JP4473592B2 - Dlcコーティング膜 - Google Patents

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本発明は、耐摩耗性と低摩擦性が要求される機械部品等にオーバレイ層として施されるDLCコーティング膜の改良に関するものである。
Diamond Like Carbon(以下、「DLC」と称する)は、ダイヤモンドに似た物性を持つアモルファス状の炭素膜であり、硬度が高く、耐摩耗性に優れ、さらに、低摩擦係数を有することから、近年、低摩擦性、耐摩耗性が要求される機械部品の摺動部へ利用されつつある。
こうしたDLCコーティング膜を形成する方法としては、スパッタ法やアークイオンプレーティング法等の物理的蒸着法(PVD法)、および化学的蒸着法(CVD法)等が用いられる。
特開2000−119843号公報 特開2002-256415号
しかしながら、DLCコーティング膜に低摩擦性を発揮させるためには特別な工夫が必要である。油等による潤滑下の摩擦は荷重と速度によって境界潤滑、混合潤滑、流体潤滑などに変化する。DLCコーティング膜の低摩擦性が発揮される領域は個体間に接触が生じている境界潤滑領域や混合潤滑状態である。従来のDLCコーティング膜は、摺動部品に用いた場合に、成膜中に生じる数十〜数百ナノメートルサイズの微小な突起が硬度の低い相手材との間でならされないことで、本来の低摩擦が得られないことがある。また、硬度の低い相手材を摩耗させやすくすることがある。摺動部品の動き出し時や往復運動時の摺動方向が切り替わる静摩擦域や低速域は速度が遅いため油膜が薄くなる。この場合、粘度一定として速度と荷重によって決定する油膜厚さに対して突起は物理的な引っ掛かりとなり、摩擦係数に悪影響を及ぼす。例えば自動車、二輪車のサスペンション部品等は、この突起から生じる摩擦が作動性(乗り心地)に大きく影響する。一般的なクロム(Cr)メッキなどの従来材料は摺動初期にこのような有害な突起が摺動により除去されて問題とならない。DLCコーティング膜に突起が存在しなければクロムメッキに対して約30%〜60%摩擦が小さくなる。またDLCは硬く、耐磨耗性も良いことから、良好な表面状態を長期間維持することができる。
DLCコーティング膜は優れた耐磨耗性を有する反面このような有害な突起がならされにくい。特に相手材がゴムや樹脂のように柔らかい場合は上記の突起を除去しなければ返って摩擦係数が大きくなる。従って、DLCの低摩擦性を発揮するためには、DLCコーティング膜表面の突起を予め除去する必要がある。
また、DLCコーティング膜は硬く研磨が困難であるため、量産時には短時間で再現性よくなじみ面が得られる特徴を備えるDLCコーティング膜やその研磨方法を提供することも重要である。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、高硬度と高い表面平滑度を併せ持ったDLCコーティング膜、及び短時間で研磨可能なDLCコーティング膜とその研磨方法を提供することを目的とする。
第1の発明は、アンバランスマグネトロンスパッタ法を用いた、DLCコーティング膜の作製方法において、金属製ワークに印加するバイアス電圧を一定に保って、硬度が厚み方向に略一定であるトップ層を形成する工程と、バイアス電圧を前記トップ層の形成時よりも低下させることにより、硬度が前記トップ層より低下しているオーバレイ層を前記トップ層上に形成する工程と、を備え、前記オーバレイ層を前記トップ層上に形成する前記工程が、前記トップ層と前記オーバレイ層の構成元素比率を同じにして、バイアス電圧を所定の減少率で時間的に低下させる工程を含むことを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、さらに、ダイヤモンド砥粒を用いて前記オーバレイ層を研磨する工程を含むことを特徴とする。
第3の発明は、第2の発明において、オーバレイ層を研磨した後の研磨表面において、微小突起の高さが206nm以下であることを特徴とする。
第4の発明は、第2の発明において、オーバレイ層を研磨した後の研磨表面において、高さ10〜30nmの微小突起の数が高さ30nm以上の微小突起の数より大きいことを特徴とする。
第5の発明は、第2の発明において、オーバレイ層を研磨した後の研磨表面において、30nm以上の微小突起の密度が多くとも0.71×105/mm2、または40nm以上の微小突起の密度が多くとも0.14×105/mm2、または80nm以上の微小突起の密度が多くとも6.9×103/mm2であることことを特徴とする。
第1の発明によると、オーバレイ層をトップ層上に形成する工程が、前記トップ層と前記オーバレイ層の構成元素比率を同じにして、バイアス電圧を所定の減少率で時間的に低下させる工程を含むため、オーバレイ層の硬度が、DLCコーティング膜の最表面に向かって厚み方向に減少するような短時間で再現性のある研磨を行えるオーバレイ層を形成できる。また、研磨により高い平滑度を有するなじみ面(ならし面)が得られる。このような研磨処理により予めなじみ面を作製したDLCコーティング膜は、極低硬度材料(ゴム、樹脂材料等)を相手材にしても摺動部材として使用可能である。
第1の発明により作製されたDLCコーティング膜は、低硬度材料(銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金等)が相手材である場合には、相手材との摩擦によりなじみ面が迅速に得られるため、使用前の研磨処理を行うことなく好適に摺動部材として使用可能である。さらに、高硬度材料(鋼等)が相手材である場合には、低荷重下でも相手材との摩擦により迅速になじみ面が得られ、使用前の研磨処理を行うことなく好適に摺動部材として使用可能である。
第2の発明によると、第1の発明において作製されたDLCコーティング膜をダイヤモンド砥粒を用いて研磨することにより、このDLCコーティング膜は、摺動部品に使用され、低硬度材料を相手にする場合や、低荷重で使われる場合でも、摩擦が小さくなる。
第3の発明によると、DLCコーティング膜は、オーバレイ層を研磨した後の研磨表面において微小突起の高さが206nm以下であり、良好なならし面を有する。このDLCコーティング膜は、摺動部品に使用され、予めならし面が得られているので極低硬度材料(ゴム、樹脂材料等)を相手にする場合でも摩擦が小さい。
第4の発明によると、DLCコーティング膜は、オーバレイ層を研磨した後の研磨表面において、高さ10〜30nmの微小突起の数が高さ30nm以上の微小突起の数より大きくなっており、良好なならし面を有する。このDLCコーティング膜は、予めならし面が得られているので極低硬度材料(ゴム、樹脂材料等)を相手にする場合でも摩擦が小さい。
第5の発明によると、オーバレイ層を研磨した後の研磨表面において、30nm以上の微小突起の密度が多くとも0.71×105/mm2、40nm以上の微小突起の密度が多くとも0.14×105/mm2、80nm以上の微小突起の密度が多くとも6.9×103/mm2であり、良好なならし面を有する。このDLCコーティング膜は、予めならし面が得られているので極低硬度材料(ゴム、樹脂材料等)を相手にする場合でも摩擦が小さい。
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すDLCコーティング膜9は、アンバランスマグネトロンスパッタ(UBM)法(以下、「UBMスパッタ法」と称する)によって形成される。
スパッタの原理は、図2に示すように、アルゴン(Ar)等のスパッタガスを導入した真空中でターゲット11を陰極として陽極の間でグロー放電させてプラズマを形成し、このプラズマ中のイオンをターゲット11に衝突させてターゲット11の原子を弾き飛ばし、この原子をターゲット11と対向して配置された金属製ワーク1上に堆積させて皮膜を形成するようになっている。なお、DLC成膜時には、DLC中への水素量を制御するため、メタン(CH4)等の炭化水素ガス或いは水素ガスがスパッタガスとともに使用されることもある。
UBMスパッタ法において、スパッタ蒸発源10にターゲット11の中心部と周辺部で異なる磁気特性を有する磁石12,13が配置されて、プラズマを形成しつつ強力な磁石12により発生する磁力線の一部がワーク1の近傍に達し、チャンバ内のArをイオン化させ、イオンアシスト効果が生じる。また、ワーク1にバイアス電圧を印加することによって、イオンアシスト効果を調整し、DLC膜の硬度を制御することができる(例えば、特開2002-256415号参照)。これは、スパッタガスイオンのワーク表面上への衝突の強さ(バイアス電圧により調整される)が硬度に影響するためである。
図3は、UBMスパッタ装置20の基本構成を示す。真空チャンバ21に4つのスパッタ蒸発源10a〜10dが設けられ、その中央に配置された自公転式ワークテーブル26上にワーク1が置かれ、ワーク1に外周からコーティングが行われる。スパッタ蒸発源10a〜10dには皮膜材料となる平板状ターゲットが取り付けられる。真空チャンバ21にはアルゴン等のスパッタガスとメタンガス等の炭化水素ガスが所定量充填される。
スパッタ蒸発源10a,10cにはターゲットとしてグラファイトを使用し、スパッタ蒸発源10b,10dにはターゲットとして金属を使用する。金属として、例えばクロム(Cr)、タングステン(W)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、タングステンカーバイト(WC)が用いられる。
DLCコーティング膜9は、図1に示すように、ワーク(母材)1の表面にボンド層2、中間層3、トップ層4、オーバレイ層5が順に積層して形成される。そして、オーバレイ層5が表面研磨機により研磨され、所定の平滑度を持つ構成とする。
図4は、上記DLCコーティング膜9を形成するのにあたって、ターゲット出力(スパッタ電源の電力)が時間変化する様子を示している。なお、金属の蒸着量及び炭素の蒸着量はターゲット出力に比例するため、図4の縦軸は膜中での金属と炭素の比率とみることもでき、一方、膜厚は堆積時間に比例するため、図4の横軸は膜厚とみることもできる。なお、便宜上、金属ターゲット出力は、後述のボンド層2における値を100%とし、グラファイトターゲット出力は後述のトップ層4の値を100%として表現することとする。
ボンド層2は、金属ターゲット10b,10dのみをスパッタして、金属膜として形成される。このボンド層2を形成するのにあたって、図4に示すように、スパッタ蒸発源10b,10dの金属ターゲット出力を100%とし、スパッタ蒸発源10a,10cのグラファイトターゲット出力を0%と一定にして、所定時間だけスパッタが行われる。
中間層3は、スパッタ蒸発源10b,10dの金属ターゲットとスパッタ蒸発源10a,10cのグラファイトターゲットを同時にスパッタし、ターゲット出力を次第に変化させて金属と炭素の傾斜組成膜として形成される。この中間層3を形成するのにあたって、図4に示すように、スパッタ蒸発源10b,10dの金属ターゲット出力を100%から時間に対して比例的に減少させる一方、スパッタ蒸発源10a,10cのグラファイトターゲット出力を0%から時間に対して比例的に増加させて、所定時間だけスパッタが行われる。
図4に示すように、トップ層4は、通常、スパッタ蒸発源の金属組成比を0%(金属ターゲット出力を0%)とし、スパッタ蒸発源のグラファイト組成比を100%(グラファイトターゲット出力100%)と略一定にして所定時間だけスパッタが行われる。この場合、トップ層の硬度は、厚みによらず略一定であり、通常のDLC膜の硬度となる。
なお、場合によっては、トップ層4の靱性を高めるために、金属ターゲットもスパッタして、トップ層の金属の比率を0〜18%の範囲に設定することにより、トップ層4の密着性や靱性を高め、高荷重によってワーク1が変形するような場合、割れや、剥離が生じることを防止することも可能である。図5に示すように、トップ層4に含まれる金属の比率と靱性及び硬度の関係ように、金属の比率を0〜18%の範囲に設定することにより、トップ層4の靱性と硬度を好ましい範囲に設定できる。
オーバレイ層5は、通常、スパッタ蒸発源10a,10cのグラファイトターゲットのみをスパッタし、DLC膜として形成される。なお、トップ層とオーバレイ層の構成元素比率は同じであり、例外的に、トップ層に金属を含有させる場合はオーバレイ層5の形成時にも金属ターゲットがスパッタされる。このオーバレイ層5を形成するのにあたって、図4に示すように、スパッタ蒸発源10b,10dの金属ターゲット出力を0%とし、スパッタ蒸発源10a,10cのグラファイトターゲット出力を100%と一定にして、所定時間だけスパッタが行われる。
オーバレイ層5において、バイアス電圧は、オーバレイ層5の最表面に向かって単調に減少させており、例えば、トップ層形成時の値から所定の減少率をもって低下させている(図4のA)。或いは、バイアス電圧は、中間層及びトップ層形成時の値から所定値だけ減少させてもよい(図4のB)。オーバレイ層5は、バイアス電圧を低下させることにより硬度が低下することが知られており、オーバレイ層5は、トップ層4から硬度の低下したDLC膜となる。非常に高い硬度を有するトップ層4の研磨は既存の方法では困難であるが、トップ層4より硬度の低いオーバレイ層5を研磨することにより、高い表面平滑度を有する研磨表面(ならし面)が得られる。なお、ワークに印加するバイアス電圧が小さくなると、イオンアシスト効果が弱まるため、硬度が低下する。
特に、工業的に量産可能な形で再現性よく、研磨により高い平滑度を有するならし面を作製するために、オーバレイ層5において、バイアス電圧は、トップ層形成時の値から単調に低下させることが好ましい(図4のA)。つまり、オーバレイ層5において、硬度をトップ層4とオーバレイ層5の境界からオーバレイ層5の最表面に向かって単調に低下している。この場合、重要なことは、最表面からの深さに応じて硬度が増加するため、トップ層4に達するまでに研磨が不可能となり、オーバレイ層5の厚さの範囲で研磨が進まなくなることである。通常の非常に高い硬度を有するDCL膜の研磨は、研磨に適したオーバレイ層を有さないため良好に行えないが、硬度を低下させたオーバレイ層5では良好な研磨が可能となる。成膜条件など様々なばらつきの中でオーバレイ層5の性質がばらついても、上記のオーバレイ層5を設けるだけで量産に適した現実的な短時間の研磨により、高い平滑度を有するならし面を有するDLC膜を再現よく作製できる。
なお、オーバレイ層5は、製膜時のバイアス電圧を所定値以下に下げるとともに、炭化水素ガスや水素ガスからの水素の含有量を増やすことにより、その硬度を減少させることもできる。
オーバレイ層5は、テープ研磨機等の表面研磨機により研磨され、所定の平滑度を持つ。研磨にはダイヤモンド砥粒(粒径1〜30μm)を用いることが好ましいが、オーバレイ層5の硬度を著しく小さくすれば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)も使用可能である。ダイヤモンド砥粒を用いテープ研磨機で研磨する場合は、5〜20mm/秒のテープスピード、テープの押付け力20〜80kgで研磨がなされ、良好なならし面が得られる。研磨時間を長くすると研磨表面の微小突起の高さはより減少する。オーバレイ層5は、研磨加工が施されることにより、高硬度と高い表面平滑度を併せ持ち、例えば二輪車のフロントフォーク等に用いられた場合、樹脂製シール及び樹脂製軸受との間の摩擦を下げることができ、樹脂製シール及び樹脂製軸受の十分な耐久性が確保される。
なお、相手材が金属である場合など、ならし効果が期待できる摺動条件下では、オーバレイ層5の研磨加工を省くことも可能である。オーバレイ層5は、硬度が低く、好ましくは硬度を傾斜させており、相手材が金属である場合、摺動初期において迅速に良好な表面を形成する特性を有するからである。つまり、相手材が軟らかい場合には、研磨加工を行えばよいし、金属等の硬い相手材の場合、研磨加工は不要となる。
UBMスパッタ装置内に、洗浄後のワーク(アルミニウム合金製、円筒形状)を配置し、アルゴン(Ar)プラズマによるUBMスパッタを行った。ターゲットの印加電圧(スパッタ電源電圧)とワークに印加されるバイアス電圧は直流(マイナス)である。ワーク表面とターゲットとの最近距離は15cmとしスパッタにより成膜を行った。ワーク上に、クロム(Cr)のボンド層(膜厚0.1μm)、炭素とタングステンカーバイト(WC)の組成比率を変化させた中間層(膜厚0.5μm)、DLC(100%)のトップ層(膜厚1.0μm)、DLC(100%)のオーバレイ層(膜厚0.2μm)を順に成膜した。バイアス電圧は、成膜開始時からトップ層成膜終了時まで200Vに維持されるが、オーバレイ層の成膜中には一定速度で降下され、オーバレイ層の成膜終了時に50Vに達するようにした(サンプル1)。
別に、オーバレイ層だけを設けない、すなわちバイアス電圧200Vで作製したトップ層が最外に位置するDLC膜(サンプル2)と、オーバレイ層の成膜時に50Vに達した後バイアス電圧50Vを保って1μm程度成膜したDLC膜(サンプル3)を作製しておき、ナノインデンター(商品名:エリオニクス社製ENT-1100)により表面の硬度を測定すると、サンプル3は、サンプル2より硬度が約72%減少した。この結果は、オーバレイ層の成膜中にバイアス電圧を200Vから50Vへ降下させることにより、オーバレイ層内で最表面に向かって硬度が約72%減少することを示す。
成膜後のサンプル1のオーバレイ層に対して、ダイヤモンドフィルム(粒径5μm程度)によりテープ研磨を行った。研磨は、テープの押付け力60kg、テープスピード10mm/秒で、テープ幅4インチ(101mm)のテープを幅方向に移動させることにより行われた。図7に示すように、研磨は、ゴムによりテープを押した状態で、ワークの軸方向にテープを送ることによりなされた。
図6(a)のAFM(原子間力顕微鏡)画像に示すように、研磨前のサンプル1の表面には、高さ80〜150nmの突起(突起の根元の幅は典型的に300nm程度)が多数存在する。図6(a)はまた典型的なDLC膜の表面を示めしており、従来のDLC膜は研磨が困難であったため、このように表面に顕著な突起がある状態で使用されてきた。
一方、図6(b)のAFM画像に示すように、サンプル1のDLC膜の研磨後の表面には、高さ80〜150nmの突起はほとんどなくなっており、研磨が良好に行われたことを示している。
なお、極最表面の平滑性を評価する場合、先端直径が小さくとも2μmであるJIS規格のダイヤモンド球を用いる触針式の粗さ計では計測できない。AFM(原子間力顕微鏡)を用いて120×120μm2程度の領域で得た表面プロファイルデータを平滑化処理して表面解析を実施することで評価が可能になる。
表1に、サンプル1表面の突起の高さ(負荷曲線谷低面より1%基準)の分布を示す。突起の個数と高さは、走査型プローブ顕微鏡(商品名:島津製作所製SPM-9500J3)により観察した表面プロファイルを面積0.2μm2以上の単位で凹凸を抽出して解析することにより求めた。表1に示すように、研磨前に30nm以上の突起が120×120μm2の領域内で6045個(密度:4.20×105/mm2)存在するのに対して、研磨後は1016個(密度:0.71×105/mm2)に減少している。研磨前に40nm以上の突起が120×120μm2の領域内で3851個(密度:2.67×105/mm2)存在するのに対して、研磨後は199個(密度:0.14×105/mm2)に減少している。さらに、研磨後に80nm以上の突起が120×120μm2の領域内で100個(密度:6.9×103/mm2)になった。さらに、研磨前は、高さ10〜30nmの突起より高さ30nm以上の突起の方が数多く存在するが、研磨後は、高さ10〜30nmの突起の方が、高さ30nm以上の突起より多くなっており、良好な研磨が行えたことを示している。
さらに、表2に示すように、突起の高さの最大値は、研磨前に744nmであったものが、研磨後に206nmに減少しており、突起の高さの平均値は、研磨前の98nmから研磨後の47nmへ減少している。
図8に、研磨後のDLC膜の摩擦係数をバウデン−レーベン試験により求めた結果を、Crめっき膜、TiN膜、研磨前のDLC膜に比較して示す。試験は、相手材のNBR(ニトリルゴム)製シートに1/2インチ直径鋼球圧子を裏に当てて、潤滑材としてオイル(フロントフォークオイル:KHL−15−10(カヤバ工業製))を使用して、移動速度20mm/sec、荷重1.0Kgf(9.8N)、ストローク10mmの条件下で行った。なお、1インチは2.54cmである。
研磨後のDLC膜の摩擦係数は、Crめっき膜、TiN膜、研磨前のDLC膜に対して1/2〜1/3の値となり、本実施例のDLC膜を研磨加工で表面をならすことにより硬度の極めて低い樹脂に対しても良好な摩擦係数が得られる。
本発明のDLCコーティング膜は、摺動部品の表面コーティングに利用できる。
本発明の実施の形態を示すDLCコーティング膜の断面図である。 同じくスパッタ法の原理を示す説明図である。 同じくUBMスパッタ装置の構成図である。 同じくターゲット出力が変化する様子を示す特性図である。 同じくトップ層に含まれる金属の比率と靱性及び硬度の関係を示す特性図である。 (a)研磨前の実施例のDLC膜の表面状態を示すAFM(原子間力顕微鏡)画像である。(b)研磨後の実施例のDLC膜の表面状態を示すAFM画像である。 研磨方法を示す図である。 研磨後のDLC膜の摩擦係数をCrめっき膜、TiN膜、研磨前のDLC膜の摩擦係数に比較して示したグラフである。
符号の説明
1 ワーク
2 ボンド層
3 中間層
4 トップ層
5 オーバレイ層
9 DLCコーティング膜
10a〜10d スパッタ蒸発源
20 UBMスパッタ装置

Claims (5)

  1. アンバランスマグネトロンスパッタ法を用いた、DLCコーティング膜の作製方法であって、
    金属製ワークに印加するバイアス電圧を一定に保って、硬度が厚み方向に略一定であるトップ層を形成する工程と、
    バイアス電圧を前記トップ層の形成時よりも低下させることにより、硬度が前記トップ層より低下しているオーバレイ層を前記トップ層上に形成する工程と、を備え、
    前記オーバレイ層を前記トップ層上に形成する前記工程が、前記トップ層と前記オーバレイ層の構成元素比率を同じにして、バイアス電圧を所定の減少率で時間的に低下させる工程を含むことを特徴とするDLCコーティング膜の作製方法。
  2. さらに、ダイヤモンド砥粒を用いて前記オーバレイ層を研磨する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のDLCコーティング膜の作製方法。
  3. 前記オーバレイ層を研磨した後の研磨表面において、微小突起の高さが206nm以下であることを特徴とする請求項2に記載のDLCコーティング膜の作製方法。
  4. 前記オーバレイ層を研磨した後の研磨表面において、高さ10〜30nmの微小突起の数が高さ30nm以上の微小突起の数より大きいことを特徴とする請求項2に記載のDLCコーティング膜の作製方法。
  5. 前記オーバレイ層を研磨した後の研磨表面において、30nm以上の微小突起の密度が多くとも0.71×105/mm2、40nm以上の微小突起の密度が多くとも0.14×105/mm2、または80nm以上の微小突起の密度が多くとも6.9×103/mm2であることを特徴とする請求項2に記載のDLCコーティング膜の作製方法。
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