JP4482838B2 - 還元の後の硫化による触媒の硫化方法 - Google Patents

還元の後の硫化による触媒の硫化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非晶質または不完全結晶化酸化物型の少なくとも1つの細孔質マトリックスに組み合わされる、ランタノイドおよびアクチノイドが含まれる第IIIB族、第VB族および第VIB族(元素周期律表の新規記号表記による第3族、第5族および第6族:ハンドブック・オブ・ケミストリ・アンド・フィジックス、第76版、1995〜1996年、表紙の内側第1ページ)よりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの元素と、場合によっては第VIII族(元素周期律表の新規記号表記による第8族、第9族および第10族)の少なくとも1つの元素に組み合わされる、場合によっては少なくとも1つのゼオライト性または非ゼオライト性モレキュラーシーブと、場合によってはP、BおよびSiよりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの元素と、場合によっては第VIIA族(同第17族)の少なくとも1つのアニオン源とを含む担持水素化精製および水素化転換触媒の硫化方法に関する。この硫化触媒の調製方法は、当業者に公知のあらゆる方法により硫化工程を行なう前に、水素以外の少なくとも1つの還元ガスを用いて予め還元工程を行なうことを特徴とする。
【0002】
さらに本発明は、本発明による方法により得られる硫化触媒にも関する。
【0003】
さらに本発明は、炭化水素仕込原料の水素化精製および水素化転換における、触媒としての得られた硫化触媒の使用にも関する。これら炭化水素仕込原料は、少なくとも1つの芳香族化合物、および/またはオレフィン化合物、および/またはナフテン化合物、および/またはパラフィン化合物を含む。前記仕込原料は、場合によっては金属および/または窒素および/または酸素および/または硫黄を含む。
【0004】
硫化物の合成は、当業者に公知の多数の方法により実施されてよい。
【0005】
【従来の技術】
従来、遷移金属型または希土類金属型元素と元素状硫黄との高温での反応による結晶化遷移金属または希土類金属の硫化物の合成は、固体の化学において当業者に公知の方法であるが、特に工業的適用においてコスト高である。
【0006】
遷移金属または希土類金属の混合酸化物の形態下の適当な前駆体と、ガス相での硫黄化合物、例えば硫化水素または硫化炭素CS、あるいはさらにはメルカプタン、硫化物、二硫化物、炭化水素多硫化物、硫黄蒸気、COS、硫化炭素との反応による塊状または担持硫化物の通過床反応器における合成は、当業者に公知である。
【0007】
遷移金属または希土類金属の混合酸化物の形態下の適当な前駆体の液相での硫黄化合物で含浸される反応に次ぐ通過床反応器内での水素下処理による塊状または担持硫化物の合成は、当業者に公知である。
【0008】
さらに水素下に塊状であるか、または細孔質マトリックス上に担持される酸化物前駆体と、硫黄含有炭化水素仕込原料、特に硫黄含有石油留分、例えばガソリン、ケロシンおよびガスオイルであり、場合によってはこれらに硫黄化合物、例えばジメチル二硫化物が添加される硫黄含有石油留分との処理による塊状であるか、または細孔質マトリックス上に担持される硫化触媒の合成も、当業者に公知である。
【0009】
さらに塊状硫化物の合成は、2つのカチオンを含む溶液状での硫黄含有錯体の塩基性媒質中での共沈澱技術により行なわれてよい。この方法は、調節されるpHで実施されてよく、硫化物の均質沈澱と呼ばれる。この方法は、コバルトおよびモリブデンの混合硫化物を調製するために使用されている(G.Hagenbach,P.Courty, B.Delmon, ジャーナル・オブ・カタリシス、1973年、第31巻、264頁)。
【0010】
さらに水素/硫化水素または窒素/硫化水素混合物下での塊状または細孔質マトリックス上に担持される酸化物前駆体の処理による塊状または細孔質マトリックス上に担持される硫化触媒の合成も、当業者に公知である。
【0011】
米国特許US−A−4,491,639には、V、MoおよびWの塩の元素状硫黄、特に場合によってはCoまたはNiと組み合わされる一連のC、Si、B、Ce、Th、Nb、Zr、TaおよびUの元素のうちの少なくとも1つの元素を含むV、MoおよびWの硫化物との反応による硫化化合物の調製が記載されている。
【0012】
他の方法が、単純硫化物の合成に関して提案されている。例えば米国特許US−A−3,748,095およびフランス特許FR2,100,551に記載されている結晶化希土類単純硫化物の合成は、1000℃を越える温度での硫化水素または硫化炭素と、希土類の非晶質酸化物または希土類の非晶質オキシ炭酸塩との反応により行なわれる。
【0013】
ヨーロッパ特許EP−0440,516A1および米国特許US−A−5,279,801には、それらについては、遷移金属化合物または希土類金属化合物と、ガス状態の硫黄の炭素化合物との閉鎖反応器内での適温350〜600℃での反応による遷移金属または希土類金属の単純硫化化合物の合成方法が記載されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、いくつかの元素、例えば塊状または担持酸化物形態の、ランタノイドおよびアクチノイドが含まれる第IIIB族および第VB族の元素は、硫化を行なうのが非常に困難であることは公知である。従って、当業者に公知でありかつ工業的にまた研究室において一般に使用される硫化方法、例えば水素/硫化水素ガス混合物下の硫化、あるいは炭化水素仕込原料と、硫黄含有化合物、例えばジメチル二硫化物との混合による水素圧力下に液相での硫化は、そのような固体を硫化するのに効力のないものであるという問題があった。
【0015】
本発明においては、マトリックスに組み合わされる、単独または混合物状の、第IIIB族および第VB族の元素、並びに元素周期律表の多数の他の元素の硫化物をベースとする硫化触媒の調製に関する本出願人により行なわれた多大な研究業績により、予期しないことではあるが、硫化に先立って水素以外の還元ガス下に処理を行なう場合、触媒活性が、改善された状態にあることが見出されるに至った。何ら理論に関連付けられることを望まないで、水素以外の還元ガスにより適度に予め還元された触媒の硫化により、優れた硫化と、硫化物相の優れた分散とを得ることが可能になる。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明による担持触媒の硫化方法は、ランタノイドおよびアクチノイドが含まれる第IIIB族、第VB族および第VIB族よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの元素を含む担持触媒の硫化方法において、前記触媒を硫化する前に水素以外の少なくとも1つの還元ガスにより予め前記触媒を還元することを特徴としている。
【0017】
上記方法において、還元ガスは、不活性ガスにより希釈されるまたは希釈されない、単独または混合物状の、一酸化炭素、および一酸化窒素の中から選ばれる。
【0018】
上記方法において、さらに触媒が、第VIII族の少なくとも1つの金属を含む。
【0019】
上記方法において、触媒が、非晶質または不完全結晶化酸化物型の少なくとも1つの細孔質マトリックスを含む。
【0020】
上記方法において、さらに少なくとも1つのゼオライト性または非ゼオライト性モレキュラーシーブを含む。
【0021】
上記方法において、さらに触媒が、P、BおよびSiよりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの元素を含む。
【0022】
上記方法において、さらに触媒が、第VIIA族の少なくとも1つのアニオン源を含む。
【0023】
上記方法において、ランタノイドおよびアクチノイドが含まれる第IIIB族および第VB族の元素であって、担持酸化物形態にあるものを硫化する。
【0024】
より正確には、本発明による硫化触媒の製造方法は、つぎの工程、すなわち
(a) ランタノイドおよびアクチノイドが含まれる第IIIB族、第VB族および第VIB族よりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの元素と、場合によっては第VIII族の元素と、場合によってはゼオライト性または非ゼオライト性モレキュラーシーブに組み合わされる、非晶質または不完全結晶化酸化物型の少なくとも1つの細孔質マトリックスと、場合によってはP、BおよびSiよりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの元素と、場合によっては第VIIA族の少なくとも1つのアニオンとを含む触媒を調製する工程、
(b) 反応器内で40℃を越える加熱温度で0.01MPaを越える圧力下に触媒を、水素以外の還元ガスまたは還元ガス混合物に曝すことにより、工程(a)で調製される触媒の還元処理を行なう工程、および
(c) 工程(b)で得られる還元触媒を、温度40〜1000℃で0.01MPaを越える圧力下に水素中硫化水素のガス混合物に曝すことにより、触媒の硫化を行なう。
【0025】
上記方法において、触媒を、硫黄を含む炭化水素仕込原料に曝すことにより、触媒の硫化を行なう。
【0026】
上記方法において、触媒の硫化が、前記触媒の使用に対して現場外で行なわれる。
【0027】
上記方法において、反応帯域が、還元反応および硫化反応により生成されるガスの自生圧力を用いる閉鎖反応器である。
【0028】
上記方法において、反応帯域が、開蓋反応器である。
【0029】
上記方法において、予めマトリックスを、第VB族および第VIB族よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの金属または希土類金属の塩による、場合によってはP、BおよびSiよりなる群の中から選ばれる元素を含む塩による、場合によっては第VIIA族のアニオンによる1つまたは複数の工程において含浸する、また触媒の中間乾燥工程を、温度60〜250℃で各含浸間に行なう。
【0030】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
本発明の方法において、反応器は、閉鎖反応器であってよい。この場合、充填は、自由空気で行なわれる。閉鎖後、アルゴンまたはヘリウムのような不活性ガスによりパージを行なう。ついで還元ガスを導入する。反応後、使用される圧力は、還元反応による生成ガスによる圧力であり、また残留還元ガスによる圧力である。
【0032】
反応器は、通過床、例えば固定床、移動床、沸騰床または流動床を有する反応器であってよい。この場合、還元工程の際に使用される圧力は、還元ガスの圧力である。
【0033】
さらに触媒の硫化は、現場外で、例えば触媒の使用帯域の外側帯域で行なわれてよい。
【0034】
上記工程(b)の反応は、水素以外の少なくとも1つの還元ガス雰囲気下に行なわれる。還元ガスは、不活性ガス中単独または混合物状または希釈される、つぎのガスのうちの1つであってよい。すなわち一酸化炭素CO、および一酸化窒素NOであってよい。このガスは、場合によっては不活性ガス、例えば窒素、希ガス、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンまたはラドン、過熱水、あるいはさらにはこれら化合物のうちの少なくとも2つの組み合わせにより希釈されてよい。
【0035】
上記工程(c)の硫化は、当業者に公知のあらゆる方法、特に前述された方法により行なわれてよい。好ましくは前駆体を、温度20〜800℃、好ましくは40〜600℃で0.001MPaを越える圧力で水素中硫化水素のガス混合物に曝すことからなる方法が使用される。
【0036】
さらに本発明は、一般に触媒の全体重量に対して重量%でつぎの族よりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの金属を、つぎの含有量で含む、本発明による方法により得られる硫化触媒にも関する。
【0037】
すなわち、本発明による方法により得られる硫化触媒は、第IIIB族、第VB族および第VIB族の元素よりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの金属0.01〜40%、好ましくは0.01〜35%、より好ましくは0.01〜30%と、非晶質マトリックスおよび不完全結晶化マトリックスよりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの担体0.1〜99%、好ましくは1〜98%と、硫黄0.001〜30%、好ましくは0.01〜55%と、第VIII族の少なくとも1つの金属0〜30%、好ましくは0.01〜25%と、場合によっては、ゼオライト性または非ゼオライト性モレキュラーシーブ0〜90%、好ましくは0.1〜85%、より好ましくは0.1〜80%と、ホウ素、ケイ素およびリンよりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの元素0〜40%、好ましくは0.1〜30%、より好ましくは0.1〜20%と、第VIIA族よりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの元素0〜20%、好ましくは0.1〜15%、より好ましくは0.1〜10%とを含むものである。
【0038】
第VB族の元素は、バナジウム、ニオブおよびタンタルよりなる群の中から選ばれる。第IIIB族の金属は、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、アクチニウム、トリウムおよびウラニウムよりなる群の中から選ばれる。第VIII族の元素は、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金、好ましくは鉄、コバルトおよびニッケルよりなる群の中から選ばれる。第VIB族の元素は、クロム、モリブデンおよびタングステンよりなる群の中から選ばれる。
【0039】
ランタノイドおよびアクチノイドを含む第IIIB族、第VB族、第VIB族および第VIII族の元素からなる全体に含まれる原子番号を有する少なくとも1つの元素を含む化合物として、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、酸、ポリオキソメタレート、アルコキシド、オキサレート、アンモニウム塩、硝酸塩、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩、カルボキシレート、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、リン酸塩、水素化物およびチオセル、特にアンモニウムが使用されてよい。好ましくは酸化物、第VB族および第VIB族の元素からなる全体に含まれる原子番号を有する少なくとも1つの金属塩、ランタノイドおよびアクチノイドが使用される。
【0040】
炭素源は、当業者に公知のあらゆる形態、例えばグラファイト、石油のコークス、油のコークス、非晶質炭素、カーボンブラック、および植物化合物または動物化合物またはさらには炭化水素の部分燃焼により、または分解により、またはさらには脱水素化により得られる活性炭、異なる石油留分、植物性炭化水素、例えば植物油等の形態で現れる。炭素源は、一般に水素を含む。その特徴のうちの1つは、そのH/C原子比である。H/C比2未満、好ましくはH/C比1.7未満、より好ましくはH/C比1.4未満を有する炭素源が好ましくは使用される。
【0041】
好ましいリン源は、リン酸HPOである。しかしながら、さらにその塩およびそのエステル、例えばアルカリ・リン酸塩、リン酸アンモニウムも適する。リンは、例えばリン酸と、アンモニアのような窒素、第1および第2アミン、環式アミン、ピリジン族の化合物、キノレイン族の化合物およびピロール族の化合物を含む塩基性有機化合物との混合物形態で導入されてよい。
【0042】
多数のケイ素源が使用されてよい。従って、ヒドロゲル、エーロゲルまたは酸化ケイ素のコロイド懸濁液、沈澱酸化物、オルトシリケート・エチルSi(OEt)のようなエステルの加水分解から来る酸化物、シランおよびポリシラン、シロキサンおよびポリシロキサン、あるいはケイ酸ハロゲン化物、例えばフルオロケイ酸アンモニウム(NHSiFまたはフルオロケイ酸ナトリウムNaSiFを使用してよい。ケイ素は、例えばアルコール中の溶液状シリケート・エチルの含浸により添加されてよい。
【0043】
ホウ素源は、非晶質ホウ酸塩、例えば二ホウ酸アンモニウムまたは五ホウ酸アンモニウムであってよい。ホウ素は、例えばアルコール中のホウ酸溶液により導入されてよい。
【0044】
使用されることもある第VIIA族の元素源は、当業者に公知である。例えばフッ化アニオンは、フッ化水素酸またはその塩形態で導入されてよい。この塩は、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機化合物と共に生成される。有機化合物の場合、塩は、有利には有機化合物とフッ化水素酸との反応による反応混合物中に形成される。さらに水中にフッ化アニオンを放出しうる加水分解可能な化合物、例えばフルオロシリケート・アンモニウム(NHSiF、テトラフッ化ケイ素SiFまたはフルオロシリケート・ナトリウムNaSiFを使用することも可能である。フッ素は、例えばフッ化水素酸またはフッ化アンモニウムの水溶液の含浸により導入されてよい。
【0045】
塩化アニオンは、塩酸またはその塩形態で導入されてよい。この塩は、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機化合物と共に生成される。有機化合物の場合、塩は、有利には有機化合物と塩酸との反応による反応混合物中に形成される。
【0046】
通常非晶質または不完全結晶化無機細孔質マトリックスは、通常アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、または前述された酸化物のうちの少なくとも2つの酸化物の混合物よりなる群の中から選ばれる。アルミナ、例えばガンマ・アルミナを含む当業者に公知のあらゆる形態のマトリックスを使用するのが好ましい。
【0047】
さらに触媒は、結晶化アルミノシリケート型モレキュラーシーブあるいは合成または天然ゼオライト、例えばゼオライトY、ゼオライトX、ゼオライトL、ゼオライト・ベータ、モルデナイト、ゼオライト・オメガ、ゼオライトNU−10、ゼオライトTON、ゼオライトZSM−22およびゼオライトZSM−5の族よりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの化合物も含んでよい。
【0048】
本発明による方法の第1工程は、ランタノイドおよびアクチノイドを含む第IIIB族、第VB族、細孔質マトリックスおよび第VIB族からなる全体に含まれる原子番号を有する少なくとも1つの元素と、場合によっては第VIII族の少なくとも1つの元素と、場合によってはP、BおよびSiよりなる群の中から選ばれる元素源と、場合によっては第VIIA族のアニオン源とを含む1つまたは複数の化合物を含む触媒の前駆体を調製することからなる。この第1工程は、数回行なわれてよい。
【0049】
マトリックスは、予め成形されてよくかつ混合物中に導入される前に焼成されてよい。成形は、例えば押出し、ペレット化、油滴(オイルドロップ)方法、回転板造粒あるいは当業者に公知の他のあらゆる方法により実施されてよい。この場合、予め成形されたマトリックスは、通常温度少なくとも100℃、一般に約200〜1000℃で空気下に通常焼成される。
【0050】
マトリックスは、第VB族および第VIB族よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの金属または希土類金属の塩、あるいはP、BおよびSiよりなる群の中から選ばれる元素または第VIIA族のアニオンを含む塩により予め含浸されてよい。例えば、モリブデンの含浸は、溶液中にリン酸を添加することにより促進されてよい。このことにより、リンも導入して触媒活性を促進させるようにすることが可能になる。リンの他の化合物は、当業者に公知のように使用されてよい。
【0051】
マトリックスの含浸は、好ましくは当業者に公知の「乾式」と呼ばれる含浸方法により行なわれる。
【0052】
含浸は、最終触媒の構成要素全体を含む溶液による単一工程において行なわれてよい。
【0053】
ランタノイドおよびアクチノイドを含む第IIIB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族および第VIII族よりなる群の中から選ばれる元素、同じくP、BおよびSiよりなる群の中から選ばれる元素、並びに第VIIA族のアニオンよりなる群の中から選ばれる元素は、第VB族および第VIB族よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの金属または希土類金属の少なくとも1つの前駆体塩を含む溶液を用いて1つまたは複数のイオン交換操作により、選ばれたマトリックス上に導入されてよい。
【0054】
金属が、対応する前駆体塩のいくつかの含浸により導入される場合には、触媒の中間乾燥工程は、温度60〜250℃で行なわれねばならない。
【0055】
成分の全部または一部を含む粉体混合物は、例えば押出し、ペレット化、油滴(オイルドロップ)方法、回転板造粒あるいは当業者に公知の他のあらゆる方法により成形されてよい。
【0056】
本発明により得られる硫化触媒は、芳香族化合物、および/またはオレフィン系化合物、および/またはナフテン系化合物、および/またはパラフィン系化合物を含む炭化水素仕込原料の水素化、水素化脱窒、水素化脱酸素、水素化脱硫において触媒として使用される。前記仕込原料は、場合によっては金属、および/または窒素、および/または酸素、および/または硫黄を含む。これらの使用において、本発明により得られる触媒は、先行技術に比して改善された活性を示す。
【0057】
本方法において使用される仕込原料は、ガソリン、ガスオイル、減圧ガスオイル、脱アスファルト残渣または非脱アスファルト残渣、パラフィン油、(パラフィン)蝋およびパラフィン類である。これら仕込原料は、ヘテロ原子、例えば硫黄、酸素、窒素および金属を含むものである。反応温度は、一般に200℃を超え、多くの場合280〜480℃である。圧力は、0.1MPaを越え、一般に5MPaを越える。水素の再循環率は、仕込原料1リットル当たり最小限に水素80リットル、多くの場合水素200〜4000リットルである。毎時空間速度は、一般に0.1〜20h−1である。
【0058】
精油業者に重んじられる結果は、HDS、HDNおよび転換における活性である。一定の目的が、節約指向の現実と両立できる条件下に実施されねばならない。従って、精油業者は、温度、圧力および水素の再循環率を低減することに努めており、かつ毎時空間速度を最大限化することに努めるものである。活性は、温度の上昇により増加されうるが、これは、多くの場合触媒の安定性を犠牲にすることは公知である。安定性または寿命期間は、圧力または水素の再循環率の上昇を伴って改善されるが、このことは、方法の節約性を犠牲にして行なわれる。
【0059】
【実施例】
つぎの実施例は本発明を例証するが、何らその範囲を限定するものではない。
【0060】
実施例1:触媒の組成に含まれるアルミナ担体の調製
アルミナをベースとする担体を製造して、成形担体から後述される触媒を調製することを可能にするようにした。これを行なうために、極薄板状ベーマイトまたは商品名SB3でコンデァ・ケミー有限会社により市販されているアルミナ・ゲルから構成されるマトリックスを使用した。このゲルを、66%の硝酸(乾燥ゲル1グラム当たり酸7重量%)を含む水溶液と混合し、ついで15分間混練した。この混練の終了時に、得られたペーストを、直径1.3mmの円筒状開口部を有するダイスに通して通過させた。ついで押出し物を、120℃で一晩乾燥させ、ついで水7.5容積%を含む湿潤空気下に550℃で2時間焼成した。このようにして直径1.2mmの円筒状押出し物を得た。この押出し物は、比表面積243m/gと、細孔容積0.61cm/gと、10nmに集中される単一モードの細孔サイズ分布とを有した。X線回折によるマトリックスの分析により、このマトリックスが、専ら低い結晶度の立方型ガンマ・アルミナから構成されることが明らかになった。
【0061】
実施例2:Mo/アルミナ水素化処理触媒の調製
実施例1の押出アルミナ担体を、モリブデン塩を含む水溶液により乾式含浸した。モリブデン塩は、ヘプタモリブデン酸アンモニウムMo24(NH・4HOであった。水で飽和された雰囲気下に室温で熟成後に、含浸押出し物を、120℃で一晩乾燥し、ついで乾燥空気下に550℃で2時間焼成した。三酸化モリブデンの最終含有量は、14.5重量%であった。
【0062】
実施例3:CoMo/アルミナ水素化処理触媒の調製
実施例1の押出アルミナ担体を、モリブデン塩とコバルト塩とを含む水溶液により乾式含浸した。モリブデン塩は、ヘプタモリブデン酸アンモニウムMo24(NH・4HOであり、コバルト塩は、硝酸コバルトCo(NO・6HOであった。水で飽和された雰囲気下に室温での熟成後に、含浸押出し物を、120℃で一晩乾燥し、ついで乾燥空気下に550℃で2時間焼成した。三酸化モリブデンの最終含有量は、14.5重量%であった。酸化コバルトの最終含有量は、2.8重量%であった。こうして得られた触媒は、工業触媒の代表的なものであった。
【0063】
実施例4:Nb/アルミナ水素化処理触媒の調製
ニオブを、エタノール中五酸化ニオブ溶液Nb(OEt)の乾式含浸により実施例1の押出アルミナ担体上に添加した。乾式含浸後、押出し物を80℃で一晩乾燥した。得られたNb/アルミナ触媒を、五酸化二ニオブの最終含有量13.1重量%を用いて調製した。
【0064】
実施例5:CoNb/アルミナ水素化処理触媒の調製
コバルトを、硝酸コバルト溶液Co(NO・6HOの乾式含浸により実施例4のNb/アルミナ触媒上に添加して、酸化コバルトCoOの最終含有量2.9重量%を得るようにした。乾式含浸後、押出し物を80℃で一晩乾燥した。得られたCoNb/アルミナ触媒は、Nbの12.7重量%と、CoOの8重量%とを含んだ。
【0065】
実施例6:Ce/アルミナ水素化処理触媒の調製
セリウムを、硝酸セリウム溶液Ce(NO・xHOの乾式含浸により実施例1の押出アルミナ担体上に添加した。乾式含浸後、押出し物を80℃で一晩乾燥し、ついで乾燥空気下に350℃で2時間焼成した。得られたCe/アルミナ触媒を、CeOの最終含有量5.1重量%を用いて調製した。
【0066】
実施例7:CoCe/アルミナ水素化処理触媒の調製
実施例6の触媒を、硝酸コバルトの水溶液Co(NO・6HOにより乾式含浸した。水で飽和された雰囲気下に室温で熟成後に、含浸押出し物を、80℃で一晩乾燥し、ついで乾燥空気下に350℃で2時間焼成した。酸化セリウムの最終含有量は、14.5重量%であった。酸化コバルトCoOの最終含有量は、2.0重量%であった。
【0067】
実施例8:触媒の還元R1(本発明に合致する)
新たに乾燥された触媒50gを、常圧で窒素流により掃気した触媒の固定床反応器に導入した。温度を300℃に上昇させ、ついで一酸化炭素1%を窒素中に注入した。触媒を温度400℃で加熱し、これを10時間維持した。固体50gについては、毎時2リットルのガス混合物を通過させた。R1と命名される方法により還元された触媒を得た。従って、実施例2〜7の各触媒を、R1方法により還元した。
【0068】
実施例9:触媒の還元R2(本発明に合致する)
新たに乾燥された触媒50gを、常圧で窒素流により掃気した触媒の固定床反応器に導入した。温度を300℃に上昇させ、ついで一酸化窒素NOの1%を窒素中に注入し、温度を400℃に上昇させて、これを10時間維持した。固体50gについては、毎時2リットルのガス混合物を通過させた。R2と命名される方法により還元された触媒を得た。従って、実施例2〜7の各触媒を、R2方法により還元した。
【0069】
実施例10:触媒の硫化
新たに乾燥された触媒またはR1方法により還元した触媒またはR2方法により還元した触媒50gを、常圧で水素中HSの15容積%を含むガス流により掃気した触媒の固定床反応器に導入した。固体50gについては、毎時2リットルのガス混合物を通過させた。触媒を、温度400℃で10時間加熱した。
【0070】
新たに乾燥された触媒の硫化により、HSにより硫化された触媒を得ることが可能になった。その硫化率および炭素含有量を、表1に記載した。この表において、H/HS混合物による硫化方法により、CoMo/アルミナ触媒の十分な硫化率を得ることが可能になったが、その代わりに、第VB族の金属であるニオブ、あるいはランタノイド族の金属であるセリウムを含む触媒の硫化率が、非常に低いことが証明された。
【0071】
【表1】
Figure 0004482838
【0072】
R1方法により還元した触媒の硫化により、表2に示した硫化率と残留炭素含有量とを有する触媒を得ることが可能になった。この表において、R1方法による触媒の還元後におけるH/HS混合物による硫化方法により、CoMo/アルミナ触媒と、第VB族の金属であるニオブを含む触媒との非常に十分な硫化率を得ることが可能になった。ランタノイド族の金属であるセリウムの硫化率が、予備還元をしない硫化に比して著しく改善された。COの使用により、触媒上に少量の炭素の堆積が生じることに注目される。
【0073】
【表2】
Figure 0004482838
【0074】
R2方法により還元した触媒の硫化により、表3に示した硫化率と残留炭素含有量とを有する触媒を得ることが可能になった。この表において、R2方法による触媒の還元後におけるH/HS混合物による硫化方法により、CoMo/アルミナ触媒と、第VB族の金属であるニオブを含む触媒との非常に十分な硫化率を得ることが可能になった。ランタノイド族の金属であるセリウムの硫化率が、予備還元をしない硫化に比して著しく改善された。
【0075】
【表3】
Figure 0004482838
【0076】
実施例11:ガスオイルのHDSにおける触媒のテスト
実施例8の方法に従って硫化した触媒を、ガスオイルの水素化脱硫テストにおいて比較した。
【0077】
ガスオイル仕込原料の主な特徴を、つぎの表に記載した。
【0078】
15℃での密度 : 0.856
20℃での屈折指数 : 1.4564
50℃での粘度 : 3.72cSt
硫黄 : 1.57重量%
シミュレーション蒸留
初留点 : 153℃
5% : 222℃
50% : 315℃
95% : 415℃
終留点 : 448℃
ガスオイルのHDSテストを、つぎの操作条件下に行なった。
【0079】
全体圧力 : 3MPa
触媒容積 : 40cm
温度 : 340℃
水素流量 : 20リットル/時
仕込原料流量 : 80cm/時
これらのテストについて、実施例8の方法に従って既に硫化され、故に予め還元された触媒を、接触反応器内に充填し、ついで温度150℃で仕込原料により湿らせた。ついで装置の温度を、340℃まで上昇させた。
【0080】
参照テストを、触媒テスト装置内に実施例2のCoMo触媒を充填することにより、また上記で定義されたテスト仕込原料を通過させながら硫化工程を行なうことにより実施した。テスト仕込原料には、350℃である温度に関すること以外は上記表のテスト条件下にジメチル二硫化物(DMDS)2重量%が添加されている。前記温度を10時間維持した。この工程後、温度をテスト温度すなわち340℃に低下させた。純粋ガスオイル仕込原料を注入した。この硫化方法を、A−DMDSと命名した。
【0081】
テストされた触媒の触媒性能を、つぎの表4に記載した。これら性能を、1.5程度の活性度で表示した。活性度と転換率(HDS%)とを関係付ける式は、つぎの通りであった。
【0082】
活性度=[100/(100−HDS%)]0.5−1
表4において、Mo触媒およびCoMo触媒の活性度を比較するために、DMDSおよびA−DMDSにより硫化したMo触媒の活性度は1であると定めた。
【0083】
【表4】
Figure 0004482838
【0084】
表5において、Nb触媒の活性度を比較するために、DMDSおよびA−DMDSにより硫化した単一金属触媒Nb/アルミナの活性度は1であると定めた。
【0085】
【表5】
Figure 0004482838
【0086】
表6において、Ce触媒の活性度を比較するために、DMDSおよびA−DMDSにより硫化した単一金属触媒Ce/アルミナの活性度は1であると定めた。
【0087】
【表6】
Figure 0004482838
【0088】
表4、表5および表6において、H/HSガス混合物により硫化された触媒のHDSにおける性能が、参照の硫化方法であるガスオイルとDMDSとの混合物により硫化された触媒の性能よりも劣ることが証明された。
【0089】
/HSガス混合物による硫化に先立って一酸化炭素R1−HSまたは一酸化窒素R2−HSにより還元された触媒の試料が、還元されなかった触媒よりも活性であることに留意された。この明確な効果は、モリブデンをベースとする触媒の場合には弱かった。その代わりに、この効果は、第IIIB族あるいは第VB族の元素をベースとする触媒の場合には、より大きかった。この効果は、形成された硫化物相の優れた分散性、並びにコバルトと、硫化の開始からのコバルト、モリブデン、ニオブまたはセリウムの部分還元による硫化モリブデン、硫化ニオブまたは硫化セリウムとの優れた相互作用によるものであった。従って、本発明の硫化触媒の製造方法により、改善された触媒性能を有する硫化触媒を製造することが可能になった。
【0090】
【発明の効果】
本発明による触媒の硫化方法は、上述のように、ランタノイドおよびアクチノイドが含まれる第IIIB族、第VB族および第VIB族よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの元素を含む担持触媒の硫化方法において、前記触媒を硫化する前に水素以外の一酸化炭素、および一酸化窒素の少なくとも1つの還元ガスにより予め前記触媒を還元することを特徴とするもので、本発明の触媒の硫化方法によれば、優れた硫化と、硫化物相の優れた分散とを得ることが可能になり、水素化精製および水素化転換の触媒活性が大幅に改善されるという効果を奏する。

Claims (13)

  1. ランタノイドおよびアクチノイドが含まれる第IIIB族、第VB族および第VIB族よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの元素を含む担持触媒の硫化方法において、前記触媒を硫化する前に水素以外の一酸化炭素、および一酸化窒素の少なくとも1つの還元ガスにより予め前記触媒を還元することを特徴とする、担持触媒の硫化方法。
  2. さらに触媒が、第VIII族の少なくとも1つの金属を含む、請求項1記載の方法。
  3. 触媒が、非晶質または不完全結晶化酸化物型の少なくとも1つの細孔質マトリックスを含む、請求項1または2記載の方法。
  4. さらに少なくとも1つのゼオライト性または非ゼオライト性モレキュラーシーブを含む、請求項1〜3のうちのいずれか1項記載の方法。
  5. さらに触媒が、P、BおよびSiよりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの元素を含む、請求項1〜4のうちのいずれか1項記載の方法。
  6. さらに触媒が、第VIIA族の少なくとも1つのアニオン源を含む、請求項1〜5のうちのいずれか1項記載の方法。
  7. ランタノイドおよびアクチノイドが含まれる第IIIB族および第VB族の元素であって、担持酸化物形態にあるものを硫化する、請求項1〜6のうちのいずれか1項記載の方法。
  8. (a) ランタノイドおよびアクチノイドが含まれる第IIIB族、第VB族および第VIB族よりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの元素と、場合によっては第VIII族の元素と、場合によってはゼオライト性または非ゼオライト性モレキュラーシーブに組み合わされる、非晶質または不完全結晶化酸化物型の少なくとも1つの細孔質マトリックスと、場合によってはP、BおよびSiよりなる群の中から選ばれる少なくとも1つの元素と、場合によっては第VIIA族の少なくとも1つのアニオンとを含む触媒を調製すること、
    (b) 反応器内で40℃を越える加熱温度で0.01MPaを越える圧力下に触媒を、水素以外の還元ガスまたは還元ガス混合物に曝すことにより、工程(a)で調製される触媒の還元処理を行なうこと、および
    (c) 工程(b)で得られる還元触媒を、温度40〜1000℃で0.01MPaを越える圧力下に水素中硫化水素のガス混合物に曝すことにより、触媒の硫化を行なう、請求項1〜7のうちのいずれか1項記載の方法。
  9. 触媒を、硫黄を含む炭化水素仕込原料に曝すことにより、触媒の硫化を行なう、請求項1〜8のうちのいずれか1項記載の方法。
  10. 触媒の硫化が、前記触媒の使用に対して現場外で行なわれる、請求項1〜8のうちのいずれか1項記載の方法。
  11. 反応帯域が、還元反応および硫化反応により生成されるガスの自生圧力を用いる閉鎖反応器である、請求項1〜10のうちのいずれか1項記載の方法。
  12. 反応帯域が、開蓋反応器である、請求項1〜10のうちのいずれか1項記載の方法。
  13. 予めマトリックスを、第VB族および第VIB族よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの金属または希土類金属の塩による、場合によってはP、BおよびSiよりなる群の中から選ばれる元素を含む塩による、場合によっては第VIIA族のアニオンによる1つまたは複数の工程において含浸する、また触媒の中間乾燥工程を、温度60〜250℃で各含浸間に行なう、請求項1〜11のうちのいずれか1項記載の方法。
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