JP4493119B2 - 紫外線顕微鏡 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に300nmより短い深紫外域の波長を用いた紫外線顕微鏡に関し、特に、従来の可視域観察用顕微鏡光学系と組み合わせることも可能な紫外線顕微鏡光学系を備えた紫外線顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
IC等の高集積化に伴って配線パターンの微細化が急速に進んでいるため、その観察・検査に使用される光学顕微鏡に対して、高解像化への要求が一段と高まっている。周知のように、光学顕微鏡において高解像化を図る方法としては二つの方法があり、その一つは、対物レンズの開口数を大きくすることであり、もう一つは使用する波長を短くすることであるが、開口数については、既に0.95という限界値に達しているのが現状であるため、これ以上を望むことは至難である。そのため、波長を短くする方法を採用することが必要になってくるが、近年のICの微細化には、可視域の波長では対応することが困難となっており、可視域よりも短い波長の紫外線を使用することが必要になる。
【0003】
そこで、これまでにも種々の紫外線顕微鏡が提案されているが、水銀ランプ等の光源を使用した紫外線顕微鏡の例が、特開昭64−62609号公報,特開平5−127096号公報に記載されている。このうち、特開昭64−62609号公報に開示されているものは、紫外線の光路に配置されたレンズを全て石英ガラスで構成したものである。また、特開平5−127096号公報に開示されているものは、照明レンズや対物レンズ系等が可視域から近紫外域にわたる波長域で色収差補正されており、可視像を観察する手段と、紫外像を観察する手段とを具備したものである。更に、紫外域での波長選択時の透過率を高くする手段において、透過型素子と反射型素子を組み合わせた例が、特開平8−313728号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特開昭64−62609号公報に開示されている技術を用いた場合には、使用するガラスが石英に限定されてしまうため、色収差の補正が不可能である。従って、実質的に使用できる波長は1波長に限られてしまうという問題点を有している。また、色収差の補正ができないため、使用する1波長以外の光をフィルタ等でカットしないと、収差により像の解像及びコントラストが劣化してしまうということがある。そして、照明光学系においては収差の影響で照明ムラも発生する。また、使用できる波長が1波長のみであるため、暗い像しか観察することができない。更に、この公報には、従来の可視域観察顕微鏡との組合せに関する記載がないので、それが可能かどうか不明であるし、また、300nmより短い紫外域の波長を選択する具体的な手段又は条件が記載されていないので、そのまま実施したとしても直ちには最適な解像力・コントラスト・明るさを得ることができない。
【0005】
これに対して、特開平5−127096号公報に開示されている技術を用いた場合には、可視域から近紫外域において色収差が補正されるので、可視像観察と紫外像観察の組合せを行うことが可能である。しかしながら、300nmより短い波長域に対しては色収差が補正されていないため、この波長域での解像力・コントラストが大幅に劣化し、照明ムラも発生する。また、公報中には、可視像と紫外像を分離する手段が示されてはいるが、300nmより短い紫外域の波長を選択するための具体的な手段又は条件が示されていないので、そのまま実施したとしても直ちには最適な解像力・コントラスト・明るさを得ることができない。
【0006】
また、特開平8−313728号公報に開示されている技術は、半導体露光に使用することを目的としており、使用波長の透過率を高くして、それ以外の波長の透過率を小さくするようにしている。しかしながら、TVカメラを使用した撮像・観察を目的としていないために、この公報には、使用波長以外の透過率をどの程度まで抑える必要があるかということや、赤外域の波長に対する透過率への考慮に関する記載が全くない。また、具体的な照明光学系や結像光学系についても記載されていない。
【0007】
更に、紫外線を用いた場合には、観察・検査を行うために、TVカメラ等を用いることが必要になるが、それによって得られる画像は白黒画像であり、色情報は含まれていない。ところが、実際の検査においては、可視域の光を用いた色情報による検査も行っているため、高解像の得られる紫外域観察と色情報の得られる可視域観察を併用できることが望まれているが、上記の各公報には、そのようなことを可能とすることについての具体的な記載が全くない。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、紫外から赤外までの広い波長範囲で発光する光源を用いた場合、明るくて、解像及びコントラストの良好な像の観察が行え、しかも、従来の可視域観察用顕微鏡の光学系と好適に組み合わせて用いることも可能な、主に300nmより短い深紫外域の波長を用いた紫外線顕微鏡光学系を備えた紫外線顕微鏡を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の紫外線顕微鏡は、300nmより短い波長域の光を出射する光源と、該光源から出射した光を照明光学系、光路結合手段、対物レンズ系を通して標本に照射し該標本で反射した光を該対物レンズ系、光路結合手段、結像光学系を通して結像す紫外線顕微鏡光学系と、該紫外線顕微鏡光学系により結像された像を撮像する撮像手段と、を備えた紫外線顕微鏡において、前記紫外線顕微鏡光学系中には、少なくとも一つの透過型素子と、反射面が互いに平行に配置された少なくとも二つの反射型素子と、からなっていて、該反射型素子の少なくとも一つが光を複数回反射するように構成した波長選択手段が配置されていて、前記照明光学系,前記対物レンズ系,前記光路結合手段,前記結像レンズ系は、前記波長選択手段で選択された波長域において色収差が補正されており、前記波長選択手段選択波長域の中心透過率をTo、半値幅をδnm、300nmから前記撮像手段の最大有感度波長までの平均透過率をTm、前記撮像手段の300nmより長い波長域での有感度波長域をΔnmとしたとき、
(To・δ)/(Tm・Δ)>2
の条件式を満たしているようにする。
なお、本発明の紫外線顕微鏡においては、前記照明光学系は、前記光源と共に光源装置内に配置されたコレクタ光学系と、照明リレー光学系とから構成されていて、前記光源は、前記コレクタ光学系の前側焦点位置近傍に配置されており、前記光源装置の取付け位置と照明リレー光学系の最も光源側に配置されているレンズとの間の距離Dと、該レンズに入射する光の光束径φとの関係が、
D/φ≧4
の条件式を満たしているようにすると好ましい。
また、本発明の紫外線顕微鏡においては、前記照明光学系を構成するレンズの硝材は蛍石と石英であり、正の焦点距離を有するレンズの少なくとも1枚が蛍石であるようにすると好ましい。
【0010】
また、上記の目的を達成するために、本発明の紫外線顕微鏡は光源と、該光源から出射した光を標本に照射し該標本で反射した光を結像する顕微鏡光学系と、該顕微鏡光学系により結像された像を撮像する撮像手段と、を備えた紫外線顕微鏡において、第1の光源から出射した光を、第1の照明光学系、第1の対物レンズ系を通して標本に照射し、該標本で反射した光を、第1の対物レンズ系、第1の結像レンズ系、観察光学系を通して観察できるようになっていて、第1の対物レンズ系と第1の結像レンズ系の間には、300nmより短い波長の光を反射し、少なくとも400nmより長く700nmより短い波長の光を透過し得る第1の波長選択手段配置ている第1の顕微鏡光学系と、第2の光源から出射した300nmより短い波長域の光を有する光を、第2の照明光学系、光路結合手段、前記第1の波長選択手段、第2の対物レンズ系を通して標本に照射し、該標本で反射した光を、第2の対物レンズ系、第1の波長選択手段、前記光路結合手段、第2の結像レンズ系を通して結像し、前記撮像手段によって撮像するようになっていて、第2の光源と前記光路結合手段の間には、少なくとも一つの透過型素子と、反射面が互いに平行に配置された少なくとも二つの反射型素子と、からなっていて、該反射型素子の少なくとも一つが光を複数回反射するように構成した第2の波長選択手段配置ており、前記第2の照明光学系、前記第2の対物レンズ系、前記光路結合手段、前記第2の結像レンズ系は、第2の波長選択手段で選択された波長域において色収差が補正されており、また、前記第2の波長選択手段選択波長域の中心透過率をTo、半値幅をδnm、300nmから前記撮像手段の最大有感度波長までの平均透過率をTm、前記撮像手段の300nmより長い波長域での有感度波長域をΔnmとしたとき、
(To・δ)/(Tm・Δ)>2
の条件式を満たしているようにした第2の顕微鏡光学系と、を備えていて、第1の光源と第1の対物レンズ系、又は第2の光源と第2の対物レンズ系、を選択的に使用することによって、可視像と紫外像を選択的に観察できるようにする。
なお、本発明の紫外線顕微鏡においては、前記第2の照明光学系は、前記第2の光源と共に光源装置内に配置されたコレクタ光学系と、照明リレー光学系とから構成されていて、前記第2の光源は、コレクタ光学系の前側焦点位置近傍に配置されており、
前記光源装置の取付け位置と照明リレー光学系の最も前記第2の光源側に配置されているレンズとの間の距離Dと、該レンズに入射する光の光束径φとの関係が、
D/φ≧4
の条件式を満たしているようにすると好ましい。
また、本発明の紫外線顕微鏡においては、前記第2の照明光学系を構成するレンズの硝材は蛍石と石英であり、正の焦点距離を有するレンズの少なくとも1枚が蛍石であるようにすると好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明を実施する場合には、波長選択手段を、光源と照明光学系との間に配置し、撮像手段をTVカメラとすることが好ましく、また、照明光学系,対物レンズ系,光路結合手段,リレー光学系等は、その波長選択手段によって選択された波長域において色収差が補正されているようにし、且つその波長選択手段が、後述の条件式を満たしているようにすると、明るくて、しかも解像力とコントラストの良好な像をTV画面に表示させることができるようになる。
【0012】
周知のように、色収差の補正がなされている波長域以外の波長の光が、TVカメラに到達した場合には、光学系の収差の影響によって、像質の劣化した像が結像面に重畳されることになる。そして、これは、フレア等のノイズ成分の場合と同等に、像のコントラストを著しく低下させる要因になる。従って、色収差の補正が行われていない波長域の光を、出来る限りカットすることが望ましい。但し、その場合には、色収差の補正が行われている波長域に比べ、カットしなければならない波長域の方が遥かに広いため、波長幅と透過率を考慮して行うことが必要になる。即ち、波長幅が広くなれば、それだけ透過率を下げて、トータルでの光量を低くしなければならないということである。
【0013】
そこで、ノイズ成分は、300nmより長い波長域での平均透過率をTm、TVカメラの300nmより長い波長域での有感度波長域をΔnmとしたとき、(Tm・Δ)で表せる。また、観察像成分は、選択波長域の中心透過率をTo、半値幅をδnmとして表せる。従って、波長選択手段が、
(To・δ)/(Tm・Δ)>2 ・・・式1
の条件式を満たしたものであるとき、良いコントラストで観察することが可能になり、(To・δ)/(Tm・Δ)の値が2以下になると、色収差の影響で解像力とコントラストが劣化する。
【0014】
また、本発明は、上記の波長選択手段が、少なくとも一つの透過型素子と、反射面が互いに平行に配置された少なくとも二つの反射型素子とで構成されていて、それらの反射型素子の少なくとも一つが、光を複数回反射するような構成にすると、好適なものとなる。即ち、上記照明光学系、対物レンズ系,光路結合手段,リレー光学系は、波長選択手段で選択された波長域において、色収差が補正されているため、1波長でしか収差の補正が行われていない光学系に比べて、波長幅をもって観察することができ、明るい観察が行えるようになっている。そこで、波長選択手段を、少なくとも一つの透過型素子と、少なくとも二つの反射型素子とで構成すると、選択波長域での中心透過率を高くすることが可能になる。その理由を以下に説明する。
【0015】
従来のバンドパスフィルタのように、一つの透過型素子で波長選択を行う場合、実用的には、像質確保のため、選択波長以外の波長を全てカットする必要がある。しかし、TVカメラの感度は、可視域や赤外域にまであるために、これらの波長域までカットしようとすると、紫外の選択波長域での中心透過率が低くなり、明るさの確保が困難になってしまう。これは、一つの素子に紫外がら赤外までの広い波長域で特性を負担させなければならない点に原因がある。
【0016】
ところで、反射型素子は、透過型素子に比べて波長選択の特性は出しにくいものの、長波長側の光のカットが比較的容易に行えるという特徴を有している。しかしながら、この反射型素子は、一つでは不要光を十分にカットすることができず、十分にカットするためには複数の素子を組合せて用いることが必要になる。従って、少なくとも二つの反射型素子を用いることによって近紫外域から赤外域までの波長をカットしておき、透過型素子にかかる負担を少なくしておいてから、少なくとも一つの透過型素子で波長選択を行うようにすると、選択波長域での中心透過率を高くすることができ、その結果、好適な明るさの確保が実現できることになる。
【0017】
しかしながら、この場合、反射型素子を余り多数用いると、光軸等の調整が非常に面倒になる。そこで、反射面が互いに平行に配置された複数の反射型素子のうち少なくとも一つが、光を複数回反射できるように構成することが望ましい。そのように構成すると、反射型素子を取付けた部品を製作するにあたり、反射面が平行になるようにするだけでよいから精度の確保が容易になり、しかも、反射型素子の数を少なくすることができるので、素子間の調整が容易に行えるようになる。
【0018】
また、本発明は、上記の照明光学系を、光源と共に光源装置内に配置されているコレクタ光学系と、照明リレー光学系とで構成するようにし、光源はコレクタ光学系の前側焦点位置近傍に配置されていて、光源装置取付け位置と照明リレー光学系の最も光源側に配置されているレンズとの間の距離Dと、該レンズに入射する光の光束径φとが、
D/φ≧4 ・・・式2
の条件式を満たしているようにすると、より有効なものとなる。
【0019】
即ち、光源がコレクタ光学系の前側焦点位置近傍に配置されることによって、コレクタ光学系と照明リレー光学系との間の光束を略平行光にすることが可能になるから、光路内に配置される干渉フィルタ等の角度特性の影響を受けにくくすることが可能になる。また、略平行光となることによって、ここに配置される光学素子等の数や大きさに対応させて、距離Dを或る程度任意に設定することができるようになる。特に、上記のような構成の波長選択手段を配置する場合には、反射面間の間隔を或る程度離さないと、コレクタ光学系から出てきた光束を遮ってしまうことになるが、照明光学系をこのように構成すれば好適な配置を採ることができるため、光束を遮ることがない。
【0020】
ところで、上記の構成の波長選択手段においては、一方の反射面で少なくとも1回、他方の反射面で少なくとも2回、合計少なくとも3回の反射が行われることになるため、この部分で最低でも光束径の3倍の距離を確保しておく必要がある。このほかに、透過型素子も配置することになるため、そのスペースも考慮すると、光束径の4倍程度の距離は最低限確保しておかなければならいことになる。上記の条件式2は、このようなことも考慮して定めたものであり、D/φの値が4を下回ると、少なくとも上記の構成の波長選択手段を配置することは困難になる。
【0021】
更に、本発明においては、照明光学系を構成しているレンズの硝材を、蛍石と石英にし、正の焦点距離を有するレンズの少なくとも1枚は、蛍石にすることが好ましい。光学系の色収差を補正するためには、少なくとも2種類の硝材を組合せることが必要であるが、波長が300nmよりも短い光を良好に透過する硝材は、実質的に蛍石と石英に限定される。そのうち蛍石は、石英に比べて波長分散が小さいため、これを正の焦点距離を有するレンズに用いると、色収差の発生を効果的に抑えることができる。但し、蛍石は柔らかい硝材であり、加工性が良くないため、実際に使用する場合は、必要最小限の枚数に止めておくことが望ましい。
【0022】
次に、請求項4に記載の発明について説明する。この発明は、上記した請求項1に係る発明の紫外域観察用顕微鏡の光学系と、従来の可視域観察用顕微鏡の光学系とを組合せ、紫外域観察と可視域観察の両方を行えるようにした顕微鏡光学系に関するものである。従って、紫外域観察用顕微鏡の光学系に関する説明の殆どは、上記の説明と重複することになるので、上記の説明を援用することとし、また、可視域観察用顕微鏡の光学系については特に具体的な説明をするまでもないので、両者の結合構成部分についてのみ説明することにする。
【0023】
本発明は、従来の可視域観察用顕微鏡光学系における対物レンズ系と結像レンズ系との間に、上記した波長選択手段とは別に、もう一つの波長選択手段が配置されていている。そして、後者の波長選択手段は、300nmより短い波長の光を反射し、少なくとも400nmより長く700nmより短い波長の光を透過させるようになっているため、対物レンズと光源光を選択することによって、この波長選択手段で反射された紫外域の光は、上記したTV等の表示手段によって観察でき、また、この波長選択手段を透過した可視域の光は、従来の可視光用の観察光学系を通して観察することが可能になっている。
【0024】
【実施例】
以下、図1〜図7を用いて実施例を説明するが、その前に、図8を用いて、従来の可視域観察用顕微鏡の一般的な構成を説明しておく。顕微鏡本体1には、内部に可視用光源を配置した可視用光源装置2が取り付けられており、その光源から出た光は、可視用照明リレー光学系3を通してからハーフミラー4で反射され、対物レンズ5を通して標本を照明するようになっている。また、観察光学系ユニット6は、顕微鏡本体1から取り外し可能になっていて、内部には結像レンズ7を含んだ観察光学系が配置されている。そして、標本から反射した光は、対物レンズ5を通り、ハーフミラー4を透過することによって観察光学系ユニット6内に導かれ、それを眼によって観察できるようになっている。
【0025】
図1に示した実施例は、上記した従来の可視域観察用顕微鏡における顕微鏡本体1と観察光学系ユニット6の間に、紫外用顕微鏡ユニット8を配置したものであって、従来の可視域観察用顕微鏡に紫外用顕微鏡ユニット8を簡単に取付けることができ、それによって1台で可視域観察と紫外域観察の両方が可能になることを示したものである。従って、図8で説明したものには同じ符号を付け、それらについての説明は省略する。尚、周知のように、紫外域の観察を行う場合には、対物レンズ5を交換しなければならないが、以下において紫外域観察についての説明をする場合には、便宜上、その交換された対物レンズにも同じ符号5を付けて説明することにする。
【0026】
先ず、紫外用顕微鏡ユニット8には、紫外用光源装置9が取付けられていて、その内部には水銀ランプとコレクタレンズが配置されている。更に、撮像手段としてのTVカメラ10も取付けられていて、撮像した標本像を表示手段11で観察できるようになっている。そして、上記の水銀ランプから出た光は、波長選択手段12によって、使用する紫外線のみを選択し、紫外用照明リレー光学系13,光路結合手段14,ミラー15,紫外用結像レンズ16,波長選択手段17,1/4波長板18,ハーフミラー4,対物レンズ5を経て標本を照明するようになっている。
【0027】
また、標本で反射した光は、対物レンズ5,ハーフミラー4,1/4波長板18,波長選択手段17,紫外用結像レンズ16,ミラー15,光路結合手段14,紫外用リレー光学系19を経て結像され、TVカメラ10によって撮像されるようになっている。尚、対物レンズ5が可視用の場合には、可視用光源装置2を用い、点線の光路にしたがって眼による観察を行い、紫外用の場合には、1点鎖線の光路にしたがって表示手段11によって観察する。また、本実施例の場合には、光路結合手段14として偏向ビームスプリッタを用いているため、1/4波長板18が光路に配置されている。このように構成すると、ハーフプリズムを用いた場合より、約2倍の明るさを得ることができるようになる。また、1/4波長板18は、紫外用顕微鏡ユニット8の内部に配置することが好ましいが、本実施例のように顕微鏡本体1に配置しても、機能上は何ら問題がない。
【0028】
ここで、波長選択手段12は、図2に示す特性を有しており、先ず、選択波長域の中心透過率(To)は、図2(a)に示すように約95%であるが、実際には、膜物質による吸収が若干あるので、70%程度と見なしておくのが無難である。また、半値幅(δ)は10nmであって、300nmより長い波長域での平均透過率(Tm)は、図2(b)に示すように約0.1%以下である。更に、TVカメラ10の分光感度特性は、図3に示すように、波長1100nmあたりまで感度を有していることがわかる。従って、TVカメラ10の300nmより長い波長域での有感度波長域(Δ)は、800nmとなる。そして、これらを上記した条件式1に代入して計算すると、
(70×10)/(0.1×800)=8.75>2
となり、十分に良いコントラストで観察することが可能になっている。
【0029】
また、本実施例に用いられている波長選択手段12の具体的な構成が、図4に示されている。この場合には、光束が、反射面を平行にして配置された二つの反射型素子20,21の間において、反射型素子20で2回、反射型素子21で1回反射されてから透過型素子22を透過する構成になっている。しかし、図5に示したような構成にし、反射型素子20′で3回、反射型素子21′で2回反射させるようにしても良い。他方、もう一つの波長選択手段17は、図6に示す特性を有していて、300nmより短い波長の光を反射し、400nmより長く700nmよりも短い波長の光を透過させるので、本実施例の顕微鏡は、紫外域観察と可視域観察の両方が可能となっている。
【0030】
図7は、本実施例の照明光学系の構成を説明するためのものである。この場合、紫外用光源装置9の内部にコレクタレンズ9aが配置されているので、紫外用照明ユニット8に対する取付け部23までをコレクタ光学系とすると、その取付け部23から、最も光源側に配置されている紫外用照明リレー光学系13のレンズ13aまでの距離(D)は70mmであり、レンズ13aに入射する光束径(φ)は12mmである。従って、これらを上記した条件式2に代入して計算すると5.83となり、4よりも大きい値となっている。尚、図7における符号24は標本像面である。
【0031】
また、図7に示した光学系の数値データは、次の表のようになっている。尚、このデータからも分かるように、紫外用照明リレー光学系13を構成しているレンズ13a,13b中の各凸レンズは、共に硝材は蛍石となっている。
Figure 0004493119
【0032】
尚、本実施例は、請求項4に係る発明の実施例として説明したものであるが、本実施例における観察光学系ユニット6を無くし、波長選択手段17をミラーに置き換えれば、請求項1に係る発明の実施例になることは言うまでもない。
【0034】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の紫外線顕微鏡、主に300nmより短い深紫外域の波長、特に紫外から赤外までの波長域で発光する光源を用いた場合、従来よりも明るくてコントラストの良い観察を行うことが可能になる。また、従来の可視域観察用顕微鏡との組合せも容易であり、特に工業用顕微鏡に寄与するところが大きい
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用した顕微鏡の実施例を示す構成図である。
【図2】 図1に示した波長選択手段12の特性図であって、図2(a)は選択波長域の透過率を示したものであり、図2(b)は300nmより長い波長域での透過率を示したものである。
【図3】 図1に示したTVカメラ10の分光感度特性図である。
【図4】 図1に示した波長選択手段12の具体的な構成を示した図である。
【図5】 図1に示した波長選択手段12のもう一つの具体的な構成を示した図である。
【図6】 図1に示したもう一つの波長選択手段17の特性図である。
【図7】 実施例の照明光学系の構成を説明するための図である。
【図8】 一般的な可視域観察用顕微鏡の構成図である。
【符号の説明】
1 顕微鏡本体
2 可視用光源装置
3 可視用照明リレー光学系
4,15 ミラー
5 対物レンズ
6 観察光学系ユニット
7 結像レンズ
8 紫外用顕微鏡ユニット
9 紫外用光源装置
9a コレクタレンズ
10 TVカメラ
11 表示手段
12,17 波長選択手段
13 紫外用照明リレー光学系
13a,13b レンズ
14 光路結合手段
16 紫外用結像レンズ
18 1/4波長板
19 紫外用リレー光学系
20,20′,21,21′ 反射型素子
22 透過型素子
23 取付け部
24 標本像面

Claims (6)

  1. 300nmより短い波長域の光を出射する光源と、該光源から出射した光を照明光学系、光路結合手段、対物レンズ系を通して標本に照射し該標本で反射した光を該対物レンズ系、光路結合手段、結像光学系を通して結像す紫外線顕微鏡光学系と、該紫外線顕微鏡光学系により結像された像を撮像する撮像手段と、を備えた紫外線顕微鏡において、
    前記紫外線顕微鏡光学系中には、少なくとも一つの透過型素子と、反射面が互いに平行に配置された少なくとも二つの反射型素子と、からなっていて、該反射型素子の少なくとも一つが光を複数回反射するように構成した波長選択手段が配置されていて、
    記照明光学系,前記対物レンズ系,前記光路結合手段,前記結像レンズ系は、前記波長選択手段で選択された波長域において色収差が補正されており、
    前記波長選択手段選択波長域の中心透過率をTo、半値幅をδnm、300nmから前記撮像手段の最大有感度波長までの平均透過率をTm、前記撮像手段の300nmより長い波長域での有感度波長域をΔnmとしたとき、
    (To・δ)/(Tm・Δ)>2
    の条件式を満たしていることを特徴とする紫外線顕微鏡。
  2. 前記照明光学系は、前記光源と共に光源装置内に配置されたコレクタ光学系と、照明リレー光学系とから構成されていて、
    前記光源は、前記コレクタ光学系の前側焦点位置近傍に配置されており、
    前記光源装置の取付け位置と照明リレー光学系の最も光源側に配置されているレンズとの間の距離Dと、該レンズに入射する光の光束径φとの関係が、
    D/φ≧4
    の条件式を満たしていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線顕微鏡。
  3. 前記照明光学系を構成するレンズの硝材は蛍石と石英であり、正の焦点距離を有するレンズの少なくとも1枚が蛍石であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線顕微鏡。
  4. 光源と、該光源から出射した光を標本に照射し該標本で反射した光を結像する顕微鏡光学系と、該顕微鏡光学系により結像された像を撮像する撮像手段と、を備えた紫外線顕微鏡において、
    第1の光源から出射した光を、第1の照明光学系、第1の対物レンズ系を通して標本に照射し、該標本で反射した光を、第1の対物レンズ系、第1の結像レンズ系、観察光学系を通して観察できるようになっていて、第1の対物レンズ系と第1の結像レンズ系の間には、300nmより短い波長の光を反射し、少なくとも400nmより長く700nmより短い波長の光を透過し得る第1の波長選択手段を配置している第1の顕微鏡光学系と、
    第2の光源から出射した300nmより短い波長域の光を有する光を、第2の照明光学系、光路結合手段、前記第1の波長選択手段、第2の対物レンズ系を通して標本に照射し、該標本で反射した光を、第2の対物レンズ系、第1の波長選択手段、前記光路結合手段、第2の結像レンズ系を通して結像し、前記撮像手段によって撮像するようになっていて、第2の光源と前記光路結合手段の間には、少なくとも一つの透過型素子と、反射面が互いに平行に配置された少なくとも二つの反射型素子と、からなっていて、該反射型素子の少なくとも一つが光を複数回反射するように構成した第2の波長選択手段を配置しており、前記第2の照明光学系、前記第2の対物レンズ系、前記光路結合手段、前記第2の結像レンズ系は、第2の波長選択手段で選択された波長域において色収差が補正されており、また、前記第2の波長選択手段の選択波長域の中心透過率をTo、半値幅をδnm、300nmから前記撮像手段の最大有感度波長までの平均透過率をTm、前記撮像手段の300nmより長い波長域での有感度波長域をΔnmとしたとき、
    (To・δ)/(Tm・Δ)>2
    の条件式を満たしているようにした第2の顕微鏡光学系と、
    を備えていて、第1の光源と第1の対物レンズ系、又は第2の光源と第2の対物レンズ系、を選択的に使用することによって、可視像と紫外像を選択的に観察できるようにしたことを特徴とする紫外線顕微鏡。
  5. 前記第2の照明光学系は、前記第2の光源と共に光源装置内に配置されたコレクタ光学系と、照明リレー光学系とから構成されていて、
    前記第2の光源は、コレクタ光学系の前側焦点位置近傍に配置されており、
    前記光源装置の取付け位置と照明リレー光学系の最も前記第2の光源側に配置されているレンズとの間の距離Dと、該レンズに入射する光の光束径φとの関係が、
    D/φ≧4
    の条件式を満たしていることを特徴とする請求項4に記載の紫外線顕微鏡。
  6. 前記第2の照明光学系を構成するレンズの硝材は蛍石と石英であり、正の焦点距離を有するレンズの少なくとも1枚が蛍石であることを特徴とする請求項4又は5に記載の紫外線顕微鏡。
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