JP4472088B2 - 現像廃液再生方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、フォトレジスト工程で使用される現像廃液の再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体や液晶パネルの製造等においては、広く現像処理が行われているが、技術の発展に伴いますます精度の高い現像処理が望まれている。このため、レジストを溶解させる現像液についても、高純度で厳密に濃度調整されたものが求められている。また、一方では、環境汚染の防止やコストダウン等のため、使用済みの現像液は、再生処理し、できる限り再利用する努力がなされている。
現在、現像処理としてはポジレジスト工程が多く利用されており、現像液としては、無機アルカリ溶液や有機アルカリ溶液などのアルカリ水溶液、中でも、水酸化トリアルキルアンモニウム水溶液が多く使用されている。現像処理後のアルカリ水溶液(現像廃液)は、不純物として多量のフォトレジストを含んでおり、これは、中和、電気分解、電気透析、イオン交換などによって、分離除去することができる。また、現像工程や再生処理工程において混入する小量の金属イオンやパーティクルなどは、膜透過、イオン交換などによって除去することができる。現在、これらの方法を複数組み合わせることによって、現像廃液の再生処理が行われており、現像液を半永久的に使用できるよう、より完全な現像液の再生を目指して研究開発がなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、良質の再生現像液を得ることができる現像廃液再生方法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、フォトレジスト現像廃液を再生する現像廃液再生方法であって、現像廃液を電気分解及び/又は電気透析する工程と、カチオン交換体と接触させる工程と、カチオン交換体と接触させる工程の前または後に、活性炭処理する工程を備え、前記カチオン交換体を使用する前の前処理として、水素イオン形やナトリウムイオン形で販売されているカチオン交換体のカチオンを、現像成分のカチオンに置換処理するときに、当該現像廃液再生方法で再生した再生現像液を使用することを特徴とする現像廃液再生方法を提供する。カチオン交換体と接触させる工程の後に活性炭処理を備えれば、現像廃液を、従来の電気透析及び/又は電気分解やカチオン交換を組み合わせて処理した後に活性炭で処理することにより、活性炭処理前に残存する微量のフォトレジストを吸着除去して、再生液中のレジスト残量を減らすことができる。電気透析、電気分解やカチオン交換などによって、フォトレジストを大幅に減少させた後、活性炭で処理するため、微量のフォトレジストを良好に吸着し、分離することができる。なお、本発明において、フォトレジストとは、イオン形やイオン対など種々の形態を含むフォトレジスト由来の物質全般をいう。
【0005】
また、カチオン交換体と接触させる工程の前に、活性炭処理する工程を備えれば、現像廃液を電気分解及び/又は電気透析して、大部分のフォトレジストを除去し、その後活性炭によってさらにフォトレジストを除去した後、カチオン交換体と接触させることにより、カチオン交換体にかかる負荷を軽減して、液質良好な再生現像液を得ることができる。また、カチオン交換体の前処理として、水素イオン形やナトリウムイオン形で販売されているカチオン交換体のカチオンを、現像成分のカチオンに置換処理するときに、現像廃液を再生した再生現像液を使用する。このため、前処理で現像液の新液を使用しなくても良く、前処理にかかるコストを抑えて、効率よく前処理することができる。なお、本発明において現像成分とは、現像液中の現像成分を指し、存在状態を問わない。
【0006】
また、上記いずれかの現像廃液再生方法であって、活性炭処理工程に先だって、分画分子量100〜1000の膜で膜透過処理する工程を備えることを特徴とする方法を提供する。
この発明によれば、活性炭処理の前に処理中の溶液を膜透過させることにより、残留するフォトレジストや不純物を除去することができる。
【0007】
また、上記いずれかの現像廃液再生方法であって、活性炭処理工程の前に、処理溶液の液質を確認する工程を備え、液質確認後の処理溶液を、液質確認工程前の任意の工程まで移送し、処理し直すことを特徴とする方法を提供する。
また、この発明によれば、活性炭処理手段の前に、液質確認をすることにより、液質良好な処理溶液だけを活性炭処理工程へ進めることができる。このことによって、活性炭の寿命を延ばすことができ、再生現像液の純度を高くすることができる。また、活性炭処理で、微少量残留するフォトレジストや不純物等を除去することにより、再生現像液を濃度調整するだけで現像処理に使用することもできる。また、液質確認手段で液質不良とされた場合、すぐに電気分解手段、電気透析手段やイオン交換体等の点検を行うことにより、適当な時期に消耗品の交換を行うことができ、破損部分の発見、修理を迅速に行うことができる。
また、液質不良の溶液を、液質確認手段より前の任意の工程まで戻し、再度処理し直すことで、廃棄される現像廃液を低減し、より多くの現像廃液を再利用することができる。
【0009】
また、本発明では、電気分解及び/又は電気透析をする工程と、カチオン交換体と接触させる工程とを有する現像廃液を再生する方法であって、再生処理後のフォトレジスト濃度を調整するフォトレジスト濃度調整手段を有することを特徴とする方法を提供する。
この発明では、再生現像液中に敢えてフォトレジストを残留させ、その濃度を調整することによって、再生後の再生現像液の濡れ性を向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の方法は、ポジレジスト工程で使用される無機又は有機アルカリ現像液を再生し、利用可能とする方法であり、特に、有機アルカリ現像液の再生に適する。より好ましくは、現像成分として水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化トリメチルモノエタノールアンモニウム(コリン)などの水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む水溶液を再生する。
【0011】
本発明では、フォトレジストを除去するため、少なくとも、電気分解又は電気透析を行う。好ましくは、イオン交換、膜透過、中和及びろ過など種々の方法を組み合わせて行う。フォトレジストの除去は、負電荷や分子量の大きさを利用する。
なお、濃縮処理のように、フォトレジスト等の不純物の除去に直接関係しない処理についても適宜組み入れることが可能である。
【0012】
本発明では、上記したような種々のフォトレジストの除去処理と組み合わせて、活性炭処理を行うことができる。活性炭処理では、活性炭に、フォトレジストやパーティクルなどを吸着させることによって、不純物を除去する。
活性炭処理前に電気分解、電気透析やイオン交換処理等をして、大部分のフォトレジストを除去しておくと、イオン交換膜やイオン交換体に引っかからない、より低分子量のフォトレジストを良好に吸着することができる。このため、従来公知の種々のフォトレジスト除去処理の後に活性炭処理を行うことで、不純物が少なく、純度の高い再生現像液を得ることができる。
一方、イオン交換処理、特にアニオン交換処理の前に活性炭処理を行うと、イオン交換処理する溶液内のフォトレジストの濃度が小さくなるため、イオン交換体の寿命を延ばし、かつフォトレジストの少ない再生現像液を得ることができる。
【0013】
また、本発明では、活性炭処理の前に、膜透過処理をすることにより、フォトレジストをより良好に除去することができる。フォトレジストの分子量より小さく、現像成分の分子量より大きい分画分子量を有する膜を使用することで、フォトレジストのみを除去することができる。膜透過処理によって残留するフォトレジストを少なくしておくことで、活性炭処理で、より低分子量のフォトレジスト等を、効率よく吸着させることができる。
【0014】
また、本発明では、活性炭処理工程の前に、処理溶液の液質を確認することができる。液質確認では、溶液内のフォトレジストの濃度を測定する。フォトレジストの濃度を測定することにより、電気分解や電気透析処理等、活性炭処理より前の処理工程でフォトレジストが十分に除去され、所定の目標基準を達成しているかどうかを確認することができる。目標基準を達成している溶液のみを活性炭処理することによって、活性炭などの消耗品の寿命を延ばすことができ、かつ、純度の高い再生現像液を得ることができる。また、再生処理の途中で液質を確認することにより、液質確認前の諸処理工程で使用されているイオン交換体などの消耗品を適当な時期に交換したり、装置の故障に迅速に対応したりすることができる。
【0015】
さらに、この場合において、本発明では、液質不良の処理溶液については、液質確認前の任意の処理からやり直すことができる。液質不良の溶液を処理し直すことにより、現像成分の廃棄量を可能な限り低減し、より多くの現像成分を再生することができ、結果として、より多くの再生現像液を得ることができる。
なお、液質確認では、併せて現像処理において現像液とフォトレジストとの反応を阻害する現像成分の炭酸塩や金属イオン濃度などを測定しても良い。
【0016】
また、本発明では、現像廃液処理でカチオン交換体を使用する工程を有する場合に、当該現像廃液再生方法で処理した再生現像液を使用して、カチオン交換体の前処理を行うことができる。通常、販売されているカチオン交換体は、水素イオン形やナトリウムイオン形となっており、現像廃液再生処理で使用するときは、カチオン交換体が保有するカチオンを、現像成分に置換しておかなければならない。この前処理で、現像新液の代わりに再生処理した再生現像液を使用することにより、現像成分を効率よく使用することができ、前処理に必要とされるコストを下げることができる。
【0017】
さらに、本発明では、電気分解及び/又は電気透析をする工程と、カチオン交換体と接触させる工程とを有する現像廃液を再生する方法であって、再生処理後の再生現像液のフォトレジスト濃度を調整する手段を備えることができる。現像液に含まれる小量のフォトレジストは、現像処理において界面活性剤のような働きをすることができる。このため、再生現像液と現像新液、純水等によって適当な濃度のフォトレジストを含有する現像液を調整することにより、適度な濡れ性を有する再生現像液を得ることができる。現像工程で使用される再生現像液のフォトレジスト濃度は、0.1mg/l〜500mg/lであり、好ましくは、0.3mg/l〜3mg/lである。
【0018】
次に、本発明における各処理について、詳細に説明する。
本発明における電気分解、及び電気透析は、任意の方法が可能である。電気透析のみでも良いし、電気分解と電気透析を組み合わせても良い。これらの操作は、多段式、又は循環式とすることで、フォトレジスト除去効果が高くなり、好ましい。
【0019】
電気分解は、典型的には、一対の陰極板と陽極板とを有するカチオン交換膜で仕切られている2室型の電解槽を用いる。このとき使用されるカチオン交換膜としては、例えば、ナフィオン324(デュポン社製)が挙げられる。電解槽の2室のうち、陽極側のセルに現像廃液を、陰極側のセルには水又は現像成分を含む電解質水溶液を流して電気分解する。この時、現像廃液中の成分のうち、カチオンは、カチオン交換膜を透過して陰極側のセルに移動する。このため、例えば、テトラアルキルアンモニウムイオンなどの現像成分が陰極側のセルに移動する。一方、フォトレジストは、アニオン形のものが多く、また、分子量が大きいため、カチオン交換膜を透過せず、陽極側のセルに残る。このため、電気分解では、陰極側のセル内に現像成分の水酸化物を分離・濃縮してフォトレジストを除去することができる。電気分解を行うことにより、現像処理に有害な現像成分の炭酸塩を分解することができる。
【0020】
電気透析としては、典型的には、陽極と陰極との間に、陰極側からカチオン交換体とアニオン交換体とが交互に複数配置されている装置を使用することができる。カチオン交換体及びアニオン交換体は、イオン交換膜でも良いし、粒状、繊維状などのイオン交換体を薄い枠体等に充填したものでも良い。イオン交換膜としては、例えば、アニオン交換膜のアシプレックスA−201(旭化成工業(株)製)と、カチオン交換膜のアシプレックスK−501(旭化成工業(株)製)を使用することができる。いずれのイオン交換体を用いる場合にも、金属イオンや塩化物イオンなどの現像廃液への混入を避けるため、水素イオン形、水酸化物イオン形に変えてから用いると、好ましい。
【0021】
この電気透析装置で現像廃液内のフォトレジストを除去するには、陽極側のセル壁がアニオン交換膜で陰極側のセル壁がカチオン交換膜であるセル(以下「脱塩セル」という)に現像廃液を、陽極側のセル壁がカチオン交換膜で陰極側のセル壁がアニオン交換膜であるセル(以下「回収セル」という)に水又は低濃度の現像成分を含む電解質水溶液を、それぞれ流して透析を行う。この時、現像廃液中の現像成分のカチオンは、カチオン交換膜を通って回収セルに移動する。一方、主として負電荷を有するフォトレジストは、分子量が大きいためアニオン交換膜を透過できず、脱塩セルに残る。このため、回収セルを通った水溶液を回収することにより、現像成分とフォトレジストを分離し、現像成分のみを得ることができる。
電気透析では、脱塩セル、回収セル共に現像廃液を通して電気透析を行っても良い。この場合は、フォトレジスト濃度は一定のまま、回収セルを通る現像廃液に現像成分を濃縮することができる。
【0022】
また、電気分解及び/又は電気透析の前処理として、中和を行っても良い。現像成分は強アルカリであるため、酸で中和することにより、現像廃液中ではカルボキシル基が酸解離することで溶けていたフォトレジストが、析出するので、これをろ過することにより、現像廃液内のフォトレジストの多くを除去することができる。
また、電気分解及び/又は電気透析の前に、濃縮しておくと、廃液全体の容積が減少するため、好ましい。濃縮処理としては、例えば、蒸発法や膜浸透法など、廃液内の溶質成分の比率が変化しない簡単な方法でも良い。なお、特に濃縮処理工程を設けず、電気分解や電気透析で濃縮しても良い。
【0023】
次に、本発明におけるイオン交換について説明する。イオン交換、特に、アニオン交換は、上記した電気分解又は電気透析の前後を問わず、いつでも行うことができる。イオン交換体の寿命を長くするには、一連の処理工程中、最後の方で行うと良い。
【0024】
アニオン交換は、従来公知の方法でよく、例えば、カラムにアニオン交換樹脂を充填したものに一定の流速で現像廃液を通す。アニオン交換では、主として負に帯電するフォトレジストを吸着分離する。フォトレジストが芳香族環を多く有するノボラック樹脂系である場合、アニオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライトIRA−402BL(ローム・アンド・ハース社製)のようなスチレン系のものを使用すると、芳香族環同士の相互作用を利用することができ、好ましい。アニオン交換樹脂は、不純物となる他のアニオンが混入するのを防ぐため、水酸化物イオン形のものを使用すると、好ましい。現像廃液をアニオン交換体に通すと、フォトレジストが吸着されて、現像廃液のフォトレジスト濃度を小さくすることができる。
【0025】
カチオン交換についても、従来公知の種々の方法で良く、カラムにカチオン交換樹脂を充填したものに一定の流速で現像廃液を通す。カチオン交換では、主に、Na+,K+,Ca2+,Mg2+,Fe3+,Cu2+,Al3+等の金属イオンを吸着分離する。カチオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライトIR−120B(ローム・アンド・ハース社製)を用いることができる。カチオン交換は、電気分解又は電気透析の後に行うと、各処理で使用するイオン交換体等から溶離する金属イオンや、配管から溶出する金属イオンを除去することができ、好ましい。金属イオンは、現像処理において悪影響を与えるため、できる限り除去しておくのが好ましい。
【0026】
カチオン交換によって、処理用液中の金属イオンを良好に除去するため、通常、水素イオン形又はナトリウムイオン形となっているカチオン交換樹脂を、前処理する必要がある。具体的には、カチオン交換樹脂の吸着イオンを現像液のカチオン成分に交換する。例えば、使用する現像液がTMAH水溶液である場合、カチオン交換樹脂の吸着イオンをTMA+(トリメチルアンモニウムイオン)に交換する。このイオン交換は、従来公知の方法で良いが、本発明では、本発明の現像廃液再生方法によって再生した再生現像液を利用してイオン交換することにより、現像成分の有効利用とコストダウンを図ることができる。
【0027】
ここで、液質確認方法について説明する。液質確認方法としては、主として溶液内のフォトレジスト濃度を測定し、具体的には、特定の処理後の処理溶液の吸光度や濁度を吸光光度計や濁度計によって測定する。例えば、ノボラック樹脂系のフォトレジストを現像したTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液の場合、フォトレジストが溶解していると、約290nmの波長領域に、吸収が現われることが分かっている。フォトレジスト濃度と吸光度との関係から、検量線を作成することにより、フォトレジスト濃度を決定することができ、目標値を設定することができる。
【0028】
液質確認は、連続的でも断続的でも良い。また、濁度計や吸光光度計など溶液に手を加えない測定方法の場合は、インラインで測定すると、簡便に、かつ素早く液質の状態を確認することができる。
また、吸光度測定の代わりに、中和適定による現像成分の炭酸塩濃度の測定や、原子吸光度測定による金属イオン濃度の測定などを単独で行ったり、これら複数の測定を組み合わせて行っても良い。
液質確認は、電気分解又は電気透析の後、イオン交換の後等、種々の場所に設けることが可能である。また、一箇所に限定されず、複数箇所で行っても良い。電気分解及び/又は電気透析処理において、循環式を採用する場合は、この処理系内に少なくとも1つ設けられることが好ましい。また、後述する活性炭処理、または膜透過処理における処理能力を有効に発揮させるため、活性炭処理又は膜透過処理の前に液質確認を行うと、好ましく、活性炭処理又は膜透過処理の直前に液質を確認すると、より好ましい。
【0029】
活性炭処理では、粒状炭や繊維状活性炭、多孔質炭素材など様々なものが利用可能である。例えば、比表面積1760m2/g、全細孔容積0.87mL/gのヤシ殻粒状炭や、比表面積1120m2/g、全細孔容積0.72 mL/gの繊維状活性炭を使用することができる。活性炭との接触方法は、特に限定されないが、活性炭をカラム等に充填し、このカラムに処理溶液を流通させると、処理効果、処理効率ともに高く、好ましい。
活性炭は、フォトレジストや塵、埃などの不純物に対する吸着能力が高い。このため、電気分解、電気透析やイオン交換等で分離、吸着できない細かい粒子や低分子量のフォトレジストを吸着することができる。また、活性炭は、同じく消耗品であるイオン交換体と比較して安価である。このため、活性炭処理をイオン交換処理の前に行うと、イオン交換体にかかる負荷を低減し、イオン交換体の耐用期間を延ばすことができ、好ましい。
【0030】
活性炭処理の後に、液質確認手段を設け、再度液質を確認すると、好ましい。この液質確認におけるフォトレジスト濃度の目標値は、現像成分の濃度の約1万分の1である。好ましくは、10万分の1程度であり、このとき、新しい現像液を加えず、再生現像液に純水のみを加えて濃度調整するだけで、現像処理に使用することができる。例えば、現像成分の濃度が2〜3%(重量比w/w、以下現像成分について同じ)程度の場合、フォトレジストの濃度は3mg/l以下であり、好ましくは、0.3mg/l以下である。
【0031】
本発明において、活性炭処理をする前に行う膜透過処理は、従来公知の種々の方法が可能である。膜としては、分画分子量が100〜1000程度の膜を使用する。好ましくは分画分子量が300〜700のものを使用し、500程度のものがより好ましい。膜透過処理によって、フォトレジストや、塵、埃などの固体の不純物を除去することにより、活性炭の寿命を延ばせるとともに、フォトレジストをより良好に除去することができる。
【0032】
次に、本発明の現像廃液再生方法の典型的な実施形態について説明する。各実施形態において、現像液は、水酸化トリメチルアンモニウム水溶液(TMAH水溶液)とする。
図1は、本発明の現像廃液再生方法の第一の実施形態を示すフローチャートである。図1において、現像廃液回収タンクは、半導体や液晶パネルの製造工程で使用した現像液を回収するタンクである。
【0033】
現像廃液回収タンクに蓄積された現像廃液は、フォトレジストを除去するため、電気透析装置に送られる。電気透析装置は、前述の典型的な電気透析装置で、脱塩セルに現像廃液を、回収セルに小量のTMAHを含む電解質水溶液を流しながら電圧をかけて、テトラメチルアンモニウムイオン(TMA+)とフォトレジストとを分離する。電気透析装置では、同一の現像廃液に対して電気透析処理を多段式、循環式などにより繰り返し行う。TMA+を含む回収セル側の水溶液は、濃度約5 %に濃縮された後、混床イオン交換装置へ送られる。フォトレジストを多量に含む脱塩セル側の水溶液は、廃液タンクに回収され、濃縮、生物処理など適当な処理の後、廃棄される。
なお、回収タンクに回収される前、又は電気透析装置に送られる前に濃縮手段を設け、現像廃液を濃縮しておいても良い。
【0034】
混床イオン交換装置には、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の両方が充填されている。このため、混床イオン交換装置では、処理溶液に残存するフォトレジストの除去及び金属イオン等の除去を、同時に行うことができる。
【0035】
混床イオン交換装置でイオン交換処理された処理溶液は、液質確認装置1で、残存するフォトレジスト濃度を測定される。本形態において、液質確認装置1は、処理溶液の輸送管に対してインラインで接続されており、輸送される処理溶液のフォトレジスト濃度を、吸光光度計を用いて連続的に測定する。
液質確認装置は、処理溶液のフォトレジスト濃度、すなわち吸光度が、予め設定された目標値以下であれば、次の膜透過処理へ送る。処理溶液の吸光度が目標値を超えている場合は、膜透過処理への供給を止め、処理溶液を輸送管T1に送る。また、液質確認装置1は、処理溶液の液質が不良となっていることを通報するので、電気透析装置及び混床イオン交換装置を点検し、消耗品の交換等の措置を取る。輸送管T1に送られた処理溶液は、各装置の点検後、再び電気透析処理から処理し直される。
【0036】
液質良好と判定された処理溶液は、膜透過処理装置に送られ、分画分子量が200の膜によって膜透過処理される。このため、分子量74のTMA+は良好に透過して、比較的分子量の小さいフォトレジストやパーティクルは通さないため、処理溶液内のフォトレジスト濃度を小さくすることができる。膜透過処理された処理溶液(透過溶液)は、活性炭処理装置へ輸送される。膜透過しなかった溶液(濃縮溶液)は、現像廃液回収タンクまで輸送され、新しい現像廃液と共に電気透析処理から処理し直される。
【0037】
活性炭処理装置では、処理溶液を活性炭と接触させ、残存するフォトレジスト及びパーティクルを吸着除去する。本形態の活性炭処理装置では、カラムに充填したヤシ殻粒状炭に、処理溶液を流通させて接触させる。処理溶液は、多段式又は循環式等によって、活性炭を充填したカラムに複数回流通させて接触させる。
【0038】
活性炭処理された処理溶液は、ポアサイズ0.2μmのマイクロフィルタを透過して塵、埃などが除去された後、液質確認装置2に送られて、フォトレジスト濃度が測定される。本実施形態では、ここでフォトレジスト濃度がTMAHの濃度の約10万分の1となっている必要がある。本実施形態の場合、電気透析装置でTMAHの濃度を約5%に調整しているが、各処理を経ると、約3%にまで下がる。このため、本形態では、フォトレジスト濃度が実質的に0.03ppm以下であるかどうかを確認する。フォトレジスト濃度が0.03ppm以下である場合、処理溶液は、濃度調整装置へ輸送される。フォトレジスト濃度が0.03ppmを超える場合は、輸送管T2に送られ、再び膜透過処理からやり直す。また、液質不良だった場合には、適宜、膜透過処理装置における膜、及び活性炭の消耗具合を点検し、必要な場合は取り替える。
【0039】
濃度調整装置は、送られてきた処理溶液(再生現像液)と純水、又は純粋及び現像新液(20%TMAH)を混合することによって、現像工程で必要とされる約2.4%TMAHとなるよう、厳密に濃度調整する。濃度調整された再生現像液は、再生液タンクに貯蔵され、必要に応じて現像工程へ供給される。
【0040】
本形態の現像液再生方法では、従来のフォトレジスト除去手段である電気透析、イオン交換の後液質確認し、さらに、膜透過処理及び活性炭処理を組み合わせることにより、より純度の高い再生現像液を得ることができる。このため、再生現像液に現像新液を加えて希釈しなくても、濃度調整するだけで現像工程で再使用することができる。従って、本発明による現像液再生方法を用いれば、処理過程において損失する分の新しい現像液を供給するだけでよく、現像液を半永久的に使用することができる。
なお、廃液タンクに送られた廃液は、別途、生物処理等他の廃液処理が行われ、フォトレジストについては、廃棄等される。
【0041】
図2に、第二の実施形態に係る現像廃液再生方法のフローチャートを示す。第二の実施形態に係る各工程は、第一の実施形態のものと同様であるため、各工程に関する詳細な説明は省略する。
図2では、現像工程で使用され、現像廃液回収タンクに回収された現像廃液を、電気透析処理した後、分画分子量約200の膜を用いて膜透過処理を行う。この時、膜を透過した透過溶液のみを次の工程に進め、膜を透過しない濃縮溶液は、現像廃液回収タンクに戻し、新しい現像廃液と共に、再び電気透析処理する。
【0042】
膜透過処理後の溶液は、液質確認装置3で、フォトレジスト濃度が測定され、所定の目標基準を達成しているかどうか確認される。フォトレジスト濃度が目標値以下の液質良好な処理溶液のみが、次の工程に送られる。処理溶液が、目標基準以上のフォトレジスト濃度を示した場合は、処理溶液は、輸送管T3に送られ、電気透析処理から処理し直される。
【0043】
液質確認装置3で液質良好とされた処理溶液は、次に、活性炭処理され、さらにフォトレジストが除去される。その後、混床イオン交換装置に送られ、イオン交換処理によってより低分子量のフォトレジストや金属イオンが除去される。混床イオン交換装置で処理後の処理溶液は、液質確認装置4に送られ、液質が確認される。この時、第一の実施形態と同様、処理溶液内のフォトレジスト濃度は、TMAH濃度の10万分の1以下とされるのが好ましい。液質確認装置4で、液質良好とされた処理溶液は、マイクロフィルタでろ過された後、濃度調整装置で、純水、又は純水と現像新液(20%TMAH)を加えて厳密に濃度調整され、再生液タンクに貯留される。液質確認装置4で、液質不良とされた処理溶液は、輸送管T4に送られ、活性炭処理装置まで移送されて、再度活性炭処理から混床イオン交換処理まで、処理し直される。
【0044】
第二の実施形態によれば、イオン交換処理の前に活性炭処理を行う。このため、活性炭によって、電気透析処理後に残留するフォトレジストの大部分が吸着除去され、イオン交換体では、より低分子量のフォトレジストのみを吸着することになる。このため、再生処理後の再生現像液の純度を落とすことなく、比較的高価なイオン交換体の寿命を長くすることができる。
【0045】
また、第二の実施形態では、カチオン交換体の前処理である予備イオン交換体置換処理装置に、液質確認装置4で液質良好と判定された濃度調整前の再生現像液を送る輸送管T6が設けられている。このため、購入当時、水素イオン形やナトリウムイオン形となっているカチオン交換体を、トリメチルアンモニウム形(TMA+形)に置換処理するときに、現像新液の代わりに、濃度未調整の再生現像液を使用することができる。このことにより、カチオン交換体の前処理にかかるコストを下げることができる。
【0046】
また、図3に本発明に係る現像廃液再生方法の第三の実施形態を示す。第三の実施形態における各処理工程は、第一の実施形態の各工程と同様であるため、各装置の詳細な説明は省略する。
図3で、現像廃液回収タンクに回収された現像工程で使用後の現像廃液は、電気透析装置へ送られる。電気透析装置では、現像廃液に含まれるフォトレジストの約90%〜95%が除去される。
【0047】
電気透析処理をした処理溶液は、そのままカチオン交換装置へ送られる。カチオン交換装置では、主に、処理溶液内の金属イオンを除去する。
カチオン交換処理をした処理溶液は、ポアサイズ0.2μmのマイクロフィルタでろ過された後、液質確認装置5によって、フォトレジスト濃度が所定の目標基準を達成しているかどうかを確認する。液質確認装置5では、第一及び第二の実施形態において設けられている液質確認手段2及び4とは異なり、フォトレジスト濃度の目標基準は高く、現像成分の濃度に対して約1万分の1であれば良い。
【0048】
液質確認装置5で、液質良好とされた処理溶液は、レジスト濃度調整装置及び現像液濃度調整装置に送られ、純水及び現像新液(20%TMAH)によってフォトレジスト濃度、及び現像成分の濃度が、同時に厳密に調整され、再生液タンクに貯留される。
液質確認装置5で、液質不良とされた処理溶液は、輸送管T5に送られて、電気透析装置まで移送され、再度処理し直される。
【0049】
第三の実施形態によれば、再生処理後の再生現像液は、所定量のフォトレジストを含有している。このため、現像処理に有害な物質を含まず、かつ濡れ性の高い現像液を得ることができる。
【0050】
本発明の一実施例として、図2のフローチャートに従って、フォトレジストの現像処理に使用した1.0%TMAH溶液を処理したところ、液質確認装置3において、波長290nmで吸光度が0.001となり、フォトレジスト濃度が0.25mg/lまで減少していることが分かった。さらに、次の工程へ進め、液質確認装置4で波長290nmにおける吸光度を測定したところ、0.000(検出限界以下)であり、フォトレジスト濃度は0.1mg/l以下まで減少していた。このとき、現像成分(TMAH)の濃度は、約2.38%であり、濃度調整装置で濃度調整することにより、現像新液と同等の精度を有する再生現像液を得ることができた。
【0051】
最後に、本発明の現像液再生方法は、言うまでもなく、上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。
【0052】
【発明の効果】
本発明では、良質の再生現像液を得ることができる現像廃液再生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の第一の実施形態に係る現像廃液再生方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の第二の実施形態に係る現像廃液再生方法を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の第三の実施形態に係る現像廃液再生方法を示すフローチャートである。

Claims (4)

  1. フォトレジスト現像廃液を再生する現像廃液再生方法であって、
    現像廃液を電気分解及び/又は電気透析する工程と、カチオン交換体と接触させる工程と、カチオン交換体と接触させる工程の前または後に、活性炭処理する工程を備え
    前記カチオン交換体を使用する前の前処理として、水素イオン形やナトリウムイオン形で販売されているカチオン交換体のカチオンを、現像成分のカチオンに置換処理するときに、当該現像廃液再生方法で再生した再生現像液を使用することを特徴とする現像廃液再生方法。
  2. 請求項1に記載の現像廃液再生方法であって、
    活性炭処理工程に先だって、フォトレジストの分子量より小さく、現像成分の分子量より大きい分画分子量300〜700の膜で膜透過処理する工程を備えることを特徴とする方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の現像廃液再生方法であって、
    活性炭処理工程の前に、処理溶液の液質を確認する工程を備え、
    液質確認後の処理溶液を、液質確認工程前の任意の工程まで移送し、処理し直すことを特徴とする方法。
  4. フォトレジスト現像廃液を再生する現像廃液再生方法であって、
    現像廃液を電気分解及び/又は電気透析をする工程と、カチオン交換体と接触させる工程とを有するが、活性炭処理する工程を有さず、
    再生処理後の現像成分の濃度を調整する現像液濃度調整装置と、再生処理後のフォトレジスト濃度を調整するフォトレジスト濃度調整手段を有することを特徴とする方法。
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