以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる自動車Vの車室内前部の概略構成を示す。この車室内前部には、乗員が着座するためのシート1がフロアパネル2上に配設されているとともに、車両前方側にはフロントガラスGの下方にインストルメントパネル3が設けられている。そして、このインストルメントパネル3から乗員側に向かって突出するようにステアリングホイールW(操作手段)が設けられているとともに、該インストルメントパネル3の下側の空間にはブレーキペダル等のペダル5(操作手段)が配設されている。なお、前記シート1の上方には、前記フロントガラスGから車両後方に連続するようにルーフ6が設けられていて、該シート1の後方には、後部座席のシート7が配設されている。
前記シート1は、図1に示すように、背の高さが異なる乗員が着座した状態でも、図示しないボンネットの前側部分が視界に入るような目線の高さXになるとともに、乗員の足によるペダル5の操作性が良く且つ着座姿勢が安楽になるように、前後方向及び上下方向の座面の位置や、座面の傾斜等が調整可能に構成されている。
すなわち、前記シート1は、あらゆる体格の乗員が着座した場合でも上述の条件を満たすために、図2に示すように、膝や足首等の屈曲角度を保ったまま、ペダル5の回動中心5aを中心に乗員を上下方向に回転(実線の位置から点線の位置まで)させて、体格の異なる乗員毎に適した目線の高さになるように位置調整を行うように構成されていて、例えば乗員の背が高くなるほど、シート1の前後方向の位置(操作手段との前後方向の相対位置)は後側に、上下方向の位置は下側になるように構成されている。なお、図2のように乗員の着座位置を変えた場合には、該乗員のヒップポイントはP1からP1’に移動することになる。
ところで、上述のようにペダル5の回動中心5aを中心として乗員の位置を回動させて、目線の高さをボンネット前側が視界に入るような高さXに合わせると、背の小さい乗員及び背の高い乗員(図中にそれぞれ実線で示す)のヒップポイント(Hpt)の上下方向の移動量は、図3に示すように、それよりも少し背の高い乗員及び背の低い乗員(図中にそれぞれ一点鎖線で示す)の場合のヒップポイントの移動量とあまり変わらない(図中の太い点線で示すヒップポイントの軌跡を参照)。つまり、背の低い乗員の場合には、ペダル5の操作性を考慮して、あまりヒップポイントを高くしないようにする一方、背の高い乗員の場合には、目線の高さを合わせるために、あまりヒップポイントを低くしないようにする必要がある。そのため、本発明のシート1では、乗員のヒップポイントの位置が図6に示すような関係を満たすように座面の位置調整が行われるようになっている。
ここで、前記図6について説明すると、背の小さい乗員がシート1に着座している場合、すなわち該シート1の座面が前後方向の可動範囲のうち車両前方側(図において前側移動区間A)に位置している場合には、乗員のヒップポイント(Hpt)の前後移動量に対する上下移動量(上昇量)を、シート1の座面が前後方向の中間位置に位置している場合(図において中間移動区間B)よりも小さくなるようにすることで、着座した乗員のヒップポイントがあまり高くならないようにする。一方、背の高い乗員がシート1に着座している場合、すなわち該シート1の座面が車両後方側(図において後側移動区間C)に位置している場合には、乗員のヒップポイントの前後移動量に対する上下移動量(下降量)を、シート1の座面が中間移動区間Bに位置している場合よりも小さくなるようにすることで、着座した乗員のヒップポイントがあまり低くならないようにする。
以下で、前記シート1の具体的な構造について詳細に説明する。
前記シート1は、図4に示すように、乗員の体重を下方から支えるシートクッション11と、該シートクッション11から上方に延び、乗員の背中を支承するシートバック12と、該シートバック12の上側に設けられたヘッドレスト13とからなり、前記シートクッション11の下側には、シート1全体を車両前後方向及び上下方向に移動させる位置調整機構20が設けられている。
前記シートクッション11は、ウレタン等からなるクッション材の内部にスプリング等が配設され、乗員の重量に応じて下方向にたわむクッション部11aと、該クッション部11aを下方から支持するためのインナーパン11bと、該インナーパン11bを下方から覆うように配設されるアウターパン11cとからなり、該クッション部11a、インナーパン11b及びアウターパン11cは一体で前後方向及び上下方向に移動するように構成されている。
前記位置調整機構20は、フロアパネル2上に車両前方側が高くなるように車幅方向に並設された車両前後方向に長い支持部材15,15と、前記シートクッション11のアウターパン11cとの間に設けられたもので、該シートクッション11の車両前側を各支持部材15に対して前後方向にスライド可能に支持するスライド部21(スライド手段)と、該シートクッション11の車両後側を各支持部材15に対して回動自在に支持するリンク部22(リフト手段)とからなる。前記支持部材15は、車両前側が上方に向かって開口する断面略コの字状に形成されている一方、車両後側は断面略矩形状に形成されており、該略コの字状断面部分には前記スライド部21が配設され、略矩形状断面部分には前記リンク部22がピン等によって枢支されている。なお、前記支持部材15,15は、車両前方側が高くなるように、車両前側部分がフロアパネル2上に設けられたクロスメンバ4の上面に固定されている。
詳しくは、前記スライド部21は、図5(a)にその断面を示すように、前記支持部材15の略コの字状断面内を車両前後方向に移動可能に構成されたもので、2つの円筒部材21a,21a(ローラー)と、それらの円筒部材21a,21aを回転自在に連結する正面視で略逆T字状の連結部材21bとからなる。この連結部材21bの上部は、前記アウターパン11cから下方に延びるブラケット部11dにピン21cによって回動自在に係止されており、前記円筒部材21a,21aが支持部材15の略コの字状断面部内を車両前後方向に回転しながら移動する際に、該支持部材15に対するシートクッション11の角度が変化すると、それに応じて回動するようになっている。
一方、前記リンク部22は、図4及び図5に示すように、棒状のリンク部材22aの上端側が前記アウターパン11cに、下端側が前記支持部材15上に設けられたブラケット15aに、それぞれピン22b,22cによって回転自在に連結されているもので、該リンク部22aの長手方向の中央部分は、中間部材23を介して操作レバー24と連結されている。すなわち、前記リンク部22は、この操作レバー24を上方に回動させると、前記中間部材23が車両前方に引っ張られて、前記リンク部材22aを支持部材15側のピン22cを中心として車両前方に回動させる一方、その状態から前記操作レバー24を下方に回動させると、前記中間部材23が車両後方に押されて、前記ピン22cを中心として車両後方に回動させるように構成されている。すなわち、このリンク部22の回動可能な範囲によってシートクッション11の座面の前後方向の可動範囲が決められる。
そして、このようなリンク部22の動きによって、シートクッション11が車両前方へ移動すると、該シートクッション11の座面は図9に示すように車両前方側に向かって傾く(車両後方へ移動する場合には車両後方側に大きく傾く)ことになるため、シート1に着座した乗員の膝や足首の角度をシートクッション11の前後方向の位置に関係なくほぼ一定にすることができ、安楽な姿勢を保つことができる。このようにシートクッション11の座面の傾きを変える前記リンク部22がチルト手段に対応する。なお、前記図9は、フロア面に対する座面の傾斜角度を示していて、角度が大きいほど車両後方側へ傾いていることを意味する。
以上の構成により、前記操作レバー24を上方に回動させると、リンク部22ではリンク部材22aを支持部材15に対して車両前方に回動させ、シートクッション11全体を車両前方且つ上方に向かって移動させる。このとき、スライド部21では、支持部材15の略コの字状断面部内を円筒部材21a,21aが車両前方に向かって移動し、これにより、前記シートクッション11の前部が車両前方へ移動する。一方、前記操作レバー24を上方位置から下方に回動させると、リンク部22では、リンク部材22aを支持部材15に対して車両後方に回動させ、シートクッション11全体を車両後方且つ下方に向かって移動させる。このとき、スライド部21では、支持部材15の略コの字状断面部内を円筒部材21a,21aが車両後方に向かって移動し、前記シートクッション11の前部が後方へ移動する。
そして、前記スライド部21及びリンク部22を下方から支持する支持部材15は、上述のように、車両前側が高くなるように配設されていることから、シートクッション11は、車両前方へ移動する際に、斜め上方へ移動することになり、該シートクッション11上に着座した乗員のヒップポイントは、車両前方に向かうほど上方に位置することになる。
ここで、前記シートクッション11のクッション部11aのたわみ特性(収縮特性)は、前記位置調整機構20によってシートクッション11が上述のように移動する際に、乗員のヒップポイントの位置が前記図6に示す関係になるように設定される。このたわみ特性は、シート1が車両後方側に位置している場合、すなわち背の高い乗員が着座している場合には、相対的に乗員のおしりの厚みが厚い反面、体重が重いという特性を考慮する一方、前記シート1が車両前方側に位置している場合、すなわち背の低い乗員が着座している場合には、相対的に乗員のおしりの厚みが薄く、体重も軽いという特性を考慮して決められる。つまり、前記クッション部11aのたわみ特性は、シートクッション11の前後方向位置に応じて設定されるモデル体型に基づき、おしりの厚みの変化や体重の変化等を考慮して決められる。なお、前記図6において、ヒップポイントの上下方向の移動量がヒップポイント高さに、該図6の関係を満たすようなヒップポイント高さが所定高さにそれぞれ対応する。
具体的には、前記クッション部11aを図4のように構成することで、確実に所定のたわみ特性を得ることができ、乗員のヒップポイントの位置が前記図6に示す関係を確実に満たすようになる。
すなわち、図4に示すように、シートクッション11のクッション部11aの内部で乗員のヒップポイントに対応する位置に、複数の突条70b,70b,…の形成されたゴム材料からなる弾性部材70(収縮特性変更手段)を配設する。詳しくは、この弾性部材70は、平板状の基部70aと、該基部70aの上面から斜め上方に向かって互いに平行して突出する複数の突条70b,70b,…とが一体形成されたもので、該突条70bの延びる方向が車両前方となるように前記クッション部11a内に配設されている。
これにより、例えばシート1が背の高い乗員の着座位置にある場合(図4中に二点鎖線で示す)には、図9にも示すようにシートクッション11は車両後方側に位置して座面が車両後方に向かって大きく傾斜していることから、前記弾性部材70の各突条70bはフロア面に対して垂直に近い角度になり、その状態で乗員が着座すると、該各突条70bは長手方向に圧縮力を受けて弾性変形するだけで、乗員のヒップポイントはあまり下方に沈み込まない。
一方、例えばシート1が背の低い乗員の着座位置にある場合(図中に実線で示す)には、シートクッション11は車両前方側に位置して座面の傾斜も相対的に小さいことから、前記弾性部材70の各突条70bはフロア面に対して倒れた状態になり、その状態で乗員が着座すると、該各突条70bはさらに倒れる方向に力を受け、大きく変形する。そのため、この場合には、乗員のヒップポイントの位置は前記弾性部材70が設けられていない場合よりも大きく下方に移動することになる。
したがって、クッション部11a内に、シートクッション11の座面の前後方向の傾斜角度に応じて該クッション部11aのたわみ量を変化させる図4のような弾性部材70を設けることで、乗員のヒップポイントの位置が確実に図6に示す関係を満たすようになる。すなわち、図4のような簡単な位置調整機構を用いても、前記弾性部材70を設けることで、あらゆる体格の乗員に適した着座姿勢を確実に提供することが可能になる。
ここで、前記位置調整機構20及び弾性部材70を用いることによって、乗員のヒップポイントの位置が図6の関係を満たすことを実際のデータに基づいて説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図6の関係を実現するために必要なシートクッション11の移動軌跡を求め、この軌跡を前記位置調整機構20によって実現できるかどうかという観点から説明を行う。
まず、図7(a)に示すような理想のヒップポイントの位置(前記図6と同じ)において、シートクッションの前後位置、すなわち乗員のヒップポイントの前後位置に応じて乗員のモデル体型が推定されるため、そのモデル体型からおしりの厚みを推定して、このおしりの厚み分を前記図7(a)に示すヒップポイントの高さから減じる。これにより、図7(b)に示すように、ヒップポイントの高さからおしりの厚さを引いた値、すなわち必要な座面の高さが得られる。
一方、乗員のヒップポイントの前後位置に応じたモデル体型を考慮することによって、図8(a)に示すように、該ヒップポイントの前後位置に対する体重の関係を求めることができる。そして、この関係から、シートクッション11のクッション部11aのクッション特性や弾性部材70の変形特性を考慮して、該クッション部11a単体及び弾性部材70単体のたわみ量を計算することでき、これらのたわみ量からクッション部11aと弾性部材70とを併用した場合のたわみ量が求められる(図8(b)参照)。なお、前記弾性部材70の変形量は、上述のとおり、前記図9に示す座面の傾斜角度に応じて変化するようになっている。
そして、前記図7(b)の座面の高さと前記図8(b)のたわみ量との和によって、図8(c)に示すようなシートクッション11の前後移動量と上方移動量との関係を求めることができる。この関係は、図4に示すシートの移動軌跡(図中に太い一点鎖線で示す)とほぼ同じであり、これにより、該図4に示す位置調整機構20に前記弾性部材70を設けることで、乗員のヒップポイントの位置が前記図7(a)に示す関係を満たすことが分かる。
以上の構成により、着座した乗員のヒップポイントの軌跡について図6に示すような関係を実現することができるため、あらゆる体格の乗員に対して適切な着座姿勢を提供することができる。すなわち、背の低い乗員が着座した場合(ヒップポイントの位置が前側移動区間Aに位置している場合)でも、該乗員のヒップポイントをあまり高くしないようにすることで、目線の高さ及び安楽な着座姿勢を確保しつつ、ペダルの操作性を確保することができ、適切な着座姿勢を提供することができる。一方、背の高い乗員が着座した場合(ヒップポイントの位置が後側移動区間Cに位置している場合)でも、該乗員のヒップポイントをあまり低くしないようにすることで、背の低い乗員と同じ目線の高さを保つことができ、適切な着座姿勢を提供することができる。
そして、クッション部11bの収縮特性をシートクッション11の位置に応じて変化させることで、シート1の位置調整機構20をスライド部21及びリンク部22という単純な構成としても、上述のように乗員の体格に適した着座姿勢を提供することが可能になる。しかも、該位置調整機構20の操作レバー24の操作のみによって、すなわち一の操作によって上述のような着座姿勢を容易に提供することが可能となる。
(実施形態2)
実施形態2は、図10〜図12に示すように、位置調整機構30として、シートクッション11の車両前方側及び後方側にスライド部31,32を設けるとともに、クッション部11aにシートクッション11の座面の位置に応じてたわみ量を補正する補正機構80を設けたもので、上述の実施形態1とは、シートクッション11の車両後方側にスライド機構が設けられ、シートクッション11の前後方向への移動がモータ33によって行われる点と前記弾性部材70の代わりに前記補正機構80を設けた点が異なるだけなので、実施形態1と異なる部分についてのみ以下で詳しく説明する。
すなわち、図10に示すように、シートクッション11のアウターパン11cは、その車両前方側及び後方側で、スライド部31,32を介して、フロアパネル2上に固定された支持部材16と連結されている。この支持部材16は、上述の実施形態1と同様、車両前後方向に長い部材であり、車両前方側が高くなるように、該車両前方側がクロスメンバ4の上面に固定されている。また、該支持部材16には、その車両前方側でスライド部31の可動範囲に対応する部分及び車両後方側でスライド部32の可動範囲に対応する部分に、それぞれ、上方に向かって開口する断面略コの字状のレール部材16a,16bが設けられていて、前記支持部材16のうち、車両後方側でレール部材16bの設けられている部分は、前記シートクッション11の後方側が所定の高さになるように、すなわち前記スライド部32が所定高さに位置付けられるように、上方に突出している。
なお、車両後方側のレール部材16bは、車両前方側のレール部材16aよりもフロア面に対して大きく傾くように配設されており、シートクッション11が車両前方へ移動すると、前記実施形態1と同様、図9に示すように該シートクッション11の座面は車両前方側に向かって傾くように構成されている。これにより、シート1に着座した乗員の膝や足首の角度をシートクッション11の前後方向の位置に関係なくほぼ一定にすることができ、安楽な姿勢を保つことができる。このようにシートクッション11の座面の傾きを変えることのできる前記レール部材16b及びスライド部32がチルト手段に対応する。
前記スライド部31,32は、図11(a)〜(c)にその断面を示すように、上述の実施形態1のスライド部21と同様のスライド機構であるため、詳細な説明は省略するが、前記スライド部31には、図11(b)に示すように、シートクッション11を前後方向に移動させるためのモータ33が設けられているので、このモータ33による駆動機構について以下で説明する。
前記モータ33は、支持部材16の下方に取付部材33aを介して取り付けられていて、第1ギヤ34及び第2ギヤ35を介して、スライド部31の円筒部材31a,31a(ローラー)を回転自在に支持する連結部材31bにトルクを伝達するように構成されている。具体的には、該連結部材31bは、支持部材16の長手方向に延びる平板部材であり、その下面は前記第2ギヤ35と噛合するように鋸歯状に形成され、いわゆるラック機構を構成するようになっている。また、前記連結部材31bの下面に第2ギヤ35が噛合可能なように、前記支持部材16の上下面及びレール部材16aの下面にはそれぞれ貫通孔が形成され、これらの貫通孔内に前記第2ギヤ35が位置付けられるようになっている。
この構成により、前記モータ33が回転駆動すると、そのトルクは該モータ33に直結された第1ギヤ34を介して第2ギヤ35に伝達され、該第2ギヤ35と噛合したスライド部31の連結部材31bを前後方向に移動させる。これにより、該連結部材31bにピン31cで連結されたアウターパン11cも前後方向に移動して、シート1全体の前後位置が調整される。なお、当然のことながら、シート1、すなわちシートクッション11の座面の前後方向の可動範囲は、前記スライド部31の前後方向の可動範囲によって決められる。
本実施形態も、上述の実施形態1と同様、スライド部31,32の配設される支持部材16は、車両前方側が高くなるように傾斜配置されていることから、シート1全体が車両前方に向かって移動する場合には、斜め上方に向かって移動することになる。そのため、乗員がシート1に着座した状態で該シート1を車両前方側に移動させると、乗員のヒップポイントは斜め上方に向かって移動する。
そして、本実施形態では、乗員のヒップポイントの位置が図6に示す関係になるように、シートクッション11のたわみ特性をシートクッション11の位置に応じて変化させるように構成されている。すなわち、図10及び図12に示すように、シートクッション11のインナーパン11bとアウターパン11cとの間には、車幅方向に延びる回転軸83に連結された複数(本実施形態では2つ)のカム81,81と、該回転軸83に直結されるモータ82とからなる補正機構80が設けられている。この補正機構80は、前記カム81,81をモータ82によって回転させることで、略楕円状に形成された該カム81,81が前記インナーパン11bをアウターパン11cに対して上下動させるものである。
ここで、前記シートクッション11のクッション部11aは、図12に示すように、その座面側のカバーとアウターパン11cとが、クッション材及びインナーパン11bに設けられた貫通孔を挿通する連結部材11eによって連結されているため、上述のように、前記補正機構80のカム81,81によってインナーパン11bをアウターパン11cに対して上下動させると、それに応じて、前記クッション部11aの厚みが変化するようになっている。このように前記クッション部11aの厚みが変化すると、その厚みによって該クッション部11aのたわみ特性も変化する。すなわち、前記クッション部11aの厚みが薄い場合には、乗員の重量による該クッション部11aの下方へのたわみ量は該クッション部11aの厚みが厚い場合よりも小さくなる。
したがって、前記シートクッション11の位置に応じて、前記補正機構80によりクッション部11aの厚みを変化させることで、該クッション部11aのたわみ特性を変化させて、乗員のヒップポイントの位置を前記図6に示すような関係にすることが可能となる。すなわち、前記シートクッション11が車両後方側に位置している場合には、前記補正機構80のカム81,81を回転させてクッション部11aの厚みを薄くし、乗員が着座しても該クッション部11aをあまり下方にたわませないようにすることで、背の高い乗員のヒップポイントが下方に下がりすぎるのを防止することができる。一方、前記シートクッション11が車両前方側に位置している場合には、前記クッション部11aの厚みを薄くすることなく、そのままの厚さにすることで、乗員が着座すると該クッション部11aが下方に大きくたわみ、背の低い乗員のヒップポイントが上方に上がりすぎるのを防止することができる。
以上より、シートクッション11の位置に応じて補正する補正機構80を設けることで、該シートクッション11のクッション部11aのたわみ量を変化させることができ、あらゆる体格の乗員に対して最適な着座姿勢を確実に提供することが可能になる。しかも、上述のような構成の補正機構80を設けることで、位置調整機構30の構成を単純なものとすることができるとともに、特殊なクッション材料を用いることがないのでコスト低減を図ることができる。さらに、前記カム81,81をモータ82によって制御することでクッション部11aのたわみ特性を変化させることができるため、該クッション部11aのたわみ特性の細かい制御も可能となる。
なお、乗員のヒップポイントの位置が図6に示すような関係を満たすためには、前記補正機構80によって、クッション部11aのたわみ特性を、例えば、図14(b)に示すような特性に設定すればよい。以下で、その根拠について説明する。
まず、図13(a)に示すような理想のヒップポイントの位置(前記図6と同じ)において、シートクッションの前後位置、すなわち乗員のヒップポイントの前後位置に応じて乗員のモデル体型が推定されるため、そのモデル体型からおしりの厚みを推定して、このおしりの厚み分を前記図13(a)に示すヒップポイントの高さから減じる。これにより、図13(b)に示すように、ヒップポイントの高さからおしりの厚さを引いた値、すなわち必要な座面の高さが得られる。
一方、乗員のヒップポイントの前後位置に応じたモデル体型を考慮することによって、図14(a)に示すように、該ヒップポイントの前後位置に対する体重の関係を求めることができる。そして、この関係に基づいて、クッション部11aが図14(b)に示すようなたわみ特性を有するように前記補正機構80によって該クッション部11aの厚みを変化させると、該図14(b)のたわみ量と前記図13(b)の座面の高さとの和によって、図14(c)に示すようなシートクッション11の前後移動量と上方移動量との関係を求めることができる。この関係は、図10に示すシートの移動軌跡(図中に太い一点鎖線で示す)とほぼ同じであり、これにより、該図10に示す位置調整機構30に、前記図14(b)に示すようなたわみ特性の得られる前記補正機構80を設けることで、乗員のヒップポイントの位置が前記図13(a)に示す関係を満たすことが分かる。
以上の構成により、着座した乗員のヒップポイントの軌跡について図6に示すような関係を実現することができるため、あらゆる体格の乗員に対して適切な着座姿勢を提供することができる。すなわち、背の低い乗員が着座した場合(ヒップポイントの位置が前側移動区間Aに位置している場合)でも、該乗員のヒップポイントをあまり高くしないようにすることで、目線の高さ及び安楽な着座姿勢を確保しつつ、ペダルの操作性を確保することができ、適切な着座姿勢を提供することができる。一方、背の高い乗員が着座した場合(ヒップポイントの位置が後側移動区間Cに位置している場合)でも、該乗員のヒップポイントをあまり低くしないようにすることで、背の低い乗員と同じ目線の高さを保つことができ、適切な着座姿勢を提供することができる。
そして、クッション部11bの収縮特性をシートクッション11の位置に応じて変化させることで、上述のような乗員の体格に適した着座姿勢を提供することができるため、シート1の位置調整機構30をスライド部31,32という単純な構成にすることができるとともに、前記シートクッション11の前後方向の調整のみによって、すなわち一の操作によって上述のような着座姿勢を容易に提供することが可能となる。
また、前記補正機構80を設けることで、たわみ特性の変化する特殊なクッション材料を用いることがないのでコスト低減を図ることができるとともに、前記カム81,81の回転をモータ82によって制御することでクッション部11aのたわみ特性を変化させることができるため、該クッション部11aのたわみ特性の細かい制御も可能となる。
(実施形態3)
実施形態3は、図15及び図16に示すように、位置調整機構40として、シートクッション11の車両前方側及び後方側にスライド部41,41を設けるとともに、車両後方側の該スライド部41よりも後方にシートクッション11を上下動させるためのリフト部42を設けたもので、上述の実施形態1とは、シートクッション11の車両後方側に、リンク部の代わりにスライド部41及びリフト部42を設けた点が異なるだけなので、実施形態1と異なる部分についてのみ以下で詳しく説明する。
すなわち、前記シートクッション11の車両後方下側に設けられたリフト部42は、図16(c)に示すように、車幅方向に並設された支持部材18,18同士を連結する板部材43に設けられており、該板部材43上に配設されたモータ44と、該モータ44によって回転するギヤ45と、該ギヤ45に噛合するように凹凸部46aが形成されたリフト部材46とからなる。なお、前記モータ44とギヤ45との間には減速器としてのギヤボックス44aが設けられており、シートクッション11自身の重量や乗員の体重等が直接、前記モータ44に作用しないようになっている。
前記リフト部材46は、柱状の部材の上端にシートクッション11のインナーパン11bの下端と接触する接触平面部46bが設けられたもので、軸方向中央部分には前記凹凸部46aが形成されているとともに、下端側は前記板部材43に形成された貫通穴に挿通されている。このリフト部材46と前記モータ44によって回転するギヤ45とによってラック機構が構成される。
この構成により、前記モータ44が回転駆動すると、前記ギヤ45も回転し、該ギヤ45に凹凸部46aで噛合しているリフト部材46を上下方向に移動させる。
ここで、前記シートクッション11のクッション部11aとインナーパン11bとは一体になっており、図15及び図16(a)に示すように、該インナーパン11bは、その車両前方側で左右のピン47,47によってアウターパン11cと連結され、該アウターパン11cに対して回動可能になっている。
以上の構成によって、前記リフト部材46がモータ44の回転駆動によって上方へ移動すると、該リフト部材46はインナーパン11bの下面に当接して該インナーパン11bとともにクッション部11aを上方に押し上げる。一方、その状態から前記リフト部材46が下方へ移動すると、インナーパン11b及びクッション部11aは下方へ移動する。
なお、シートクッション11の車両前方側及び車両後方側に設けられたスライド部41,41は、同一の構造を有し、図示しないモータ等によって前後方向に移動するようになっている。このスライド機構及びモータによる駆動機構は前記実施形態2のものと同様なので、詳しい説明については省略するが、スライド部41,41の円筒部材41a,41aが断面略コの字状の支持部材17内を車両前後方向に移動すると、該円筒部材41a,41aを連結する連結部材41bの上端部とピン41cによって連結されたアウターパン11cを介して、シートクッション11が前後方向に移動するようになっている。なお、該シートクッション11の座面の前後方向の可動範囲は、前記スライド部41,41の前後方向の可動範囲によって決められる。
そして、本実施形態でも、前記支持部材17は、車両前方側が高くなるように傾斜配置されているため、シートクッション11が車両前方に向かって移動すると、それに応じて上方にも移動するようになっている。さらに、前記リフト部43は、前記シートクッション11の前後方向の位置に応じて、上述のリフト部43によって該シートクッション11の車両後方側を上方に持ち上げるように構成されており、これにより、乗員のヒップポイントは車両前方側且つ上方に変化するようになっている。
なお、上述のように前記リフト部43がシートクッション11の車両後方側を持ち上げることによって、シートクッション11が車両前方へ移動すると、該シートクッション11の座面は前記実施形態1、2の場合と同様、図9のように車両前方側に向かって傾くことになるため、シート1に着座した乗員の膝や足首の角度をシートクッション11の前後方向の位置に関係なくほぼ一定にすることができ、安楽な姿勢を保つことができる。このようにシートクッション11の座面の傾きを変える前記リフト部43がチルト手段に対応する。
加えて、特に図示しないが、この実施形態でも、クッション部11aには前記実施形態1と同様の弾性部材70が設けられていて、乗員のヒップポイントの位置が前記図6に示す関係になるように、前記シートクッション11のクッション部11aのたわみ特性が設定されている。これにより、あらゆる体格の乗員に対し適切な着座姿勢を提供することができる。すなわち、背の高い乗員がシート1に着座した場合でも、乗員のヒップポイントを下げすぎないようにすることで該乗員の目線の高さを適度な高さにすることができるとともに、背の低い乗員が前記シート1に着座した場合でも乗員のヒップポイントを上げすぎないようにすることでペダル5の操作性を確保することができる。
しかも、上述のような着座姿勢を提供するシートクッション11の位置は、該シートクッション11を前後方向に移動させるという一の操作のみによって容易に得ることができる。
(実施形態4)
実施形態4は、シート1に着座した乗員のヒップポイントの位置が、シートクッション11の車両前後方向の位置に関係なく車両前方側(前側移動区間A)及び車両後方側(後側移動区間C)で一定の高さになるように、すなわち図19に示す関係となるようにシートクッション11を移動させるもので、上述の実施形態1とは、図17及び図18に示すように、位置調整機構50として、シートクッション11の車両前方側及び後方側にスライド部及びガイド部が設けられている点が異なるだけなので、実施形態1と異なる部分についてのみ以下で詳しく説明する。
すなわち、図17に示すように、フロアパネル2上には、該フロアパネル2に対して略平行に車両前後方向に延びる断面略コの字状の支持部材18が設けられており、シートクッション11の車両前方側及び後方側には、該コの字状の断面内を前後方向に移動するスライド部51,51が配設されている。これらのスライド部51,51の構造は前記実施形態1〜3のものと同様なので、詳しい説明については省略するが、前記支持部材18内を回転しながら移動する2つの円筒部材51a,51aは正面視で略逆T字状の連結部材51bによって回転可能に連結されていて、該連結部材51bの上部には接続部材51dがピン51cを介して車両前後方向に回動可能に連結されている。
また、前記支持部材18の下側には、スライド部51,51を車両前後方向に移動させるためのモータ52が設けられており、該モータ52に直結された第1ギヤ53及び該第1ギヤ53と噛合する第2ギヤ54を介して前記スライド部51,51にトルクを伝達するようになっている。このモータ52による駆動機構については、上述の実施形態2と同じ構成であるため、詳しい説明は省略するが、前記連結部材51bは、車両前後方向に長い板状の部材からなり、その下面に鋸歯状の凹凸が形成されており、該下面に前記第2ギヤ54を噛合させることで、モータ52の回転をスライド部51,51の直線運動に変換する、いわゆるラック機構が構成されるようになっている。
一方、図18(b)に示すように、前記支持部材18の車内側(シートクッション11側)には、略クランク状のガイド穴55aの形成されたガイド板55が、前記支持部材18に沿うように且つフロアパネル2に対して略垂直になるように設けられている。そして、このガイド板55のガイド穴55a内を移動するようにガイド部材56が配設されていて、このガイド部材56は、ピンを介して、一端側で前記接続部材51dに連結される一方、他端側でシートクッション11のアウターパン11cから下方に突設されたブラケット部11dに連結されている。
以上の構成により、前記モータ52が回転駆動すると、そのトルクは前記第1ギヤ53及び第2ギヤ54を介してスライド部51の連結部材51bに伝達され、該連結部材51bを車両前後方向に移動させる。このとき、該連結部材51bに連結された2つの円筒部材51a,51aは回転するため、スライド部51の車両前後方向への移動が阻害されることはない。
そして、前記スライド部51が車両前後方向に移動すると、該スライド部51の連結部材51bの上部に連結された接続部材51dを介して、前記ガイド部材56はガイド板55のガイド穴55aに沿って移動する。これにより、該ガイド部材56に連結されたシートクッション11は、前記ガイド穴55aの形状に対応して移動することになる。ここで、ガイド穴55aは、図17に示すように、略クランク状に形成されているが、前記ガイド部材56の移動に従って、該ガイド部材56と接続部材51dとの連結部分及び該接続部材51dと連結部材51bとの連結部分が、それぞれ車両前後方向に回動するため、前記ガイド部材56はスムーズにガイド穴55a内を移動することになる。なお、前記ガイド部材56のガイド穴55a内での前後方向の可動範囲によって、シートクッション11の座面の前後方向の可動範囲が決められる。
特に図示しないが、この実施形態でも、前記実施形態1のような弾性部材70若しくは前記実施形態2のような補正機構80が設けられている。これらの弾性部材70及び補正機構80は前記実施形態1、2のものと同一であるため説明を省略するが、上述のようにシートクッショ11がガイド穴55aの形状に沿って移動した場合でも、実際に乗員が着座すると、その重量によってクッション部11が下方にたわんで、図19のようなヒップポイントの軌跡を得られない可能性があるため、前記弾性部材70若しくは補正機構80を設けて、シートクッション11の位置に応じてクッション部11aのたわみ特性を変化させることによって、乗員のヒップポイントが確実に図19のような軌跡を描くようにすることができる。なお、前記図19において、ヒップポイントの上下方向の移動量がヒップポイント高さに、該図19の関係を満たすようなヒップポイント高さが所定高さにそれぞれ対応する。
以上より、シートクッション11の車両前後方向の移動に伴い、該シートクッション11を前記ガイド穴55aの形状に沿って移動させるとともに、前記実施形態1のような弾性部材70若しくは前記実施形態2のような補正機構80を設けることで、上述のような簡単な構成の位置調整機構50を用いた場合でも、乗員のヒップポイントが図19のような軌跡を確実に描くようにすることができる。したがって、背の低い乗員に対してはペダル5の操作性を確保することができるとともに、背の高い乗員に対しては目線の高さを適度な高さにすることができ、あらゆる身長の乗員に対して或る程度、適度な着座姿勢を提供することができる。
また、シートクッション11が車両前方側に位置している場合(前側移動区間Aに位置している場合)には、乗員のヒップポイントの高さが一定になるようにシートクッション11の座面の高さを一定にすることで、乗員とルーフとの間隔を狭めることがないので、該乗員に対する圧迫感を低減することができる。
さらに、シートクッション11が車両後方側に位置している場合(後側移動区間Cに位置している場合)にも、乗員のヒップポイントの高さが一定になるようにシートクッション11の座面の高さを一定にすることで、後部座席に着座している乗員の足元のスペースを狭めることがないので、該乗員の足元に対する圧迫感を低減することができる。
加えて、上述のように、シートクッション11の座面の高さを所定範囲で一定にすることで、位置調整機構50においてシートクッション11を上下動させる範囲を小さくすることができ、シート1の上下動のために必要な上下方向の空間を小さくすることができる。これにより、該シート1まわりの空間を有効利用することができる。
しかも、上述のような着座姿勢を提供するシートクッション11の位置は、該シートクッション11を前後方向に移動させるという一の操作のみによって容易に得ることができる。
なお、本実施形態では、シートクッション11が車両前方側及び車両後方側に位置している場合に該シートクッション11の座面の高さを一定にするようにしているが、この限りではなく、該シートクッション11が車両前方側に位置している場合にのみ、若しくは該シートクッション11が車両後方側に位置している場合にのみ該シートクッション11の座面の高さを一定にするようにしてもよい。
(実施形態5)
実施形態5は、シートクッション11が車両前方側に位置している場合には、シート1に着座した乗員のヒップポイントの位置が下降し、前記シートクッション11が車両後方側に位置している場合には該ヒップポイントの位置が上昇するように、すなわち図21に示す関係になるようにシートクッション11を移動させるもので、上述の実施形態4とは、図20に示すように、シートクッション11の前後方向位置に対する上下位置を決めるガイド板のガイド穴の形状が異なるだけなので、実施形態4と異なる部分についてのみ以下で詳しく説明する。
すなわち、図20に示すように、フロアパネル2上には、該フロアパネル2に平行且つ車両前後方向に延びるように支持部材18が設けられていて、該支持部材18の車室内側(シートクッション11側)には、該支持部材18の長手方向に沿うように且つ前記フロアパネル2に対して垂直にガイド板61が設けられている。そして、そのガイド板61には、略S字状のガイド穴61aが形成されている。
このような形状のガイド穴61aをガイド板61に設けることで、スライド部51,51がモータ52,52によってそれぞれ前後方向に移動すると、その動きは接続部材51d,51dを介して前記ガイド穴61a内に配設されたガイド部材56に伝達され、該ガイド部材56はガイド穴61a内を移動する。そして、前記シートクッション11は、アウターパン11cに設けられたブラケット部11dで前記ガイド部材56に連結されているため、該ガイド部材56がガイド穴61a内を移動すると、その穴61aの形状に沿うように上下移動することになる。
この実施形態でも、前記実施形態4と同様、特に図示しないが、前記実施形態1のような弾性部材70若しくは前記実施形態2のような補正機構80が設けられている。前記実施形態4と同様、上述のようにシートクッション11がガイド穴61aの形状に沿って移動した場合でも、実際に乗員が着座すると、その重量によってクッション部11が下方にたわみ、図21のような軌跡を得られない可能性があるからである。そのため、弾性部材70若しくは補正機構80を設けることによって、シートクッション11の位置に応じてクッション部11aのたわみ特性を変化させることができ、これにより、より確実に図21のようなヒップポイントの軌跡を描かせることができる。なお、前記図21において、ヒップポイントの上下方向の移動量がヒップポイント高さに、該図21の関係を満たすようなヒップポイント高さが所定高さにそれぞれ対応する。
以上より、シートクッション11の車両前後方向の移動に伴い、該シートクッション11を前記ガイド穴55aの形状に沿って移動させるとともに、前記実施形態1のような弾性部材70若しくは前記実施形態2のような補正機構80を設けることで、前記乗員のヒップポイントは図21のような軌跡を確実に描くようになり、背の低い乗員に対してはペダル5の操作性を確保できるとともに、背の高い乗員に対しては目線の高さを適度な高さにすることができ、あらゆる身長の乗員に対して或る程度、適度な着座姿勢を提供することができる。
また、シートクッション11が車両前方側に位置している場合(前側移動区間Aに位置している場合)には、乗員のヒップポイントの位置が下がるようにシートクッション11を下げることで、乗員とルーフ6との間隔を拡げることができ、該乗員に対する圧迫感を低減することができる。
さらに、シートクッション11が車両後方側に位置している場合(後側移動区間Cに位置している場合)には、乗員のヒップポイントの位置が上がるようにシートクッション11を上げることで、前記シートクッション11の後端部若しくはシートバック12が後部座席に着座している乗員の脛の部分に接触するのを防止することができるとともに、該乗員の足元のスペースを拡げることができ、該乗員の足元に対する圧迫感を低減することができる。
加えて、上述のように、シートクッション11の高さを所定以上高くしたり、所定以下低くしたりしないことで、移動調整機構50においてシートクッション11を上下動させる範囲を小さくすることができ、シート1の上下動のために必要な上下方向の空間を小さくすることができる。これにより、該シート1まわりの空間を有効利用することができる。
しかも、上述のような着座姿勢を提供するシートクッション11の位置は、該シートクッション11を前後方向に移動させるという一の操作のみによって容易に得ることができる。
なお、本実施形態では、シートクッション11が車両前方側に位置している場合には、該シートクッション11を下げるようにして、該シートクッション11が車両後方側に位置している場合には、該シートクッション11を上げるようにしているが、この限りではなく、どちらか一方のみを行うようにしてもよい。
(その他の実施形態)
本発明の構成は、前記各実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、前記各実施形態1〜5では、シートクッション11を車両前後方向に移動させて乗員に適した位置調整を行うようにしているが、この限りではなく、シートクッション11の前後方向位置はそのままで、操作手段としてのペダル5やステアリングホイールWが車両前後方向に移動して、それに合わせて、前記シートクッション11の座面の上下方向の高さや傾きが変化するようにしてもよい。これにより、ペダル5やステアリングホイールWの操作性を確保できるとともに、安楽な着座姿勢や適切な目線の高さも確保することができ、あらゆる体格の乗員に対して適切な着座姿勢を提供することができる。なお、この場合、前記各実施形態1〜5におけるシートクッション11の前後方向の位置及び前後移動量は、それぞれ、該シートクッション11と操作手段との相対位置及び相対距離変化量によって表される。
また、前記実施形態4では、シートクッション11の前後方向の可動範囲のうち後側移動区間Cでは該シートクッション11の座面高さを一定にしているが、この限りではなく、図22に示すように、最後端側の部分(最後端移動区間D)では、シートクッション11が後方移動するほど座面を上昇させるようにしてもよい。こうすれば、背の高い乗員に或る程度、適度な着座姿勢を提供することができるとともに、シートクッション11の後端部やシートバック12は後部座席の乗員の足の甲から脛に沿うように移動するため、該乗員の足元の圧迫感を低減することができる。