JP4472258B2 - 燃料電池用プロトン導電膜および該膜を備えた燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、燃料電池用プロトン導電膜および該膜を備えた燃料電池に関する。さらに詳しくは、高温安定性に優れ、高温運転あるいは長期運転において高い電圧を維持できる安定性に優れた燃料電池用導電膜および該膜を備えた燃料電池に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、クリーンな水素をエネルギー源とする高効率、無公害でCO2等温暖化ガスを発生しない発電システムとして燃料電池が注目されている。このような燃料電池は、家庭や事業所など固定設備、自動車などの移動設備などでの使用を目的に本格的な開発研究が行われている。
【0003】
燃料電池は使用する電解質によって分類され、アルカリ電解質型、固体高分子電解質型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型等に分けられる。このとき固体高分子電解質型およびリン酸型は電荷移動体がプロトンであり、プロトン型燃料電池ともいわれる。
この燃料電池に用いる燃料としては、天然ガス、LPガス、都市ガス、アルコール、ガソリン、灯油、軽油などの炭化水素系燃料が挙げられる。
【0004】
このような炭化水素系燃料を、まず水蒸気改質、部分酸化などの反応により水素ガス、COガスに変換し、COガスを除去して水素ガスを得る。この水素は、アノードに供給され、アノードの金属触媒によってプロトン(水素イオン)と電子に解離し、電子は回路を通じてカソードに流れ、プロトン(水素イオン)は電解質膜を拡散してカソードに流れ、カソードにてこの電子、水素イオンとカソードに供給される酸素とから水となって電解質膜に拡散する。すなわち、酸素と燃料ガスに由来する水素とを供給して水を生成する過程で電流を取り出すメカニズムになっている。
【0005】
このような燃料電池に用いられる電解質膜としてはスルホン酸基を有するポリスチレン系の陽イオン交換膜、フルオロカーボンスルホン酸とポリビニリデンフルオライドとの混合膜、フルオロカーボンマトリックスにトリフルオロエチレンをグラフト化した膜、パーフルオロカーボンスルホン酸膜等が用いられている。このような有機樹脂膜では長期運転したり、あるいは概ね80℃以上の高温になって膜中の含水率が低下したりするとイオン電導度が低下し、電圧が低下してしまうという問題があった。
【0006】
このため、特開平6−103983号公報には、高分子膜に保水性能を具備させるために、高分子膜にリン酸基を持つ化合物を含有させることで、80℃あるいはそれ以上の高温で好適に使用可能な固体高分子電解質型燃料電池が開示されている。
また、特開2001−143723号公報には、室温から200℃程度の温度範囲で使用可能な燃料電池用電解質として、五酸化リンを特定の量比で含む非晶質シリカ成形体からなる燃料電池用電解質が開示されている。
【0007】
しかしながら、これらの電解質を、100℃以上の高温で長期間にわたって使用すると、含水率が低下してイオン電導度が低下し、電圧が降下し、電池の性能が低下する問題があった。
さらにこのよう燃料電池には、アノード(燃料極)でH2は解離することなくH2のまま通過してしまうことがあり、起電圧の低下や発電量の低下などの問題を招くことがあった。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、100℃以上の高温で長期間にわたって使用しても、イオン電導度が低下したり、あるいは電圧が降下したりすることがなく、電池の性能を高く維持することが可能な燃料電池用プロトン導電膜(電解質膜として機能する)および該膜を備えた燃料電池を提供することを目的としている。
【0009】
【発明の概要】
本発明者らは、上記問題点を解消すべく鋭意検討した結果、水素を吸蔵するとともに水素をプロトンに解離することのできる導電性成分を含む導電膜を用いると、保水性能に係わりなく高温運転あるいは長期運転において高い電圧を維持できることを見いだして本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る燃料電池用プロトン導電膜は、
(i)多孔質粒子に金属微粒子を担持してなる導電性成分と
(ii)マトリックス形成成分とからなり、
イオン導電率が10-4〜10-1S/cmの範囲にあることを特徴としている。
燃料電池用プロトン導電膜の体積抵抗値は、1〜106Ω・cmの範囲にあることが好ましい。
【0011】
前記金属微粒子の平均粒子径は、0.5〜20nmの範囲にあることが好ましい。
このような金属微粒子は、Pd、Pt、Ru、Au、Ag、Ni、Cu、Sn、Znから選ばれる1種以上の金属微粒子および/または複合金属微粒子であることが好ましい。
【0012】
前記多孔質粒子がZrO2、SiO2、TiO2、Al2O3、SiO2・Al2O3、Sb2O5、ゼオライト、活性炭、カーボンナノチューブ、チタニアナノチューブ、シリカナノチューブ、フラーレンから選ばれる1種以上の多孔質粒子であり、
該多孔質粒子の平均粒子径(チューブ状粒子の場合は外管直径)が5〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
【0013】
前記マトリックス形成成分としては、ZrO2、SiO2、TiO2、Al2O3から選ばれる1種以上の無機酸化物が好ましい。
本発明に係る燃料電池は、前記記載の燃料電池用プロトン導電膜を具備してなることを特徴としている。
【0014】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る燃料電池用プロトン導電膜について説明する。
燃料電池用プロトン導電膜
本発明に係る燃料電池用プロトン導電膜は、多孔質粒子に金属微粒子を担持してなる導電性成分とマトリックス形成成分とからなり、イオン導電率が10-4〜10-1S/cmの範囲にあることを特徴としている。
【0015】
[導電性成分]
本発明に用いる導電性成分は多孔質粒子に金属微粒子が担持されている。
金属微粒子
本発明に用いる金属微粒子としては、水素を吸着または吸蔵することができ、かつ燃料電池として使用する際に水素を解離してプロトンを生成することができればとくに制限はなく、好適にはPd、Pt、Ru、Au、Ag、Ni、Cu、Sn、Znから選ばれる1種上の金属微粒子および/または複合(合金)金属微粒子が選択される。なかでもPd、Pt金属微粒子および/またはこれらを含む複合金属微粒子等は水素を吸蔵する能力およびプロトンに解離する能力が高く、このような能力を長期に安定して発現することができるので好ましい。金属微粒子は二種以上の金属微粒子の混合物であってもよい。また、複合金属とは、二種以上の金属成分の合金であってもよく、また二種以上の金属成分の固溶体であってもよい。
【0016】
また、金属微粒子は平均粒子径が0.5〜20nm、さらには1〜10nmの範囲にあることが好ましい。
金属微粒子の平均粒子径が前記範囲の下限未満の場合は、プロトン導電膜の充分なプロトン導電性が得られないこともある。
また、金属微粒子の平均粒子径が前記範囲の上限を越えると、金属微粒子の外部表面が小さくなり、プロトン導電膜の充分なプロトン導電性が得られない。
【0017】
このような金属微粒子の平均粒子径は、TEM写真を撮影し画像解析装置に100個の粒子について粒子径を求め、この平均値として求めることができる。
多孔質粒子
本発明に用いる多孔質粒子としては、ZrO2、SiO2、TiO2、Al2O3、SiO2・Al2O3、Sb2O5、ゼオライト、活性炭、カーボンナノチューブ、チタニアナノチューブ、シリカナノチューブ、フラーレンから選ばれる1種または2種以上の多孔質粒子が用いられる。このような多孔質粒子は粒子の細孔内に金属微粒子を析出して担持することができるので、多孔質粒子の外部表面に金属が析出せず、このため多孔質粒子に金属微粒子を担持してなる導電性成分とマトリックス形成成分とからな導電膜は金属微粒子同士が連鎖・接触することがないので絶縁性を有する導電膜を得ることができる。
【0018】
このような多孔質粒子の平均粒子径(チューブ状粒子の場合は外管直径)は、5〜1000nm、さらには5〜600nmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは5〜50nm、特に5〜25nmの範囲にあることが好ましい。
多孔質粒子の平均粒子径が前記範囲の下限未満の場合は、得られるプロトン導電膜が緻密になりすぎて水素ガスの拡散が不充分となり、プロトンの生成効率が低下することがある。また、多孔質粒子の平均粒子径が前記範囲の上限を越えると、金属微粒子の含有量あるいはプロトン導電膜の製造方法にもよるが、導電膜に大きな細孔が形成され、水素がプロトン化することなくプロトン導電膜を通過することがあり、また得られる導電膜の強度が不充分となることがある。
【0019】
さらに、本発明に用いる多孔質粒子は細孔を有しており、その細孔容積は0.01〜0.3ml/g、さらには0.05〜0.2ml/gの範囲にあることが好ましい。
多孔質粒子の細孔容積が前記範囲の下限未満の場合は、プロトン導電膜が緻密になりすぎてガス水素ガスの拡散が不充分となり、プロトンの生成効率が低下することがある。また、多孔質粒子の細孔容積が前記範囲の上限を越えると、プロトン導電膜に大きな細孔が多すぎるため、プロトン化することなくプロトン導電膜を通過する水素が増加してしまうことがあり、また得られる導電膜の強度が不充分となることがある。
【0020】
また、このときの細孔径(チューブ状粒子の場合は内管直径、ただし外管直径を超えない)は概ね1〜20nmの範囲にあることが好ましい。
細孔径が前記範囲にあると、水素が効率的にプロトン化するとともに、高いプロトン導電性を発現し、充分な出力電圧、発電効率を得ることができる。
金属微粒子は主に多孔質粒子の細孔内または内管壁面に担持されているので、多孔質粒子の外部表面に金属がほとんど存在せず、このため多孔質粒子に金属微粒子を担持してなる導電性成分とマトリックス形成成分とからなプロトン導電膜は金属微粒子同士が連鎖・接触することがないので絶縁性を有している。
【0021】
このようなプロトン導電膜は、イオン導電率が10-4〜10-1S/cm、好ましくは10-3〜10-1S/cmの範囲にあるものが特に好適である。
プロトン導電膜のイオン導電率が前記範囲の下限未満の場合は、プロトンの膜内拡散性が低く出力電圧、発電効率が低下する傾向がある。また、プロトン導電膜のイオン導電率が前記範囲の上限を越えると導電膜中を流れる電子が増加し出力電圧、発電効率が低下する傾向がある。
【0022】
本発明に用いるプロトン導電膜のイオン導電率の測定方法は、導電膜を温度80℃、相対湿度(RH)80%の環境下に置き、インピーダンスアナライザーを用いて周波数を5〜106Hzの範囲で変化させながら測定する。
また、このようなプロトン導電膜は、体積抵抗値が1〜106Ω・cm、さらには103〜106Ω・cmの範囲にあることが好ましい。
【0023】
プロトン導電膜の体積抵抗値が1Ω・cm未満の場合は、プロトン導電膜を電子が流れるようになり出力電圧、発電効率が低下する傾向がある。
プロトン導電膜の体積抵抗値が106Ω・cmを越えると、前記したプロトン導電性も低下し、出力電圧、発電効率が低下する傾向がある。
本発明に用いるプロトン導電膜の体積抵抗値は、JIS K6911による体積抵抗値の測定方法に基づいて求めることができる。
【0024】
つぎに、導電性成分中の金属微粒子の含有量は、(金属微粒子と多孔質粒子の合計量に対し)0.1〜20重量%、さらには0.5〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
導電性成分中の金属微粒子の含有量が前記範囲の下限未満の場合は、金属微粒子が少ないために、水素の吸着量が少なく、吸着した水素の解離によるプロトンの生成量が少なく、さらに金属微粒子間の距離が離れすぎてプロトンの移動が困難となりプロトン導電性が低下する傾向にある。
【0025】
導電性成分中の金属微粒子の含有量が前記範囲の上限を越えると、プロトン導電膜の絶縁性が低下し、プロトン導電膜を電子が流れるようになり出力電圧、発電効率が低下する傾向がある。
本発明に用いる導電性成分は、たとえば以下に示す(1)〜(4)の方法で製造することができるが、これらの製造方法に特に限定されるものではなく、前記した導電性成分が得られれば特に制限はなく従来公知の方法を採用することができる。
【0026】
(1)多孔質粒子の水および/または有機溶媒への分散液にPd、Pt、Ru、Au、Ag、Ni、Cu、Sn、Zn等の化合物水溶液を添加し、ついで硫酸第1鉄水溶液あるいは亜鉛粉、鉄粉等のなどの還元剤を加えて多孔質粒子の細孔内に金属微粒子を析出させる方法。この場合、予め少量の易還元性の成分を還元析出した後、同一のまたは他の成分を析出させることもできる。さらに、必要に応じて析出操作を繰り返してもよい。金属を析出した後、多孔質粒子を取り出し、洗浄、乾燥等することによって、導電性成分を得ることができる。
【0027】
(2)多孔質粒子の水および/または有機溶媒への分散液にPd、Pt、Ru、Au、Ag、Ni、Cu、Sn、Zn等の化合物水溶液を添加し、多孔質粒子に前記元素のイオン、錯イオンを吸着あるいはイオン交換させ、多孔質粒子を取り出し、洗浄、乾燥等した後、水素などの還元性ガスと接触させることによって導電性成分を得ることができる。
【0028】
(3)また、予め還元剤を吸着させた多孔質粒子の水および/または有機溶媒への分散液に前記Pd、Pt、Ru、Au、Ag、Ni、Cu、Sn、Zn等の化合物水溶液を添加し、多孔質粒子の細孔内に金属微粒子を析出させる方法。この場合も必要に応じて析出操作を繰り返すことができる。このとき用いる還元剤としては、特開平8−246158号公報等に開示されたヒドロキノン骨格を有するレドックス還元反応試薬等を好適に用いることができる。
【0029】
(4)前記(1)〜(3)の方法を必要に応じて併用する方法。
[マトリックス形成成分]
本発明に係る燃料電池用プロトン導電膜では、上記した導電性成分とともにマトリックス形成成分を含んでいる。
マトリックス形成成分としてはZrO2、SiO2、TiO2、Al2O3から選ばれる1種または2種以上の無機酸化物からなることが好ましい。これらの無機マトリックス形成成分を用いると前記導電性成分のバインダーとして作用し、多孔質で膜の強度等に優れるとともに熱安定性、耐久性に優れた燃料電池用プロトン導電膜が得られる。なお、燃料電池の使用温度が約100℃以下で、高温安定性を要求されない場合はマトリックス形成成分としてポリスチレン系樹脂、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2−ジクロロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、メタクリル樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂を用いることもできる。
【0030】
[燃料電池用プロトン導電膜の形成]
本発明に係る燃料電池用プロトン導電膜中の導電性成分の含有量は、導電性成分とマトリックス形成成分の合計に対して、10〜90重量%、さらには30〜85重量%の範囲にあることが好ましい。
導電性成分の含有量が前記範囲の下限未満の場合は、導電性成分が少ないため、得られる導電膜のプロトン導電性が不充分となり、出力電圧が低くなることがある。導電性成分の含有量が前記範囲の上限を越えると、マトリックス形成成分が少ないため、得られるプロトン導電膜の強度が不充分となったり、導電性成分が多いため導電性成分同士が接触してしまい、プロトン導電膜自体の絶縁性が低下し、プロトン導電膜を電子が流れるようになり出力電圧が低下したり、発電効率が低下する傾向がある。
【0031】
また、本発明に係る燃料電池用プロトン導電膜は、膜厚が0.01〜10mm、さらには0.05〜5mmの範囲にあることが好ましい。
プロトン導電膜の膜厚が前記範囲の下限未満の場合は、充分な膜の強度が得られず、加工の際にクラックが入ったり、ピンホールが生じたりすることがある。プロトン導電膜の膜厚が前記範囲の上限を越えると、出力電圧が低下する傾向にあり、また、塗布液法でプロトン導電膜を形成する場合にはクラックが発生しやすく充分な膜の強度が得られないことがある。
【0032】
さらに、本発明のプロトン導電膜には必要に応じてクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキル・ビニルエーテル共重合体、ヘキサフルオロプロピレン等の撥水性成分を含んでいてもよい。
プロトン導電膜中の撥水性成分の含有量は、プロトン導電膜中に、0.1〜20重量%、さらには0.5〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
【0033】
プロトン導電膜中の撥水性成分の含有量が0.1重量%未満の場合は、撥水性が不充分なために生成する水がプロトン導電膜中に滞留することがある。
プロトン導電膜中の撥水性成分の含有量が20重量%を越えると、プロトン導電膜の強度が不充分となる。
さらに本発明に係るプロトン導電膜には、保水性能を有する成分微粒子を含んでいてもよい。このような保水性能を有する成分微粒子としては、酸化アンチモン粒子、タングステン酸、錫酸、モリブデン酸などのヘテロポリ酸、希土類イオンを導入した結晶性アルミノシリケート、多孔性結晶性リン酸アルミニウム等が挙げられ、特に、下記式(1)で表される水和酸化アンチモン粒子が好適である。
【0034】
このような水和酸化アンチモン粒子は、酸化アンチモンの水和物である。(結晶水ではない、単なる付着水を除く)
Sb2O5・nH2O (1)
n=0.1〜5
[プロトン導電膜の製造方法]
本発明に係るプロトン導電膜は、前記した導電性成分と、バインダーとして作用するマトリックス形成成分の前駆体と、必要に応じて保水性能を有する成分微粒子や膜形成成分、撥水性成分等が分散媒に分散したプロトン導電膜形成用塗料を用いて形成することができる。
【0035】
マトリックス形成成分の前駆体としては、ZrO2、SiO2、TiO2、Al2O3から選ばれる1種以上の無機酸化物となり、かつバインダー機能を有していれば特に制限はないが、通常、Zr、Si、Ti、Alの金属塩(塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩など)およびこれらの加水分解物、ジルコニウムテトラブトキシド、シリコンテトラプロポキシド、チタニウムテトラプロポキシドなどの有機金属化合物およびこれらの加水分解物などが挙げられる。さらにZrO2、SiO2、TiO2、Al2O3ゾル、SiO2・Al2O3複合ゾル等従来公知のゾルを用いることもできる。さらに前記加水分解物とゾルを混合して用いることもできる。
【0036】
このようなマトリックス形成成分の前駆体としては、シリカ前駆体からなるものが好ましく、具体的には、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られる酸性珪酸液または下記式[1]で表されるアルコキシシランなどの有機ケイ素化合物の部分加水分解物、加水分解物などが好適である。
RaSi(OR')4-a [1]
(式中、Rはビニル基、アリール基、アクリル基、炭素数1〜8のアルキル基、水素原子またはハロゲン原子であり、R'はビニル基、アリール基、アクリル基、炭系数1〜8のアルキル基、−C2H4OCnH2n+1(n=1〜4)または水素原子であり、aは0〜3の整数である。)
このようなアルコキシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0037】
上記のアルコキシシランの1種以上を、たとえば水−アルコール混合溶媒中で酸触媒の存在下、加水分解すると、アルコキシシランの加水分解重縮合物を含むマトリックス形成成分の前駆体の分散液が得られる。このよう分散液中に含まれるマトリックス形成成分の前駆体の濃度は、酸化物換算で1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%であることが好ましい。
【0038】
前記したポリスチレン樹脂、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2−ジクロロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、メタクリル樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂をマトリックス形成成分として使用する場合、有機樹脂をそのまま、前記前駆体の代わりに用いることもでき、さらには有機樹脂のモノマーまたは低分子量物を前駆体として使用することもできる。
【0039】
このようなマトリックス形成成分の前駆体の分散液と、導電性成分と、必要に応じて用いる膜形成助剤、保水性能を有する成分微粒子を分散媒に混合、分散させてプロトン導電膜形成用塗料を調製する。このときの各成分の配合量は、得られるプロトン導電膜中の各成分の量が各々前記した範囲となるように混合する。
このとき、プロトン導電膜形成用塗料中のマトリックス形成成分の前駆体と無機プロトン導電性酸化物粒子と必要に応じて用いる膜形成助剤、保水性能を有する成分微粒子の合計濃度(すなわち固形分濃度)は、2〜50重量%、さらには5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
【0040】
プロトン導電膜形成用塗料の固形分濃度が前記範囲の下限未満の場合は塗布法にもよるが、1回の塗布で所望の膜厚の無機電解質膜が得られないことがあり、プロトン導電膜形成用塗料の固形分濃度が50重量%を越えると塗料の粘度が高くなり塗料化が困難であり、得られたとしても塗布法が制限されたり、得られるプロトン導電膜の強度が不充分となることがある。
【0041】
上記において、分散媒としては通常水が好ましく、有機溶媒を併用することもできる。併用可能な有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0042】
また本発明で使用される塗料は、脱イオン処理を行ったり、必要に応じて濃縮したり、ゾルを配合して用いることもできる。
上記したプロトン導電膜形成用塗料を用いてプロトン導電膜を形成するが、形成方法としては、膜を形成しうる方法であれば特に制限はない。たとえばテフロン(R)などの剥離性の良い材質からなる型枠に塗布液を充填した後、乾燥、加熱処理等を施すことによって得ることができる。
【0043】
また、後述するガス拡散層および触媒層としての機能を有する一対の多孔質電極、つまり燃料極または酸化剤極基板上にプロトン導電膜形成用塗料をスプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法などの方法で、基板上に塗布した後、乾燥、加熱処理等を施すことによっても得ることができる。
燃料電池
本発明の燃料電池は、前記したプロトン導電膜を電解質膜として具備することを特徴としている。
【0044】
具体的には、前記したプロトン導電膜と、この両側に配置される一対のガス拡散電極(燃料極および酸化剤極)とから構成され、燃料極および酸化剤極とでプロトン導電膜を狭持するとともに、両極の外側に燃料室および酸化剤室を形成する溝付きの集電体を配したものを単セルとし、このような単セルを、冷却板等を介して複数層積層することによって構成される。
【0045】
ガス拡散電極は、通常、触媒粒子を担持させた導電性材料をPTFEなどの疎水性樹脂接着剤で保持させた多孔質体シートからなる。また、導電性材料とPTFEなどの疎水性樹脂接着剤たからなる多孔質体シートのプロトン導電膜接触面に触媒粒子層を設けたものであってもよい。
このようなガス拡散電極の一対で、プロトン導電膜を狭持し、ホットプレスなど公知の圧着手段により圧着される。
【0046】
触媒としては、水素の酸化反応および酸素の還元反応に触媒作用を有するものであればよく、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスニウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムとうの金属またはそれらの合金から選択することができる。
【0047】
導電性材料としては電子伝導性物質であればよく、たとえば炭素材料として公知のファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックの他、活性炭、黒鉛または各種金属も使用可能である。
疎水性樹脂結着剤としては、たとえばフッ素を含む各種樹脂が挙げられ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、パーフルオロスルホン酸などが挙げられる。
【0048】
また、プロトン導電膜と接する反対の面に、前記疎水性樹脂結着剤からなるガス拡散層が設けられていてもよい。
前記触媒の担持量は、触媒層シートを形成した状態で0.01〜5mg/cm2であり、より好ましくは0.1〜1mg/cm2であればよい。
電子伝導性物質は、比表面積として、100〜2000m2/gであることが、充分な透過性を得る上で好ましい。またガス拡散電極の平均細孔直径は、0.01〜1μmであることが好ましい。
【0049】
本発明に係る燃料電池では、燃料室に水素を供給し、酸化剤室に空気(酸素)を供給し、下記電極反応により電気を発生させる。
燃料極(アノード):H2 → 2H+ + 2e-
酸素極(カソード):2H+ +1/2O2 + 2e- → 2H2O
また、プロトン導電膜中では金属微粒子により、 H2 → 2H+ + 2e-の反応によってH+を生成するとともに金属微粒子上を移動する。
このため、従来の電解質型導電膜のような水の解離によるプロトンの生成と異なるために、プロトン導電膜は保水性を必要とせず、また水分を供給する必要がなく、このため高温運転が長期にわたって可能である。
【0050】
従来の燃料電池では、燃料極で水素ガスは、H+と電子に解離し、電子は電気として外部に取り出され、H+はH2Oを媒体としてH3O+となりプロトン導電膜を移動する。このためプロトン導電膜には保水性能を有していることが必須要件とされていた(電解質膜は電子とプロトンとを分離する役目を有していた)。
これに対して、本発明では、プロトン導電膜が、特定の導電性成分を含有しているので解離したH+をそのまま移動させる機能を有していると推察される。
【0051】
また、従来の燃料電池では、燃料極でH2は解離することなくH2のまま通過してしまい(この現象をクロスオーバーという)、燃料電池の性能に影響することがあった。これに対して、本発明では、プロトン導電膜中の導電性成分が水素ガスを、H+と電子に解離できるため、クロスオーバーを効果的に抑制できるものと推察される。
【0052】
【発明の効果】
本発明によると、水素を吸蔵するとともに水素をプロトンに解離することができる導電性成分を含んでいるので、プロトン導電性に優れ、必ずしも保水性を必要とせず、あるいは水分の供給を必要とせず、無機酸化物マトリックスを用いているので高温安定性に優れる燃料電池用プロトン導電膜を提供することができる。
【0053】
また、本発明によれば、プロトン導電膜中の導電性成分が水素ガスをH+と電子に解離できるため、燃料極で解離することなくH2のまま通過するH2の量を減らし、クロスオーバーを効果的に抑制できる。
さらにまた、該燃料電池用プロトン導電膜を備え、100℃以上の高温運転した場合にも高温安定性に優れ、高温で長期運転した場合にも高い出力電圧を安定に維持することができる燃料電池を提供することができる。
【0054】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない
【0055】
【実施例1】
導電性成分(A)分散液の調製
シリカ・アルミナコロイド溶液(触媒化成工業(株)製:USBB-120、平均粒子径15nm、SiO2・Al2O3濃度1重量%)2000gを攪拌しながら50℃に加温し、これに導電性成分中のPd含有量が10重量%になるようにジクロロテトラアンミンパラジウム溶液(Pd含有量9.0重量%)24.7gを2cc/minの速度で添加した。ついで、90℃に昇温し2時間保持した。その後60℃に降温し、限外濾過膜を用い洗浄し、ついで分散媒(エチルアルコール:水/50:50)で置換するとともに濃縮して固形分濃度(導電性成分濃度)が10重量%の導電性成分(A)分散液を調製した。このとき、導電性成分のTEM写真を撮影し、金属微粒子の平均粒子径を測定し、結果を表1に示す。
【0056】
プロトン導電膜形成用塗料(A)の調製
導電性成分(A)分散液とマトリックス形成成分の前駆体としてメチルトリメトキシシランを加水分解して得たセラメート503(触媒化成工業(株)製:CH3SiO3/2濃度16重量%)とを導電性成分とマトリックス形成成分との固形分重量比が70:30となるように混合し、50℃で1時間混合撹拌してプロトン導電膜形成用塗料(A)を調製した。
【0057】
プロトン導電膜(A)の調製
プロトン導電膜形成用塗料(A)を10cm×10cmのテフロン(R)製枠型に充填し、1℃/minの速度で250℃までで昇温し、250℃で3時間加熱してプロトン導電膜(A)を調製した。プロトン導電膜(A)は無色透明のフイルム状で、厚さは0.4mmであり、Pdの含有量は7.2重量%であった。また、イオン導電性および体積抵抗値を測定し、結果を表1に示す。
【0058】
単位セル(A)の作成
白金含有量がPtとして40重量%の白金担持カーボン粒子にエチルアルコールおよび水(50:50)を加えペースト状にし、これをテトラフルオロエチレンで撥水処理したカーボン紙(東レ(株)製)2枚に、各々白金担持カーボン粒子が0.50mg/cm2になるように塗布し、100℃で12時間乾燥して、ガス拡散電極2枚を作製した。この2枚の拡散電極を、正極および負極とし、両極の間にプロトン導電膜(A)を挟み、20kg/cm2の加圧下、300℃で4分間ホットプレスし、ガス拡散電極とプロトン導電膜(A)とを張り合わせて単位セル(A)を作製した。イオン導電性および体積抵抗値を測定し、結果を表1に示す。
【0059】
評価
単位セル(A)を80℃、相対湿度30%で2時間加湿処理した。ついで、常圧下、80℃、100℃、140℃、180℃の各温度において電流密度0.5A/cm2で50時間運転し、この時の各温度における出力電圧を測定し、結果を表1に示す。また、高温耐久性の評価として140℃で500時間運転し、この時の出力電圧を測定し、結果を表1に示す。
【0060】
【実施例2】
導電性成分(B)分散液の調製
導電性成分(A)分散液の調製において、ジクロロテトラアンミンパラジウム溶液24.7gの代わりにヘキサクロロ白金酸アンモニウム溶液(Pt含有量6.0重量%)37.0gを用いた以外は同様にして固形分濃度が10重量%の導電性成分(B)分散液を調製した。実施例1と同様にして導電性成分に担持された金属微粒子の平均粒子径を測定した。
【0061】
結果を表1に示す。
単位セル(B)の作成
実施例1において、導電性成分(A)分散液の代わりに導電性成分(B)分散液を用いた以外は同様にして単位セル(B)を作成した。
イオン導電率および体積抵抗値を測定し、結果を表1に示す。また、各温度における出力電圧および高温耐久性を評価し、結果を表1に示す。
【0062】
【実施例3】
導電性成分(C)分散液の調製
五酸化アンチモンコロイド溶液(触媒化成工業(株)製:RSB-KU、平均粒子径10nm、Sb2O5濃度1重量%)2000gを攪拌しながら50℃に加温し、これの導電性成分中のPd含有量が10重量%になるようにジクロロテトラアンミンパラジウム溶液(Pd含有量9.0重量%)24.7gを2cc/minの速度で添加した。ついで、90℃に昇温し、2時間保持した。その後60℃に降温し、限外濾過膜を用い洗浄し、ついで濃縮して固形分濃度(導電性成分濃度)が10重量%の導電性成分(C)分散液を調製した。導電性成分(C)に担持された金属微粒子の平均粒子径を、実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0063】
単位セル(C)の作成
実施例1において、導電性成分(A)分散液の代わりに導電性成分(C)分散液を用いた以外は同様にして単位セル(C)を作成した。得られた単位セルについてイオン導電率および体積抵抗値を測定した。結果を表1に示す。また、各温度における出力電圧および高温耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0064】
【実施例4】
プロトン導電膜(D)の調製
実施例1において、導電性成分とマトリックス形成成分との固形分重量比が90:10となるように混合した以外は同様にして、プロトン導電膜(D)を調製した。プロトン導電膜(D)は無色透明のフイルム状で、厚さは0.4mmであり、Pdの含有量は9.1重量%であった。
【0065】
単位セル(D)の作成
実施例1において、プロトン導電膜(A)の代わりにプロトン導電膜(D)を用いた以外は同様にして単位セル(D)を作成した。得られた単位セルについてイオン導電率および体積抵抗値を測定した。結果を表1に示す。また、各温度における出力電圧および高温耐久性を評価した、結果を表1に示す。
【0066】
【実施例5】
プロトン導電膜(E)の調製
導電性成分(A)分散液とマトリックス形成成分の前駆体としてセラメート503と撥水性成分としてテトラフルオロエチレン(三井・デュポンフロロケミカル(株)製:濃度60重量%、分散媒:水)とを固形分重量比が50:35:15となるように混合し、50℃で1時間混合撹拌してプロトン導電膜形成用塗料(E)を調製した。ついで、実施例1と同様にしてプロトン導電膜(E)は無色透明のフイルム状で、厚さは0.4mmであり、Pdの含有量は5.2重量%であった。
【0067】
単位セル(E)の作成
実施例1において、プロトン導電膜(A)の代わりにプロトン導電膜(E)を用いた以外は同様にして単位セル(E)を作成した。得られた単位セルのイオン導電率および体積抵抗値を測定した。結果を表1に示す。また、各温度における出力電圧および高温耐久性を評価し、結果を表1に示す。
【0068】
【比較例1】
単位セル(F)の作成
実施例1と同様にしてガス拡散電極(A)2枚を作成した。この2枚のガス拡散電極(A)を正極および負極とし、この両極の間にプロトン導電膜の代わりに固体高分子電解質膜としてパーフルオロカーボンスルホン酸膜(DuPont 社製:Nafion 膜N-117 膜厚183μm)を挟み、150Kg/cm2の加圧下、100℃で5分間ホットプレスし、ガス拡散電極(A)と固体高分子電解質膜とを張り合わせて単位セル(F)を作成した。得られた単位セルのイオン導電率および体積抵抗値を測定した。また、各温度における出力電圧および高温耐久性を評価した。結果を合わせて表1に示す。
【0069】
【実施例6】
導電性成分(G)分散液の調製
まず、以下のようにしてチタンナノチューブ粒子を調製した。
塩化チタン水溶液を純水で希釈してTiO2として濃度5重量%の塩化チタン水溶液を調製した。この水溶液を、温度を5℃に調節した濃度15重量%のアンモニア水に添加して中和・加水分解した。塩化チタン水溶液添加後のpHは10.5であった。ついで、生成したゲルを濾過洗浄し、TiO2として濃度9重量%のオルソチタン酸のゲルを得た。
【0070】
このオルソチタン酸のゲル100gを純水2900gに分散させた後、濃度35重量%の過酸化水素水800gを加え、攪拌しながら、85℃で3時間加熱し、ペルオキソチタン酸水溶液を調製した。得られたペルオキソチタン酸水溶液のTiO2として濃度は0.5重量%であった。
ついでペルオキソチタン酸水溶液を95℃で10時間加熱して酸化チタン粒子分散液とし、この酸化チタン粒子分散液に分散液中のTiO2に対するモル比が0.016となるようにテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH MW=149.2)を添加した。このときの分散液のpHは11であった。さらに、230℃で5時間水熱処理して酸化チタン粒子分散液を調製した。得られた酸化チタン粒子の平均粒子径は30nmであった。
【0071】
こうして得られた酸化チタン粒子分散液に、濃度40重量%のKOH水溶液70gを、TiO2のモル数(TM)とアルカリ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比(AM)/(TM)が10となるように添加し、150℃で2時間水熱処理した。
得られた粒子は純水にて充分洗浄した。このときのK2O残存量は0.9重量%であった。純水で洗浄した後、粒子の水分散液(TiO2としての濃度5重量%)とし、これに粒子と同量の陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを添加し、60℃で24時間処理してアルカリの除去等の高純度化操作を行った。ついで、凍結乾燥してチタンナノチューブ粒子(平均粒子外径10nm、平均粒子内径7.5nm、平均粒子長さ180nm)を調製した。
【0072】
ついで、チタンナノチューブ粒子水分散液(TiO2濃度1重量%)2000gを攪拌しながら50℃に加温し、これに導電性成分中のPd含有量が10重量%になるようにジクロロテトラアンミンパラジウム水溶液(Pd含有量9.0重量%)24.7gを2cc/minの速度で添加した。
ついで90℃に昇温し、2時間保持した。その後60℃に降温し、限外濾過膜を用い洗浄し、ついで分散媒(エチルアルコール:水/50:50)で置換するとともに濃縮して固形分濃度(導電性成分濃度)が10重量%の導電性成分(G)分散液を調製した。導電性成分(G)に担持された金属微粒子の平均粒子径を、実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0073】
単位セル(G)の作成
実施例1において、導電性成分(A)分散液の代わりに導電性成分(G)分散液を用いた以外は同様にして単位セル(B)を作成した。イオン導電性および体積抵抗値を測定した。また、各温度における出力電圧および高温耐久性を評価した。結果をあわせて表1に示す。
【0074】
【実施例7】
導電性成分(H)分散液の調製
導電性成分(G)分散液の調製において、ジクロロテトラアンミンパラジウム水溶液24.7gの代わりにヘキサクロロ白金酸アンモニウム溶液(Pt含有量6.0重量%)37.0gを用いた以外は同様にして固形分濃度が10重量%の導電性成分(H)分散液を調製した。導電性成分(H)に担持された金属微粒子の平均粒子径を、実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0075】
単位セル(H)の作成
実施例1において、導電性成分(A)分散液の代わりに導電性成分(H)分散液を用いた以外は同様にして単位セル(H)を作成した。イオン導電性および体積抵抗値を測定した。また、各温度における出力電圧および高温耐久性を評価した。結果をあわせて表1に示す。
【0076】
【実施例8】
導電性成分(I)分散液の調製
ゼオライト(触媒化成工業(株)製:CZSゼライト、平均粒径0.5μm)の水分散液(ゼオライト濃度1重量%)2000gを攪拌しながら50℃に加温し、これに導電性成分中のPd含有量が10重量%になるようにジクロロテトラアンミンパラジウム水溶液(Pd含有量9.0重量%)24.7gを2cc/minの速度で添加した。ついで90℃に昇温し、2時間保持した。その後60℃に降温し、限外濾過膜を用い洗浄し、ついで分散媒(エチルアルコール:水/50:50)で置換するとともに濃縮して固形分濃度(導電性成分濃度)が10重量%の導電性成分(I)分散液を調製した。導電性成分(I)に担持された金属微粒子の平均粒子径を、実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0077】
単位セル(I)の作成
実施例1において、導電性成分(A)分散液の代わりに導電性成分(I)分散液を用いた以外は同様にして単位セル(I)を作成した。イオン導電性および体積抵抗値を測定した。また、各温度における出力電圧および高温耐久性を評価した。結果をあわせて表1に示す。
【0078】
【実施例9】
導電性成分(J)分散液の調製
導電性成分(I)分散液の調製において、ジクロロテトラアンミンパラジウム水溶液24.7gの代わりにヘキサクロロ白金酸アンモニウム溶液(Pt含有量6.0重量%)37.0gを用いた以外は同様にして固形分濃度が10重量%の導電性成分(J)分散液を調製した。導電性成分(J)に担持された金属微粒子の平均粒子径を、実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0079】
単位セル(J)の作成
実施例1において、導電性成分(A)分散液の代わりに導電性成分(J)分散液を用いた以外は同様にして単位セル(J)を作成した。イオン導電性および体積抵抗値を測定した。また、各温度における出力電圧および高温耐久性を評価した。結果をあわせて表1に示す。
【0080】
【比較例2】
多孔質粒子(K)分散液の調製
実施例1で用いたシリカ・アルミナコロイド溶液(触媒化成工業(株)製:USBB-120、平均粒子径15nm、SiO2・Al2O3濃度1重量%)2000gを分散媒(エチルアルコール:水/50:50)で置換するとともに濃縮して固形分濃度(SiO2・Al2O3濃度)が10重量%の多孔質粒子(J)分散液を調製した。
【0081】
単位セル(K)の作成
実施例1において、導電性成分(A)分散液の代わりに多孔質粒子(K)分散液を用いた以外は同様にして単位セル(K)を作成した。イオン導電性および体積抵抗値を測定した。また、各温度における出力電圧および高温耐久性を評価した。結果をあわせて表1に示す。
【0082】
【表1】
Claims (7)
- (i)ZrO 2 、SiO 2 、TiO 2 、Al 2 O 3 、SiO 2 ・Al 2 O 3 、Sb 2 O 5 、ゼオライト、活性炭、カーボンナノチューブ、チタニアナノチューブ、シリカナノチューブ、フラーレンから選ばれる1種以上の多孔質粒子の細孔内に、Pd、Pt、Ru、Au、Ag、Ni、Cu、Sn、Znから選ばれる1種以上の金属微粒子および/または複合金属微粒子を担持してなる導電性成分と
(ii)ZrO 2 、SiO 2 、TiO 2 、Al 2 O 3 から選ばれる1種以上の無機酸化物からなるマトリックス形成成分とを含み、
イオン導電率が10-4〜10-1S/cmの範囲にあることを特徴とする燃料電池用プロトン導電膜。 - JIS K 6911による体積抵抗値が1〜106Ω・cmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用プロトン導電膜。
- 前記金属微粒子の平均粒子径が0.5〜20nmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池用プロトン導電膜。
- 導電性成分中の金属微粒子の含有量は、(金属微粒子と多孔質粒子の合計量に対し)0.1〜20重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用プロトン導電膜。
- 前記多孔質粒子の平均粒子径(チューブ状粒子の場合は外管直径)が5〜1000nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用プロトン導電膜。
- 燃料電池用プロトン導電膜中の導電性成分の含有量は、導電性成分とマトリックス形成成分の合計に対して、10〜90重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用プロトン導電膜。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の燃料電池用プロトン導電膜を具備してなることを特徴とする燃料電池。
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