JP4482742B2 - アクリル系重合体、アクリル系硬化性組成物及び硬化体、並びにこれらの用途 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、分子末端に水酸基を有するアクリル系重合体、前記アクリル系重合体と分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物からなるアクリル系硬化性組成物、前記アクリル系重合体の水酸基の少なくとも一部がイソシアネート化合物により変性されたアクリル系硬化組成物、及び、これらの組成物の硬化体、並びに、これらの用途に関するものである。
【0002】
【発明の技術的背景】
(メタ)アクリル酸、そのエステル類及びスチレンのような重合性二重結合を有する重合性不飽和化合物は、ラジカル重合開始剤の存在下に乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法および塊状重合法によって重合可能であり、こうして得られる重合物は、成形体、シート又はフィルム成型品、塗料、繊維など種々の用途に利用されているが、得られる重合体の反応性基の導入位置や官能基量が物性を左右することが多い。
【0003】
これら重合法においては、ラジカル重合開始剤を用いて重合を行い、通常は、重合温度、ラジカル重合開始剤量、ラジカル連鎖移動剤としての有機溶剤やメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動係数の高いモノマーあるいはダイマーなどの使用量あるいは種類を適宜調整することにより、重合速度、発熱制御等の重合反応の制御、および、分子量や分子量分布等のポリマー分子設計を行っている。
【0004】
このため得られる重合体の末端部は、ラジカル重合開始剤として用いた化合物、若しくは、連鎖移動剤として用いた化合物、連鎖移動した際の溶剤化合物などの残基が結合しているか、または、不均化停止した際の不飽和基を有すこととなる。つまり、得られる重合体は、末端基までは充分に制御できておらず、種々の末端基を有す重合体の混合物となってしまう。そこで、重合体の末端を制御する為の理想的な重合開始剤として、重合開始能力が高く、更には重合の連鎖移動停止などの能力も高く、重合反応において効率の良い開始剤が求められている。
【0005】
また、重合方法において、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法は、反応溶媒や分散媒を用いて重合させるため、重合温度を制御しやすいが、得られる重合体を、反応溶媒又は分散媒から分離するための沈殿、濾過、洗浄、乾燥などの操作が必要であり、工程が煩雑となる。
【0006】
こうした中で塊状重合法は、溶媒及び分散媒を使用しないことから有機溶剤、水、分散剤、乳化剤などを用いる必要がなく、重合に関与する有機溶剤のような不純物を含まないので、反応系が簡潔となるばかりでなく、得られる重合体中に乳化剤や分散剤などの不純物の混入がなく、さらには目的の重合体を得るために、溶媒又は分散媒の除去も不要である。
【0007】
しかしながら、一般に、塊状重合法では、重合反応速度が著しく速く、事実上この塊状重合法を制御することはきわめて困難である。また、重合速度が制御できずに高温度で生成した重合体は、不均化停止により分子の末端基が不安定な状態となったり、低分子量体化したり、逆に先に生成していた重合体からの水素引き抜きなどにより、重合体の分岐化やゲル化が起こりやすい。このため重合体の分子量、分子量分布などの分子設計が困難になることはもとより、重合体の分岐化や不均化停止末端などの生成などにより、明確な分子構造の設計が困難となる。さらに、ゲル化物が急激にかつ大量に生成することがあり、最悪の場合、反応物の温度上昇を抑止できなくなり爆発の危険すらある。
【0008】
こうした中でも、例えば、スチレン、メタクリル酸メチルは、比較的重合速度が遅いという特性を有していることから、塊状重合によっても反応制御が可能であり、古くからその制御法は検討がなされている。そして、こうしたスチレン、メタクリル酸メチル等の塊状重合において、分子量、分子量分布を制御するために、メルカプタンが使用されることがあるが、この場合、使用されるメルカプタンの作用は、重合反応における連鎖移動剤としてのみ作用しており、重合開始においては、重合開始剤の添加もしくは、高温での熱開始重合を利用している。このため、これらの反応で得られる重合体には、重合開始剤由来の化合物が重合体末端に結合しているか、または、熱開始重合の場合には重合体単量体の過酸化物由来の化合物が末端に結合した重合体が含まれるようになり、末端に結合してる化合物の厳密な制御ができていない。また、こうしたメルカプタンを用いた塊状重合反応では、重合中におけるメルカプタン消費速度と、開始剤の消費速度が等速に成らず、重合中にメルカプタンが消費され尽くしても開始剤が反応系に残存している為に、均一に反応を制御することが困難であることが多く、また、塊状重合に供されるモノマーにも制限がある。
【0009】
このような理由から、充分に末端を制御した重合体を得るための重合方法や重合触媒や重合開始剤が、必要とされている。
【0010】
ところで、重合反応は使用するモノマーによって触媒が異なり、例えばエチレン等の重合触媒としてチタノセンのようなメタロセン化合物が用いられているが、このメタロセン化合物は、光重合において増感剤と共に使用することを除けば、このメタロセン化合物はα-オレフィン以外のモノマーの重合触媒として使用することはほとんど知られていない。特開平9-5996号公報には、付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個有する化合物並びに光重合開始系としてチタノセン化合物および該チタノセン化合物を増感し得る増感剤とを含む光重合組成物において、該組成物がさらに、複素環式チオール化合物を含有するものである光重合性組成物の発明が開示されている。この公報に開示されている発明では、チタノセン化合物は光重合触媒として使用されているのであり、チタノセン化合物を塊状重合の触媒として使用することに関する記載はない。また、この公報に記載されている複素環式チオール化合物は、可視光増感剤である。
【0011】
一般に、チタノセン化合物のようなメタロセン化合物において、硫黄含有化合物は、メタロセン化合物の触媒作用を低減させる化合物であり、上記のように可視光増感剤のような特定の作用効果を示す化合物として硫黄含有化合物を使用することは触媒としてのメタロセン化合物の使用に際しては極めて例外的な使用方法である。即ち、一般には硫黄含有化合物は、触媒としてのメタロセン化合物に対しては触媒毒となる化合物であり、従って、硫黄化合物を、メタロセン化合物を触媒とする反応系に添加されることは好ましくないとされている。
【0012】
【発明の目的】
本発明は、分子の少なくとも1つの末端にイソシアネート基に対して活性を示す水酸基が導入されたアクリル系重合体、及び、このアクリル系重合体の末端に存在する水酸基に対して反応性の高いイソシアネート基を複数個有する化合物とからなり、好適には有機錫系触媒の存在下に架橋構造を形成して硬化させることが可能な硬化性組成物を提供することを目的としている。
【0013】
また、本発明は、上記アクリル系重合体の分子末端に存在する水酸基とイソシアネート化合物とが結合して、水分を吸収して硬化可能な1液型の硬化組成物を提供することを目的としている。
【0014】
さらに、本発明は上記の硬化性組成物及び/又は硬化組成物が完全硬化した硬化体を提供することを目的としている。さらにまた、本発明は、こうしたアクリル系重合体、硬化性組成物あるいは硬化組成物の用途、特に、耐水性、耐光性、柔軟性等の特性を要求される用途を提供することを目的としている。
【0015】
【発明の概要】
本発明のアクリル系重合体[A]は、次式[I]で表されるメタロセン化合物及び、分子内に少なくとも1つの水酸基を有するチオール類の存在下に、(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系単量体を重合してなり、少なくとも1つの末端に該チオール類のメルカプト基から水素原子が脱離した残基が結合し、かつ、次式[I]で表されるメタロセン化合物、次式[I]で表されるメタロセン化合物と水酸基を有するチオール類、重合性不飽和化合物およびこれらの誘導体とが結合した化合物、および次式[I]で表されるメタロセン化合物が分解した金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物または金属を含有することを特徴としている。【化4】
但し、上記式[I]において、Mは、周期表4A族、4B族、5A族、5B族の金属、クロム、ルテニウム及びパラジウムよりなる群から選ばれる金属であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有することもある脂肪族炭化水素基、置換基を有することもある脂環式炭化水素基、置換基を有することもある芳香族炭化水素基および置換基を有することもあるケイ素含有基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基、若しくは、水素原子または単結合のいずれかであり、さらに、R1およびR2が共同して上記式[I]で表される化合物中の2個の5員環を結合していてもよく、また、複数の隣接するR1またはR2は、共同して環状構造を形成していてもよく、aおよびbは、それぞれ独立に、1〜5の整数であり、Xは水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されていることもある炭化水素基またはハロゲン原子であり、nは0または金属Mの価数−2の整数である。
【0016】
本発明のアクリル系硬化性組成物は、前記アクリル系重合体[A]と、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]を含有することを特徴としている。
【0017】
本発明のアクリル系硬化組成物は、前記アクリル系重合体[A]の水酸基の少なくとも一部が、前記イソシアネート化合物[B]のイソシアネート基の少なくとも一部と結合して、−NH−COO−基が形成している。
【0018】
本発明のアクリル系硬化体は、前記のアクリル系硬化性組成物、及び/又は、前記のアクリル系硬化組成物を、水の存在下または不存在下に分子間縮合反応によって、架橋構造を形成させることを特徴としている。
【0019】
本発明の塗料、接着剤又は粘着剤は、前記のアクリル系重合体、アクリル系硬化性組成物、アクリル系硬化組成物及び/又はアクリル系硬化体を主成分として含有することを特徴としている。
【0020】
【発明の具体的説明】
本発明のアクリル系重合体、アクリル系硬化性組成物、アクリル系硬化組成物及びアクリル系硬化体並びにこれらの用途について具体的に説明する。なお、本発明において、「重合体」なる語は、特に限定しない限り、単独重合体および共重合体のいずれをも包含するものとする。
【0021】
本発明のアクリル系硬化性組成物及びアクリル系硬化組成物に用いるアクリル系重合体[A]は、触媒として、次式[I]で表されるメタロセン化合物及び分子内に少なくとも1つの水酸基を有するチオール類を使用し、この触媒の存在下に、重合性不飽和結合を有するアクリル系単量体を重合して得られる重合体である。そして、このアクリル系重合体[A]には、少なくとも1つの末端に触媒として使用した水酸基を有するチオール類のメルカプト基から水素原子が脱離した残基が結合している。
【0022】
本発明で重合触媒として使用される有機金属化合物は、次式[I]で表すことができる。
【化5】
但し、上記式[I]において、Mは、周期表4A族、4B族、5A族、5B族の金属、クロム、ルテニウム及びパラジウムよりなる群から選ばれる金属である。具体的にはMは、チタン、ジルコニウム、クロム、ルテニウム、バナジウム、パラジウム、錫などである。また、式[I]において、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有することもある脂肪族炭化水素基、置換基を有することもある脂環式炭化水素基、置換基を有することもある芳香族炭化水素基、および置換基を有することもあるケイ素含有基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基、水素原子または単結合のいずれかである。さらに、R1およびR2が共同して該2個の5員環を結合していてもよく、また、複数の隣接するR1またはR2は、共同して環状構造を形成していてもよい。また、式(1)において、aおよびbは、それぞれ独立に、1〜5の整数であり、Xは塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子または水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されていることもある炭化水素基であり、nは0または金属Mの価数−2の整数である。
【0023】
このような有機金属化合物の例としては、ジシクロペンタジエン-Ti-ジクロライド、ジシクロペンタジエン-Ti-ビスフェニル、ジシクロペンタジエン-Ti-ビス-2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン-Ti-ビス-2,3,5,6-テトラフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン-Ti-ビス-2,5,6-トリフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン-Ti-ビス-2,6-ジフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン-Ti-ビス-2,4-ジフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル-Ti-ビス-2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル-Ti-ビス-2,3,5,6-テトラフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル-Ti-ビス-2,6-ジフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル-Ti-ビス-2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)-フェニ-1-イルのようなチタノセン化合物;
ジシクロペンタジエニル-Zr-ジクロライド、ジシクロペンタジエン-Zr-ビスフェニル、ジシクロペンタジエン-Zr-ビス-2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン-Zr-ビス-2,3,5,6-テトラフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン-Zr-ビス-2,5,6-トリフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン-Zr-ビス-2,6-ジフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジエン-Zr-ビス-2,4-ジフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル-Zr-ビス-2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル-Zr-ビス-2,3,5,6-テトラフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル-Zr-ビス-2,6-ジフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル-Zr-ビス-2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)-フェニ-1-イル)のようなジルコノセン化合物;
ジシクロペンタジエニル-V-クロライド、ビスメチルシクロペンタジエニル-V-クロライド、ビスペンタメチルシクロペンタジエニル-V-クロライド、
ジシクロペンタジエニル-Ru-クロライド、
ジシクロペンタジエニル-Cr-クロライドなどを挙げることができる。これらの有機金属化合物は単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0024】
この有機金属化合物は、通常の触媒量で使用することができ、具体的には、重合させようとする重合性不飽和化合物100重量部に対して、通常は1〜0.001重量部、好ましくは0.01〜0.005重量部の量で使用される。
【0025】
また、本発明で上記有機金属と共に使用されるチオール類は、分子内に少なくとも1つの水酸基を有するチオール類であり、具体的には、2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロパノール、4-メルカプトブタノール等の1級水酸基を1つ有するチオール;1-メルカプト-2-ブタノール、2-メルカプト-3-ブタノール等の2級水酸基を1つ有するチオール;1-メルカプト-2,3-プロパンジオール、1-メルカプト-2,3-ブタンジオール、2-メルカプト-3,4-ブタンジオール、1-メルカプト-3,4,4'-ブタントリオール、2-メルカプト-3,4,4'-ブタントリオール等1級水酸基と2級水酸基を有するチオール;2-メルカプト-1-ナフトール、1-メルカプト-2-ナフトール、p-メルカプトフェノール、m-メルカプトフェノール、8-メルカプトヒポキサンチン等の芳香族チオール;等が挙げられる。
【0026】
このような水酸基を有するチオール類は、反応に際して主として有機金属化合物によって水素原子が引き抜かれて、・S−Y(Yはチオール類のメルカプト基を除く有機基)ラジカルが生じ、このラジカルが形成されるポリマーの少なくとも1つの末端に導入されるものと考えられる。そして、このようにしてポリマーの末端に導入された水酸基は、この反応によって活性を失うことなく、導入された水酸基の有する活性がそのまま保持される。
【0027】
このような水酸基を有するチオール類のメルカプト基から水素原子が脱離することにより、・S−Y(Yはチオール類のメルカプト基を除く有機基)が生じ、このラジカルが重合性不飽和結合を有するアクリル系単量体に結合して活性化することにより重合が開始する。そして、本発明で使用される有機金属化合物は、この水酸基を有するチオール類のメルカプト基から水素原子を引き抜き、水酸基を有するチオール類を活性化するために使用される。従って、水酸基を有するチオール類を単独で使用したのでは、重合率が著しく低い。そして、有機金属化合物は、上述のように主として水酸基を有するチオール類を活性化するために使用され、通常は、用いたのと同一の構造の有機金属化合物、即ち、前記式[I]で表される化合物として存在するが、その一部は、水酸基を有するチオール類、重合性不飽和化合物およびこれらの誘導体と結合していることもあり、また、反応の進行と共に、この有機金属化合物が分解して金属が反応系に含有されることもある。
【0028】
上記水酸基を有するチオール類の使用量は得ようとする重合体の特性を考慮して適宜設定することができる。即ち、反応系における水酸基を有するチオール濃度が増大すると単位時間あたりの重合率が高くなり、また、到達重合率も高くなる。この際、有機金属化合物の量が多くなると単位時間あたりの重合率が高くなるが、到達重合率には大きな影響を及ぼさない。また、有機金属化合物の使用量は、得られる重合体の分子量に対してほとんど影響を与えないが、この有機金属化合物を使用しないと、反応は有効には進行しない。さらに、チオール類の使用量を多くすると重合速度が高くなる。こうした傾向から、本発明の触媒において、有機金属化合物が反応全体において活性化触媒的に作用し、チオール類は、重合開始作用がある(重合開始種的に作用する)と考えられる。このように本発明の触媒において、水酸基を有するチオール類の使用量は、分子量、重合率の律速となっていると考えられる。
【0029】
従って、水酸基を有するチオール類の使用量は、得ようとする重合体の分子量、重合速度等を考慮して適宜設定することができるが、反応を円滑に進め、かつ反応を暴走させないためには、有機金属化合物と水酸基を有するチオール類とは通常は100:1〜1:50,000の範囲内のモル比、好ましくは10:1〜1:10,000のモル比で使用される。なお、この水酸基を有するチオール類は、反応開始時に全量添加することもできるし、水酸基を有するチオール類を最初に加えて、所望の時間反応させた後、さらに水酸基を有するチオール類を追加添加することもできるし、水酸基を有するチオール類と重合性不飽和化合物の両者を追加添加することもできる。このように水酸基を有するチオール類の追加添加、あるいは、水酸基を有するチオール類と重合性不飽和化合物との追加添加により、重合率が向上する。
【0030】
本発明のアクリル系重合体は、前記特定の式[I]で表される有機金属化合物と前記特定のチオール類とを用いて重合性不飽和結合を有するアクリル系単量体を重合反応させることにより得られるものであるが、この特定のチオール類に加えて、本発明では、さらに、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、フェニルメルカプタン、β-メルカプトプロピオン酸などの水酸基を有さないチオールを併用することも可能である。
【0031】
さらに、本発明では、重合開始触媒としての前記有機金属化合物および前記水酸基を有するチオール類以外に、重合速度や重合度を調整することを目的として、ジスルフィド化合物、トリスルフィド化合物、テトラスルフィド化合物を使用することができる。このようなスルフィド化合物は、本発明の重合において、重合を失活させない程度に使用することができ、具体的には、重合させようとする重合性不飽和化合物100重量部に対して、通常は50〜0重量部、好ましくは20〜0.005重量部の量で使用される。
【0032】
本発明のアクリル系重合体[A]を形成する主鎖は、以下に記載するような重合性不飽和結合を有するアクリル系単量体を重合させることにより形成される。このようなアクリル系単量体の例としては、
(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩などの塩;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;
エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エスエル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エスエル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステル;
アクリロニトリル;メタクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;
(メタ)アクリル酸-2-クロロエチル、メタクリル酸-2-クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;
(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸-2-アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;
(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル誘導体;
(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル誘導体;
(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドのようなアミド基含有(メタ)アクリル酸エステル誘導体;
フッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;
等の(メタ)アクリロイル基を有する単量体が挙げられる。
【0033】
本発明のアクリル系重合体[A]は、前記アクリル系単量体以外のビニル系単量体を共重合させても良い。アクリル系単量体以外のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸を除く、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸、これらの塩並びにこれらの(部分)エステル化合物および酸無水物;
2-クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニル単量体;
エチルデンノルボルネン、イソプレン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、クロロプレン、ブタジエン、メチルブタジエン、シクロブタジエン、メチルブタジエンのようなジエン化合物;
2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;
アリルグリシジルエーテルのようなアリル基含有単量体;
ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等(例えば、フッ素系モノマー、シリコン含有モノマー、マクロモノマー、スチレン、シリコン等);
並びに
酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、を例示することができる。
【0034】
本発明のアクリル系重合体[A]は、前記有機金属化合物と前記水酸基を有するチオール類とからなる重合用触媒の存在下に、前記アクリル系単量体及び/又はアクリル系単量体以外のビニル系単量体を、各種重合法によって得られる重合体であり、少なくとも1つの分子末端に水酸基を有するチオール類のメルカプト基から水素原子が脱離した−S−R−OH基が結合している。
【0035】
本発明のアクリル系重合体は、前記アクリル系単量体を主成分として重合させることにより、主鎖中に次式[II]で表される繰り返し単位が形成される。
【化6】
但し、上記式[II]において、R3は水素原子またはメチル基を表し、R4は、水素原子、アルカリ金属原子、炭素数1〜22の炭化水素基(該炭化水素基は直鎖状であっても側鎖を有していてもよく、また、該炭化水素基あるいは該炭化水素基の側鎖を形成する基中の水素原子の少なくとも一部が、塩素原子、フッ素原子、1級のアミノ基、2級のアミノ基、3級のアミノ基、4級のアミン塩類基、アミド基、イソシアネート基、アルキレンオキサイド基、ヒドロキシシリル基、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、クロロシリル基、ブロモシリル基およびグリシジル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の極性基、または、反応性官能基で置換されていてもよく、また該炭化水素基は二重結合を有していてもよく、さらに該炭化水素基は、環状構造を有していてもよい)である。即ち、このR4の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基を挙げることができる。この基R4を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子、スルホン酸基、グリシジル基等で置換されていてもよい。
【0036】
本発明のアクリル系重合体は、前記有機金属化合物と前記水酸基を有するチオール類の存在下に、前記アクリル系重合体を主成分とする単量体を(共)重合させることにより得られる。その重合反応は、溶媒、分散媒の有無に拘わらず反応を行うことができるが、非水系の重合、特に塊状重合で行うことが好ましい。この重合反応は、通常は、不活性ガス雰囲気中で行われ、通常のラジカル重合法で行われる条件を使用することができる。従って、この重合反応系には、酸素のような活性ガスは存在しない。ここで使用される不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスおよび炭酸ガス等を挙げることができる。
【0037】
この重合において、前記の式[I]で表される有機金属化合物と前記分子内に少なくとも1つの水酸基を有するチオール類とからなる重合用触媒は、通常の触媒量で使用することができるが、上記重合性不飽和結合を有するアクリル系単量体の不飽和基1モルに対し、式[I]で表される有機金属化合物は通常は0.0000001〜0.0001モル、好ましくは、水酸基を有するチオール類のモル数に合わせ、有機金属化合物と水酸基を有するチオール類とのモル比が10:1〜1:10,000になるように使用する。水酸基を有するチオール類は、上記アクリル系重合体の不飽和基1モルに対して、通常は0.00001〜0.7モル、好ましくは0.0001〜0.5モルの範囲内で使用される。
【0038】
こうした重合反応は、重合性不飽和化合物の種類によって、加熱あるいは加温下に行うこともできるし、冷却しながら行うこともできるが、この重合反応温度は0〜150℃の範囲内に設定することが好ましく、さらに25〜120℃の範囲内に設定することが特に好ましい。重合反応温度を上記範囲内に設定することにより、反応を暴走させることなく安定に進行させることができる。使用する重合性不飽和化合物の不飽和基の活性にもよるが、比較的重合性の高いアクリル酸エステル系の単量体を用いた場合でも、反応温度を0℃以下とした場合、式[I]で表される有機金属化合物および水酸基を有するチオール類の触媒としての活性が低くなり、充分な重合率を達成するために必要とする時間が長くなり、効率が悪い。さらに、スチレンのように重合活性が低い化合物を相当量用いた場合でも、25℃以上の条件であれば、充分な重合率を達成することができる。
【0039】
また、反応温度を150℃以上とした場合は重合反応中に著しい発熱による反応系の温度上昇を引き起こす危険性が生ずる。重合温度を120℃以下と設定することにより反応温度を制御し、反応の円滑な進行を維持することができる。
【0040】
本発明の重合において、反応時間は、重合率、分子量等を考慮して適宜設定することができるが、例えば上記のような条件では反応時間は、通常は2〜12時間、好ましくは2〜8時間の範囲内に設定することが好ましい。
【0041】
この重合反応は、反応物の温度を下げ、さらに好ましくはベンゾキノンなどの重合反応停止剤を添加することにより停止させることができる。上記のように重合を行うことにより、通常は40%以上、好ましくは60%以上の重合率の重合体が得られる。
【0042】
また、得られた重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)は、通常は500〜1,000,000、好ましくは500〜200,000の範囲内にあり、数平均分子量(Mn)は、通常は500〜1,000,000、好ましくは500〜100,000の範囲内にある。さらに、分散指数(=重量平均分子量/数平均分子量)は、通常は1.02〜9.0、好ましくは1.2〜3.0の範囲内にある。上記のような平均分子量を有する重合体は、常温で流動性を有しており、取り扱い上好ましい。
【0043】
また、本発明のアクリル系重合体[A]について測定したガラス転移温度(Tg)は、通常は−90〜180℃、好ましくは−70〜20℃の範囲内にある。このようにガラス転移温度が低い樹脂は、分子量が高くても充分な常温流動性を有しているものが多い。
【0044】
本発明のアクリル系重合体中には、特に脱灰工程を設けない場合には、有機金属化合物が混在している。また、得られる重合体の分子の末端の少なくとも一部には、用いたチオール類から誘導される硫黄含有基が結合している。即ち、上記のような触媒を用いた重合では、重合開始種として、水酸基を有するチオール類を用いているが、通常これら水酸基を有するチオール類は単独では重合開始種としての活性を有さないか極めて低い。しかし、式[I]で表される有機金属化合物を用いた場合、水酸基を有するチオール化合物から誘導され得る水酸基を有するメルカプト基が、有機金属触媒により重合開始可能な活性種となり、モノマーに対し開始種となり得る。この為、この反応においてモノマー量に対する水酸基を有するチオール類の量が増大することにより、単位時間当たりの重合率は向上する。そして、得られる重合体の重合開始末端には、用いた水酸基を有するチオール類から誘導される硫黄含有基が結合することとなる。但し、ここで用いた水酸基を有するチオール類は、重合開始種として作用する以外に、連鎖移動剤としても作用しており、水酸基を有するチオール類の量により、分子量(重合度)および重合率が大きく左右される。これらの現象から推察するに、本反応での重合の進行および、停止は、ラジカル重合であると推察できる。また、連鎖移動により水素引き抜きをされた水酸基を有するチオール類の有するチオラジカル(・S)は、再び、重合開始種として、モノマーを攻撃する。この為、本重合法にて得られるポリマーは、水酸基を有するチオール類の使用量に拘わらず、生成した重合体の末端に、用いた水酸基を有するチオール類から誘導される硫黄含有基が結合することとなる。
【0045】
この重合反応系は、アルコールなどの極性有機溶媒や、水などの分散媒中においても、溶液重合や塊状重合で行った場合と同様に重合ができることから、重合における反応はラジカル反応が支配的と考えられる。その為、得られる重合体の反応停止末端は、水酸基を有するチオール類による連鎖移動による水素、または、ラジカル化したチオラジカルを有すチオール類および成長ポリマーラジカルとのラジカルカップリングによる水酸基を有するチオール類から誘導される硫黄含有基であると考えられる。
【0046】
得られる重合体中には、有機金属化合物が、そのままの形で、あるいは他の有機基と結合して、さらには金属として残留する。また、水酸基を有するチオール類は、直接重合体の生成反応に寄与し、自らが分解しながら反応が進行することから、水酸基を有するチオール類から誘導される末端基が、重合体末端に導入される。このように末端に結合している水酸基を有するチオール類から誘導される基中の水酸基の活性は上記重合によって損なわれることはなく、調製された重合体においてもその活性は保持される。
【0047】
前記の推定および反応進行は、本発明の反応における種々の現象から本発明者が最も合理的に推定できると考えているものであり、本発明がこれによって限定されるものではないことは勿論である。
【0048】
本発明のアクリル系重合体[A]の末端に導入されたチオール類から水素原子が脱離した残基中の水酸基は、イソシアネート基と良好な反応性を有する。
【0049】
本発明のアクリル系硬化性組成物は、前記式[I]で表されるメタロセン化合物および分子内に少なくとも1つの水酸基を有するチオール類の存在下に、重合性不飽和結合を有するアクリル系単量体を重合させた重合体であって、少なくとも1つの末端にチオール類から水素原子が脱離した残基中の水酸基が結合しているアクリル系重合体[A]と、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]とを含むことを特徴としている。
【0050】
ここで使用される分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]は、具体的にはポリイソシアネート化合物であり、このようなポリイソシアネート化合物の例としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、クロルフェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、ジイソシアニルジフェニルメタン、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらには公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート等を挙げることができる。特に本発明では、このポリイソシアネート化合物として、イソシアネート基を2〜3個有する化合物を使用することが好ましい。
【0051】
このポリイソシアネート化合物は、本発明のアクリル系重合体[A]中に存在する水酸基100モルに対して、イソシアネート基が通常は10〜400モル、好ましくは50〜300モルとなるような量で使用される。このようにアクリル系共重合体[A]中に存在する水酸基の量よりもイソシアネート基の量が多少多くなるようにポリイソシアネート化合物を用いることにより、例えば空気中の水分等と反応するイソシアネート基があったとしても、アクリル系共重合体[A]中のすべての水酸基は、イソシアネート基と結合することができ、得られる硬化体にタックなどが生ずることがない。
【0052】
本発明の硬化性組成物は、上記のようにアクリル系重合体[A]と分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]であるポリイソシアネート化合物からなり、アクリル系重合体[A]に導入された水酸基と、イソシアネート基とが反応して、主としてアクリル系重合体[A]の分子間に架橋構造を形成することにより硬化するという特性を有する。
【0053】
このような水酸基とイソシアネート基との反応は、触媒が存在しなくとも進行することから、本発明の硬化性組成物では、アクリル系重合体[A]とイソシアネート化合物[B]とは、通常は、移送、保存等の際には接触しないように個別に包装され、使用前に混合して使用される。
【0054】
本発明の硬化性組成物は、アクリル系重合体[A]とイソシアネート化合物[B]とを混合することにより、水酸基とイソシアネート基との反応が進行するので、特に硬化触媒を用いることは必要ではないが、より確実にかつ迅速にアクリル系重合体[A]とイソシアネート化合物[B]とを反応させるために、硬化触媒を使用することが好ましい。
【0055】
ここで使用される硬化触媒の例としては、ジブチルラウリン酸錫のような有機錫化合物やテトラブトキシチタン等のアルコキシチタン化合物、トリアセトアセチルアルミ等の金属キレート化物、トリエチルアミン等のアミン化合物を挙げることができる。このような硬化触媒は、硬化時間の調整や触媒の活性度に合わせ適宜調整できる。またこのような硬化触媒は、アクリル系重合体[A]に配合することもできるし、イソシアネート化合物[B]に配合することもできるし、また、アクリル系重合体[A]およびイソシアネート化合物[B]とは別に包装して使用前にアクリル系重合体[A]とイソシアネート化合物[B]とを混合する際に同時に混合してもよい。
【0056】
本発明のアクリル系硬化組成物は、前記アクリル系重合体[A]と、イソシアネート化合物[B]が反応して得られる組成物であり、アクリル系重合体[A]の水酸基の少なくとも一部が、イソシアネート化合物[B]のイソシアネート基の少なくとも一部と結合して、−NH−COO−基が形成していることを特徴としたイソシアネート変性アクリル系重合体を含有している。
【0057】
このイソシアネート変性アクリル系重合体は、目的とする重合体の変性度合いに合わせ、原料となるアクリル系重合体[A]およびイソシアネート化合物[B]を同時に仕込み、反応させることによって得られる。すなわち、イソシアネート化合物[B]のイソシアネート基モル数に比べ、アクリル系重合体[A]の水酸基モル数が、充分多い場合、イソシアネート化合物により分子鎖延長された水酸基を有する重合体が得られる。また、逆にイソシアネート化合物[B]のイソシアネート基モル数が、アクリル系重合体[A]の水酸基モル数と同量又は多い場合、イソシアネート基を有する重合体、もしくは水酸基とNCO基を有する重合体が得られる。但し、このような場合は、変性の反応中に、ゲル化を起こす恐れがあるため、これらの反応において、好適には、過剰のイソシアネート化合物中に前記アクリル系重合体[A]を少量ずつ加えて、アクリル系重合体[A]中の1つの水酸基にポリイソシアネート化合物を1分子の割合で結合させ、反応を完結させるか、若しくはこの反応によりできた反応基としてイソシアネート基のみを有する重合体に、さらにアクリル系重合体[A]を添加して製造することができる。
【0058】
ここで使用されるポリイソシアネート化合物は、前記のアクリル系硬化性組成物において、アクリル系重合体[A]と共に用いられる分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]と同一である。
【0059】
このポリイソシアネート化合物を、イソシアネート基と反応性を有しない有機溶媒に溶解し、このポリイソシアネート化合物の有機溶媒溶液に、前記のアクリル系重合体[A]を少量ずつ添加して、アクリル系重合体[A]中の水酸基にポリイソシアネート基を結合させることによりイソシアネート変性アクリル系重合体が生成する。
【0060】
ここでイソシアネート基と反応性を有しない有機溶媒としては、キシレン、トルエン、ベンゼンの芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等を挙げることができる。また、用いるアクリル系重合体[A]が低粘度であれば溶剤を用いなくてもよい。
【0061】
この反応は、不活性ガス中で加熱しながら行うことが好ましい。反応温度は、通常は20〜90℃、好ましくは40〜70℃である。この反応では、ポリイソシアネート化合物は、アクリル系重合体[A]に対して過剰に用いられる。通常はアクリル系重合体[A]中の水酸基1モルに対して、通常は1.9〜5モル、好ましくは2.2〜3モルになるようにポリイソシアネート化合物を使用する。このように過剰のポリイソシアネート化合物を用い、しかもこの反応を有機溶媒中で行うことにより、1分子のポリイソシアネート化合物に複数個のアクリル系重合体[A]が結合する確率が著しく低くなり、従って、この反応で生成したイソシアネート変性アクリル系重合体がゲル化することはない。そして、複数のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を用いることにより、生成したイソシアネート変性アクリル系重合体には活性なイソシアネート基が導入される。
【0062】
上記反応の際には、触媒を使用することが好ましい。ここで使用される触媒は、前述したアクリル系硬化性組成物に配合することができる硬化触媒と同一の化合物であり、具体的には、ジブチルラウリン酸錫のような有機錫化合物やテトラブトキシチタン等のアルコキシチタン化合物、トリアセトアセチルアルミ等の金属キレート化物、トリエチルアミン等のアミン化合物を挙げることができる。このような硬化触媒は、通常は反応時間や発熱制御の調整や触媒の活性度に合わせ適宜調整できる。
【0063】
前記のようにして生成したイソシアネート変性アクリル系重合体は、有機溶媒溶液として得られ、この有機溶媒中には、未反応のポリイソシアネート化合物が残存している。こうした有機溶剤および未反応のポリイソシアネート化合物を減圧蒸留して除去することによりイソシアネート変性アクリル系重合体を得ることができる。
【0064】
上記のようなイソシアネート変性アクリル系重合体を含有する本発明のアクリル系硬化組成物について、例えばフーリエ変換赤外線スペクトル(FTIR)を測定すると、原料として滴下したアクリル系重合体[A]の水酸基に起因する吸収ピークが、反応の進行と共に消失し、この水酸基とポリイソシアネート化合物とが反応していることが確認できる。
【0065】
こうして生成したイソシアネート変性アクリル系重合体についてアミン価を測定し、このアミン価から求めた−NCO量は、通常は0〜30%、好ましくは0〜20%である。
【0066】
なお、前記のようにしたイソシアネート変性アクリル系重合体を製造することにより、ほとんど全部の水酸基がイソシアネート基と反応するが、本発明の硬化組成物では、イソシアネート基と反応しない水酸基が残留した重合体を含んでいてもよい。即ち、このイソシアネート変性アクリル系重合体は、通常の場合水酸基価はほぼ0であるが、この水酸基価が10以下であれば、本発明の硬化組成物として使用することができる。
【0067】
こうして得られる本発明のイソシアネート変性アクリル系重合体は、前述のアクリル系重合体[A](原料物質)よりも高い粘度を有するが、通常は常温で液体であり、このイソシアネート変性アクリル系重合体についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した数平均分子量は、通常は500〜200,000、好ましくは1,000〜100,000の範囲内にあり、重量平均分子量は通常は1,000〜300,000、好ましくは2,000〜200,000の範囲内にある。また、分散指数は通常は1.02〜9、好ましくは1.2〜3の範囲内にある。上記のような平均分子量を有する重合体は、常温で流動性を有している。
【0068】
上記のようにして得られたアクリル系硬化組成物には、活性なイソシアネート基が存在することから、水分を吸収して自己縮合硬化する。従って、このアクリル系硬化組成物は、例えば1液型硬化性組成物として使用することができる。なお、本発明のアクリル系硬化組成物には、前記のアクリル系硬化性組成物に配合することができる硬化触媒を配合することもできる。
【0069】
本発明のアクリル系硬化体は、前記のアクリル系硬化性組成物及び/又は前記のアクリル系硬化組成物を用いて、分子間縮合反応によって架橋構造を形成することにより生成する硬化体である。即ち、本発明の硬化体は、前記式[I]で表されるメタロセン化合物及び分子内に少なくとも1つの水酸基を有するチオール類の存在下に、(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系単量体を重合してなり、少なくとも1つの末端に該チオール類のメルカプト基から水素原子が脱離した残基が結合しているアクリル系重合体[A]と、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]とを配合したアクリル系硬化性組成物及び/又は前記式(1)で表されるメタロセン化合物及び分子内に少なくとも1つの水酸基を有するチオール類の存在下に、(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系単量体を重合してなり、少なくとも1つの末端に該チオール類のメルカプト基から水素原子が脱離した残基が結合しているアクリル系重合体[A]の水酸基の少なくとも一部が、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]のイソシアネート基の少なくとも一部と結合して、−NH−COO−基が形成しているアクリル系硬化組成物を用いて、水分の存在下又は不存在下に分子間縮合反応によって少なくともアクリル系硬化性組成物及び/又はアクリル系硬化組成物中に架橋構造を形成してなることを特徴としている。
【0070】
このアクリル系硬化体が、前記アクリル系重合体[A]と、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]とを含有する硬化性組成物から形成される場合、アクリル系重合体[A]とイソシアネート化合物[B]とは、水が存在しなくとも反応硬化することから、硬化反応のために特に水を加える必要はないが、水が存在すれば、イソシアネート化合物[B]が独自に水を吸収して硬化する反応が共に進行する。
【0071】
また、前記アクリル系硬化組成物を単独で使用して硬化させる場合には、前記イソシアネート変性アクリル系重合体が水を吸収して自己縮合硬化することから、硬化のためには水が存在することが必要になる。ただし、この水を硬化反応系に直接添加しなくとも、例えば空気中、基材中などから水分を吸収して硬化反応は進行する。
【0072】
アクリル系硬化性組成物と、イソシアネート変性アクリル系重合体を含有するアクリル系硬化組成物とを併用する場合には、硬化のために特に水を加える必要はないが、水を添加して、イソシアネート基と水との反応による硬化反応を併走させることもできる。
【0073】
また、本発明のアクリル系硬化体を調製するに際して、前記アクリル系硬化性組成物、および/または、アクリル系硬化組成物に、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどのポリオールや、ポリアミン、ポリカルボン酸等を配合することができる。これらの化合物とイソシアネート基とを反応させてウレタン結合を形成することができる。また、このような硬化反応は、前述の硬化触媒の存在下に行うこともできる。
【0074】
本発明のアクリル系硬化体は、柔軟性および可撓性を有し、良好な形態追随性を有する。また、このアクリル系硬化体は、ゴム弾性を有しており、通常は10%以上、好ましくは100%以上の延伸性を有している。さらに、硬化前の組成物が粘稠な液体であるにも拘わらず、硬化体にはほとんどタック性を有していない。
【0075】
本発明のアクリル系重合体[A]、アクリル系硬化性組成物、アクリル系硬化組成物及びアクリル系硬化体は、その用途に適合させるために種々の添加剤を配合することができる。ここで使用することができる添加剤の例としては、充填剤、色材、耐候性付与剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、硬化補助触媒、撥水剤、防水剤、分散剤、溶剤、消泡剤、可塑剤等を配合することができる。また、本発明では、アクリル系硬化体の特性を調整するために、例えばテルペン樹脂、ロジン系樹脂、低分子量アタクチックポリプロピレン、塩素化オレフィン、低分子量ポリエチレン、塩素化ブタジエン、塩素化イソプレン、ブチル樹脂、ポリサルファイド系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、変性シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、EPM樹脂、EPDM樹脂、撥水性樹脂(例;シリコンポリマー、テフロン粒子、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン)、親水性樹脂(例;ポリビニルアルコール、アニオン系乳化剤)等を配合することができる。
【0076】
本発明の塗料は、前記のアクリル系重合体[A]、アクリル系硬化性組成物、アクリル系硬化組成物及びアクリル系硬化体を用いて調整される。この調整時に、顔料および/または染料、その分散剤、粘度調整剤、チクソトロピー性調整剤、紫外線吸収剤、耐光性付与剤、酸化防止剤、タレ防止剤、消泡剤などを適宜配合する。
【0077】
また、本発明の塗料の25℃における粘度は、通常は0.1〜50Pa・s、好ましくは0.5〜5Pa・sである。本発明の塗料は、硬化性組成物が、常温流動性を有しているので、特に溶剤を配合することを要しないが、必要により、溶剤を配合してもよい。
【0078】
本発明の接着剤又は粘着剤は、前記のアクリル系重合体[A]、アクリル系硬化性組成物、アクリル系硬化組成物及びアクリル系硬化体を用いて調製される。この調整時に、塗布時の粘度あるいはチクソトロピー性を改善するために粘度調整剤、チクソトロピー性調整剤、染料および/または顔料、及び、その分散剤などを配合することができる。また、本発明の接着剤又は粘着剤には、紫外線吸収剤、耐光性付与剤、酸化防止剤、タレ防止剤、消泡剤などを配合しても良い。さらに、この接着剤又は粘着剤は良好な防水性を有しているが、この防水性をさらに向上させるために、撥水剤、防水性樹脂を配合することができる。
【0079】
また、本発明の接着剤又は粘着剤の25℃における粘度は、通常は1〜50Pa・秒、好ましくは5〜10Pa・秒である。本発明の接着剤又は粘着剤は、常温流動性を有しているので、特に溶剤を配合することを要しないが、必要により、溶剤を配合してもよい。さらに、本発明の接着剤として、前記のアクリル系硬化組成物を使用すれば、一液型の接着剤を調整することができる。
【0080】
本発明のアクリル系重合体[A]、アクリル系硬化性組成物、アクリル系硬化組成物及びアクリル系硬化体は、上記説明した塗料、接着剤又は粘着剤の他に、シーリング材、シート成形品(通気性シート、保護シート、遮水シート、制振シート、転写シート、調光シート、帯電防止シート、導電シート、養生シート、遮音シート、遮光シート、化粧シート、マーキングシート、難燃シート)、フィルム成形品(マーキング、保護フィルム、インキ定着フィルム、ラミネートフィルム)、発泡体(硬質、軟質、半硬質、難燃)、インキ用ビヒクル、反応性可塑剤、可塑剤、希釈剤、相溶化剤、中間原料として、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネイト樹脂や各種ブロックポリマーなどの樹脂用原料または、改質用原料、添加剤、更には、繊維改質剤、繊維表面処理剤、紙加工剤、紙改質剤、界面活性剤、分散安定剤、分散媒、溶剤、粘度調整剤、吸着剤、毛髪処理剤、トナー用添加剤、帯電制御剤、帯電防止剤、低収縮剤、防曇剤、防汚剤、親水性付与剤、親油性付与剤、医薬担体、農薬用担体、化粧品用配合剤、滑剤、ポリマーアロイ用添加剤、ゲルコート剤、FRP用樹脂、FRP樹脂用添加剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用樹脂添加剤、注入成型品用樹脂、UV・EV硬化樹脂用原料、粘着付与剤、各種バインダー(磁気記録媒体、鋳造用、焼成体用、グラスファイバーサイジング材)RIM用ウレタン改質剤、合わせガラス用樹脂、制振材、遮音材、分離膜用樹脂、防音材、吸音材、人工皮革、人工皮膚、合成皮革、各種工業用部品、日用品、トイレタリー用成型品、アクリルウレタンゴム、アクリルウレタンゴム改質剤、アクリルウレタンフォーム改質剤、ウレタンゴム改質剤、ウレタンフォーム可塑剤、ウレタンフォーム改質剤、アクリルゴム改質剤などとして使用することもできる。
【0081】
【実施例】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
【0082】
アクリル系重合体の製造
【実施例1】
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、ブチルアクリレート90重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10重量部、および金属触媒としてルテノセンジクロライド0.1重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を80℃に加熱した。
【0083】
次いで、十分に窒素ガス置換した2-メルカプトエタノール10重量部を攪拌下にフラスコ内に添加した。フラスコ内の内容物の温度が80℃に維持できるように、加熱及び冷却を4時間行った。さらに、十分に窒素ガス置換した2-メルカプトエタノール10重量部を攪拌下のフラスコ内に追加添加した後、フラスコ内の内容物の温度が90℃に維持できるように、さらに加熱及び冷却を行いながら、反応を4時間行った。この重合に際して重合反応の暴走は全く認められなかった。
【0084】
上記反応後、反応物の一部を採取して、ベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を添加し、モノマー残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定したところ、重合率は78%であった。
【0085】
つづいて得られた反応物に、ラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.1重量部を添加して未反応モノマーを重合させた。
【0086】
こうして得られたアクリル系重合体(1)の150℃加熱残分は96.3%であった。また、得られたアクリル系重合体(1)についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量は、Mw=950、Mn=650、分散指数=1.5であり、23℃における粘度は、0.85(Pa・s)であった。
【0087】
【比較例1】
実施例1において、ルテノセンジクロライドを添加しなかった以外は、同様の操作を行った結果、ガスクロマトグラフィーにより測定した重合率は4%であった。
【0088】
【比較例2】
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、ブチルアクリレート90重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10重量部、及び、2-メルカプトエタノール20重量部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を80℃に加熱した。
【0089】
ついで、攪拌下にラジカル重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部をフラスコ内に添加した。フラスコ内の内容物の温度が80℃に維持できるように、冷却を行ったが、急激な発熱とともにフラスコ内温度は120℃まで上昇した。さらに冷却を続け、フラスコ内温度を90℃とし、加熱及び冷却を行いながら、反応を8時間行った。この重合に際して重合反応は非常に不安定であった。
【0090】
上記反応後、反応物の一部を採取して、ベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を添加し、モノマー残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定したところ、重合率は87%であった。
【0091】
つづいて得られた反応物に、ラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.1重量部を添加して未反応モノマーを重合させた。
【0092】
こうして得られたアクリル系重合体(C−2)の150℃加熱残分は95.2%であった。また、アクリル系重合体(C−2)についてGPCにより測定した分子量は、Mw=1900、Mn=740、分散指数=2.6であり、23℃における粘度は、1.35(Pa・s)であった。
【0093】
【実施例2】
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、エチルアクリレート45重量部、ブチルアクリレート45重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10重量部、及び、金属触媒としてチタノセンジクロライド0.1重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を85℃に加熱した。
【0094】
ついで、十分に窒素ガス置換した4−メルカプトブタノール25重量部を攪拌下のフラスコ内に添加し、フラスコ内の内容物の温度が85℃に維持できるように加熱および冷却を4時間行った。その後さらに、攪拌中のフラスコ内の内容物の温度が95℃に維持できるように、加熱および冷却を行いながら、反応を4時間行った。この重合に際して重合反応の暴走は全く認められなかった。
【0095】
上記反応後、反応物の一部を採取して、ベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を添加し、モノマー残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定したところ、重合率は82%であった。
【0096】
つづいて得られた反応物に、ラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.1重量部を添加して未反応モノマーを重合させた。続いて、反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで除々に加熱しながらTHFおよび残存モノマー、残存チオール化合物を除去した。
【0097】
こうして得られたアクリル系重合体(2)の150℃加熱残分は、98.2%であった。また、アクリル系重合体(2)についてGPCにより測定した分子量は、Mw=1400、Mn=700、分散指数=2.0であり、23℃における粘度は、2.55(Pa・s)であった。
【0098】
【比較例3】
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、エチルアクリレート45重量部、ブチルアクリレート45重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10重量部、及び、4-メルカプトブタノール25重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を85℃に加熱した。
【0099】
ついで、攪拌下にラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド0.05重量部をフラスコ内に添加し、フラスコ内の内容物の温度が85℃に維持できるように加熱および冷却を4時間行い、つづいてベンゾイルパーオキサイド0.05重量部をフラスコ内に添加したところ急激な発熱とともにフラスコ内の温度は150℃まで上昇した。この間、冷却を行い続けて、フラスコ内温度が110℃となるように調整した。その後、冷却および加温を行いながら、反応を4時間行った。この重合に際して重合反応は非常に不安定であった。
【0100】
上記反応後、反応物の一部を採取して、ベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を添加し、モノマー残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定したところ、重合率は95%であった。
【0101】
つづいて得られた反応物に、ラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.1重量部を添加して未反応モノマーを重合させた。続いて、反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで除々に加熱しながらTHFおよび残存モノマー、残存チオール化合物を除去した。
【0102】
こうして得られたアクリル系重合体(C−3)の150℃加熱残分は、96.1%であった。また、アクリル系重合体(C−3)についてGPCにより測定した分子量は、Mw=2200、Mn=720、分散指数=3.1であり、23℃における粘度は、3.73(Pa・s)であった。
【0103】
アクリル系硬化組成物
【実施例3】
攪拌装置、乾燥窒素ガス導入管、温度計、滴下ロート、およびモレキュラーシーブを装着した還流冷却管を備えたフラスコに、ポリイソシアネート化合物 としてヘキサメチレンジイソシアネート47重量部、およびトルエン50重量部を仕込み、フラスコ内の空気を乾燥窒素ガスで置換しながら60に加熱した。その後、フラスコ内の温度が60〜70℃の範囲内に保てるように、加熱および冷却を行いながら、実施例1で得られたアクリル系重合体(1)100重量部を2時間かけてフラスコ内に滴下した。
【0104】
アクリル系重合体(1)全量を滴下した後、フラスコ内の温度を80℃に昇温し、そのまま80℃にて6時間反応を行った。その後、反応液を室温まで冷却し、フラスコ内の反応物を取り出し、減圧下に90℃まで除々に加熱しながらエバポレーターで、トルエンおよび未反応ポリイソシアネート化合物を除去した。得られたイソシアネート変性アクリル系重合体(4)は、150℃における加熱残分が99.8%であり、23℃における粘度が35(Pa・s)であった。
【0105】
こうして得られたイソシアネート変性アクリル系重合体(4)中の残留水酸基をFT−IR(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)で調べたところ、水酸基に起因する吸収は完全に消失していた。また、このイソシアネート変性アクリル系重合体(3)についてアミン値から算定したNCO量は13.8%であった。
【0106】
【実施例4】
実施例3において、ポリイソシアネート化合物 として、ヘキサメチレンジイソシアネートの代わりにジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート74重量部を使用した以外は、同様にしてイソシアネート変性アクリル系重合体(4)を調整した。得られたイソシアネート変性アクリル系重合体(5)は、150℃における加熱残分が99.8%であり、23℃における粘度が68(Pa・s)であった。
【0107】
こうして得られたイソシアネート変性アクリル系重合体(5)中の残留水酸基をFT−IR(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)で調べたところ、水酸基に起因する吸収帯は完全に消失していた。また、この変性物についてアミン値から算定したNCO量は11.8%であった。
【0108】
【比較例4】
実施例3において、アクリル系重合体(1)の代わりに、比較例2で調整したアクリル系重合体(C−2)を使用し、かつ、ポリイソシアネート化合物 として、ヘキサメチレンジイソシアネートの代わりにジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート74重量部を使用した以外は同様にして変成物を調整した。得られたイソシアネート変成アクリル系重合体(C−4)は、150℃における加熱残分が97.8%であり、23℃における粘度が121(Pa・s)であった。
【0109】
こうして得られたポリイソシアネート変性アクリル系重合体(C−4)中の残留水酸基をFT−IR(フーリエ変換赤外線吸収スペクトル)で調べたところ、水酸基に起因する吸収帯は完全に消失していた。また、この変性物についてアミン値から算定したNCO量は10.5%であった。
【0110】
硬化体
【実施例5】
容量200ミリリットルのビーカーに、実施例1で調整したアクリル系重合体(1)100重量部と、ポリイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートをビュウレット変性した3官能のイソシアネート化合物(商品名;デュラネート24A−100、旭化成工業(株)社製、NCO=23.5%)55重量部とを入れ、さらに硬化促進剤(硬化触媒)としてジブチルジラウリン酸錫0.1重量部を添加して良く混合して、流動性を有する均一な硬化性組成物を調整した。
【0111】
得られた硬化性組成物をポリエチレン製のフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、23℃、65%RHの条件で1週間放置し、硬化性組成物の硬化体膜を得た。得られた硬化体膜をポリエチレン製フィルムから剥離して、指触により硬化性を調べたところ、タック感が全くなく、指にベタツキも残らず、完全に硬化していることが確認された。
【0112】
【実施例6】
実施例5において、ポリイソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネートをビュウレット変性した3官能のイソシアネート化合物の代わりにジフェニルメタンジイソシアネートモノマーの高純度フレーク品(商品名;タケネート300F、武田薬品工業(株)社製、NCO=33.6%)38重量部、およびジブチルジラウリン酸錫を0.001重量部と変更した以外は同様にして硬化体膜を得た。
【0113】
得られた硬化体膜をポリエチレン製フィルムから剥離して、指触により硬化性を調べたところ、タック感が全くなく、指にベタツキも残らず、完全に硬化していることが確認された。
【0114】
【実施例7】
実施例5において、アクリル系重合体(1)の代わりに実施例2で調整したアクリル系重合体(2)100重量部を使用し、ポリイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートをビュウレット変性した3官能のイソシアネート化合物の代わりにジフェニルメタンジイソシアネートモノマーの高純度フレーク品(商品名;タケネート300F、武田薬品工業(株)社製、NCO=33.6%)34重量部を使用し、ジブチルジラウリン酸錫を0.001重量部と変更した以外は、同様にして硬化体膜を得た。
【0115】
得られた硬化体膜をポリエチレン製フィルムから剥離して、指触により硬化性を調べたところ、タック感が全くなく、指にベタツキも残らず、完全に硬化していることが確認された。
【0116】
【比較例5】
実施例5において、アクリル系重合体(1)の代わりに比較例2で調整したアクリル系重合体(C−2)100重量部を使用し、このアクリル系重合体(C−2)100重量部に対して、ポリイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートをビュウレット変性した3官能のイソシアネート化合物の代わりにジフェニルメタンジイソシアネートモノマーの高純度フレーク品(商品名;タケネート300F、武田薬品工業(株)社製、NCO=33.6%)を使用し、ジブチルラウリン酸錫を0.001重量部と変更した以外は、同様にして硬化体膜を得た。
【0117】
得られた硬化体膜をポリエチレン製フィルムから剥離して、指触により硬化性を調べたところ、タック感があり、指にもベタツキが残り、完全に硬化していないことが確認された。
【0118】
【比較例6】
実施例5において、アクリル系重合体(1)の代わりに比較例3で調整したアクリル系重合体(C−3)100重量部を使用し、ポリイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートをビュウレット変性した3官能のイソシアネート化合物の代わりにジフェニルメタンジイソシアネートモノマーの高純度フレーク品(商品名;タケネート300F、武田薬品工業(株)社製、NCO=33.6%)34重量部を使用し、ジブチルラウリン酸錫を0.001重量部と変更した以外は、同様にして硬化体膜を得た。
【0119】
得られた硬化体膜をポリエチレン製フィルムから剥離して、指触により硬化性を調べたところ、タック感があり、指にもベタツキが残り、完全に硬化していないことが確認された。
【0120】
【実施例8】
実施例5において、アクリル系重合体(1)の代わりに実施例2で調製したアクリル系重合体(2)100重量部を使用し、ポリイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートをビュウレット変性した3官能のイソシアネート化合物の代わりに2官能のヘキサメチレンジイソシアネート化合物(商品名;デュラネートD−101、旭化成工業(株)社製、NCO=19.7%)57重量部を使用した以外は同様にして硬化体膜を得た。
【0121】
得られた硬化体膜をポリエチレン製フィルムから剥離して、指触により硬化性を調べたところ、タック感がなく、指にベタツキも残らず、完全に硬化していることが確認された。
【0122】
【実施例9】
実施例5において、アクリル系重合体(1)の代わりに実施例3で調製したポリイソシアネート変性アクリル系重合体(3)100重量部を使用した以外は同様にして硬化体膜を得た。
【0123】
得られた硬化体膜をポリエチレン製フィルムから剥離して、指触により硬化性を調べたところ、タック感が全くなく、指にもベタツキが残らず、完全に硬化していることが確認された。
【0124】
【実施例10】
実施例5において、アクリル系重合体(1)の代わりに実施例4で調製したポリイソシアネート変性アクリル系重合体(4)100重量部を使用した以外は同様にして硬化体膜を得た。
【0125】
得られた硬化体膜をポリエチレン製フィルムから剥離して、指触により硬化性を調べたところ、タック感が全くなく、指にもベタツキが残らず、完全に硬化していることが確認された。
【0126】
【比較例7】
実施例5において、アクリル系重合体(1)の代わりに比較例4で調製したポリイソシアネート変性アクリル系重合体(C−4)100重量部を使用した以外は同様にして硬化体膜を得た。
【0127】
得られた硬化体膜をポリエチレン製フィルムから剥離して、指触により硬化性を調べたところ、タック感があり、指にもベタツキが残り、完全に硬化していないことが確認された。
【0128】
塗料
【実施例11、12、および比較例8】
容量200ミリリットルのビーカーに、主剤として各種重合体と、この主剤に100重量部に対して、顔料として酸化チタン微粒子20重量部、またポリイソシアネート化合物を表1に示すように配合して、ビーカー内の内容物が均一になるまで、ミキサーにて攪拌混合して粘稠な組成物(塗料組成物)を得た。
得られた組成物を0.5mm厚の鋼板表面にバーコーターを用いて、塗布厚20μmに塗布した。
【0129】
さらに、こうして組成物を塗布した鋼板を23℃の温度で2時間放置した後、乾燥機で100℃の温度で30分間加熱して焼き付け処理を行った。
得られた塗布面の特性を表1に示した。
【0130】
【表1】
【0131】
なお、上記表1において、硬化性、被着体密着性、膜可撓性、膜光沢性、および評価方法並びに記号は次の通りである。
【0132】
硬化性:塗膜表面のタック感を指触により評価した。
○・・・タックが無く、完全に硬化していた。
△・・・わずかにタック感があるが、ほぼ硬化していた。
×・・・タックがあり、硬化が不十分であった。
【0133】
被着体密着性:塗膜表面をガラス棒でこすり、塗膜表面の浮き等の状態を目視により観察評価した。
○・・・塗膜表面の浮き上がりはほとんど見られない。
×・・・塗膜表面の浮き上がりが見られる
【0134】
膜可撓性:塗工面を上面として、鋼板を90度に塗工していない面側に曲げ、塗膜のひび割れ度合いを目視により観察評価した。
○・・・塗膜が鋼板の屈曲に追随し、ひび割れは生じない。
△・・・塗膜は鋼板の屈曲に追従するが、ひび割れが生ずる。
×・・・塗膜は鋼板の屈曲に対する追随性がなく、ひび割れが著しい。
【0135】
膜光沢性:塗膜の光沢度合いを目視により観察評価した。
○・・・非常に良好な光沢がある。
△・・・多少の光沢はある。
×・・・全く光沢がない。
【0136】
上記の実施例および比較例との対比から本発明の塗料は、非常に優れた可撓性を有する塗膜を形成することができ、また本発明の塗料は無溶剤である。
【0137】
接着剤
【実施例13および比較例9】
容量200ミリリットルのビーカーに、接着用樹脂成分として、各種重合体を100重量部と、硬化促進剤(硬化触媒)としてジブチルジラウリン酸錫1.0重量部を配合して、ビーカー内の内容物が均一になるまで、ミキサーにて攪拌混合して組成物(接着剤組成物)を得た。
【0138】
得られた組成物を0.5mm厚さ、50mm×100mmの鋼板表面に櫛目ヘラを用いて、塗布厚100μm、塗布面積50mm×50mmになるように塗布した。その後、直ちに接着成分の塗工面に、同じ鋼板を貼り合わせ、これら試料を23℃の温度下にて1週間養生し、接着性能を評価した。得られた特性は次の通りである。
【0139】
【表2】
【0140】
なお、上記表2において、硬化性、接着性、耐剥離性、耐熱性、および評価方法並びに記号は次の通りである。
【0141】
硬化性:200ccビーカーにて調製した試料を23℃の室温にて放置し、ガラス棒が刺さらなくなるまでの時間を測定し評価した。
○・・・1時間未満
△・・・1時間以上4時間未満
×・・・4時間以上
【0142】
接着性:23℃下にて、貼り合わせた鋼板の片方を固定し、固定していない鋼板片に対し、水平方向へ荷重が掛かるように2kgの重りをかけ、試料が破壊し、重りが落下するまでの時間を測定し評価した。
○・・・2週間以上落下しない。
△・・・1週間以上2週間未満で落下する。
×・・・1週間未満で落下する。
【0143】
耐剥離性:23℃下にて、貼り合わせた鋼板の片方を固定し、固定していない鋼板片に対し、垂直方向へ荷重が掛かるように1kgの重りをかけ、試料が破壊し、重りが落下するまでの時間を測定し評価した。
○・・・1日以上落下しない。
△・・・2時間以上1日未満で落下する。
×・・・2時間未満で落下する。
【0144】
耐熱性:80℃の温度条件下において接着性の測定方法と同様に評価した。
○・・・1週間以上落下しない。
△・・・3日以上1週間未満で落下する。
×・・・3日未満で落下する。
【0145】
上記の実施例および比較例との対比から本発明の接着剤は、非常に優れた硬化性、接着性、および耐熱性を有し、また本発明の接着剤は無溶剤である。
【0146】
【発明の効果】
本発明のアクリル系重合体[A]は、重合体分子の少なくとも1つの末端に特定の水酸基を有するチオール類のメルカプト基から水素原子が脱離した残基が結合している分子を含有しており、この水酸基は、例えばポリイソシアネート化合物等に対して良好な反応性を示す。しかも、このアクリル系重合体[A]は、従来制御が困難であった塊状重合によって製造することができ、従って、このアクリル系重合体[A]は、反応溶媒、水などを実質的に含まない状態で得ることができる。
【0147】
そして、本発明のアクリル系重合体[A]にポリイソシアネート化合物を配合したアクリル系硬化性組成物は、縮合硬化させることができ、その硬化物は、柔軟性があり、しかも高い強度を示し、また防水性にも優れている。
【0148】
また、本発明のアクリル系硬化組成物は、前記アクリル系重合体[A]の水酸基の少なくとも一部にイソシアネート基が結合した構造を有するイソシアネート変性アクリル系重合体を含有しており、そのイソシアネート変性アクリル系重合体は、水分を吸収して自己縮合硬化する。従って、このアクリル系硬化組成物は、一液型硬化性樹脂組成物として使用することができ、柔軟性があり、しかも高い強度を示し、また防水性にも優れている。
【0149】
さらに、本発明のアクリル系硬化体は、耐水性、柔軟性、可撓性に優れ、またゴム弾性を有している。
【0150】
また、本発明の塗料、接着剤又は粘着剤は、硬化物が柔軟性を有し、強度が高く、防水性にも優れている。従って、これらを塗布する基材に対する形態追随性に優れ、基材を物理的に保護すると共に、基材に優れた防水性を付与することができる。
Claims (12)
- 次式[I]で表されるメタロセン化合物、及び、分子内に少なくとも1つの水酸基を有するチオール類の存在下に、(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系単量体を重合してなり、少なくとも1つの末端に該チオール類のメルカプト基から水素原子が脱離した残基が結合し、かつ、
次式[I]で表されるメタロセン化合物、次式[I]で表されるメタロセン化合物と水酸基を有するチオール類、重合性不飽和化合物およびこれらの誘導体とが結合した化合物、および次式[I]で表されるメタロセン化合物が分解した金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物または金属を含有することを特徴とするアクリル系重合体;
- GPC法による重量平均分子量が、500〜1,000,000の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項記載のアクリル系重合体。
- 次式[I]で表されるメタロセン化合物、及び、分子内に少なくとも1つの水酸基を有するチオール類の存在下に、(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系単量体を重合してなり、少なくとも1つの末端に該チオール類のメルカプト基から水素原子が脱離した残基が結合し、かつ、
次式[I]で表されるメタロセン化合物、次式[I]で表されるメタロセン化合物と水酸基を有するチオール類、重合性不飽和化合物およびこれらの誘導体とが結合した化合物、および次式[I]で表されるメタロセン化合物が分解した金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物または金属を含有するアクリル系重合体[A]と、
分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]を含有することを特徴とするアクリル系硬化性組成物;
- アクリル系重合体[A]中に存在する水酸基モル数100に対して、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]のイソシアネート基のモル数を50〜300の範囲内になるように配合することを特徴とする請求項第3項記載のアクリル系硬化性組成物。
- アクリル系重合体[A]中に存在する水酸基の少なくとも一部と、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]のイソシアネート基の一部とが結合していることを特徴とする請求項第3項記載のアクリル系硬化性組成物。
- 次式[I]で表されるメタロセン化合物、及び、分子内に少なくとも1つの水酸基を有するチオール類の存在下に、(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系単量体を重合してなり、少なくとも1つの末端に該チオール類のメルカプト基から水素原子が脱離した残基が結合し、かつ、次式[I]で表されるメタロセン化合物、次式[I]で表されるメタロセン化合物と水酸基を有するチオール類、重合性不飽和化合物およびこれらの誘導体とが結合した化合物、および次式[I]で表されるメタロセン化合物が分解した金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物または金属を含有するアクリル系重合体[A]の水酸基の少なくとも一部が、
分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]のイソシアネート基の少なくとも一部と結合して、−NH−COO−基が形成していることを特徴とするアクリル系硬化組成物;
- アクリル系重合体[A]中に存在する水酸基モル数100に対して、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物[B]のイソシアネート基のモル数を50〜300の範囲内になるように配合することを特徴とする請求項第6項記載のアクリル系硬化組成物。
- アクリル系重合体[A]のGPC法による重量平均分子量が、500〜300,000の範囲内にあることを特徴とする請求項第6項記載のアクリル系硬化組成物。
- 請求項第3項乃至第5項のいずれかの項に記載のアクリル系硬化性組成物、及び/又は、請求項第6項乃至第8項のいずれかの項に記載のアクリル系硬化組成物を、水の存在下または不存在下に分子間縮合反応によって、架橋構造を形成させることを特徴とするアクリル系硬化体。
- 分子間縮合反応が、有機錫系硬化触媒の存在下で行うことを特徴とする請求項第9項記載のアクリル系硬化体。
- 請求項第1項乃至第10項のいずれかの項に記載のアクリル系重合体、アクリル系硬化性組成物、アクリル系硬化組成物又はアクリル系硬化体を主成分とすることを特徴とする塗料。
- 請求項第1項乃至第10項のいずれかの項に記載のアクリル系重合体、アクリル系硬化性組成物、アクリル系硬化組成物又はアクリル系硬化体を主成分とすることを特徴とする接着剤又は粘着剤。
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