JP4109443B2 - フランジを有する形鋼の圧延方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、H形鋼、I形鋼、溝形鋼等のフランジを有する形鋼の圧延において、先後端の寸法形状の不良部を少なくし、寸法精度の良好な製品を製造する圧延方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
H形鋼を熱間圧延により製造する場合において、H形鋼の製造工程は、例えば、図7に示すように、圧延素材を粗圧延する二重式粗圧延機1(以下、「粗圧延機」と称する)、一対の上下水平ロール2aと一対の左右竪ロール2bとで構成された粗ユニバーサル圧延機2と、この粗ユニバーサル圧延機2に近接して配設されたエッジャー圧延機33および仕上げユニバーサル圧延機4からなる圧延装置列により圧延成形されるのが一般的である。
【0003】
H形鋼の素材としては、一般に連続鋳造で製造されるスラブやブルーム、ビームブランクなどが用いられる。スラブを素材とした場合、粗圧延機1において,図8のようにロールに複数配置された孔型のうち、まず孔型の中央部に突起を有する孔型11〜13により順次、スラブの短辺部を上下から複数パスで圧下してフランジを生成させてドッグボーン状の中間鋼片51を成形する。ウェブ面からフランジ先端まで中間位置でのフランジ厚をtf’とすると、スラブをウェブ高さ方向に圧下した後に生成されるフランジ厚tf’は、通常、スラブ厚みの半分よりやや大きい程度であるので、この中間鋼片51ではウェブ厚に対するフランジ厚みの比はtf’/tw’<<1である。
【0004】
次に、この中間鋼片51を90°ないしは270°転回し、成形孔型15により複数パスでウェブ厚みを圧下するとともにフランジを整形し、ウェブ厚みtw’に対するフランジ厚みtf’の比tf’/tw’およびウェブ面からフランジ先端までの長さ(以下、「フランジ脚長」と称する)L’が製品の厚み比tf/twおよびフランジ脚長Lとほぼ同等か近い粗形鋼片53にまで圧延を行う。すなわち、製品のウェブ厚みに対するフランジ厚みの比の範囲は通常tf/tw>1であることから、粗形鋼片53の厚み比はtf’/tw’>1である。
【0005】
ここで、圧延出側の厚みt2に対する圧延入側の厚みt1の比t1/t2を厚み延伸と定義すると、こうして得られた粗形鋼片53は粗ユニバーサル圧延機2でウェブ厚み延伸ηwとフランジ厚み延伸ηfをほぼ等しくした状態で、製品の厚みにほぼ等しくなるまで複数パスで圧延される。その際、粗ユニバーサル圧延機2に近接して配置したエッジャー圧延機33には製品のフランジ脚長Lよりもわずかに孔型深さDの小さい孔型ロール3cを使用し、これによりフランジ幅を圧下することで図9に示すようなフランジ62の幅中心dからのウェブ61の中心cのずれ(以下、「ウェブ中心偏り」と称する)が一定量以上に大きくならないようにしている。ここで、ウェブ中心偏り量eは上下のフランジ脚長a,bの関係からe=(a−b)/2と表される。こうしてほぼ製品寸法にまで整形された被圧延材に対し、仕上げユニバーサル圧延機4でフランジをウェブに対して直角にし、厚みを最終寸法に仕上げる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
通常、粗圧延機1の成形孔型ではウェブ厚のみが圧下され、フランジはフランジ幅が多少圧下されるだけで厚みは圧下されない。そのため、粗圧延あるいは粗ユニバーサル圧延の途中パスでは、図10(a)のようなフランジに対してウェブが先行したタング状のクロップが大きく形成される。タングが大きく成長するとユニバーサル圧延中にミスロールを発生させる可能性があるため、粗圧延後あるいは粗ユニバーサル圧延の途中で中間クロップカットソーでクロップを切断しており、歩留を低下させている。
【0007】
図11のようなウェブ外法一定H形鋼では、従来よりも製品のウェブ厚みに対するフランジ厚みの比が大きいサイズが多くなっており、タング状のクロップ長さはますます増加する傾向にある。また、ウェブ外法一定H形鋼では、図11のようにウェブ厚みtwによらずフランジ幅Bが一定、すなわちフランジ脚長Lがウェブ厚みによって異なっている。そのため、孔型深さ一定のエッジャー圧延機33では、ウェブ厚みによってはロールとウェブ面との間隔が大きくなり、ウェブ中心偏りが悪化しやすいという問題もある。
【0008】
また、中間クロップカットソーで切断後の被圧延材を粗ユニバーサル圧延機でウェブ厚み延伸ηwとフランジ厚み延伸ηfをほぼバランスさせて圧延した場合、圧延入側のウェブ厚twとフランジ厚tf、水平ロール半径Rhと竪ロール半径Rvの関係から、竪ロールとフランジとの接触弧長Ldfと水平ロールとウェブとの接触弧長Ldwの比は、
ldf/ldw={2Rv・tf・(1−1/ηf)}1/2/{Rh・tw・(1−1/ηw)}1/2
={2Rv/Rh・tf/tw・(1−1/ηf)/(1−1/ηw)}1/2>1
となり、通常フランジの方が接触弧長が長くなる。その結果、先後端ではウェブが水平ロールにより拘束されない状態で、竪ロールによってフランジが圧下され、ウェブにはウェブ高さ方向に圧縮力が作用して座屈しやすくなり、ウェブ位置が付け替えられる。また、噛み込み側で被圧延材とユニバーサル圧延機のパスラインが上下にずれると、先にフランジの上下位置が竪ロールによって拘束されるため、水平ロールによってウェブ位置が付け替えられる。これらの結果、ウェブ中心偏りが悪化し、製品の先後端部の寸法不良部が長くなり歩留が低下するという問題もある。実際には、ウェブ波を防止するために、ユニバーサル圧延の後半パスではフランジ厚み延伸をウェブ厚み延伸に対してやや大きくして圧延することが多く、その場合、図10(b)のようなフィッシュテール状のクロップが形成され、さらに座屈が生じやすくなっている。
【0009】
先後端のクロップを低減させる方法としては、特開平01-143701号公報および特開平07-337315号公報に、プレス装置によりウェブ部を圧下することにより、続く圧延工程でウェブクロップの成長を抑制する方法が開示されている。しかしながら、プレス装置が新たなに必要となり設備コストが嵩む。本発明者らは、クロップの生成特性に着目した実験により、ウェブ厚の大きい段階からフランジ厚も圧下し、ウェブが大きく先行したクロップが生成するまでにできるだけウェブ厚を小さくすることによりクロップ長が低減すること、噛み込み端におけるクロップ生成にはフランジ厚み延伸の影響が小さいことを明らかにした。
【0010】
本発明は、これらの知見により圧延機以外に特別な設備を必要とすることなく、上記課題を解決し、長手方向の寸法形状不良部の少ない寸法精度が良好な製品を効率的に製造するための圧延方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、粗圧延機と、粗ユニバーサル圧延機およびエッジャ−圧延機からなる1組あるいは複数組の中間圧延機群を用いてフランジを有する形鋼を圧延する方法において、ウエブ厚みに対してフランジ厚みが大きい製品に対して、被圧延材のウエブ厚みに対するフランジ厚みの比が1より小さく、かつ製品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了し、粗ユニバーサル圧延の前半パスにおいて、粗圧延終了から製品までのウエブ厚みの総圧下量のうち1/5以上のウエブ厚み圧下を行うまで、ウエブ厚み延伸に対するフランジ厚み延伸の比を平均で0.93以上に設定してウエブ厚みとフランジ厚みを圧下するものである。
【0012】
より好適な方法として、本発明は、粗圧延機と、粗ユニバーサル圧延機およびエッジャ−圧延機からなる1組あるいは複数組の中間圧延機群を用いてフランジを有する形鋼を圧延する方法において、ウエブ厚みに対してフランジ厚みが大きい製品に対して、被圧延材のウエブ厚みに対するフランジ厚みの比が1より小さく、かつ製品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了し、粗ユニバーサル圧延の前半パスにおいて、粗圧延終了から製品までのウエブ厚みの総圧下量のうち1/5以上のウエブ厚み圧下を行うまで、各パスともウエブ厚み延伸に対するフランジ厚み延伸の比を0.93以上に設定してウエブ厚みとフランジ厚みを圧下するものである。
【0013】
また、本発明は、上記方法において、ウエブ厚みに対してフランジ厚みが大きい製品に対して、被圧延材のウエブ厚みに対するフランジ厚みの比が1より小さく、かつ製品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了し、粗ユニバーサル圧延機で圧延中に蹴出し端側でのフランジ厚み延伸を大きくするか、ウエブ厚み延伸を小さくするものである。
【0015】
さらに、本発明は、粗圧延機と、粗ユニバーサル圧延機およびエッジャ−圧延機からなる1組あるいは複数組の中間圧延機群を用いてフランジを有する形鋼を圧延する方法において、
1) 粗圧延機の成形孔型圧延での少なくとも1パスにおいて、噛み込み端が噛み込んだ後蹴出すまでの間にロール間隙を開放するか、あるいは噛み込み端に比べ蹴出し端の圧下量を小さくすること、
2) ウエブ厚みに対してフランジ厚みが大きい製品に対して、被圧延材のウエブ厚みに対するフランジ厚みの比が1より小さく、かつ製品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了し、粗ユニバーサル圧延の前半パスにおいて、粗圧延終了から製品までのウエブ厚みの総圧下量のうち1/5以上のウエブ厚み圧下を行うまで、ウエブ厚み延伸に対するフランジ厚み延伸の比を平均あるいは各パスで0.93以上に設定してウエブ厚みとフランジ厚みを圧下すること
3) ウエブ厚みに対してフランジ厚みが大きい製品に対して、被圧延材のウエブ厚みに対するフランジ厚みの比が1より小さく、かつ製品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了し、粗ユニバーサル圧延機で圧延中に蹴出し端側でのフランジ厚み延伸を大きくするか、ウエブ厚み延伸を小さくすること、
のいずれか2つ以上を組み合わせて圧延するものである。
【0016】
さらには、前記粗圧延機において、複数の孔型により順次素材を製品に対するウェブ高さ方向にのみ圧下を行うものである。
【0017】
前記エッジャー圧延機を孔型深さを自在に調整できるものとし、被圧延材のフランジ脚長の変化に応じてパスごとあるいはパス内で連続的に孔型深さを調整してフランジ幅を圧下するものである。より好適には、前記孔型深さを自在に調整できるエッジャー圧延機において、少なくとも被圧延材のウェブ端部からコーナーR部、フランジ内面の下方部にウェブ拘束ロールを接近させつつフランジ幅を圧下するものである。
【0018】
前記粗ユニバーサル圧延機において、水平ロール側面部のコーナーR寄りの領域をロール軸寄りの領域よりも鉛直線に対する勾配が大きくなるように単数または複数の円弧あるいは直線で構成される形状とするか、または水平ロール円周部のロール軸方向の中央付近からコーナーRにかけての領域をコーナーRに近いほどロール径が減少するような単数または複数の円弧あるいは直線で構成される形状とするか、または前者と後者の両方で構成される形状とするものである。
【0019】
また、本発明は、中間クロップ切断後の粗ユニバーサル圧延において、少なくとも1パス以上、ウェブ厚み延伸をフランジ厚み延伸に比べて大きくして圧延するものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明についてスラブを素材としたH形鋼の製造方法を圧延機の構成がシンプルな図1と図2を例にして説明する。
【0021】
まず、二重式の粗圧延機1の第1孔型11でスラブの短辺を上下からウェブ高さ方向に圧下し誘導用の溝を付与する。次に第2孔型12で第1孔型で付けた溝を案内にしつつ複数パスでウェブ高さ方向にスラブ幅を圧下してフランジを生成する。次に第3孔型13で溝をなだらかしてドッグボーン状の中間鋼片51を生成する。この中間鋼片51では、前述のようにウェブ厚に対するフランジ厚みの比はtf’/tw’<<1である。また、長手方向の端部はウェブよりもフランジの方が先行した、いわゆるフィッシュテール形状となっている。
【0022】
次に、成形孔型14によりウェブ厚の圧下を行うが、従来よりもウェブ圧下量を少なくし、ウェブ厚みtw’に対するフランジ厚みtf’の比tf’/tw’が製品の厚み比tf/twに比べ小さい断面52で圧延を終了する。本発明で言うところの粗圧延終了のウェブ厚みに対するフランジ厚みの比の範囲はおおよそtf’/tw’<1であり、製品の厚み比がtf/tw>1であることと比較して小さい。好ましくは、クロップがフィッシュテールからタング状になる以前に圧延を終了する。
【0023】
この場合、粗ユニバーサル圧延以降の圧延における累積のウェブ厚み延伸がフランジ厚み延伸に比べ大きくなる。粗ユニバーサル圧延機2でウェブ厚とフランジ厚を圧延する際、その前半パスにおいてフランジ厚み延伸を相対的に高めることによってウェブ厚が大きい段階でのウェブクロップの成長が抑制でき、ウェブ厚がある程度小さくなった中間パスでウェブ厚み延伸を相対的に高めても、ウェブ厚みが比較的小さいためにクロップが発生してもその重量が小さく抑えられる。
【0024】
図4にウェブ厚み延伸に対するフランジ厚み延伸の比(フランジ延伸/ウェブ延伸)が噛み込み端と蹴出し端のクロップ長さに及ぼす影響の一例を示す。図4ではフランジ幅の立ち上がりからウェブ先端までの距離をクロップ長さとし、プラスがタングである。この図から分かるように、ウェブ厚み延伸に対するフランジ厚み延伸の比を0.93以上に設定することにより、ウェブクロップの成長が抑制される。特に、粗圧延終了から製品までのウェブ厚みの総圧下量のうち1/5以上のウェブ厚み圧下を行うまでの間は、各パスともウェブ厚み延伸に対するフランジ厚み延伸の比を0.93以上に設定することにより、ウェブクロップの成長が抑制され、粗圧延途中で切断するクロップ重量を削減でき歩留向上の効果があることが実験より明らかとなった。また、それぞれの数値が大きいほどクロップ重量の削減効果が大きく、好ましくはウェブ厚みの総圧下量のうち1/3以上のウェブ厚み圧下を行うまでの間は、ウェブ厚み延伸に対するフランジ厚み延伸の比を0.95以上にする。粗圧延終了から製品までのウェブ厚みの総圧下量が1/5以下、また、ウェブ厚み延伸に対するフランジ厚み延伸の比が0.93以下ではフランジ圧下によるクロップ短縮の効果がほとんど得られない。各パスとも0.93以上にできなくても、平均で0.93以上にできれば効果はある。ただし、製品のフランジ厚み/ウェブ厚み比が大きいサイズでは、前半パスでフランジ厚み延伸を高める過ぎるとフランジ肉量が不足するために、製品のフランジ厚み/ウェブ厚み比に応じて粗圧延終了のウェブ厚みに対するフランジ厚みの比や粗ユニバーサル圧延のパススケジュールを設定すればよい。
【0025】
もう一つの方法として、図1のようにウェブ厚みに対するフランジ厚みの比が製品に比べ小さい断面52で圧延を終了した後、粗ユニバーサル圧延機1でウェブ厚み延伸をフランジ厚み延伸よりも大きく設定して圧延する際、当該パスにおける噛み込みから蹴出す前までの間は設定どおりウェブ厚み延伸をフランジ厚み延伸よりも大きくして圧延し、蹴出し端を圧延する前に水平ロールギャップを広げるか、あるいは竪ロールギャップを小さくする変更をして、フランジ延伸/ウェブ延伸を高めて蹴出し端の圧延を行う。図4から分かるように、蹴出し端は、ウェブ厚み延伸が相対的に大きいほどクロップが大きく増加するのに対し、噛み込み端ではウェブ厚み延伸が相対的に増加してもタングは蹴出し端ほどは増加しない。圧延中にロールギャップを変更することは油圧圧下機構を導入すれば容易に行える。圧延中にロールギャップが変更できない場合には、噛み込み端を圧延後か蹴出し端を圧延する前に圧延機のロール回転を停止し、ロールを逆回転して材料を引き戻した後、フランジ延伸/ウェブ延伸が相対的に大きくなるようにロールギャップを修正して同一方向に再圧延するか、或いはロールを解放して空通しすればよい。
【0026】
このことは、粗圧延機1の成形孔型14による圧延でも同じことであり、蹴出し端のウェブ厚み延伸を小さくする同様の制御を行うことによりクロップ発生量は大きく低減できる。また、粗圧延機および粗ユニバーサル圧延機で以上の圧延方法を2つ以上組み合わせればさらに効果的である。
【0027】
粗圧延終了のウェブ厚みに対するフランジ厚みの比がもっとも小さくなる形態としては、粗圧延機1の成形孔型14を省略し、粗圧延機1でスラブをその幅方向に圧延してドッグボーン状の中間鋼片51を成形した後、すぐに粗ユニバーサル圧延機2でフランジ厚の圧下を開始することである。その場合、粗圧延機1には例えば図3のようにロール胴長内にウェブ高さ方向に圧下する孔底幅の異なる孔型12aと12b、13aと13bを多数配置できるので、製品のフランジ幅や、ウェブ高さ、厚みに依存する粗ユニバーサル圧延以降でのフランジ成形特性に応じて使用する粗圧延機の孔型を選択することにより、ウェブ高さの異なるシリーズにわたって粗圧延機のロールを共用することも可能となる。
【0028】
また、エッジャー圧延機3には、フランジ圧下ロール3aとウェブ拘束ロール3bを備え、孔型深さ(フランジ圧下ロール3aとウェブ拘束ロール3bの外周面の相対距離)を自在に変更できる機構を有するもの(以下、「孔型深さ可変式エッジャー圧延機」と称する)を適用すれば、寸法精度はさらに高められる。例えば、図1でD1、D2のように各パスごとに被圧延材フランジ脚長に応じて孔型深さを調整してウェブ中心偏りを常に一定量以下に抑制するように圧延する。ウェブ中心偏りが大きい場合にはウェブ拘束ロール3bによりウェブを圧下することになる。このエッジャー圧延機3としては、例えば特許1828792号公報に開示されているような、左右2分割式のフランジ幅圧下ロールと、フランジ幅圧下ロールとは回転自在に勘合した偏心リングの外周面に回転自在に装着されたウェブ拘束リングロールからなるエッジャー圧延機などを採用すればよい。
【0029】
孔型深さ可変式エッジャー圧延機を使用すれば、フランジ幅の異なる製品やフランジ幅が一定でウェブ厚みに応じてフランジ脚長が異なる製品をロールの組み替えを行うことなく製造できるので、生産性が高まり、ロール費用も削減できる。
【0030】
加えて、孔型深さ可変式エッジャー圧延機3で圧延する際、各パス毎に、ウェブの高さ方向両端部はもちろんのこと、被圧延材のコーナーR部からフランジ内面の下方部に該ウェブ拘束ロールを接近させて圧延することにより、ウェブ中心偏りを効率的に修正できるだけでなく、フランジ幅を大圧下した際にフランジ内側へ大きくバルジングが生じるのを抑え、粗ユニバーサル圧延でフランジ内面をスリ下げて折れ込み疵(スリ下げ疵)を発生させるのを防止することができる。フランジ内面のスリ下げ疵の防止には、フランジ内面のできるだけフランジ先端側までウェブ拘束ロールが接近するようにロール形状を設定することが好ましい。
【0031】
しかし、フランジ内面のフランジ先端側までウェブ拘束ロールを接近させることが構造上困難な場合にフランジ幅を大きく圧下する必要が生じる場合には、粗ユニバーサル圧延機2の水平ロール形状を、例えば、図5(a)に示すようにコーナーRr2とは別に、フランジ内面の下方部に対応する水平ロール側面のコーナーRr2寄りの領域を円弧r1で形成し、この部分の鉛直線に対する勾配が、フランジ内面のフランジ先端側に対応するロール軸寄りの領域の勾配に比べ大きくなるようにする。円弧r1の代わりに勾配の大きな直線で構成してもよい。
【0032】
すなわち、フランジ先端付近でフランジ内側へ大きなバルジングが生じた場合、通常の側面の勾配が一定の水平ロールでは、フランジ先端側のバルジング部に水平ロールのコーナーR部が接触し始め、ロールの回転とともにバルジングをフランジ下方に徐々にスリ下げていき、ウェブとフランジの境界部付近に折れ込みを生じさせるが、水平ロール側面のコーナーR寄りの領域の勾配が大きいとコーナーR部の胴幅が小さくなるためにバルジング部をスリ下げない。また、粗ユニバーサル圧延機の水平ロール側面が一定勾配の形状の場合、ウェブ厚み延伸をフランジ厚み延伸よりも大きく設定して多パス圧延を行うとフランジ内面が水平ロール側面から離れ、圧下が進むにつれてフランジ内側が凹んだ状態になるが、図5(a)のような形状にすれば凹みの発生を抑制できフランジ内面の形状をなめらかにできるとともに、ウェブ圧下に伴うフランジ肉量の減少量を低減させる効果もある。
【0033】
さらには図5(b)のように、特開平7−284801号公報と同様に、水平ロール円周部のロール軸方向の中央付近からコーナーRにかけての領域に、コーナーRに近いほどロール径が減少するような単数または複数の円弧あるいは直線で構成される傾斜部を付与することにより、粗ユニバーサル圧延でフランジ厚み延伸に対してウェブ厚み延伸を相対的に大きくして圧延した際に、ウェブからフランジへのメタルフローが増大しフランジ断面積の減少率が低減する。そのため、フランジ肉量が確保し易くなるだけでなく、本発明の特徴である被圧延材のウェブ厚みに対するフランジ厚みの比が製品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了し、粗ユニバーサル圧延の初期パスからフランジ厚みを圧下することにより従来の圧延法に比べてウェブクロップの成長が著しく抑制できるという大きな効果も得られる。
【0034】
もちろん、図5(c)に示すように水平ロールの円周部のロール軸方向中央付近からコーナーR、さらには側面部にかけての領域を複数の円弧または直線で構成することにより、フランジ先端のバルジングのスリ下げによる折れ込み疵発生を抑制しつつ、フランジ断面積の十分な確保ができクロップ削減効果も増大する。
【0035】
粗圧延機でウェブ高さ方向の圧下を行った後の粗形鋼片から、前述のウェブ外法一定H形鋼のようにウェブ厚みとフランジ厚みの比tf/twが広範囲なサイズや広範囲なフランジ幅シリーズの製品を容易に製造するためには、図6に示すようにサイズやシリーズに応じて粗圧延機1でウェブ高さ方向の圧下終了時の粗形鋼片5のウェブ高さを調整することも効果がある。つまり、粗圧延終了時では、ウェブ厚みが大きいため製品のフランジに相当する部位の大部分はウェブ部と連続した領域5aに位置しており、粗ユニバーサル圧延でウェブを圧下することによりフランジとして形成される。
【0036】
したがって、tf/twが大きいサイズでは、粗圧延終了のウェブ高さを標準より大きくし、それに対応して粗ユニバーサル圧延の初期パスの竪ロール2bの開度を標準より大きく設定した状態で水平ロール2aによりウェブ厚みの圧下を行い、tf/twが小さいサイズでは、粗圧延終了のウェブ高さを標準より小さくし、それに対応して粗ユニバーサル圧延の初期パスの竪ロール開度を標準より小さく設定して水平ロールによりウェブ厚みの圧下を行う。これにより、フランジ厚みのベースとなる粗ユニバーサル圧延の初期のフランジ厚みtf0を調整できるとともに、ウェブ外法に対するウェブ内法の比を小さくすれば、ユニバーサル圧延でのウェブ圧下に伴うフランジ断面積の減少率が低下し、反対にウェブ外法に対するウェブ内法の比を大きくすれば、ユニバーサル圧延でのウェブ圧下に伴うフランジ断面積の減少率が増大して、フランジ肉量の制御量が拡大できサイズの造り分けが容易になる。加えて、粗圧延終了のウェブ高さに応じてスラブ幅を変更すればさらに効果的である。
【0037】
ところで、本発明の圧延方法は図1に示した圧延装置列に限定されるものではなく、二重式の粗圧延機、第1粗ユニバーサル圧延機とこれに隣接した第1エッジャー圧延機からなる第1中間圧延機群、第2粗ユニバーサル圧延機と第2エッジャー圧延機からなる第2中間圧延機群、および仕上げユニバーサル圧延機から構成される圧延装置列も当然含まれる。この場合、第1エッジャー圧延機あるいは第2エッジャー圧延機を孔型深さ可変式としてもよい。また、中間圧延機群が第1粗ユニバーサル圧延機、孔型深さ可変式エッジャー圧延機3および第2粗ユニバーサル圧延機をタンデムに配置した場合も考えられる。
【0038】
中間クロップ切断後の粗ユニバーサル圧延において、前述のように竪ロールとフランジとの接触弧長が水平ロールとウェブとの接触弧長よりも大きい場合に、ウェブ高さ方向の圧縮応力よる座屈やパスラインずれによってウェブが付け替わり、ウェブ中心偏りが悪化するのを防止するために、中間クロップ切断後の最初の少なくとも1パスにおいて、ウェブ厚み延伸をフランジ厚み延伸よりも大きくして、両端にタング状のクロップを生成する。これにより、噛み込み時にパスラインがずれてもウェブが先に誘導されるためにウェブ付け替えが生じにくくなるとともに、蹴出し時に圧縮応力が生じても、後続部にウェブ部があるために座屈が生じにくくなり、ウェブ中心偏りの悪化が防止でき、最終製品の寸法不良部が短くできる。
【0039】
ここでは、スラブを素材とした例で説明したが、ブルームやビームブランクを素材とした場合でも粗圧延機および粗ユニバーサル圧延機で同様に圧延すればよい。
【0040】
また、説明はH形鋼の圧延について行ったが、I形鋼や溝形鋼などについても、図1に示す圧延装置列などにおいて、同様の圧延方法を行えばクロップ長さを短くできる。
【0041】
【実施例】
ウェブ高さH600mm、フランジ幅250mm、ウェブ厚12mm、フランジ厚22mのH形鋼を、厚み250mmの連続鋳造スラブを素材として、粗圧延機、粗ユニバーサル圧延機とエッジャー圧延機からなる第1中間圧延機群と第2中間圧延機群、仕上げ圧延機を使用して製造した。第1中間圧延機群のエッジャー圧延機には孔型深さ可変式エッジャー圧延機を使用した。
【0042】
粗圧延機では、いずれもウェブ厚170mmで圧延を終了した。第1粗ユニバーサル圧延機の前半パスを表1に示した延伸比で、表1に示したウェブ厚まで圧延し、その後は、フランジ厚/ウェブ厚が製品のフランジ厚/ウェブ厚にほぼ等しくなるまで、ウェブ厚み延伸とフランジ厚み延伸を調整した後、ウェブ厚み延伸とフランジ厚み延伸をほぼ等しくして製品まで圧延した。第1粗ユニバーサル圧延は合計11パスで、先端側クロップは11パス後、後端側クロップは10パス後に切断し、その長さを測定した。
【0043】
比較として従来の圧延方法で製造した場合も表1に示す。この場合、粗圧延終了のウェブ厚は70mmであり、粗ユニバーサル圧延ではフランジ延伸/ウェブ延伸は全パスともほぼ1.0である。表1にそれぞれの切断した中間クロップ長さを示すが、本発明の圧延方法により中間クロップ長さが低減し、歩留りが向上した。
【0044】
【表1】
【0045】
なお、粗圧延機の成形孔型の第1〜4パスにおいて蹴出し端のウェブ厚圧下を行わなかった条件については、クロップ長さは従来法よりも先端、後端とも約250mmが短縮した。
【0046】
また、中間クロップ切断後、3パスにわたりウェブ厚み延伸をフランジ厚み延伸に対して大きくして圧延を行ったところ、ウェブ厚み延伸とフランジ厚み延伸を等しくした場合に比べ、先端と後端のウェブ中心偏り公差はずれ部の長さが約1m短縮した。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明の圧延方法により、クロップの成長を抑制でき歩留が向上するだけでなく、端部におけるウェブ中心偏りが小さく良好な寸法精度の製品が製造できる。また、フランジ幅の異なる製品についてもロール組み替えを行うことなく製造でき、ロール保有数を削減し、歩留や作業率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧延方法および圧延装置列の説明図である。
【図2】本発明の粗圧延方法の説明図である。
【図3】本発明におけるウェブ高さ方向の圧下のみを行う粗圧延方法の説明図である。
【図4】ユニバーサル圧延におけるクロップ生成特性に関する説明図である。
【図5】本発明による粗ユニバーサル圧延機の水平ロール形状の説明図である。
【図6】サイズ造り分けに関する圧延方法の説明図である。
【図7】従来の圧延方法の説明図である。
【図8】従来の粗圧延方法の説明図である。
【図9】H形鋼のウェブ中心偏りの説明図である。
【図10】H形鋼の製造過程で生成するクロップ形状の説明図である。
【図11】ウェブ外法一定H形鋼の説明図である。
Claims (9)
- 粗圧延機と、粗ユニバーサル圧延機およびエッジャ−圧延機からなる1組あるいは複数組の中間圧延機群を用いてフランジを有する形鋼を圧延する方法において、ウエブ厚みに対してフランジ厚みが大きい製品に対して、被圧延材のウエブ厚みに対するフランジ厚みの比が1より小さく、かつ製品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了し、粗ユニバーサル圧延の前半パスにおいて、粗圧延終了から製品までのウエブ厚みの総圧下量のうち1/5以上のウエブ厚み圧下を行うまで、ウエブ厚み延伸に対するフランジ厚み延伸の比を平均で0.93以上に設定してウエブ厚みとフランジ厚みを圧下することを特徴とするフランジを有する形鋼の圧延方法。
- 粗圧延機と、粗ユニバーサル圧延機およびエッジャ−圧延機からなる1組あるいは複数組の中間圧延機群を用いてフランジを有する形鋼を圧延する方法において、ウエブ厚みに対してフランジ厚みが大きい製品に対して、被圧延材のウエブ厚みに対するフランジ厚みの比が1より小さく、かつ製品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了し、粗ユニバーサル圧延の前半パスにおいて、粗圧延終了から製品までのウエブ厚みの総圧下量のうち1/5以上のウエブ厚み圧下を行うまで、各パスともウエブ厚み延伸に対するフランジ厚み延伸の比を0.93以上に設定してウエブ厚みとフランジ厚みを圧下することを特徴とするフランジを有する形鋼の圧延方法。
- 粗圧延機と、粗ユニバーサル圧延機およびエッジャ−圧延機からなる1組あるいは複数組の中間圧延機群を用いてフランジを有する形鋼を圧延する方法において、ウエブ厚みに対してフランジ厚みが大きい製品に対して、被圧延材のウエブ厚みに対するフランジ厚みの比が1より小さく、かつ製品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了し、粗ユニバーサル圧延機で圧延中に蹴出し端側でのフランジ厚み延伸を大きくするか、ウエブ厚み延伸を小さくすることを特徴とするフランジを有する形鋼の圧延方法。
- 粗圧延機と、粗ユニバーサル圧延機およびエッジャ−圧延機からなる1組あるいは複数組の中間圧延機群を用いてフランジを有する形鋼を圧延する方法において、
1) 粗圧延機の成形孔型圧延での少なくとも1パスにおいて、噛み込み端が噛み込んだ後蹴出すまでの間にロール間隙を開放するか、あるいは噛み込み端に比べ蹴出し端の圧下量を小さくすること、
2) ウエブ厚みに対してフランジ厚みが大きい製品に対して、被圧延材のウエブ厚みに対するフランジ厚みの比が1より小さく、かつ製品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了し、粗ユニバーサル圧延の前半パスにおいて、粗圧延終了から製品までのウエブ厚みの総圧下量のうち1/5以上のウエブ厚み圧下を行うまで、ウエブ厚み延伸に対するフランジ厚み延伸の比を平均あるいは各パスで0.93以上に設定してウエブ厚みとフランジ厚みを圧下すること
3) ウエブ厚みに対してフランジ厚みが大きい製品に対して、被圧延材のウエブ厚みに対するフランジ厚みの比が1より小さく、かつ製品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了し、粗ユニバーサル圧延機で圧延中に蹴出し端側でのフランジ厚み延伸を大きくするか、ウエブ厚み延伸を小さくすること、
のいずれか2つ以上を組み合わせて圧延することを特徴とするフランジを有する形鋼を圧延する方法。 - 粗圧延機において、複数の孔型により順次素材を製品に対するウエブ高さ方向にのみ圧下を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のフランジを有する形鋼を圧延する方法。
- エッジャー圧延機を孔型深さに自在に調整できるものとし、被圧延材のフランジ脚長の変化に応じてパスごとあるいはパス内で連続的に孔型深さを調整してフランジ幅を圧下することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のフランジを有する形鋼を圧延する方法。
- エッジャー圧延機において、少なくとも被圧延材のウエブ端部からコーナーR部、フランジ内面の下方部にウエブ拘束ロールを接近させつつフランジ幅を圧下することを特徴とする請求項6に記載のフランジを有する形鋼を圧延する方法。
- 粗ユニバーサル圧延機において、水平ロール側面部のコーナーR寄りの領域をロール軸寄りの領域よりも鉛直線に対する勾配が大きくなるように単数または複数の円弧あるいは直線で構成される形状と刷るか、又は水平ロール円周部のロール軸方向の中央付近からコーナーRにかけての領域をコーナーRに近いほどロール径が減少するような単数または複数の円弧あるいは直線で構成される形状とするか、または前者と後者の両方で構成される形状とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のフランジを有する形鋼を圧延する方法。
- 中間クロップ切断後の粗ユニバーサル圧延において、少なくとも1パス以上、ウエブ厚み延伸をフランジ厚み延伸に比べて大きくして圧延することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のフランジを有する形鋼の圧延方法。
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