JPS6140968Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、自動車、オートバイ等の車輛用デイ
スクブレーキ装置、特にブレーキデイスクの両側
に配設される左右一対の摩擦パツドと；ブレーキ
デイスクの周方向に間隔を存して対向する第１、
第２支持腕を有し、これらの支持腕間に前記両摩
擦パツドをブレーキデイスクの軸方向に摺動自在
に且つブレーキデイスクの半径方向に移動不能に
支持する固定のブラケツトと；一方の摩擦パツド
の背面を押圧し得る押圧機構を備えた第１腕部お
よび他方の摩擦パツドの背面に当接する第２腕部
を有し、前記ブラケツトにブレーキデイスクの軸
方向に摺動自在に連結したブレーキキヤリパと；
を備えた形式のデイスクブレーキ装置の改良に関
する。

従来のこの種ブレーキ装置では、ブラケツトと
ブレーキキヤリパとの摺動連結にブレーキデイス
クの軸線と平行な二本の摺動ピンが用いられてい
るが、ブラケツトまたはブレーキキヤリパの一方
に取付けられる二本の摺動ピンと、他方に設けら
れる、上記ピンに対応する二個の支持孔との軸芯
を精確に一致させることは加工上極めて難しく、
これが加工能率向上の障害の一因となつている。
またブラケツトとブレーキキヤリパ間の摺動連結
部は二本の摺動ピンの使用により二個所と多く、
しかもブラケツトの支持腕にかかる制動トルクが
常に摺動ピンに側圧として作用するため、ブレー
キキヤリパの作動抵抗が大きくなるという問題が
あつた。

本考案は、上記に鑑み提案されたもので、ブラ
ケツトとブレーキキヤリパとを連結する摺動ピン
が単に一本で足りて構造が簡単で加工が容易であ
り、しかも制動トルクがブレーキキヤリパに直接
作用せず、ブレーキキヤリパを円滑に作動するこ
とができ、しかもまた従来普通に設けられるパツ
ドスプリングのばね力を利用して、ブラケツトの
デイスク回転方向退出側支持腕の制動トルク支承
面に摩擦パツドを常時当接保持できるようにして
制動時に摩擦パツドが該トルク支承面に衝突する
ことがないようにした、構造簡単且つ軽量で耐久
性の高い前記車輛用デイスクブレーキ装置を提供
することを目的とする。

そしてかかる目的を達成するために本考案は、
前記形式の車輛用デイスクブレーキ装置におい
て、ブレーキキヤリパを軽合金製とし、前記両支
持腕のうちブレーキデイスクの回転方向進入側の
第１支持腕には、前記ブレーキキヤリパの一端部
をブレーキデイスクの軸線と平行な一本の摺動ピ
ンを介して連結し、前記ブレーキキヤリパの他端
部には、該ブレーキキヤリパの前記摺動ピン周り
の回動を阻止するように前記両摩擦パツドの各裏
板に凹凸係合する、該裏板と同質の鉄系材料より
なる耐摩耗性係合部材を鋳包み結合し、その係合
部材と各裏板との凹凸係合部には、前記ブレーキ
キヤリパと摩擦パツド間に前記摺動ピン周りの離
反力が作用すると摩擦パツドを前記第２支持腕の
制動トルク支承面に圧接する分力を発生させる斜
面を設け、前記ブレーキキヤリパと摩擦パツド間
に、前記離反力を生じさせるパツドスプリングを
介装したことを特徴とする。

以下、図面により本考案の一実施例について説
明すると、図示例は自動車用デイスクブレーキ装
置であつて、車輪（図示せず）と共に回転するブ
レーキデイスクＤの一側に、ブレーキキヤリパＣ
を支持するブラケツトＢが隣接して配置され、そ
して下部の取付孔１，１を介して車体（図示せ
ず）に固着される。

上記ブラケツトＢはブレーキデイスクＤの周方
向に間隔をおいて対向する前部および後部支持腕
２，２′を有し、それらはブレーキデイスクＤの
外周部を左右に跨ぐように先端が逆Ｕ字状に屈曲
し、これら両支持腕２，２′の相対向面にはブレ
ーキデイスクＤを挾んで並ぶ二組の案内レール
３，３；３′，３′が一体に突設されている。これ
ら案内レール３，３；３′，３′に、ブレーキデイ
スクＤの両側に配置される左右一対の摩擦パツド
Ｐ，P′の裏板４，４′の両端部をそれぞれブレー
キデイスクＤの軸方向に摺動自在に且つブレーキ
デイスクＤの半径方向に移動不能に嵌合して支持
する。３ａは各案内レール３の制動トルク支承
面、３′ａは各案内レール３′の制動トルク支承面
である。而して後部支持腕２′および前部支持腕
２は、本考案の第１および第２支持腕をそれぞれ
構成している。

上記摩擦パツドＰ，P′を跨ぐように、第１およ
び第２腕部５，５′を有するブレーキキヤリパＣ
を配設し、その第１腕部５はそれに形成した油圧
シリンダ６とそこに摺合するピストン７とよりな
る油圧式押圧機構８を備えており、その油圧シリ
ンダ６は図示しない周知のブレーキマスタシリン
ダに連通し、ピストン７は一方の摩擦パツドＰの
背面にそれを押圧するように当接する。一方、第
２腕部５′は他方の摩擦パツドP′の背面に当接す
る。

ブレーキキヤリパＣの後端からは、ブラケツト
Ｂの後部支持腕２′の側面に対向する耳片９が突
出しており、この耳片９にブレーキデイスクＤの
軸線と平行な一本の摺動ピン１０をボルト１１に
より固着し、これを上記支持腕２′に設けた支持
孔１２に弾性プツシユ１３を介して摺動自在に嵌
挿し、この摺動ピン１０の露出摺動面を防水、防
塵用ブーツ１４で覆う。

上記ブレーキキヤリパＣは特にこれをAl合金
その他の軽合金製とし、その前端部にはデイスク
Ｄの軸線と平行に延びる凸状の耐摩耗性係合部材
１５を鋳包み結合する。この係合部材１５の材料
としては各摩擦パツドの裏板４，４′と同質の鉄
系材料が用いられる。この部材１５を裏板４，
４′の前端にそれぞれ連設した上向き耳部１６の
凹部１７に係合し、これによつてブレーキキヤリ
パＣの摺動ピン１０周りの回動を阻止する。上記
係合部材１５と凹部１７の各上面は摺動ピン１０
に向かつて上向きの斜面１７ａ，１５ａに形成し
てあり、ブレーキキヤリパＣと摩擦パツドＰ，
P′間に摺動ピン１０周りの離反力が加わると、そ
れら斜面１７ａ，１５ａに各摩擦パツドＰ，P′を
前部の各案内レール３の制動トルク支承面３ａに
圧接する分力が発生するようになつている。上記
のような離反力を常に与えておくために、ブレー
キキヤリパＣと両摩擦パツドＰ，P′間にパツドス
プリング１８を縮設する。

次にこの実施例の作用を説明すると、車輛の前
進走行によりブレーキデイスクＤが矢示Ｒ方向に
前転しているとき、ブレーキマスタシリンダを操
作して油圧シリンダ６に圧油を供給すれば、その
油圧により前進するピストン７が摩擦パツドＰを
ブレーキデイスクＤの一側面に圧接し、同時にそ
の反作用によりブレーキキヤリパＣが摺動ピン１
０を支持孔１２に摺動させながらピストン７の動
きと反対方向に作動して第２腕部５′を介して摩
擦パツドP′をブレーキデイスクＤの他側面に圧接
し、かくして両摩擦パツドＰ，P′はブレーキデイ
スクＤに等しく摺接してその制動を行う。その
際、摩擦パツドＰ，P′がブレーキデイスクＤより
受ける制動トルクは前部支持腕２の各案内レール
３の制動トルク支承面３ａで支承される。

この場合、前部支持腕２が制動トルクにより多
少とも前方へ倒れるような変形を生じても、この
前部支持腕２とブレーキキヤリパＣとは制動トル
クの作用方向には連結されていないため、上記変
形がブレーキキヤリパＣに何等影響せず、したが
つて摺動ピン１０に制動トルクによる側圧が加わ
らず、ブレーキキヤリパＣの作動は円滑であり、
また前述のようなパツドスプリング１８と斜面１
７ａ，１５ａとの相互作用により摩擦パツドＰ，
P′が前部支持腕２の制動トルク支承面３ａに常時
当接しているため、摩擦パツドＰ，P′が制動トル
クによりトルク支承面３ａに衝突を起こすことは
ない。

次に自動車の後進時、すなわちブレーキデイス
クＤが反Ｒ方向に後転するとき制動を行えば、摩
擦パツドＰ，P′がブレーキデイスクＤより受ける
制動トルクは後部支持腕２′の制動トルク支承面
３′ａで支承される。

この場合も、後部支持腕２′が制動トルクの作
用方向に変形すれば、ブレーキキヤリパＣは摺動
ピン１０を介して後部支持腕２′の変形に追従す
るので、摺動ピン１０には制動トルクによる側圧
が作用しない。しかし、後部支持腕２′に何等か
の原因で捩り力が作用した場合は、その力は弾性
プツシユ１３に吸収され、摺動ピン１０への影響
は少ない。ところで、上記のような捩り力が発生
する惧れのないものにおいては、弾性プツシユ１
３を介在させずに摺動ピン１０を支持孔１２に直
接嵌挿しても差支えがないことは勿論である。

また、通常は摩擦パツドＰ，P′と後部の制動ト
ルク支承面３′ａ間に僅かな間隙が生じているの
で、上記制動時にはその間に制動トルクによる衝
突が起こるが、摩擦パツドＰ，P′の衝突力は斜面
１７ａ，１５ａを経てブレーキキヤリパＣを介し
パツドスプリング１８を圧縮して吸収されるの
で、上記の衝突は緩和される。

以上のように本考案によれば、両摩擦パツド
Ｐ，P′をブレーキデイスクＤの軸方向に摺動自在
に且つブレーキデイスクＤの半径方向に移動不能
に支持する固定ブラケツトＢの第１、第２支持腕
２′，２のうち、ブレーキデイスクＤの回転方向
進入側の第１支持腕２′には、前記ブレーキキヤ
リパＣの一端部をブレーキデイスクＤの軸線と平
行な一本の摺動ピン１０を介して連結し、前記ブ
レーキキヤリパＣの他端部には、該ブレーキキヤ
リパＣの前記摺動ピン１０周りの回動を阻止する
ように前記両摩擦パツドＰ，P′の各裏板４，４′
に凹凸係合させたので、ブラケツトＢとブレーキ
キヤリパＣとを連結する摺動ピン１０が一本だけ
であるにも拘らず該摺動ピン１０周りのブレーキ
キヤリパＣの回動を確実に阻止することができ、
しかも該摺動ピン１０の一本化によつて装置は、
構造簡単且つ加工容易になりコストダウンに寄与
することができる。またブラケツトＢとブレーキ
キヤリパＣ間の摺動個所が少ない上、制動時ブレ
ーキキヤリパＣには制動トルクが直接作用しない
ため、ブレーキキヤリパＣの作動が円滑で、両摩
擦パツドＰ，P′のブレーキデイスクＤに対する圧
接力を確実に平衡させることができ、安定した制
動作用が得られると共に摩擦パツドＰ，P′の偏摩
耗を防ぐことができる。

さらに前記キヤリパＣ他端部と裏板４，４′と
の凹凸係合部には、ブレーキキヤリパＣと摩擦パ
ツドＰ，P′間に摺動ピン１０周りの離反力が作用
すると摩擦パツドＰ，P′をブラケツト第２支持腕
２の制動トルク支承面３ａに圧接する分力を発生
させる斜面１５ａ，１７ａを設け、前記ブレーキ
キヤリパＣと摩擦パツドＰ，P′間に、前記離反力
を生じさせるパツドスプリング１８を介装したの
で、パツドスプリング１８と斜面１５ａ，１７ａ
との相互作用により摩擦パツドＰ，P′を前記制動
トルク支承面３ａとの当接状態に常に保持するこ
とができ、従つて制動時に摩擦パツドＰ，P′が制
動トルクにより第２支持腕２側に押されても、そ
のトルク支承面３ａに摩擦パツドＰ，P′が勢いよ
く衝突するおそれはなく、その衝突による打音や
叩き摩耗の発生を未然に防止することができる。
しかも摩擦パツドＰ，P′およびブレーキキヤリパ
Ｃの振動を抑えるために従来普通に設けられるパ
ツドスプリング１８を、前記のように摩擦パツド
Ｐ，P′を第２支持腕２側に常時偏倚させてそのト
ルク支承面３ａに当接保持する偏倚部材に兼用す
ることができるから、構造が簡単でコストの低
減、組立性の向上に寄与し得る。

さらにブレーキキヤリパＣを軽合金製とすると
共に、そのキヤリパＣの他端部にパツド裏板４，
４′と同質の鉄系材料よりなる耐摩耗性係合部材
１５を鋳包み結合し、この係合部材１５を介して
キヤリパＣ他端部と裏板４，４′とを凹凸係合さ
せたので、ブレーキキヤリパＣの全体重量が大幅
に軽減されてデイスクブレーキ装置の軽量化に大
いに寄与することができ、しかも該キヤリパＣに
鋳包まれた耐摩耗性係合部材１５は鉄系材料製の
パツド裏板４，４′と摺接しても、摩耗やへたり
を生じにくいことから、軽合金製キヤリパＣの採
用にも拘らずそれと裏板４，４′との凹凸係合面
の耐久性が低下するおそれはなくなり、摩擦パツ
ドＰ，P′およびキヤリバＣの円滑な作動が長期に
亘り保証される。その上、前記係合部材１５はブ
レーキキヤリパＣの鋳造と同時にそれに一体的に
結合されるから製作が簡単であり、しかもその結
合強度が強力でキヤリパＣから脱落するおそれは
ない。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案装置の一実施例を示すもので、第
１図は平面図、第２図は側面図、第３図は第２図
の−線断面図、第４図は第１図の−線断
面図、第５図は第２図の−線断面図である。 Ｂ……ブラケツト、Ｃ……ブレーキキヤリパ、
Ｄ……ブレーキデイスク、Ｐ，P′……摩擦パツ
ド、２……第２支持腕としての前部支持腕、２′
……第１支持腕としての後部支持腕、３ａ……ト
ルク支承面、４，４′……裏板、５……第１腕
部、５′……第２腕部、８……油圧式押圧機構、
１０…摺動ピン、１５……係合部材、１５ａ，１
７ａ……斜面、１８……パツドスプリング。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ブレーキデイスクＤの両側に配設される左右一
   対の摩擦パツドＰ，P′と；ブレーキデイスクＤの
   周方向に間隔を存して対向する第１、第２支持腕
   ２′，２を有し、これらの支持腕２′，２間に前記
   両摩擦パツドＰ，P′をブレーキデイスクＤの軸方
   向に摺動自在に且つブレーキデイスクＤの半径方
   向に移動不能に支持する固定のブラケツトＢと；
   一方の摩擦パツドＰの背面を押圧し得る押圧機構
   ８を備えた第１腕部５および他方の摩擦パツド
   P′の背面に当接する第２腕部５′を有し、前記ブ
   ラケツトＢにブレーキデイスクＤの軸方向に摺動
   自在に連結したブレーキキヤリパＣと；を備えた
   車輛用デイスクブレーキ装置において、前記ブレ
   ーキキヤリパＣを軽合金製とし、前記両支持腕
   ２′，２のうちブレーキデイスクＤの回転方向進
   入側の第１支持腕２′には、前記ブレーキキヤリ
   パＣの一端部をブレーキデイスクＤの軸線と平行
   な一本の摺動ピン１０を介して連結し、前記ブレ
   ーキキヤリパＣの他端部には、該ブレーキキヤリ
   パＣの前記摺動ピン１０周りの回動を阻止するよ
   うに前記両摩擦パツドＰ，P′の各裏板４，４′に
   凹凸係合する、該裏板４，４′と同質の鉄系材料
   よりなる耐摩耗性係合部材１５を鋳包み結合し、
   その係合部材１５と各裏板４，４′との凹凸係合
   部には、前記ブレーキキヤリパＣと摩擦パツド
   Ｐ，P′間に前記摺動ピン１０周りの離反力が作用
   すると摩擦パツドＰ，P′を前記第２支持腕２の制
   動トルク支承面３ａに圧接する分力を発生させる
   斜面１５ａ，１７ａを設け、前記ブレーキキヤリ
   パＣと摩擦パツドＰ，P′間に、前記離反力を生じ
   させるパツドスプリング１８を介装したことを特
   徴とする車輛用デイスクブレーキ装置。