は、ディスクブレーキ用パッド保持部材41の自由状態での形状であり、実線で示した形状は、ディスクブレーキ用パッド保持部材41が凹部12に装着されてパッド31と当接した状態の形状を示す。
【0018】
ディスクブレーキ用パッド保持部材41は、基部41aに形成された一対の係止片部41fによってマウンティング部材11をディスクロータ軸線と平行な方向に弾性的に挟み付けることでマウンティング部材11に装着されている。
【0019】
第1付勢部41bは、図4に示すように、凸部32と当接して凸部32をディスクロータ周方向に付勢する。通常、ディスクブレーキ用パッド保持部材41は、図1に示すように、車両後方側(図1中右側)の凹部12内のみに装着される。したがって、非制動時においては、パッド31の車両前方側(図1中左側)の凸部(図示せず)は、車両前方側(図1中左側)の凹部(図示せず)に前後方向の隙間なしに収容されるとともに、車両後方側の凹部12収容された車両後方側の凸部32は、ディスクブレーキ用パッド保持部材41の第1付勢部41bによって前方(図1中左側)に付勢されることになる。
【0020】
すなわち、非制動時においては、パッド31がマウンティング部材11に対してディスクロータ周方向にセンタリングされることになる。
【0021】
上記のように、第1付勢部41bによってパッド31が車両前方側の凹部に前後方向の隙間なしに収容されるため、車両前進時の制動に際してパッド31にF方向の制動力が印加されても、パッド31の車両前方側の凸部の先端面(車両後方側の凸部32の先端面32bに対応する部位)が、車両前方側の凹部の壁面(車両後方側の凹部12の壁面12bに対応する部位)に衝突することがなく、凸部
と凹部の衝突音が発生しない。また、車両後進時の制動に際しては、凸部32の先端面32bが第1付勢部41bの付勢力に抗しつつ第1付勢部41bを弾性変形させ、R方向の制動力が第1付勢部41bの弾性変形エネルギに変換されるため、衝撃的な衝突音が防止される。
【0022】
第2付勢部41cは、第1付勢部41bとの接続部位にて凹部12の下面12cに当接し、またその先端部位にて凸部32の下面32cに当接することにより、凸部32を上方(図1中上側)へ付勢し、凸部32の上面32aをディスクブレーキ用パッド保持部材41を介して凹部12の上面12aに押圧する。これにより、車両走行中の車輪振動によってパッド31がマウンティング部材11に対して上下方向(図1中上下方向)にガタ付ことで発生する衝突音が防止される。
【0023】
第3付勢部41dは、基部41aから上方(図2、図3中上方)に延在する上方部41hに連結されて下方に屈曲した連結部41eから、左右方向(図2中左右方向)に延在する。
【0024】
図1に示すように、ディスクブレーキ用パッド保持部材41が凹部12に収容され且つディスクブレーキ用パッド保持部材41の開口部41iがディスクロータ5を跨ぐような状態でマウンティング部材11に装着されると、第3付勢部41dがパッド31の凸部32の上方に位置する端面33をディスクロータ周方向に付勢する。パッド31は、凸部32の先端面32bが第1付勢部によって付勢されると同時に、端面33が第3付勢部41dによって付勢されることになる。したがって、制動時に先端面32bから第1付勢部41aに伝達される制動力が、ディスクブレーキ用パッド保持部材41を凹部12内で反時計方向(図1中反時計方向)に回動させる回動力として作用しても、第3付勢部41dにその回動力を打消すように時計方向(図1中時計方向)の付勢反力が印加されるため、ディスクブレーキ用パッド保持部材41が凹部12内で回動することがない。これにより、回動に起因するディスクブレーキ用パッド保持部材41の姿勢不安定がなくなり、さらに姿勢不安定に起因するディスクブレーキ用パッド保持部材41による凸部31の拘束力低下が防止され、拘束力低下に起因するブレーキ鳴きが防止されることになる。
【0025】
また、図5に示すように、第3付勢部41dは、その先端部41d1のディスクロータ周方向の撓み量が中央部41d2の撓み量よりも大きい。これにより、パッド31は、ディスクロータ軸線と平行な方向に付勢されることになり、常にディスクロータ5の摩擦面から引離されるような力を受けることになる。したがって、制動操作が終了してピストン22およびキャリパ爪部23によるパッド31に対する押圧力が消滅すれば、パッド31は、速やかにディスクロータ5の摩擦面から離されることになり、ブレーキの引きずりが防止される。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、ディスクブレーキ用パッド保持部材の凹部内での回動に起因するブレーキ鳴きを防止できるとともに、制動操作終了後の摩擦パッドとディスクロータとの摺接に起因するブレーキの引きずりを防止できるディスクブレーキ用パッド保持部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかるディスクブレーキの正面図である。
【図2】本発明の実施例にかかるディスクブレーキ用パッド保持部材の正面図である。
【図3】本発明の実施例にかかるディスクブレーキ用パッド保持部材の側面図である。
【図4】本発明の実施例にかかるディスクブレーキ用パッド保持部材とパッド凸部の装着状態での拡大側面図である。
【図5】図1のA方向から見たディスクブレーキ用パッド保持部材とパッドとを示す平面図である。
【符号の説明】
1 ディスクブレーキ
5 ディスクロータ
11 マウンティング部材
12 凹部
22 ピストン(押圧手段)
23 キャリパ爪部(押圧手段)
31 パッド
32 凸部
32a 凸部の上面
32b 凸部の先端面
41 ディスクブレーキ用パッド保持部材
41a 基部
41b 第1付勢部
41c 第2付勢部
41d 第3付勢部
Claims (1)
- 車輪と一体に回転するディスクロータと、前記ディスクロータの両側に配設されるとともに前記ディスクロータの周方向に離間した両端の各々から突出する凸部を有する一対のパッドと、前記パッドの前記凸部を収容する凹部を有して前記パッドを前記ディスクロータの軸線と平行な方向に移動可能なように支持するとともに車両の非回転部分に固定されたマウンティング部材と、前記パッドを前記ディスクロータに押圧する押圧手段とを備えたディスクブレーキにおいて、一片の板状素材を屈曲成形してなるディスクブレーキ用パッド保持部材であって、前記凸部の上面および先端面と前記凹部との間に介在するように前記凹部に装着された基部と、前記基部から延在して前記凸部を前記ディスクロータの周方向へ付勢する第1付勢部と、前記第1付勢部から延在して前記凸部を前記ディスクロータの半径方向外方向へ付勢する第2付勢部と、前記基部から延在するとともに前記凸部の上方にて前記パッドを前記ディスクロータの周方向と前記ディスクロータの軸線と平行な方向とへ付勢する第3付勢部とを備えたディスクブレーキ用パッド保持部材。
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