JP4489990B2 - 生物学的水処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、都市下水や有機性廃水を生物反応によって浄化処理する生物学的水処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
「水処理工学(井出哲夫編著、技法堂)」にも記載されているように、都市下水や有機性排水を処理する一般的な方法として、活性汚泥法がある。活性汚泥法とは、浄化機能をもつ微生物群(活性汚泥)を生物反応槽にたくわえ、これと下水とを混合・接触させつつ曝気することにより、下水中の汚濁物を酸化・分解する方法である。この汚濁物を十分に浄化するためには、適切な量の空気を生物反応槽に供給する必要がある。
図4は、例えば特開平11−141566号公報に示された従来の生物学的水処理装置の断面図である。図において、1は活性汚泥を蓄えた生物反応槽で、配管aを介して流入する被処理水(処理前水)としての下水を生物反応によって浄化処理し、浄化処理後の被処理水(処理後水)を配管bに排出する。2は配管aに取り付けられた流量計で下水の流量を計測する。3は配管bを介して生物反応槽1から排出された活性汚泥と被処理水との混合液を沈殿処理するための沈殿槽であり、沈殿処理したあとの上澄水は配管cを介して放流される。また、沈殿処理によって分離した活性汚泥は、配管dを介して生物反応槽1へ返送されるが、余剰分は配管eを介して外部に排出される。
4は生物反応槽1内に設けられた散気装置で、空気供給装置5から配管5aを介して送られた空気を生物反応槽1内に供給する。6は空気供給量を計測するための流量計である。
7は下水のBOD濃度(生物学的酸素要求量、有機性汚濁物質量の指標)を計測するためのBOD濃度計であり、配管aにとりつけられている。8はBOD濃度計7で計測されたBOD濃度と流量計2で計測された流量とをもとに生物反応槽1への空気供給量を演算するための演算装置であり、該BOD濃度は信号線7aを介して、また該流量は信号線2aを介して入力する。9は演算装置8で算出された空気供給量の設定値を信号線8aを介して入力し、空気供給装置5に対して、その空気供給量を制御するためのコントローラである。コントローラ9は信号線9aを介して空気供給装置5と、また信号線9bを介して流量計6と接続されている。
【0003】
このような従来の生物学的水処理装置における動作について説明する。
下水は配管aを介して生物反応槽1に導入される。生物反応槽1には、空気供給装置5から配管5a、散気装置4を介して空気が供給される。この空気と下水、活性汚泥とを混合・撹拌することにより、下水中の汚濁物質が生物学的に酸化分解される。流入する下水の量が多い場合は生物学的酸化分解のための空気供給量を増やす必要がある。逆に流入する下水の量が少ない場合は、空気供給量は少なくてよい。なお、沈殿槽3では、混合液から活性汚泥を沈殿分離したあと、配管cを介して上澄水を排出する。分離された活性汚泥の一部は配管dを介して生物反応槽1へ返送される。その他の余剰な汚泥は配管eを介して系外へ排出される。
演算装置8は、下水の流量を信号線2aを介して入力し、また下水のBOD濃度を信号線7aを介して入力する。さらに、予め設定された処理後水におけるBOD濃度目標値を保持している。そして、空気供給量の設定値G[Nm/h]を次式に従って算出する。
G=a(S−S)Q+bQ+c
S ;下水中のBOD濃度[mg/l]
;BOD濃度目標値[mg/l]
Q ;下水の流量[m/h]
a,b,c;係数
コントローラ9は、算出された設定値Gを信号線8aを介して入力し、その値に従って空気供給装置5からの空気供給量を制御する。そして、その供給量が制御された該空気が散気装置4から生物反応槽1内に供給される。
以上のように、下水の流量とBOD濃度との積で得られる浄化処理前の下水の汚濁物量に応じて空気供給量が設定され、所定量の空気が生物反応槽1内に供給される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の生物学的水処理装置においては、下水中の汚濁物量(BOD濃度と流量との積)に応じて生物反応槽への空気供給量を制御していた。しかし、一般家庭を主たる排出源とする都市下水は、生活時間帯に応じて流量ならびに性状が著しく変動するのに対して、生物反応槽の滞留時間は、活性汚泥微生物群が汚濁物を分解するのに必要な時間を考慮して、6〜8時間となるように設計されている場合が多い(下水道施設計画・設計指針)。したがって、生物反応槽における滞留中にも、流入する下水の流量およびBOD濃度が大きく変動する。しかしながら、従来の生物学的水処理装置では、生物反応槽入口での汚濁物量によってのみ生物反応槽全体への空気供給量が制御され、生物反応槽出口での汚濁物については全く考慮されなかったので、生物反応槽内に供給される空気量が不適切となる場合があった。すなわち、反応槽出口でのBOD濃度が高くても、反応槽入口の汚濁物量が少なければ空気供給量が下がり、逆に反応槽出口でのBOD濃度が低くても、反応槽入口の汚濁物量が多ければ空気供給量が上がるといった不都合が生じ、その結果、処理後のBOD濃度ないしは汚濁物量を目標値通りに制御できないという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、被処理水に対して適切な空気供給量を設定して生物反応処理を行い、処理後水の汚濁物濃度を目標値通りに制御できる生物学的水処理装置を得ることを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る生物学的水処理装置においては、反応槽に流入する被処理水を活性汚泥および空気と混合することにより浄化処理し、該浄化処理後の被処理水を上記反応槽から排出する生物学的水処理装置において、
上記浄化処理する前の被処理水(以下、処理前水と称す)の汚濁物濃度SINを計測する手段、該処理前水の流量QINを計測する手段、上記排出される被処理水(以下、処理後水と称す)の汚濁物濃度SOUTを計測する手段、上記反応槽内で被処理水が流下する方向に沿って複数個(n個)設け、上記被処理水に空気を散気するための空気供給手段、および上記計測された処理前水の汚濁物濃度SINと該処理前水の流量QINとの積で得られる該処理前水の汚濁物量と上記計測された処理後水の汚濁物濃度SOUTとに応じて、上記空気供給手段から散気する空気供給量を調節する手段を備えた生物学的水処理装置であって、
空気供給量を調節する手段は、処理後水の汚濁物濃度の目標値S と各空気供給手段ごとに予め定められた第1の係数k i1 ,第2の係数k i2 および定数k とを保持し、各空気供給手段から散気する空気供給量G を次式
=k i1 ・S IN ・Q IN +k i2 ・(S OUT −S )+k
(i=1,・・,n)
によって算出するとともに、
各空気供給手段ごとに定められた第1の係数k i1 は、反応槽の流入部に近い空気供給手段ほど大きく、排出部に近い空気供給手段ほど小さい値であり(k 11 >k 21 >・・・>k n1 )、第2の係数k i2 は、上記反応槽の流入部に近い空気供給手段ほど小さく、排出部に近い空気供給手段ほど大きい値とする(k 12 <k 22 <・・・<k n2 )ものである
【0007】
また、この発明に係る生物学的水処理装置においては、反応槽に流入する被処理水を活性汚泥および空気と混合することにより浄化処理し、該浄化処理後の被処理水を上記反応槽から排出する生物学的水処理装置において、
上記浄化処理する前の処理前水の汚濁物濃度SINを計測する手段、該処理前水の流量QINを計測する手段、上記排出される処理後水の汚濁物濃度SOUTを計測する手段、被処理水が流下する方向に沿って設けられ、被処理水に空気を散気するための複数個(n個)の空気供給手段、および上記計測された処理後水の汚濁物濃度SOUTと、上記計測された処理前水の汚濁物濃度SINと該処理前水の流量QINとの積で得られる該処理前水の汚濁物量と、一つ上流側の空気供給手段から散気される空気供給量とに応じて、上記各空気供給手段から散気する空気供給量を調節する手段を備えた生物学的水処理装置であって、
空気供給量を調節する手段は、処理後水の汚濁物濃度の目標値S と各空気供給手段ごとに予め定められた第1の係数k i1 ,第2の係数k i2 ,および定数k とを保持し、各空気供給手段から散気する空気供給量G を次式
=G i1 +G i2 +k
但し i=1のとき
11 =k 11 ・S IN ・Q IN
12 =k 12 ・(S OUT −S )
i=2,・・・,nのとき
i1 =k i1 ・G (i−1)1
i2 =k i2 ・G (i−1)2
によって算出するとともに、
i=2,・・・,nのとき、各空気供給手段に定められた第1の係数k i1 は1よりも小さい値とし、第2の係数k i2 は1よりも大きい値とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の一形態例による生物学的水処理装置を示す構成図である。図において、その他の図と同一符号は、同一または相当部分を示している。
図1において、1は活性汚泥を蓄えた生物反応槽で、配管aを介して流入する被処理水としての処理前水を生物反応によって浄化処理し、浄化処理後の処理後水を配管bに排出する。2は配管aに取り付けられた流量計で、生物反応槽1に流入する処理前水の流量を計測する。3は配管bを介して生物反応槽1から排出された処理後水に含まれる活性汚泥を沈殿させるための沈殿槽であり、沈殿処理したあとの上澄水は配管cを介して排出される。また、沈殿処理によって分離した活性汚泥は、配管dを介して生物反応槽1へ返送されるが、余剰分は配管eを介して外部に排出される。
41〜44は生物反応槽1内で被処理水が流下する方向に並んで設けられた散気装置で、空気供給装置51〜54から配管51a〜54aを介して送られた空気を生物反応槽1内に供給する。
7は処理前水のBOD濃度(生物学的酸素要求量、有機性汚濁物質量の指標)を計測するためのBOD濃度計であり、配管aに取り付けられている。また、10は生物反応槽1から排出される処理後水のBOD濃度を計測するためのBOD濃度計であり、配管bに取り付けられている。
91〜94はそれぞれ空気供給装置51〜54に対して空気供給量を信号線91a〜94aを介して制御するためのコントローラであり、信号線7aを介して入力する処理前水のBOD濃度および信号線10aを介して入力する処理後水のBOD濃度と信号線2aを介して入力する流量とをもとに、空気供給量の設定値を算出する。
なお、流量計2とBOD濃度計7との位置関係はこの図に限定されるものではなく、どちらが上流にあってもよい。
【0009】
このように構成された生物学的水処理装置においても、従来と同様、生物反応槽1において、配管aを介して流入する処理前水を活性汚泥および空気と混合・撹拌し、水中の汚濁物質を生物学的に酸化分解することで浄化処理する。
生物反応槽1に流入する処理前水の流量は流量計2で計測され、信号線2aを介してコントローラ91〜94に伝えられる。同時に、該処理前水のBOD濃度はBOD濃度計7で計測され、信号線7aを介してコントローラ91〜94に伝えられる。同様に、生物反応槽2から排出される処理後水のBOD濃度はBOD濃度計10で計測され、信号線10aを介してコントローラ91〜94に伝えられる。コントローラ91〜94では、それら計測値をもとに、散気装置41〜44から供給する空気供給量の設定値をそれぞれ演算によって求める。
【0010】
各コントローラは、それぞれに接続されている空気供給手段に予め定められた第1の係数、第2の係数および定数を保持しており、信号線2a、信号線7aおよび信号線10aを介して伝えられた各計測値をもとに下記の(a)(b)(c)の和を算出する。
(a)BOD濃度計7で計測された処理前水のBOD濃度と流量計2で計測
された処理前水の流量との積に、第1の係数を乗じた量
(b)BOD濃度計10で計測された処理後水のBOD濃度と予め定められた
BOD濃度の目標値との差に、第2の係数を乗じた量
(c)定数
このようにして算出された量をそれぞれのコントローラに接続された空気供給手段に伝えることにより、その量の空気が各散気装置から生物反応槽から供給される。
なお、上記第1の係数、第2の係数および定数は、生物反応槽1から排出される処理後水のBOD濃度が予め定められたBOD濃度の目標値により近づけるために最適な空気供給量を、上記演算において得ることができるように予め設定された値であり、散気装置の位置あるいは個数によってそれぞれ異なった値が設定される。
【0011】
例えば、コントローラ91では、散気装置41から供給される空気供給量の設定値G[Nm/h]を次式(1)により算出する。
=k11・SIN・QIN+k12・(SOUT−S)+k13 ・・・(1)
IN;処理前水のBOD濃度計測値[mg/l]
IN;流量計測値[m/h]
OUT;処理後水のBOD濃度計測値[mg/l]
;処理後水のBOD濃度の目標値[mg/l]
11,k12,k13;定数
同様にして、コントローラ92〜94では、空気供給量の設定値G〜G[Nm/h]を次式(2)〜(4)に従ってそれぞれ算出する。
=k21・SIN・QIN+k22・(SOUT−S)+k23 ・・・(2)
21,k22,k23;第1の係数,第2の係数,定数
=k31・SIN・QIN+k32・(SOUT−S)+k33 ・・・(3)
31,k32,k33;第1の係数,第2の係数,定数
=k41・SIN・QIN+k42・(SOUT−S)+k43 ・・・(4)
41,k42,k43;第1の係数,第2の係数,定数
【0012】
ここで、上式(1)〜(4)において各散気装置に対応して予め定める第1の係数および第2の係数は、前述したように、処理後水のBOD濃度が予め定められたBOD濃度の目標値により近づけるために最適な空気供給量を、上記演算において得ることができるように予め設定された値であるが、さらに、第1の係数k11,k21,k31,k41は、k11≧k21≧k31≧k41の関係が成立するように、また第2の係数k12,k22,k32,k42は、k12≦k22≦k32≦k42の関係が成立するように値を設定する。これにより、生物反応槽1の上流(入口)に近い散気装置から供給される空気供給量ほど、処理後水のBOD濃度とその目標値との差よりは主として処理前水の汚濁物量(BOD濃度と流量との積)に対応して決定され、逆に生物反応槽1の下流(出口)に近い散気装置から供給される空気供給量ほど、処理前水の汚濁物量よりは主として処理後水のBOD濃度とその目標値との差に対応して決定されるようになる。
上記のようにして算出された空気供給量の設定値G〜Gはそれぞれ信号線91a〜94aを介して空気供給装置51〜54に伝えられる。
各空気供給装置51〜54では、それぞれ配管51a〜54aおよび散気装置41〜44を介して、それぞれに設定された量の空気を生物反応槽1内に供給する。
なお、上記説明では散気装置を4つとしたが、例えば散気装置41を1つだけ設けた場合においても、第1の係数k11,第2の係数k12,定数k13に散気装置が1つの場合の最適な値が別個に予め定められ、上式(1)によって空気供給量Gが算出され、処理前水の汚濁物量だけでなく、処理後水のBOD濃度も考慮した空気量を供給することができる。さらに、散気装置が5つ以上であっても、各散気装置から供給する最適な空気量を簡単に算出できることはいうまでもない。
【0013】
以上のように、生物反応槽1に流入する処理前水の汚濁物量だけでなく、生物反応槽1から現在排出されている処理後水の汚濁物濃度とその目標値との差も考慮しながら生物反応槽1内に供給する空気量を設定するので、処理後に排出される処理後水の汚濁物濃度をより目標値に近づけることができ、より精緻に水質制御ができる。
また、空気供給量を求める演算において、各空気供給手段51〜54にそれぞれ接続された散気装置41〜44の生物反応槽1内での位置に従って、それぞれに定める係数に大小関係をつけることにより、生物反応槽1の流入部に近い散気装置からは主として流入する処理前水の汚濁物量に応じて、また生物反応槽1の排出部に近い散気装置からは主として処理後水の汚濁物濃度とその目標値との差に応じてそれぞれ空気が供給されるので、流入する汚濁物量が変動しても生物反応槽1の各ポイントにおいて適切な空気供給を実現できるうえに、排出される処理後水の汚濁物濃度をより目標値に近づけることができる。さらに、過不足のない空気供給量で効率的な水質制御ができる。
【0014】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2による生物学的水処理装置を示す構成図である。なお、図2において、1〜3,41〜44,51a〜54a,7,10は図1に示した実施の形態1のものと同一または相当部分を示している。
50は空気供給装置で、配管50aを介して弁71〜74に空気を送る。弁71〜74は、それぞれ接続されている散気装置41〜44から供給される空気の量を制御するための弁である。90はコントローラで、信号線2a,7a,10aを介して伝えられた各計測値をもとに各散気装置41〜44から供給する空気量の設定値を算出し、その設定値を信号線71a〜74aを介して弁71〜74に伝える。
【0015】
このように構成された実施の形態2においては、流量計2で計測された生物反応槽2に流入する処理前水の流量、BOD濃度計7で計測された処理前水のBOD濃度、およびBOD濃度計10で計測された生物反応槽1から排出される処理後水のBOD濃度が、それぞれ信号線2a、信号線7aおよび信号線10aを介して、コントローラ90に伝えられる。
コントローラ90においては、上記実施の形態1で述べた数式(1)〜(4)を用いて、各散気装置41〜44から供給する空気供給量の設定値G[Nm/h],G[Nm/h],G[Nm/h],G[Nm/h]を算出する。
ここでも、実施の形態1と同様、上式(1)〜(4)において各散気装置に対応して予め定める係数k11,k21,k31,k41は、k11≧k21≧k31≧k41の関係が成立するように値を設定する。また、k12,k22,k32,k42は、k12≦k22≦k32≦k42の関係が成立するように値を設定する。
【0016】
コントローラ90で算出された空気供給量の設定値G〜Gは、それぞれ信号線71a〜74aを介して弁71〜74に伝えられる。
弁71〜74は伝えられた空気量が散気装置41〜44から生物反応槽1内に供給されるように、それぞれの設定値G〜Gに従って開度を調節する。
このようにして、空気供給装置50から、配管50a、弁71〜74、配管51a〜54aおよび散気装置41〜44を介して所定量の空気を送ることができる。
以上のように、各散気装置から供給する空気量の算出を1つのコントローラでまとめて行うようにし、各散気装置へ送る空気量の調整を弁を用いて行うようにしたので、散気装置の数が増えてもコントローラおよび空気供給装置の数は増えず、簡単な構成で実現することができる。
【0017】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3による生物学的水処理装置を記す構成図である。なお、図3において各部分に付した符号は図1に示した実施の形態1のものと同一または相当部分であるが、BOD濃度計7で計測された処理前水のBOD濃度、流量計2で計測された処理前水の流量、およびBOD濃度計10で計測された処理後水のBOD濃度は、それぞれ信号線7a,2a,および10aを介してコントローラ91にのみ伝えられる。また、コントローラ91では、散気装置41から供給する空気量の設定値を算出し、その算出式を信号線91bを介して、ひとつ下流のコントローラ92に伝える。同様にコントローラ92からコントローラ93へは信号線92bを介して、コントローラ93からコントローラ94へは信号線93bを介して、それぞれで用いた算出式を伝える。
【0018】
このように構成された実施の形態3においては、まず、コントローラ91において、信号線7a,2a,および10aを介して伝えられた処理前水のBOD濃度とその流量、および処理後水のBOD濃度、さらに空気供給装置51に対して予め定められた第3の係数k11,第4の係数k12,および定数kをもとに、散気装置41から供給する空気供給量の設定値G[Nm/h]を次式(5)に従って算出する。
=G11+G12+k ・・・(5)
11=k11・SIN・QIN
12=k12・(SOUT−S)
但し SIN;処理前水のBOD濃度計測値[mg/l]
IN;流量計測値[m/h]
OUT;処理後水のBOD濃度計測値[mg/l]
;処理後水のBOD濃度の目標値[mg/l]
11,k12,k;第3の係数,第4の係数,定数
なお、第3の係数および第4の係数は、前述したように、処理後水のBOD濃度が予め定められたBOD濃度の目標値により近づけるために最適な空気供給量を、上記演算において得ることができるように予め設定された値である。
【0019】
コントローラ91は、上式(5)のG11の値およびG12の値を信号線91bを介してコントローラ92に伝える。コントローラ92においては、空気供給装置52に対して予め定められた第3の係数k21,第4の係数k22,および定数kを保持し、散気装置42から供給する空気供給量の設定値G[Nm/h]を次式(6)に従って算出する。
=G21+G22+k ・・・(6)
21=k21・G11
22=k22・G12
但し、0<k21<1,1<k22とする。
同様に、コントローラ92は、上式(6)のG21の値およびG22の値を信号線92bを介してコントローラ93に伝える。コントローラ93においては、空気供給装置53に対して予め定められた第3の係数k31,第4の係数k32,および定数kを保持し、散気装置43から供給する空気供給量の設定値G[Nm/h]を次式(7)に従って算出する。
=G31+G32+k ・・・(7)
31=k31・G21
32=k32・G22
但し、0<k31<1,1<k32とする。
さらに、コントローラ93は、上式(7)のG31の値およびG32の値を信号線93bを介してコントローラ94に伝える。コントローラ94においては、空気供給装置54に対して予め定められた第3の係数k41,第4の係数k42,および定数kを保持し、散気装置44から供給する空気供給量の設定値G[Nm/h]を次式(8)に従って算出する。
=G41+G42+k ・・・(8)
41=k41・G31
42=k42・G32
但し、0<k41<1,1<k42とする。
【0020】
以上のように、生物反応槽1内に被処理水の流れる方向に設けられた散気装置から供給する空気量の設定値を、一つ上流側の散気装置から供給された空気量を考慮して算出するので、より緻密な空気供給量を設定できる。また、上流側のBOD濃度に重みづけられる第3の係数は1より小さい値とし、排出する処理後水の濃度と目標値との差に重みづけられる第4の係数は1より大きい値とすることにより、生物反応槽1の流入部に近い散気装置からは主として流入する処理前水の汚濁物量に応じて、また生物反応槽1の排出部に近い散気装置からは主として処理後水の汚濁物濃度とその目標値との差に応じてそれぞれ所定の空気量が供給されるので、流入する処理前水の汚濁物量が変動しても生物反応槽の各ポイントにおいて適切な空気供給を実現でき、排出される処理後水の汚濁物濃度を精緻に制御できる。
【0021】
なお、上記実施の形態1〜3では、被処理水の汚濁物濃度として、BOD濃度を指標とする場合を示したが、窒素濃度やりん濃度を対象とした場合も同等の効果を奏する。
また、流入する処理前水のBOD濃度と処理後水のBOD濃度とを別々のBOD濃度計で計測する例を示したが、単一のセンサで計測することも可能である。その場合、両者の測定周期をずらせばよい。
また、これらのBOD濃度計は必ずしも配管にとりつけられる必要はなく、処理前水もしくは処理後水をサンプリングして計測できれば、設置場所は任意でよい。
また、処理後水のBOD濃度を計測するために、生物反応槽からの処理後水を排出するための配管bにとりつける、もしくは配管bからサンプリングする例を示したが、沈殿槽3の上澄水を排出するための配管cにとりつける、もしくは配管cからサンプリングするようにしても、同等の効果を奏する。
さらに、散気装置を4つ設ける場合について述べたが、もちろんこれは一例を示したに過ぎず散気装置の数は任意であり、各散気装置に対応して予め保持する係数および定数は、散気装置の数に対応してそれぞれ最適な値が設定される。なお、散気装置の数が変わっても装置構成は同様である。
【0022】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0023】
この発明に係る生物学的水処理装置においては、反応槽に流入する被処理水を活性汚泥および空気と混合することにより浄化処理し、該浄化処理後の被処理水を上記反応槽から排出する生物学的水処理装置において、
上記浄化処理する前の被処理水(以下、処理前水と称す)の汚濁物濃度S IN を計測する手段、該処理前水の流量Q IN を計測する手段、上記排出される被処理水(以下、処理後水と称す)の汚濁物濃度S OUT を計測する手段、上記反応槽内で被処理水が流下する方向に沿って複数個(n個)設け、上記被処理水に空気を散気するための空気供給手段、および上記計測された処理前水の汚濁物濃度S IN と該処理前水の流量Q IN との積で得られる該処理前水の汚濁物量と上記計測された処理後水の汚濁物濃度S OUT とに応じて、上記空気供給手段から散気する空気供給量を調節する手段を備えた生物学的水処理装置であって、
空気供給量を調節する手段は、処理後水の汚濁物濃度の目標値S と各空気供給手段ごとに予め定められた第1の係数k i1 ,第2の係数k i2 および定数k とを保持し、各空気供給手段から散気する空気供給量G を次式
=k i1 ・S IN ・Q IN +k i2 ・(S OUT −S )+k
(i=1,・・,n)
によって算出するとともに、
各空気供給手段ごとに定められた第1の係数k i1 は、反応槽の流入部に近い空気供給手段ほど大きく、排出部に近い空気供給手段ほど小さい値であり(k 11 >k 21 >・・・>k n1 )、第2の係数k i2 は、上記反応槽の流入部に近い空気供給手段ほど小さく、排出部に近い空気供給手段ほど大きい値とする(k 12 <k 22 <・・・<k n2 )ので、
排出される処理後水の汚濁物濃度を精緻に制御できる。また、過不足のない空気供給量で効率よく処理水質を制御でき、各空気供給手段の反応槽内での位置に従って、適切な空気供給量を設定でき、効率のよい水質制御が行え、流入する被処理水中の汚濁物量が変動しても反応槽の各空気供給手段から適切な量の空気供給を実現でき、排出される処理後水の汚濁物濃度をより目標値に近づけることができる。
【0024】
また、この発明に係る生物学的水処理装置においては、反応槽に流入する被処理水を活性汚泥および空気と混合することにより浄化処理し、該浄化処理後の被処理水を上記反応槽から排出する生物学的水処理装置において、
上記浄化処理する前の処理前水の汚濁物濃度SINを計測する手段、該処理前水の流量QINを計測する手段、上記排出される処理後水の汚濁物濃度SOUTを計測する手段、被処理水が流下する方向に沿って設けられ、被処理水に空気を散気するための複数個(n個)の空気供給手段、および上記計測された処理後水の汚濁物濃度SOUTと、上記計測された処理前水の汚濁物濃度SINと該処理前水の流量QINとの積で得られる該処理前水の汚濁物量と、一つ上流側の空気供給手段から散気される空気供給量とに応じて、上記各空気供給手段から散気する空気供給量を調節する手段を備えた生物学的水処理装置であって、
空気供給量を調節する手段は、処理後水の汚濁物濃度の目標値S と各空気供給手段ごとに予め定められた第1の係数k i1 ,第2の係数k i2 ,および定数k とを保持し、各空気供給手段から散気する空気供給量G を次式
=G i1 +G i2 +k
但し i=1のとき
11 =k 11 ・S IN ・Q IN
12 =k 12 ・(S OUT −S )
i=2,・・・,nのとき
i1 =k i1 ・G (i−1)1
i2 =k i2 ・G (i−1)2
によって算出するとともに、
i=2,・・・,nのとき、各空気供給手段に定められた第1の係数k i1 は1よりも小さい値とし、第2の係数k i2 は1よりも大きい値とするので、
その時点の被処理水中の汚濁物量にしたがってより適切な空気量を供給することができ、各空気供給手段の生物反応槽内での位置に従って、適切な空気供給量を設定でき、効率のよい水質制御が行え、流入する被処理水中の汚濁物量が変動しても各空気供給手段から適切な量の空気供給を実現でき、排出される処理後水の汚濁物濃度をより目標値に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による生物学的水処理装置を示す構成図である。
【図2】 この発明の実施の形態2による生物学的水処理装置を示す構成図である。
【図3】 この発明の実施の形態3による生物学的水処理装置を示す構成図である。
【図4】 従来の生物学的水処理装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1 生物反応槽、2 流量計、41〜44 空気供給手段としての散気装置、
51〜54 空気供給手段としての空気供給装置、
7 処理前水の汚濁物濃度計測手段としてのBOD濃度計、
91〜94 空気供給量の調節手段としてのコントローラ、
10 処理後水の汚濁物濃度計測手段としてのBOD濃度計。

Claims (2)

  1. 反応槽に流入する被処理水を活性汚泥および空気と混合することにより浄化処理し、該浄化処理後の被処理水を上記反応槽から排出する生物学的水処理装置において、
    上記浄化処理する前の被処理水(以下、処理前水と称す)の汚濁物濃度SINを計測する手段、該処理前水の流量QINを計測する手段、上記排出される被処理水(以下、処理後水と称す)の汚濁物濃度SOUTを計測する手段、上記反応槽内で被処理水が流下する方向に沿って複数個(n個)設け、上記被処理水に空気を散気するための空気供給手段、および上記計測された処理前水の汚濁物濃度SINと該処理前水の流量QINとの積で得られる該処理前水の汚濁物量と上記計測された処理後水の汚濁物濃度SOUTとに応じて、上記空気供給手段から散気する空気供給量を調節する手段を備えた生物学的水処理装置であって、
    空気供給量を調節する手段は、処理後水の汚濁物濃度の目標値S と各空気供給手段ごとに予め定められた第1の係数k i1 ,第2の係数k i2 および定数k とを保持し、各空気供給手段から散気する空気供給量G を次式
    =k i1 ・S IN ・Q IN +k i2 ・(S OUT −S )+k
    (i=1,・・,n)
    によって算出するとともに、
    各空気供給手段ごとに定められた第1の係数k i1 は、反応槽の流入部に近い空気供給手段ほど大きく、排出部に近い空気供給手段ほど小さい値であり(k 11 >k 21 >・・・>k n1 )、第2の係数k i2 は、上記反応槽の流入部に近い空気供給手段ほど小さく、排出部に近い空気供給手段ほど大きい値とする(k 12 <k 22 <・・・<k n2 ことを特徴とする生物学的水処理装置。
  2. 反応槽に流入する被処理水を活性汚泥および空気と混合することにより浄化処理し、該浄化処理後の被処理水を上記反応槽から排出する生物学的水処理装置において、
    上記浄化処理する前の処理前水の汚濁物濃度SINを計測する手段、該処理前水の流量QINを計測する手段、上記排出される処理後水の汚濁物濃度SOUTを計測する手段、被処理水が流下する方向に沿って設けられ、被処理水に空気を散気するための複数個(n個)の空気供給手段、および上記計測された処理後水の汚濁物濃度SOUTと、上記計測された処理前水の汚濁物濃度SINと該処理前水の流量QINとの積で得られる該処理前水の汚濁物量と、一つ上流側の空気供給手段から散気される空気供給量とに応じて、上記各空気供給手段から散気する空気供給量を調節する手段を備えた生物学的水処理装置であって、
    空気供給量を調節する手段は、処理後水の汚濁物濃度の目標値S と各空気供給手段ごとに予め定められた第1の係数k i1 ,第2の係数k i2 ,および定数k とを保持し、各空気供給手段から散気する空気供給量G を次式
    =G i1 +G i2 +k
    但し i=1のとき
    11 =k 11 ・S IN ・Q IN
    12 =k 12 ・(S OUT −S )
    i=2,・・・,nのとき
    i1 =k i1 ・G (i−1)1
    i2 =k i2 ・G (i−1)2
    によって算出するとともに、
    i=2,・・・,nのとき、各空気供給手段に定められた第1の係数k i1 は1よりも小さい値とし、第2の係数k i2 は1よりも大きい値とすることを特徴とする生物学的水処理装置。
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