JP4474480B2 - 吸収性物品および吸収要素の製造方法 - Google Patents
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Description
この基本要素に対し、バックシートの裏面側にたとえば不織布などからなる外装シートを設け、バックシートとしてプラスチックシートを使用した場合における肌触りを改良する形態、製品の両側にいわゆるバリヤーカフスを形成する形態など、ウエスト周りや腹周りのフィット性を改良するために弾性伸縮性を付与する形態などが、適宜付加される。
使用面側のトップシートを透過した液を受け入れ保持する吸収要素としては、従来は、パルプ短繊維の積繊体が一般的に使用されている。また、液に吸収量を高めるために高吸収性ポリマー粒子(以下「SAP」ともいう。)を使用することも知られている。
SAPはパルプ短繊維の積繊体上に散布する場合のほか、パルプ短繊維のSAPを分散保持させ積繊体させる場合(特許文献1)がある。
このような従来の吸収体に対して、近年では、特表2002−524399号(WO99/27879:特許文献2)及び特表2004−500165号(米国特許第6,646,180号:特許文献3)に示されるように、セルロースアセテートのトウを吸収要素として使用することが提案されている。トウは多数のフィラメントが所定方向に連続するフィラメント集合体であり、パルプ短繊維の積繊体と異なり、主に繊維連続方向に沿って排泄液を拡散するため、この拡散性の高さを利用した設計が可能になるという利点がある。
さらに、トウはパルプ短繊維と比較して繊維が太いものが一般的で、且つ連続繊維であるため、繊維一本一本の弾力性が吸収体内で強く働く。このため、少量でも吸収体に必要な強度やコシが得られるため、パルプ短繊維を用いた吸収体よりも、薄くて軽く柔らかい吸収体を形成することができる。近年では幼児のおむつ外れの時期が遅くなっており、自意識の芽生えるこの時期の幼児の自尊心に配慮するため、薄型設計の吸収体を用いた、大きいサイズの幼児用紙おむつが求められているが、上記のようなトウを用いた吸収体の特性は、このような要求に合致するものである。また、上記特性は、軽度の失禁症状が始まったが、まだ十分自立して生活できる高齢者を対象とする、軽失禁用の紙おむつにも求められるものである。
また、近年では、紙おむつや生理用ナプキンに消臭性や抗菌性を付与する技術が提案されている。例えば、特開平8−176338号公報(特許文献4)には、吸収性樹脂の粒子内部にゼオライトが分散された吸収性物品が開示されている。また、特開平12−79159号公報(特許文献5)には、吸水性樹脂とアンモニア産生菌に対して抗菌機能を有する化合物とアンモニアに対して中和能、または中和能および吸着能を有する薬剤とからなる粉末状の消臭性/抗菌性吸水剤が開示されている。このような失禁したことがわかり難いという機能も、また、大きいサイズの幼児用紙おむつや軽失禁用の大人用紙おむつに必須のものとして、注目されている。
上述のような大きいサイズの幼児用紙おむつや軽失禁用の大人用紙おむつでは、従来の幼児用紙おむつよりも吸収量の多さが求められるため、高い目付け量で高吸収ポリマーを配合することになる。その上に、抗菌粒子まで含有させようとすると、フィラメント集合体内の粒子状構成物は飽和状態を越えることとなり、保持性の問題を解消することが必要となる。
また、抗菌粒子を前述のフィラメント集合体中に含有させた場合、フィラメント集合体が主に繊維連続方向に沿って排泄液を拡散するため、抗菌粒子が排泄液と接触し難くなり、抗菌機能が発現し難いという問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、吸収要素としてフィラメント集合体を用いながら、高い吸収力と十分な抗菌性能とを発揮させることにある。
<請求項1記載の発明>
使用面側に設けられたトップシートと、裏面側に設けられた液不透過性シートと、これらトップシートと液不透過性シートとの間に設けられ、トップシートを透過した液を受け入れて保持する吸収要素とを備え、
前記吸収要素は、前記トップシート側に位置する上層吸収体と、この上層吸収体の下側に隣接する下層吸収体とを備え、
前記上層吸収体は、多数のフィラメントが物品前後方向に沿って連続するフィラメント集合体内に高吸収性ポリマー粒子を分散させてなるものであり、
前記下層吸収体は、繊維集合体内に抗菌粒子を分散させてなるものであり、
前記上層吸収体のフィラメントの密度が前記下層吸収体の繊維の密度よりも低密度であり、
前記上層吸収体のフィラメント集合体は、フィラメントの繊度が1〜16dtex、フィラメントの目付けが60〜100g/m 2 、かつ厚みが1〜10mmであり、
前記下層吸収体の繊維集合体は、繊維の繊度が1〜16dtex、繊維目付けが30〜60g/m 2 、かつ厚みが0.2〜2mmであり、
前記上層吸収体に含まれる高吸収性ポリマー粒子の粒径は200μm以上であり、前記下層吸収体に含まれる抗菌粒子の粒径は200μm未満である、ことを特徴とする吸収性物品。
本発明では、別途下側に隣接した下層吸収体の繊維集合体内に抗菌粒子が分散されている。これにより、吸収要素内に吸収された排泄液は、上層吸収体においてフィラメントに沿って物品前後方向に拡散しつつ下側に移動した後に下層吸収体内に移行し、下層吸収体の広範囲に多くの排泄液が保持されるため、排泄液はより多くの抗菌粒子に対して接触される。よって、単にフィラメント集合体内に抗菌粒子を分散させる場合と比べて抗菌性能に優れるようになる。また、抗菌粒子が消臭機能を有する場合、十分な消臭効果が発揮される。
また、上層吸収体のフィラメントの密度が相対的に低いことにより、排泄液が上層吸収体から下層吸収体へ移行し易くなるため、より多くの排泄液に対して抗菌効果を発揮できるようになる。
また、本項記載の物品においては、製造に際して、上層吸収体と下層吸収体とを重ね合わせた後に、その上から高吸収性ポリマー粒子と抗菌粒子とを混合してまたは別々に散布するだけで、高吸収性ポリマー粒子が主に下層吸収体の上側(上層吸収体56Aの上側、内部および下側を含む)に保持されるとともに、抗菌粒子が上層吸収体を通過して下層吸収体以下(下層吸収体の上側、内部および下側を含む)に保持されるようになるため、特に好ましい。
<請求項2記載の発明>
前記上層吸収体における高吸収性ポリマー粒子の目付けは50〜350g/m 2 であり、前記下層吸収体における抗菌粒子の目付けは25〜200g/m 2 である、請求項1記載の吸収性物品。
<請求項3記載の発明>
前記上層吸収体における前記フィラメント集合体の目付け、及び前記下層吸収体における前記繊維集合体の目付けの合計が150g/m2以下であり、
前記上層吸収体における前記高吸収性ポリマー粒子の目付け、及び前記下層吸収体における前記抗菌粒子の目付けの合計が250g/m2以上であり、
前記上層吸収体における前記フィラメント集合体に対する前記高吸収性ポリマー粒子の重量比が、前記下層吸収体の前記繊維集合体に対する前記抗菌粒子の重量比よりも低い、
請求項2記載の吸収性物品。
このように、全体として粒子量を多くするにしても、上層吸収体におけるフィラメント集合体に対する粒子の重量比を下層吸収における繊維集合体に対する粒子の重量比よりも低くすることにより、上層吸収体の繊維間隙が多くなり、排泄液が上層吸収体から下層吸収体へ移行し易くなるため、吸収性に優れると共に、より多くの排泄液に対して抗菌効果を発揮できるようになる。
前記下層吸収体の繊維集合体が、多数の短繊維が集合された短繊維集合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
短繊維集合体は、排泄液の拡散力においてはフィラメント集合体に劣るものであるが、拡散方向及び拡散性能が均一であり、排泄液の保持能力および抗菌粒子の保持能力も高い。よって、このような短繊維集合体を本発明の下層吸収体として用いると、抗菌粒子を高密度で保持できるようになるとともに、下層吸収体内に吸収された排泄液が全方向かつ広範囲に拡散されつつ、より多くの抗菌粒子に対して接触されるようになるため好ましい。
前記下層吸収体は、前記繊維及び前記抗菌粒子の混合物を原料としてエアレイド法により形成してなるエアレイド不織布である、請求項4記載の吸収性物品。
下層吸収体をこのようなエアレイド不織布とすることで、抗菌粒子の保持能力がさらに向上し、さらに高密度での抗菌粒子の保持が可能になる。
前記下層吸収体の抗菌粒子が、抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
下層吸収体の抗菌粒子が吸収性を有することで、上層吸収体における高吸収性ポリマー粒子の使用量を減らすことが可能となる。
前記上層吸収体の高吸収性ポリマー粒子が、抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
上層吸収体における高吸収性ポリマー粒子が抗菌消臭性を有することで、下層吸収体における抗菌粒子の使用量を減らすことが可能となる。
前記抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子が、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子を高吸収性ポリマー粒子に含有させてなるものであるか、あるいは前記ゼオライト粒子を高吸収性ポリマー粒子の表面に静電気により付着させてなるものである、請求項6又は7記載の吸収性物品。
このようなゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子を用いると、排泄液と銀との接触による抗菌消臭効果のみならず、ゼオライトの吸着作用および銀の触媒作用によって排泄液との接触が無い粒子においても消臭効果が発揮されるため好ましい。また、ゼオライト粒子は高吸収性ポリマー粒子中に含有させるのも一体性が高く、好ましい形態の一つであるが、静電気により高吸収性ポリマー粒子の表面に付着させると、製造が容易であるとともに、ゼオライト粒子の全体が外部に露出しているため効果が十分に発揮されるようになる。
前記上層吸収体は、物品の前後方向中央部にその前後より前記高吸収性ポリマー粒子の含有量が少ないか、または存在しない領域を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
本項記載の構造では、上層吸収体における排泄液の拡散が良好となり、吸収速度が向上するため好ましい。
前記下層吸収体は、物品の前後方向中央部にその前後より前記抗菌粒子の含有量が多い領域を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
物品の前後方向中央部は排泄液が特に集中する部分であるため、この部分の抗菌粒子の量を他の部位よりも多くすることで、抗菌作用を効果的に発揮させることができる。
特に、下層吸収体に含まれる抗菌粒子までもが吸収性を有する場合においては、本構成を取ることで、排泄液が集中する中央部の吸収量を向上させることができる。またこの場合、前述したような上層吸収体の前後方向中央部の高吸収性ポリマー粒子の含有量を少なくまたは存在しないようにした場合においても、吸収体全体としては中央部の吸収量を低下させないようにすることができる。
繊維集合体の上に、多数のフィラメントが物品前後方向に沿って連続するフィラメント集合体を重ね合わせた後、このフィラメント集合体の上から粒径200μm以上の高吸収性ポリマー粒子と粒径200μm未満の抗菌粒子とを混合してまたは別々に散布することにより、
前記フィラメント集合体内に高吸収性ポリマー粒子を分散させてなる上層吸収体と、前記繊維集合体内に抗菌粒子を分散させてなり、前記上層吸収体の下側に隣接する下層吸収体と、を備えた吸収要素を製造する方法であって、
前記上層吸収体をなすフィラメントの密度を、前記下層吸収体をなす繊維の密度よりも低密度とし、
前記散布した抗菌粒子を、前記上層吸収体を通過させて前記下層吸収体以下に保持させる、
ことを特徴とする吸収要素の製造方法。
このような製造方法により、本発明に係る吸収要素を容易に製造することができる。
<パンツ型使い捨ておむつの例>
図1には、パンツ型使い捨ておむつの例が示されている。このパンツ型使い捨ておむつ10は、外面(裏面)側の外装シート12と内面(表面)側の吸収性本体20とを備え、外装シート12に吸収性本体20が固定されている。吸収性本体20は、尿や軟便などの液(後述する生理用ナプキンでは経血)を受け止めて吸収保持する部分である。外装シート12は着用者に装着するための部分である。
外装シート12はたとえば図示のように砂時計形状となり、両側が括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。吸収性本体20は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。
外装シート12は、図2に示すように、吸収性本体20が所定位置に設置され固定された後、前後に折り畳まれ、外装シート12の前身頃12F及び後身頃12Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。これによって、図1に示す構造の、ウエスト開口部WOと一対のレッグ開口部LOを有するパンツ型使い捨ておむつが得られる。
図示の吸収性本体20の長手方向(すなわち図2の上下方向。製品の前後方向でもある。)の中間の幅は、外装シート12の括れた部分を繋ぐ幅より短い形態が示されている。この幅の関係は逆でもよいし、同一の幅でもよい。
外装シート12は望ましくは2枚のたとえば撥水性不織布のシートからなり、これらのシート間に弾性伸縮部材を介在させて、その収縮力により着用者にフィットさせる形態が望ましい。前記弾性伸縮部材としては、糸ゴムや弾性発泡体の帯状物などを使用できるが、多数の糸ゴムを使用するのが望ましい。図示の形態では、糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域Wにおいては幅方向に連続して設けられ、腰下領域Uにおいては両側部分のみに設けられ、股下領域Lにおいては設けられていない。糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域W及び腰下領域Uの両者に設けられていることで、糸ゴム12C自体の収縮力が弱いとしても、全体としては腰下領域Uにおいても着用者に当たるので、製品が着用者に好適にフィットする。
吸収性本体20は、図3に示されるように、液透過性のトップシート30と、トップシートを透過した液を吸収保持する吸収要素50とを備えている。吸収要素50の裏面側には液不透過性シート(バックシートとも呼ばれる)70が設けられている。この液不透過性シート70の裏面側には、前記の外装シート12が設けられている。さらに、両側部にバリヤーカフス60、60を備えている。
トップシート30は、液を透過する性質を有する。したがって、トップシート30の素材は、この液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれる)40を設けることができる。この中間シートは、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、トップシート30上を常に乾燥した状態とすることができる。
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布及びスパンボンド不織布が好ましい。
中間シート(セカンドシート)40は、トップシート30と包被シート58との間に介在されている。図5に示すように、中間シート(セカンドシート)40を設けない形態も使用可能である。
図示形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。中間シート40の代表的な素材は液の透過性に優れる不織布である。
吸収要素50は、吸収体56として、トップシート30側に位置する上層吸収体56Aと、この上層吸収体56の下側に隣接する下層吸収体56Bとを備えているものである。また、特に図示形態では、吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58と、吸収体56と包被シート58の裏面側部位(下側の部分)との間に配された保持シート80とを備えている。
上層吸収体56Aはフィラメント52,52…の集合体により形成される。フィラメント52,52…の集合体は、フィラメント(実質的に連続する長繊維)で構成されたトウ(繊維束)を開繊することにより製造することができる。フィラメント52は物品の前後方向(長手方向)に沿って延在する。
下層吸収体56Bは、繊維集合体内に抗菌粒子51を分散させてなるものである。繊維集合体としては、上層吸収体56Aと同様のフィラメント集合体を用いることもできるが、多数の短繊維55が不規則または規則的に集合された短繊維集合体を用いると、抗菌粒子を高密度で保持できるようになるため好ましい。また、短繊維集合体としては不織布や、パルプ繊維を積繊して得られる綿状パルプを用いることができる。このような吸収体56Bは、短繊維55および抗菌粒子51の混合物を用いて製造するか、あるいは予め製造した短繊維55の集合体に抗菌粒子51を散布することにより製造することができる。
本発明における「短繊維」とは、ウェブ中で繊維が連続している長繊維以外の全ての繊維状物を指し、一般的な合成繊維のように繊維長2〜90mm程度のものだけでなく、パルプ繊維のように繊維長2mm以下のものも含む。
下層吸収体56Bにおける抗菌粒子51の目付けは適宜定めれば良いが、例えば25〜200g/m2とすることができ、特に60〜100g/m2とするのが好ましい。
吸収体56において、上層吸収体56Aおよび下層吸収体56Bは、隣接していれば固定しなくても良いが、ホットメルト接着剤、トリアセチン、バインダー、熱等の接合手段を用いて接合するのが好ましい。
包被シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、8〜20g/m2、特に10〜15g/m2のものが望ましい。
特に、包被シート58として、フィラメント集合体よりも人工尿吸収量の多い繊維集合体、例えば人工尿吸収量が5〜30倍程度の繊維集合体を用いると、包被シート58により吸収体56の吸水性能を補うことができ、初期吸収速度および拡散性を向上できるため好ましい。
この包被シート58は、図3のように、吸収体56全体を包む形態のほか、たとえば図4に示すように、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、吸収体56を上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
高吸収性ポリマー粒子54や抗菌粒子51は、製造工程、あるいは消費者が使用するまでの流通過程で、吸収体56から抜け落ちることがある。抜け落ちた粒子群の凹凸は、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与える。この問題点を解決するために、吸収体56と包被シート58の裏面側部位(下側の部分)との間に粒子の保持性能を有する保持シート80を介在させるのは好ましい。この保持シート80は、ティッシュペーパ(クレープ紙)などの包被シート58のみでは足りないコシを補強して、消費者が使用する際に手で触ったとき違和感を軽減又は防止する。
保持シート80の素材は、特に限定されず、粒子の保持性能を有するものであれば足りる。具体的には、不織布、捲縮パルプ、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、絹、綿、麻、ナイロン、ポリウレタン、アセテート繊維等を例示することができる。
保持シート80を不織布とする場合、その保持シート80は、KES試験に基づく圧縮エネルギーが0.01〜10.00gfcm/cm2、好ましくは、0.01〜1.00gfcm/cm2で、かつ圧縮レジリエンスが10〜100%、好ましくは、70〜100%の不織布であるとよい。
保持シート80を設ける理由は、たとえば吸収体56から下方に抜け落ちた(抜け出た)高吸収性ポリマー粒子54等を保持することにある。したがって、抜け出た粒子に対して、包被シート58及び保持シート80を介して使用者に接触するので、使用者にジャリジャリした違和感として、伝わるおそれがない。特に上記の圧縮エネルギー及び圧縮レジリエンスである不織布であると、保持機能が十分に発揮される。
また、抜け出た粒子は、保持シート80によって保持され、包被シート58上を移動することがないため、吸収能力の偏在が生じるおそれもない。特に、保持シート80上を高粒子が移動を防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを保持シート80上に塗布することができる。また、保持シート80の上面(使用面側に向かう面)を粗面とすることで、保持シート80上を粒子が移動を防止するようにしてもよい。このための粗面化又は毛羽立ち手段としては、不織布の製造時におけるネット面でない非ネット面とする、マーブル加工を行う、ニードルパンチにより加工する、ブラシッング加工するなどを挙げることができる。
保持シート80は、図3等に示すように吸収体56の下方にのみ設けても、また図7に示すように、吸収体56の側面を通り吸収体56の上面にまで巻き上げて延在させてもよい。また、保持シート80を複数枚重ねて使用することも可能である。
上記例は、吸収体56と包被シート58の裏面側部位との間に保持シート80を設ける例であるが、保持シート80は、包被シート58より裏面側であってもよく(その形態は図示していない)、要は、吸収体56に対して裏面側に保持シート80を設ければ、製品の裏面から触る場合におけるジャリジャリした違和感を軽減させるあるいは生じさせないものとなる。
保持シート80を吸収体56と液不透過性シート70との間に設ける場合、フィラメント集合体よりも人工尿吸収量の多い繊維集合体、例えば人工尿吸収量が5〜30倍程度の繊維集合体を用いて保持シート80を形成すると、保持シート80により吸収体56の吸水性能を補うことができ、初期吸収速度および拡散性を向上できるため好ましい。
液不透過性シート70は、吸収体56の裏面側に配されるシートであり、このシートとトップシート30との間に吸収要素50が介在している。液不透過性シート70は、液を透過しないものである限り、その素材が特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを用いることができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。
液不透過性シート70を、側面を回り込ませて使用面に延在させる(図示せず)ことで、側方への液の透過を防止できるが、実施の形態においては、横漏れについては、バリヤーカフス60を形成する二重のバリヤーシート64間に第2液不透過性シート72を介在させることにより防止している。すなわち、バリヤーカフス60の起立まで第2液不透過性シート72が延在しているので、トップシート30を伝わって横に拡散した液やバリヤーカフス60、60間の軟便が、横方向に浸透するのを防止できる。
製品の両側に設けられたバリヤーカフス60、60は、トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便の横漏れを防ぐために設けられているものである。図示のバリヤーカフス60は、撥水性不織布シートを二重に積層して形成したものであり、吸収体56の裏面側からトップシート30の下方への折り込み部分を覆って、表面側に突出するように形成されている。トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿を阻止するために、特に、二重の不織布シート間に液不透過性シート70の側部が挿入され、表面側に突出するバリヤーカフス60の途中まで延在している。
また、バリヤーカフス60自体の形状は適宜に設計可能であるが、図示の例では、バリヤーカフス60,60の前後端部が折り畳まれた状態で固定され、前後方向中間部は固定されておらず、かつバリヤーカフス60の突出方向の先端部及び中間部に前後方向に沿って弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム62が伸張下で固定されており、使用状態においてその収縮力により、バリヤーカフス60が起立するようになっている。
なお、図示しないが、吸収性本体20の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などにより相互に固定することができる。
一方、図5及び図6はテープ式使い捨ておむつの例を示している。図6は図5における9−9線矢視図であるが、吸収性本体20についてはやや誇張して図示してある。
Claims (11)
- 使用面側に設けられたトップシートと、裏面側に設けられた液不透過性シートと、これらトップシートと液不透過性シートとの間に設けられ、トップシートを透過した液を受け入れて保持する吸収要素とを備え、
前記吸収要素は、前記トップシート側に位置する上層吸収体と、この上層吸収体の下側に隣接する下層吸収体とを備え、
前記上層吸収体は、多数のフィラメントが物品前後方向に沿って連続するフィラメント集合体内に高吸収性ポリマー粒子を分散させてなるものであり、
前記下層吸収体は、繊維集合体内に抗菌粒子を分散させてなるものであり、
前記上層吸収体のフィラメントの密度が前記下層吸収体の繊維の密度よりも低密度であり、
前記上層吸収体のフィラメント集合体は、フィラメントの繊度が1〜16dtex、フィラメントの目付けが60〜100g/m 2 、かつ厚みが1〜10mmであり、
前記下層吸収体の繊維集合体は、繊維の繊度が1〜16dtex、繊維目付けが30〜60g/m 2 、かつ厚みが0.2〜2mmであり、
前記上層吸収体に含まれる高吸収性ポリマー粒子の粒径は200μm以上であり、前記下層吸収体に含まれる抗菌粒子の粒径は200μm未満である、ことを特徴とする吸収性物品。 - 前記上層吸収体における高吸収性ポリマー粒子の目付けは50〜350g/m 2 であり、前記下層吸収体における抗菌粒子の目付けは25〜200g/m 2 である、請求項1記載の吸収性物品。
- 前記上層吸収体における前記フィラメント集合体の目付け、及び前記下層吸収体における前記繊維集合体の目付けの合計が150g/m2以下であり、
前記上層吸収体における前記高吸収性ポリマー粒子の目付け、及び前記下層吸収体における前記抗菌粒子の目付けの合計が250g/m2以上であり、
前記上層吸収体における前記フィラメント集合体に対する前記高吸収性ポリマー粒子の重量比が、前記下層吸収体の前記繊維集合体に対する前記抗菌粒子の重量比よりも低い、
請求項2記載の吸収性物品。 - 前記下層吸収体の繊維集合体が、多数の短繊維が集合された短繊維集合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
- 前記下層吸収体は、前記繊維及び前記抗菌粒子の混合物を原料としてエアレイド法により形成してなるエアレイド不織布である、請求項4記載の吸収性物品。
- 前記下層吸収体の抗菌粒子が、抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
- 前記上層吸収体の高吸収性ポリマー粒子が、抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
- 前記抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子が、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子を高吸収性ポリマー粒子に含有させてなるものであるか、あるいは前記ゼオライト粒子を高吸収性ポリマー粒子の表面に静電気により付着させてなるものである、請求項6又は7記載の吸収性物品。
- 前記上層吸収体は、物品の前後方向中央部にその前後より前記高吸収性ポリマー粒子の含有量が少ないか、または存在しない領域を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
- 前記下層吸収体は、物品の前後方向中央部にその前後より前記抗菌粒子の含有量が多い領域を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
- 繊維集合体の上に、多数のフィラメントが物品前後方向に沿って連続するフィラメント集合体を重ね合わせた後、このフィラメント集合体の上から粒径200μm以上の高吸収性ポリマー粒子と粒径200μm未満の抗菌粒子とを混合してまたは別々に散布することにより、
前記フィラメント集合体内に高吸収性ポリマー粒子を分散させてなる上層吸収体と、前記繊維集合体内に抗菌粒子を分散させてなり、前記上層吸収体の下側に隣接する下層吸収体と、を備えた吸収要素を製造する方法であって、
前記上層吸収体をなすフィラメントの密度を、前記下層吸収体をなす繊維の密度よりも低密度とし、
前記散布した抗菌粒子を、前記上層吸収体を通過させて前記下層吸収体以下に保持させる、
ことを特徴とする吸収要素の製造方法。
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