JP4486730B2 - 複層塗膜形成用粉体塗料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、仕上がり外観、塗膜性能に優れた複層粉体塗膜を提供し得る複層塗膜形成用粉体塗料に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
従来より、粉体塗料は家電製品、自動車、車両、事務用品、鋼製家具、建材等の工業用製品分野において屋外又は屋内用途として広く使用されている。
【0003】
粉体塗料としては、熱硬化型アクリル樹脂系粉体塗料、熱硬化型ポリエステル樹脂系粉体塗料及び熱硬化型エポキシ樹脂系粉体塗料が主に使用されている。
しかしながら、これらの粉体塗料から形成される塗膜において、熱硬化型アクリル樹脂系粉体塗膜は太陽光等により塗膜の劣化が少ないので塗膜表面の外観を重視する屋外用途に多く採用されているが耐食性に劣るといった欠点があり、また熱硬化型エポキシ樹脂系粉体塗膜は熱硬化型アクリル樹脂系粉体塗膜とは反対に耐食性は優れるが耐候性が劣るといった欠点がるために主に屋内用途として使用されている。また熱硬化型ポリエステル樹脂系粉体塗料から形成される塗膜は熱硬化型アクリル樹脂系粉体塗膜と熱硬化型エポキシ樹脂系粉体塗膜との中間的な性能しか発揮できずに、中途半端な性能となり用途が制限されているといった欠点があった。
【0004】
このような粉体塗料の欠点を改良する粉体塗料として、例えば熱硬化型アクリル樹脂系粉体塗料と熱硬化型エポキシ樹脂系粉体塗料との混合物を表面処理鋼鈑に静電粉体塗装したのち、加熱硬化して上層をアクリル樹脂系粉体塗膜、下層をエポキシ樹脂系粉体塗膜に複層塗膜を形成させてなる粉体塗料(特開昭51ー122137号公報、特開昭54ー105135号公報)が知られている。
【0005】
このような複層塗膜を形成する混合粉体塗料は、被塗物に静電粉体塗装した際に、被塗物に付着する粉体塗料は通常40〜60重量%であり、それ以外の粉体塗料は回収された後、再塗装されるの一般的である。しかしながら、回収された粉体塗料は熱硬化型アクリル樹脂系粉体塗料と熱硬化型エポキシ樹脂系粉体塗料と塗着効率が異なるため、再度粉体塗装するためには両者の粉体塗料の混合割合を調整する必要があった。このために、この調整に必要な手間が多く掛かるため面倒であるといった問題点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、2層を形成する粉体塗料を造粒させることにより、特に回収粉体の配合比を換えることなく分離性に優れた複層塗膜形成用粉体塗膜を形成することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、下層を形成する粉体塗料(A)と上層を形成する粉体塗料(B)を撹拌下にその粒子表面が溶融し、且つその粒子内は溶融しない温度に加熱して固着させることを特徴とする複層塗膜形成方法、下層を形成する粉体塗料(A)と上層を形成する粉体塗料(B)の混合粉体と固形バインダーとをドライブレンドし、次いで該バインダーが溶融し且つ該粉体塗料は溶融しない温度に加熱し固着させることを特徴とする複層塗膜形成方法、下層を形成する粉体塗料(A)と上層を形成する粉体塗料(B)の混合粉体を、その粉体粒子表面が融着する圧力を加えてシート状又は粒状の固形物に固着させた後、粉体塗装に適した平均粒子径に粉砕、分級することを特徴とする複層塗膜形成方法、下層を形成する粉体塗料(A)と上層を形成する粉体塗料(B)とを一定割合に乾式混合した複層粉体塗料を被塗物に静電粉体塗装する工程において、被塗物に塗着しなかった粉体塗料を回収した後、その粒子表面が溶融し、且つその粒子内は溶融しない温度に加熱して固着させることにより回収粉体を再利用することを特徴とする複層塗膜形成方法、下層を形成する粉体塗料(A)と上層を形成する粉体塗料(B)とを一定割合に乾式混合した複層粉体塗料を被塗物に静電粉体塗装する工程において、被塗物に塗着しなかった粉体塗料を回収した後、回収粉体と固形バインダーとをドライブレンドし、次いで該バインダーが溶融し且つ該粉体塗料は溶融しない温度に加熱し固着させることにより回収粉体を再利用することを特徴とする複層塗膜形成方法、下層を形成する粉体塗料(A)と上層を形成する粉体塗料(B)とを一定割合に乾式混合した複層粉体塗料を被塗物に静電粉体塗装する工程において、被塗物に塗着しなかった粉体塗料を回収した後、その粉体粒子表面が融着する圧力を加えてシート状又は粒状の固形物に固着させた後、粉体塗装に適した平均粒子径に粉砕、分級させることにより回収粉体を再利用することを特徴とする複層塗膜形成方法に係わる。
【0008】
本発明で使用する粉体塗料(A)は、従来から公知の複層粉体塗料で使用される下層用粉体塗料にオニウム塩化合物を配合したものを使用することができる。この粉体塗料(A)としては、特に耐食性、基材に対する付着性が優れることから熱硬化性エポキシ樹脂系粉体塗料を使用することが好ましい。以下、このものについて述べる。
【0009】
エポキシ樹脂系粉体塗料(A)としては、それ自体で静電粉体塗装が可能で加熱により硬化する従来から公知の粉体塗料、例えばビスフェノール・エピクロルヒドリン型エポキシ基体樹脂(例えば、油化シェル株式会社製、商品名エピコート1004、エピコート1007)、ノボラック型エポキシ基体樹脂等のエポキシ樹脂に、例えばアジピン酸、(無水)トリメリット酸等のポリカルボン酸化合、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネ−ト等の芳香族スルホニウム塩のカチオン重合触媒、ジシアンジアミド等のアミド化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のカルボン酸ジヒドラジド化合物、イミダゾリン類化合物、イミダゾール類化合物、フェノール樹脂、高酸価ポリエステル系樹脂等のエポキシ用架橋剤を配合した公知の粉体塗料を使用することができる。
【0010】
基体樹脂と硬化剤との配合割合は、基体樹脂100重量部当たりカチオン重合触媒の場合には約0.01〜10重量部、好ましくは約0.1〜5重量部の範囲、カチオン重合触媒以外の場合には約0.1〜100重量部、好ましくは約1〜80重量部の範囲が好適である。
【0011】
粉体塗料(A)にはオニウム塩化合物を配合することができる。
上記オニウム塩化合物としては、一般式 [(R)4 Y]+ X− 又は[(R)3 S]+ X− で表されるものが好ましい。式中、Rは同一もしくは異なって水素原子、低級アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等)、ヒドロキシ低級アルキル基(例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシヘキシル等)、ハロ低級アルキル基(例えば臭素化メチル、臭素化エチル等)、低級アルコキシ低級アルキル基( 例えばメトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、メトキシヘキシル等)、シクロアルキル基(例えばシクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロペンチル等)、アリール基(例えばフェニル、トルイル、キシリル等)又はアラルキル基(例えばベンジル基等)などの有機基が挙げられる。Yは窒素原子又は燐原子である。Xは負イオンを示すものであって、例えばハロゲンイオン(例えば塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等)、無機酸根(例えば硫酸根、燐酸根等)、有機酸根(例えば酢酸根、ベンジルスルホン酸根、水酸根等)等が挙げられる。上記した低級なる意味は炭素数6以下のものを示す。上記した一般式において、特にRが低級アルキル基、フェニル基、ベンジル基のものXがハロゲンイオンのアンモニウム又はホスホニウム塩化合物が好ましい。
【0012】
上記オニウム塩化合物としては、例えば塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、塩化トリメチルエチルホスホニウム、塩化トリフェニルベンジルホスホニウム、臭素化テトラメチルホスホニウム、臭素化トリフェニルベンジルホスホニウム等の如きホスホニウム塩化合物類;塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化トリメチルエチルアンモニウム、塩化トリフェニルベンジルアンモニウム、臭素化テトラメチルアンモニウム、臭素化トリフェニルベンジルアンモニウム等の如きアンモニウム塩化合物類;塩化トリメチルスルホニウム、塩化テトラエチルスルホニウム、塩化テトラブチルスルホニウム、塩化トリメチルエチルスルホニウム、塩化トリフェニルベンジルスルホニウム等の如きスルホニウム塩化合物類が挙げられる。
【0013】
オニウム塩化合物の配合割合は、粉体塗料(A)に0.01〜10重量%、特に0.01〜5重量%の範囲が好ましい。また、オニウム塩化合物が粉体塗料の硬化触媒(エポキシ樹脂系粉体塗料等)として作用する場合には0.01〜2.0重量%、特に0.01〜1.0重量%の範囲が好ましい。配合割合が0.01を下回ると上層と下層との界面が凸凹となるため塗膜表面の平滑性や光沢が悪くなるる。一方、配合割合が10重量%を上回ると分離性に顕著な効果を発揮しなくなり、また、硬化触媒として作用するエポキシ樹脂系粉体塗料においては、配合割合が2.0重量%を上回ると塗膜が分離しなくなるため、塗膜の平滑性、光沢などの塗膜外観や耐候性、硬化性などの性能が悪くなるので好ましくない。
【0014】
本発明で使用する粉体塗料(B)は、従来から公知の複層粉体塗料で使用される上層用粉体塗料を使用することができる。粉体塗料(B)としては、特に耐候性に優れる熱硬化性アクリル樹脂系粉体塗料、熱硬化性ポリエステル樹脂系粉体塗料を使用することが好ましい。以下、このものについて述べる。
【0015】
熱硬化型アクリル樹脂系粉体塗料(B)としては、それ自体で静電粉体塗装が可能で加熱により硬化する従来から公知の粉体塗料、例えば酸エポキシ硬化型アクリル樹脂系粉体塗料(a)、ブロックイソシアネート硬化型アクリル樹脂系粉体塗料(b)等が挙げられる。
上記粉体塗料(a)としては、エポキシ基含有ラジカル重合性不飽和モノマー(例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等)、ガラス転移温度が40℃以上の硬質アクリルモノマー(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、ter-ブチルメタクリレート、ter-ブチルアクリレート等)及び必要に応じてガラス転移温度が40℃以未満の軟質アクリルモノマー(例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルアクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート等)、アクリルモノマー以外のラジカル重合性不飽和モノマー(例えばスチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド等)、上記エポキシ基以外の官能基含有ラジカル重合性不飽和モノマー(例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)をラジカル共重合反応させて得られるエポキシ基含有アクリル基体樹脂にポリカルボン酸架橋剤(例えばアジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、無水アジピン酸、無水トリメリット酸等)を配合してなるものである。
【0016】
また上記粉体塗料(b)としては、水酸基含有ラジカル重合性不飽和モノマー(例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、ガラス転移温度が40℃以上の硬質アクリルモノマー(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、ter-ブチルメタクリレート、ter-ブチルアクリレート等)及び必要に応じてガラス転移温度が40℃以未満の軟質アクリルモノマー(例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルアクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート等)、アクリルモノマー以外のラジカル重合性不飽和モノマー(例えばスチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド等)、上記水酸基以外の官能基含有ラジカル重合性不飽和モノマー(例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート 等)をラジカル共重合反応させて得られる水酸基含有アクリル基体樹脂にブロックポリイソシアネート架橋剤(例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物をフェノール類、ラクタム類、アルコール類、オキシム類等の化合物によりイソシアネート基をブロック化したもの)を配合してなるものである。
【0017】
上記基体樹脂と架橋剤の配合割合は、基体樹脂100重量部に対して架橋剤が10〜100重量部の範囲で配合される。
【0018】
また熱硬化型ポリエステル樹脂系粉体塗料(B)としては、それ自体で静電粉体塗装が可能で加熱により硬化する従来から公知の粉体塗料、例えばブロックイソシアネート硬化型ポリエステル樹脂系粉体塗料(c)等が挙げられる。
【0019】
該粉体塗料(c)としては、例えば(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸等の芳香族又は脂環族ジカルボン酸と(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、ブチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジメチルプロピオン酸等の2価アルコール、必要に応じて安息香酸等のモノカルボン酸、(無水)トリメリット酸等の3価以上のカルボン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコールとを反応させて得られる水酸基価約20〜300KOHmg/gの水酸基含有ポリエステル樹脂に上記ブロックポリイソシアネート架橋剤を配合してなる塗料を使用することができる。
【0020】
基体樹脂と硬化剤との配合割合は、基体樹脂100重量部当たり約10〜100重量部、好ましくは約15〜80重量部の範囲が好適である。
【0021】
本発明の粉体塗料において粉体塗料(A)と(B)との混合割合はそれぞれ約30〜70重量%、特に約40〜60重量%の範囲が好ましい。
【0022】
上層用粉体塗料(B)には抗菌剤を配合することができる。具体的には、例えば、特に銀イオンを担持させた無機系抗菌剤を配合することができる。該抗菌剤としては、銀イオンを担持させた無機化合物であれば特に制限なく従来公知のものが使用できる。銀イオンを担持させる無機化合物としては、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル等の無機系吸着剤、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウムなどが挙げられる。
【0023】
これらの無機化合物に銀イオンを担持させる方法には、特に制限なく従来知られた担持方法がいずれも採用できる。例えば物理吸着又は化学吸着により担持させる方法、イオン交換反応により担持させる方法、結合剤により担持させる方法、銀化合物を無機化合物に打ち込むことにより担持させる方法、蒸着、溶解析出反応、スパッタ等の薄膜形成法により無機化合物の表面に銀化合物の薄層を形成させることにより担持させる方法等が挙げられる。上記無機化合物の中で、無機イオン交換体は銀イオンを強固に担持できることから好ましく、特にゼオライトやリン酸ジルコニウム塩などが好適に使用できる。
【0024】
該化合物の具体例としては、例えば「ノバロンAG−300」(東亜合成化学社製、銀イオン担持リン酸ジルコニウム)、「ゼオミックAW−10D」(シナネンニュ−セラミック社製、銀イオン担持ゼオライト)などの市販品も利用できる。
【0025】
銀イオンを担持させた無機系抗菌剤の粒径は、塗装後の仕上り性、抗菌剤の有効面積などから平均粒径0.001〜20μm以下、好ましくは0.01〜10μmの微粒子状であることが望ましい。
【0026】
銀イオンを担持させた無機系抗菌剤の配合割合は、熱硬化性樹脂100重量部に対して好ましくは0.05〜50重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部が抗菌効果及び経済性から好適である。
【0027】
更に、粉体塗料(B)にはビス(ピリジン−2−チオ−ル−1−オキシド)亜鉛塩は、いわゆるジンクピリチオンを必要に応じて配合することができる。ビス(ピリジン−2−チオ−ル−1−オキシド)亜鉛塩の粒径は、塗装後の仕上り性、抗菌剤の有効面積などから平均粒径0.001〜20μm以下、好ましくは0.01〜10μmの微粒子状であることが望ましい。
【0028】
ビス(ピリジン−2−チオ−ル−1−オキシド)亜鉛塩の配合割合は、熱硬化性樹脂100重量部に対して好ましくは0.001〜20重量部、さらに好ましくは0.05〜5重量部が抗菌効果、変色防止能及び経済性から好適である。
【0029】
粉体塗料(B)には必要に応じて撥油剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール化合物等)を配合することが好ましい。
【0030】
本発明の粉体塗料において、粉体塗料(A)には必要に応じて防錆剤を配合することができる。更にこれらの粉体塗料(A)及び(B)には必要に応じて着色剤、充填剤、硬化触媒、流動性調整剤、ハジキ防止剤等の塗料用添加剤が配合できる。
【0031】
本発明の粉体塗料は、上記2種類の粉体塗料(A)及び(B)を、例えばヘンシェルミキサーなどにより混合もしくはアトマイザー、ジェットミル等の粉砕器で乾式混合分散して製造することができる。
本発明の粉体塗料(A)及び(B)を造粒させる方法は、該粉体塗料同士を固着して、複層塗膜形成に適した造粒粉体とするものであるが、より具体的には、例えば、以下に示す方法(1)〜(3)により、好適に実施することができる。
【0032】
(1)粉体塗料(A)及び(B)を、撹拌下にその粒子表面が溶融し且つその粒子内は溶融しない温度に加熱することにより、固着させる複層粉体塗料の製造方法。
【0033】
上記製造方法(1)によれば、粉体塗料(A)及び(B)を、その粒子同志がお互いに融着し、且つその粒子同志が溶融混合して粒子径が大きく変形しない温度で、加熱しながら混合分散することにより、複層粉体塗料を製造できる。固着の温度条件は、粉体塗料(A)及び(B)の軟化温度、溶融粘度、製造量等により異なるので、使用する粉体塗料(A)及び(B)に応じて好適な条件を設定すればよいが、一般的には約40〜80℃、好ましくは40℃〜60℃の温度範囲で約1分間〜20時間、好ましくは約5分間〜10時間の範囲で行うことができる。
【0034】
(2)粉体塗料(A)及び(B)を、平均粒子径20μm以下の固形バインダーとドライブレンドし、次いで該バインダーが溶融し且つ該粉体塗料は溶融しない温度に加熱することにより、固着させる複層粉体塗料の製造方法。
【0035】
上記製造方法(2)によれば、平均粒子径が20μm以下の固形バインダーを該粉体塗料(A)及び(B)粒子にドライブレンドした後、該バインダーが溶融して該粉体塗料(A)及び(B)粒子同士を結着させ、且つ該粉体塗料(A)及び(B)は溶融しない温度で加熱しながら混合分散することにより、複層粉体塗料を製造できる。固着の温度条件は、粉体塗料(A)及び(B)や該バインダーの軟化温度、融点、溶融粘度や処理容量等により異なるので、使用する粉体塗料(A)及び(B)等に応じて好適な条件を設定すればよいが、一般的には約20〜80℃、好ましくは30℃〜60℃の温度範囲で約1分間〜20時間、好ましくは約5分間〜10時間の範囲で行うことができる。
【0036】
固形バインダーとしては、粉体塗料(A)及び(B)よりも低融点であって、樹脂類、該塗料の硬化剤、高級アルコール、一塩基酸、ワックス類等から選ばれる1種又は2種以上を、好適に使用できる。樹脂類としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を例示できる。該硬化剤としては、ポリカルボン酸、無水カルボン酸、ブロックイソシアネート化合物、ポリオール化合物、アミノ樹脂等を例示できる。高級アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール等を例示できる。一塩基酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等を例示できる。ワックス類としては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス等を例示できる。該バインダーの融点としては、通常約10〜70℃、好ましくは約20〜60℃の範囲であるのが好適である。
【0037】
固形バインダーの添加量は、該バインダーの溶融温度、結着性、粘度等により異なるので、使用するバインダー及び粉体塗料(A)及び(B)に応じて好適な条件を設定すればよいが、一般的には該粉体塗料に対して約0.1〜50重量%、好ましくは約3〜30%添加するのが好適である。
【0038】
固形バインダーは、例えば、ジェットミル等で平均粒子径20μm以下に粉砕した後に、粉体塗料(A)及び(B)粒子とドライブレンドすることにより配合することができる。或いは、粉体塗料(A)及び(B)の塗料と同時に配合し、溶融混練、粉砕しても良い。
【0039】
(3)粉体塗料(A)及び(B)を、その粒子表面が溶融する圧力を加えることにより、固着させてシート状又は粒状の固形物にした後、粉体塗装に適した平均粒子径に粉砕、分級する複層粉体塗料の製造方法。
【0040】
上記製造方法(3)によれば、粉体塗料(A)及び(B)粒子同志の表面がお互いに融着する圧力を加えることでシート状又は粒状の固着固形物を得、この固形物を粉砕後、分級することにより、複層粉体塗料を製造できる。上記の圧力条件は粉体塗料(A)及び(B)の軟化温度、溶融粘度、製造量等により異なるので、使用する粉体塗料(A)及び(B)に応じて好適な条件を設定すればよいが、一般的には約100〜10000Kg/cm2、好ましくは500〜4000Kg/cm2の圧力範囲で行うことができる。圧力が100Kg/cm2を下回ると粉砕に必要な粒子間の融着がうまく行かず、粉砕時に複層粉体粒子径まで粉砕される。逆に、圧力が10000Kg/cm2を越えると粒子間の融着が進行し、固着体ではなく単一体となり、粉砕後の複層粉体塗料中に固着されていない小粒子が存在することにより塗装作業性が低下する。
【0041】
上記方法には、微粉を搬送する装置及び圧縮装置を有する圧縮機を使用する。例えば、栗本鐵工所社製の「ローラコンパクタRCP−200H」(商品名)、「ローラコンパクタMRCP−200」(商品名)等を挙げることができる。
【0042】
圧縮装置で圧縮された圧縮固形物は、ピンディスク等で微粉砕し、適当なフルイで濾過することにより分級して、目的の粉体塗装に適した複層粉体塗料を得ることができる。
【0043】
上記方法においては、固着を促進させるために、水性バインダー、水性有機溶剤、界面活性剤水溶液等の少なくとも一種を使用しても良い。
【0044】
かくして得られる本発明複層粉体塗料は、粉体塗料(A)及び(B)粒子が幾つか集まった集合体であり、その粒子の形状は複層粉体粒子の形が大きく変形しないで残っており、且つ塗装タンクから静電塗装機までの輸送中や静電噴霧中に固着粉体塗料の集合が壊れたりしない程度に複層粉体粒子が互いに付着していることが好ましい。
【0045】
本発明の複層粉体塗料は、平均粒子径が5〜100μm、好ましくは10〜80μmの範囲が良い。平均粒子径が5μm未満になると、静電粉体塗装作業性が低下し、一方100μmを越えると塗着効率、塗膜外観等が低下するので好ましくない。
【0046】
本発明の複層粉体塗料は、コロナ静電塗装、摩擦帯電粉体塗装等により塗装することができる。粉体膜厚は約30〜1000ミクロン、好ましくは約40〜500ミクロンの範囲が好ましい。
【0047】
粉体塗料の焼き付けは、通常約120〜200℃で約10〜60分間の範囲で行うことができる。
【0048】
粉体塗装に使用される基材は、粉体塗装が可能で加熱により基材が変形を起こさない従来から粉体塗装用に使用されているものを使用することができる。具体的には、例えば鉄鋼、銅、ステンレス、合金鋼、アルミニウム及びその合金、亜鉛、亜鉛メッキ鋼材、亜鉛合金、スズメッキ鋼材、燐酸亜鉛又は燐酸鉄処理鋼材などの金属類、ガラス類が挙げられる。該基材としては、板状であってもパイプ状、箱状、線状、フレーム状等に成型された加工品であっても構わない。また、該基材の表面には必要に応じてプライマー塗装、中塗り塗装を施しても構わない。
【0049】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を示す。
【0050】
アクリル樹脂系粉体塗料(I)の製造例
グリシジル基含有アクリル系樹脂(グリシジルメタクリレ−ト/スチレン/メチルメタクリレ−ト/n−ブチルアクリレ−ト=40/10/20/30“重量比”平均分子量8000、軟化点85℃、平均粒子径約35μm)1000重量部、ドデカン二酸290重量部及び二酸化チタン顔料を500重量部配合したものを2軸エクストル−ダ−で溶融混練した後、冷却、粉砕、濾過して平均粒子径約35μmの白色の粉体塗料(I)を製造した。
【0051】
エポキシ樹脂系粉体塗料(II)の製造例
エピコ−ト1004(油化シェル株式会社製、商品名、軟化点97〜103℃、平均分子量約1400、エポキシ樹脂、以下同様の意味を示す)1000重量部、アジピン酸ジヒドラジド500重量部、弁柄200重量部を2軸エクストル−ダ−で溶融混練した後、冷却、粉砕、濾過して平均粒子径約30μmの弁柄色の粉体塗料(II)を製造した。
【0052】
実施例1
上記アクリル樹脂系粉体塗料(I)とエポキシ樹脂系粉体塗料(II)とを50/50重量比に混合し、次いでハイスピードミキサー(深江工業(株)社製、容量2リットル)に仕込みアジテーター500rpm、チョッパー4000rpmで撹拌しながら50℃で30分間加熱して固着を行ったのち、15分かけて20℃に冷却して実施例1の複層粉体塗料を製造し、次いで、燐酸亜鉛処理鋼鈑に上記複層粉体塗料を膜厚が80ミクロンになるように静電粉体塗装を行い、180℃で30分間焼き付けを行って複層粉体塗膜を形成した。
【0053】
実施例2
上記アクリル樹脂系粉体塗料(I)とエポキシ樹脂系粉体塗料(II)とを50/50重量比に混合し、ヘンシェルミキサーで乾式混合した後、混合粉体塗料200部と微粉砕したステアリルアルコール(ステアリルアルコール(「カルコール8098」、花王株式会社製、商品名、高級アルコール、融点59℃)を、ジェットミルで微粉砕し、濾過をおこない平均粒子径が約6μmの粒子を得たもの。)20部をハイスピードミキサーに仕込みアジテーター500rpm、チョッパー4000rpmで撹拌しながら、50℃で30分間加熱して固着を行ったのち、15分かけて20℃に冷却して実施例2の複層粉体塗料を製造し、次いで、燐酸亜鉛処理鋼鈑に上記複層粉体塗料を膜厚が80ミクロンになるように静電粉体塗装を行い、180℃で30分間焼き付けを行って複層粉体塗膜を形成した。
【0054】
実施例3
上記アクリル樹脂系粉体塗料(I)とエポキシ樹脂系粉体塗料(II)とを50/50重量比に混合し、ヘンシェルミキサーで乾式混合した後、混合粉体塗料を「ローラコンパクタRCP−200H」(株式会社栗本鐵工所社製)を用いて、圧力1000Kg/cm2を加えることにより、固着して、粒子径数mm程度の粒状固着固形物を得た。得られた固着固形物をピンディスクで粉砕し、フルイで濾過して分級することにより、実施例3の複層粉体塗料を製造し、次いで、燐酸亜鉛処理鋼鈑に上記複層粉体塗料を膜厚が80ミクロンになるように静電粉体塗装を行い、180℃で30分間焼き付けを行って複層粉体塗膜を形成した。
【0055】
比較例1
アクリル樹脂系粉体塗料(I)とエポキシ樹脂系粉体塗料(II)とを50/50重量比に混合し、ヘンシェルミキサーで乾式混合した後、燐酸亜鉛処理鋼鈑に膜厚が80ミクロンになるように静電粉体塗装を行い、180℃で30分間焼き付けを行って複層粉体塗膜を形成した。
【0056】
実施例1〜3及び比較例1の塗膜外観及び性能試験結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
表1
Figure 0004486730
【0058】
表1において試験は次の様にして行った。
【0059】
塗膜分離性:粉体塗膜の断面を目視で観察して下記の様に評価した。○は粉体塗膜の境界面がはっきり分かれているもの、△は粉体塗膜の境界面が凹凸になっているもの、×は粉体塗膜が分離せずに互いに混在しているもの。
塗膜外観:塗膜表面を目視で観察し評価した。○は平滑性、チヂミ等の異常がないもの、△は平滑性、チヂミ等の異常が認められるもの、×は平滑性、チヂミ等の異常が著しく認められるもの。
【0060】
鏡面反射率:JIS K−5400の60度の鏡面光沢度を測定した。
【0061】
促進耐候性:サンシャインウエザオメーターを用いて、400時間試験後の光沢保持率(60度で測定)を調べた。
【0062】
【発明の効果】
複層塗膜形成用混合粉体塗料を被塗物に静電粉体塗装した場合には、夫々の粉体塗料の静電特性の違いにより塗着効率がことなり、このために、回収された粉体塗料は初期に配合した粉体塗料の混合比率とはことなった回収粉体が得られる。この回収された粉体塗料を被塗物に静電粉体塗装した場合には、初期に配合した粉体塗料の混合比率とはことなった組成物となるために、仕上がり外観や性能等が劣る塗膜が形成される。
本発明においては、複層塗膜形成用混合粉体塗料同士が造粒しているために、静電粉体塗装された塗膜の夫々の粉体塗料による塗着割合は、塗料を配合した比率と同様の割合で塗着されるために、塗着効率等の違いを夫々の塗料の配合割合で調整する必要がないこと、配合等のバラツキにより塗着割合が変動しないこと、回収粉体がそのまま再利用することができるといった顕著な効果がある。

Claims (4)

  1. 下層を形成する熱硬化型エポキシ樹脂系粉体塗料(A)と上層を形成する熱硬化型アクリル樹脂系粉体塗料(B)を撹拌下にその粒子表面が溶融し、且つその粒子内は溶融しない温度に加熱して固着させることを特徴として製造された複層粉体塗料を用いた複層塗膜形成方法。
  2. 下層を形成する熱硬化型エポキシ樹脂系粉体塗料(A)と上層を形成する熱硬化型アクリル樹脂系粉体塗料(B)の混合粉体と固形バインダーとをドライブレンドし、次いで該バインダーが溶融し且つ該粉体塗料は溶融しない温度に加熱し固着させることを特徴として製造された複層粉体塗料を用いた複層塗膜形成方法。
  3. 下層を形成する熱硬化型エポキシ樹脂系粉体塗料(A)と上層を形成する熱硬化型アクリル樹脂系粉体塗料(B)の混合粉体を、その粉体粒子表面が融着する圧力を加えてシート状又は粒状の固形物に固着させた後、粉体塗装に適した平均粒子径に粉砕、分級することを特徴として製造された複層粉体塗料を用いた複層塗膜形成方法。
  4. 固形バインダーが、熱硬化型エポキシ樹脂系粉体塗料(A)及び熱硬化型アクリル樹脂系粉体塗料(B)よりも低融点であって、樹脂類、該塗料の硬化剤、高級アルコール、一塩基酸及びワックス類から選ばれる1種又は2種以上である請求項に記載の複層塗膜形成方法。
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