JP2005249725A - 甲状腺ホルモン受容体固定化電極、その製造方法、及びその用途 - Google Patents

甲状腺ホルモン受容体固定化電極、その製造方法、及びその用途 Download PDF

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Hiroshi Tawarada
啓 俵田
Masaharu Murata
正治 村田
Yoshiki Katayama
佳樹 片山
Kentaro Yano
健太郎 矢野
Shinichiro Kuroki
慎一郎 黒木
Tatsuo Suzutani
達夫 錫谷
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Abstract

【課題】 甲状腺ホルモン受容体とリガンドの間の結合を短時間でかつ高感度で電気化学的シグナルとして検出することができる甲状腺ホルモン受容体固定化電極を提供する。
【解決手段】 以下の(1)〜(4)の要素を含むことを特徴とする甲状腺ホルモン受容体固定化電極:
(1)導電性基板;
(2)導電性基板に対する吸着部位とニッケル錯体又はコバルト錯体に対する2つの錯体配位子とを有する二官能性固定化試薬であって、吸着部位を介して導電性基板に固定化されている二官能性固定化試薬;
(3)二官能性固定化試薬の2つの錯体配位子にそれぞれ結合されているニッケル錯体又はコバルト錯体;及び
(4)ヒスチジンタグを有する甲状腺ホルモン受容体であって、ヒスチジンタグを介してニッケル錯体又はコバルト錯体に結合されている甲状腺ホルモン受容体。
【選択図】 図2

Description

本発明は受容体とリガンドの間の結合を電気化学的シグナルとして検出するための電気化学センサ(受容体固定化電極)に関する。特に、本発明はダイオキシン類やDDTなどの農薬類に代表される環境汚染物質を検出するための電気化学センサに関する。また、本発明はかかる電気化学センサの製造方法、かかる電気化学センサを含む電気化学的分析装置、及びかかる電気化学センサの用途にも関する。
化学物質の中にはホルモンの代わりに受容体に結合して内分泌系を攪乱するものがある。例えば、DDT(p,p′−ジクロロジフェニルトリクロロエタン)やビスフェノールAなどはエストロゲン(女性ホルモン)受容体に結合してしまい、生体の必要性に関係なくエストロゲン(女性ホルモン)作用を起こさせることが知られている。
ホルモンは組織の発生や分化、成長、体内の恒常性の維持などの様々な生理的作用を有する物質である。ホルモンがその作用を発揮するためには受容体と結合することが必要である。つまり、内分泌臓器の細胞で合成されたホルモンは血液を介して標的臓器に到達し、そこで受容体と結合して複合体を形成する。次にこの複合体が細胞核へと輸送されて標的遺伝子の発現を誘導し、これにより生理作用を起こす標的タンパク質が生産されて様々な作用を起こす。
甲状腺ホルモンは脳を含む全身の臓器・組織に作用し、その恒常性の維持と制御を担っている。特に、甲状腺ホルモンは成長と骨格形成に対して重要な影響を及ぼし、発育障害とも深く関係することが知られている。最近では、ダイオキシン類やDDTなどの農薬類への暴露によって血液中の甲状腺ホルモン濃度が有意に変化することから、甲状腺ホルモン受容体(TR)は内分泌撹乱物質の新たな標的タンパク質として注目を集めている。
また、上述のダイオキシン類やDDTなどの農薬類以外に、現在流通する87000種類に及ぶ化学物質の中には甲状腺ホルモン受容体と相互作用するものが多数含まれていると考えられている。従って、これらの化学物質の安全性を確認するため、これらの化学物質の健康リスクを評価する技術の開発が求められている。
また、甲状腺ホルモンは肥満や心臓疾患等との関連から医学・薬学分野でも注目されており、甲状腺ホルモン受容体に結合するリガンドの存在やその濃度を測定する技術は薬物スクリーニングや臨床診断での利用も期待できる。
さらに、生理的作用に関わる受容体がリガンドと結合したときにどのような構造変化又は機能変化が誘起されるのかを知ることは医薬品や疾病治療方法を開発する上で重要であるが、甲状腺ホルモン受容体がリガンドと結合したときに誘起される受容体の構造変化又は機能変化の詳細はいまだ明らかとなっていない。
現在、環境汚染物質を測定する方法としては大型機器を用いる機器分析方法と、培養細胞又は抗体を用いるバイオアッセイ方法の2つが主に知られている。前者はレーザー照射によって化合物をフラグメンテーション化し、その質量を分析する方法である。この方法は毒性が既知の物質の測定方法としては優れているが、化学物質の毒性評価(甲状腺ホルモン受容体との結合活性評価)に用いることは不可能である。また使用する機器が大型であり、かつ非常に高価であることも欠点である。一方、後者のバイオアッセイ方法は測定物質の毒性評価が可能ではあるが、測定に長時間(最短5時間から一週間程度)を要する上、数段階にわたる煩雑な実験操作が必要である。また培養細胞を用いるアッセイ方法では、測定物質の細胞膜透過性により測定の定量性が損なわれてしまうことも大きな問題点である。
これらの方法の欠点に鑑み、本発明者らは金電極の如き導電性基板上に一官能性固定化試薬を介してニッケル錯体又はコバルト錯体が固定化され、さらに前記錯体に結合したヒスチジンタグを介して受容体が固定化されて構成される受容体固定化電極(電気化学センサ)及びかかる電気化学センサを用いた内分泌攪乱物質検出方法を提案している(非特許文献1)。この電気化学センサは受容体とリガンドの間の結合を電気化学的シグナルとして検出するため、短時間で内分泌攪乱物質を検出することができるという利点を有する。しかし、この電気化学センサは応答感度が十分でなく、実用に耐えうるものではなかった。
第79回日本化学会講演予稿集(2001年)、講演番号3F404及び3F407他
本発明の第1の目的は、甲状腺ホルモン受容体とリガンドの間の結合を短時間でかつ高感度で電気化学的シグナルとして検出することができる甲状腺ホルモン受容体固定化電極を提供することである。
本発明の第2の目的は、かかる甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法を提供することである。
本発明の第3の目的は、かかる甲状腺ホルモン受容体固定化電極を含む電気化学的分析装置を提供することである。
本発明の第4の目的は、短時間でかつ高感度で環境汚染物質を定性的に検出する方法を提供することである。
本発明の第5の目的は、短時間でかつ高感度で環境汚染物質を定量的に測定する方法を提供することである。
本発明の第6の目的は、短時間でかつ高感度で化学物質の健康リスクを評価する方法を提供することである。
本発明の第7の目的は、甲状腺ホルモン受容体がリガンドと結合したときに誘起される受容体の構造変化又は機能変化を解析する方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決すべく甲状腺ホルモン受容体の電極への固定化方法について鋭意研究した結果、先に提案した受容体固定化電極の構成要素中の一官能性固定化試薬を二官能性固定化試薬に置換することにより甲状腺ホルモン受容体固定化電極の感度が著しく増大すること、かかる甲状腺ホルモン受容体固定化電極を用いると環境汚染物質の定性的検出もしくは定量的測定、又は化学物質の健康リスクの評価を短時間でかつ高感度で行うことができること、及びかかる甲状腺ホルモン受容体固定化電極を用いると甲状腺ホルモン受容体がリガンドと結合したときに誘起される受容体の構造変化又は機能変化を解析することができることを見出し、遂に本発明を想到するに至った。
本発明の第1の側面によれば、以下の(1)〜(4)の要素を含むことを特徴とする甲状腺ホルモン受容体固定化電極が提供される:
(1)導電性基板;
(2)導電性基板に対する吸着部位とニッケル錯体又はコバルト錯体に対する2つの錯体配位子とを有する二官能性固定化試薬であって、吸着部位を介して導電性基板に固定化されている二官能性固定化試薬;
(3)二官能性固定化試薬の2つの錯体配位子にそれぞれ結合されているニッケル錯体又はコバルト錯体;及び
(4)ヒスチジンタグを有する甲状腺ホルモン受容体であって、ヒスチジンタグを介してニッケル錯体又はコバルト錯体に結合されている甲状腺ホルモン受容体。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の好ましい実施態様においては、導電性基板は金電極であり、吸着部位はジスルフィド基の如きイオウ含有基であり、錯体配位子はニトリルトリ酢酸又はイミノ二酢酸である。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の好ましい実施態様においては、二官能性固定化試薬の錯体配位子と吸着部位との間にリンカー部位が設けられており、二官能性固定化試薬はその分子構造の両端にそれぞれ錯体配位子を有し、その分子構造の中央に吸着部位を有する。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の好ましい実施態様においては、甲状腺ホルモン受容体はヒト由来の組換え甲状腺ホルモン受容体であり、前記組換え甲状腺ホルモン受容体はリガンド結合部位及びHsp90結合部位を少なくとも含む。
本発明の第2の側面によれば、以下の(イ)〜(ニ)の工程を含むことを特徴とする甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法が提供される:
(イ)以下の(1)〜(4)の要素を準備する:
(1)導電性基板;
(2)導電性基板に対する吸着部位とニッケル錯体又はコバルト錯体に対する2つの錯体配位子とを有する二官能性固定化試薬;
(3)ニッケル錯体又はコバルト錯体;及び
(4)ヒスチジンタグを有する甲状腺ホルモン受容体;
(ロ)導電性基板に二官能性固定化試薬を吸着部位を介して固定化させる;
(ハ)二官能性固定化試薬の2つの錯体配位子にそれぞれニッケル錯体又はコバルト錯体を結合させる;及び
(ニ)ニッケル錯体又はコバルト錯体に甲状腺ホルモン受容体をヒスチジンタグを介して結合させる。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法の好ましい実施態様においては、上記(ロ)〜(二)の各工程は溶液中で行われる。
本発明の第3の側面によれば、作用電極としてのかかる甲状腺ホルモン受容体固定化電極、及び酸化還元性マーカーを含むことを特徴とする電気化学的分析装置が提供される。
本発明の電気化学的分析装置の好ましい実施態様においては、酸化還元性マーカーはKFe(CN)/KFe(CN)、フェロセン、又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であり、電気化学的分析装置は参照電極及び対極をさらに含み、電気化学的分析はサイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーによって電流電位特性を測定することを含む。
本発明の第4の側面によれば、以下の工程を含むことを特徴とする、試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在するか否かを判断する方法が提供される:
甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを含有する可能性がある試料溶液を準備する;
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、酸化還元性マーカーの存在下に前記試料溶液の電流電位特性を測定するか又は本発明の電気化学的分析装置を用いて前記試料溶液の電流電位特性を測定する;及び
測定された試料溶液の電流電位特性を、甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを含有しないコントロール溶液の電流電位特性と比較し、両者の間に有意な差があれば前記試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在すると判断し、一方両者の間に有意な差がなければ前記試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在しないと判断する。
本発明の試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在するか否かを判断する方法の好ましい実施態様においては、試料溶液は環境から採取された試料から調製されたものであり、リガンドはダイオキシン、DDT、又はトリヨードサイロニン(トリヨードチロニン)であり、酸化還元性マーカーはKFe(CN)/KFe(CN)、フェロセン、又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であり、電流電位特性はサイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーによって測定される。
本発明の第5の側面によれば、以下の工程を含むことを特徴とする、試料溶液中に存在する甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドの濃度を決定する方法が提供される:
甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを含有する試料溶液を準備する;
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、酸化還元性マーカーの存在下に前記試料溶液の電流電位特性を測定するか又は本発明の電気化学的分析装置を用いて前記試料溶液の電流電位特性を測定する;及び
測定された試料溶液の電流電位特性を、甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを既知の濃度で含有するコントロール溶液の電流電位特性と比較し、それによって前記試料溶液中に存在する甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドの濃度を決定する。
本発明の試料溶液中に存在する甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドの濃度を決定する方法の好ましい実施態様においては、試料溶液は環境から採取された試料から調製されたものであり、リガンドはダイオキシン、DDT、又はトリヨードサイロニンであり、酸化還元性マーカーはKFe(CN)/KFe(CN)、フェロセン、又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であり、電流電位特性はサイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーによって測定され、甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを既知の濃度で含有するコントロール溶液の電流電位特性は、検量線として表されている。
本発明の第6の側面によれば、以下の工程を含むことを特徴とする、化学物質が甲状腺ホルモン受容体に対する結合活性を有するか否かを判断する方法が提供される:
化学物質を含有する可試料溶液を準備する;
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、酸化還元性マーカーの存在下に前記試料溶液の電流電位特性を測定するか又は本発明の電気化学的分析装置を用いて前記試料溶液の電流電位特性を測定する;
測定された試料溶液の電流電位特性を、甲状腺ホルモン受容体に対するいかなるリガンドをも含有しないコントロール溶液の電流電位特性と比較する;及び
比較の結果、両者の間に有意な差があれば前記化学物質が甲状腺ホルモン受容体に対する結合活性を有すると判断し、一方両者の間に有意な差がなければ前記化学物質が甲状腺ホルモン受容体に対する結合活性を有さないと判断する。
本発明の化学物質が甲状腺ホルモン受容体に対する結合活性を有するか否かを判断する方法の好ましい実施態様によれば、酸化還元性マーカーはKFe(CN)/KFe(CN)、フェロセン、又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であり、電流電位特性はサイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーによって測定される。
本発明の第7の側面によれば、以下の工程を含むことを特徴とする、甲状腺ホルモン受容体が前記受容体に対するリガンドと結合したときに誘起される前記受容体の構造変化又は機能変化を解析する方法が提供される:
甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを含有する試料溶液を準備する;
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、酸化還元性マーカーの存在下に前記試料溶液の電流電位特性を測定するか又は本発明の電気化学的分析装置を用いて前記試料溶液の電流電位特性を測定する;及び
測定された試料溶液の電流電位特性を解析する。
本発明の甲状腺ホルモン受容体が前記受容体に対するリガンドと結合したときに誘起される前記受容体の構造変化又は機能変化を解析する方法の好ましい実施態様によれば、リガンドはダイオキシン、DDT、又はトリヨードサイロニンであり、酸化還元性マーカーはKFe(CN)/KFe(CN)、フェロセン、又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であり、電流電位特性はサイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーによって測定される。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極は(1)導電性基板;(2)導電性基板に対する吸着部位とニッケル錯体又はコバルト錯体に対する2つの錯体配位子とを有する二官能性固定化試薬;(3)ニッケル錯体又はコバルト錯体;及び(4)ヒスチジンタグを有する甲状腺ホルモン受容体の4つの要素から構成される。本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極においては、二官能性固定化試薬は吸着部位を介して導電性基板に固定化され、ニッケル錯体又はコバルト錯体は二官能性固定化試薬の2つの錯体配位子にそれぞれ結合され、甲状腺ホルモン受容体はヒスチジンタグを介してニッケル錯体又はコバルト錯体に結合されるように構成されている。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極で用いる導電性基板は、電気化学反応の作用電極としての役割と甲状腺ホルモン受容体を固定化する支持体としての役割を有する。導電性基板は上述の2つの役割を有するものであればいかなる材料から作ることができるが、例えば金から作られることが安定性の観点から好ましい。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極で用いる二官能性固定化試薬は、甲状腺ホルモン受容体を導電性基板に固定化させる役割を有する。二官能性固定化試薬は導電性基板に対する吸着部位とニッケル錯体又はコバルト錯体に対する2つの錯体配位子とを有し、吸着部位を介して導電性基板に固定化されている。吸着部位は導電性基板の材料に応じて適宜選択すればよく、例えば導電性基板として金電極を用いる場合は吸着部位としてジスルフィド基の如きイオウ含有基を用いればよい。ニッケル錯体又はコバルト錯体に対する錯体配位子は特に限定されるものではなく、例えばこの分野で慣用されるニトリロトリ酢酸(NTA)やイミノ二酢酸(IDA)を用いることができる。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極で用いる二官能性固定化試薬は錯体配位子と吸着部位との間にリンカー部位が設けられていることが好ましい。二官能性固定化試薬中の2つの官能基(錯体配位子)及び吸着部位の位置は特に限定されないが、二官能性固定化試薬の分子構造の両端にそれぞれ錯体配位子が位置し、分子構造の中央に吸着部位が位置することが電極の感度を向上させるために好ましい。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極で用いるニッケル錯体又はコバルト錯体は、二官能性固定化試薬と甲状腺ホルモン受容体を結合させる役割を有する。本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極で用いる甲状腺ホルモン受容体にはヒスチジンタグが付与されている。ヒスチジンタグは少数個(通常5〜10個)のヒスチジン残基を含む短いアミノ酸配列であり、ヒスチジン残基中のイミダゾール基の存在によりニッケル錯体又はコバルト錯体と強く結合する性質を有する。従って、ニッケル錯体又はコバルト錯体とヒスチジンタグの組合せを用いることにより、甲状腺ホルモン受容体を二官能性固定化試薬に結合させることができ、結果として導電性電極に好適に固定化することができる。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極で用いる甲状腺ホルモン受容体は、特定の化学物質のみと結合することにより本発明のセンサの検出対象の特異性を決定する役割を有する。つまり、甲状腺ホルモン受容体はダイオキシン類や農薬類などの環境汚染物質と特異的に結合するため、甲状腺ホルモン受容体を電極上に固定化した本発明のセンサはダイオキシン類や農薬類などの環境汚染物質を特異的に検出することができる。
甲状腺ホルモン受容体の構造は生物種ごとに異なっており、環境汚染物質に対する生物の感受性は生物種によって異なる。従って、ヒトに対する環境の安全性の確認又は化学物質の健康リスクの評価に本発明のセンサを用いる場合、甲状腺ホルモン受容体はヒト由来であることが好ましい。また、天然の甲状腺ホルモン受容体を用いることもできるが、得られる甲状腺ホルモン受容体の収率及び純度の観点からは、甲状腺ホルモン受容体は組換え甲状腺ホルモン受容体であることが好ましい。組換え甲状腺ホルモン受容体は天然の甲状腺ホルモン受容体のアミノ酸配列全てを含む必要はなく、リガンド結合部位及びHsp90結合部位を少なくとも含んでいればその機能を発揮することができる。かかる組換え甲状腺ホルモン受容体は、当該技術分野で周知の遺伝子組換え技術により簡単に調製することができる。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極は、電極上に固定化された甲状腺ホルモン受容体とリガンドの間の結合を電気化学的シグナルとして検出するものであり、これにより迅速な測定を可能とするものである。
甲状腺ホルモン受容体は、生体内では通常、細胞質中でシャペロンタンパク質と複合体を形成することにより安定に存在している。リガンドとなる化学物質と結合すると、甲状腺ホルモン受容体はその立体構造を大きく変化させてシャペロンタンパク質を解離し、細胞核へと輸送される。そしてそこでコアクチベーターであるARNTと転写複合体を形成し、これにより標的遺伝子の発現を誘導する。
本発明では、このリガンド誘導的な受容体の構造変化に着目し、これを高感度で電気化学的に検出することに成功した。一般に、受容体とリガンドとの結合には電気化学的な活性が無いため、これを電気化学的に検出するためには何らかの工夫が必要である。本発明においては、測定溶液中に加えておいた電気化学的に活性な分子(酸化還元性マーカー、たとえばフェリシン化イオン,フェロセン,ヘキサアミンルテニウム(III)錯体など)の、電極表面上に形成されたタンパク質層に対する“透過しやすさ”を指標とすることによって、間接的にタンパク質の性質の変化を捕捉する(図1参照)。即ち、受容体タンパク質にリガンドが結合することにより生ずる受容体タンパク質の構造変化に起因する酸化還元性マーカーの透過性の変化を電気化学的に測定する。一般に電気化学反応は非常に早いため、本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を用いると、受容体タンパク質層の変化をわずか数分で検出することができる。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極においては、受容体タンパク質はその機能を損なうことなく電極上に固定化されている。固体表面に生体分子の配向を制御した状態で固定化することは、高い選択性を持つセンサを開発する上で非常に重要となる。タンパク質固定化法としては、共有結合、イオン結合及び生化学的親和力などにより固定化する担体結合法、グルタルアルデヒドのような試薬で架橋する架橋法などが一般的である。しかしながらこれらの方法は、固定化に際してタンパク質上のアミノ酸残基が使われるためタンパク質の機能が完全には維持できない問題や、固体表面に対してタンパク質の配向を制御できないなどの問題がある。特に電極上で固定化タンパク質を認識素子として使用する場合、これらの問題は検出機構上、致命的な欠点となる。そこで本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極では、機能を保持した状態でタンパク質を固体表面に可逆的に配向させることができるヒスチジンタグ(His−Tag)法を利用して受容体タンパク質を電極上に固定化し、これによりセンサとしての選択性を高めている。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の最大の特徴は、従来公知の電気化学センサと比較して感度が著しく高いことである。これは本発明によれば甲状腺ホルモン受容体を電極上に固定化するための官能性固定化試薬として従来の一官能性固定化試薬の代わりに二官能性固定化試薬を用いることによって達成される。
従来用いられている一官能性固定化試薬は、例えば後述の実施例1で参照する図3の5に示されるようにその分子構造の一端のみに単一の錯体配位子を有する。従って、一官能性固定化試薬を用いた場合には、図2のAに示されるように導電性基板(電極)上に単一の受容体タンパク質が固定化されるにすぎないと考えられる。
これに対し、本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極で用いられる固定化試薬は二官能性固定化試薬であり、2つの官能基、つまり錯体配位子を例えば図3の4に示されるようにその分子構造の両端にそれぞれ有する。従って、二官能性固定化試薬を用いた場合には、図2のBに示されるように導電性基板(電極)上に2つの受容体タンパク質が互いに近接して固定化されるものと考えられる。
このように二官能性固定化試薬を用いて甲状腺ホルモン受容体を電極上に固定化することによりセンサの感度が著しく高まる理由はまだ十分明らかになっていないが、二官能性固定化試薬を用いることにより電極上に2つの受容体タンパク質が互いに近接して固定化されるので、固定化の密度が高くなり、受容体タンパク質とリガンドとの結合により誘起されるコンホメーション変化をより的確に検出することができることが考えられる。
次に本発明の甲状腺ホルモン受容体の固定化電極の製造方法について説明する。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法は以下の(イ)〜(ニ)の工程を含む:
(イ)以下の(1)〜(4)の要素を準備する:
(1)導電性基板;
(2)導電性基板に対する吸着部位とニッケル錯体又はコバルト錯体に対する2つの錯体配位子とを有する二官能性固定化試薬;
(3)ニッケル錯体又はコバルト錯体;及び
(4)ヒスチジンタグを有する甲状腺ホルモン受容体;
(ロ)導電性基板に二官能性固定化試薬を吸着部位を介して固定化させる;
(ハ)二官能性固定化試薬の2つの錯体配位子にそれぞれニッケル錯体又はコバルト錯体を結合させる;及び
(ニ)ニッケル錯体又はコバルト錯体に甲状腺ホルモン受容体をヒスチジンタグを介して結合させる。
工程(イ)において準備される4つの要素(1)〜(4)については、本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の説明の部分で詳述しているので、ここでは説明を省略する。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法においては、(ロ)〜(ニ)の各工程が溶液中で行われることが固定化反応又は結合反応の容易性の観点から好ましい。具体的には二官能性固定化試薬の溶液、ニッケル錯体又はコバルト錯体の溶液、及び甲状腺ホルモン受容体の溶液をそれぞれ調製し、そこに導電性基板を順に浸漬すればよい。各溶液の溶媒は溶質の溶解度や安定性に応じて適宜決定すればよいが、例えば二官能性固定化試薬については水又はクロロホルムを、ニッケル錯体又はコバルト錯体については水を、甲状腺ホルモン受容体については水を溶媒とすることができる。
次に、本発明の電気化学的分析装置について説明する。本発明の電気化学的分析装置は作用電極としての本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極、及び酸化還元性マーカーを含む。酸化還元性マーカーは水溶性でありかつ受容体タンパク質やそのリガンドに悪影響を与えないものであればいかなるものも用いることができるが、例えばKFe(CN)/KFe(CN)(フェリシン化イオン)、フェロセン又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であることができる。なお、以下の本明細書中ではKFe(CN)/KFe(CN)に基づく系を[Fe(CN)4−/3−と記すことがある。本発明の電気化学的分析装置は上述の甲状腺ホルモン受容体固定化電極及び酸化還元性マーカーに加えてAg/AgClの如き参照極及びプラチナワイヤの如き対極をさらに含むことができる。また本発明の電気化学的分析装置が行う電気化学的分析は、一般に、サイクリックボルタンメトリー(CV)、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーなどの電気化学的測定方法によって電流電位特性を測定することを含むことができる。
本発明の電気化学的分析装置の1つの好ましい具体的実施態様としては、以下のものを含む電気化学的分析装置が挙げられる:酸化還元性マーカー溶液を充填した容器、及び酸化還元性マーカー溶液中に一端を含浸された、作用電極としての本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極、参照極並びに対極。かかる電気化学的分析装置は小型化・キット化が容易であり、フィールドで簡便に使用することができる。また、かかる電気化学的分析装置の構成要素は本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を除けば全て汎用品が使用可能であり、コスト的にも有利である。
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極又は本発明の電気化学的分析装置の好ましい用途として、本発明は以下の4つの方法を提供する:
(1)試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在するか否かを判断する方法;
(2)試料溶液中に存在する甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドの濃度を決定する方法;
(3)化学物質が甲状腺ホルモン受容体に対する結合活性を有するか否かを判断する方法;及び
(4)甲状腺ホルモン受容体が前記受容体に対するリガンドと結合したときに誘起される前記受容体の構造変化又は機能変化を解析する方法。
以下、これらの方法について順に説明する。
本発明の試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在するか否かを判断する方法は以下の工程を含む:
甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを含有する可能性がある試料溶液を準備する;
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、酸化還元性マーカーの存在下に前記試料溶液の電流電位特性を測定するか又は本発明の電気化学的分析装置を用いて前記試料溶液の電流電位特性を測定する;及び
測定された試料溶液の電流電位特性を、甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを含有しないコントロール溶液の電流電位特性と比較し、両者の間に有意な差があれば前記試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在すると判断し、一方両者の間に有意な差がなければ前記試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在しないと判断する。
この方法によれば、ダイオキシン類や農薬などの環境汚染物質を短時間でかつ高感度で定性的に検出することができる。
本発明の試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在するか否かを判断する方法においては、試料溶液として環境から採取された試料から調製された試料溶液を用いることが好ましい。環境中に含まれる甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドは通常極めて微量であるので、試料溶液の調製は濃縮工程を含むことが好ましい。また、本発明の試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在するか否かを判断する方法においては、存在の有無を判断されるリガンドはダイオキシン、DDT、又はトリヨードサイロニンであることができる。
また、用いる酸化還元性マーカーは水溶性でありかつ受容体タンパク質やそのリガンドに悪影響を与えないものであればいかなるものも用いることができるが、例えばKFe(CN)/KFe(CN)(フェリシン化イオン)、フェロセン又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であることができる。また、電流電位特性の測定は一般に、サイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーなどの電気化学的測定方法によって行われることができる。
本発明の試料溶液中に存在する甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドの濃度を決定する方法は以下の工程を含む:
甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを含有する試料溶液を準備する;
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、酸化還元性マーカーの存在下に前記試料溶液の電流電位特性を測定するか又は本発明の電気化学的分析装置を用いて前記試料溶液の電流電位特性を測定する;及び
測定された試料溶液の電流電位特性を、甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを既知の濃度で含有するコントロール溶液の電流電位特性と比較し、それによって前記試料溶液中に存在する甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドの濃度を決定する。
この方法によれば、ダイオキシン類や農薬などの環境汚染物質を短時間でかつ高感度で定量的に測定することができる。
本発明の試料溶液中に存在する甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドの濃度を決定する方法においては、試料溶液として環境から採取された試料から調製された試料溶液を用いることが好ましい。環境中に含まれる甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドは通常極めて微量であるので、試料溶液の調製は濃縮工程を含むことが好ましい。また、本発明の試料溶液中に存在する甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドの濃度を決定する方法においては、存在の有無を判断されるリガンドはダイオキシン、DDT、又はトリヨードサイロニンであることができる。
また、用いる酸化還元性マーカーは水溶性でありかつ受容体タンパク質やそのリガンドに悪影響を与えないものであればいかなるものも用いることができるが、例えばKFe(CN)/KFe(CN)(フェリシン化イオン)、フェロセン又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であることができる。また、電流電位特性の測定は一般に、サイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー又はアンペロメトリーなどの電気化学的測定方法によって行われることができる。また、甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを既知の濃度で含有するコントロール溶液の電流電位特性は予め検量線として表しておくことが好ましい。
本発明の化学物質が甲状腺ホルモン受容体に対する結合活性を有するか否か判断する方法は以下の工程を含む:
化学物質を含有する可試料溶液を準備する;
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、酸化還元性マーカーの存在下に前記試料溶液の電流電位特性を測定するか又は本発明の電気化学的分析装置を用いて前記試料溶液の電流電位特性を測定する;
測定された試料溶液の電流電位特性を、甲状腺ホルモン受容体に対するいかなるリガンドをも含有しないコントロール溶液の電流電位特性と比較する;及び
比較の結果、両者の間に有意な差があれば前記化学物質が甲状腺ホルモン受容体に対する結合活性を有すると判断し、一方両者の間に有意な差がなければ前記化学物質が甲状腺ホルモン受容体に対する結合活性を有さないと判断する。
この方法によれば、短時間かつ高感度で化学物質の健康リスクを評価することができる。
本発明の化学物質が甲状腺ホルモン受容体に対する結合活性を有するか否かを判断する方法において用いる酸化還元性マーカーは水溶性でありかつ受容体タンパク質やそのリガンドに悪影響を与えないものであればいかなるものも用いることができるが、例えばKFe(CN)/KFe(CN)(フェリシン化イオン)、フェロセン又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であることができる。また、電流電位特性の測定は一般に、サイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーなどの電気化学的測定方法によって行われることができる。
本発明の甲状腺ホルモン受容体が前記受容体に対するリガンドと結合したときに誘起される前記受容体の構造変化又は機能変化を解析する方法は以下の工程を含む:
甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを含有する試料溶液を準備する;
本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、酸化還元性マーカーの存在下に前記試料溶液の電流電位特性を測定するか又は本発明の電気化学的分析装置を用いて前記試料溶液の電流電位特性を測定する;及び
測定された試料溶液の電流電位特性を解析する。
この方法によれば、甲状腺ホルモン受容体がリガンドと結合したときに誘起される受容体の構造変化又は機能変化を好適に解析することができる。
本発明の甲状腺ホルモン受容体が前記受容体に対するリガンドと結合したときに誘起される前記受容体の構造変化又は機能変化を解析する方法においては、甲状腺ホルモンに対するリガンドとしてダイオキシン、DDT、又はトリヨードサイロニンを用いることができる。
また、用いる酸化還元性マーカーは水溶性でありかつ受容体タンパク質やそのリガンドに悪影響を与えないものであればいかなるものも用いることができるが、例えばKFe(CN)/KFe(CN)(フェリシン化イオン)、フェロセン又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であることができる。また、電流電位特性の測定は一般に、サイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーなどの電気化学的測定方法によって行われることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:甲状腺ホルモン受容体固定化電極の作製
(1)二官能性固定化試薬の設計及び合成
この実施例で設計・合成した二官能性固定化試薬は、図3の(4)に示す構造式から成り、ジスフィルド基の両端にリンカー部位を介してニトリロトリ酢酸(NTA:配位子)が連結されて構成されている。その合成手順は以下の通りである(図3参照)。Nα´,Nα−ビス(カルボキシルメチル)−L−リジン水和物(1)140mgをジイイソプロピルエチルアミン(DIEA)1035mgを含む3mlDMFに溶解した。10分間窒素置換後、トリメチルシリルクロリド[(CH33SiCl]870mgを少量ずつ添加しながら、室温、窒素雰囲気下で2時間反応させ、カルボキシル基の保護を行った。得られた化合物(2)に半当量の3,3´−ジチオジプロピオンサンジ(N−スクシンイミジル)〔DTPS、(3)〕を溶解したDMF1.5mlを加え、室温、窒素雰囲気下で2日間撹拌した。反応溶液に7mlの酒石酸水溶液を加えて十分に振とうした後、これにジクロロメタン15mlを加えて有機相を抽出した。抽出操作は2度行った。溶媒を減圧濃縮後、ジクロロメタン1.5mlに再溶解した。精製はプレパラティブTLC(薄層クロマトグラフィー)により行い、250MHz 1H−NMRを用いて生成物(4)を確認した。
(2)大腸菌を用いた甲状腺ホルモン受容体の発現
ヒト甲状腺ホルモン受容体のドメイン構造は図4のようになっている。本実施例ではリガンド結合部位、Hsp90結合部位を含む部分(198−456aa)をヒスチジンタグと融合した組換えヒト甲状腺ホルモン受容体を設計した。発現ベクター(pET−hTR−LBD)は図5に示したプロトコールにより構築した。各段階において制限酵素処理およびDNAシーケシングにより、その配列を確認した。
発現ベクターを宿主菌BL21(DE3)に形質転換し、30℃で一晩静置培養した。この溶液0.5mlを、抗生物質を含む2×YT培地50mlに接種し、OD600=0.5〜0.6になるまで37℃で振とう培養した。所定の菌密度に達した後、終濃度1mMのIPTGを添加し、14℃において組換え甲状腺ホルモン受容体を発現した。
(3)ヒト甲状腺ホルモン受容体の精製
IPTGによる発現誘導後の菌を遠心分離により回収し、溶解緩衝液(50mM リン酸緩衝液、pH8.0、5mM NaMBS、0.1mM PMSF、5mM
2−メルカプトエタノール)18mlを加えて懸濁させ、−80℃で凍結した。これを再び融解し、10mg/mlリゾチーム溶液を1.8ml加えて4℃で15minインキュベート後、プローブ型超音波照射装置を用いて超音波照射を行った。これに終濃度がそれぞれ1μg/ml、5μg/mlとなるようにRNase、DNaseを加えて4℃でインキュベートし、さらに0.1% NP−40 300mM NaClをそれぞれ加え、遠心分離により上澄み(可溶性画分)を分離した。Niキレートカラムに0.1M NiSO4水溶液を注入し、10mM イミダゾール緩衝液(50mM リン酸緩衝液,pH6.0、300mM NaCl、5mM NaMBS、0.1mM PMSF、5mM 2−メルカプトエタノール、10%グリセロール)でカラムを平衡化した後に、粗タンパク溶液を注入した。80mM イミダゾール緩衝液で洗浄後、500mM イミダゾール緩衝液で目的タンパク質の溶出を行い、最後にEDTA溶液でカラムを洗浄した。各画分をSDS−PAGEで分析したところ、500mM イミダゾール緩衝液による溶出成分(レーン6)に目的とする組換えヒト甲状腺ホルモン受容体の精製が確認できた(図6)。得られたタンパク質はシングルバンドであり、分解生成物は全く観察されなかった。また、発現誘導後のタンパク質を分析したところ、約半分の組換えhTR−LBDが可溶性画分として存在することがわかった(図7)。
(4)甲状腺ホルモン受容体固定化電極の作製
金ディスク電極(電極面積0.08cm2)をアルミナ研磨剤で十分に研磨した後、さらに0.1 M H2SO4 / 10mM KCl水溶液を用いて電解研磨した。(1)で合成した末端チオール化二官能性ニトリロトリ酢酸(NTA)誘導体を水に溶解し、研磨した金電極をこの溶液50μlに4℃で3時間浸漬した。その後電極を純水で洗浄した後、窒素ガスで乾燥させた。これを再び0.1M NiSO4水溶液30μlに10分間浸漬し、Ni(II)−NTA錯体を形成させた。この電極を(3)で精製した末端に連続(5〜10個)するヒスチジン残基(His−タグ)を遺伝子レベルで融合したヒト甲状腺ホルモン受容体水溶液に4℃で10分間浸漬し、洗浄用緩衝液(100mM KCl,10mM Tris−HCl(pH 7.4))で十分に洗浄し、甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作製した。
固定化の各段階における確認をサイクリックボルタンメトリー(CV測定)(測定溶液;50mM HEPES−KOH、pH7.2、5mM フェロシアン・フェリシアン化カリウム、100mM KCl、5mM MgCl2)により行った(図8)。この結果、未修飾(bare)の状態と比較して、NTA固定化後(図中NTA−modified)のCV測定では、マーカーイオン [Fe(CN)6]4-/3- 由来の酸化・還元ピーク電流値の減少が見られた。これはNTAの固定化により金電極表面が負電荷に被覆されたために、静電的反発がおこり、マーカーイオンが電極表面に近づきにくくなったために減少したものと思われる。また、甲状腺ホルモン受容体固定化後(図中hTR−LBD−immobilized)にもピーク電流値の減少が観察された。これは巨大なタンパク質が電極上に固定化されたことによって、立体障害によりマーカーイオンの電極表面への拡散性が低下したことが原因であると思われる。以上の結果から、甲状腺ホルモン受容体は期待したとおり金電極上に固定化されたものと判断した。
なお、比較のために図3において(5)として示す一官能性固定化試薬を用いても甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作製した。この一官能性固定化試薬を用いる受容体固定化電極は、図3に示す固定化試薬の合成工程において化合物(2)と(3)とを等量反応させることを除いては、上述の二官能性固定化試薬を用いる場合と同様の工程を経て作製したものである。
実施例2:リガンド分子のセンシング
次に金電極上に固定化した受容体が正常なリガンド結合能を保持しているかを確認するため、甲状腺ホルモン受容体に対する代表的なリガンド分子であるトリヨードサイロニン(T3)を電極に作用させ、その時の電気化学的応答をサイクリックボルタンメトリー(CV)法により観察した。すなわち、実施例1に従い二官能性固定化試薬を用いて作製したヒト甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、これに1nMから1μMのトリヨードサイロニン(T3)含有試料溶液〔10mMのトリス緩衝液、pH7.4、[KCl]=10mM、[Fe(CN)6]4-/3-=5mM(酸化還元性マーカー)、25℃〕を作用させて、サイクリックボルタンメントリー(CV)により電流電圧特性を測定した。
測定結果を図9に示す。なお、参考のために甲状腺ホルモン受容体を固定化していない未修飾電極について同様に実施したCV測定結果を図10に、ヒト甲状腺ホルモン受容体の代わりにヒト女性ホルモン受容体リガンド結合ドメイン(hER−LBD)を固定化した電極について同様に実施したCV測定結果を図11に、また、比較のために、一官能性固定化試薬を用いて作製したヒト甲状腺ホルモン受容体固定化電極について同様に実施したCV測定結果を図12に示す。
図9に示したように、受容体固定化電極によって観測された還元電流値は、1nMから1μMのT3に対して濃度依存的に減少した。対照的に、甲状腺ホルモン受容体を固定化していない未修飾電極では、同濃度のT3を加えてもその電気化学応答には全く変化がなかった(図10)。また、ヒト甲状腺ホルモン受容体の代わりにヒト女性ホルモン受容体リガンド結合ドメインを固定化した電極においてもT3に対する応答は観察されなかった(図11)。すなわち図9において観察された電流値の変化は、金電極上に固定化された甲状腺ホルモン受容体による特異的な現象であり、リガンドと受容体との結合を反映した結果である。一方、図12に示されるように、一官能性固定化試薬から作製されたヒト甲状腺ホルモン受容体固定化電極の場合、100nMのT3を添加した際においてもその電極応答は極めてわずかであり、二官能性固定化試薬を用いた場合に応答感度が著しく向上していることが分かる(図12の右側のピーク電位(還元波)の下がり方を図9の右側のピーク電位の下がり方と比較されたい。なお、図12の左側のピーク電位の下がり方は図9の左側のピーク電位の下がり方と比べてそれほど変化していないが、これはおそらく受容体タンパク質の変化に由来するものではなく、試料溶液中に添加していたジチオスレイトール(タンパク質変性防止剤)に由来するものである)。
次に本発明に従う電極のリガンドに対する応答特性を詳しく調べるために、種々の濃度のT3を添加したときのピーク電流の減少量(Δip)との関係をプロットしたところ、本発明に従う甲状腺ホルモン受容体固定化電極はT3に対して濃度依存的な優れた応答特性を示すことが明らかとなった(図13)。また検出感度は1nM(10-9M)であった。この検出感度は、放射ラベル化試薬を用いる測定法や酵素反応を利用した検出法に匹敵し、本発明のセンサが高い性能を有することが示された。特筆すべき点は、この検出システムの測定時間がわずか3分以内である点である。先に述べたように、従来法は5時間から1間程度を要しており、本発明のセンサを用いることで極めて短い時間での分析が可能となる。
考察
本発明のセンシングシステムではマーカーイオンの電極表面上に形成されたタンパク質層に対する“透過しやすさ”を検出機構としていることから、リガンド添加時におけるピーク電流値の減少は電極上に固定化された甲状腺ホルモン受容体がそのリガンドと結合することによってその物性を変化させ、結果的にタンパク質層全体の性質がマーカーイオン透過性に影響を与えたためであるとするのが妥当であろう。甲状腺ホルモン受容体はリガンドとの結合によって、その立体構造を変化させコアクチベーターと複合体を形成することが知られている。本発明者らは以前に、ヒトエストロゲン受容体やヒトダイオキシン受容体を固定化した電極において、そのリガンド誘導的なコンホメーション変化に基づくタンパク質表面の荷電状態の変化(負電荷量の増加)がマーカーイオン([Fe(CN)6]4-/3-)の透過性に著しい影響を及ぼすことを明らかにしている。おそらく本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極においても同様な理由によってマーカーイオン透過性が減少したものと推察される(図1)。
これらの結果より、実施例1で作製したヒト甲状腺ホルモン受容体を認識素子とするバイオセンサが、トリヨードサイロニンを代表とするリガンド分子に対して良好な電気化学的応答を示すことが明らかとなった。
本発明では電極上に甲状腺ホルモン受容体を固定化し、リガンドとの結合や複合体の形成など、機能発現に際して誘起されるコンホメーションならびにタンパク質表面物性の変化を電気化学的に捉えることのできる新しい甲状腺ホルモン検出法を開発した。
甲状腺ホルモンは発生や恒常性の維持のみならず、肥満などの健康維持や疾病の指標としても近年急速に関心が高まっている。また環境中に放出されたおよそ87000種に及ぶとされる化学物質の中に甲状腺ホルモンに似た作用をする物質の存在も疑われており、それらの科学的なリスクアセスメントが急務となっている。内分泌撹乱物質は生体機構に直接作用することで、生殖、神経、そして免疫系に重篤な損傷を与える可能性が危惧されているが、この作用機構の鍵となるのが、化学物質とその受容体との結合である。従来、生細胞や動物、あるいは放射標識レセプターを使って評価されてきたが、今後87000種といわれる化学物質を系統的にリスク評価するためには、より高速、高精度な評価システムの開発が不可欠である。
受容体タンパク質を認識素子とする本発明の新しいバイオアフィニティーセンサは、甲状腺ホルモン受容体の代表的なリガンド分子であるトリヨードサイロニンに対して良好な電気化学的応答を示した。その検出感度は現在最も感度の良い方法であるRI標識リガンドを用いたアッセイ法や、抗原抗体反応を利用した手法に匹敵した(検出下限10-9M)。特に注目すべき点は、本検出システムの測定速度である。現在、内分泌撹乱物質のプレスクリーニング試験法として様々なin vitroアッセイが提案されているが、最も早い方法で5時間、その他培養細胞を用いる系では分析に一週間程度を要している。これらのアッセイ系に対して、本リスク評価システムでは測定物質の添加からシグナル検出まで3分という極めて短時間で甲状腺ホルモン受容体に対するリガンド活性の評価が可能である。
本システムはマイクロチップ化・小型化が容易なことから、環境モニタリング装置としても有効であり、環境中における内分泌攪乱物質の動態を明らかにすることによって、化学物質の環境コンバートメントの一端を知る手がかりとなるであろう。
甲状腺ホルモン受容体固定化電極による電気化学的応答の概念図である。 本発明の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の構造を模式的に示す図である。 本発明において用いられる二官能性固定化試薬の好ましい例の合成工程を示す模式図である。 ヒト甲状腺ホルモン受容体のドメイン構造を示す模式図である。 発現ベクターの構築プロトコールを示す模式図である。 アフィニティークロマトグラフィーによるヒト甲状腺ホルモン受容体の精製結果を示す。 組換えヒト甲状腺ホルモン受容体の確認結果を示す。 本発明に従う、二官能性固定化試薬を用いた甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造の各段階において測定したサイクリックボルタンメトリー応答を示す。 本発明に従い、二官能性固定化試薬から作製された甲状腺ホルモン受容体固定化電極を用いて測定したT3に対するサイクリックボルタンメトリー応答を示す。 参考のために、甲状腺ホルモン受容体を固定化していない未修飾電極を用いて測定したT3に対するサイクリックボルタンメトリー応答を示す。 参考のために、ヒト甲状腺ホルモン受容体の代わりにヒト女性ホルモン受容体リガンド結合ドメイン(hER−LBD)を固定化した電極を用いて測定したT3に対するサイクリックボルタンメトリー応答を示す。 比較のために、一官能性固定化試薬から作製された甲状腺ホルモン受容体固定化電極を用いて測定したT3に対するサイクリックボルタンメトリー応答を示す。 本発明に従う甲状腺ホルモン受容体固定化電極を用いて行った種々の濃度のT3に対するサイクリックボルタンメトリー応答を示す。

Claims (41)

  1. 以下の(1)〜(4)の要素を含むことを特徴とする甲状腺ホルモン受容体固定化電極:
    (1)導電性基板;
    (2)導電性基板に対する吸着部位とニッケル錯体又はコバルト錯体に対する2つの錯体配位子とを有する二官能性固定化試薬であって、吸着部位を介して導電性基板に固定化されている二官能性固定化試薬;
    (3)二官能性固定化試薬の2つの錯体配位子にそれぞれ結合されているニッケル錯体又はコバルト錯体;及び
    (4)ヒスチジンタグを有する甲状腺ホルモン受容体であって、ヒスチジンタグを介してニッケル錯体又はコバルト錯体に結合されている甲状腺ホルモン受容体。
  2. 導電性基板が金電極であり、吸着部位がイオウ含有基であることを特徴とする請求項1記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極。
  3. 吸着部位がジスルフィド基であることを特徴とする請求項2記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極。
  4. 錯体配位子がニトリルトリ酢酸又はイミノ二酢酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極。
  5. 二官能性固定化試薬の錯体配位子と吸着部位との間にリンカー部位が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極。
  6. 二官能性固定化試薬がその分子構造の両端にそれぞれ錯体配位子を有し、その分子構造の中央に吸着部位を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極。
  7. 甲状腺ホルモン受容体がヒト由来であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極。
  8. 甲状腺ホルモン受容体が組換え甲状腺ホルモン受容体であることを特徴とする請求項7記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極。
  9. 組換え甲状腺ホルモン受容体がリガンド結合部位及びHsp90結合部位を少なくとも含むことを特徴とする請求項8記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極。
  10. 以下の(イ)〜(ニ)の工程を含むことを特徴とする甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法:
    (イ)以下の(1)〜(4)の要素を準備する:
    (1)導電性基板;
    (2)導電性基板に対する吸着部位とニッケル錯体又はコバルト錯体に対する2つの錯体配位子とを有する二官能性固定化試薬;
    (3)ニッケル錯体又はコバルト錯体;及び
    (4)ヒスチジンタグを有する甲状腺ホルモン受容体;
    (ロ)導電性基板に二官能性固定化試薬を吸着部位を介して固定化させる;
    (ハ)二官能性固定化試薬の2つの錯体配位子にそれぞれニッケル錯体又はコバルト錯体を結合させる;及び
    (ニ)ニッケル錯体又はコバルト錯体に甲状腺ホルモン受容体をヒスチジンタグを介して結合させる。
  11. 導電性基板が金電極であり、吸着部位がイオウ含有基であることを特徴とする請求項10記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法。
  12. 吸着部位がジスルフィド基であることを特徴とする請求項11記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法。
  13. 錯体配位子がニトリルトリ酢酸又はイミノ二酢酸であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法。
  14. 二官能性固定化試薬の錯体配位子と吸着部位との間にリンカー部位が設けられていることを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン固定化電極の製造方法。
  15. 二官能性固定化試薬がその分子構造の両端にそれぞれ錯体配位子を有し、その分子構造の中央に吸着部位を有することを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法。
  16. 甲状腺ホルモン受容体がヒト由来であることを特徴とする請求項10〜15のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法。
  17. 甲状腺ホルモン受容体が組換え甲状腺ホルモン受容体であることを特徴とする請求項16記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法。
  18. 組換え甲状腺ホルモン受容体がリガンド結合部位及びHsp90結合部位を少なくとも含むことを特徴とする請求項17記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法。
  19. (ロ)〜(ニ)の各工程が溶液中で行われることを特徴とする請求項10〜18のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極の製造方法。
  20. 作用電極としての請求項1〜9のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極、及び酸化還元性マーカーを含むことを特徴とする電気化学的分析装置。
  21. 酸化還元性マーカーがKFe(CN)/KFe(CN)、フェロセン、又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であることを特徴とする請求項20記載の電気化学的分析装置。
  22. 参照極及び対極をさらに含むことを特徴とする請求項20又は21記載の電気化学的分析装置。
  23. 電気化学的分析がサイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーによって電流電位特性を測定することを含むことを特徴とする請求項20〜22のいずれか一項記載の電気化学的分析装置。
  24. 以下の工程を含むことを特徴とする、試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在するか否かを判断する方法:
    甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを含有する可能性がある試料溶液を準備する;
    請求項1〜9のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、酸化還元性マーカーの存在下に前記試料溶液の電流電位特性を測定するか又は請求項20〜23のいずれか一項記載の電気化学的分析装置を用いて前記試料溶液の電流電位特性を測定する;及び
    測定された試料溶液の電流電位特性を、甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを含有しないコントロール溶液の電流電位特性と比較し、両者の間に有意な差があれば前記試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在すると判断し、一方両者の間に有意な差がなければ前記試料溶液中に甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドが存在しないと判断する。
  25. 試料溶液が環境から採取された試料から調製されたものであることを特徴とする請求項24記載の方法。
  26. リガンドがダイオキシン、DDT、又はトリヨードサイロニンであることを特徴とする請求項24または25記載の方法。
  27. 酸化還元性マーカーがKFe(CN)/KFe(CN)、フェロセン、又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であることを特徴とする請求項24〜26のいずれか一項記載の方法。
  28. 電流電位特性がサイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーによって測定されることを特徴とする請求項24〜27のいずれか一項記載の方法。
  29. 以下の工程を含むことを特徴とする、試料溶液中に存在する甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドの濃度を決定する方法:
    甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを含有する試料溶液を準備する;
    請求項1〜9のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、酸化還元性マーカーの存在下に前記試料溶液の電流電位特性を測定するか又は請求項20〜23のいずれか一項記載の電気化学的分析装置を用いて前記試料溶液の電流電位特性を測定する;及び
    測定された試料溶液の電流電位特性を、甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを既知の濃度で含有するコントロール溶液の電流電位特性と比較し、それによって前記試料溶液中に存在する甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドの濃度を決定する。
  30. 試料溶液が環境から採取された試料から調製されたものであることを特徴とする請求項29記載の方法。
  31. リガンドがダイオキシン、DDT、又はトリヨードサイロニンであることを特徴とする請求項29または30記載の方法。
  32. 酸化還元性マーカーがKFe(CN)/KFe(CN)、フェロセン、又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であることを特徴とする請求項29〜31のいずれか一項記載の方法。
  33. 電流電位特性がサイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーによって測定されることを特徴とする請求項29〜32のいずれか一項記載の方法。
  34. 甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを既知の濃度で含有するコントロール溶液の電流電位特性が、検量線として表されていることを特徴とする請求項29〜33のいずれか一項記載の方法。
  35. 以下の工程を含むことを特徴とする、化学物質が甲状腺ホルモン受容体に対する結合活性を有するか否かを判断する方法:
    化学物質を含有する試料溶液を準備する;
    請求項1〜9のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、酸化還元性マーカーの存在下に前記試料溶液の電流電位特性を測定するか又は請求項20〜23のいずれか一項記載の電気化学的分析装置を用いて前記試料溶液の電流電位特性を測定する;
    測定された試料溶液の電流電位特性を、甲状腺ホルモン受容体に対するいかなるリガンドをも含有しないコントロール溶液の電流電位特性と比較する;及び
    比較の結果、両者の間に有意な差があれば前記化学物質が甲状腺ホルモン受容体に対する結合活性を有すると判断し、一方両者の間に有意な差がなければ前記化学物質が甲状腺ホルモン受容体に対する結合活性を有さないと判断する。
  36. 酸化還元性マーカーがKFe(CN)/KFe(CN)、フェロセン、又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であることを特徴とする請求項35記載の方法。
  37. 電流電位特性がサイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーによって測定されることを特徴とする請求項35または36記載の方法。
  38. 以下の工程を含むことを特徴とする、甲状腺ホルモン受容体が前記受容体に対するリガンドと結合したときに誘起される前記受容体の構造変化又は機能変化を解析する方法:
    甲状腺ホルモン受容体に対するリガンドを含有する試料溶液を準備する;
    請求項1〜9のいずれか一項記載の甲状腺ホルモン受容体固定化電極を作用電極とし、酸化還元性マーカーの存在下に前記試料溶液の電流電位特性を測定するか又は請求項20〜23のいずれか一項記載の電気化学的分析装置を用いて前記試料溶液の電流電位特性を測定する;及び
    測定された試料溶液の電流電位特性を解析する。
  39. リガンドがダイオキシン、DDT、又はトリヨードサイロニンであることを特徴とする請求項38記載の方法。
  40. 酸化還元性マーカーがKFe(CN)/KFe(CN)、フェロセン、又はヘキサアミンルテニウム(III)錯体であることを特徴とする請求項38又は39記載の方法。
  41. 電流電位特性がサイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、又はアンペロメトリーによって測定されることを特徴とする請求項38〜40のいずれか一項記載の方法。

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JP2021531478A (ja) * 2018-07-13 2021-11-18 エーギルバイオ エービー 甲状腺機能障害の診断のためのバイオセンサー

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