JP4491534B2 - 電極ペースト組成物およびそれを用いる積層コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極ペースト組成物に関し、また、それを用いる積層コンデンサの製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、未焼成の誘電体層の表面に印刷しても誘電体層を冒さず、かつ環境に悪影響を及ぼさない電極ペースト組成物、およびそれを用いる積層コンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサのような積層コンデンサは、ポリエチレンテレフタレートフィルムのような基板に、未焼成の誘電体層と内部電極とを交互に積層し、プレスすることによって未焼成チップを形成させた後、その横端部に外部電極(端子電極)用ペーストを塗布して、全体を焼成するか、上記のチップを焼成した後、上記と同様の塗布および別途に行う焼成により外部電極を設けるかによって、製造することができる。
【0003】
誘電体層は、通常、チタン酸バリウム粒子のような誘電体粒子を、樹脂と溶媒を主成分とするビヒクル中に分散させて得られる誘電体ペーストを、基材または未焼成の内部電極の表面に印刷または塗布し、乾燥することによって形成される。そして、環境中に有機溶媒を排出しない配慮と、引火の危険性や作業環境への悪影響を防止することから、樹脂としてポリビニルアルコールのような水溶性樹脂を用い、溶媒として水を用いることが、一般に行われている。
【0004】
内部電極は、ニッケルのような導電性粒子を、必要に応じて非誘電性粒子とともに、有機樹脂およびそれを溶解させる有機溶媒からなる有機ビヒクルに分散させて得られる電極ペースト組成物を印刷し、乾燥することによって層状に形成される。特開平5−109573号公報および特開平10−50551号公報には、有機樹脂としてエチルセルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートのような樹脂を、これを溶解するテルピネオール、メチルエチルケトン、ミネラルスピリットのような有機溶媒をビヒクルとして用いることが開示されている。しかしながら、これらの樹脂および溶媒は、いずれも水に貧溶ないし不溶であり、印刷により、水溶性樹脂を含む未焼成の誘電体層を冒すことはないが、印刷に用いたスクリーン版のような版を水によって洗浄することができず、排水中に多量の有機溶媒を放出する。また乾燥工程で、引火性かつ有害な有機溶媒を排出する。
【0005】
一方、電極ペースト組成物として、ポリビニルアルコールやポリエチレングリコールのような水溶性樹脂と、水または水を多量に含む溶媒とからなるビヒクルを用いると、これを前述のような水溶性樹脂系の誘電体ペーストを用いて形成された未焼成の誘電体層に印刷したときに、該誘電体層の樹脂を膨潤および/または溶解させるので、積層コンデンサのチップを製造することができない。
【0006】
水溶性樹脂を用いて誘電体を形成するための導電体ペーストとしては、特開平5−174620号公報には、セルロース系、ポリビニルアルコール系などの水溶性または水分散性の樹脂と、水−グリセリン混合溶媒、テルピネオール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールなどの溶媒とを組み合わせたビヒクルに、酸化銅を分散させた、銅配線層または銅電極層を形成するためのペーストが開示されている。
【0007】
特開平5−190015号公報には、水または温水に可溶な各種の樹脂、シリカ微粉末および導電性粉末を含む水溶性導電性ペーストを、回路の形成、導電性接着剤などに用いることが開示され、該ペーストに用いられる溶媒としては、水、アルコール系溶媒をはじめとして、水溶性から非水溶性にいたる各種の溶媒が記載されている。
【0008】
特開平7−142833号公報には、各種の水溶性樹脂と、水または水−グリセリン混合溶媒とを組み合わせたビヒクルに、各種の金属、金属酸化物、ケイ酸ガラスなどを分散させた印刷用ペーストが開示されている。
【0009】
特開平9−282937号公報および特開平9−286924号公報には、水溶性の熱硬化性または熱可塑性樹脂を水と相溶性のグリコール類に溶解させて得たビヒクルに、導電性粒子を分散させた導電性組成物によって塗膜を形成させ、焼成して導電体を形成することが開示されている。
【0010】
しかしながら、これらの水溶性樹脂を用いた導電性ペーストを、積層コンデンサの内部電極の形成に用いるという記載はなく、また積層された未焼成の誘電体層に及ぼす影響について論じた記載はない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、水を溶媒として含む誘電体ペーストから得られる未焼成の誘電体層を冒すことなく内部電極を形成することができ、かつ印刷に用いた版を水で洗浄でき、外部環境および作業環境に悪影響を及ぼさない電極ペースト組成物を提供することである。本発明のもう一つの目的は、そのような電極ペースト組成物を用いて、積層コンデンサを製造する方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために研究を重ねた結果、水溶性樹脂、特に水溶性のヒドロキシアルキルセルロースを樹脂として用い、水で希釈可能なグリコール類および/またはグリセリン、特にグリコール類を溶媒として用いたビヒクルに、導電性粒子またはその前駆体を分散させることにより、その課題を達成しうることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明1の積層コンデンサ用電極ペースト組成物は、
(A)導電性粒子および/またはその前駆体;
(B)水溶性樹脂;
(C)水で希釈可能なグリコール類および/またはグリセリン;ならびに
(D)糖類
を含み、水を実質的に含まないか、水の含有量が(C)と水の合計量に対して35重量%以下であることを特徴とする。また、本発明2は、(D)が、D−グルコース、D−フルクトース及びそれらの異性体からなる群から選択される本発明1の組成物であり、本発明3は、(D)の含有量が、(A)、(B)及び(C)の合計量に対して5〜35重量%である、本発明1又は2の組成物であり、本発明4は、(B)がヒドロキシアルキルセルロースである本発明1〜3の組成物であり、本発明5は、(B)が2−ヒドロキシプロピルセルロースである本発明4の組成物である。本発明6の積層コンデンサは、本発明1〜5のいずれかの積層コンデンサ用電極ペースト組成物を用いて内部電極を形成した積層コンデンサである。さらに、本発明7の積層コンデンサの製造方法は、
(1)水を溶媒として含む誘電体ペーストを、基材に印刷または塗布する工程;
(2)誘電体ペーストを乾燥して、誘電体層を形成する工程;
(3)本発明1〜5のいずれかの電極ペースト組成物を、誘電体層の表面に印刷する工程;
(4)電極ペースト組成物を乾燥して、内部電極を形成する工程;
(5)工程(1)〜(4)を反復して、積層体を形成する工程、ただし、反復中の(1)においては、内部電極の表面、また内部電極を形成しない部位では下地の誘電体層の表面に印刷または塗布する;および
(6)積層体を焼成する工程
をその順に含むことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の電極ペースト組成物に用いられる(A)成分は、導電性粒子および/またはその前駆体である。導電性粒子としては、銅、銀、ニッケル、亜鉛、ルテニウム、パラジウムなどの金属、またはそれら相互の合金、たとえば銀−パラジウムのような金属粒子;それらの1種を基体とし、他を表面被覆に用いた複合金属粒子などが例示される。また、導電性粒子の前駆体としては、酸化銅(II)、酸化パラジウムなどの金属酸化物粒子が例示される。これらは、水素気流中で高温に、たとえば酸化銅(II)の場合約300℃に加熱することにより、還元して、それぞれの金属粒子に転換することができる。(A)成分は、1種を用いても、2種以上を用いてもよい。
【0015】
これらのうち、適度の焼成温度を選択でき、安定性に優れ、マイグレーションがないことから、ニッケル粒子が最も好ましい。ニッケル粒子としては、たとえば硫酸ニッケルのようなニッケル塩の還元、プラズマ熱分解などによって得られるものが好ましく、焼成の際の収縮率が小さく、電極の導通不良を起こすことなく、また内部電極の厚さを薄くすることが可能で、層間剥離を起こしにくいことから、粒子径は0.1〜2μmが好ましく、0.2〜1μmがさらに好ましい。
【0016】
(A)成分の配合量は、(A)、(B)および(C)の合計量に対して35〜60重量%が好ましく、40〜55重量%がさらに好ましい。
【0017】
(B)成分は、水溶性樹脂である。水溶性樹脂としては、メチルセルロース、2−ヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシエチル(メチル)セルロース、2−ヒドロキシプロピルセルロース、2−ヒドロキシプロピル(メチル)セルロース、2−ヒドロキシブチル(メチル)セルロース、カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩などのエーテル化セルロース系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリビニルアルコールの部分ブチラール化物、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸のブロック共重合体のようなポリビニルアルコール系樹脂;ポリアクリル酸エステルの部分ケン化物、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルのようなアクリル系樹脂;ポリビニルピロリドン、ポリビニルイソブチルエーテルのようなビニル系樹脂;ポリエチレングリコール、エチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合体のようなポリエーテルなどが例示され、1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
ビヒクルとして適切な粘性が得られ、糸引き現象がなく、印刷適性に優れていることから、エーテル化セルロース系樹脂が好ましく、その中でもヒドロキシアルキルセルロースがさらに好ましい。後述の(C)成分として特に好ましいグリコール類に対する溶解性が優れていることから、2−ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
【0019】
(B)成分の配合量は、(A)、(B)および(C)の合計量に対して1〜7重量%が好ましく、2.5〜4重量%がさらに好ましい。
【0020】
(C)成分は、水で希釈可能なグリコール類および/またはグリセリンである。このような有機溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのような、分子中にエーテル結合が存在していてもよいグリコール類;およびグリセリンが例示され、1種でも、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。これらのうち、適度の乾燥性を示すことから、グリコール類が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール類、ジプロピレングリコールなどが特に好ましい。
【0021】
このような溶媒を用いることにより、印刷適性に優れ、印刷に用いたスクリーンから水によって容易に除去が可能で、作業用の臭気の問題がなく、環境への影響が少ないばかりでなく、未焼成の誘電体層の表面に印刷しても該誘電体層を冒すことがない電極ペースト組成物が得られる。
【0022】
(C)成分の配合量は、(A)、(B)および(C)の合計量に対して25〜45重量%が好ましく、28〜40重量%がさらに好ましい。
【0023】
このような(C)成分に、さらに水を配合して、水性混合溶媒として用いてもよい。ただし、水が多すぎると、電極ペースト組成物を未焼成の誘電体層の表面に印刷する際に、該誘電体層のポリマーを膨潤および/または溶解させるので、水を実質的に含有しないか、水の量が、(C)成分と水との合計量に対して35重量%以下である。
【0024】
本発明の電極ペースト組成物に、さらに(D)成分として、糖類を配合することにより、電極ペースト組成物を印刷する際に、下地の未焼成誘電体層に対する優れた密着性を与え、積層体の層間剥離を防止でき、さらに精密な印刷パターンを形成させることができる。糖類としては、D−グルコース、D−フルクトース、スクロースおよびそれらの異性体が例示され、1種を用いても、2種以上を用いてもよい。また、蜂蜜のように、複数の糖類と有機酸などを含む混合物を用いてもよい。
【0025】
糖類の配合量は、ペーストの印刷特性から、(A)、(B)および(C)の合計量に対して、通常35重量%以下であり、5〜28重量%が好ましい。
【0026】
本発明の電極ペースト組成物に、調製および印刷工程における発泡を防ぎ、内部電極を精度よく作製するために、消泡剤を添加してもよい。そのような消泡剤としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサンとポリオキシアルキレンのブロックまたはグラフト共重合体、フルオロアルキル基含有ポリシロキサン、それらの1種以上を有効成分として含むエマルション、ポリプロピレングリコール、オキシエチレン・オキシプロピレンブロック共重合体、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンジオールとその誘導体、オクチルアルコールなどが例示される。
【0027】
このほか、本発明の電極ペースト組成物に、必要に応じて、レベリング剤;誘電体粒子、特に誘電体ペーストに配合したのと同じチタン酸バリウムのような誘電体粒子;シリカ、アルミナ、ガラスフリットのようなその他の非導電性粒子;およびその他の任意の添加剤を配合することができる。
【0028】
本発明の電極ペースト組成物は、スクリーン印刷に用いられる場合、常温における見掛粘度は10〜500Pa・sが好ましく、13〜50Pa・sがさらに好ましい。
【0029】
本発明の電極ペースト組成物は、たとえば次のようにして調製できる。すなわち、(B)成分および(D)成分や、その他の(C)成分に溶解する任意成分を、(C)成分に溶解ないし分散させて、ビヒクルを調製する。これに、(A)成分および必要に応じて配合する誘電体粒子などの不溶性成分を加えて、三本ロール、ライカイ機、ポットミル、ニーダーのような混合手段によって均一に分散させ、電極ペースト組成物が得られる。調製温度は特に限定されず、たとえば常温で調製することができる。
【0030】
本発明の電極ペースト組成物は、スクリーン印刷のような方法を用いて印刷することができ、特に未焼成の誘電体層の表面に、該誘電体層を冒すことなく印刷できる。
【0031】
本発明の積層コンデンサの製造方法において、まず基材に、(1)水を溶媒として含む誘電体ペーストを印刷または塗布する。印刷は、たとえばスクリーン印刷、転写などによって行い、塗布は、たとえばアプリケータ、ディスペンサなどを用いて行う。基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが例示される。誘電体ペーストは、誘電体粒子、水溶性樹脂および水を含む。誘電体粒子としては、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、スズ酸カルシウム、スズ酸バリウム、ジルコン酸バリウムおよびそれらの固溶体、ペロブスカイトなどが例示され、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。優れた誘電特性から、チタン酸バリウムが好ましい。水溶性樹脂としては、前述のポリビニルアルコール系樹脂が例示され、特にポリビニルアルコールが好ましい。さらに、イソプロパノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルのような水溶性溶媒を、水と併用してもよい。また、分散剤を配合してもよい。誘電体ペーストの組成は、通常、誘電体粒子が50〜80重量%、水溶性樹脂が5〜20重量%、水が10〜30重量%である。誘電体ペーストを印刷または塗布する厚さは、通常、焼成後の誘電体層の厚さが2〜10μmになるような厚さである。
【0032】
(2)ついで、印刷または塗布された誘電体ペーストを乾燥して、誘電体層を形成する。乾燥は、通常70〜120℃に2〜15分間加熱することによって実施される。
【0033】
(3)形成された誘電体層に、(A)、(B)および(C)成分を含み、(D)成分およびその他の任意の配合する成分を含む本発明の電極ペースト組成物を印刷する。精度のよい薄い印刷面を得るには、スクリーン印刷によることが好ましい。印刷する厚さは、通常、焼成後の内部電極の厚さが0.5〜10μmになるような厚さである。
【0034】
(4)ついで、印刷された電極ペースト組成物を乾燥して、内部電極を形成する。乾燥は、通常70〜120℃に2〜15分間加熱することによって実施される。
【0035】
(5)続いて、上記の工程(1)〜(4)を、所望の積層回数が得られるまで反復する。ただし、この反復工程においては、(1)の誘電体ペーストの印刷または塗布は、形成された内部電極の表面に実施する。また、内部電極を形成しない部位では、乾燥した下地の誘電体層の表面に実施する。内部電極は、通常、後述の一対の外部電極に対して交互に接続するように積層する。積層の回数は、形成される誘電体層と内部電極の合計として、目的に応じて通常20〜1,000回、好ましくは50〜500回である。また、反復は、通常、所望の回数反復した後の(2)の誘電体層の形成で終わる。
【0036】
(6)このようにして得られた未焼成の積層体を、基材から外し、切断して積層チップを作製した後、焼成を行う。また、焼成の前に、積層チップの横端部に外部電極用の導電ペーストを塗布し、該積層チップと同時に焼成するか、積層チップの焼成後に外部電極用の導電ペーストを塗布し、その後に別途、焼成を行うことにより、一対の外部電極を形成する。積層チップの焼成条件は、内部電極の導電性粒子および誘電体層の誘電体粒子の種類によっても異なるが、通常、焼成炉を用いて600〜1,300℃で7〜15時間である。
【0037】
なお、電極ペースト組成物として、酸化パラジウムのような導電体の前駆体粒子を用いたときは、焼成の前に、水素気流中、前駆体の種類に応じて300〜500℃で還元して導電体に転換する。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によって説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。実施例および比較例において、部は重量部、組成の%は重量%で示す。
【0039】
実施例に用いた水溶性樹脂は、いずれも2−ヒドロキシプロピル基の含有量が53.4〜77.5重量%の、互いに重合度が異なり、下記のような溶液粘度を有する2−ヒドロキシプロピルセルロースであり、表1において、次の略称で示す。
HPC−1 : 2%水溶液の20℃における粘度 3.0〜5.9cP
HPC−2 : 〃 150〜400cP
HPC−3 : 〃 1,000〜4,000cP
【0040】
また、溶媒として用いたグリコール類を、次の略称で示す。
TEG : トリエチレングリコール
PG : プロピレングリコール
DPG : ジプロピレングリコール
【0041】
実施例4,5,10、比較例1、2、参考例1〜3,6〜9
チタン酸バリウム70%、ポリビニルアルコール10%および水20%をポットミに仕込み、72時間混合して誘電体ペーストを調製した。これをポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の表面に、アプリケータを用いて、焼成後の層の厚さが3μmになるように塗布し、熱風乾燥器により100℃で5分間加熱することによって乾燥し、誘電体層を得た。
【0042】
各実施例および比較例の電極ペースト組成物を、次の方法によって調製した。すなわち、表1に示すグリコール類、または場合によってグリコール類に加えられた水または糖類を含む混合液に、表1に示す2−ヒドロキシプロピルセルロースを溶解させた。この溶液をライカイ機に仕込み、表1に示す量の粒径0.4μmのニッケル粒子と、チタン酸バリウム粒子とを加えて10分間混合し、電極ペースト組成物を調製した。組成物の25℃における見掛粘度を、表1に示す。
【0043】
この組成物を、乾燥した誘電体層の表面に、焼成後の厚さが1.5μmになるように、スクリーン印刷によってパターン印刷した。ついで、熱風乾燥器により、100℃で指触乾燥するまで乾燥させて、内部電極を得た。その際、電極ペースト組成物を繰返し印刷した際の指触乾燥時間を5点測定した。その平均値を、乾燥性として表1に示す。
【0044】
形成された未焼成の内部電極の表面、および該内部電極を形成しない部位では下地の誘電体層の表面に、前述の方法で誘電体ペーストを塗布し、以下、上記の工程を反復して、各50層の誘電体層と内部電極を交互に積層し、最後に誘電体層を設けた未焼成の積層体を作製した。
【0045】
乾燥した誘電体層に、電極ペースト組成物に用いた溶媒を滴下して、誘電体層の膨潤および/または樹脂の溶解が認められるか、あるいは誘電体層をスパチュラで押えたときにスパチュラに付着したとき、シートアタック×と評価した。これらの異常が認められないとき、シートアタック○と評価した。
【0046】
電極ペースト組成物のスクリーン印刷に用いたスクリーンの版面を、水で洗浄して、洗浄可能なとき洗浄性○、樹脂が一部でも残っていたら洗浄性×と評価した。
【0047】
乾燥した積層チップの断面を顕微鏡で観察し、ボイドや積層の不均一が認められるとき断面観察×、これらの異常が認められるとき、断面観察○と評価した。
【0048】
これらの評価結果を、上記の見掛粘度および乾燥性とともに、表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から明らかなように、本発明の電極ペースト組成物を用いて内部電極を作製したとき、下地の誘電体層を冒すことがなく、良好な積層チップが得られた。また、スクリーン印刷の後のスクリーンの、水による洗浄が可能であった。これに対して、比較例1の積層体チップでは、電極ペースト組成物によって未焼成の誘電体層が冒され、その断面の観察の結果も、ボイドや積層の不均一が認められた。
【0051】
【発明の効果】
本発明によって、積層コンデンサ用電極を形成するための電極ペースト組成物として、水性誘電体ペーストから得られた未焼成誘電体層の表面に印刷する際に、該誘電体層の樹脂を膨潤および/または溶解することなく、かつ作業環境に優れ、印刷に用いた版を水で容易に洗浄でき、良好な内部電極を容易に形成できる電極ペースト組成物が得られる。また、本発明の電極ペースト組成物を用いて内部電極を形成することにより、層間剥離のない優れた積層コンデンサを、安定して容易に得ることができる。
Claims (7)
- (A)導電性粒子および/またはその前駆体;
(B)水溶性樹脂;
(C)水で希釈可能なグリコール類および/またはグリセリン;ならびに
(D)糖類
を含み、水を実質的に含まないか、水の含有量が(C)と水の合計量に対して35重量%以下であることを特徴とする積層コンデンサ用の電極ペースト組成物。 - (D)が、D−グルコース、D−フルクトース及びそれらの異性体からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
- (D)の含有量が、(A)、(B)及び(C)の合計量に対して5〜35重量%である、請求項1又は2記載の組成物。
- (B)が、ヒドロキシアルキルセルロースである、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
- (B)が、2−ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項4記載の組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の電極ペースト組成物を用いて内部電極を形成した積層コンデンサ。
- (1)水を溶媒として含む誘電体ペーストを、基材に印刷または塗布する工程;
(2)誘電体ペーストを乾燥して、誘電体層を形成する工程;
(3)請求項1〜5のいずれか1項記載の電極ペースト組成物を、誘電体層の表面に印刷する工程;
(4)電極ペースト組成物を乾燥して、内部電極を形成する工程;
(5)工程(1)〜(4)を反復して、積層体を形成する工程、ただし、反復中の(1)においては、内部電極の表面、また内部電極を形成しない部位では下地の誘電体層の表面に印刷または塗布する;および
(6)積層体を焼成する工程
をその順に含むことを特徴とする積層コンデンサの製造方法。
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