JP3582253B2 - 形鋼用粗形鋼片の圧延方法および圧延ロール - Google Patents
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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フランジ幅の異なる粗形鋼片を同一の孔型ロールで造形する形鋼用粗形鋼片の圧延方法および圧延ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
H形鋼等のフランジを有する形鋼は一般にユニバーサル圧延法により製造されている。ユニバーサル圧延法によるH形鋼の製造ラインは図5に示すような圧延機群により構成される。素材となるブルーム、スラブ、ビームブランク等の鋼片は加熱炉にて加熱後、孔型を有するロールを組み込んだブレイクダウン圧延機BDでリバース圧延が行われ、図4のような粗形鋼片1に造形される。次に、ユニバーサル圧延機U1,U2とエッジャ圧延機E1,E2により構成される粗ユニバーサル圧延機群Rl,R2によって、被圧延材の板厚を減少させるとともにフランジ幅の調整が行われ、最後に仕上げユニバーサル圧延機Fによってフランジの角度がほぼ垂直に成形される。
【0003】
上記のブレイクダウン圧延機BDによる粗造形圧延工程においては、主に連続鋳造された鋼片を素材とするが、H形鋼の各種サイズに応じた多種類の鋼片を用いるのではモールドやその付帯設備をそれぞれ別々に用意する必要が生じる上、素材の管理が非常に煩雑なものとなる。このため、粗造形圧延工程では、素材を孔型により目標とするウェブ厚、フランジ厚まで圧下するとともに、粗形鋼片の外形寸法であるウェブ高さとフランジ幅の変更を行い、同一の素材鋼片から多種の製品に対応する粗形鋼片を造形することが望ましい。
さらに、ブレイクダウン圧延機BDに使用する孔型ロールについては、多種の製品寸法に対応したものをそれぞれ用意する必要があり、多数のロールを保有せざるを得なかった。それゆえ、同一の孔型ロールにより多種類の粗形鋼片を造形することができれば、ロール保有数を削減することが可能となる。
【0004】
このような目的から粗形鋼片の外形寸法を変更する技術のうち、ウェブ高さの変更は、特公昭55−30921号公報等に開示されているように、素材ビームブランクのフランジ間隔よりも幅の広い溝間隔を有する孔型により、ウェブ高さを拡大させる方法が一般的である。
一方、フランジ幅の変更に関しては、特開平2−207901号公報に開示されている技術がある。これは、上記のウェブ高さ拡大技術により、目的とするウェブ高さの粗形鋼片を造形した後、図6のように造形孔型のウェブ部のフラットな部分21を用いて、フランジ先端11を圧下することによりフランジ幅を縮小するという技術である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記フランジ幅縮小技術は、ウェブ高さ拡大の効率化を主目的として開発されたものではあるが、粗形鋼片のフランジ幅を任意に縮小でき、同一のロールで多サイズの粗形鋼片を造形しうる。しかし、本発明者らの検討によれば、この技術には以下に述べるような問題があることが明らかになった。
フランジ先端を圧下すると、この部分の材料が幅方向へと広がることによってフランジ先端部にバルジングが生じ、先端部の厚さが増加する。図7に示すように、製品フランジ幅300mm用の粗形鋼片1を製品フランジ幅200mm相当まで圧下した場合、鋼片形状は符号2で示すようになり、フランジ内面の傾斜角度が急峻(θ2<θ1)になると同時にフランジ内面同士の間隔が狭くなる(LH2<LH1)。このような変形が生じた粗形鋼片を次工程でユニバーサル圧延すると、図8に示すようにユニバーサル圧延機の水平ロール30とフランジ内面の間隔が非常に狭く、かつフランジ先端11が先に水平ロール30の側面に接触するため、フランジの内面が水平ロール30により押し下げられ、フィレット部12の近傍に折れ込みやラップが生じる。粗ユニバーサル圧延、仕上げ圧延工程により厚みが減じられ、製品寸法となった後も、これらは疵として残り、製品欠陥の原因となっていた。このような欠陥はフランジ幅縮小量が大きくなるほど顕著に発生するため、従来の方法では50mm程度フランジ幅が異なると、同一の孔型ロールでフランジ幅の異なる複数の粗形鋼片を造形することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、同一の孔型ロールを用いて、フランジ幅の異なる複数サイズの粗形鋼片を、製品疵の原因となる欠陥を発生させることなく製造することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る形鋼用粗形鋼片の圧延方法は、素材から粗形鋼片を造形する粗造形圧延工程において、目標ウェブ高さの粗形鋼片を最大フランジ幅で造形した後、フランジ内面の傾斜角および間隔が目標鋼片寸法にほぼ等しく、孔型フランジ部の深さがこの鋼片サイズのうち最小のフランジ高さ(ここでは、フランジ高さというのはウェブ面からフランジ先端までの長さであり、(フランジ幅−ウェブ厚)/2の意味である。)以下であり、前記孔型フランジ部の幅が次式のWであるフランジ幅圧下用孔型により、前記粗形鋼片のフランジ先端を目標フランジ幅まで圧下することを特徴とするものである。
W≧α・Af /BM ・・・(1)
Af :フランジ圧下前の鋼片の片側フランジ部断面積
BM :フランジ幅圧下後の目標フランジ幅
α :調整係数
【0008】
本発明においては、まず図4に示すような形状の粗形鋼片1を目標ウェブ高さで、しかもその鋼片サイズのうち最大のフランジ幅で造形する。この第1の粗造形圧延工程では図2に示すようなブレークダウン圧延機の孔型ロール20を用いて造形する。
続いて第2の粗造形圧延工程において、図1に示すように、フランジ内面の傾斜角θおよび間隔LHが目標鋼片寸法にほぼ等しく、孔型フランジ部23の深さHEがその鋼片サイズのうち最小フランジ高さ以下であり、孔型フランジ部23の幅Wが上記(1)式を満足するフランジ幅圧下用孔型22によって、粗形鋼片1のフランジ先端を圧下し、目標フランジ幅の粗形鋼片10を造形する。このようにして造形された粗形鋼片10は、図3に示すような形状となり、粗形鋼片10のフランジ内面の傾斜角θは図7に示す粗形鋼片1のフランジ内面の傾斜角θ1とほぼ等しく、また粗形鋼片10のフランジ内面間隔LHは図7の粗形鋼片1のフランジ内面間隔LH1とほぼ等しいものとなる。
【0009】
ここで、孔型22のフランジ内面を目標とする鋼片寸法とほぼ同じ角度と間隔にするのは、粗形鋼片1のフランジ先端を圧下した場合の変形をフランジ外側の自由表面に限定してフランジ内面の急峻化と内面間隔の減少を防止するためである。フランジ先端を圧下した鋼片10は図3に示すようにフランジ内面間隔LHと傾斜角θが適切な値に保たれ、鋼片形状が良好である。一方、フランジ外面は先端付近がウェブ付け根よりも厚い形状となるが、次工程のユニバーサル圧延では、竪ロールによって厚み方向に圧下されるため、ラップや折れ込みは発生しない。
【0010】
また、孔型フランジ部23の深さをその鋼片サイズのうち最小のフランジ高さとするのは、対象とする全ての粗形鋼片を圧延する場合において、被圧延材のウェブ部を孔型ロールで圧下することなくフランジ幅のみを圧下することを可能とするためである。
【0011】
孔型フランジ部23の幅を(1)式のWとする理由は、フランジ幅を圧下したことによりフランジ厚が増加しても、孔型22に過度の充満が生じないようにするためである。フランジ部を圧下する際に使用する孔型の幅が小さく、フランジ幅圧下中に孔型に被圧延材が充満すると、フランジ部の幅方向への変形が拘束され、孔型からはみ出して噛み出しを生じる。また、長手方向への延伸が大きくなるとともに、材料がウェブ部へ向かう変形が生じるため、ウェブがフランジの延伸により張力を受けて中央部の厚さが減じられるとともに、フランジとウェブの境界であるフイレット部付近の厚さがフランジから流れ込む材料により増加し、ウェブの厚さが幅方向に不均一となる。
【0012】
以上のような粗形鋼片形状の悪化を防止するため、孔型フランジ幅の最小値を規定する必要があるのである。(1)式において、Af はフランジ圧下前の片側フランジの断面積であり、これを幅圧下後のフランジ幅BM で割った値は断面積が変化しない場合の幅圧下後のフランジ厚となる。実際には圧延による延伸が生じるため、幅圧下後の断面積は圧下前の断面積よりも小さくなる。したがって、孔型フランジ部23の幅Wが(1)式を満足するフランジ幅であれば、フランジ部で材料が孔型22に過度に充満することはない。
【0013】
ただし、孔型幅Wは圧延の状況により若干の調整を要する場合があるため、(1)式には調整係数αを設けている。図3に示すように、フランジ先端が圧下されることによりフランジ先端部の厚みは中央部よりも大きくなる。バルジングが大きければフランジ先端部と孔型の外側壁面が接触するが、この接触が過大になるとフランジ外面に折れ込み等が発生する場合がある。このような場合には、調整係数のαを1よりも大きくし、孔型フランジ部の厚みを大きくとって形状不良を防止する。逆に延伸の度合いが大きくフランジ断面積の減少が大きければ、αを1以下としても差し支えない。αを小さくすれば孔型フランジ部を小さくできるため、孔型全体の幅を小さくすることができ、同じ幅のロールにより多くの孔型を設けることができるという利点がある。経験的には、ほとんどの場合においてαは0.9〜1.1の間であった。
【0014】
孔型フランジ部23の孔型底面24は、孔型ウェブ部25と平行な形状でもよいが、図1に示すように次のユニバーサル圧延で使用するエッジャ圧延機の孔型に近い傾斜を設ければ、フランジ先端部の圧下が厚さ方向で均等となるため、フランジ先端形状の良好な形鋼を製造することができる。
なお、本発明の方法は、同様の粗造形圧延を行う形鋼に応用できることは明らかであり、I形鋼などの粗造形圧延にも効果があることは言うまでもない。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明においては、粗形鋼片の造形圧延に際し、まず圧延するサイズのうちで最大のフランジ幅で、かつ目標ウェブ高さの鋼片を造形する。ここで用いる孔型形状の槻要を図2に示す。孔型ロール20には孔型形状がそれぞれウェブ高さとフランジ幅が変化するよう、例えば3種類の造形孔型20a、20b、20cを備えており、被圧延材をロールの軸方向に移動させてそれぞれの孔型での圧延を行う。図2において左側の造形孔型20aが第1段階の粗造形圧延に使用される部分であり、右側の造形孔型20cが目的とするウェブ高さ寸法に拡大するための最終段階の粗造形に使用される部分である。この孔型20cで圧延された後の鋼片形状を図4に示す。製造する形鋼のフランジ幅が図4の鋼片とほぼ同じであれば、これをもって粗造形圧延を終了し、続くユニバーサル圧延工程に移行するが、フランジ幅の狭い製品を製造する場合には、図4の鋼片は図1に示す形状のフランジ幅圧下用孔型22により目標とする幅までフランジ先端の圧下が行われる。図1の孔型22は前述したとおり、フランジ内面の傾斜角θおよび間隔LHが目標鋼片寸法にほぼ等しく、孔型フランジ部23の深さHEがその鋼片サイズのうち最小のフランジ高さ以下で、孔型フランジ部23の幅Wが前記(1)式を満足する寸法となっている。
【0016】
目標とするフランジ幅までフランジ先端の圧下が終了した粗形鋼片10は、粗造形圧延を終了しユニバーサル圧延工程に搬送される。
【0017】
なお、図1の孔型22は、一般にブレークダウン圧延機の孔型ロール20に形成されるものであり、その孔型22の位置は胴長のどこでもよく、また図6に示すように他の孔型部分とラップした状態に設けることもできる。ブレークダウン圧延機に孔型22を形成する余地がない場合には、他の2重式圧延機にこれを設けることもできる。例えば図5において、ユニバーサル圧延機U1を2重式圧延機として使用し、このロールに孔型22を形成することが可能である。
【0018】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を従来技術と比較しながら説明する。
本発明の方法をウェブ高さが600mmのH形鋼でフランジ幅の異なる製品を製造する場合に適用した。従来の方法では、ブレイクダウン圧延機での造形圧延においてフランジ幅300mmに適した形状の粗形鋼片を造形した後に、図6に示すようにロール平坦部を用いてフランジ幅を圧下した。一方、本発明においては図5に示すH形鋼圧延ラインのブレイクダウン圧延機に図2に示すような従来の孔型に加えて図1に示すような本発明のフランジ幅圧下用孔型22を設け、H形鋼の圧延を行った。パススケジュールはフランジ幅を圧下する前までは同じであり、フランジ幅の圧下においては双方とも圧下量を1パスあたり25mmとした。このようにしてフランジ幅200mmのH形鋼を製造した結果、従来の方法で製造した製品では、その80%以上にフィレット部近傍のラップ疵が発生した。これに対して、本発明の方法では、ラップ疵は全く発生せず、欠陥のない製品を製造することができた。
【0019】
また、ウェブ高さが600mmの製品は、H600×200、H600×250、H600×300の3種類があり、これまではそれぞれに対応する3組のブレイクダウン圧延用孔型ロールを保有していたが、本発明を適用することによって、これらの製品に対応する粗型鋼片をすべて1組のロールによって製造することができるようになり、ロール保有数を1/3に削減することが可能となった。これにより、ロール在庫削減が可能となったばかりでなく、さらにロール組み替え回数も削減することができるようになり、製造コストの低減に大きな効果があった。
【0020】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、同一の孔型ロールを用いて、フランジ幅の異なる製品に対応する粗形鋼片を製品疵の原因となる欠陥を発生させることなく造形することができるため、ロール保有数とロール組替回数の削減が可瀧となり、H形鋼等の形鋼の製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるフランジ幅圧下用孔型の形状を示す図である。
【図2】従来のブレークダウン圧延用孔型ロールの概要図である。
【図3】本発明によるフランジ幅圧下後の粗形鋼片の形状を示す図である。
【図4】フランジ幅圧下前の粗形鋼片の形状を示す図である。
【図5】従来のH形鋼製造ラインの構成図である。
【図6】従来の方法によるフランジ幅圧下の説明図である。
【図7】従来のフランジ幅圧下による形状の変化を示す説明図である。
【図8】従来の方法によるユニバーサル圧延時の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1、10 粗形鋼片
20 孔型ロール
22 フランジ幅圧下用孔型
23 孔型フランジ部
24 孔型底面
【発明の属する技術分野】
本発明は、フランジ幅の異なる粗形鋼片を同一の孔型ロールで造形する形鋼用粗形鋼片の圧延方法および圧延ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
H形鋼等のフランジを有する形鋼は一般にユニバーサル圧延法により製造されている。ユニバーサル圧延法によるH形鋼の製造ラインは図5に示すような圧延機群により構成される。素材となるブルーム、スラブ、ビームブランク等の鋼片は加熱炉にて加熱後、孔型を有するロールを組み込んだブレイクダウン圧延機BDでリバース圧延が行われ、図4のような粗形鋼片1に造形される。次に、ユニバーサル圧延機U1,U2とエッジャ圧延機E1,E2により構成される粗ユニバーサル圧延機群Rl,R2によって、被圧延材の板厚を減少させるとともにフランジ幅の調整が行われ、最後に仕上げユニバーサル圧延機Fによってフランジの角度がほぼ垂直に成形される。
【0003】
上記のブレイクダウン圧延機BDによる粗造形圧延工程においては、主に連続鋳造された鋼片を素材とするが、H形鋼の各種サイズに応じた多種類の鋼片を用いるのではモールドやその付帯設備をそれぞれ別々に用意する必要が生じる上、素材の管理が非常に煩雑なものとなる。このため、粗造形圧延工程では、素材を孔型により目標とするウェブ厚、フランジ厚まで圧下するとともに、粗形鋼片の外形寸法であるウェブ高さとフランジ幅の変更を行い、同一の素材鋼片から多種の製品に対応する粗形鋼片を造形することが望ましい。
さらに、ブレイクダウン圧延機BDに使用する孔型ロールについては、多種の製品寸法に対応したものをそれぞれ用意する必要があり、多数のロールを保有せざるを得なかった。それゆえ、同一の孔型ロールにより多種類の粗形鋼片を造形することができれば、ロール保有数を削減することが可能となる。
【0004】
このような目的から粗形鋼片の外形寸法を変更する技術のうち、ウェブ高さの変更は、特公昭55−30921号公報等に開示されているように、素材ビームブランクのフランジ間隔よりも幅の広い溝間隔を有する孔型により、ウェブ高さを拡大させる方法が一般的である。
一方、フランジ幅の変更に関しては、特開平2−207901号公報に開示されている技術がある。これは、上記のウェブ高さ拡大技術により、目的とするウェブ高さの粗形鋼片を造形した後、図6のように造形孔型のウェブ部のフラットな部分21を用いて、フランジ先端11を圧下することによりフランジ幅を縮小するという技術である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記フランジ幅縮小技術は、ウェブ高さ拡大の効率化を主目的として開発されたものではあるが、粗形鋼片のフランジ幅を任意に縮小でき、同一のロールで多サイズの粗形鋼片を造形しうる。しかし、本発明者らの検討によれば、この技術には以下に述べるような問題があることが明らかになった。
フランジ先端を圧下すると、この部分の材料が幅方向へと広がることによってフランジ先端部にバルジングが生じ、先端部の厚さが増加する。図7に示すように、製品フランジ幅300mm用の粗形鋼片1を製品フランジ幅200mm相当まで圧下した場合、鋼片形状は符号2で示すようになり、フランジ内面の傾斜角度が急峻(θ2<θ1)になると同時にフランジ内面同士の間隔が狭くなる(LH2<LH1)。このような変形が生じた粗形鋼片を次工程でユニバーサル圧延すると、図8に示すようにユニバーサル圧延機の水平ロール30とフランジ内面の間隔が非常に狭く、かつフランジ先端11が先に水平ロール30の側面に接触するため、フランジの内面が水平ロール30により押し下げられ、フィレット部12の近傍に折れ込みやラップが生じる。粗ユニバーサル圧延、仕上げ圧延工程により厚みが減じられ、製品寸法となった後も、これらは疵として残り、製品欠陥の原因となっていた。このような欠陥はフランジ幅縮小量が大きくなるほど顕著に発生するため、従来の方法では50mm程度フランジ幅が異なると、同一の孔型ロールでフランジ幅の異なる複数の粗形鋼片を造形することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、同一の孔型ロールを用いて、フランジ幅の異なる複数サイズの粗形鋼片を、製品疵の原因となる欠陥を発生させることなく製造することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る形鋼用粗形鋼片の圧延方法は、素材から粗形鋼片を造形する粗造形圧延工程において、目標ウェブ高さの粗形鋼片を最大フランジ幅で造形した後、フランジ内面の傾斜角および間隔が目標鋼片寸法にほぼ等しく、孔型フランジ部の深さがこの鋼片サイズのうち最小のフランジ高さ(ここでは、フランジ高さというのはウェブ面からフランジ先端までの長さであり、(フランジ幅−ウェブ厚)/2の意味である。)以下であり、前記孔型フランジ部の幅が次式のWであるフランジ幅圧下用孔型により、前記粗形鋼片のフランジ先端を目標フランジ幅まで圧下することを特徴とするものである。
W≧α・Af /BM ・・・(1)
Af :フランジ圧下前の鋼片の片側フランジ部断面積
BM :フランジ幅圧下後の目標フランジ幅
α :調整係数
【0008】
本発明においては、まず図4に示すような形状の粗形鋼片1を目標ウェブ高さで、しかもその鋼片サイズのうち最大のフランジ幅で造形する。この第1の粗造形圧延工程では図2に示すようなブレークダウン圧延機の孔型ロール20を用いて造形する。
続いて第2の粗造形圧延工程において、図1に示すように、フランジ内面の傾斜角θおよび間隔LHが目標鋼片寸法にほぼ等しく、孔型フランジ部23の深さHEがその鋼片サイズのうち最小フランジ高さ以下であり、孔型フランジ部23の幅Wが上記(1)式を満足するフランジ幅圧下用孔型22によって、粗形鋼片1のフランジ先端を圧下し、目標フランジ幅の粗形鋼片10を造形する。このようにして造形された粗形鋼片10は、図3に示すような形状となり、粗形鋼片10のフランジ内面の傾斜角θは図7に示す粗形鋼片1のフランジ内面の傾斜角θ1とほぼ等しく、また粗形鋼片10のフランジ内面間隔LHは図7の粗形鋼片1のフランジ内面間隔LH1とほぼ等しいものとなる。
【0009】
ここで、孔型22のフランジ内面を目標とする鋼片寸法とほぼ同じ角度と間隔にするのは、粗形鋼片1のフランジ先端を圧下した場合の変形をフランジ外側の自由表面に限定してフランジ内面の急峻化と内面間隔の減少を防止するためである。フランジ先端を圧下した鋼片10は図3に示すようにフランジ内面間隔LHと傾斜角θが適切な値に保たれ、鋼片形状が良好である。一方、フランジ外面は先端付近がウェブ付け根よりも厚い形状となるが、次工程のユニバーサル圧延では、竪ロールによって厚み方向に圧下されるため、ラップや折れ込みは発生しない。
【0010】
また、孔型フランジ部23の深さをその鋼片サイズのうち最小のフランジ高さとするのは、対象とする全ての粗形鋼片を圧延する場合において、被圧延材のウェブ部を孔型ロールで圧下することなくフランジ幅のみを圧下することを可能とするためである。
【0011】
孔型フランジ部23の幅を(1)式のWとする理由は、フランジ幅を圧下したことによりフランジ厚が増加しても、孔型22に過度の充満が生じないようにするためである。フランジ部を圧下する際に使用する孔型の幅が小さく、フランジ幅圧下中に孔型に被圧延材が充満すると、フランジ部の幅方向への変形が拘束され、孔型からはみ出して噛み出しを生じる。また、長手方向への延伸が大きくなるとともに、材料がウェブ部へ向かう変形が生じるため、ウェブがフランジの延伸により張力を受けて中央部の厚さが減じられるとともに、フランジとウェブの境界であるフイレット部付近の厚さがフランジから流れ込む材料により増加し、ウェブの厚さが幅方向に不均一となる。
【0012】
以上のような粗形鋼片形状の悪化を防止するため、孔型フランジ幅の最小値を規定する必要があるのである。(1)式において、Af はフランジ圧下前の片側フランジの断面積であり、これを幅圧下後のフランジ幅BM で割った値は断面積が変化しない場合の幅圧下後のフランジ厚となる。実際には圧延による延伸が生じるため、幅圧下後の断面積は圧下前の断面積よりも小さくなる。したがって、孔型フランジ部23の幅Wが(1)式を満足するフランジ幅であれば、フランジ部で材料が孔型22に過度に充満することはない。
【0013】
ただし、孔型幅Wは圧延の状況により若干の調整を要する場合があるため、(1)式には調整係数αを設けている。図3に示すように、フランジ先端が圧下されることによりフランジ先端部の厚みは中央部よりも大きくなる。バルジングが大きければフランジ先端部と孔型の外側壁面が接触するが、この接触が過大になるとフランジ外面に折れ込み等が発生する場合がある。このような場合には、調整係数のαを1よりも大きくし、孔型フランジ部の厚みを大きくとって形状不良を防止する。逆に延伸の度合いが大きくフランジ断面積の減少が大きければ、αを1以下としても差し支えない。αを小さくすれば孔型フランジ部を小さくできるため、孔型全体の幅を小さくすることができ、同じ幅のロールにより多くの孔型を設けることができるという利点がある。経験的には、ほとんどの場合においてαは0.9〜1.1の間であった。
【0014】
孔型フランジ部23の孔型底面24は、孔型ウェブ部25と平行な形状でもよいが、図1に示すように次のユニバーサル圧延で使用するエッジャ圧延機の孔型に近い傾斜を設ければ、フランジ先端部の圧下が厚さ方向で均等となるため、フランジ先端形状の良好な形鋼を製造することができる。
なお、本発明の方法は、同様の粗造形圧延を行う形鋼に応用できることは明らかであり、I形鋼などの粗造形圧延にも効果があることは言うまでもない。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明においては、粗形鋼片の造形圧延に際し、まず圧延するサイズのうちで最大のフランジ幅で、かつ目標ウェブ高さの鋼片を造形する。ここで用いる孔型形状の槻要を図2に示す。孔型ロール20には孔型形状がそれぞれウェブ高さとフランジ幅が変化するよう、例えば3種類の造形孔型20a、20b、20cを備えており、被圧延材をロールの軸方向に移動させてそれぞれの孔型での圧延を行う。図2において左側の造形孔型20aが第1段階の粗造形圧延に使用される部分であり、右側の造形孔型20cが目的とするウェブ高さ寸法に拡大するための最終段階の粗造形に使用される部分である。この孔型20cで圧延された後の鋼片形状を図4に示す。製造する形鋼のフランジ幅が図4の鋼片とほぼ同じであれば、これをもって粗造形圧延を終了し、続くユニバーサル圧延工程に移行するが、フランジ幅の狭い製品を製造する場合には、図4の鋼片は図1に示す形状のフランジ幅圧下用孔型22により目標とする幅までフランジ先端の圧下が行われる。図1の孔型22は前述したとおり、フランジ内面の傾斜角θおよび間隔LHが目標鋼片寸法にほぼ等しく、孔型フランジ部23の深さHEがその鋼片サイズのうち最小のフランジ高さ以下で、孔型フランジ部23の幅Wが前記(1)式を満足する寸法となっている。
【0016】
目標とするフランジ幅までフランジ先端の圧下が終了した粗形鋼片10は、粗造形圧延を終了しユニバーサル圧延工程に搬送される。
【0017】
なお、図1の孔型22は、一般にブレークダウン圧延機の孔型ロール20に形成されるものであり、その孔型22の位置は胴長のどこでもよく、また図6に示すように他の孔型部分とラップした状態に設けることもできる。ブレークダウン圧延機に孔型22を形成する余地がない場合には、他の2重式圧延機にこれを設けることもできる。例えば図5において、ユニバーサル圧延機U1を2重式圧延機として使用し、このロールに孔型22を形成することが可能である。
【0018】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を従来技術と比較しながら説明する。
本発明の方法をウェブ高さが600mmのH形鋼でフランジ幅の異なる製品を製造する場合に適用した。従来の方法では、ブレイクダウン圧延機での造形圧延においてフランジ幅300mmに適した形状の粗形鋼片を造形した後に、図6に示すようにロール平坦部を用いてフランジ幅を圧下した。一方、本発明においては図5に示すH形鋼圧延ラインのブレイクダウン圧延機に図2に示すような従来の孔型に加えて図1に示すような本発明のフランジ幅圧下用孔型22を設け、H形鋼の圧延を行った。パススケジュールはフランジ幅を圧下する前までは同じであり、フランジ幅の圧下においては双方とも圧下量を1パスあたり25mmとした。このようにしてフランジ幅200mmのH形鋼を製造した結果、従来の方法で製造した製品では、その80%以上にフィレット部近傍のラップ疵が発生した。これに対して、本発明の方法では、ラップ疵は全く発生せず、欠陥のない製品を製造することができた。
【0019】
また、ウェブ高さが600mmの製品は、H600×200、H600×250、H600×300の3種類があり、これまではそれぞれに対応する3組のブレイクダウン圧延用孔型ロールを保有していたが、本発明を適用することによって、これらの製品に対応する粗型鋼片をすべて1組のロールによって製造することができるようになり、ロール保有数を1/3に削減することが可能となった。これにより、ロール在庫削減が可能となったばかりでなく、さらにロール組み替え回数も削減することができるようになり、製造コストの低減に大きな効果があった。
【0020】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、同一の孔型ロールを用いて、フランジ幅の異なる製品に対応する粗形鋼片を製品疵の原因となる欠陥を発生させることなく造形することができるため、ロール保有数とロール組替回数の削減が可瀧となり、H形鋼等の形鋼の製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるフランジ幅圧下用孔型の形状を示す図である。
【図2】従来のブレークダウン圧延用孔型ロールの概要図である。
【図3】本発明によるフランジ幅圧下後の粗形鋼片の形状を示す図である。
【図4】フランジ幅圧下前の粗形鋼片の形状を示す図である。
【図5】従来のH形鋼製造ラインの構成図である。
【図6】従来の方法によるフランジ幅圧下の説明図である。
【図7】従来のフランジ幅圧下による形状の変化を示す説明図である。
【図8】従来の方法によるユニバーサル圧延時の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1、10 粗形鋼片
20 孔型ロール
22 フランジ幅圧下用孔型
23 孔型フランジ部
24 孔型底面
Claims (3)
- 素材から粗形鋼片を造形する粗造形圧延工程において、
目標ウェブ高さの粗形鋼片を最大フランジ幅で造形した後、
フランジ内面の傾斜角および間隔が目標鋼片寸法にほぼ等しく、孔型フランジ部の深さがこの鋼片サイズのうち最小のフランジ高さ以下であり、前記孔型フランジ部の幅が次式のWであるフランジ幅圧下用孔型により、前記粗形鋼片のフランジ先端を目標フランジ幅まで圧下することを特徴とする形鋼用粗形鋼片の圧延方法。
W≧α・Af /BM
Af :フランジ圧下前の鋼片の片側フランジ部断面積
BM :フランジ幅圧下後の目標フランジ幅
α :調整係数 - 複数の孔型を有する形鋼用粗形鋼片の圧延ロールにおいて、
フランジ内面の傾斜角および間隔が目標鋼片寸法にほぼ等しく、孔型フランジ部の深さがこの鋼片サイズのうち最小のフランジ高さ以下であり、前記孔型フランジ部の幅が次式のWであるフランジ幅圧下用孔型を有することを特徴とする形鋼用粗形鋼片の圧延ロール。
W≧α・Af /BM
Af :フランジ圧下前の鋼片の片側フランジ部断面積
BM :フランジ幅圧下後の目標フランジ幅
α :調整係数 - 前記孔型フランジ部の孔型底面に外側に向かって深さが浅くなるように傾斜を設けたことを特徴とする請求項2記載の形鋼用粗形鋼片の圧延ロール。
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