JP4470742B2 - 鋼片の圧延方法 - Google Patents
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図6の(a)において、スラブのように幅/厚さ比(以下B/H比)が1より大きい鋼片を、圧延機(図示しない)において複数パスの幅圧下圧延(鋼片の矩形断面における長辺を圧延すること)を行う際、通常、圧下される鋼片幅に比べて圧延ロール10のロール径は同程度ないし鋼片幅より小さくなる場合が多く、特に圧延前段パスで鋼片の幅が広い際に、幅圧下圧延時の圧延ロール10と鋼片との接触部の投影接触弧長ldと、該接触部における平均幅bm(=(Bin+2Bout)/3)との比α(=ld/bm)が小さくなる。
なお、圧延前および圧延後における鋼片をそれぞれ鋼片8および鋼片9と、圧延前の鋼片8の後端(尻抜け端)を8bと、圧延後における鋼片8の先端(噛み込み端)および後端(尻抜け端)を、それぞれ9tおよび9bと記載している。
このクロップは鋼片圧延における歩留ロスにおいて非常に大きい割合を占めており、歩留向上を考える上でこのクロップを低減することが重要な課題となっている。
(i)鋼片の先端(噛み込み端)から後端(尻抜け端)にかけて圧下量を減少させ、後端において圧下しない、すなわち、圧延後端を形成しないようにした分塊圧延方法(例えば、特許文献1参照)。
(ii)造塊スラブの底部に四角錐台状または楕円錐台状の凸部(ウエル)を形成して、スラブの折れ込み疵を防止する分塊圧延スラブの折れ込み疵生成防止方法(例えば、特許文献2参照)。
(iii)圧延後端を形成しないように分塊圧延をするに先立って、鋼片の先後端を圧延ロールによりプレス予成形することにより特別なプレス予成形機を設けることなく、クロップ損失を低減する分塊圧延方法(例えば、特許文献3参照)。
(iv)圧延初期に、複数回の噛み戻し圧延(長手方向の途中まで圧延する)によって先端および後端の所定範囲に所定厚さの凹部を形成し、その後、該凹部とほぼ同じ厚さになるまで圧延することにより、実質的に圧延後端を形成しないようにしてクロップを低減すると共に、圧延能率の向上を図る分塊圧延におけるクロップ減少方法(例えば、特許文献4参照)。
(イ)例えばスラブ長さが短い場合や、設備面、能率面での制約で十分な予成形が取れない場合、予成形による非定常変形抑制効果を十分に得ることが出来ない可能性がある。
一方、非定常変形を起こす長さよりも長い長さで予成形を行った場合(図7の(c)参照)、顕著な非定常変形を起こす鋼片最端部およびそれ以外の未成形の部分の両方において、十分な効果が得られるものである(図7の(d)参照)。
(ハ)このように、予成形長さと、それに伴う非定常変形抑制効果との関係が明確になっていない場合、多様な形状を有する鋼片に対して前記予成形圧延を行う際、鋼片形状によっては十分な予成形効果が得られないものもあるため、クロップ低減効果が限定的となる可能性がある。
(ニ)さらに、大口ツト材のように同一サイズの鋼片を続けて圧延する場合には、実際に発生したクロップ形状を見ながら予成形部形状を修正することも可能であるが、異なるサイズの鋼片を続けて圧延する場合には、かかる修正をすることができなかった。
前記鋼片における鋼片端部クロップの生成に影響する影響部長さ(Ln)を予め求め、該影響部長さ(Ln)よりも長い範囲を有する予成形部形状を与えると共に、
前記予成形部形状が圧延ロールによって与えられ、該予成形部形状が前記影響部長さ(Ln)よりも長い平行部を有することを特徴とする。
Ln=f(Bn、Hn、rn)
として求めることを特徴とする。
前述のように、鋼片1を圧延する際、圧延方向の先端(図示しない)近傍及び後端部1bの近傍を除く範囲1c(いわゆる中央部)は定常変形となり、クロップ生成には影響を及ぼさない。これは、定常変形部では鋼片の先行部及び後行部による拘束力により、非定常変形の発生が抑えられるからである。
一方、鋼片の先端近傍及び後端部1bの近傍は、非定常変形を起こし、該非定常変形がクロップ生成に影響を及ぼす。これは、定常変形部から後端部1bに近づくにつれて後行部の拘束力が十分に確保出来なくなり、後進力の大きいロール接触位置近傍のメタルフローによりクロップ生成が助長されるためである(図1の(a)参照)。
Ln=f(Bn、Hn、rn)・・・・関係式1
の形で与えておけばよい。
また、上記関係式1を適用する対象材が多品種にわたる場合などは、材質によって材料の先進・後進特性が大きく異なる事も規定されるため、上記関係式1を材料影響項を含む関数として与えてもよい。
なお、影響部長さLnと、幅Bnや厚さHnやnパス目圧下率rnとの関係は、例えば実験によりクロップ生成量を実測する方法や数値解析を用いる方法により求められ、それらにより前記関係式1を導出することが可能である。
仮定1:影響部長さLnに対する、厚さHnの影響は少ない。
仮定2:影響部長さLnに対する、ロールと鋼片との接触長さ(投影接触弧長ld)と接触部の平均幅bmとの比α(=ld/bm)の影響が大きい。
仮定3:実験的傾向から判断して、前記比α(=ld/bm)が0.5の時に、非定常変形によるクロップ成長が最も起こりやすく、その際のLnは0.5Bnである。
以上より、
Ln=−2Bn(α2−α) ・・・・関係式2
α =ld/bm ・・・・・・・・関係式3
ld/bm=√(R・rn・Bn)/((1−2・rn/3)・Bn)・・・関係式4
ここで、Rは圧延ロールの半径であって、近似的に扁平ロール半径R’と等しいとしている。
なお、平均幅bmは、 圧延nパス目の前における鋼片の幅Bn(Bnに同じ)と、2倍の圧延nパス後における鋼片の幅Bn+1との和を3で除したもの、すなわち、
bm=(Bn+2・Bn+1)/3=(Bin+2・Bout)/3 である。
よって、本発明によれば、複数パス圧延において、予め特定の圧延パス(1または2以上の適宜選択した圧延パス)について影響部長さLnを求めておき、それぞれ前記方法を実行することによって、該複数パス圧延が終了した後のクロップ(集積クロップに同じ)の低減効果を得ることができる。すなわち、予成形部形状を圧延ロールで与える場合、必要最小限の予成形平行部長さ(Mn)を与えることで操業上の目標値が明確になり、確実に前記効果を発現できるということである。
なお、本発明における各用語は、以下に定義されるものである。
(i)影響部長さ(Ln):あるnパス目において、クロップ生成に影響を及ぼす影響領域長さ。
(ii)予成形平行部長さ(Mn):あるnパス目において圧延ロールで予成形する際、予成形部における平行部の長さ(図2参照)。
(iii)予成形長さ(Mn’):あるnパス目において予成形する際の、変形部全長(予成形部形状の長さ、図2参照)
図3の(a)において、本発明のポイントは、Mn’>MnまたはMn’=Mnとし、且つ、Mn>LnまたはMn=Lnとすることにある。
このとき、Mn’>MnまたはMn’=Mnの関係は、予成形を行う工具(ロール等))形状により幾何学的に決定される。また、Mn>LnまたはMn>Lnの関係は制御にて与えられる。
図3の(b)において、予成形部の圧下量が再圧延時の圧下量よりも小さい場合、すなわち、再圧延時において予成形部が圧延される場合、図示するように、ldおよびbm(=(Bin+2・Bout)/3)が傾斜部の位置によって変動するものの、クロップ成長に及ぼすld/bmの影響は変わらないと考える。
なお、予成形部の圧下量が再圧延時の圧下量よりも大きい場合、すなわち、再圧延時において予成形部が圧延されない場合は、実質的な圧延後端が存在しないため、当該再圧延において非定常変形が発生することがない。
すなわち、当該圧延の前工程側を「BまたはBottom」、次工程側を「TまたはTop」として、1パス目でロールを正転して、1パス目のT部予成形をした後、ロールギャップを拡大してパス途中で空通しにし、次に、ロールを逆転して、2パス目で全長の(正確には1パス目のT部予成形範囲を除いた残り初期スラブ厚さの範囲)を幅圧延する。
さらに、再び鋼片を90°回転した後、ロールを逆転して、4パス目でB部予成形をした後、ロールギャップを拡大してパス途中で空通しにし、次に、ロールを正転して、5パス目で全長(正確には4パス目のB部予成形範囲を除いた、2パス目の圧延厚さ範囲)を圧延する。以下同様に幅圧延を繰り返す。そして、B/H比がある値以下になった圧延パスの後期では、予成形によるクロップ低減効果が小さいため、予成形をしていない。
次に、本発明の予成形のクロップ低減効果を確認した実験例について簡単に説明する。
図4および図5は、本発明の実施形態に係る鋼片の圧延方法における実験例を説明するものであって、図4は圧延状況を示す模式図、図5は圧延結果を示す棒グラフである。
図4の(a)において、鋼片1は、厚さ34.4mm、幅88.8mm、長さ300mmの純鉛を用い、圧延ロール10はロール径170mmである。そして、圧延ロール10を回転駆動するモデル圧延機(図示しない)によって、圧延ロール10を逆転(図中、図中、鋼片1が右へ進む方向)して、それぞれ予成形平行部長さを変化させて後端1bに予成形を行い、その後、予成形平行部長さが相違するそれぞれの鋼片1について圧延ロール10を正転(図中、鋼片1が左へ進む方向)した圧延を行い、圧延後のクロップ長さを実測して比較を行っている。
このとき、予成形の平行部長さ2は、20mm、100mm、および比較のための予成形をしないもの(仮に、0mmと記載する)であり、予成形および圧延における圧下はいずれも、幅(長辺)88.8mmを16mm圧下(片側圧下量は8mm)するギャップ設定である。
図5において、縦軸はクロップ長さ、横軸は予成形の平行部長さ(予成形なしを含む)である。予成形をしない場合(平行部0mm)は、後端クロップ4bの成長が大きいのに対し、平行部長さ100mmの予成形を与えた場合は、先端クロップ4tと後端クロップ4bとは同程度であり、十分な後端クロップ低減効果が得られている(本発明において、後端クロップが先端クロップと同程度に抑えらることを「十分なクロップ低減効果」と称している)。したがって、影響部長さLnは、100mm以下の「ある値」に決定される。
これら実験からも、本実験における寸法の鉛板については、影響部長さLnは、「20mm<Ln<100mm」の範囲内にある「ある値」として決定されるはずである。よって、このような実験を鉛板寸法や圧下率を変更して行いLnを求めることも可能である。
1b 後端
2 予成形平行部長さ(Mn)
3 鋼片
3b 後端
3t 先端
4b 後端クロップ
4t 先端クロップ
8 鋼片
9 鋼片
9b 後端
9t 先端
10 圧延ロール
Claims (3)
- 複数パスの幅圧下圧延によって鋼片を圧延するに際し、特定の圧延パス(nパス)の前に、当該圧延パスの尾端を予め予成形してクロップを低減する鋼片の圧延方法であって、
前記鋼片における鋼片端部クロップの生成に影響する影響部長さ(Ln)を予め求め、該影響部長さ(Ln)よりも長い範囲を有する予成形部形状を与えると共に、
前記予成形部形状が圧延ロールによって与えられ、該予成形部形状が前記影響部長さ(Ln)よりも長い平行部を有することを特徴とする鋼片の圧延方法。 - 前記特定の圧延パス(nパス)における圧下率がrn、該圧延パス(nパス)の前の前記鋼片の幅がBn、該鋼片の厚さがHnであって、該鋼片の幅と厚さとの比(B/H比)が1以上のとき、前記影響部長さ(Ln)を前記圧下率と前記鋼片の幅と該鋼片の厚さとの関数
Ln=f(Bn、Hn、rn)
として求めることを特徴とする請求項1記載の鋼片の圧延方法。 - 前記関数が、Ln=−2Bn(α 2 −α)であって、このとき、α=ld/bm、ldは圧延ロールと前記鋼片との投影接触長さ、bmは接触部における平均幅であることを特徴とする請求項2記載の鋼片の圧延方法。
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