JP4491419B2 - 非特異的物質の除去方法 - Google Patents
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Description
また、診断薬の領域においても、出来るだけ病気早期に病巣の存在を非侵襲的に確認できれば治療の効果がアップすることから、例えば特定のがんに特異的に発現する微量タンパク質等のマーカーと呼ばれる物質を、採取した患者の血液等から同定する研究も盛んに行われている。
しかし、これまでに上記手法において、固定化したリガンド分子に特異的な分子間相互作用を有するタンパク質(いわゆるターゲットタンパク質)以外の非特異的タンパク質の存在が問題となってきた。一般に、ターゲットとなるタンパク質が生体内に多量に存在するという場合は少ない。従って、リガンドとの特異的な相互作用ではなく固定化に用いた担体やリガンドと非常に弱く相互作用するようなタンパク質(非特異的タンパク質)が、材料となるターゲットタンパク質混合物(試料)に多量に含有していると、結果としてリガンド分子に特異的なタンパク質の発見の大きな妨げとなる。また、血液中に多量に存在することにより他のタンパク質から得られる情報を妨害するタンパク質(例えばアルブミン)の存在も診断等の領域で問題と考えられてきた。これらの妨害タンパク質の例として、前者の例としてはラット脳から調製するライゼートにおけるチューブリンやアクチンのような構造タンパク質、後者の例としては血漿中のアルブミン等が知られている。
上記ターゲット探索あるいは診断等におけるマーカーの発見等の手法において妨害となる非特異的タンパク質を、研究開始前に、人為的に除去又は低減しておくことが可能になれば、得られた結果が特異的な結合によるものかあるいは非特異的な吸着によるものかの検定をする必要がなくなる。従って両者の区別が現実的に不可能であるために生じる研究の中断が減少するばかりでなく、使用するタンパク質等の必要量が大幅に削減でき時間的側面、労力的側面においても大幅なコスト削減が可能となる。これらの利点により当該手法の適応は一段と増すと考えられる。
これまで、これらの問題を克服するためには抗体を用いた免疫沈降法(immunoprecipitation(IP))や抗体をカラムに固定化する方法(例えば「L.F.Steel,et al.,Molecular & Cellular Proteomics,米国,2003年5月16日,Efficient and Specific removal of albumin from human serum samples」参照)等が用いられてきたが、不要なタンパク質を固化して除くという従来の手法では、多くの重要な化合物(タンパク質)が沈殿した塊に巻き込まれ、目的物をロスすることやその費用等が問題となり、その解決が望まれてきた。このような非特異的タンパク質を吸着除去することを目的としたカラム(例えばブルー色素(ブルー色素が有するイオン的特性、疎水的特性、芳香族等の化学的な特性に特異的な結合部位に基づいて非特異的タンパク質を吸着する)やDEAE(酸性タンパク質等が吸着する)を固定化した固相担体が充填されている)の利用が報告されている。しかしながら、その吸着対象となる物質は広範囲にわたり、目的であるターゲット分子をも同時に吸着し、除去されてしまうことが懸念されていた。本発明は、ターゲット探索あるいは診断等におけるマーカーの発見等の手法において、妨害となる非特異的タンパク質を、試料中から、研究開始前に、人為的に除去又は低減する方法を提供することを目的とする。
即ち本発明は下記の通りである。
〔1〕下記一般式(I)で表される化合物の誘導体を固定化してなる固相担体;
〔式中、Alkはフッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアリール基及びフッ素原子で置換されていてもよいヘテロアリール基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を示し、Alk’はフッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアリール基及びフッ素原子で置換されていてもよいヘテロアリール基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を示し(ここでAlkにおける2価の炭化水素基の炭素数とAlk’における2価の炭化水素基の炭素数との合計は2〜25の整数である);
Xは
(式中、R3及びR4は同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアリール基又はフッ素原子で置換されていてもよいヘテロアリール基である)であり;
R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアリール基又はフッ素原子で置換されていてもよいヘテロアリール基である〕。
〔2〕一般式(I)において、炭素骨格上の水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されていることを特徴とする、上記〔1〕記載の固相担体。
〔3〕一般式(I)において、炭素骨格上の水素原子の90%以上がフッ素原子で置換されていることを特徴とする、上記〔1〕記載の固相担体。
〔4〕一般式(I)において、炭素骨格上の水素原子の全てがフッ素原子で置換されていることを特徴とする、上記〔1〕記載の固相担体。
〔5〕誘導体が、カルボン酸誘導体、スルホン酸誘導体、アミノ誘導体、チオール誘導体、イミダゾール誘導体、ハロゲン誘導体、又はアルデヒド誘導体である、上記〔1〕記載の固相担体。
〔6〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の固相担体で試料を処理することを含む、リガンド及び/又はリガンド固定化固相担体に非特異的に結合する物質を試料から除去する方法。
〔7〕試料が生体試料である、上記〔6〕記載の方法。
〔8〕生体試料が組織抽出液である、上記〔7〕記載の方法。
〔9〕リガンド及び/又はリガンド固定化固相担体に非特異的に結合する物質がチューブリン及び/又はアクチンである、上記〔8〕記載の方法。
〔10〕試料が、界面活性剤を含有するものである、上記〔6〕〜〔9〕のいずれか1つに記載の方法。
〔11〕界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、デオキシコール酸及びドデシル硫酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、上記〔10〕記載の方法。
〔12〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の固相担体で試料を処理し、試料中のチューブリン及び/又はアクチンを該固相担体に吸着させることを含む、チューブリン及び/又はアクチンの精製方法。
〔13〕試料が生体試料である、上記〔12〕記載の方法。
〔14〕生体試料が組織抽出液である、上記〔13〕記載の方法。
〔15〕試料が、界面活性剤を含有するものである、上記〔12〕〜〔14〕のいずれか1つに記載の方法。
〔16〕界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、デオキシコール酸及びドデシル硫酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、上記〔15〕記載の方法。
図2は、アミド型のフッ素原子置換化合物を固定化した樹脂を用いて非特異的タンパク質の吸着効果を調べた結果を表す電気泳動の写真である。
図3は、スルホンアミド型のフッ素原子置換化合物を固定化した樹脂を用いた前処理の効果を示す結果を表す電気泳動の写真である。
図4は、フッ素原子置換化合物を固定化した樹脂の非特異的タンパク質の除去効果の選択性を示す、電気泳動の写真である。
発明の詳細な説明
本発明は、固相担体に固定化されたリガンドと当該リガンドに対して特異的な相互作用を有する分子(即ちターゲット分子)との相互作用を解析する上で問題となっていた、リガンド及び/又はリガンド固定化固相担体への非特異的な結合を抑制あるいは低減する技術、より詳細には、所望するターゲット分子をロスすることなく、あるいは変性させることなく、試料(生体成分混合物)中のリガンド固定化固相担体に非特異的に吸着する物質(以下、非特異的物質ともいう)を除去又は低減し得る技術を提供する。本明細書中、リガンドならびにターゲット分子という用語は、互いに特異的な分子間相互作用を有する組み合わせを意図するものであって、当該組み合わせのうち、片方をリガンドとして固相に固定化すれば他方がターゲット分子となり、すなわちどちらを固相に固定化するかによって、それらの呼称は変更され得る。リガンドに特異的な相互作用を有するターゲット分子は1種類とは限らず、また同様にターゲット分子に特異的な相互作用を有するリガンドも1種類とは限らない。
「特異的な相互作用」とは、「鍵と鍵穴の関係」に例えられる(参考図書:「薬物受容体」高柳一成編、南山堂)、特定のリガンド(特定のターゲット分子)のみを特異的に認識して結合するような特性を発揮する作用であり、アゴニストあるいはアンタゴニストに対する特異的受容体、基質に対する酵素、そして例えばFK506(リガンド)に対するFK506結合タンパク質(ターゲット分子)や、ステロイドホルモンに対するステロイドホルモン受容体(例=dexamethasoneとglucocorticoid receptor)、抗がん剤trapoxinに対するHDAC等の関係が「特異的な相互作用」に該当する。一方、「非特異的な相互作用」とは、それによる結合の対象が広範にわたり且つ特定分子に限定されず、反応条件によって種々変化するような状況を生じる作用をいい、本発明においては、リガンド固定化固相担体上のリガンドや固相担体表面に、結合・吸着するような不特定の分子との間の作用を意味する。「非特異的な相互作用」は、「特異的な相互作用」に基づくリガンドとターゲット分子の結合の障害となるか、あるいは混同されることにより「特異的な相互作用」による結合を見落としてしまう危険性がある。
「非特異的な結合」とは、このように、非特異的な相互作用に基づく結合・吸着を意味する。本発明において、「非特異的な結合」は好ましくは、分子間の非特異的な疎水的な相互作用に基づくものである。非特異的な相互作用によってリガンド固定化固相担体に結合する「非特異的物質」としてはタンパク質、ペプチド、核酸、脂肪酸、糖質等が挙げられ、より具体的には、組織抽出液中に多量に存在するチューブリンやアクチン、あるいは血液中に多量に存在するアルブミン等が挙げられる。
本発明者らは、高頻度にフッ素原子で置換された炭化水素鎖等を固定化した固相担体(便宜上、フッ素原子置換化合物固定化固相担体ともいい、リガンドが固定化された固相担体とは明確に区別する)に非特異的物質を結合させて試料中から非特異的物質を除去する方法を確立した。
本発明において、高頻度にフッ素原子で置換された炭化水素等の固相担体への固定化は、具体的には下記一般式(I)で表される化合物の誘導体を固相担体に固定化することによって実施される。
〔式中、Alkはフッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアリール基及びフッ素原子で置換されていてもよいヘテロアリール基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を示し、Alk’はフッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアリール基及びフッ素原子で置換されていてもよいヘテロアリール基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を示し(ここでAlkにおける2価の炭化水素基の炭素数とAlk’における2価の炭化水素基の炭素数との合計は2〜25の整数である);
Xは
(式中、R3及びR4は同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアリール基又はフッ素原子で置換されていてもよいヘテロアリール基である)であり;
R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアリール基又はフッ素原子で置換されていてもよいヘテロアリール基である〕。
本明細書中、「2価の炭化水素基」とは、炭素数1〜25のアルキレン基、炭素数2〜25のアルケニレン基あるいは炭素数2〜25のアルキニレン基を示す。
「炭素数1〜25のアルキレン基」とは、炭素数1〜25の直鎖又は分岐状のアルキレン基を意味し、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert−ペンチレン基、ヘキシレン基、イソヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、1,1−ジメチルブチレン基、2,2−ジメチルブチレン基、3,3−ジメチルブチレン基、2−エチルブチレン基等が挙げられる。
「炭素数2〜25のアルケニレン基」とは、炭素数2〜25の直鎖又は分岐状のアルケニレン基を意味し、具体的にはビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基等が挙げられる。
「炭素数2〜25のアルキニレン基」とは、炭素数2〜25の直鎖又は分岐状のアルキニレン基を意味し、具体的にはブチニレン基等が挙げられる。
本明細書中「フッ素原子で置換されていでもよいアルキル基」における「アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐犬のアルキル基を意味し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。当該アルキル基はその炭素骨格上の1乃至2以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
本明細書中「フッ素原子で置換されていてもよいアリール基」における「アリール基」とは、炭素数6〜14のアリール基を意味し、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。当該アリール基はその炭素骨格上の1乃至2以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
本明細書中「フッ素原子で置換されていてもよいヘテロアリール基」における「ヘテロアリール基」とは、環構成原子として炭素以外に窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含む5〜6員のヘテロアリール基を意味し、具体的にはフリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル等が挙げられる。
本発明においては、上記一般式(I)で表される化合物を種々の当分野で通常用いられる固相担体に固定化する。固定化の際には、固相担体上の官能基あるいは固定化に用いる結合の種類に応じて当該化合物をより反応性の高い誘導体とする。どの誘導体を使用するか、またその調製方法は使用する固相担体、固相担体上の官能基等に応じて適宜選択される。固相上の官能基と固定化する化合物との組み合わせについて具体例を表1に示す。
本発明において固定化に用いられる一般式(I)で表される化合物は、その炭素骨格上の水素原子が高頻度にフッ素原子で置換されていることが、非特異的物質の除去という効果を発揮する上で重要である。フッ素原子での置換度が低いと十分な非特異的物質の除去効果が得られず、その置換度は通常80%以上、好ましくは90%以上であり、特に好ましくは全ての水素原子が理論上フッ素原子で置換されている。置換度は、元素分析やMS測定によっても求めることが出来、置換位置に関してはX線結晶解析等によって測定することができる。
上記した、高頻度にフッ素原子で置換された炭化水素等の化合物、具体的には一般式(I)で表される化合物は、フッ素原子が水素原子である対応する脂肪酸、アルカンスルフォン酸等の原料化合物を適当な溶媒に溶解し、三フッ化コバルト等の存在下、過剰のフッ化水素あるいはフッ素を加え、UV照射あるいは電気を反応溶液に流すことによって合成することができる(SCHERER,K.V.J.;YAMANOUCHI,K.;ONO,T.;J Fluorine Chem[JFLCAR]1990,50(1),47−65.、LIN,W.−H.;LAGOW,R.J.;J Fluorine Chem[JFLCAR]1990,50(3),345−358.、DIMITROV,A.;RADECK,W.;RUEDIGER,S.;PLATONOV,V.E.;J Fluorine Chem[JFLCAR]1991,52(3),317−331.)。
高頻度にフッ素原子で置換された化合物を固定化する固相担体は、当分野で通常使用されるものが好適に使用できるが、その使用目的、即ち、分子間の特異的な相互作用の解析に先立つ非特異的物質の除去に好適な固相担体が選択される。材質としては、例えば、樹脂(ポリスチレン、メタクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド等)、ガラス、金属(金、銀、鉄、シリコン等)等が用いられる。これらの固相担体は、いかなる形状のものであってもよく、また上記した材質の種類や、その後に実施する分子間の特異的な相互作用の解析の為に行われる方法に応じて適宜決定される。例えば板状、ビーズ状、薄膜状、糸状、コイル状等が挙げられるが、樹脂からなるビーズであればカラムに充填することによりその後の操作を簡便にし、金属の薄膜やガラスプレートもまた好適である。
本発明において高頻度にフッ素原子で置換された化合物を固定化する為に使用する固相担体は、上述の如く、その材質や形状に特に制限はないが、当然のことながら、当該化合物が固定化されないような、あるいは固定化されるものの出来上がった固相担体全体として非特異的物質が吸着/結合されないようなものは、使用する為には、余分な工程を経る必要があって操作が煩雑になったり、あるいは使用に耐えなかったりする塲合があるので、本発明を実施する上で好ましくない。
高頻度にフッ素原子で置換された化合物の固相担体への固定化は、固定化に用いる化合物に応じて、通常当分野で実施される公知の方法及びそれらを適宜組み合わせた方法によって実施される。例えば、カルボキシル基とアミノ基とのアミド結合によって、スルホン酸基とアミノ基とのスルホンアミド結合によって固定化が行われる。これらの反応は、例えば「ペプチド合成の基礎と実験」(ISBN 4−621−02962−2、丸善、昭和60年初版)に従っても実施出来るし、対応する酸クロライド等を塩基存在下固相担体のアミノ基と反応させることによっても実施できる。各反応に用いられる試薬や溶媒については当分野で通常用いられるものが利用でき、採用する結合反応によって適宜選択される。疎水性物質が固相担体に固定化されたか否かは、反応前後の固相担体表面上のアミノ基の定量(例えばニンヒドリン試験)によって測定される反応率から確認することができる。また、T.W.Greene,P.G.M.Wuts,″Protective Groups in Organic Synthesis″,(John Wiley & Sons,Inc.1999,ISBN 0−471−16019−9),p603に記載の方法に準じて、スルホンアミド結合を介して当該化合物を固相担体に固定化することができる。
その他の結合形成に関しても、当分野で通常実施されている方法、具体的には、例えば実験化学講座(編日本化学会、丸善)等に書かれている手順に従い行うことが出来る。
本発明において「リガンド固定化固相担体」とは、その上でリガンドとターゲット分子の特異的な相互作用が生じるものであって、ターゲット分子の選別等に好適に使用される。
本発明においてリガンドあるいは、リガンド固定化固相担体に固定化されるリガンドは特に限定されず、公知の化合物であっても今後開発される新規な化合物であってもよい。また、低分子化合物であっても高分子化合物であってもかまわない。ここで低分子化合物とは分子量1000未満程度の化合物であって、例えば医薬品として通常使用し得る有機化合物及びその誘導体や無機化合物が挙げられ、有機合成法等を駆使して製造される化合物やその誘導体、天然由来の化合物やその誘導体、プロモーター等の小さな核酸分子や各種の金属等であり、望ましくは医薬品として使用し得る有機化合物及びその誘導体、核酸分子をいう。また、高分子化合物としては分子量1000以上程度の化合物であって、タンパク質、ポリ核酸類、多糖類、及びこれらを組み合わせたものなどが挙げられ、望ましくはタンパク質である。これらの低分子化合物あるいは高分子化合物は、公知のものであれば商業的に入手可能であるか、各報告文献に従って採取、製造、精製等の工程を経て得ることができる。これらは、天然由来であっても、また遺伝子工学的に調製される
ものであってもよく、また半合成等によっても得ることができる。
本発明は、リガンド及び/又はリガンド固定化固相担体に非特異的に吸着する、非特異的物質を試料から除去する方法を提供するものであって、当該非特異的物質は、例えば、樹脂(ポリスチレン、メタクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド等)、ガラス、金属(金、銀、鉄、シリコン等)等の任意の材質の固相担体に非特異的に吸着し得る。また、同様に、例えば板状、ビーズ状、薄膜状、糸状、コイル状等のいかなる形状のものにも非特異的に吸着し得る。
リガンドを固定化する為の固相担体は、高頻度にフッ素原子で置換された化合物を固定化した固相担体と同じ材質、同じ形状であってもよく、また異なる材質、異なる形状であってもよい。当然のことながら同じ材質、異なる形状であってもよいし、異なる材質、同じ形状であってもよい。
本発明において、試料は、非特異的物質及び特異的物質を含み得る、好ましくはこれらの物質を含む液状組成物である。全て特異的物質から構成される試料は、本発明の非特異的物質の除去という目的を鑑みるに使用するには好ましくない。また、全て非特異的物質から構成される試料も、本発明の非特異的物質の除去という目的を鑑みるに使用するには好ましくない。
試料は、全て公知化合物から構成されるものであっても、一部新規な化合物を含むものであっても、さらには全て新規な化合物から構成されるものであってもよい。例えば大腸菌等によって遺伝子工学的に調製された精製タンパク質の混合物等であり、あるいは細胞や組織の抽出物(lysate;ライゼート)である。また全て新規な化合物から構成されるものとしては、まだその機能や構造が知られていない新規なタンパク質や新しく合成された化合物等の混合物が挙げられる。試料が混合物の場合、特に公知化合物を含む場合には、任意にこれらの化合物の、試料中の含有量を所望の値に設定しておくこともできる。
含められる物質としてはタンパク質、核酸、糖質、脂質等種々の物質が挙げられる。当該タンパク質には単純タンパク質に加え、糖タンパク質やリポタンパク質等の複合タンパク質が包含される。
また、細胞や組織からの抽出の際に界面活性剤を使用する場合がある。通常、試料中に界面活性剤が存在すると、物質間の特異的及び/又は非特異的な相互作用が抑制される傾向にあり、従って、試料中からの非特異的物質の除去又は低減という本願発明の目的とする効果が十分に達成されない可能性が懸念される。しかしながら、本願発明の、高頻度にフッ素原子で置換された化合物を固定化した固相担体は、界面活性剤の存在下でも非特異的物質を十分に吸着・結合させることができ、そのような観点からも細胞や組織からの抽出液ならびにそれらの希釈物を試料として用いた場合でもその効果を発揮することができる。かかる試料中には主としてチューブリンやアクチンがリガンド及び/又はリガンド固定化固相担体に非特異的に結合する物質として含まれる。
試料中に含まれ得る界面活性剤としては、通常当分野で使用される商業的にも容易に入手できる種々のものが挙げられ、例えば新生化学実験講座1 タンパク質I−分離・精製・性質−、p36に記載のものが好ましく使用できる。また、その濃度も通常当分野で使用される濃度であり、一般的には1%程度までの量(Triton X−100,Nonidet P40等の例)の界面活性剤が含められる。
さらに、本発明の高頻度にフッ素原子で置換された化合物が固定化された固相担体(フッ素原子置換化合物固定化固相担体)が有する、チューブリンやアクチンを顕著に吸着する能力は、本発明のフッ素原子置換化合物固定化固相担体を試料中のチューブリンやアクチンを濃縮あるいは精製する目的で利用することを可能とする。
本発明のフッ素原子置換化合物固定化固相担体、あるいは非特異的物質の除去方法は、リガンド固定化固相担体を用いて、当該リガンドに特異的な相互作用を有するターゲット分子をスクリーニングする方法に利用できる。また、本発明のフッ素原子置換化合物固定化固相担体あるいは非特異的物質の除去方法により、非特異的物質が除去又は低減された試料を解析する方法に利用でき、また当該解析によって試料中に含まれ得るターゲット分子をスクリーニングする方法にも利用できる。解析方法としては、具体的には電気泳動法、免疫学的反応を用いたイムノブロッティングや免疫沈降法、クロマトグラフィー、マススペクトラム、アミノ酸シーケンス、NMR(低分子のときに特に)等の公知の手法により、またこれらの方法の組み合わせ等が挙げられる。
該スクリーニング方法は以下の工程を少なくとも含む。尚、本スクリーニング法における、試料、リガンド及びターゲット分子やリガンド固定化固相担体、フッ素原子置換化合物固定化固相担体の定義は上記した通りである。
(1)ターゲット分子を含むか又は含まない試料を、高頻度にフッ素原子で置換された化合物が固定化された固相担体と接触させる工程
試料の形状は、次工程あるいは実施目的にどのような原理や手段、方法を用いるかによって適宜変更し得る。例えばフッ素原子置換化合物固定化固相担体としてビーズ樹脂を充填したカラムを用いる場合には液状とするのが好ましい。試料とフッ素原子置換化合物固定化固相担体とを接触させる方法は、試料内の非特異的物質がフッ素原子置換化合物固定化固相担体に吸着除去されれば特に限定されず、使用する固相担体や次工程でどのような原理や手段、方法を用いるかによって適宜変更し得る。例えばフッ素原子置換化合物固定化固相担体としてビーズ樹脂を充填したカラムを用いる場合には、液状にした試料をカラムに添加しカラム内を通すことにより当該工程が簡便に実施される(カラム法)。また、簡便には当該ビーズ樹脂と試料とを一定時間混合することによって実施できる(バッチ法)。カラムへのアプライ量、流速、溶出処理、混合時間等はアフィニティークロマトグラフィーで通常行なわれている条件に基づいて、非特異的物質の吸着除去に最適な条件設定が行なわれる。
リガンド固定化固相担体を用いる場合には例えば以下のような工程を含む。
(2)上記(1)の工程により得られた、フッ素原子置換化合物固定化固相担体と接触させた後の試料をリガンド固定化固相担体に接触させる工程
本工程は、前工程により得られた試料、即ち、非特異的物質が除去された試料をリガンド固定化固相担体に接触させる工程である。該試料とリガンド固定化固相担体とを接触させる方法は、ターゲット分子が試料中に存在する場合にリガンド固定化固相担体上で特異的相互作用によって結合することができれば特に限定されず、使用する固相担体や次工程でどのような原理や手段、方法を用いるかによって適宜変更し得る。例えばリガンド固定化固相担体としてビーズ樹脂を充填したカラムを用いる場合には、液状にした試料をカラムに添加しカラム内を通すことにより簡便に実施される(カラム法)。また、簡便には当該ビーズ樹脂と試料とを一定時間混合することによって実施できる(バッチ法)。カラムへのアプライ量、流速、溶出処理、混合時間等はアフィニティークロマトグラフィーで通常行なわれている条件に基づいて、特異的物質の結合に最適な条件設定が行われる。
(3)リガンドに特異的な相互作用を示したか、又は示さなかった分子を同定し、解析する工程
かかる工程は、使用する固相担体や固定化したリガンドの種類等によって適宜変更し得るが、通常当分野で実施されている低分子化合物あるいは高分子化合物を同定する為の各種方法により行う。また、今後開発されるであろう方法によっても実施可能であろう。例えばリガンド固定化固相担体としてリガンドが固定化されたビーズ樹脂を充填してなるカラムを用いた場合、工程(1)であらかじめ非特異的物質を除去した試料の添加により〔工程(2)〕、リガンドにターゲット分子を結合させる。結合したターゲット分子を緩衝液の極性を変える、あるいは過剰のリガンドをさらに加える等の処理によってリガンドから解離させ、その後同定したり、あるいは固相上のリガンドと結合した状態でそのまま界面活性剤等によって抽出して同定したりすることもできる。同定方法としては具体的には電気泳動法、免疫学的反応を用いたイムノブロッティングや免疫沈降法、クロマトグラフィー、マススペクトラム、アミノ酸シーケンス、NMR(低分子のときに特に)等の公知の手法により、またこれらの方法を組み合わせて実施する。リガンドに結合しない分子を同定する工程も上記リガンドに結合する分子を同定する方法に準じて行うことができるが、カラムの素通り画分に含まれる分子を同定の対象とするので、同定工程に入る前に予め濃縮や粗精製等の処理を行うことが好ましい。得られたデータならびに既存の報告をもとに各分子を同定し、リガンドのターゲット分子であるか否かを判断する。
また、本工程は自動化されていてもよい。例えば2次元電気泳動で得られた種々の分子のデータを直接読み取り、既存のデータベースに基づいて分子の同定を行うことも可能である。
リガンド固定化固相担体を用いず、上記(1)の工程で得られたフッ素原子置換化合物固定化固相担体との接触後の試料をそのまま解析することも可能である。例えば以下のような工程を含む。
(3’)上記(1)の工程で得られたフッ素原子置換化合物固定化固相担体との接触後の試料について電気泳動法、免疫学的反応を用いたイムノブロッティングや免疫沈降法、クロマトグラフィー、マススペクトラム、アミノ酸シーケンス、NMR(低分子のときに特に)等の公知の手法により、またこれらの方法を組み合わせて解析を行う。得られたデータならびに既存の報告をもとにターゲット分子の存在を検定することも可能である。また、本工程は自動化されていてもよい。例えば2次元電気泳動で得られた種々の分子のデータを直接読み取り、既存のデータベースに基づいて分子の同定を行うことも可能である。
[実施例1]
(1)フッ素原子置換化合物固定化固相担体の作成
全タンパク質から、非特異的物質を除去するフッ素原子置換化合物固定化固相担体の合成は、その炭素骨格上の水素原子が全てフッ素原子で置換されたオクチルスルホン酸(Heptadecafluorooctanesulfonic acid;PFOS)の酸クロライド体を樹脂のアミノ基に反応させることにより行った。
1000μlのTOYOパール樹脂(アミノ基量100μmol)のアミノ基量に対して4当量のPFOSに対応する酸クロライド、20当量のトリエチルアミンを、樹脂に対して5倍容量(v/v)のジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、樹脂と混合した。反応は室温で12時間撹拌を続けることにより行った。反応終了後、樹脂をDMFで洗浄した後、溶媒を20%のエタノール溶液に置換して保存した。
(2)PFOS固定化樹脂による全タンパク質の精製
試料(全タンパク質)としてラットの脳溶解液を使用した。0.25Mのシュクロース緩衝液(25mM Tris−HCl,pH7.4)で脳溶解液を5mg/mlに調整し(図1:レーン1)、この全タンパク質溶液100μlに対して、上記(1)で得られたPFOS固定化樹脂を10μlの量で混合し、4℃で5時間撹拌した。その後、遠心操作により樹脂と精製された脳溶解液(図1:レーン2)を分離した。樹脂に結合したタンパク質を取り出すためにサンプルバッファー(含2−メルカプトエタノール、SDS−PAGE用(商品名)、ナカライ社製)を20μl添加し、25℃で10分間撹拌した。その後、遠心によりサンプルバッファーを分離し上清を得(図1:レーン3)、SDS−PAGEを行ってタンパク質の存在を確認した。
結果を図1に示す。
PFOSを固定化したカラムによる処理では多量のチューブリン等の非特異的物質が除去され、且つ他のタンパク質の吸着が最小限に抑えられていることが観測された。当該結果より、アフィニティー樹脂によるターゲット探索、プロテオーム研究や生体成分の検査による診断などにおける前処理として本願発明のカラム処理が有効であることがわかる。
同様に界面活性剤を含有する試料を用いた場合にも十分非特異的タンパク質を除去することができた。
[実施例2]
(1)フッ素原子置換化合物固定化固相担体の作成
全タンパク質から、非特異的物質を除去するフッ素原子置換化合物固定化固相担体の合成は、その炭素骨格上の水素原子が全てフッ素原子で置換された種々の炭素数のカルボン酸(炭素数1〜5、7、9及び11)を樹脂のアミノ基に反応させることにより行った(アミド型)。
1000μlのTOYOパール樹脂(アミノ基量100μmol)のアミノ基量に対して4当量のカルボン酸、4.8当量のベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、9.6当量のジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を樹脂に対して5倍容量(v/v)のジメチルホルムアミド(DMF)/ジクロロメタンの混合溶媒(1:1)に溶解し、樹脂と混合した。反応は室温で12時間撹拌を続けることにより行った。反応終了後、樹脂をジクロロメタン及びDMFで順次洗浄し、最後にピペリジンで洗浄した後、溶媒を20%のエタノール溶液に置換して保存した。
また、実施例1と同様にして種々の炭素数(炭素数1、2、4、6及び8)を有するアルカンスルフォン酸を用いてフッ素原子置換化合物固定化固相担体を合成した(スルホンアミド型)。
(2)フッ素原子置換化合物固定化固相担体による全タンパク質の精製
試料(全タンパク質)として、実施例1で調製したのと同様なラット脳溶解液を使用した。この全タンパク質溶液1000μlに対して、上記(1)で得られた各フッ素原子置換化合物固定化固相担体を10μlの量で混合し、4℃で5時間撹拌した。その後、遠心操作により樹脂と精製された脳溶解液を分離した。樹脂に結合したタンパク質を取り出すためにサンプルバッファー(含2−メルカプトエタノール、SDS−PAGE用(商品名)、ナカライ社製)を20μl添加し、25℃で10分間撹拌した。その後、遠心によりサンプルバッファーを分離し、SDS−PAGEにより得られたタンパク質を確認した。
非特異的なタンパク質がフッ素原子置換化合物固定化固相担体に吸着除去されることが示された。一例として炭素骨格上の水素原子が全てフッ素原子で置換された炭素数1のカルボン酸を樹脂のアミノ基に反応させることにより合成したフッ素原子置換化合物(アミド型)固定化固相担体を用いた場合の結果を図2に示す。
同様に界面活性剤を含有する試料を用いた場合にも十分非特異的タンパク質がフッ素原子置換化合物固定化固相担体に吸着除去された。
[実施例3]
本発明のフッ素原子置換化合物を固定化した固相担体の有用性を調べる為に、リガンド固定化カラムとしてFK506固定化カラムを用いたラット脳溶解液からの特異的タンパク質FKBP12の単離研究にフッ素原子置換化合物固定化カラムによる前処理実験を行い、その有用性を検証した。
フッ素原子置換化合物固定化カラムとしては炭素骨格数が4のPerfluorobutanesulfonyl acidの酸フルオライド体を樹脂のアミノ基に反応させた、スルホンアミド型のフッ素原子置換化合物固定化固相担体(n=4)を使用した。ラット脳溶解液1000μlに対し、100μlのフッ素原子置換化合物固定化固相担体で4℃、1時間撹拌することにより前処理をした。その後、それぞれの前処理したラット脳溶解液に対し、10μlのFK506固相担体で4℃、16時間撹拌することにより特異的タンパク質FKBP12の単離を行った。樹脂に結合したタンパク質の回収は、遠心操作により樹脂と精製された脳溶解液を分離し、樹脂に結合したタンパク質を取り出すためのサンプルバッファー(含2−メルカプトエタノール、SDS−PAGE用(商品名)、ナカライ社製)を20μl添加し、25℃で10分間撹拌することにより行った。その後、遠心によりサンプルバッファーを分離し、SDS−PAGEにより得られたタンパク質を確認した。
フッ素原子置換化合物固定化固相担体で前処理したそれぞれの細胞溶解液中のタンパク質と、その細胞溶解液中に含まれるFK506結合タンパク質の電気泳動像を図3に示す。
試料として界面活性剤を用いて調製した組織抽出液を用いた場合にも同様な結果が得られた。
[実施例4]
実施例1〜3から明らかなように本発明の固相担体はチューブリン、アクチン、アルブミン等の非特異的吸着タンパク質以外のタンパク質との結合が弱いほど選択性が高く有用なものとなる。そこで、PFOSを固定化した樹脂、あるいは非特異的タンパク質除去等の目的で使用される市販アフィゲルブルー(Bio−Rad社、カタログ番号153−7301)と一般的酵素の一つであるトロンビンとの結合性を比較しその選択性について検討した。アフィゲルブルーにはchibacron blue F3GAが固定化されている。
市販のトロンビン(sigma社、カタログ番号A−2580、1単位)を1mlの0.25Mのシュクロース緩衝液(25mM Tris−HCl,pH7.4)で10倍に希釈しトロンビンサンプル溶液とした。本トロンビンサンプル溶液(100μl)と実施例1で調製したPFOS固定化樹脂、あるいはアフィゲルブルー(Bio−Rad社、カタログ番号153−7301)それぞれ10μlとを混合し、4℃で1.5時間撹拌した。その後、遠心操作により樹脂を分離した。樹脂に結合したタンパク質を取り出すために前述のサンプルバッファーを20μl添加し、25℃で10分間撹拌した。樹脂に結合したタンパク質及び本処理前後のトロンビン溶液に関する結果を図4に示す。
図4に示すように、PFOS固定化樹脂では処理後樹脂上にトロンビンはほとんど捕捉されておらず(レーン2)、処理後の溶液中のトロンビン量は処理前(レーン1)とほとんど変化していないことがわかる(レーン3)。一方、市販のchibacron blue F3GAを固定化したアフィゲルブルー上には多量のトロンビンが捕捉されており(レーン5)、処理後のトロンビン溶液中に残存するトロンビンは明らかに減少していた(レーン6)。
これらの結果はPFOS固定化固相担体が従来使用されてきたアフィゲルブルーに比べて非特異的吸着タンパク質に対する高い選択性を有することを示唆している。
本出願は、日本で出願された特願2003−354374を基礎としておりそれらの内容は本明細書に全て包含されるものである。
Claims (16)
- 一般式(I):
Xは
R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアリール基又はフッ素原子で置換されていてもよいヘテロアリール基である〕で表される化合物の誘導体を固定化してなる固相担体で組織抽出液を処理することを含む、チューブリン及び/又はアクチンを組織抽出液から除去する方法。 - 一般式(I)において、炭素骨格上の水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
- 一般式(I)において、炭素骨格上の水素原子の90%以上がフッ素原子で置換されていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
- 一般式(I)において、炭素骨格上の水素原子の全てがフッ素原子で置換されていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
- 誘導体が、カルボン酸誘導体、スルホン酸誘導体、アミノ誘導体、チオール誘導体、イミダゾール誘導体、ハロゲン誘導体、又はアルデヒド誘導体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 組織抽出液が、界面活性剤を含有するものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、デオキシコール酸及びドデシル硫酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項6記載の方法。
- 一般式(I):
Xは
R 1 及びR 2 は同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアリール基又はフッ素原子で置換されていてもよいヘテロアリール基である〕で表される化合物の誘導体を固定化してなる固相担体で試料を処理し、試料中のチューブリン及び/又はアクチンを該固体担体に吸着させることを含む、チューブリン及び/又はアクチンの精製方法。 - 一般式(I)において、炭素骨格上の水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されていることを特徴とする、請求項8記載の方法。
- 一般式(I)において、炭素骨格上の水素原子の90%以上がフッ素原子で置換されていることを特徴とする、請求項8記載の方法。
- 一般式(I)において、炭素骨格上の水素原子の全てがフッ素原子で置換されていることを特徴とする、請求項8記載の方法。
- 誘導体が、カルボン酸誘導体、スルホン酸誘導体、アミノ誘導体、チオール誘導体、イミダゾール誘導体、ハロゲン誘導体、又はアルデヒド誘導体である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
- 試料が生体試料である、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 生体試料が組織抽出液である、請求項13記載の方法。
- 試料が、界面活性剤を含有するものである、請求項8〜14のいずれか1項に記載の方法。
- 界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、デオキシコール酸及びドデシル硫酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項15記載の方法。
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