JP4477806B2 - タマネギの有効成分を製造する方法、その製法によるタマネギの有効成分及び保健食品 - Google Patents

タマネギの有効成分を製造する方法、その製法によるタマネギの有効成分及び保健食品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タマネギの有効成分を製造する方法、その製造方法により得られたタマネギの有効成分及びタマネギの有効成分を主成分とする糖尿病患者用保健食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
タマネギは、野菜として広く使用されているが、その成分のなかには人体に有効な成分があることが知られている。たとえば血糖低下作用、脂質低下作用、血小板凝集抑制作用、フィブリン溶解作用、抗アレルギー作用及び骨粗鬆症抑制作用等の作用、効果があることが知られている。
【0003】
又、タマネギの成分が糖尿病による合併症の予防及び治療に効果のあることも知られている(特開平10−77232号)、この先行文献には低温低圧で濃縮して得られたエキスが使用されている。
【0004】
前記先行文献には、最近、糖尿病の合併症(網膜症、神経障害、腎症)の原因として生体内の糖のカルボニル基とアミノ酸及び蛋白のアミノ基とが反応するメーラード反応(アミノカルボニル反応)による生成物(AGE,advanced glycated protein end-products,以下AGE)のことが記載されている。このAGEについて以下さらに詳しく説明する。
【0005】
AGEは、血管内皮細胞に作用し、血管透過性、血液凝固性を促進し、またマクロファージや網膜色素上皮細胞に作用して、各種サイトカイン、増殖因子の産生を増加させて、血管の新生を誘導して網膜症の進行を促進させ、さらに、高血糖により神経構成蛋白にグリケーションが生ずると、神経の軸索の萎縮、変性、脱髄などを生起させ、またAGEは、内皮細胞のAGE受容体に結合して活性酸素を生成する。そのため、神経障害を生じさせるものである。
【0006】
またマクロファージは、AGEを貪食し分解するが、一方受容体を介して各種サイトカインや成長因子を分泌して腎臓のメサンギウム細胞を増殖させ、さらにメサンギウム細胞から各種の基質の分泌増加を促進させるものである。しかも、メサンギウム細胞にも受容体があるので、これを介してサイトカイン、増殖因子の産生を促進させ、その結果、細胞外基質産生を増加させるものである。この基質にAGEが作用すると、基質の蛋白間の結合異常が生じて糸球体に構造異常、機能異常が生ずる。このように、AGEは、糖尿病及び糖尿病の合併症に関与しているものであることが知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、タマネギの成分には血糖低下作用のみでなく、糖尿病の合併症に有効なグリケーション抑制作用あるいはメーラード反応抑制作用があることが知られている。又前記文献(特開平10−77232号)のようにタマネギの成分を有効成分とする糖尿病による合併症の予防及び治療薬が発明されているが、前記文献に記載されているタマネギ成分はタマネギ搾汁液を低温低圧で濃縮して得られた成分である。又、現在一般に使用されているタマネギエキス食品もすべて低温あるいは高温で減圧乾燥させて得られたタマネギエキス粉末を使用している。ここで我々が提起する課題は、単に減圧乾燥のみで得られたエキス粉末には糖尿病に有効な成分が十分含まれていないこと、つまりその製造過程で有効な成分が水蒸気と共に気化し失われてしまうため十分な効果を有する保健食品を得ることができない、という点である。
【0008】
収穫したタマネギを切断・破砕して細胞を破壊すると、細胞質に存在していた酵素C−Sリアーゼが放出し、その酵素反応によりタマネギに本来含まれている成分であるS−アルキルシステイン スルフォキサイド(イソアリイン等)が100種以上の有機硫黄化合物,つまりプロペニル スルフェン酸(催涙性因子)、S−アルキルチオスルフィネート、アルキルジスルファイド、アルキルトリスルファイド等に変化する。これらのうち比較的分子量の小さい有機硫黄化合物は揮発性に富み、水溶液中で水和物となり、水蒸気蒸留すると水分子と共に気化し留分中に移行し、エキス粉末から失われてしまう。我々は、この留分中に含まれる有機硫黄化合物(オイル分画という)が、血糖低下作用と強力なメーラード反応抑制作用を有することを確認した(後述実施例2)。特に、オイル分画のメーラード反応抑制作用を発見したのは我々が最初である。
【0009】
そこで、本発明は、タマネギの有効成分を多量に抽出することが出来る方法、その製造方法により製造される多量のタマネギの有効成分及びその製造方法により製造されるタマネギの有効成分を主成分とする糖尿病患者用保健食品を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明で使用されるタマネギは、その種類、産地、収穫時期などに限定されない。
本発明(請求項1〜4)においては、タマネギの生鱗茎を収穫した後、水洗し、剥皮する。次に、適当な大きさに破砕し、圧搾または遠心分離などにより搾汁する。
得られたタマネギ搾汁を減圧濃縮により濃縮してタマネギの成分を得る。
【0011】
タマネギ搾汁の減圧濃縮は、例えば40〜95℃の加熱温度、及び10〜36mmHgの圧力で行われる。濃縮度は、特に限定されないが、濃縮したエキス中の水溶性固形分が30〜75重量%の範囲が好ましい。
【0012】
本発明では、この減圧濃縮の際、40〜80℃好ましくは60〜75℃の温度及び10〜36mmHg好ましくは15〜29mmHgの圧力で留出してくる留分(以下、初留分という)を採取する。採取に当たっては、初留分をそのまま採取してもよいが、好ましくは活性炭又は珪藻土などに吸着させ、有機溶媒例えばエタノールなどで溶出し、溶出液から溶媒を除いて得る。初留分の生成量は、生のタマネギの重量に基づいて0.01〜0.02重量%である。そして、得られた初留分を、減圧濃縮により得られた留分に添加し混合することにより、本発明のタマネギの有効成分が得られる。
【0013】
又、本発明(請求項5及び6)においては、タマネギの化学的成分は百種類以上あり、それらは加工調理あるいはエキス抽出の過程で変化する。従ってタマネギの抗糖尿病有効成分を研究する方法として下記の3つの分画を対象とし、これら分画の抗糖尿病作用を検討した。
【0014】
(1)タマネギを加熱処理せずそのまま粉砕・搾汁し、その搾汁液を濃縮して得た分画(以下C分画という)。
(2)タマネギを加熱処理し酵素(C−Sリアーゼ)を失活させた後、粉砕・搾汁し、その搾汁液を濃縮して得た分画(以下C’分画という)。
(3)前記C分画を減圧水蒸気蒸留で乾燥させた時、蒸発した揮発性成分を捕集して得た分画(以下オイル分画という)。
【0015】
上記のC’分画はタマネギをまず加熱してC−Sリアーゼを不活性化させておいてから搾汁・濃縮・乾燥させて得た分画でイソアリイン(前述の化学反応の前駆物質)などを多く含むものである。
【0016】
C分画は加熱処理をしないためC−Sリアーゼによって前述の化学反応が生じ、イソアリインはプロペニル スルフェン酸(催涙性因子)やS−アルキルチオスルフィネート、アルキルジスルファイド、アルキルトリスルファイドなどの多種類の硫黄化合物に変化し、C分画搾汁液にはこれらがふくまれるものである。
【0017】
又これを減圧水蒸気蒸留で乾燥するときその過程で揮発性成分は水蒸気と共に蒸発してしまう。そこでこの蒸発した揮発性成分を捕集して得た分画がオイル分画である。
前記した有機硫黄化合物が糖尿病及び糖尿病の合併症に有効なのであるが減圧水蒸気蒸留で乾燥するとき、水分と一緒にこの有機硫黄化合物も蒸発し、有効成分がなくなってしまうのでそれを捕集しなければならないのである。
【0018】
そこで、本発明(請求項5〜6)は、タマネギを加熱処理せずそのまま粉砕・搾汁し、その搾汁液を濃縮して得た成分(C分画)に、当該搾汁液を濃縮して得た成分を減圧水蒸気蒸留で乾燥させた時、蒸発した揮発性成分を捕集して得た成分(オイル分画)を添加することであり、さらにタマネギを加熱処理し酵素を失活させた後、粉砕・搾汁し、その搾汁液を濃縮して得た成分(C‘分画)に、前記タマネギを加熱処理せずそのまま粉砕・搾汁し、その搾汁液を濃縮して得た成分を減圧水蒸気蒸留で乾燥させた時、蒸発した揮発性成分を捕集して得た成分(オイル分画)を添加することにある。
【0019】
このように、本発明はいずれも有機硫黄化合物を多量に含むので糖尿病及びその合併症に効果を発揮するものである。本発明(請求項7)は前記の製造方法により製造されたタマネギの有効成分そのものも対象とするものである。
【0020】
本発明(請求項8)のタマネギの有効成分を主成分とする糖尿病患者用保健食品は、例えば、粉末、顆粒、細粒、錠剤、カプセルなどの従来の剤型にして使用することが出来る。これらの剤型の製造には、従来行われている方法が用いられる。例えば、錠剤の製造では、本発明のタマネギの有効成分に従来添加物として使用されている物を加えて十分に混合する。
【0021】
添加物としては、例えば、とうもろこし澱粉、コムギ澱粉、馬鈴薯澱粉、乳糖、ブドウ糖、マンニトール、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなど;結合剤例えば澱粉類、デキストリン、アラビアガム、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、など;崩壊剤例えば澱粉類、ポリビニルピロリドン、結晶セルロースなど;滑沢剤例えばステアリン酸マグネシウム、タルクなど;着色剤、香料などが挙げられる。得られた混合物を湿式または乾式で顆粒とするかまたはすることなく、打錠機にかけて打錠し、錠剤とする。錠剤中のタマネギの有効成分の量は、任意でよい。
【0022】
本発明のタマネギエキスは従来から食品として使用されてきており、毒性は殆ど認められない。
【0023】
【実施例】
以下実施例について記述する。
実施例 1−1 オイル分画の作製
北海道産タマネギ11kgを水洗機で2回水洗した。次に、川を剥き、フェザーミルで破砕し、得られた破砕物を搾汁機により搾汁して、搾汁10.3kg(ブリックス:7.6)を得た。遠心薄膜式減圧濃縮機を用いて、減圧濃縮した。
60〜70℃の温度及び15〜29mmHgの圧力で留出してくる成分を活性炭層を通して吸着させた。吸着物をエタノールで溶出させて、得られた溶液からエタノールを蒸発により除去し、残存する成分1.6gを採取した。
【0024】
実施例 1−2 C分画の作製
加熱温度92℃、蒸発温度42℃及び圧力15mmHgで減圧濃縮を行い、C分画1.1kgを得た。
【0025】
実施例 1−3 C‘分画の作製
北海道産タマネギ10kgを水洗機で2回水洗し直ちに釜に入れ100℃で加熱し煮沸させた。得られた煮沸ずみタマネギをフェザーミルで破砕し搾汁機で搾汁して、搾汁液9.5kgを得た。遠心薄膜式減圧濃縮機を用いて、加熱温度92℃、蒸発温度42℃及び圧力15mmHgで減圧濃縮を行いC‘分画0.9kgを得た。
【0026】
実施例 2 抗糖尿病作用の研究
試験1. メーラード反応抑制作用(グリケーション抑制作用)
【緒言】
3つのタマネギ抽出分画がin vitro でのメーラード反応に対し抑制効果を示すかどうかを2つの方法で検討した。即ち、メーラード反応初期に生成する極微弱化学発光〔参照文献:Monnier, V.M.(1989). The Maillard Reaction in Aging, Diabetes and Nutrition (ed.Baynes, J.W. and Monnier, V.M.,p.l, Alan R. Liss.)〕に対する影響と酵素免疫法による糖化アルブミンの測定(サンドウイッチ法)である。(1)前者においては、反応系としてメチルグリオキザール-メチルアミン系とメチルグリオキザール-グリシン系を用いた。後者においては、ラットアルブミンにグルコースをアミノカルボニル反応によって結合させて作製したラット糖化アルブミン([0004]に詳述したAGEとして捉えることができる物質)のみと交差性のあるモノクロナール抗体(クローン:A717)を用い、これをコーティングしたアッセイチューブに試料を添加し抗原抗体反応を行わせた後チューブを十分洗浄して未反応物質を除去し抗ラットアルブミンHRP活性により検量線を作成し試料中の糖化アルブミン量を測定する方法である。しかし、この方法ではグルコースとアルブミンによる糖化アルブミン生成反応に時間がかかるため、これを短縮する目的でより簡単なカルボニル化合物としてグリセルアルデヒドおよびグリオキザールを用いた予備試験の結果、グリセルアルデヒドでAGE活性が大きいことが確認されたのでこの方法を用いて検討した。
【0027】
【試験方法】
▲1▼メーラード反応初期に生成する極微弱化学発光に対する影響:反応系としてメチルグリオキザール-メチルアミン系とメチルグリオキザール-グリシン系を選びそれらの当モル液を弱アルカリ性、定温にて反応させ生成する発光を超高感度検出器(アロカBLR201ケミルネッセンスリーダー)にて経時的に測定した。メチルグリオキザール-メチルアミン系では反応開始後4−5分、メチルグリオキザール-グリシン系では開始後数秒でピークを示した。そこで、上記3分画について、CおよびC’分画は蒸留水で100倍希釈したもの、オイル分画は50%エタノールで適宜希釈したものを試料としてそれぞれの反応系の発光がピークを示した時点において反応液1000μlに試料液50μlを添加し、直後の発光を測定した。
▲2▼ラット糖化アルブミンを用いた生物学的反応系における影響:オイル分画添加時のAGEの測定を行った。ラットアルブミン5mgをリン酸緩衝液25mlに溶解し5mgのグリセルアルデヒドとオイル分画10μlを加え、室温で攪拌した。オイル分画を加えない試料をコントロールとし、これらの試料中のAGEを上記のサンドウイッチ法で測定した。
【0028】
【試験結果】
▲1▼各分画の発光消失率を図1および図2に示した。オイル分画とC分画に発光の抑制が認められ、特にオイル分画には用量依存性の抑制がみられた。C’分画は発光をむしろ増大させた。
▲2▼AGEの吸光度(450nm)は、オイル分画添加試料では、0.338(305.2μg/ml)、コントロールでは、0.895(808μg/ml)であった。オイル分画に糖化抑制作用が認められた。
【0029】
【考察】
オイル分画とC分画にメーラード反応抑制作用がみられ、C’分画にはむしろ増大させる作用が認められた。このことはタマネギ抽出過程の酵素反応により生成する物質に糖化抑制作用があることを示している。さらに、オイル分画に強力なメーラード反応抑制作用がみられたことから揮発性成分に強力な糖化抑制作用があることを示唆している。オイル分画のこの作用はラット糖化アルブミンを用いた生物学的反応系においても証明された。前述のようにメーラード反応の抑制は糖尿病合併症の予防に関与する。また、オイル分画にメーラード反応を強力に抑制する作用があることを証明した本実験結果はこれまで報告されておらず我々の得た新しい知見である。従って、オイル分画を添加した食品を製造すれば糖尿病合併症の予防食が得られる。
【0030】
試験2.正常ラットにおけるC’分画の血糖低下作用
【緒言】
タマネギ抽出物の血糖低下作用に関するこれまでの研究報告はC-Sリアーゼによる酵素反応を受けた後の試料についてのみである。今回われわれは酵素反応を受けていないC’分画について、単回投与と慢性投与による血糖低下作用を検討した。
【0031】
【試験方法】
▲1▼単回投与試験:ウイスター系ラット12匹を2群に分け(1群6匹)1群にブドウ糖負荷試験前にC’分画0.5ml/ラット(生タマネギ1g/kgに相当)を経口ゾンデで投与し、他群には同量の生理的食塩水を投与した(対照群)。ネンブタール麻酔下ブドウ糖5ml/kgを静脈注射してブドウ糖負荷後、血糖値と血中インスリンを測定した。
▲2▼慢性投与試験:ウイスター系ラット12匹を2群に分け(1群6匹)、1群にはC’分画0.5ml/rat/dayを7日間経口ゾンデにて連続投与し、他の1群には同量の生理的食塩水を投与した(対照群)。両群について血糖値と血中インスリンを測定した。
【0032】
【試験結果】
▲1▼C’分画投与群の血糖値は対照群に比し糖負荷後30分と45分において有意に低値(それぞれp<0.01,p<0.05)を示した。血中インスリンは5分後において対照群に比し高い傾向がみられた。
▲2▼C’分画7日間投与後の糖負荷試験後の血糖値と血中インスリン値の推移を対照群と比較すると負荷30分後の血糖値は有意に(p<0.05)低下したが、血中インスリンは10分後において高い傾向はみられたが有意ではなかった。
【0033】
【考察】
今回の結果よりタマネギ抽出物のうち酵素反応を受けていない分画であるC’分画にも血糖低下作用が認められた。1995年Augustiら(参照文献:Kumud Kumari and Biju C Mathew, Antidiabetic and hypolipidemic effects of S-methyl cysteine sulfoxide isolated from Allium cepa Linn, Indian Journal of Biochemistry & Biophysics, Vol.32, February 1995, pp.49-54)は前駆物質であるS-methyl cysteine sulfoxide に血糖低下作用のあることを報告しており、今回の結果はこれを支持するものである。
【0034】
試験3.正常ラットにおけるオイル分画の血糖低下作用
【緒言】
試験1.の結果から強力な糖化抑制作用が認められたオイル分画について、抗糖尿病機能性食品素材として期待される血糖低下作用を検討した。
【0035】
【試験方法】
生後10週齢のSD系雌ラットを2群に分け、ブドウ糖負荷試験前に1/10希釈液および対照として生理食塩水を投与した群とした(各群6〜7匹)。オイル分画(1/10希釈液)または生理食塩水0.25ml/ratをブドウ糖負荷約1時間前に経口ゾンデで投与した。ネンブタール麻酔下でブドウ糖負荷後、血糖値と血中インスリンを経時的に測定した。
【0036】
【試験結果】
オイル分画(1/10希釈液)の影響:オイル分画(1/10希釈液)投与群と対照群の血糖値、血中インスリンの経時的変化を、それぞれの平均値で比較した(図3および図4)。血糖値は、両群ともブドウ糖負荷5分後に上昇が見られ、その後は時間の経過とともに降下した。糖負荷前、5分後、30分後、45分後のすべてにおいて両群間に有意差はみられなかった。血中インスリンは、両群とも糖負荷5分後に上昇が見られ、30分後にかけて降下し、45分後にはやや上昇を示した。糖負荷5分後において、オイル分画(1/10希釈液)投与群は対照群に比べて、有意に低値を示した。30分後、45分後においては、有意差は認められなかったものの、低値を示した。
【0037】
【考察】
オイル分画(1/10希釈液)の影響
オイル分画(1/10希釈液)投与は血糖値の推移においては対照群と差がなく、血中インスリンはむしろ低値を示した。そこで、オイル分画(1/10希釈液)投与群、対照群各々の、全血糖上昇面積に対する全インスリン分泌面積(ΣIRI/ΣBS)を算出し、比較した結果オイル分画(1/10希釈液)投与群は0.0068で対照群の0.012に比べて、有意差は認められなかったものの低値を示しインスリン感受性の増加が示唆された。以上の基礎実験の結果と従来からの報告をもとに3分画の生理活性をまとめ、図5に示した。
【0038】
実施例 3 糖尿病患者用タマネギ保健食品の作製
糖尿病患者用タマネギ保健食品の処方
上記の試験結果からC分画あるいはC’分画にオイル分画を添加して製造した食品は糖尿病患者に対して血糖低下作用とインスリン感受性増強作用が期待されるが、さらに重要なことは糖化抑制作用によって糖尿病合併症が予防されることである。このような観点からわれわれは下記製造例に示す如くタマネギ抽出食品、即ち糖尿病患者用保健食品を作製した。
【0039】
製造例
タマネギ加熱処理搾汁液の乾燥物(C‘分画)2.2kg、オイル分画1.4gに乳糖0.55kgを撹拌装置に投入し、十分に攪拌し、均一な混合物とした。これを打錠機にて1錠中のタマネギ加熱処理搾汁液の乾燥物が160mgおよびオイル分画が0.1mgになるように打錠した。約1万3500錠の錠剤の形態をしたタマネギ抽出食品を得た。
【0040】
実施例 4 糖尿病患者用タマネギ保健食品の臨床効果の検討
実施例3で作製した糖尿病患者用保健食品(以下、本食品という)の2型糖尿病患者に対する効果を検討するために本試験を行った。
22例の2型糖尿病患者(男10例、女12例、年齢45〜76才、平均64.6歳)を対象として選択した。本食品の摂取方法としては、1日当り20錠を早朝空腹時に20錠1回、あるいは早朝空腹時と夕食前の2回に分けて各10錠を摂取させた。摂取前および摂取開始後4週毎に24週まで食後2時間血糖値とA1c値(HbA1c)を測定した。食後2時間血糖値の推移は、摂取前284±85mg/dlであったものが4週後には211±78mg/dlに低下し、これは統計学的に優位な低下であった。その後4週毎に徐々に低下し24週後の値は174±66mg/dlとなった。HbA1cは、摂取前9.4±2.0%であったものが4週後には7.7±1.7%になった。8週後には7.5±1.5%、12週後には6.9±1.6%となりこの2時点では統計学的に有意な低下を示した。24週後においては6.7±1.3%であった。この試験を通じて臨床的な副作用は見られず、また低血糖発作もなかった。以上の結果から、本食品は2型糖尿病患者の食後高血糖の抑制とこれによる血糖コントロール状態の改善が認められる。特に、HbA1c値は血中のグルコースと蛋白であるヘモグロビンが結合した糖化ヘモグロビンであり、これが低下(改善)することは血糖コントロール状態の改善のみでなく本食品のグリケーション抑制作用(あるいはメーラード反応抑制作用)を示しているものと考えられる。つまり、糖尿病合併症の予防あるいは進展防止に本食品が有効であることを示唆するものと考えられる。
【0041】
本試験は、2型糖尿病患者についておこなわれたが、境界型糖尿病(糖負荷試験の結果が糖尿病と正常人との間にある糖尿病予備群)の患者に対しても血糖コントロールの改善効果とグリケーション防止効果が期待できる。
本食品は、糖尿病患者のみならず境界型糖尿病患者用の保健食品である。
【図面の簡単な説明】
【図1】メチルグリオキザール−メチルアミン系におけるタマネギ抽出物の化学発光消失率を示す図である。
【図2】メチルグリオキザール−グリシン系におけるタマネギ抽出物の化学発光消失率を示す図である。
【図3】血糖値の推移を示す図である。
【図4】インスリン値の推移を示す図である。
【図5】3つの分画の生理活性を示す図である。

Claims (7)

  1. タマネギの生鱗茎を収穫した後、水洗し、剥皮し、所定の大きさに破砕することによりタマネギを有効成分とする糖尿病、糖尿病の合併症の予防または治療剤を製造する方法において、
    (イ)当該タマネギを圧搾、又は遠心分離により搾汁する工程と,
    (ロ)当該(イ)の方法により作られたタマネギの搾汁液を減圧濃縮により濃縮してタマネギの成分を得る工程と,
    (ハ)当該減圧濃縮の際、留出してくる留分を採取する工程と,
    (ニ)当該(ハ)の工程により採取された留分を、当該(ロ)の工程により得たタマネギの成分に添加し、混合する工程と,
    から製造されることを特徴とするタマネギを有効成分とする糖尿病、糖尿病の合併症の予防または治療剤を製造する方法。
  2. タマネギの生鱗茎を収穫した後、水洗し、剥皮し、所定の大きさに破砕することによりタマネギを有効成分とする糖尿病、糖尿病の合併症の予防または治療剤を製造する方法において、
    (イ)当該タマネギを圧搾、又は遠心分離により搾汁する工程と,
    (ロ)当該(イ)の方法により作られたタマネギの搾汁液を減圧濃縮により濃縮してタマネギの成分を得る工程と,
    (ハ)当該減圧濃縮の際、留出してくる留分を活性炭または、珪藻土に吸着させ、有機溶媒で溶出し、溶出液から溶媒を除いて得た留分を採取する工程と,
    (ニ)当該(ハ)の工程により採取された留分を、当該(ロ)の工程により得たタマネギの成分に添加し、混合する工程と,
    から製造されることを特徴とするタマネギを有効成分とする糖尿病、糖尿病の合併症の予防または治療剤を製造する方法。
  3. 前記減圧濃縮が40〜95℃の加熱温度及び10〜36mmHgの圧力で行われることを特徴とする請求項1又は2記載のタマネギを有効成分とする糖尿病、糖尿病の合併症の予防または治療剤を製造する方法。
  4. 前記有効溶媒がエタノールであることを特徴とする請求項1又は2記載のタマネギを有効成分とする糖尿病、糖尿病の合併症の予防または治療剤を製造する方法。
  5. タマネギの生鱗茎を収穫した後、水洗し、剥皮し、所定の大きさに破砕することによりタマネギを有効成分とする糖尿病、糖尿病の合併症の予防または治療剤を製造する方法において、
    (イ)当該タマネギを加熱処理せず、そのまま粉砕・搾汁する工程と,
    (ロ)当該(イ)の方法により作られたタマネギの搾汁液を濃縮する工程と,
    (ハ)当該搾汁液を濃縮して得た成分を減圧水蒸気蒸留で乾燥させる工程と,
    (ニ)当該減圧水蒸気蒸留で乾燥させた際、蒸発した揮発性成分を採取する工程と,
    (ホ)当該(ロ)の工程により抽出される成分に、当該(ニ)の工程により抽出される成分を添加する工程と,から製造されることを特徴とするタマネギを有効成分とする糖尿病、糖尿病の合併症の予防または治療剤を製造する方法。
  6. タマネギの生鱗茎を収穫した後、水洗し、剥皮し、所定の大きさに破砕することによりタマネギを有効成分とする糖尿病、糖尿病の合併症の予防または治療剤を製造する方法において、
    (イ)当該タマネギを加熱処理し酵素を失活させた後、粉砕・搾汁する工程と,
    (ロ)当該(イ)の方法により作られたタマネギの搾汁液を濃縮する工程と,
    (ハ)当該搾汁液を濃縮して得た成分を減圧水蒸気蒸留で乾燥させる工程と,
    (ニ)当該減圧水蒸気蒸留で乾燥させた際、蒸発した揮発性成分を採取する工程と,
    (ホ)当該(ロ)の工程により抽出される成分に、当該(ニ)の工程により抽出される成分を添加する工程と,から製造されることを特徴とするタマネギを有効成分とする糖尿病、糖尿病の合併症の予防または治療剤を製造する方法。
  7. 前記請求項1〜6の製造方法から製造されることを特徴とするタマネギを有効成分とする糖尿病、糖尿病の合併症の予防または治療剤
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