JP4581861B2 - 硬質炭素薄膜及びその薄膜の製造方法 - Google Patents

硬質炭素薄膜及びその薄膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、摺動部材の表面に被覆される非晶質炭素材料を含む硬質炭素薄膜及びその薄膜の製造方法に係り、特に、この硬質炭素薄膜の耐摩耗性、低摩擦特性、などの摺動特性を向上させることができる、硬質炭素薄膜及びその薄膜の製造方法に関する。
従来から、構造用鋼あるいは鋼合金鋼などの摺動部材の摺動面に、耐摩耗性を向上させ、低摩擦特性を得るために、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの硬質炭素薄膜を被覆することはよく知られている。そして、このような硬質炭素薄膜の低摩擦特性をさらに向上させる(具体的には摩擦係数の低減)ために、硬質炭素薄膜に金属元素等を添加することが行われている。
例えば、このような硬質炭素薄膜の一例として、基板上に少なくともその最外表面層がホウ素を3〜50原子%添加したダイヤモンド状炭素又は非晶質炭素からなる自己修復性硬質固体潤滑膜が開示されている。このように成膜された潤滑膜は、所定の割合のホウ素がダイヤモンド状炭素又は非晶質炭素に添加されているので、摺動時に大気と反応してホウ酸が生成され、このホウ酸が固体潤滑膜として作用することにより、摩擦係数を小さくすることができる(特許文献1参照)。
特開平5−208806号公報
しかし、前述の如く、硬質炭素薄膜に金属元素等の添加物を添加した場合には、この添加物が硬質炭素薄膜の表面硬さを低下させてしまうことが多く、たとえ摺動表面の摩擦係数を低減させたとしても、この表面硬さの低下に伴い、この硬質炭素薄膜の摩耗量は、添加をしていないものに比べ多くなってしまう。その結果、長期にわたり持続的に摩擦係数の低減効果を維持することは難しい。さらに、このような硬質炭素薄膜を被覆した摺動部材の長寿命化を図るべく、薄膜の膜厚を厚くすることも考えられるが、薄膜の膜厚を厚くしすぎると、薄膜と基材との密着強度が低下してしまうおそれもある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、薄膜の密着強度を確保すると共に、表面硬さを低下させることなく、耐摩耗性及び低摩擦特性などの摺動特性を向上することができる硬質炭素薄膜及びその薄膜の製造方法と提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく多くの実験と研究を行うことにより、添加元素を加えずに硬質炭素薄膜の摺動特性を向上させためには、硬質炭素薄膜に機能性を持たせた表面形状にするべきであると考え、この機能性を有した表面形状を得るためのファクターとして、成膜中に硬質炭素薄膜に作用する圧縮内部応力に着眼した。そして、硬質炭素薄膜に所定の圧縮内部応力を与えながら成膜することにより、この薄膜の表面に、摺動性に優れた複数の微小突起が形成されるとの知見を得た。
本発明は、本発明者らが得た上記の新たな知見に基づくものであり、本発明の硬質炭素薄膜は、表面硬さがHv1500以上であり、表面粗さが中心線平均粗さRa0.01μm以上0.02μmよりも小さくなるように、表面に複数の微小突起を形成させたことを特徴としている。
本発明の如き硬質炭素薄膜は、非晶質炭素材料(DLC:ダイヤモンドライクカーボン)を少なくとも表面に有した硬質炭素薄膜であり、表面粗さがRa0.01μm以上0.02μmよりも小さくなるように、表面に複数の微小突起が形成されているので、この突起により相手側の摺動部材(相手部材)の表面を、この薄膜の表面に馴染むように研磨しながら表面粗さを小さくすることができる。この結果、この硬質炭素薄膜と相手部材との摩擦係数を小さくすることができる。また、薄膜の表面硬さは、Hv1500以上必要であり、Hv1500未満では、摩耗しやすく、摩擦係数を低減することは難しい。
さらに、この微小突起は、前記硬質炭素薄膜の表層内部に空孔を有するように、前記表層の一部を屈曲させた突起であることが好ましい。このように、硬質炭素薄膜の膜表層の一部を微小突起とすることにより、この硬質の微小突起が、相手部材を研磨することができる。また、この突起は、表面を屈曲させたものであるので、突起頂部は、湾曲した形状であり、その大きさも小さいので、相手部材を過剰に研磨することがない。
さらに、この微小突起は、硬質炭素薄膜の前記表面を摺動させたときに、硬質炭素薄膜から脱落可能に形成されていることが好ましい。このように、微小突起が、摺動時に硬質炭素薄膜から脱落することにより、微少突起がDLC表面に存在する間は、相手部材を研磨して鏡面化するが、摺動により脱落していくので、徐々にその研磨効果を喪失していく。これにより、相手部材を適度に研磨、鏡面化させ、過剰に研磨して面粗れさせることがない。この脱落した微小突起の大きさは微小であり、かつ、その形状は中心(突起の頂部)が隆起するように屈曲した円板形状をしており、さらにこの円板の周縁部は丸みを帯びている。このような大きさ及び形状により、硬質炭素薄膜の表面と相手部材の表面とを過剰に研磨することはない。また、上述した如く、この微小突起は、膜表層内部に空孔を有するように表層の一部を屈曲させた突起であるので、この突起が脱落した箇所には前記空孔が出現する。そして、給脂をしながら摺動させた場合には、この空孔は油溜りとして作用するため、この薄膜の潤滑性がさらに向上し、摺動抵抗が小さくなる。
さらに、前記微小突起は、100mm長さあたりに、高さが0.3μm以上となる突起を、20〜230個(単位面積に換算すると4個〜530個/1cm相当)形成していることが好ましい。微小突起の個数が、100mm長さあたり20個よりも少ないと、この突起による研磨作用はほとんどなく、230個以上である場合には、この突起が相手部材を研磨し過ぎ、摩耗が促進されてしまう。
この微小突起は、後述するように、成膜中の表面に圧縮内部応力を作用させることにより形成されるので、圧縮内部応力により薄膜の密着強度が低下しないように、この硬質炭素薄膜は、非晶質炭素材料からなる表面硬質層と、Cr、Ti、W、Ni及びこれらの組合せからなる群から選択される元素を含む密着層と、を積層することが好ましい。このような密着層を設けることにより、表面硬質層と基材との密着性を高め、摺動時に、表面硬質層が基材から剥離することを防止することができる。尚、上述した発明に係る硬質炭素薄膜の表層は、この表面硬質層に含まれる。
より好ましい態様としては、この硬質炭素薄膜は、前記表面硬質層と前記密着層との間に中間層をさらに設け、該中間層は、前記表面硬質層から前記密着層に近づくに従って、密着層の元素の組成になるように、非晶質炭素材料に前記元素が添加されている。このように、傾斜的に、非晶質炭素材料に、Cr、Ti、W、Ni及びこれらの組合せからなる群から選択される元素を添加することにより、表面硬質層に隣接した中間層の界面は、表面硬質層に近い又は同じ組成となり、一方、密着層に隣接した中間層の界面は、密着層に近い又は同じ組成となるので、この中間層が、表面硬質層と密着層との密着性をさらに向上させ、薄膜の密着強度を向上させることができる。
そして、密着層の厚さは、0.1〜0.5μmであることが好ましく、また、中間層の厚さは、0.5〜1.0μmであることが好ましい。密着層の厚さが0.1μmよりも薄いと、充分な密着効果を得ることができず、密着層の厚さが0.5μmよりも厚いと、密着力はそれ以上向上することはなく、コスト高となってしまう。また、同様に、中間層の厚さが、密着層の厚さが0.5μmよりも薄いと、充分な密着効果を得ることができず、密着層の厚さが1.0μmよりも厚いと、密着力はそれ以上向上することはなく、コスト高となってしまう。なお、非晶質炭素材料からなる表面硬質層の層厚みは、上述した表層の一部を屈曲させた突起を形成することができるのであれば、特に限定されるものではない。
本発明は、さらに、上述した硬質炭素薄膜の好適な成膜方法として以下に示す成膜方法をも開示する。本発明に係る硬質炭素薄膜の成膜方法は、基材の表面に硬質炭素薄膜を成膜する成膜方法であって、該成膜方法は、硬質炭素薄膜の表層の一部を屈曲させた複数の微小突起が形成するまで、成膜されている硬質炭素材料に圧縮内部応力を加えながら、硬質炭素薄膜の成膜処理を行うことを特徴としている。
このような方法で成膜された硬質炭素薄膜は、この圧縮内部応力により、成膜中に表層内部に空孔を有するように、前記表層の一部が屈曲して突起が形成される。この微小突起は、その頂部が湾曲しており、硬質炭素薄膜の表面を摺動させたときに、硬質炭素薄膜から脱落可能となっている。そして、この脱落した微小突起の大きさは微小であり、かつ、その形状は中心(突起の頂部)が隆起するように屈曲した円板形状をしており、さらにこの円板の周縁部は丸みを帯びている。本発明に係る成膜方法では、このような微小突起を得ることができるので、摺動時に、この微小突起は、硬質炭素薄膜から脱落しながら、相手部材を研磨して鏡面化し、かつ、相手部材を過剰に研磨することがないので、摺動時の初期摩耗もほとんどなく、硬質炭素薄膜の表面に相手部材の表面との低フリクション化を図ることができる。
さらに、本発明に係る成膜方法の成膜処理は、基材と炭素材料との間に、不活性ガス及び炭化水素系ガスを含む処理ガスを流すと共にバイアス電圧をかけながらプラズマを発生させて処理する方法であって、前記圧縮内部応力が3000MPaから5500MPaの範囲となるように、ガス流量及びバイアス電圧を調整することが好ましい。
このような範囲の圧縮内部応力となるように、ガス流量及びバイアス電圧を調整することにより、表面粗さが中心線平均粗さRa0.01μm以上0.02μmよりも小さくなるように、表面に複数の微小突起を形成することができると共に、突起高さが0.3μm以上となる突起が、100mm長さあたり20〜230個形成することができる。この圧縮内部応力が3000MPaよりも小さくなると、中心平均粗さRaも突起の個数も少なく、表面粗さも上記の範囲を満たさず小さくなり、微小突起による研磨効果を得ることができない。また、この圧縮内部応力が5500MPa以上になると、突起の個数が多く、中心平均粗さRaは大きくなりすぎ、微小突起により、相手部材の摺動面を研磨し過ぎて、摩耗が促進されてしまう。また、バイアス電圧が低すぎると、緻密な膜が形成できず、耐摩耗性を得ることができない。
さらにこの炭素材料は、純度が99%以上であることが好ましい。炭素材料の純度が、99%未満である場合には、成膜される硬質炭素薄膜に介在する不純物が増加し、この不純物が基点となって膜が摩耗・剥離する可能性がある。
また、本発明に係る成膜方法により使用するガスは、不活性ガスがアルゴンガスであり、前記炭化水素系ガスがメタン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、プロパン及びこれらの組合せからなる群から選択されるガスであり、処理ガス中の前記炭化水素系ガスの体積率が、5%から15%の範囲にあることが好ましい。
このような炭化水素系ガスを用いて成膜することにより、表面が非晶質炭素材料からなる硬質炭素薄膜を得ることができ、さらにこの体積率で処理ガスを流し、バイアス電圧を調整することにより、上記の最適な範囲の圧縮内部応力を得ることができる。
また、炭化水素系ガスの種類によって、ガス体積率の変化に対応する圧縮内部応力も変化し、その結果として、硬質炭素薄膜の表面粗さ、微小突起の個数、表面硬さが変化することがあるが、後の実施例に示すように炭化水素系ガスの体積率を5%から15%の範囲に設定して成膜することにより、表面粗さ及び微小突起の個数が、上記の最適な範囲になり、耐摩耗性を確保すると共に、摩擦係数を低減することができる。
このように、硬質炭素薄膜を成膜する場合には、上述のようなスパッタリングにより成膜することが好ましいが、成膜時に、上記範囲の内部応力を発生させて微小突起を形成することができるのであれば、例えば、真空蒸着、イオン化蒸着、イオンプレーティング、などを利用した物理的蒸着法(PVD)により成膜してもよく、このような方法を用いた場合においても、上述したと同様に、炭化水素系ガスの濃度、及び、バイアス電圧を調整することが好ましい。
さらに、この硬質炭素薄膜前記成膜処理は、対向した一対の電極の間に、炭化水素系ガスを含む処理ガスを流すと共にバイアス電圧をかけながらプラズマを発生させて処理する方法であって、前記圧縮内部応力が3000MPaから5500MPaの範囲となるように、処理ガスに含有する炭化水素系ガスのガス濃度を調整することが好ましい。
このように、上記範囲の圧縮内部応力を発生させて微小突起を形成することができるプラズマ処理などを利用した化学気相成長法(CVD)により、硬質炭素薄膜を成膜してもよく、この場合には、炭化水素系ガスを調整することにより、圧縮内部応力を上記の範囲にし、薄膜に微小突起を形成することができる。
本発明によれば、硬質炭素薄膜に微小突起を形成することにより、摺動時に、微小突起が脱落しながら、相手部材を鏡面化するので、表面硬さを低下させることなく、耐摩耗性及び低摩擦特性を向上することができる。
以下に、本発明を実施例により説明する。
(実施例1)
硬質炭素薄膜を被覆する基材として、表面粗さをRa0.01μmにした15.7×10.0×6.3mmのステンレス鋼(SUS440C:JIS規格)を準備し、この基材の15.7×6.3mmの表面にスパッタリング装置(神戸製鋼所製)を用いて、硬質炭素薄膜を成膜した。この成膜条件としては、基材と純度99.99%の炭素材料からなるターゲット(グラファイトターゲット)との間に、アルゴンガス(不活性ガス)と、メタンガス(炭化水素系ガス)とからなる処理ガスを、処理ガス中のメタンガスの体積率が5%となるよう調整して流した。そして、この処理ガスを流した状態で、成膜温度(具体的には基材の温度)を200℃に保持して、炭素材料と基材との間に100Vに調整したバイアス電圧をかけながら、プラズマを発生させて、基板の表面をスパッタリングすることにより、膜厚(層厚)が1μmとなるように非晶質炭素材料(DLC)からなる硬質炭素薄膜(表面硬質層)を成膜した。
(実施例2)
実施例1と同じように硬質炭素薄膜を成膜した。実施例1と相違する点は、非晶質炭素材料からなる薄膜を表面硬質層とし、この表面硬質層(DLC)と基材(SUS440C)との間に密着層として、層厚み0.3μmのクロム層を設けた点である。なお、このクロム層の成膜方法としては、実施例1と同様の方法で、グラファイトターゲットの代わりに純度99.99%のクロムからなるターゲット(クロムターゲット)を装置内に配置し、スパッタリングにより成膜し、その後、実施例1と同様にしてDLCからなる表面硬質層を積層した。
(実施例3)
実施例2と同じように硬質炭素薄膜を成膜した。実施例2と相違する点は、さらに前記表面硬質層と前記密着層との間に層厚み0.8μmの中間層(傾斜層)をさらに設けた点である。この傾斜層は、表面硬質層(DLC)から密着層(クロム)に近づくに従って、傾斜的に、DLCからクロムの組成になるように、実施例2に示す如く密着層を成膜後、実施例1と同様の装置を用いて、密着層表面にクロムをスパッタリングし、さらに、一定の割合でクロムターゲットのスパッタを減少させ、グラファイトターゲットのスパッタを増加させることにより傾斜層を成膜した。そして、この傾斜層に実施例1と同様にしてDLCの表面硬質層を積層した。尚、実施例3に関しては、このような試験体を複数個製作した。
(実施例4)
実施例3と同じように硬質炭素薄膜を成膜した。実施例2と相違する点は、成膜時のメタンガスの体積率を15%にして成膜した点である。
(試験内容)
実施例1〜4の硬質炭素薄膜に対して、表面硬さ計としてナノインテンダー(東陽テクニカ社製)を用いて表面硬さを測定し、さらに、この薄膜の表面粗さを測定した。また、この他にも、この硬質炭素薄膜の表面組織を観察した。
そして、実施例1〜4の硬質炭素薄膜に対して、さらに摩擦摩耗性能試験を行った。具体的には、材質SAE4620からなる直径35.0mm、厚さ8.7mの中空円筒試験片を製作し、さらにこの外周面の表面粗さをRa0.25μmにし、潤滑油(SAE粘度グレード5W−30の市販エンジン油)を給油し、この外周面を実施例1〜3の硬質炭素薄膜に接触させ、荷重30kgを負荷しながら、円筒試験片の周速0.3m/s、温度80℃の条件で、30分間連続試験を行った。また、この摺動時における摩擦抵抗から摩擦係数を測定した。さらに、試験後の硬質炭素薄膜の摩耗深さを測定し、この表面の観察を行った。試験後の円筒試験片の表面粗さも測定した。
この他にも、実施例1〜4の硬質炭素薄膜に対して、スクラッチ試験を行い、硬質炭素薄膜の密着力を測定した。具体的には、半径0.2μmのダイヤモンド圧子を用いて、この薄膜表面に、負荷速度100N/minで負荷をかけながら、ステージを10mm/minで移動させ、この薄膜が剥離した時点での荷重を、その薄膜の密着力とした。
これらの観察結果、試験結果を以下の表1、及び図1、2に示す。尚、図2(a)は、実施例1の硬質炭素薄膜の表面粗さを測定した結果であり、図2(a)に示すような表面粗さの結果を用いて100mm中に、0.3μm以上の高さを示した尖り部分を微小突起と認定し、その個数もカウントした。
Figure 0004581861
(比較例1)
実施例3と同じように硬質炭素薄膜を成膜した。実施例3と相違する点は、成膜時のメタンガスの体積率を4%にして成膜した点である。尚、比較例1に関しては、複数個の試験体を製作した。
(比較例2)
実施例3と同じように硬質炭素薄膜を成膜した。実施例3と相違する点は、成膜時のメタンガスの体積率を20%にして成膜した点である。尚、比較例2に関しては、複数個の試験体を製作した。
(比較例3)
DLCの薄膜にTiを5%添加して成膜した従来品である。
これらの比較例1〜3について、実施例1と同様の試験を行った。この結果を表1及び図2(b)に示す。尚、図2(b)は、比較例2の硬質炭素薄膜の表面粗さを示す図である。
[結果1]
(結果1−1)
図1(a)は、実施例3の硬質炭素薄膜の表面を10,000倍に拡大した顕微鏡写真図であり、図1(b)は、図1(a)の硬質炭素薄膜の切断面を15,000倍に拡大した顕微鏡写真図であり、図1(a)(b)に示すように、硬質炭素薄膜の表面には、微小突起が形成されていた。また、図1(b)に示すようにこの微小突起は、硬質炭素薄膜の表層内部に空孔を有するように、表層の一部が湾曲した形状となっている。また、図2(a)の表面粗さの測定結果からも分かるように、このような微小突起は複数個形成されており、実施例1、2及び4も同様に、このような微小突起が観察された。そして、摩擦摩耗試験後の硬質炭素薄膜の表面は、微小突起は無く、空孔が表面に形成されていた。また、比較例2の硬質炭素薄膜は、図2(b)の表面粗さの測定結果からもわかるように、微小突起を観察することができなかった。
(結果1−2)
実施例1〜4の硬質炭素薄膜の表面粗さは、中心線平均粗さRa0.01μm以上0.02μmよりも小さく、その表面硬さは、1500Hv以上であった。
(結果1−3)
比較例1の硬質炭素薄膜は、実施例1〜4に比べて、表面粗さ及び表面硬さは大きく、摩擦係数も大きかった。比較例2の硬質炭素薄膜は、実施例1〜4に比べて、表面粗さは、実施例1〜4と同程度又はそれよりも小さく、表面硬さは1300Hv程度であり、摩擦係数は大きかった。比較例3の硬質炭素薄膜は、表面硬さは1300Hv程度であり、摩耗深さが大きかった。
(結果1−4)
表1に示すように、実施例1〜3の順に、密着力が大きかった。
(評価1)
これらの結果1及び図3〜図5に基づいて評価する。図3〜図5は、実施例3、比較例1及び2に関するものであり、図3は、硬質炭素薄膜の表面粗さと摩擦係数との関係を示した図、図4は、硬質炭素薄膜の初期表面粗さと試験終了後の円筒試験片の表面粗さとの関係を示した図、図5は、硬質炭素薄膜の初期の表面粗さと、表面粗さの結果からカウントした微小突起の個数との関係を示した図である。
(評価1−1)
上記結果1−1から、実施例1〜4の硬質炭素薄膜に形成された微小突起は、硬質炭素薄膜の表層内部に空孔を有することから、この微小突起は、成膜時に表層の一部が圧縮内部応力により屈曲したことにより得られた突起であると考えられる。また、硬質炭素薄膜に形成された微小突起は、試験終了後の硬質炭素薄膜の表面には存在せず、空孔が形成されていたことから、摺動時に、この微小突起は、硬質炭素薄膜から脱落したと考えられる。
そして、結果1−3に示したように、実施例1〜4の硬質炭素薄膜の表面の摩擦係数が、比較例1及び2よりも低い理由の一因として、実施例1〜4の薄膜は、摺動時に、微小突起が脱落しながら、摺動面の研磨作用により、摺動面の馴染み性が向上したことによると考えられる。そして、脱落後の薄膜の表面に形成された空孔が油溜りとなって、潤滑性も向上したと考えられる。
(評価1−2)
結果1−3及び図3に示すように、比較例1の硬質炭素薄膜は、表面粗さが実施例3に比べ大きいことから摺動時の抵抗は大きく、実施例3よりも摩擦係数が大きくなったと考えられる。さらに、図4に示すように、比較例1の円筒試験片の表面粗さが実施例3に比べ大きくなった理由としては、比較例1の硬質炭素薄膜の初期の表面粗さが大きいためであると考えられる。
このことから、初期のリングを過剰に研磨して面を粗すことなく、摩擦係数の低減するためには、硬質炭素薄膜の表面粗さは、中心線平均粗さRa0.02μmよりも小さいことが必要である。
(評価1−3)
結果1−3、図3に示すように、比較例2の硬質炭素薄膜は、実施例3に比べて表面粗さが全体的に小さいにもかかわらず、実施例3に比べて摩擦係数が大きい。この理由としては、図4に示すように、比較例2は、実施例3に比べて表面硬さが低く、試験後の円筒試験片の摺動面がほとんど変化していないことから、比較例2の硬質炭素薄膜では、相手部材に充分な研磨効果を与えることができなかったからであると考えられる。よって、比較例2の硬質炭素薄膜は、実施例3よりも、相手部材である円筒試験片と馴染みが悪く、摩擦係数が大きくなったと考えられる。
このことから、摩擦係数が低減し、耐摩耗性を向上させるためには、硬質炭素薄膜の表面粗さは、中心線平均粗さRa0.01μm以上で、かつ表面硬さは、1300Hvよりも大きい表面硬さ、1500Hv以上必要である。尚、比較例3の摩耗深さが、実施例1〜4に比べて大きいのは、DLCにTiを添加したことにより、表面硬さが低下した結果、摩耗が大きかったと考えられる。
(評価1−4)
図5に示すように、表面粗さが増加するに従って微小突起の個数も増加している。そして、評価1−1及び評価1−2から得られた最適な表面粗さの条件(中心線平均粗さRa0.01μm以上0.02μmよりも小さい)を満たす場合には、微小突起の個数は、100mm長さあたり20〜230個形成されると考えられる。そして、この程度の個数の微小突起が存在すると、相手部材を適度に研磨、鏡面化させ、過剰に研磨して面粗れさせることがないので、摩擦係数を低減する効果が得られると考えられる。
(評価1−5)
実施例1〜4、及び比較例1及び2の製造方法を比較すると、メタンガスの体積率が相違しており、このガス濃度(体積率)は、成膜される薄膜の表面硬さ、表面粗さに依存すると考えられる。そして、実施例1〜4の如く、表面硬さHv1500以上であり、表面粗さが中心線平均粗さRa0.01μm以上0.02μmよりも小さくなるように、表面に微小突起を形成させるための条件としては、スパッタリング時の処理ガス中にメタンガスの体積率を、5%から15%の範囲に調整することが必要であると考えられる。
(評価1−6)
結果1−4から、実施例2は、クロムからなる密着層を設けたことにより、実施例1に比べて硬質炭素薄膜の密着性が向上したと考えられる。このような密着力を向上させる材料としては、この他にも、クロム同様の遷移元素であるTi、W、Ni及びこれらの組合せから選択される元素を添加しても、同様の効果が得られると考えられる。
さらに、実施例3、4は、表面硬質層(DLC)と密着層(クロム)との間に傾斜層を設けたことにより、表面硬質層に隣接した傾斜層との界面は、表面硬質層に近い又は同じ組成となり、一方、密着層に隣接した傾斜層との界面は、密着層に近い又は同じ組成となるので、表面硬質層と密着層との密着性をさらに向上させることができたと考えられる。
(実施例5〜7)
実施例5、6は、実施例2と同じようにして硬質炭素薄膜を成膜した。実施例2と異なる点は、密着層の層厚さを、それぞれ0.1μm、0.5μmにした点である。また、実施例7は、実施例2と同じであり、密着層の厚さは0.3μmである。
(比較例4、5)
比較例4は、実施例5〜7のように密着層を設けていない点のみで異なり、実施例1と同じものである。また、比較例5は、密着層の層厚さ0.7μmにした点で、実施例5〜7と異なる。
これらの実施例5〜7、比較例4、5の硬質炭素薄膜について、実施例1と同じようにスクラッチ試験を行い、この薄膜の密着力を確認した。この結果を図6に示す。
[結果2]
図6に示すように、実施例5〜7は、硬質炭素薄膜の密着力が少なくとも40N確保されており、比較例4、5の硬質炭素薄膜は、実施例5〜7に比べて密着力が小さかった。
[評価2]
結果2から、密着力確保するための最適な密着層の厚みは、0.1μm〜0.5μmであると考えられ、密着層厚みが0.1μm未満の場合には、層厚みが薄すぎるため充分な密着効果が得られず、また、厚みが0.5μmを超えると、成膜時に発生する残留応力が増加し、膜の靭性が低下することにより、膜が破壊し易くなるために密着力が低下すると考えられる。
(実施例8〜10)
実施例8、9は、実施例3と同じようにして硬質炭素薄膜を成膜した。実施例3と異なる点は、傾斜層の厚みを、それぞれ、0.5μm、1.0μmにした点である。また、実施例10は、実施例3と同じであり、傾斜層の厚みは0.8μmである。
(比較例6,7)
比較例6は、実施例8〜10のように傾斜層を設けていない点のみで異なり、実施例1と同じものである。比較例7は、傾斜層を1.5μmにした点で、実施例8〜10と異なる。
これらの実施例8〜10、比較例6、7の硬質炭素薄膜について、実施例1と同じようにスクラッチ試験を行い、この薄膜の密着力を確認した。この結果を図7に示す。
[結果3]
実施例8〜10は、硬質炭素薄膜の密着力が少なくとも50N確保されており、比較例6、7の硬質炭素薄膜は、実施例8〜10に比べて密着力が小さかった。
[評価3]
この結果3から、密着力確保するための最適な傾斜層厚みは、0.5μm〜1.0μmであると考えられ、傾斜層厚みが、0.5μm未満の場合には、層厚みが薄すぎるため充分な密着効果が得られず、また、傾斜層厚みが1.0μmを超えると、成膜時に発生する残留応力が増加し、膜の靭性が低下することにより、膜が破壊し易くなるために密着力が低下すると考えられる。
(実施例11)
実施例1と同じように硬質炭素薄膜を成膜した。表2に示すように、実施例1と異なる点は、成膜に用いた基材を、クロムモリブデン鋼(SCM415)を用いた点、処理ガスの炭化水素系ガスにアセチレンガスを用いた点が異なる。
(実施例12)
実施例11と同じように硬質炭素薄膜を成膜した。表2に示すように、実施例11と異なる点は、処理ガス中のアセチレンガスを体積率で15%含有させた点である。
(実施例13)
実施例11と同じように硬質炭素薄膜を成膜した。表2に示すように、実施例11と異なる点は、バイアス電圧を150Vにした点である。
(実施例14)
実施例11と同じように硬質炭素薄膜を成膜した。表2に示すように、実施例11と異なる点は、処理ガス中のアセチレンガスを体積率で15%含有させた点、バイアス電圧を200Vにした点である。
Figure 0004581861
実施例11〜14について、実施例1と同じように、表面粗さ、表面硬さ、微小突起の個数を測定し、さらに、摩擦摩耗試験により、摩擦係数、摩耗深さを測定し、スクラッチ試験により薄膜の密着力を測定した。その結果を表3に示す。さらに、実施例12については、試験前及び試験後の硬質炭素薄膜と円筒試験片の表面の表面粗さを測定した。その結果を表4に示す。
Figure 0004581861
Figure 0004581861
[結果4]
表3に示すように、実施例11〜実施例14は、先に示した実施例1〜10と同じ程度の表面粗さ(中心線平均粗さRa0.01μm以上0.02μm)、及び表面硬さ(Hv1500以上)を有しており、さらに微小突起の個数も同程度(突起高さ0.3μm以上の突起が100mm長さあたり20〜230個)であった。また、摩擦係数、摩耗深さも、実施例1〜4と同程度であり、さらに密着力も実施例1と同程度であった。さらに、表4に示すように、硬質炭素薄膜、円筒試験片の表面粗さは、試験後には小さくなっていた。
[評価4]
結果4から、実施例11〜実施例14の如くバイアス電圧、アセチレンガスのガス濃度を変化させることにより、実施例1〜4と同様の効果を有した硬質炭素薄膜を形成することができると考えられる。そして、アセチレンガスのガス濃度は、実施例1〜4にメタンガスと同程度(体積率5%〜15%)であればよいと考えられる。
さらに、処理ガス中の炭化水素系ガスとして、メタンガス、アセチレンガスを用いて成膜できたことから、ベンゼン、トルエン、プロパンなどの炭化水素系ガスを用いても、同様の薄膜を成膜することができると考えられる。
(実施例15)
実施例12と同じようにして、硬質炭素薄膜を成膜した。実施例12と異なる点は、基材に平板状のシリコンウエハを用いた点であり、このウエハ上に硬質炭素薄膜を成膜した。そして、バイアス電圧を100V、200V、400V、600Vにして、それぞれの条件において成膜を行った。尚、バイアス電圧を一定に保持するモード(スルーモード)により、成膜した。
(実施例16)
実施例15と同じようにして、硬質炭素薄膜を成膜した。実施例12と異なる点としては、バイアス電圧を、10μs印加、20μs休止を繰り返した、断続的に印加するモード(パルスモード)により成膜した。
そして、実施例15、16の硬質炭素薄膜が成膜されたシリコンウエハの反りを測定することにより、硬質炭素薄膜に作用する圧縮内部応力を算出した。なお、このように成膜した硬質炭素薄膜の表面に、微小突起が存在していることの確認も行った。この結果を図8に示す。
[結果5]
図8に示すように、バイアス電圧の電圧値及び電圧波形を変化させることにより、硬質炭素薄膜に作用する圧縮内部応力が変化することが分かった。さらに、実施例15のように、スルーモードにより成膜した方が、パルスモードにより成膜したものに比べて、圧縮内部応力が大きくなることが分かった。また、バイアス電圧と硬質炭素薄膜に作用する圧縮内部応力の関係は、比例関係になく、バイアス電圧が200Vを超えると、圧縮内部応力が減少した。
[評価5]
結果5に示したように、バイアス電圧により内部応力が変化した理由としては、成膜中に、プラズマ化したアルゴンイオンが、バイアス電圧によりワークに引き寄せられ、成膜済みの薄膜に高速で突入することにより薄膜にゆがみが生じ、内部応力が変化したからであると考えられる。また、バイアス電圧が200Vを超えると、内部応力が減少した理由としては、成膜中に薄膜に衝突するイオンの衝突があまりにも強く、その結果、この衝突エネルギーが熱に変換されてしまい、薄膜中の原子の再配列が起きるために圧縮内部応力が緩和されたからであると考えられる。このことから、圧縮内部応力は、バイアス電圧に存在し、また、その応力を最大にするバイアス電圧が存在することがわかった。
(実施例17)
実施例15と同様にして、シリコンウエハに硬質炭素薄膜を成膜した。成膜条件としては、バイアス電圧及びアセチレンの流量を変化させて、硬質炭素薄膜の表層の一部を屈曲させた複数の微小突起が形成するまで、成膜されている硬質炭素材料に圧縮内部応力を加えながら、硬質炭素薄膜の成膜処理を行った。
そして、実施例17の複数の硬質炭素薄膜の圧縮内部応力を、実施例15と同様の方法で測定すると共に、これらの表面に形成される微小突起の個数(100mm長さあたり突起高さが0.3μm以上となる突起)を、実施例1と同様の方法で測定した。この結果を図9に示す。
[結果6]
図9に示すように、硬質炭素薄膜に作用する圧縮内部応力の増加に伴い、微小突起の個数がほぼ比例的に増加した。
[評価6]
結果5から、これまでに示した微小突起は、硬質炭素薄膜に作用する圧縮内部応力により発生したものであると考えられる。そして、突起高さが0.3μm以上となる微小突起を、100mm長さあたり20〜230個発生させるためには、圧縮内部応力を3000MPaから5500MPaの範囲となるように、ガス流量及びバイアス電圧を調整する必要があると考えられる。
さらに、このような応力範囲となるように、硬質炭素薄膜に内部圧縮応力を与えることができるのであれば、例えば、物理的蒸着法(PVD)として、スパッタリングのほかにも、真空蒸着、イオン化蒸着、イオンプレーティングにより成膜してもよく、またこの他にも、対向した一対の電極の間に炭化水素系ガスを含む処理ガスを流すと共にバイアス電圧をかけながらプラズマを発生させて成膜処理するような、プラズマ処理を利用した学気相成長法(CVD)により成膜してもよいと考えられる。そして、プラズマ処理を行う場合には処理ガスに含有する炭化水素系ガスのガス濃度を調整することにより、上記応力範囲となるように薄膜を成膜することができると考えられる。
実施例3の硬質炭素薄膜に形成された微小突起の表面を示した写真図であり、(a)は、硬質炭素薄膜の表面を10,000倍に拡大した顕微鏡写真図であり、(b)は、硬質炭素薄膜の切断面を15,000倍に拡大した顕微鏡写真図。 表面粗さの測定結果を示した図であり、(a)は、実施例1の硬質炭素薄膜の表面粗さの測定結果、(b)は、比較例2の硬質炭素薄膜の表面粗さの測定結果。 実施例3、比較例1及び2に関する硬質炭素薄膜の表面粗さと摩擦係数との関係を示した図。 実施例3、比較例1及び2に関する硬質炭素薄膜の初期表面粗さと試験終了後の円筒試験片の表面粗さとの関係を示した図。 実施例3、比較例1及び2に関する硬質炭素薄膜の初期の表面粗さと、微小突起の個数との関係を示した図。 実施例5〜7、及び比較例4、5の硬質炭素薄膜の密着力を示した図。 実施例8〜10、及び比較例6、7の硬質炭素薄膜の密着力を示した図。 実施例15、16の硬質炭素薄膜のバイアス電圧と圧縮内部応力との関係を示した図。 実施例17の硬質炭素薄膜の圧縮内部応力と微小突起の個数との関係を示した図。

Claims (8)

  1. 表面硬さがHv1500以上であり、表面粗さが中心線平均粗さRa0.01μm以上0.02μmよりも小さくなるように、表面に複数の微小突起を形成させ
    前記微小突起は、前記硬質炭素薄膜の表層内部に空孔を有するように、前記表層の一部を屈曲させた突起であり、
    前記微小突起は、100mm長さあたり20〜230個形成されていることを特徴とする硬質炭素薄膜。
  2. 前記微小突起は、硬質炭素薄膜の前記表面を摺動させたときに、硬質炭素薄膜から脱落可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の硬質炭素薄膜。
  3. 前記硬質炭素薄膜は、非晶質炭素材料からなる表面硬質層と、Cr、Ti、W、Ni及びこれらの組合せからなる群から選択される元素を含む密着層と、を積層したことを特徴とする請求項1または2に記載の硬質炭素薄膜。
  4. 前記硬質炭素薄膜は、前記表面硬質層と前記密着層との間に中間層をさらに設け、該中間層は、前記表面硬質層から前記密着層に近づくに従って、密着層の元素の組成になるように、非晶質炭素材料に前記元素が添加されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の硬質炭素薄膜。
  5. 前記密着層の厚さは、0.1〜0.5μmであり、前記中間層の厚さは、0.5〜1.0μmであることを特徴とする請求項4に記載の硬質炭素薄膜。
  6. 基材の表面に硬質炭素薄膜を成膜する成膜方法であって、該成膜方法は、硬質炭素薄膜
    の表層の一部を屈曲させた複数の微小突起が形成するまで、成膜されている硬質炭素材料
    に圧縮内部応力を加えながら、硬質炭素薄膜の成膜処理を行うものであり、
    前記成膜処理は、基材と炭素材料との間に、不活性ガス及び炭化水素系ガスを含む処理ガスを流すと共にバイアス電圧をかけながらプラズマを発生させて処理する方法であって、前記圧縮内部応力が3000MPaから5500MPaの範囲となるように、ガス流量及びバイアス電圧を調整することを特徴とする質炭素薄膜の成膜方法。
  7. 前記不活性ガスはアルゴンガスであり、前記炭化水素系ガスはメタン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、プロパン及びこれらの組合せからなる群から選択されるガスであり、処理ガス中の前記炭化水素系ガスの体積率は、5%から15%の範囲にあることを特徴とする請求項6に記載の硬質炭素薄膜の成膜方法。
  8. 基材の表面に硬質炭素薄膜を成膜する成膜方法であって、該成膜方法は、硬質炭素薄膜
    の表層の一部を屈曲させた複数の微小突起が形成するまで、成膜されている硬質炭素材料
    に圧縮内部応力を加えながら、硬質炭素薄膜の成膜処理を行うものであり、
    前記成膜処理は、対向した一対の電極の間に、炭化水素系ガスを含む処理ガスを流すと共にバイアス電圧をかけながらプラズマを発生させて処理する方法であって、前記圧縮内部応力が3000MPaから5500MPaの範囲となるように、処理ガスに含有する炭化水素系ガスのガス濃度を調整することを特徴とする質炭素薄膜の成膜方法。
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