JP4491871B2 - 調光装置及び撮像装置、並びにこれらの駆動方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、入射光の光量を調節して出射するための調光装置、及びこれを用いた撮像装置並びにこれらの駆動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、液晶セルを用いる調光装置には、偏光板が使用される。この液晶セルには、例えばTN(Twisted Nematic)型液晶セルやゲスト−ホスト型液晶セル(GH(Guest Host) セル)が用いられる。
【0003】
図28は、従来の調光装置の動作原理を示す概略図である。この調光装置は、主に偏光板1とGHセル2とで構成される。GHセル2は、図示せぬ2枚のガラス基板の間に封入され、また動作電極や液晶配向膜も図示省略している(以下、同様)。GHセル2には、液晶分子3と二色性染料分子4とが封入されている。二色性染料分子4は、光の吸収に異方性を有し、例えば分子長軸方向の光を吸収するポジ型(p型)色素分子である。また、液晶分子3は、誘電率異方性が正のポジ型(正型)である。
【0004】
図28(a)は、電圧を印加していない(電圧無印加)時のGHセル2の状態を示す。入射光5は、偏光板1を透過することにより直線偏光にされる。図28(a)では、この偏光方向と二色性染料分子4の分子長軸方向とが一致するので、光は、二色性染料分子4に吸収され、GHセル2の透過率が低下する。
【0005】
そして、図28(b)で示すように、GHセル2に電圧印加を行なうと、二色性染料分子4の分子長軸方向は、直線偏光の偏光方向と直角になる。このため、光はGHセル2によりほとんど吸収されずに透過する。
【0006】
なお、分子短軸方向の光を吸収するネガ型(n型)の二色性染料分子を用いる場合は、上記ポジ型の二色性染料分子4の場合と逆になり、電圧無印加時には光が吸収されず、電圧印加時に光が吸収される。
【0007】
図28に示された調光装置では、電圧印加時と電圧無印加時との吸光度の比、即ち、光学濃度の比が約10である。これは、偏光板1を使用せずにGHセルのみで構成される調光装置に比べて約2倍の光学濃度比を有する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の調光装置、特に誘電率異方性が負であるネガ型液晶の駆動においては、透過率を変化させる際に、大きなステップで変化させるが、このようなステップ応答(特に、透明時から遮光時の大きなステップ応答)時に液晶配向に乱れが生じ、これによって光学特性が不安定になってしまう。これは、後述するように、透過率の面内不均一化となって現れる。
【0009】
即ち、電圧変化のステップ幅が大きいときには、過渡的な応答として、液晶分子の方位の異なる状態が発生し、この時間が、実用時間範囲に入ると、透過率の面内不均一性として現れる。ある程度時間が経つと、液晶及び色素の再配向により回復するが、一部回復しない場合もある。
【0010】
本発明は、上記の如き事情を考慮してなされたものであり、その目的は、液晶配向に乱れを生じることなしに安定した透過率制御を可能とする調光装置及びこれを用いた撮像装置、並びにこれらの駆動方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、誘電率異方性が負のネガ型液晶をホスト材料とするゲスト−ホスト型の液晶素子と、この液晶素子に入射する光の透過率を現透過率から目標透過率へ、少なくとも2段階にパルス幅が制御された駆動パルスによって変化させるパルス制御部とを具備し、前記駆動パルスが、正電圧と負電圧とを交互に所定のパルス幅で繰り返す繰り返しパルスからなり、この繰り返しパルスの休止(オフ)時間が420μs以下に設定されることによって透過光強度の変動が2%以内に抑えられている調光装置、及びこの調光装置が撮像系の光路中に配されている撮像装置に係るものである。
【0012】
本発明の調光装置及び撮像装置によれば、ネガ型液晶をホスト材料とするゲスト−ホスト型の調光用の液晶素子の駆動パルスのパルス幅を少なくとも2段階に制御しているので、電圧を急峻に変化させる従来例に比べて、応答の準備段階として液晶の配向乱れが生じないパルスを印加して液晶をある程度傾斜させてから、所望の透過率を達成するためのパルスを印加でき、面内で均一な状態で透過率を制御できる。
そして、前記駆動パルスが、正電圧と負電圧とを交互に所定のパルス幅で繰り返す繰り返しパルスからなり、この繰り返しパルスの休止(オフ)時間が420μs以下に設定されることによって透過光強度の変動が2%以内に抑えられているので、特にパルス幅変調での駆動時において透過光強度を安定化し、更には光透過率のフリッカをなくすことができる。
【0013】
また、本発明は、本発明の調光装置及び撮像装置を制御性良く駆動する方法として、誘電率異方性が負のネガ型液晶をホスト材料とするゲスト−ホスト型の液晶素子を駆動するに際し、前記液晶素子に入射する光の透過率を現透過率から目標透過率へ、少なくとも2段階にパルス幅が制御された駆動パルスによって変化させ、この際、前記駆動パルスが、正電圧と負電圧とを交互に所定のパルス幅で繰り返す繰り返しパルスからなり、この繰り返しパルスの休止(オフ)時間を420μs以下に設定することによって透過光強度の変動を2%以内に抑える、調光装置及び撮像装置の駆動方法も提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の調光装置及び撮像装置、並びにこれらの駆動方法においては、前記駆動パルスのパルス幅が少なくとも2段階に制御される。
【0015】
また、前記駆動パルスが、駆動回路部のクロックと同期して取り出されるのがよい。
【0016】
そして、出射光の輝度情報が制御回路部にフィードバックされ、この制御回路部からの制御信号により、前記駆動回路部のクロックと同期して、前記駆動パルスが得られるようにし、或いは、前記駆動回路部が、前記調光装置の光出射側に配された撮像素子の駆動回路部であり、前記撮像素子の出力信号が輝度情報として制御回路部にフィードバックされ、この制御回路部からの制御信号により、前記駆動回路部のクロックと同期して、前記駆動パルスが得られるようにしてよい。
【0017】
なお、本発明の調光装置及び撮像装置は、前記液晶素子の駆動電極が少なくとも有効光透過部の全域に亘って形成されている場合に好適であり、そのように形成された駆動電極への駆動パルスの制御によって有効光路幅全体に亘って透過率の一括制御を高精度に行うことができる。
【0018】
また、前記液晶素子はゲスト−ホスト型液晶素子であること、即ち、前記液晶素子のホスト材料は、誘電率異方性が負のネガ型液晶であり、前記液晶素子のゲスト材料は、光吸収異方性が正又は負のポジ型又はネガ型の二色性染料分子からなるのがよい。
【0019】
特にホスト材料にネガ型(即ち、誘電率異方性(Δε)が負)の液晶を用いると、ポジ型(即ち、Δεが正)の液晶を用いる場合に比べて光透過(特に透明)時の光透過率が向上し、撮像光学系中にそのまま位置固定しておくことができる。
【0020】
そして、この液晶素子への入射光の光路中に偏光板を配すると、電圧無印加時と電圧印加時の吸光度の比(即ち、光学濃度の比)が向上し、調光装置のコントラスト比が大きくなり、明るい場所から暗い場所までにおいて、調光を正常に行うことができる。
【0021】
そして、前記偏光板は、機械式アイリスの可動部などに配置されることにより前記光路に対して出し入れ可能とされることが望ましい。
【0022】
以下、本発明を液晶ND(neutral deusity)フィルタ及びカメラシステムに適用した好ましい実施の形態を図面の参照下に説明する。
【0023】
調光装置の光透過率とその光学配置
まず、図28に示したゲスト−ホスト型液晶セル(GHセル)2において、ホスト材料3として、誘電率異方性(Δε)が正のポジ型の汎用液晶であるMerck社製のMLC−6849を用い、ゲスト材料4には二色性を有する光吸収異方性(ΔA)が正のポジ型染料であるBDH社製のD5を用い、偏光板1をGHセル2の入射側に配し、矩形波を駆動波形で動作電圧印加時の光透過率の変化を計測した。
【0024】
この結果、図8に示すように、動作電圧の印加に伴って、可視光の平均光透過率(空気中、液晶セルに加えて偏光板を足したときの透過率を参照(=100%)とした:以下、同様。)が増加するが、電圧を20Vにまで上昇させると最大透過率は60%程度となり、しかも光透過率の変化が緩やかであることが分かった。
【0025】
これは、ポジ型のホスト材料を用いる場合、電圧無印加時に液晶セルの液晶配向膜との界面での液晶分子の相互作用(interaction)が強いため、電圧を印加してもダイレクタの向きが変化しない(或いは、変化し難い)液晶分子が残ってしまうからであると考えられる。
【0026】
これに対し、図6に示すように、ゲスト−ホスト型液晶セル(GHセル)12において、ホスト材料13として、誘電率異方性(Δε)が負のネガ型の液晶であるMerck社製のMLC−6608を用い、ゲスト材料4には二色性を有する上記と同じポジ型染料であるBDH社製のD5を用い、偏光板11をGHセル12の入射側に配し、矩形波を駆動波形で動作電圧印加時の光透過率の変化を計測した。この場合の光透過率は、図28の場合と逆であり、電圧無印加時に透過するが、電圧印加に伴って非透過となる。
【0027】
この結果、図7に示すように、動作電圧の印加に伴って、可視光の平均光透過率(空気中)が最大透過率約75%から数%にまで減少し、しかも光透過率の変化が急峻となることが分かった。
【0028】
これは、ネガ型のホスト材料を用いる場合、電圧無印加時に液晶セルの液晶配向膜との界面での液晶分子の相互作用(interaction)が非常に弱いため、電圧無印加時に光が透過し易く、また電圧印加と共に液晶分子のダイレクタの向きが変化し易くなるからであると考えられる。
【0029】
このように、ネガ型のホスト材料を用いるGHセル12では、光透過率が向上し、光透過率の高い領域での設計が可能となる。また、光透過率の変化が急峻であるため、動作電圧による光透過率の制御を特有に行える調光装置を提供できる。
【0030】
上記のGHセルにおいては、ホスト材料とゲスト材料の組み合わせは種々であってよく、ネガ型(Δε<0)−ポジ型(ΔA>0)、ネガ型(Δε<0)−ネガ型(ΔA<0)、ポジ型(Δε>0)−ポジ型(ΔA>0)、ポジ型(Δε>0)−ネガ型(ΔA<0)のいずれでもよい。
【0031】
また、上記のGHセルでは、駆動電極、例えばITO(indium tin oxide:インジウム酸化物にスズをドープしたもの)電極は基板面上にべた付けされているが、これを分割してセグメント方式又はマトリクス方式としてもよい。
【0032】
なお、本発明に基づく調光装置において、使用可能な誘電率異方性(Δε)が負のネガ型のホスト材料は、下記に例示することができる。但し、実際の使用の場合は、実使用温度範囲でネマチック性を示すように、下記の化合物から選択し、ブレンドした組成物を用いる(以下、同様)。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
【化3】
【0036】
【化4】
【0037】
【化5】
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
【数1】
【0041】
【数2】
【0042】
【数3】
【0043】
【数4】
【0044】
また、本発明に基づく調光装置において、使用可能な誘電率異方性が正のポジ型のホスト材料としては、下記に例示することができる。
【0045】
<例示化合物>
【化8】
【0046】
【化9】
【0047】
【化10】
【0048】
【化11】
【0049】
【化12】
【0050】
【化13】
【0051】
【化14】
【0052】
【化15】
【0053】
【化16】
【0054】
【化17】
【0055】
【化18】
【0056】
【化19】
【0057】
【化20】
【0058】
【化21】
【0059】
【化22】
【0060】
【0061】
【数5】
【0062】
【数6】
【0063】
【数7】
【0064】
【数8】
【0065】
【数9】
【0066】
【数10】
【0067】
【数11】
【0068】
【数12】
【0069】
【数13】
【0070】
【数14】
【0071】
【数15】
【0072】
【数16】
【0073】
【数17】
【0074】
【数18】
【0075】
また、本発明に基づく調光装置において、使用可能な二色染料分子は、下記に例示することができる。
【0076】
【化23】
【0077】
【化24】
【0078】
【化25】
【0079】
ラビングによる効果
調光素子として、図6に示したものを用い、ガラス基板の表面に透明電極を付け、さらにその上面に液晶配向層を設けた両ガラス基板を対向させ、所定のギャップでセルを作製し、ゲスト−ホスト液晶を減圧下で注入した。ここでは、素子の駆動パルスとして交流の矩形波を用いた。
【0080】
液晶配向層(図示省略)にラビングを施さないと、図3(A)のように、電圧印加時に液晶が分子基板面に対して傾斜すると同時に、ガラス基板面に平行な面内の液晶及び色素の方位が乱れ、基板面内の透過率の不均一性が生じる。これを避けるために、公知技術として図3(B)のように、液晶配向層をラビングすることにより、液晶の傾く方向を予め規定して一様に傾斜させ、面内均一性を向上させている。
【0081】
しかし、電圧変化のステップ幅が大きいとき、図3(C)のように、過渡的な応答として、方位の異なる状態が発生する。この時間が、実用時間範囲に入ると、透過率の面内不均一性として現れる。ある程度時間が経つと、液晶及び色素の再配向による回復するが、一部回復しない場合もある。
【0082】
これを解決するために、図3(D)のように、準備段階として液晶配向乱れが生じない低電圧を印加して液晶をある程度傾斜させてから、所望の透過率を達成するための高電圧を印加すれば、面内で均一な状態で透過率を制御できることが判明した。
【0083】
1段階駆動時の透過率と配向乱れ(1)
例えば、図5に示すように、後述のパルス幅変調(PWM)やパルス電圧変調(PHM)において、相当電圧0Vから1段階で透過率15%以下を達成しようとすると、図3(C)で説明したように液晶及び色素の配向乱れを生ずることが分かった(但し、この場合、15%以上の透過率では1段階でも配向乱れは生じない)。
【0084】
これについて、パルス電圧変調の場合を例として図4に具体的に示すが、パルス電圧の大きさによって、透過率変化の状況が異なり、また高電圧ほど配向乱れが生じ易く、特に5V以上のとき(即ち、透過率が15%以下となるとき)に生じ易いことが分かる。
【0085】
2段階駆動時の透過率変化(1)
そこで、交流パルスの電圧変調による2段階駆動の例を示す。図1(A)は0V→10Vのステップ変化をする場合に、先ず予備段階として4Vで90ms印加し、次に10V印加して応答させた場合である。これによれば、図4の如き不安定な透過率変化は見られず、安定した透過率変化が得られる。また、図1(B)は、4Vで15ms印加し、その後に10V印加して応答した場合である。この場合も、透過率変化が安定する。このように、自由に各段階のパルス時間幅は選べるが、速やかな応答には図1(B)の方がよい。
【0086】
図2は、上記のうち、図1(B)の駆動波形と同様の駆動波形を詳細に示すものである。2段階駆動の各パルスとも、正電圧と負電圧とを交互にそれぞれ500μsずつ一定のパルス幅で繰り返すが、最初の4.5Vのパルスは15回、次の10Vのパルスは75回繰り返して駆動する。この結果、駆動において、事前に500μs、±4.5Vの電圧で15ms又はそれ以上の時間印加すれば、5Vを越える電圧を印加しても配向乱れは生じないことが分かった。
【0087】
このように、2段階パルスの印加による駆動の結果、光透過率変化が所望のプロファイルとなり、透過率制御の精度が向上すると共に、調光素子の透過率の面内均一性が向上する。
【0088】
この2段階駆動においては、予備的な電圧印加の時間幅、電圧は自由に規定でき、例えば図9(A)〜(E)に示す各種パターンを選択できる。ステップは2段階に限らず、システムに応じて2段階以上の多段階にすることも可能である。さらに、後述するように、パルス幅変調のような、電圧一定でパルス幅のみを変化させる方法なども適用できる。
【0089】
1段階駆動時の透過率と配向乱れ(2)
例えば図11に示すように、パルス幅変調で相当電圧0Vから1段階で透過率15%以下を達成しようとすると、図3(C)で説明したように、パルス電圧の大きさによって、透過率変化の状況が異なり、図11(A)のように5Vのときには配向乱れによる透過率変化の不安定化は生じないが、10Vのときには、図11(B)のように透過率の不安定化(異常応答)が生じ易いことが分かる。
【0090】
2段階駆動時の透過率変化(2)
そこで、上記の配向乱れを防止するために、本発明に基づいて、特に高印加電圧下での駆動をパルス幅変調による2段階駆動とした。例えば、0V→10Vの変化をする場合に、図10に示すように、先ず予備段階として10Vで20μsのパルス幅の正、負のパルスを15ms印加し、その後に10Vで100μsのパルス幅の正、負のパルスを印加して応答させた。この場合、透過率変化が図示したように安定となった。このようなパルス幅の異なるパルスの組み合わせは、上記以外でもよく、また2段階又はそれ以上としてよく、そのパルス電圧も種々であってよい。
【0091】
パルス幅変調について
(1)矩形波基本駆動波形と調光装置のフリッカ
図6に示したように、例えばGHセル12の駆動波形は矩形波であるが、台形波、正弦波のいずれでも駆動可能であり、両電極間の電位差に応じて液晶のダイレクタの傾きが変化し、光透過率が制御される。従って、通常はこの波高値(パルス電圧)により透過率制御を行う。
【0092】
しかしながら、こうした波高値の制御は、基本的にはアナログ信号に置き換えて行うD/A変換が必要であり、また、電圧を高精度に制御することは難しく、回路コスト増大の要因となる。
【0093】
一方、ネマチック液晶材料の電気光学応答は速いものでもミリ秒であり、遅いものでは数100ミリ秒にも及んでいる。ここで、本発明者は、このような応答特性を持った材料系に駆動パルス幅変調方式を適用する場合の周波数として、何が適当かを検討した。
【0094】
例えば、図13に示したように0V→5V→0V→−5V→0V……の順に各駆動パルスを印加した。パルス(特に休止パルス0V)の幅を変えることによる、透過率変動を観察した。
【0095】
その結果、休止パルス期間が300μs以上では、透過率にフリッカが見られ、光学的な安定性に欠けることが分かった。200μs以下の休止期間では、透過率のフリッカが見られないことが分かった。
【0096】
従って、この調光装置の場合、パルス幅変調による駆動時に、休止期間を200μs以上にしないように設定すればよいことが分かる。液晶の種類が変わったり、環境温度により、液晶の応答速度は変わるため、使用条件内でフリッカのない設定を選択することが必要である。また、環境温度をフィードバックしてパルス幅を制御することも、安定な素子光学特性を得るためには有効である。
【0097】
(2)パルス幅変調
上記した検討結果から、基本的なパルス発生周期を100μsとして、この基本周期内で、パルス幅(PW)を制御した。図12はパルス波高値が5V及び10Vと一定とした場合を示している。
【0098】
いずれの場合も、パルス幅の制御により透過率を容易に制御できた(印加電圧ゼロ時の偏光板を含めた場合の透過率を100%とする)。これは、パルス電圧の幅に対応した電界エネルギーにより液晶分子のダイレクタの向きが変化し、配向制御されるためである。また、パルス波高値とパルス幅との組み合わせにより、自由に透過率が制御可能なことがわかる。このことは、最小クロック限界による階調制限も、電圧をデジタルに制御して下位ビットとし、上位ビットとしてパルス幅変調を付加することにより、階調制御の分解能が増大する(上位、下位ビットの設定は逆でも可能)。また、コストの面からも、調光素子を実装する周辺回路のクロックを加工して作られた波形を用いることにメリットがある。
【0099】
図14には、パルス幅変調時の波形の2形態(A)と(B)を示すが、(A)の波形が基本周期の開始時にパルスを入れるのに対し、(B)では基本周期の開始時から一定の遅延時間後にパルスを印加する例であり、(A)の場合と効果は同等である。このような遅延時間後のパルス印加は、基本周期毎に行ってもよいし、(A)のような波形と任意に組み合わせてもよい。なお、駆動パルスは基本周期内に必要個数印加してよい。(C)には、パルスの数密度を変調するパルス密度変調を示す。
【0100】
図15は、図6に示したGHセルの如く、ネガ型液晶をホスト材料に用いたときの液晶緩和過程を示す。これによれば、パルス電圧の大きさによって電圧印加→オフ後の緩和時間が変化し、高電圧印加時ほど緩和時間が長くなることが分かる。
【0101】
図16には、図15と同様の緩和過程において、調光素子の透過光強度(A)とその変動(B)、(C)を示すが、緩和がリニアに生じる領域(0〜5ms)での変動を比較すると、次のことが判明した。
【0102】
1%以内の変動とするには、300μs以下のオフ時間が必要。
2%以内の変動とするには、420μs以下のオフ時間が必要。
【0103】
この事実は、図13に示したように透過率フリッカを無くすための条件に対応しており、2%以下の変動が許容されるという条件で上記基本周期を設定する(例えば100μsとする)ことができる。
【0104】
この2%以内の変動の意味は、現在使用している後述のCCDの撮像スペックと同等であることを基準としている。
【0105】
CCDの撮像は、実際には、フィールド周期内に蓄積された受光量の平均となるため、通常動作時にはフリッカとしては現れることは少ないと予想されるが、透過率制御のダイナミックレンジは低下してしまう。また、シャッタ機能などを用いた場合に、シャッタの開放時間と光量の関係がリニアにならず、制御上問題となる。従って、上記した2%以内の変動量は望ましいものと考えられる。
【0106】
仮に、フィールド周期を超える基本周期を用いた場合には、フリッカとして撮像されるため、基本周期をフィールド周期内とすることは、パルス幅制御での限界基本周期となる。
【0107】
(3)パルス幅変調とパルス電圧変調の比較
図17は、従来のパルス電圧変調(PHM)とパルス幅変調(PWM)との特性を比較したものである(この図の横軸は、電極間に印加されている電位差の絶対値の時間平均であり、これを相当電圧として表現した)。
【0108】
その結果、パルス幅変調の方が、しきい値電圧が低く、全体的に低電圧側にシフトするため、低電圧制御が可能で、消費電力の低減も図れる。また、透過率変化は比較的緩やかとなるため、電圧により透過率を制御し易く、階調性が向上する。
【0109】
このように、パルス幅変調は、まとめると次の利点がある。
(1)パルス幅変調の駆動により、低しきい値の特性を得ることができる。
(2)透過率レベルの階調数を多くとることができ、また高精度の透過率制御が可能である。
(3)D/A変換しないため、回路コストを低減できる。
【0110】
(4)パルス幅変調とパルス密度変調
パルスの波高値(電圧)の大きさを変調する代わりにパルス密度を変調(PDM)し、パルス幅変調(PWM)と比較した。パルス密度変調とは、ある単位時間内に発生するパルスの数を可変することであり、ひとつのパルス幅は非常に短く、高周波成分を多く含んでいる。
【0111】
図18に示すように、PWMとPDMの駆動特性は互いに類似している。しかし、低消費電力を考えれば、パルス密度変調では単位時間当りの液晶セルへの充放電電流量は大きく、パルス幅変調のほうが有利であることが分かる。また、インピーダンス整合の観点からも、パルス幅変調の方が有利である。
【0112】
(5)パルス数による影響
パルス幅変調波形を用いて駆動する場合、電極間に印加される電位差の時間平均がほぼゼロとなるように駆動する(換言すれば、DC成分が0Vとなる)ことにより、調光素子内のイオンなどの分極の偏りをなくし、精度の高い透過率制御が可能となった。
【0113】
即ち、図19に示すように、(A)の駆動波形に対し、(B)のように正極性及び負極性をそれぞれ2パルスずつ交互に印加すると、正、負両極性のパルス数の時間平均が同一である場合に、常に同一の透過率駆動特性を得ることができた。
【0114】
また、(C)のように正、負のパルス数をm=1,2,……と正の整数で変化させて測定したが、図示した透過率vsパルス幅特性に変化が無かった。
【0115】
また、(D)のようにパルスの発生順位が異なっても、正と負のパルス数が同じであれば、同一特性を示した。さらに、パルスの時間幅を個々に変調した場合も、時間平均で等価であれば、問題ないことは予想できる。
【0116】
これに対し、正、負のパルス数が異なる場合(負極性パルスが正極性パルスよりもk倍大きい場合)には、k=1の時が対称駆動時の透過率であるが、kが大きくなって非対称性が増すと、図20に示すように透過率は所定の透過率よりも大きくなり、制御性を困難にしている。これは、mの値には依存せず、kに対して同様の変動を示す。
【0117】
さらに、非対称の極性を瞬時に反転すると、透過率は一時的に低下し、数秒で直前の透過率に再び戻る(長周期のフリッカとして観察される)。この秒オーダの過度的変動は、時間平均でのバイアス電圧のために生じた液晶セル中の可動イオンの偏りに起因すると考えられる。
【0118】
以上の理由から、パルス数の非対称よりもパルス数の対称(正、負の両極性パルス数が同数)は安定した駆動には望ましい。
【0119】
ポジ型液晶を用いた場合
上述した例とは異なり、図6において、ホスト材料としてポジ型の液晶(Merck社製のMLC−6849)を用い、他は上述したものと同様にしてGHセルを作製した。
【0120】
この結果、図21のように、基本周波数と同じ矩形波を電圧変調して印加した場合(A)に比べて、パルス幅変調をした場合(B)には、透過光強度変化が比較的緩やかであるため、制御性、階調性が向上し、また(C)の比較からより低いしきい値で同等の透過光強度を得ることができる。
【0121】
調光装置の具体例
次に、上述したGHセルのうち、例えばGHセル12を用いる調光装置の一例を図22〜図24について説明する。
【0122】
この調光装置23は、図22に示すように、GHセル12と偏光板11aとからなる。GHセル12は、図示せぬ2枚のガラス基板の間に封入される。GHセル12には、ネガ型の液晶分子(ホスト材料)とポジ型又はネガ型の二色性染料分子(ゲスト材料)とが封入されている。液晶分子は、例えば誘電率異方性が負であり、また二色性染料分子は、光の吸収に異方性を有し、例えば分子長軸方向の光を吸収するp型である。偏光板11の光吸収軸は、GHセルに電圧を印加したときの光吸収軸と直交させた。
【0123】
この調光装置23は、例えばズームレンズのように複数のレンズで構成されるレンズ前群15とレンズ後群16との間に配置される。レンズ前群15を透過した光は、偏光板11を介して直線偏光にされた後、GHセル12に入射する。GHセル12を透過した光は、レンズ後群16で集光され、撮像面17に映像として映し出される。
【0124】
この調光装置23を構成する偏光板11は、GHセル12に入射する光の有効光路に対して出し入れ可能である。具体的には、偏光板11を仮想線で示される位置に移動させることにより、光の有効光路の外へ出すことができる。この偏光板11を出し入れする手段として、図23に示す機械式アイリスが用いられてよい。
【0125】
この機械式アイリスは、一般にデジタルスチルカメラやビデオカメラ等に用いられる機械式絞り装置であり、主として2枚のアイリス羽根18、19と、アイリス羽根18に貼付された偏光板11とからなる。アイリス羽根18、19は、上下方向に移動させることができる。矢印21で示される方向に、図示せぬ駆動モーターを用いてアイリス羽根18、19を相対的に移動させる。
【0126】
これにより、図23で示すように、アイリス羽根18、19は部分的に重ねられ、この重なりが大きくなると、アイリス羽根18、19の中央付近に位置する有効光路20上の開口部22が偏光板11により覆われる。
【0127】
図24は、有効光路20付近の機械式アイリスを示す部分拡大図である。アイリス羽根18が下方に移動すると同時に、アイリス羽根19が上方に移動する。これに伴って、図24(a)に示すように、アイリス羽根18に貼付された偏光板11も有効光路20の外へと移動する。逆に、アイリス羽根18を上方に、またアイリス羽根19を下方に移動させることにより、互いのアイリス羽根18、19が重なる。これに従って、図24(b)に示すように、偏光板11は有効光路20上に移動し、開口部22を次第に覆う。アイリス羽根18、19は互いの重なりが大きくなると、図24(c)に示すように、偏光板11は開口部20を覆う。
【0128】
次に、この機械式アイリスを用いた調光装置23の調光動作について説明する。
【0129】
図示せぬ被写体が明るくなるにつれて、図24(a)で示したように、上方方向に開いたアイリス羽根18、19は、図示せぬモーターにより駆動され、重なり始める。これによって、アイリス羽根18に貼付されている偏光板11は、有効光路20に入り始め、開口部22の一部を覆う(図24(b))。
【0130】
このとき、GHセル12は光を吸収しない状態にある(なお、熱的揺らぎ、または表面反射などのため、GHセル12による若干の吸収はある)。このため、偏光板11を通過した光と開口部22を通過した光とは、ほぼ強度分布が同等となる。
【0131】
その後、偏光板11は、完全に開口部22を覆った状態になる(図24(c))。さらに、被写体の明るさが増す場合は、GHセル12への電圧を上昇し、GHセル12で光を吸収することにより調光を行う。
【0132】
これとは逆に、被写体が暗くなる場合は、まず、GHセル12への電圧を減少又は無印加とすることにより、GHセル12による光の吸収効果を無くする。さらに、被写体が暗くなった場合は、図示せぬモーターを駆動することにより、アイリス羽根18を下方へ、またアイリス羽根19を上方へ移動させる。こうして、偏光板11を有効光路20の外へ移動させる(図24(a))。
【0133】
この実施の形態によれば、偏光板11(透過率例えば40%〜50%)を光の有効光路20から外に出すことができるので、偏光板11に光が吸収されない。従って、調光装置の最大透過率を例えば2倍以上に高めることができる。具体的には、この調光装置を、従来の固定されて設置される偏光板及びGHセルからなる調光装置と比較すると、最大透過率は例えば約2倍になる。なお、最低透過率は両者で等しい。
【0134】
また、デジタルスチルカメラ等に実用化されている機械式アイリスを用いて、偏光板11の出し入れが行われるので、調光装置は容易に実現可能となる。
【0135】
また、GHセル12を用いるので、偏光板11による調光に加えて、GHセル12自体が光を吸収することにより、調光を行うことができる。
【0136】
このように、本発明に基づく調光装置は、明、暗のコントラスト比を高めると共に、光量分布をほぼ均一に保つことができるものとなる。
【0137】
なお、この実施の形態に用いられるGHセル12として、液晶分子の誘電率異方性が負であるという条件下で、二色性染料分子がネガ型(n型)のものを用いてもよい。
【0138】
なお、図28に示した如き従来の調光装置では、偏光板1が常に光の有効光路中に固定されて設置されている。従って、偏光板によって例えば50%の光は常に吸収され、また偏光板の表面反射等の影響もある。このため、偏光板を透過する光の最大透過率は、例えば50%を超えることができず、光量低下が著しくなる。この光量低下は、液晶セルを用いた調光装置の実用化を困難にしている要因の一つになっている。
【0139】
一方、偏光板を使用しない種々の調光装置が提案されている。偏光板を使用しない調光装置の例として、2層のGHセルを用いる場合がある。このGHセルでは、1層目は、ある偏光と同一方向の偏光成分を吸収し、また2層目は、該偏光と直角方向の偏光成分を吸収する。また、コレステリック−ネマティック液晶セルの相転移を利用するものがある。さらには、液晶の散乱を利用する高分子散乱型のものがある。
【0140】
しかし、偏光板を使用しないこれらの調光装置では、電圧無印加時と電圧印加時の吸光度の比、即ち光学濃度の比は、前述したことから約5にしかならない。このため、調光装置のコントラスト比が小さく、明るい場所から暗い場所までにおいて、調光を正常に行うには不十分である。また、高分子散乱型の調光装置では、撮像光学系の結像性能が大幅に劣化する。
【0141】
しかも、用いる液晶系によっては、透明時の光透過率が暗くなることがあるため、このような光量で撮像する場合には、撮像光学系から調光装置を外す必要がある。
【0142】
これに対し、本実施の形態では、偏光板11を用い、これを有効光路に対して出し入れ可能となしているので、光量を増大させ、コントラスト比を高めかつ光量を均一に保つことを可能とする。
【0143】
カメラシステムの具体例
図25は、実施の形態による調光装置23をCCD(Charge coupled device)カメラに組み込んだ例を示すものである。
【0144】
即ち、CCDカメラ50において、一点鎖線で示す光軸に沿って、前記レンズ前群15に相当する1群レンズ51及び2群レンズ(ズーム用)52、前記レンズ後群16に相当する3群レンズ53及び4群レンズ(フォーカス用)54、CCDパッケージ55が適宜の間隔をおいてこの順に配設されており、CCDパッケージ55には赤外カットフィルタ55a、光学ローパスフィルタ系55b、CCD撮像素子55cが収納されている。2群レンズ52と3群レンズ53との間には、3群レンズ53寄りに、上記した本発明に基づくGHセル12と偏光板11からなる調光装置23が光量調節(光量絞り)のために同じ光路上に取付けられている。なお、フォーカス用の4群レンズ54は、リニアモータ57により光路に沿って3群レンズ53とCCDパッケージ55との間を移動可能に配設され、またズーム用の2群レンズ52は、光路に沿って1群レンズ51と調光装置23との間を移動可能に配設されている。
【0145】
図26には、このカメラシステムにおける調光装置23による光透過率制御のシーケンスのアルゴリズムを示す。
【0146】
この実施の形態によると、2群レンズ52と3群レンズ53の間にセットされた本発明に基づく調光装置23は、上述したように電界の印加によって光量を調節できるので、システムが小型化でき、実質的に光路の有効範囲の大きさまで小型化できる。従って、CCDカメラの小型化を達成することが可能である。また、パターン化された電極への印加電圧の大きさによって光量を適切に制御できるので、従来のような回折現象を防止し、撮像素子へ十分な光量を入射させ、像のぼやけをなくせる。
【0147】
カメラシステムの駆動回路
図27は、上記のCCDカメラの駆動回路ブロック図である。これによれば、調光装置23の光出射側に配されたCCD撮像素子55cの駆動回路部60を有し、CCD撮像素子55cの出力信号がY/C信号処理部61で処理され、輝度情報(Y信号)としてGHセル駆動制御回路部62にフィードバックされ、この制御回路部からの制御信号により、駆動回路部60の基本クロックと同期して、上述した如くにパルス電圧又はパルス幅を例えば2段階に制御された駆動パルスがパルス発生回路部63から得られるようになっている。制御回路部62と、パルス発生回路部63とで、パルス電圧又はパルス幅の段階的制御のためのGH液晶駆動制御部64が構成されている。
【0148】
なお、このカメラシステムとは別のシステムにおいても、調光装置23の出射光をフォトディテクタ(又はフォトマル)で受け、ここから出射光の輝度情報を制御回路部62へフィードバックし、GHセル駆動回路部(図示せず)のクロックと同期して、パルス発生回路部からパルス電圧又はパルス幅が段階的に制御された駆動パルスを得ることができる。
【0149】
以上、本発明を好ましい実施の形態に従って説明したが、上述の実施の形態は、本発明の技術的思想に基づき種々に変形が可能である。
【0150】
例えば、上述した液晶素子や偏光板の構造や材質、その駆動機構、駆動回路や制御回路の構成などは種々に変更が可能である。また、駆動波形は矩形波、台形波、正弦波のいずれでも駆動可能であり、両電極間の電位差に応じて液晶の傾きが変化し、光透過率が制御される。
【0151】
また、GHセルとして、上述したもの以外に、2層構造等のGHセルも使用可能である。偏光板11のGHセル12に対する位置は、レンズ前群15とレンズ後群16との間としたが、この配置に限らず、撮像レンズの設定条件から最適となる位置に配置されればよい。即ち、位相差フィルム等の偏光状態が変化する光学素子を用いない限り、偏光板11は、例えば撮像面17とレンズ後群16との間等、被写体側又は撮像素子側の任意の位置に置くことができる。さらにまた、偏光板11は、レンズ前群15又はレンズ後群16に代わる単一のレンズ(単レンズ)の前又は後に配置されてもよい。
【0152】
また、アイリス羽根18、19は2枚に限られず、より多くの枚数を用いることにしてもよいし、逆に1枚でもよい。また、アイリス羽根18、19は、上下方向に移動することにより重ねられるが、他の方向に移動してもよく、周囲から中央に向けて絞り込むことにしてもよい。
【0153】
また、偏光板11は、アイリス羽根18に貼付されているが、アイリス羽根19の方に貼付されてもよい。
【0154】
また、被写体が明るくなるにつれて、先に偏光板11の出し入れによる調光を行なった後、GHセル12による光の吸収を行なったが、逆に、先にGHセル12の光吸収による調光を行なうことにしても良い。この場合、GHセル12の透過率が所定の値まで低下した後に、偏光板11の出し入れによる調光を行なう。
【0155】
また、偏光板11を有効光路20から出し入れする手段として、機械式アイリスを用いたが、これに限られない。例えば、偏光板11が貼付されたフィルムを駆動モーターに直接設置することにより、偏光板11を出し入れしてもよい。
【0156】
また、上記の例では偏光板11を有効光路20に対し出し入れしたが、有効光路中に位置固定することも勿論可能である。
【0157】
また、本発明の調光装置は、公知の他のフィルター材(例えば、有機系のエレクトロクロミック材、液晶、エレクトロルミネッセンス材等)と組み合わせて用いることも可能である。
【0158】
更に、本発明の調光装置は、既述したCCDカメラ等の撮像装置の光学絞り以外にも、各種光学系、例えば、電子写真複写機や光通信機器等の光量調節用としても広く適用が可能である。更に、本発明の調光装置は、光学フィルター以外に、キャラクターやイメージを表示する各種の画像表示素子に適用することができる。
【0159】
【発明の作用効果】
本発明の調光装置及び撮像装置によれば、ネガ型液晶をホスト材料とするゲスト−ホスト型の調光用の液晶素子の駆動パルスのパルス幅を少なくとも2段階に制御しているので、電圧を急峻に変化させる従来例に比べて、応答の準備段階として液晶の配向乱れが生じないパルスを印加して液晶をある程度傾斜させてから、所望の透過率を達成するためのパルスを印加でき、面内で均一な状態で透過率を制御できる。
そして、前記駆動パルスが、正電圧と負電圧とを交互に所定のパルス幅で繰り返す繰り返しパルスからなり、この繰り返しパルスの休止(オフ)時間が420μs以下に設定されることによって透過光強度の変動が2%以内に抑えられているので、特にパルス幅変調での駆動時において透過光強度を安定化し、更には光透過率のフリッカをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態を説明するための調光装置の光透過率と駆動パルスのパルス電圧との関係を示すグラフ、及び駆動パルス波形図である。
【図2】同、調光装置の光透過率と駆動パルスのパルス電圧との関係を示すグラフ、及び駆動波形図である。
【図3】同、調光装置の液晶ダイレクタの配向過程を比較して示す模式図である。
【図4】比較用の調光装置の光透過率と印加電圧との関係を示すグラフである。
【図5】同、調光装置の透過率と印加電圧との関係における配向乱れを説明するためのグラフである。
【図6】本発明の実施の形態による調光装置の動作原理を示す概略図である。
【図7】同、ネガ型液晶を用いた調光装置の光透過率と印加電圧との関係を0〜10V(A)及び0〜20V(B)の範囲で示すグラフである。
【図8】同、ポジ型液晶を用いた調光装置の光透過率と印加電圧との関係を0〜10V(A)及び0〜20V(B)の範囲で示すグラフである。
【図9】同、調光装置の各種駆動パルスを示す波形図である。
【図10】同、調光装置の光透過率と駆動パルスのパルス幅との関係を示すグラフ、及び駆動パルス波形図である。
【図11】比較用の調光装置の光透過率とパルス幅変調駆動時のパルス電圧との関係を示すグラフである。
【図12】本発明の実施の形態による調光装置の光透過率と駆動パルスのパルス幅との関係を示すグラフ、及び駆動パルス波形図である。
【図13】同、調光装置の駆動パルスの波形と透過率フリッカとの関係を種々のパルス休止時間毎に示す波形図である。
【図14】同、調光装置の駆動パルスの各種変調による波形図である。
【図15】同、調光装置のネガ型液晶系の緩和過程を説明するためのグラフ及び表である。
【図16】同、ネガ型液晶を用いた調光装置の応答特性を示すグラフである。
【図17】同、調光装置の駆動パルスのパルス幅変調及びパルス電圧変調における光透過率と電圧との関係を比較して示すグラフである。
【図18】同、調光装置の駆動パルスのパルス幅変調及びパルス密度変調における光透過率とデューティ比との関係を比較して示すグラフである。
【図19】同、調光装置の駆動パルスのパルス幅変調における各種パルス波形図とその光透過率特性図である。
【図20】同、調光装置の駆動パルスの正及び負極性のパルス数による光透過率特性図である。
【図21】同、ポジ型液晶を用いた調光装置の駆動パルスのパルス電圧変調及びパルス幅変調における透過光強度の変化を比較して示すグラフである。
【図22】同、調光装置の概略側面図である。
【図23】同、調光装置の機械式アイリスの正面図である。
【図24】同、調光装置の有効光路付近の機械式アイリスの動作を示す概略部分拡大図である。
【図25】同、調光装置を組み込んだカメラシステムの概略断面図である。
【図26】同、カメラシステムにおける光透過率制御のアルゴリズムである。
【図27】同、駆動回路を含むカメラシステムのブロック図である。
【図28】従来の調光装置の動作原理を示す概略図である。
【符号の説明】
1、11…偏光板、2、12…GHセル、3…ポジ型液晶、
4…ポジ型染料分子、5…入射光、13…ネガ型液晶、
15、16…レンズ群、17…撮像面、18、19…アイリス羽根、
20…有効光路、22…開口部、23…調光装置、50…CCDカメラ、
51…1群レンズ、52…2群レンズ、53…3群レンズ、54…4群レンズ、
55…CCDパッケージ、55b…光学ローパスフィルタ、
55c…CCD撮像素子、60…CCD駆動回路部、
61…Y/C信号処理部、62…制御回路部、63…パルス発生回路部、
64…パルス電圧又はパルス幅の段階的制御部(GH液晶駆動制御装置)
Claims (4)
- 誘電率異方性が負のネガ型液晶をホスト材料とするゲスト−ホスト型の液晶素子と、この液晶素子に入射する光の透過率を現透過率から目標透過率へ、少なくとも2段階にパルス幅が制御された駆動パルスによって変化させるパルス制御部とを具備し、前記駆動パルスが、正電圧と負電圧とを交互に所定のパルス幅で繰り返す繰り返しパルスからなり、この繰り返しパルスの休止(オフ)時間が420μs以下に設定されることによって透過光強度の変動が2%以内に抑えられている調光装置。
- 誘電率異方性が負のネガ型液晶をホスト材料とするゲスト−ホスト型の液晶素子と、この液晶素子に入射する光の透過率を現透過率から目標透過率へ、少なくとも2段階にパルス幅が制御された駆動パルスによって変化させるパルス制御部とを具備する調光装置が撮像系の光路中に配されており、前記調光装置における前記駆動パルスが、正電圧と負電圧とを交互に所定のパルス幅で繰り返す繰り返しパルスからなり、この繰り返しパルスの休止(オフ)時間が420μs以下に設定されることによって透過光強度の変動が2%以内に抑えられている撮像装置。
- 誘電率異方性が負のネガ型液晶をホスト材料とするゲスト−ホスト型の液晶素子を駆動するに際し、前記液晶素子に入射する光の透過率を現透過率から目標透過率へ、少なくとも2段階にパルス幅が制御された駆動パルスによって変化させ、この際、前記駆動パルスが、正電圧と負電圧とを交互に所定のパルス幅で繰り返す繰り返しパルスからなり、この繰り返しパルスの休止(オフ)時間を420μs以下に設定することによって透過光強度の変動を2%以内に抑える、調光装置の駆動方法。
- 誘電率異方性が負のネガ型液晶をホスト材料とするゲスト−ホスト型の液晶素子を撮像系の光路中に配した撮像装置を駆動するに際し、前記液晶素子に入射する光の透過率を現透過率から目標透過率へ、少なくとも2段階にパルス幅が制御された駆動パルスによって変化させ、この際、前記駆動パルスが、正電圧と負電圧とを交互に所定のパルス幅で繰り返す繰り返しパルスからなり、この繰り返しパルスの休止(オフ)時間を420μs以下に設定することによって透過光強度の変動を2%以内に抑える、撮像装置の駆動方法。
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