JP4471185B2 - カップ容器の外面殺菌方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス状殺菌剤の噴霧によってカップ容器の外面側を殺菌するための方法に関し、特に、個々の容器に対してガス状殺菌剤を噴霧するようにしたカップ容器の外面殺菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙やプラスチックを材料とするカップ状の容器を、容器を嵌入させる孔を開口させた搬送コンベアにより所定間隔に保持した状態で搬送しながら、容器内に内容物を充填してから容器開口部を密封するに際して、搬送コンベアにより充填・密封工程に送り込む前の空の容器に対して、その内外両面を過酸化水素水等の殺菌剤により予め殺菌しておくということが従来から行われており、例えば、特開平9−58632号公報や特開平9−58633号公報には、ガス状殺菌剤の噴霧によりカップ容器の内外両面に殺菌剤をまんべんなく付着させるための技術が開示されている。
【0003】
すなわち、特開平9−58632号公報および特開平9−58633号公報には、充填・密封工程に向けて搬送コンベア(搬送ベルト)により搬送されているカップ容器に対し、先ず殺菌剤噴霧室において、ガス状にした殺菌剤(過酸化水素水)を噴霧ノズルから個々の容器に噴霧することで、容器の内面側(内部表面)に殺菌剤を付着させた後、次の殺菌剤ガス室において、ガス吐出管から連続して吐出されたガス状殺菌剤が充満している雰囲気のガス室内を通過する間に、容器の外面側(外部表面)に殺菌剤を充分に付着させるということが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような従来公知のカップ容器の殺菌方法では、容器の外面側を殺菌するために、容器の内面側を殺菌する殺菌剤噴霧室とは別に画成した殺菌剤ガス室で、ガス吐出管から連続してガス状の殺菌剤を吐出させることにより、ガス状殺菌剤を充満させたガス室内の雰囲気によって容器の外面側に殺菌剤を付着させていることから、大量の殺菌剤を使用することになって、容器に付着することなく無駄に排出される殺菌剤の量も多くなるという問題がある。
【0005】
なお、この点に関して、容器の内面側に対しては、上方から噴霧ノズルにより個々の容器に対してガス状殺菌剤を噴霧していることから、容器の外面側についても、内面側と同様に個々の容器に対してガス状殺菌剤を噴霧することで、上記の問題を解消しようとすることも一応は考えられるが、容器の内面側には、上方から1個の噴霧ノズルにより略円錐状に噴霧することで内面全体に殺菌剤を付着させることができるものの、容器の外面側には、下方から1個の噴霧ノズルにより略円錐状に噴霧しても外面全体(特に側壁の外面)に殺菌剤をまんべんなく付着させることはできない。
【0006】
そこで、容器の外面側に対して殺菌剤を均一でまんべんなく付着させるために、側壁と底壁とに向けてガス状殺菌剤をそれぞれ噴霧しようとすると、容器1個に対して多数の噴霧ノズル(少なくとも側壁の両側2個と底壁の1個の計3個)が必要となり、特に、横断面が略方形の角型カップ容器では、側壁が4面に分かれていることから、例えば、側壁の各面と底壁に対してそれぞれ噴霧ノズルを設けた場合、容器1個に対して計5個の噴霧ノズルを設けることになる。
【0007】
そのように容器1個に対して多くの噴霧ノズルを設けることにより、容器の外面側に殺菌剤を均一でまんべんなく付着させることはできるものの、噴霧ノズルの数が多くなることで、殺菌設備のコストがアップしたり、設備の構造が煩雑化したりすることとなり、特に、多列搬送されているカップ容器の複数個に対して同時に殺菌剤を噴霧するような場合には、各カップ容器毎の噴霧ノズルを互いに干渉しないように搬送面下方の限られたスペース内にどのように設置するかということが問題となってくる。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするもので、噴霧ノズルからのガス状殺菌剤の噴霧によりカップ容器の外面側を殺菌するに際して、特別なガス室を画成してガス状殺菌剤を充満させるようなことなく、略円錐状に噴霧する一般的な噴霧ノズルを使用して、少ない数の噴霧ノズルから個々の容器に対してガス状殺菌剤を噴霧することにより、容器の外面側に殺菌剤を均一でまんべんなく付着させることができるようにすることを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、個々のカップ容器に対して、容器の斜め下方外方で容器の中心から対称位置となる2箇所の位置から、容器の底部周縁の角部に向けてガス状殺菌剤をそれぞれ略円錐状に噴霧するようにしたことを特徴とするものであり、特に、横断面が略方形である角型のカップ容器の場合には、容器の底部の一つの対角線上にある2箇所の角部に向けて、それぞれ斜め下方外方からガス状殺菌剤を噴霧するようにしている。
【0010】
上記のような方法によれば、略円錐状に噴霧する一般的な噴霧ノズルを使用して、カップ容器が角型である場合でも、個々の容器に対して2個の噴霧ノズルからガス状殺菌剤を噴霧するだけで、容器の外面側(側壁の外面と底壁の下面とフランジ部の下面)に殺菌剤を均一でまんべんなく付着させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のカップ容器の外面殺菌方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の一実施形態である角型カップ容器の外面殺菌方法について、図1および図2(A),(B)は、カップ容器に対してガス状殺菌剤を噴霧している状態を示し、図3は、殺菌剤をガス状にして噴霧ノズルから噴霧するためのシステムを概略的に示し、図4は、搬送コンベアによるカップ容器の搬送状態を示し、図5は、搬送コンベアの下面側にカバー部を垂下させた場合について示すものである。
【0012】
本実施形態の方法は、無菌充填ラインにおいて角型カップ容器の外面側を殺菌するために実施されるものであって、無菌充填ラインについては、積み重ねられた状態で送られてくる容器を分離して搬送コンベアに供給してから、搬送コンベアによる容器の搬送経路に沿って、容器から静電気を除去する工程と、容器からゴミを除去する工程と、容器の内外面を殺菌剤で殺菌する工程と、容器の内部に内容物を充填する工程と、容器のヘッドスペースの空気を窒素に置換する工程と、容器の開口部にフィルムをシールして密封する工程と、シール不良を検出する工程と、日付等を印字する工程とを順次経た後、搬送コンベアから充填・密封済みの製品を排出するようにしたものである。
【0013】
そのような無菌充填ラインの全体はクリーンルーム内(クラス10,000より空気清浄度の高い室)に設置されており、特に、搬送コンベアに容器を供給してから容器の開口部を密封する工程を過ぎるまでの部分は、空気清浄度が高レベル領域として画成されたクリーンブース内(クラス100より空気清浄度の高い室)に設置されている。
【0014】
無菌充填ラインでのカップ容器の搬送については、幅方向で複数個の容器を同時に進行させる多列搬送によるのが効率的であるが、場合によっては単列搬送としても良く、充填や密封についても、幅方向で横一列(単列搬送の場合は1個)ずつ行うようにしても良いし、搬送方向と幅方向でそれぞれ複数個(単列搬送では搬送方向で複数個)ずつ行うようにしても良いが、何れにしても、充填や密封を行う時に容器の搬送を一時的に停止させるために、カップ容器は間欠的に進行するように搬送されている。
【0015】
そのようなカップ容器の搬送に使用される搬送コンベアは、従来から知られた構造のものであり、各カップ容器を所定の間隔で保持するリテーナー(保持具)の機能を有するものであって、図4に示すように(図示したものは2列搬送用)、搬送コンベア5に所定間隔で設けられた孔5aにカップ容器1を嵌入させて、カップ容器1の上端にあるフランジ部1aをコンベア5の搬送面上に載置した状態で、多数のカップ容器1を所定の間隔で搬送するようにしたベルトコンベアである。
【0016】
そのような搬送コンベアによりカップ容器が搬送されている無菌充填ラインにおいて、充填工程では内容物を充填するために、また、密封工程では容器開口部をシールで密封するために、容器の進行を一時的に停止させているが、そのような容器の進行停止の間に、容器殺菌工程では、停止している個々のカップ容器に向けて、噴霧ノズルからガス状にした殺菌剤(例えば、濃度35%の過酸化水素水)を噴霧しており、それによってカップ容器の内外両面に殺菌剤を付着させた後、熱風によりカップ容器を加熱する(例えば、240℃の熱風により加熱時間6秒で容器自身の到達温度が80℃となるように加熱する)ことで、付着した殺菌剤は熱風による加熱でカップ容器を殺菌してから除去される。
【0017】
その際の噴霧ノズルによるガス状殺菌剤の噴霧について、本実施形態では、横断面が略方形である角型のカップ容器に対して、図1および図2(A),(B)に示すように、1個の噴霧ノズル2により上方からガス状殺菌剤を略円錐状に噴霧して、容器の内面側(側壁の内面と底壁の上面とフランジ部の上面)に殺菌剤を付着させると共に、容器の外面側では、容器1の底部の一つの対角線上にある2箇所の角部C1,C2について、斜め下方外方から底部の角部C1,C2に向けて噴霧ノズル3,4からガス状殺菌剤を略円錐状に噴霧することにより、容器1の外面側(側壁の外面と底壁の下面とフランジ部の下面)に殺菌剤を付着させるようにしている。
【0018】
なお、図2(A)に示すように、搬送コンベア5の下面側で、2個の噴霧ノズル3,4により容器1の斜め下方外方から底部の角部C1,C2に向けてガス状殺菌剤を噴霧していることによって、容器1が僅かに持ち上げられて容器1(フランジ部1aおよび側壁1b)と搬送コンベア5との間に隙間が生じ、それにより下方からのガス状殺菌剤の流れが容器1の側壁1bからフランジ部1aの下面に沿って上方に抜けることから、容器1の側壁1bからフランジ部1aに沿っての殺菌剤の流れが良好となり、容器の側壁1bの外面とフランジ部1aの下面に殺菌剤を均一にまんべんなく付着させることができる。
【0019】
殺菌剤(過酸化水素水)をガス状にして噴霧ノズルから噴霧するためのシステムについては、図3に示すように、搬送コンベア5の搬送面上方で容器1の内面側を殺菌するための噴霧ノズル2と、搬送コンベア5の搬送面下方で容器1の外面側を殺菌するための噴霧ノズル3,4とのそれぞれにおいて、ポンプの駆動により供給される殺菌剤(過酸化水素水)と、コンプレッサーの駆動によりフィルターとレギュレーターとソレノイドバルブを通して圧送される空気とを、スチームで加熱されているチャンバー内に二流体ノズルを通して導入し、該チャンバー内で殺菌剤(過酸化水素水)をガス状にしてから、それぞれの噴霧ノズルからガス状殺菌剤として噴霧するようにしている。
【0020】
そのようなガス状殺菌剤の噴霧システムでは、制御盤からの信号によりポンプとソレノイドバルブの駆動を制御することで、各噴霧ノズル2,3,4からのガス状殺菌剤の噴霧と噴霧停止を制御できるようになっていることから、既に述べたように、充填・密封を行う時に容器1の進行を一時的に停止するように搬送コンベア5を間欠的に駆動させているのに対して、本実施形態の方法では、容器殺菌工程で容器1の進行が一時的に停止されるタイミングに合わせて、噴霧ノズル2,3,4からガス状殺菌剤を間欠的に噴霧するようにしている。
【0021】
ところで、容量が450mlで高さが113mmの角型のカップ容器について、濃度35%の過酸化水素水を殺菌剤として、本実施形態の方法により、1秒毎に移動と停止を繰り返している容器の搬送動作にタイミングを合わせて、ガス状にした殺菌剤をON時間1秒、OFF時間1秒にて間欠的に噴霧し、1個の容器に対して2回噴霧(合計噴霧時間2秒)した後、240℃の熱風により加熱時間6秒で容器自身の到達温度が80℃となるように加熱した場合と、従来の方法により、ガス状にした殺菌剤を連続的に噴霧して充満させている雰囲気内に容器を搬送した(合計噴霧時間3秒)後、240℃の熱風により加熱時間6秒で容器自身の到達温度が80℃となるように加熱した場合とのそれぞれについて、容器の外面側での殺菌剤の付着状態を比較してみた。(それぞれについて、サンプル数は20個、テスト回数は3回)
【0022】
その結果、容器の外面側での殺菌剤の付着状態を観察すると、1個の容器当たり5gとなるように殺菌剤(濃度35%の過酸化水素水)を使用した場合、本実施形態の方法では適正付着量が確認され、従来の方法では付着量が少ないことが確認された。また、1個の容器当たり7.5gとなるように殺菌剤(濃度35%の過酸化水素水)を使用した場合、本実施形態の方法では過剰に付着して殺菌剤の残留が確認され、従来の方法では適正付着量が確認された。
すなわち、本実施形態の方法によれば、従来の方法と比べて、少量の殺菌剤(濃度35%の過酸化水素水を1個の容器当たり5g)を使用することで適正な付着量を得られることが確認された。
【0023】
上記のような本実施形態の方法によれば、特別のガス室を画成してその中にガス状殺菌剤を充満させるようなことなく、噴霧ノズル3,4からガス状殺菌剤を個々のカップ容器1に対して噴霧することにより、大量の殺菌剤を使用することなく、また、カップ容器1が角型(横断面が略方形)であっても、略円錐状に噴霧する一般的な噴霧ノズル3,4を2個使用するだけで、容器の外面側(側壁の外面と底壁の下面とフランジ部の下面)に殺菌剤を均一でまんべんなく付着させることができる。
【0024】
また、本実施形態では、容器殺菌工程で容器の進行が一時的に停止されるタイミングに合わせて、各噴霧ノズル3,4(噴霧ノズル2についても同様である)からガス状殺菌剤を間欠的に噴霧するようにしていることから、個々の容器に対してガス状殺菌剤を連続的に噴霧する場合と比べて、ガス状殺菌剤の噴霧量を一層削減することができる。
【0025】
なお、上記のように2個の噴霧ノズル3,4によりカップ容器1の外面側を殺菌する場合、図5に示すように、カップ容器1を保持して搬送している搬送コンベア5に対して、その下面側に、カップ容器1の側壁1bと適当な間隔を置いて該側壁1bの少なくとも一部を囲むようにカバー部分5bを垂下させることによって、各噴霧ノズル3,4からの噴霧量が少なくても、略円錐状に噴霧されたガス状殺菌剤を拡散させることなく効率良くカップ容器1の外面側に付着させることができる。
【0026】
以上、本発明のカップ容器の外面殺菌方法の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に示した具体例にのみ限定されるものではなく、例えば、対象となるカップ容器については、横断面が略方形である角型カップ容器において特に効果的ではあるが、横断面が略円形のカップ容器に対しても実施可能であり、使用する殺菌剤については、例示した過酸化水素水に限らず、それ以外の殺菌剤によっても実施可能であり、殺菌剤をガス状にして噴霧ノズルから噴霧するためのシステムについても、実施形態に示した具体例に限られるものではない等、適宜変更可能なものであることは言うまでもない。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したような本発明のカップ容器の外面殺菌方法によれば、ガス状殺菌剤を充満させるようなガス室を画成するようなことなく、噴霧ノズルから個々の容器に向けてガス状殺菌剤を噴霧することにより、殺菌剤の使用量を少なく抑えることができると共に、略円錐状に噴霧する一般的な噴霧ノズルを使用して、少ない数の噴霧ノズルから個々の容器に向けてガス状殺菌剤を噴霧するだけで、容器の外面側に殺菌剤を均一でまんべんなく付着させることができて、殺菌設備のコストアップや装置の煩雑化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の外面殺菌方法により角型のカップ容器に対してガス状殺菌剤を噴霧している状態を示す斜視図。
【図2】本発明の外面殺菌方法により角型のカップ容器に対してガス状殺菌剤を噴霧している状態を示す(A)部分断面側面、および(B)上面図。
【図3】噴霧ノズルからガス状殺菌剤を噴霧するためのシステムを概略的に示すブロック説明図。
【図4】カップ容器を所定間隔で保持して搬送するための搬送コンベアの一部分を示す斜視図。
【図5】搬送コンベアの下面側にカバー部を垂下させた状態を示す断面側面図。
【符号の説明】
1 カップ容器
2 噴霧ノズル
3 噴霧ノズル
4 噴霧ノズル
5 搬送コンベア
5b (搬送コンベアの)カバー部
Claims (4)
- 個々のカップ容器に対して、容器の斜め下方外方で容器の中心から対称位置となる2箇所の位置から、容器の底部周縁の角部に向けてガス状殺菌剤をそれぞれ略円錐状に噴霧するようにしたことを特徴とするカップ容器の外面殺菌方法。
- 横断面が略方形である角型のカップ容器に対し、その底部の一つの対角線上にある2箇所の角部に向けて、それぞれ斜め下方外方からガス状殺菌剤を噴霧するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカップ容器の外面殺菌方法。
- 充填・密封工程に向けて搬送されているカップ容器に対し、充填・密封のために容器の進行が一時的に停止されるタイミングに合わせて、ガス状殺菌剤を間欠的に噴霧するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のカップ容器の外面殺菌方法。
- カップ容器を所定間隔で保持して搬送する容器嵌入孔付きの搬送コンベアに対して、その搬送面下面側に、カップ容器の側壁と適当な間隔を置いて該側壁の少なくとも一部を囲むように、カバー部を垂下させていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカップ容器の外面殺菌方法。
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