JP4469482B2 - 磁気抵抗効果素子、磁気抵抗効果ヘッド、磁気再生装置、及び磁性積層体 - Google Patents

磁気抵抗効果素子、磁気抵抗効果ヘッド、磁気再生装置、及び磁性積層体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は外部磁場の変化を検出する磁気抵抗効果素子、この磁気抵抗効果素子を具備する磁気抵抗効果ヘッド、この磁気抵抗効果ヘッドを搭載する磁気再生装置、さらに、互いの磁化方向が略直交である2層の強磁性層を備える磁性積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、磁気記録媒体に記録された磁気情報の読み出しは、コイルを有する再生用磁気ヘッドと記録媒体とを相対移動させ、その際に発生する電磁誘導によりコイルに誘起される電圧を検出する方法が用いられていた。その後、特定の強磁性体の電気抵抗が外部磁場の強さに応じて変化する磁気抵抗効果(MagnetoResistance)を利用し、磁気情報を再生する磁気抵抗効果素子(MR素子と称する。)が開発された(IEEE MAG‐7,150(1971)等参照)。このMR素子は、磁場センサに用いられる他、ハードディスクドライブ等の磁気再生装置に搭載される磁気抵抗効果ヘッド(MRヘッド)として用いられる。
【0003】
磁気再生装置に載る磁気記録媒体の小型・大容量化は、近年益々進み、情報読出し時の再生用磁気ヘッドと磁気記録媒体との相対速度がより小さくなり、小さい相対速度であっても大出力が得られるMRヘッドへの期待が高まっている。
【0004】
このような期待に対して、巨大磁気抵抗効果膜が開発された。この巨大磁気抵抗効果膜は、Fe/CrやFe/Cuのように強磁性金属膜と非磁性金属膜とを所定条件にて交互に積層して、近接する強磁性金属膜間を反強磁性結合させた多層膜、いわゆる人工格子膜である(Phys. Rev. Lett. 61 2474 (1988), Phys. Rev. Lett. 64 2304 (1990)等参照)。しかし、人工格子膜は磁化が飽和するのに必要な磁場が大きいため、MRヘッド用の膜材料として適さない。
【0005】
一方、非磁性金属層を強磁性金属層により上下から挟んだ強磁性金属層/非磁性金属層/強磁性金属層の多層膜で、二つの強磁性金属層が磁気結合しない(非結合)のMR膜において、大きな磁気抵抗効果を実現した例が報告されている。このMR膜は、強磁性金属層の磁化(スピン)を固定しておき、他方の強磁性層の磁化を外部磁場により磁化反転させることを特徴としている。これにより、非磁性層を挟んで配置された強磁性金属層のスピン方向の相対的な角度を変化させることによって磁気抵抗効果が得られるため、このようなMR素子はスピンバルブ素子と呼ばれている(Phys.Rev.B 45 806 (1992), J. Appl. Phys. 69 4774 (1991)等参照)。
【0006】
このようなスピンバルブ素子の磁気抵抗変化率は、人工格子膜に比べると小さいものの、磁化が飽和するのに必要な磁場が小さいため、MRヘッド用途に適しており、既に実用化に至っている。
【0007】
一般的なスピンバルブ素子は、強磁性フリー層、中間非磁性層、強磁性ピン層、及び反強磁性層の積層構造を備える。反強磁性層と接する強磁性ピン層の磁化は反強磁性層からの交換バイアス磁場によって外部磁場の下で一方向に固着される。これに対し、強磁性フリー層は外部磁場に対して自由に回転可能であり、強磁性フリー層と強磁性ピン層の磁化の平行/反平行状態を低磁場において容易に実現できる。尚、両強磁性層の磁化が平行状態で素子の電気抵抗は低く、反平行状態で電気抵抗は高くなり、スピンバルブ素子では、二つの抵抗値の差を大きくすることで高い抵抗効果変化率が得られる。
【0008】
実際にスピンバルブ素子を用いる場合には、抵抗変化の線形領域を利用して高感度を得るために、強磁性フリー層の磁化はゼロ磁場中でピン層の磁化と略直交するようにバイアスすることが好ましい。このバイアスは、フリー層の磁化が外部磁場に対して回転する際にバルクハウゼンノイズが発生しないように、単磁区化するという意味でも重要である。このため、スピンバルブ膜の側面には単磁区化の目的で磁石と同様の機能をもつ硬質磁性膜が設けられる。
【0009】
この硬質磁性膜の厚さは、強磁性フリー層と等しい場合に適当なバイアスを印加でき、これ以上薄くなるとバイアス不足により強磁性フリー層の単磁区化が達成し難い。また、フリー層以上に厚くなるとバイアス過多となり強磁性フリー層の透磁率が低下する。
【0010】
しかし、現状では、硬質磁性膜を強磁性フリー層と同等の厚さまで薄くすると、両者の接合面積が小さくなるため磁気接合がうまくできず、ハード膜を強磁性フリー層に対して厚い構成をとらざるを得ない。その結果、強磁性フリー層に印加されるバイアスが過剰となり、強磁性フリー層の透磁率が低下し、感度と出力に損失を与えている。
【0011】
これを解決するために、フリー層端部に所定形状の反強磁性層を積層して反強磁性層とフリー層との交換結合によりフリー層端部の磁化を固着し、この部分からフリー層の中央磁界応答部にバイアスを印加する構成をとったスピンバルブ素子が提案されている。所定形状(パターン)に加工された反強磁性層を用いたバイアス方法であることから、パターンドバイアス構造という。
【0012】
パターンドバイアス構造のスピンバルブ素子について、斜視図を図20(a)に示す。
【0013】
このスピンバルブ素子は、下から順に積層された第1の反強磁性層1、強磁性ピン層3、中間非磁性層5、強磁性フリー層7を有し、さらに強磁性フリー層7の長手方向の両端に積層された一対の第2の反強磁性層9、及び一対のリード電極11を有する。
【0014】
強磁性フリー層7の両端及び強磁性ピン層3は、夫々第2の反強磁性層9、第1の反強磁性層1との磁気交換結合によって、図20(a)中の一方向異方性の磁化が付与されている。つまり、強磁性フリー層7のうち第2の反強磁性層9と積層された両端部(斜線部)は、両者の交換結合によって紙面内右方向に磁化固定され、あたかも硬質磁性膜として働く。そして、両端部で挟まれる中央磁界応答部の磁化は、第2の反強磁性層9と強磁性フリー層7の両端部からのバイアス磁場を受けてゼロ磁場において矢印方向の一方向異方性の磁化を有する。一方、強磁性ピン層3の磁化は、第1の反強磁性層1との交換結合によって、図20(a)の紙面表から裏にむかう方向に固着される。
【0015】
パターンドバイアス構造では、第2の反強磁性層9と強磁性フリー層7の交換結合膜、及び第1の反強磁性層1と強磁性ピン層3の二つの交換結合膜が必要となる。交換結合膜の強磁性層への一方向異方性の付与は磁場中熱処理によって行うが、夫々が影響を及ぼす強磁性ピン層3と強磁性フリー層7の磁化を直行関係にする必要から、両反強磁性層1、9の夫々に異なる磁場を印加した状態で熱処理を施さなくてはならない。強磁性ピン層3との交換結合磁場がゼロになる第1反強磁性層1のブロッキング温度をTB1、強磁性フリー層との交換結合磁場がゼロになる第2反強磁性層9のブロッキング温度をTB2とした場合の熱処理行程(時間―温度)を図20(b)に示す。尚、反強磁性膜は一軸異方性を持つことから、便宜的に双方向の矢印でその磁化状態を示している。
【0016】
第1及び第2の反強磁性層1、9による磁化固着を完全に行うには、ブロッキング温度の差|Tb1−Tb2|の大きい2種類の反強磁性層材料が必要となり、さらに、両者の交換結合磁場が重ならない程度に、交換結合磁場の分散が小さい2種の反強磁性層材料が必要となる。さらに、これらの条件に加えて、スピンバルブ素子に用いる際に本質的に重要な高交換結合磁場、高ブロッキング温度の特性を併せ持つ材料は容易に探しだせるものではない。
【0017】
一方、エピタキシャル成長によるCoFe/Mn/CoFe等の三層構造において、二つの強磁性層CoFe間の磁気直交結合が観察されている(J. Appl. Phys. 79 5841 (1996) 等参照)。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような実状の下に考案された新規な磁気抵抗効果素子を提供し、特に、製造コストの低い磁気抵抗効果素子、磁気抵抗効果ヘッド、磁気再生装置、及び磁性積層体を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題に対し、本発明の第一は、第1方向の磁化を備える第1の強磁性層と、同一金属の価数の異なる酸化物を2種以上含む混相膜、あるいは、同一金属の価数の異なる酸化物層を2層以上含む積層膜を具備し、第1の強磁性層と積層形成された磁化結合層と、磁化結合層を介して第1の強磁性層と積層形成され、磁化結合層により第1の強磁性層と磁化結合されて第1方向と直交方向の磁化を備える、外部磁場において、前記磁化方向が実質的に変化しない磁化固着層と、中間非磁性層と、中間非磁性層を介して第2の強磁性層と積層形成され、外部磁場がゼロの状態で第1方向と同方向の磁化を備える、外部磁場の変動に伴い前記磁化の方向が変化する磁化自由層とを備えることを特徴とする磁気抵抗効果素子を提供する。
【0021】
この磁気抵抗効果素子は、外部磁場がゼロの状態で中間非磁性層を挟む第2の強磁性層と第3の強磁性層とが外部磁場がゼロの状態で互いに直交関係の磁化を有する。そして、磁化結合層、あるいは挿入層によって第1の強磁性層と第2の強磁性層との磁化方向は直交方向に結合される。よって、第1及び第3の強磁性層の磁化方向は同一方向にでき、従って、磁気バイアス付与のための熱処理工程を減らすことが可能となり、ひいては製造工程の簡略化を図ることが可能となる。
【0022】
尚、このような工程の簡略化は、磁気ヘッドの生産性向上に寄与すること大であり、単価の低い磁気抵抗効果ヘッド、さらには磁気再生装置の提供が可能となる。
【0023】
第1及び第3の強磁性層への磁気バイアスには、それぞれに第1及び第2の反強磁性層を用いた交換結合バイアスのほか、反強磁性層の換わりに硬質磁性層や、複数の強磁性層の積層膜、強磁性層と非磁性相との積層膜、反強磁性層と強磁性層との積層膜、及び硬質磁性層と強磁性層との積層膜を用いることも可能である。
【0024】
そして、磁気バイアスの付与にあたって、これらの同質材料の選択に自由度が得られる。例えば、反強磁性層を磁気バイアス付与に用いる場合には、二つの反強磁性層のブロッキング温度に差を設ける必要がなくなり、周知の材料、例えばIrMn、PtMn、FeMn、NiMn、NiO、α−Fe23等から適宜選択することができる。
【0025】
本発明の磁気抵抗効果素子、磁気抵抗効果ヘッド、及び磁気再生装置において、次の構成を備えることが好ましい。
【0027】
2)第3の強磁性層は、外部磁場の変動に伴って磁化方向が変わる磁化フリー層であり、第2の強磁性層は磁化フリー層の磁化が変わる外部磁場において、磁化方向が実質的に変わらない磁化ピン層である。この際、第1の強磁性層の磁化は磁化フリー層の磁化が変わる外部磁場において、実質的に変わらないことが好ましい。尚、第2及び第3の強磁性層は互いに磁気的に非結合とすることができる。
【0028】
3)第1の反強磁性層は、第1の強磁性層の長手方向における両端部のみに積層形成される。または/及び第2の反強磁性層は、前記第3の強磁性層の長手方向における両端部のみに形成される。
【0029】
4)第1の反強磁性層は、前記第1の強磁性層の一表面全面を覆うように形成される。
【0030】
5)第1の反強磁性層と第1の強磁性層との間、または第2の反強磁性層と第3の強磁性層との間にさらに非磁性層を備える。
【0031】
6)第1、第2、及び第3の強磁性層は、2つの強磁性層とこれらを反強磁性的に磁化結合させる反強磁性結合用中間層を備える。反強磁性的結合した二つの強磁性層と中間層は、いわゆるシンセティック反強磁性膜といわれるユニットを構成し、二つの強磁性層が互いに反平行を向くことからユニット内で磁界が閉じて外部への漏れ磁場を低減でき、バイアスポイントを好適に制御できる。
【0032】
7)磁化結合層、または挿入層は、同一金属の価数の異なる酸化物を2種以上含む混相膜、あるいは、同一金属の価数の異なる酸化物層が2層以上積層された積層膜を具備する。ここで、同一金属の価数の異なる酸化物は、
7−1)FeO,Fe34,α‐Fe23,γ‐Fe23から選ばれる
7−2)CrO,Cr23,CrO2,Cr25,CrO3,CrO5から選ばれる。
【0033】
7−3)MnO,MnO2から選ばれる。
【0034】
8)磁化結合層、または挿入層が酸化物等の絶縁層であり、この磁化結合層と共に中間非磁性層を挟む新たな絶縁層をさらに備えることで、各絶縁層の界面で電子鏡面反射を誘起し、反射された電子が中間非磁性層との界面に再びくるように構成されてなる。この電子反射層は、スペキュラ効果として知られるものである。
【0035】
9)磁化結合層、または挿入層によって、互いに直交結合した第1及び第2の強磁性層は外部磁場が印加されると材料の選択等により、次の二通りの磁化回転を起こす。
【0036】
9−1)直交結合が切れ、第1の強磁性層と第1の反強磁性層との交換結合を保たれて、第2の強磁性層のみが磁化回転する。
【0037】
9−2)直交結合が保たれ、第1の強磁性層と第1の反強磁性層との結合が切れることで、外部磁場に対して第1及び第2の強磁性層の磁化が回転するものである。
【0038】
尚、本発明の磁気抵抗効果ヘッドは、
10)磁気抵抗効果素子が磁気ヘッドの媒体対向面近傍の磁気ギャップ内に配置される、いわゆるシールド型ヘッドである。交換結合膜の交換結合磁場の分散は、反強磁性層を薄くすることで増大するが、本発明によれば分散の重複を避ける必要がなくなるので、反強磁性層の薄膜化も容易に実現できる。このような反強磁性層の薄膜化はシールド型磁気抵抗効果ヘッドの狭ギャップ化に適し、その高密度化に寄与できる効果がある。
【0039】
11)磁気抵抗効果素子が媒体対抗面より離間して配置され、媒体対向面から磁気抵抗効果素子まで伸びて媒体からの信号磁界を磁気抵抗効果素子へ伝達する磁気ヨークを備えるヨーク型磁気抵抗効果ヘッドである。本発明の磁気抵抗効果素子にはバイアス付与の熱処理回数を減らすことができるため、ヨーク部に一様な磁気異方性が付与されにくくなり、媒体対向面から磁気抵抗効果素子への効率的な磁束導入が期待できる。
【0041】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
本発明の磁気抵抗効果素子に係る第1の実施形態を、図1を用いて説明する。
【0042】
図1は、磁気抵抗効果素子を示す斜視図である。図1における手前の面は、磁気抵抗効果素子が検知する外部磁場の進入面にあたる。従って、例えば、この磁気抵抗効果素子を磁気記録媒体の表面の磁気記録情報を読み出すシールド型磁気ヘッドに搭載した場合には、外部磁場進入面が磁気記録媒体の表面に対向配置される。
【0043】
この第1の実施形態の磁気抵抗効果素子は、第1の反強磁性層31、この第1の反強磁性層31に積層形成されこの第1の反強磁性層31と交換結合した第1の強磁性層33、隣接する2つの強磁性層の磁化を略直交方向に結合させる磁化結合層(挿入層)35、この結合層35によって第1の強磁性層33と直交方向の磁化を備える第2の強磁性層37、中間非磁性層39、及び第3の強磁性層41が順次積層され、かつ、第3の強磁性層41の長手方向における両端部上に形成された一対の第2の反強磁性層43、及び一対のリード電極45を備える。尚、この磁気抵抗効果素子は、図示せぬ磁気ギャップ、磁気シールド等を介してやはり図示しないセラミック基板等の上に形成されている。
【0044】
第1の強磁性層33は、第1の反強磁性層31との交換結合によって、図1の矢印方向(紙面内右方向)に実質的に固着された磁化を備える。第1及び第2の強磁性層33、37の磁化は直交磁化用の結合層35によって互いに略直交方向に結合し、よって、第2の強磁性層37の磁化は、略紙面の表から裏に向かう方向に磁化が固着される。このように磁化固着された第2の強磁性層37は、信号磁界等の外部磁界の中でも実質的にその磁化が動かない、いわゆる強磁性ピン層にあたる。
【0045】
この強磁性ピン層37と中間非磁性層39を介して隣りあった第3の強磁性層41は強磁性フリー層にあたり、その中央磁界応答部の磁化方向は外部磁場を受けて回転することが可能な程度に自由である。この強磁性フリー層41に磁気バイアスを印加するために、強磁性フリー層41のトラック幅方向の両端部(斜線ハッチング部)上に第2の反強磁性層43を配置し、強磁性フリー層41の両端部が第2の反強磁性層43と交換結合して図の矢印方向(紙面右方向)に磁化固着される。従って、強磁性フリー層41の中央部は紙面内に右方向のバイアス磁化を受け、ゼロ磁場において図1の矢印に示す方向に磁化を備えることとなる。このようして、中間非磁性層39を介する強磁性ピン層37、強磁性フリー層41は磁化が直交関係のいわゆるスピンバルブ素子が実現できる。
【0046】
尚、図1の構成では、紙面左右方向が磁気抵抗効果素子のトラック幅方向に対応し、再生トラック幅は強磁性フリー層の中央磁界応答部の幅に略一致する。
【0047】
さて、このスピンバルブ素子において、第1の強磁性層33及び強磁性フリー層41の交換結合は同一方向の磁化とすることができる。これは、従来のスピンバルブ素子にはない、直交結合用の結合層35と第1の強磁性層33を付加したことにより達成できたものである。
【0048】
このスピンバルブ素子の製造工程における磁場中熱処理工程は、図2の熱処理時間と熱処理温度関係に示すように、ブロッキング温度(例えばTB1、TB2)より高温にした状態で一方向の磁場(図2の紙面内の右方向)中の処理によって行うことができる。これは、従来の2工程の磁場中熱処理に比して簡略であり、ひいてはスピンバルブ素子の生産性向上に寄与するものである。尚、図2中、AFは反強磁性層を示し、反強磁性層は一軸異方性を備えるため双方向の矢印でその一軸異方性を示している。また、以上述べた熱処理工程は、各層をスパッタ法等により成膜した後に行われる。
【0049】
以上説明した第1の実施形態は、強磁性ピン層37が強磁性フリー層41よりも基板側に形成されるボトムタイプスピンバルブ素子であって、かつ、結合層35が強磁性ピン層37側にある素子構造に関る。
【0050】
次に、この第1の実施形態に係る変形例1−1乃至1−4を順次説明する。尚、変形例1−1乃至1−4では、第1の実施形態における構成と同一の構成については、第1の実施形態において付与した符号を用いることとし、その詳細な説明は省略する。
【0051】
(変形例1−1)
図3は、変形例1−1に関るスピンバルブ素子の断面を媒体対向面から観察した図である。
【0052】
この変形例1−1が第1の実施の形態と異なるのは、リード電極45の内側端部が互いに対向する第2の反強磁性層43の側面よりも内側に配置されて強磁性フリー層41上の一部を覆っている点にある。図3中、強磁性フリー層41のうち斜線で示す部分は、第2の反強磁性層43との交換結合によって磁化が固着されているため、信号磁界に反応しない不感帯であり、この不感帯に挟まれた中央領域が中央磁界応答部である。従って、リード電極が中央応答部に接しているため、磁気抵抗効果に寄与しない不感帯を電気的にバイパスすることができ、感度の向上を図ることができる。
【0053】
尚、図3以降の符号47は、磁気ギャップ、あるいは磁気ギャップの表面に形成された下地層を示す。この下地層47の材料や結晶性等は、この上に形成する各層における結晶の種類や、結晶配向性等を好適にするように適宜選択することができる。
【0054】
(変形例1−2)
次に、図4は、変形例1−2のスピンバルブ素子に関る断面を媒体対向面から観察した図を示す。
【0055】
この変形例1−2は、反強磁性層43'が強磁性フリー層41の上表面全てに積層されている点において第1の実施の形態と異なる。
【0056】
このように反強磁性層43'と強磁性フリー層41とが全面積層された場合、その交換結合力は、外部磁場がゼロの状態で強磁性フリー層41の磁化が図4の紙面内右方向であり、かつ外部磁場が与えられたときにこれに反応して自由に回転することが可能な程度とする必要がある。
【0057】
しかし、全面積層による交換結合では結合が強くなりやすく、強磁性フリー層41の透磁率が低下して感度が低下する恐れがある。
【0058】
(変形例1−3)
この感度低下を防ぐために、変形例1−3では、図5の断面図(媒体対向面側からの観察図)に示すように、第2の反強磁性層43'と強磁性フリー層41との間に非磁性層49を挿入することにより、交換結合力を所望の値まで弱くなるよう調整することができる。
【0059】
この変形例1−2、1−3については、後に説明する第2乃至第4の実施形態においても同様に採用することができる。
【0060】
さらに、変形例1−3の磁気結合を調整する非磁性層49は、変形例1−2のような、反強磁性層43'が非磁性層49を介して隣接する強磁性層の上面全てを覆う構成に限らず、第1の実施形態、あるいは後に説明する第2乃至第4の実施形態における、強磁性層の部分領域上に反強磁性層が形成する場合にも、同じ様に挿入して用いることができる。
【0061】
(変形例1−4)
図6(a)は、変形例1−4に関るスピンバルブ素子の断面を、媒体対向面側より観察した図である。
【0062】
第1の実施形態のスピンバルブ素子では、強磁性ピン層37の磁化を固着する交換結合エネルギーを一定としたとき、強磁性ピン層37の磁化を小さくするほど磁化反転しにくくなる。そこで、強磁性ピン層を積層フェリ構造、具体的には、図6(a)に示すように、第1強磁性ピン層55、第2強磁性ピン層51、及びこれらを反強磁性的に磁気結合する中間層53からなる積層構造とすることで、強磁性ピン層37の磁化反転を抑制することが可能である。また、図6(a)の構造では、積層フェリ構造を導入することで、直交結合が保持される磁場を高くすることができる。従って、磁性層33、51、55の磁化反転が生じる磁場を非常に高くできる。
【0063】
また、積層フェリ構造を導入した他の例として、図6(b)に示すように、第1の反強磁性層31と直交結合用の磁化結合層(挿入層)35との間に、積層フェリ構造の強磁性層57、33、及びこれらの強磁性層を反強磁性的に磁気結合させる中間層53を導入することができる。この場合には、第1の反強磁性層31と積層フェリ構造の交換結合磁場を高くすることができる。尚、積層フェリ構造における中間層53にはRu、Cu等が好適である。
【0064】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の磁気抵抗効果素子に係る第2の実施形態を、図7を用いて説明する。
【0065】
図7は、第2の実施形態に関るスピンバルブ素子の断面を外部磁場の進入面から観察した図を示す。
【0066】
第2のスピンバルブ素子は、図7に示すように、下地層47の表面に、第1の反強磁性層61、強磁性ピン層63、中間非磁性層65、強磁性フリー層67、直交結合用の磁化結合層69、及び強磁性層71がこの順に積層されてなり、強磁性層71の上面両端部上に第2の反強磁性層73が形成され、リード電極75はこれらの膜に電気的に接続されている。
【0067】
このスピンバルブ素子は、強磁性ピン層63が強磁性層67よりも下地層側に形成されたボトムタイプであり、また、強磁性フリー層67側に直交結合用の磁化結合層(挿入層)69を備えるものである。リード電極75は、第1の実施形態において説明したものと同等である。
【0068】
強磁性層71の両端の斜線部は第2の反強磁性層73との交換結合によって、図7紙面表から裏へ向う方向の磁化で固着された領域であり、中央能動領域に当該磁化方向の磁気バイアスを与えるものである。これによって、強磁性層71の中央領域の磁化は、外部磁場がゼロにおいて、図7の紙面表から裏に向かう方向に設定される。
【0069】
そして、直交結合用中間層によって、強磁性層71と直交方向の磁化結合を付与された強磁性フリー層67は図7に示すように、紙面右方向の磁化を備えることとなり、外部磁界がゼロにおいて、強磁性ピン層63と強磁性フリー層67の直交磁化が実現できる。
【0070】
(変形例2−1)
このように、磁化が同一軸の二つの反強磁性層61と73を用いて、強磁性ピン層63と強磁性フリー層67の磁化を略直交に交叉させることができる。
【0071】
図8は、この第2の実施形態の変形例であり、第2の反強磁性層73'と接する強磁性層71'及び直交結合用中間層69'を、二つある第2の反強磁性層73'のそれぞれと位置整合するようにパターニングした断面構造を、外部磁界の流入側より観察した図である。このようにすれば、電流のシャント効果を低減することができ、磁化反転による磁気抵抗変化率の寄与を実質的に増大することが可能となる。
【0072】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の磁気抵抗効果素子に係る第3の実施形態を、図9(a)を用いて説明する。
【0073】
図9(a)は、第3の実施形態に関るスピンバルブ素子の断面を外部磁場の進入面から観察した図である。
【0074】
第3の実施形態に関るスピンバルブ素子は、図9(a)に示すように、下地層47上に、第1の反強磁性層81、強磁性フリー層83、中間非磁性層85、強磁性ピン層87、直交結合用の磁化結合層89、結合層89によって、強磁性ピン層87と略直交に磁気結合する強磁性層91、この強磁性層91と交換結合する第2の反強磁性層93、リード電極95が順次積層された構造を備える。
【0075】
尚、第1の反強磁性層81は強磁性フリー層83の両端部(図9(a)中の斜線ハッチング部)と交換結合し、その結果、強磁性フリー層83の端部から強磁性フリー層83の中央感磁領域へバイアス磁界が与えられ、信号磁界がゼロの状態で、感磁領域は図9(a)の矢印で示す磁化を備える。
【0076】
この素子では、第1の実施形態において説明したのと同様に、強磁性ピン層87の磁化固着、及び強磁性フリー層83へのバイアス付与のために用いる二つの反強磁性層81、93の熱処理工程数を従来に比べて低減可能である。
【0077】
さて、第3の実施形態では、離間して配置された二つの第1の反強磁性層81間は強磁性フリー層83である必要はなく、図9(b)の媒体対向面側より観察した断面図に示すように、間隔層97を用いてもよい。この間隔層97は、シャント効果を低減するために、磁気ヘッド等の磁性デバイスに用いられるAlOx,SiOx等の絶縁物質が好ましい。また、強磁性フリー層83の結晶配向性を高める趣旨から、Cu、Ru、NiFe、NiFeCr等を用いることができる。さらには、これらのうちで異なる材料層を積層すること、あるいは、混層体としてもよい。
【0078】
(第4の実施の形態)
図10は、本発明の第4の実施形態に係るスピンバルブ素子の断面を、信号流入面より観察した図である。
【0079】
第4の実施形態のスピンバルブ素子は、図10に示すように、下地層47の上に、互いに離間して形成された二つの第1の反強磁性層101、二つの第1の反強磁性層101間とその上に延在する強磁性層103、強磁性層103及び強磁性フリー層107の磁化が略直交になるように、両層を磁気結合させる磁化結合層105、強磁性フリー層107、中間非磁性層109、強磁性ピン層111、第2の反強磁性層113、リード電極115とを備える。
【0080】
また、図11は、第4の実施形態において、互いに離間する第1の反強磁性層101間に、第3の実施の形態において説明したと同様に、間隔層117を配置したスピンバルブ素子の断面を、外部磁界の流入面側から観察した図である。この間隔層117としては、第3の実施形態のおいて説明したような材料を採用することができる。
【0081】
図10及び図11では、強磁性層103のうち、第1の反強磁性層101上に積層された両端部(図10、及び図11の斜線ハッチング部)は、第1の反強磁性層101との交換結合により磁化が固着され、この両端部に挟まれた中央感磁領域はこの両端部からの磁気バイアスにより紙面表から裏方向への磁化を備える。
【0082】
また、強磁性ピン層111は反強磁性層113との交換結合により紙面表から裏向きの磁化を備え、従って、この実施形態においても、強磁性ピン層111への固着磁化の付与と、強磁性層103への磁気バイアスの付与に必要な熱処理工程数を低減でき、他の実施形態で説明したと同様の効果が得られる。
【0083】
以上、第1乃至第4の実施の形態とその変更例に関る磁気抵抗効果素子について、図面を用いて説明した。
【0084】
次に、本発明における直交結合用の磁化結合層(中間層)に用いる材料と直交結合について説明する。
【0085】
磁化結合層(中間層)には、同一金属の価数の異なる酸化物を2種以上含む混相膜、あるいは、同一金属の価数の異なる酸化物層が2層以上積層された積層膜を用いることができる。ここで、価数の異なる酸化物としては、
1)Feの酸化物からなり、FeO,Fe34,α‐Fe23,γ‐Fe23から選ばれる。
2)Crの酸化物からなり、CrO,Cr23,CrO2,Cr25,Cr O3,CrO5から選ばれる。
3)価数の異なる酸化物は、Mnの酸化物からなり、MnO,MnO2から選ばれる。
【0086】
また、磁化結合層には、Au、Al、Ag、Cu、Cr、Mn等のいずれか、これらの混合層、あるいはこれら単一元素層、混合層の積層膜で実現できる。
【0087】
直交結合用中間層を介して二つの強磁性層が積層された、強磁性層/直交結合用中間層/強磁性層の2枚の強磁性層がもつ磁化の単位ベクトルがそれぞれM1、M2であるとき、強磁性層間の結合エネルギーEcは、
Ec=―A121・M2−B12(M1・M22 (1)
で表される。ここで、A12は通常の双一次交換結合定数、B12は双二次交換結合定数である。略90度(直交)結合は|A12|<|B12|かつB12<0のときに起こる。
【0088】
B12は、A12<0である反強磁性結合状態とA12>0である強磁性結合状態の混在している場合に誘起されるものである。一方、A12は中間層の膜厚が増加するにしたがって振動するため、実際の試料が凹凸をもっていると膜厚分布ができ、結果としてA12<0とA12>0が混在して略90度結合が起こることになる。中間層に1原子分の表面凹凸が周期2Lで存在し、その凹凸による双一次結合エネルギーの差が2ΔJであるとき、双二次結合定数B12は、
B12=−[2(ΔJ)2L/(Aπ3)]Σm=1∞[coth[π(2m−1)(D1 /L)]/(2m−1)3+coth[π(2m−1)(D2/L)]/(2m− 1)3] (2)
と表される(Phys. Rev. Lett. 67, 3172-3175(1991))。
【0089】
ここで、 D1、D2は二つの強磁性層の膜厚を夫々示し、Aは強磁性体固有の交換スティフネス定数である。これからわかるように、B12は膜の平滑性と膜厚に大きく依存する。そのため試料作成の設定条件によってB12にばらつきが出ると予想される。エピタキシャル成長によって、様々な強磁性層/直交結合用中間層/強磁性層からなる3層膜を作成して、その配向面と得られたB12について、表1に示す。
【0090】
【表1】
Figure 0004469482
【0091】
表1中、MLは原子層の単位であり、1MLは1原子層を示す。
【0092】
尚、直交結合用中間層の膜厚は、90度結合が実現する範囲である約0.2nmから2nmが望ましい。
【0093】
また、本発明の直交結合用中間層として、先に述べた材料に加えて、金属酸化物、金属窒化物、及び金属フッ化物が考えられる。これらの中で、価数によって磁性が異なる金属を含む材料であれば、酸化、窒化、フッ化の進行を制御することで、強磁性相、反強磁性相、フェリ磁性相の混相状態を実現することができる。
【0094】
例えば、Fe酸化物(FeO、Fe34、α−Fe23、γ−Fe23)、あるいはこれらの混相膜、あるいは積層膜が挙げられる。これらの直交結合用中間層の厚さは約0.2nmから約10nm、好ましくは約0.5nmから約3nmとする。直交結合用中間層にFe酸化物を用いたスピンバルブ膜に関する実施例1乃至4の測定により、Fe酸化物が隣接する強磁性層の磁化を結合させることを確認するとともに、その結合エネルギーを以下のようにして測定した。
【0095】
実施例1乃至4は、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、熱酸化Si上に、順次成膜した。その後、真空中で7kOeの磁場を印加しながら、熱酸化Siを270℃に暖めて1時間の熱処理を行った。これにより、各実施例のIrMn/CoFe界面の交換結合エネルギーJua=Hua・Ms・t≒0.14erg/cm2によりCoFeの磁化が固着される。ここでHuaは交換結合磁場(ここでは500Oe)、Msはピン層の飽和磁化(1.8T)、tはピン層の厚さ(2nm)である。各実施例の層構成を表2に示す。各実施例は、表2の左から順に、既述の方法によって、熱酸化Si基板上に形成したものである。
【0096】
【表2】
Figure 0004469482
【0097】
ここで、langmuireは、酸化強度に関する単位であり、酸素分圧1×10-6Torr雰囲気に1秒間暴露して酸化物が形成される量を示す。
【0098】
直交結合用中間層にFe酸化物を用いた実施例1の磁化曲線とMR曲線を、夫々図12(a)、(c)と図12(b)、(d)に示す。IrMn反強磁性層からの交換バイアス磁場方向(Hua)に対して外部磁場(Hex)を平行に導入した際の磁化曲線とMR曲線が図12(a)、(c)であり、垂直に導入した際の磁化曲線とMR曲線が図12(b)、(d)である。HuaとHexが平行では8%弱のMR変化率を示し、HuaとHexが垂直では10%強のMR変化率を示した。Cu中間非磁性層を挟んだCoFe強磁性フリー層とCoFe強磁性ピン層の磁化が完全な反平行となる状態が実現するときに、MRが最大値を示すことを考えると、平行挿引のときには、フリー層とピン層の磁化が完全な反平行となっておらず、垂直挿引のときに、反平行が実現していることがわかる。すなわち、IrMnからの交換バイアス磁場によって磁化を固着されているCoFe強磁性層と、この強磁性層とFe酸化物からなる直交結合用中間層を挟んで存在するCoFe強磁性ピン層の磁化は、略直交の関係にあると言える。
【0099】
さて、実施例1において、外部磁場を印加していったときにCoFe強磁性ピン層とCoFeフリー層の磁化が反平行でなくなる磁場は380Oe程度であった。これは、Fe酸化物による磁気結合エネルギーが0.11erg/cm2以上であることを意味する。
【0100】
実施例2では、直交結合用中間層の自然酸化における酸化強度を変化させた。
【0101】
図13に、磁場を垂直挿引したときの、反平行状態が破れる磁場H90°および電気抵抗変化率の酸化強度依存性を示す。600Langmuiersでは90度結合させるのに必要なFe酸化物ができておらず、1200Langmuiers 以上で90度結合が実現する。
【0102】
また、このように直交結合用中間層が絶縁物である場合には、電子反射によるMR増大効果が得られる。CuとTaは自己酸化によってCu−Ta酸化物を形成すると考えられ、このCu−Ta酸化物とCoFe強磁性フリー層との界面、及びFe酸化物と強磁性ピン層との界面において、伝導電子の鏡面反射が起こっているため、Fe酸化物のない場合のスピンバルブではおよそ10%がMRの最大値であるのに対し、Fe酸化物を用いる実施例2の1200 Langmuiersでは13%のMRが得られた。しかし、1200Langmuiersより酸化を強くしていくと、膜面が荒れるためにMRが少しずつ減少してしまう。
【0103】
従って、安定した磁気結合と高いMRを両立させるためには、1000Langmuiersから8000Langmuiers程度の酸化強度が適当である。
【0104】
次に、実施例3は、IrMn反強磁性層とFe酸化物の直交結合用中間層の厚さについて検討した。表3にその結果を示す。
【0105】
【表3】
Figure 0004469482
【0106】
これより、良好な磁気結合を実現するためには、IrMn反強磁性層とFe酸化物中間層に挟まれるCoFe強磁性層の膜厚を少なくとも1nm以上、望ましくは2nm以上にすべきであることがわかる。しかし、厚すぎると磁化(Ms・t積)が増大してHuaが低下するので、2nm以上3nm以下にすべきである。
【0107】
実施例4では、直交結合用中間層の酸化させる前のFeの膜厚を変化させた。ここで酸化強度は、Feが2nm以下の場合3000Langmuirs、2nm以上の場合、12000 Langmuirsとした。Feの厚さに応じて酸化強度を変化させたのは、Feが厚くても深層部まで酸化されるよう配慮したためであるが、先述の通り、酸化の強い領域では膜面が荒れてMRが低下した。図14にFe膜厚と直交結合磁場H90°及び、電気抵抗変化率の関係を示す。この結果より、Feの膜厚は1nmから3nmが好適と言える。特に、1.5nmから2nmがより望ましい。
【0108】
また、実施例5は、Crを自然酸化して直交結合用中間層としたスピンバルブのMR曲線を図15に示す。90度結合磁場はFeのときよりも小さいものの、約50Oe(この場合、0.014erg/cm2)で結合されている。
【0109】
ここでは成膜室への酸素導入によりFe,Crを自然酸化させた実施例1−5を挙げたが、Fe,Crのほか、Mnを用いることも可能であり、酸化の方法の他の例として、(1)プラズマで生成した酸素ラディカルによる酸化、(2)エキシマランプから紫外線を照射することで生成した酸素ラディカルによる酸化、(3)酸素を含む雰囲気中におけるFe,Cr,Mnの反応性スパッタ、等が考えられる。(1)は緻密で薄い酸化膜を作成するのに適しており、Fe,Cr,Mnの価数をコントロールしやすくなる。(2)は(1)に加えて酸素イオンによるダメージが少なく、平滑な界面が作成できる。これにより、電子鏡面反射の効果を高め、出力を向上させることができる。(3)は化学的に安定した酸化膜が得られ、素子として安定な動作を継続できる。更に(1)から(3)において、基板を40℃〜100℃に加熱しつつ酸化を進行させると、酸化物が平滑にかつ化学的に安定した状態で得ることができる。また(1)、(2)では、基板を77K〜295Kに冷却して酸化させると、酸素分子が解離して自然酸化するのを抑制できるため、酸素ラディカルの寄与が高くなって、緻密で薄い酸化膜を作成することができる。
【0110】
また、ここでは基板に熱酸化Siを用いたが、平坦性を向上させる等の目的で、サファイア基板、MgO基板、GaAs基板、Si基板を用いることも可能である。さらに、素子のノイズ減対策としての、フリー層の軟磁気特性下地をNiFeの代わりにfcc構造を有する金属、たとえばRu、Cu、Au、NiFeCrのうちのいずれかによる単層膜、あるいはこれらの積層膜、混相膜にしてもよい。
【0111】
ところで、強磁性フリー層と反強磁性層との間に直交結合用の中間層を挿入するには、スピンバルブとしての感度を向上させるための工夫が必要である。直交結合用中間層を挟んだ2層の強磁性層が同じ磁化(Ms・t積)を持っていると、強磁性フリー層全体としての磁化は強磁性ピン層に対して45度を向いているため、記録媒体からの外部磁場が印加されても、磁化が回転しにくくなる可能性がある。
【0112】
これを防ぎ、直交結合用中間層を介した2層の強磁性層の足しあわせた磁化を、ピン層の磁化と略直交するように、Ms・t積に差を設けることである。強磁性フリー層と、反強磁性層に接している強磁性層のMs・t積の比を1:5程度とすれば、強磁性ピン層の磁化と、直交結合用中間層を介した両強磁性の磁化のなす角が約80deg.となり、感度劣化を抑制できる。
【0113】
また、直交結合を弱めるという方法がある。反強磁性層に接する強磁性層の磁化は固着されたままで、強磁性フリー層の磁化だけが回転する。この場合、感度として、強磁性フリー層の磁化が回転し始める外部磁場が5Oe以下であることが好ましく、例えば強磁性フリー層の磁化が3.6nmTでは、直交結合エネルギーは1.4 ×10-3 erg/cm2以下である必要がある。
【0114】
以上述べた略直交に結合する磁化結合層(挿入層)を用いた磁気抵抗効果素子は、磁気ディスク装置等の磁気再生装置の再生ヘッドとして用いることが可能である。
【0115】
磁気再生ヘッドのうち、これまでに用いられているシールド型磁気ヘッドは、ヘッドの媒体対向面近傍に上述の磁気抵抗効果素子を備えている。
【0116】
また、シールド型磁気ヘッドの他に、図16の概略斜視図に示すヨーク型磁気ヘッドにも適用できる。このヨーク型磁気ヘッドは、図16にあるように、媒体対向面1200において記録媒体上の記録トラック1202からの信号磁界をひろい、ヘッド内部に配置された磁気抵抗効果素子に導く一対のヨーク1204を備える。実際は、記録媒体が面内で回転して、磁気ヘッドはその表面上を空気を介して、あるいは互いに接触して相対移動する。
【0117】
図16中、一対のヨーク内に付した矢印は信号磁界の進入方向を示す。この信号磁界は、ヨーク1204の一方によって、媒体対抗面1200より後方に配置された本発明の磁気抵抗効果素子1210に導かれ、ヨーク1204の他方により媒体へ戻り、一つの磁気回路を構成できる。磁気抵抗効果素子1210は、磁気抵抗効果膜1206と、この磁抵抗効果膜1206の両端に接続された一対のリード電極1208により構成されている。磁気抵抗効果膜1206とリード電極に付された点線上の矢印はセンス電流の方向を示す。
【0118】
このようなヨーク1204を用いる場合に、磁束を効率的に磁気抵抗効果膜1206へ導くには、ヨーク1204の透磁率が高いことが望まれ、そのためには一様な磁気異方性を持たないことが望ましい。しかし、スピンバルブに対する熱処理はヨーク1204と積層形成されてから行われるため、スピンバルブに対する熱処理によりヨーク部が一様な磁気異方性を持つ恐れがある。従って、本発明の磁気抵抗効果素子のように熱処理を少なく済ませられることは、ヨーク型磁気ヘッドの大きな利点といえる。尚、このようなヨーク型磁気ヘッドにおける利点は、図16に示す構造に限られず、磁気抵抗効果素子が媒体対抗面から後退した位置に配置され、媒体対向面と磁気抵抗効果素子が磁気ヨークによって橋渡しされた構造であれば同様に得られるものである。
【0119】
また、ヨーク型ヘッドでは、設計上、リード電極1208を図16に示すように、x方向に互いに対向する位置に置く構成となる。これは、図16に示すように磁気抵抗効果膜の主面1206を磁気媒体1202に垂直に形成した構造でも、ヨーク1204の後方面に形成して磁気媒体1202に平行に形成した構造でも同様である。
【0120】
磁気抵抗効果膜中での磁束の流れは図16中の矢印で示したように、x方向を向く。すなわち、センス電流と、強磁性フリー層7に流れ込む磁束の向きが平行あるいは反平行となる。このような状況で、略直交を用いない従来スピンバルブを搭載すると、図17(a)中z方向に対向するように、強磁性フリー層7の磁気バイアス付与(磁区制御)の反強磁性層9を配置することになる。つまり、磁区制御反強磁性層がフリー層に接している磁界不感領域に、シャント電流が流れてしまい、出力が低下してしまう。
【0121】
これに対し、略直交結合の磁化結合層(挿入層)12065を用いたスピンバルブ素子を搭載すれば、図17(b)に示すように強磁性フリー層12064の磁区制御を、強磁性層12066への磁気バイアスを介して反強磁性層12067はx方向に互いに対向配置され、リード電極1208を反強磁性層12067よりも中央の中央能動領域まで伸ばすことで、強磁性フリー層12064の磁界不感領域をバイパスすることができる。このことから、ヨーク型磁気ヘッドと略直交結合用の磁化結合層(挿入層)12065を用いたスピンバルブ素子を組み合わせることは、出力向上の観点から大きな利点を生み出すと言える。
【0122】
また、図18のヨーク型磁気ヘッドの概略を示す斜視図にあるように磁気抵抗効果膜1206の主面(膜の堆積方向に対し垂直な面)を磁気記録媒体1202の主面に平行となるように形成した場合、一対の硬質磁性材料層あるいは反強磁性材料層12067を磁気抵抗効果膜1206aを挟み、かつ記録媒体のトラック上方のトラック幅形成部分を挟む位置に設置して、ヨーク1204の磁化をy方向へそろえることができる。このようにすることで、ヨークのx方向の透磁率が一様にかつ小さくなり、記録媒体1202からの信号磁束が効率よくフリー層へと流れ込む。このとき磁気抵抗効果膜1206aのピン層の磁化はヨークやフリー層の磁化と直交関係(x方向)に固着する必要がある。すなわち、ピン層の磁化固着のための熱処理と、ヨーク1204の磁化固着のための熱処理とが必要となる。ここで、直交結合膜をピン層あるいはフリー層に挿入することで、ヨーク1204とピン層あるいは、フリー層に挿入することで、ヨーク1204とピン層への熱処理を同時に行うことが出来るようになり、製造工程数の削減が可能となる。尚、図18の磁気抵抗効果膜1206aには、各実施形態にて説明した磁気抵抗効果膜を用いることが可能であり、ここでは、詳細な説明は省略する。尚、図18に示すようなヨーク型ヘッドでは、磁気抵抗効果素子として、主面に垂直に電流を流す(CPP方式)のGMR素子が適している。この場合には、一対の電極は、磁気抵抗効果膜を上下から挟むように配置される。
【0123】
以上に述べた略直交に結合する物質を用いた膜構造は、スピンバルブのみに限らず、人工格子膜やスピンバルブ構造を2重に備えるいわゆるデュアルスピンバルブ素子にも適用可能であり、さらには、トンネル効果を用いたトンネル磁気抵抗効果膜や、センス電流を磁気抵抗効果膜の膜面垂直方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)磁気抵抗効果素子にも適用可能である。一例の断面を図19に示す。
【0124】
このトンネル磁気抵抗効果素子は、下部電極を兼ねた下地層47の表面に、第1の反強磁性層121、強磁性層123、直交結合用の磁化結合層125、強磁性ピン層127、非磁性トンネル絶縁層129、強磁性フリー層131、第2の反強磁性層133、このトンネル磁気抵抗効果膜の側壁を囲む絶縁層135、及び上部電極層137を備える。上部及び下部電極間をトンネル電流が流れ、強磁性ピン層127及び強磁性フリー層131の磁方向の相対変化によって、トンネル抵抗が変化し、この情報から外部磁場の方向を検知することができる。尚、このようなトンネル磁気抵抗効果膜は、磁気ヘッド等のいわゆる磁気センサの他、基板上にダイオードやトランジスタ共にセルを構成し、このセルを複数集積形成した不揮発性の磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)にも適用可能である。
【0125】
以上説明したような磁気抵抗効果素子を磁気再生ヘッドに用い、これを搭載した磁気ヘッドアッセンブリは、次に述べる構成を備える。
【0126】
アクチュエータアームは、磁気ディスク装置内の固定軸に固定されるための穴を有し、アクチュエータアームの一端にはサスペンションが接続されている。
【0127】
サスペンションの先端には上述の各形態及び各実施例にある磁気抵抗効果素子を備える磁気ヘッドを搭載したヘッドスライダが取り付けられている。また、サスペンションは信号の書き込み及び読み取り用のリード線が配線され、このリード線の一端とヘッドスライダに組み込まれた磁気抵抗効果ヘッドの各電極とが電気的に接続され、リード線の他端は電極パッドに接続されている。
【0128】
また、本発明の磁気記録装置の一種である、磁気ヘッドアッセンブリを搭載した磁気ディスク装置の内部構造を次に述べる。
【0129】
磁気ディスクはスピンドルに装着され、駆動装置制御部からの制御信号に応答するモータにより回転する。磁気ディスクが浮上した状態で情報の記録再生を行うヘッドスライダは薄膜状のサスペンションの先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダは上記磁気抵抗効果再生ヘッドを具備している。
【0130】
磁気ディスクが回転すると、ヘッドスライダの媒体対向面は磁気ディスクの表面から所定量浮上した状態で保持される。
【0131】
サスペンションは駆動コイルを保持するボビン部等を有するアクチュエータアームの一端に接続されている。アクチュエータアームの他端にはリニアモータの1種であるボイスコイルモータが設けられている。ボイスコイルモータはアクチュエータアームのボビン部に巻き上げられた駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石、及び対向ヨークからなる磁気回路とから構成される。
【0132】
アクチュエータアームは固定軸の上下2ヶ所に設けられたボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータにより回転摺動が自在にできるようになっている。
【0133】
以上説明した実施の形態、及び実施例において例示した層の材料等はこれに限られるものではない。
【0134】
また、層の成膜方法等、例えばスパッタ工程のスパッタ圧やスパッタ温度、成膜後の熱処理工程における処理温度、処理雰囲気、及び処理時間に依存して、隣接する層や離間した層から原子の拡散が起こることが容易に想定できる。従って、これらの製法の調整等によって、例示したターゲット材を用いて成膜しても、拡散によって結果的に異なる材料を含む層になるが、このような拡散が生じても、本発明の趣旨に基づいて得られるべき特性(強磁性、反強磁性、略直交の磁気結合、スピン依存散乱等)が得られるならば、本発明の効果を十分に発揮できる。
【0135】
【発明の効果】
安価で高性能の磁気抵抗効果素子を提供することが可能である。また、薄膜化の素子を提供することができ、狭ギャップを要する磁気再生ヘッド、さらにハードディスクドライブ等の磁気再生装置に好適である。また、新規な磁性積層体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による磁気抵抗効果素子を示す斜視断面図である。
【図2】第1の実施形態を例に用いて、本発明の磁気抵抗効果素子の製造にあたって行う、磁場中熱処理工程の履歴を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による磁気抵抗効果素子のリードを素子の中央能動部まで重ねた変形例1−1を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による磁気抵抗効果素子の強磁性フリー層に接する反強磁性層を面内に2分しない変形例1−2を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による磁気抵抗効果素子の強磁性フリー層と反強磁性層との間に非磁性層を挿入した変形例1−3を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による磁気抵抗効果素子の強磁性ピン層に積層フェリ構造を用いた変形例1−4を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による磁気抵抗効果素子を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態による磁気抵抗効果素子の変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態による磁気抵抗効果素子を示す断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態による磁気抵抗効果素子を示す断面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態による磁気抵抗効果素子の変形例を示す断面図である。
【図12】実施例1の磁化曲線とMR曲線を示す図である。
【図13】実施例2の反平行状態が破れる磁場H90とMRの酸化強度依存性を示す図である。
【図14】実施例4の反平行状態が破れる磁場H90とMRに関する、酸化させる前のFeの膜厚依存性を示す図である。
【図15】実施例5のMR曲線を示す図である。
【図16】ヨーク型磁気ヘッドに関する概略斜視図である。
【図17】ヨーク型磁気ヘッドにおける磁気抵抗効果素子の各層とヨークとの一関係を示す斜視図である。
【図18】ヨーク型磁気ヘッドの他の例を示す概略斜視図である。
【図19】本発明のトンネル効果素子を示す断面図である。
【図20】従来のパターンドバイアス方式の磁気抵抗効果素子を示す斜視図である。
【符号の説明】
31…第1の反強磁性層
33…第1の強磁性層
35…直交結合用中間層
37…第2の強磁性層
39…中間非磁性層
41…第3の強磁性相
43…第2の反強磁性層
45…リード電極

Claims (15)

  1. 第1方向の磁化を備える第1の強磁性層と、
    同一金属の価数の異なる酸化物を2種以上含む混相膜、あるいは、同一金属の価数の異なる酸化物層を2層以上含む積層膜を具備し、前記第1の強磁性層と積層形成された磁化結合層と、
    前記磁化結合層を介して前記第1の強磁性層と積層形成され、前記磁化結合層により前記第1の強磁性層と磁化結合されて前記第1方向と直交方向の磁化を備える、外部磁場において、前記磁化方向が実質的に変化しない磁化固着層と、
    中間非磁性層と、
    前記中間非磁性層を介して前記磁化固着層と積層形成され、外部磁場がゼロの状態で第1方向と同方向の磁化を備える、外部磁場の変動に伴い前記磁化の方向が変化する磁化自由層とを有する磁気抵抗効果膜を備えることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  2. 前記第1の強磁性層に積層形成された第1の反強磁性層、及び前記磁化自由層に積層形成された第2の反強磁性層とを備えることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
  3. 前記価数の異なる酸化物は、Feの酸化物からなり、FeO,Fe34,α‐Fe23,γ‐Fe23から選ばれることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
  4. 前記価数の異なる酸化物は、Crの酸化物からなり、CrO,Cr23,CrO2,Cr25,CrO3,CrO5から選ばれることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
  5. 前記価数の異なる酸化物は、Mnの酸化物からなり、MnO,MnO2から選ばれることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
  6. 前記磁気抵抗効果膜の膜面に対して垂直な方向にセンス電流を通電するために前記磁気抵抗効果膜に電気的に接続された一対の電極を備えることを特徴とする請求項1乃至5記載の磁気抵抗効果素子。
  7. 第1の反強磁性層と、
    前記第1の反強磁性層と交換結合した強磁性層であって、第1方向の磁化を備える第1の強磁性層と、
    同一金属の価数の異なる酸化物を2種以上含む混相膜、あるいは、同一金属の価数の異なる酸化物層を2層以上含む積層膜を具備し、前記第1の強磁性層と積層形成された磁化結合層と、
    前記磁化結合層を介して前記第1の強磁性層と積層形成され、前記磁化結合層により前記第1の強磁性層と磁化結合されて前記第1方向と直交方向の磁化を備える、外部磁場において、前記磁化方向が実質的に変化しない磁化固着層と、
    中間非磁性層と、
    前記中間非磁性層を介して前記磁化固着層と積層形成され、外部磁場がゼロの状態で第1方向と同方向の磁化を備える、外部磁場の変動に伴い前記磁化の方向が変化する磁化自由層と、
    前記磁化自由層と交換結合した第2の反強磁性層とを有する磁気抵抗効果膜を備える磁気抵抗効果素子を具備することを特徴とする磁気抵抗効果ヘッド。
  8. 第1方向の磁化を備える第1の強磁性層と、
    同一金属の価数の異なる酸化物を2種以上含む混相膜、あるいは、同一金属の価数の異なる酸化物層が2層以上積層された積層膜を具備し、前記第1の強磁性層と積層形成された磁化結合層と、
    前記磁化結合層を介して前記第1の強磁性層と積層形成され、前記第1方向と直交方の磁化を備える、外部磁場において、前記磁化方向が実質的に変化しない磁化固着層と、
    中間非磁性層と、
    前記中間非磁性層を介して前記磁化固着層と積層形成され、外部磁場がゼロの状態で第1方向と同方向の磁化を備える、外部磁場の変動に伴い前記磁化の方向が変化する磁化自由層とを有する磁気抵抗効果膜を備える磁気抵抗効果素子を具備することを特徴とする磁気抵抗効果ヘッド。
  9. 前記価数の異なる酸化物は、Feの酸化物からなり、FeO,Fe34,αFe23,γFe23から選ばれることを特徴とする請求項7または8記載の磁気抵抗効果ヘッド。
  10. 前記価数の異なる酸化物は、Crの酸化物からなり、CrO,Cr23,CrO2,Cr25,CrO3,CrO5から選ばれることを特徴とする請求項7または8記載の磁気抵抗効果ヘッド。
  11. 前記価数の異なる酸化物は、Mnの酸化物からなり、MnO,MnO2から選ばれることを特徴とする請求項7または8記載の磁気抵抗効果ヘッド。
  12. 一端に媒体対抗面を備え、前記媒体対向面より離間して前記磁気抵抗効果素子が配置され、前記媒体対向面と前記磁気抵抗効果素子間に配置され、前記媒体対抗面で外部磁場をひろい、前記外部磁場を前記磁気抵抗効果素子に導く磁気ヨークを備えることを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載の磁気抵抗効果ヘッド。
  13. 前記磁気抵抗効果膜の膜面に対して垂直な方向にセンス電流を通電するために前記磁気抵抗効果膜に電気的に接続された一対の電極を備えることを特徴とする請求項7乃至12のいずれかに記載の磁気抵抗効果ヘッド。
  14. 磁気記録媒体と、
    前記磁気記録媒体に記録された磁気情報を再生する磁気抵抗効果ヘッドであって、
    第1方向の磁化を備える第1の強磁性層と、
    同一金属の価数の異なる酸化物を2種以上含む混相膜、あるいは、同一金属の価数の異なる酸化物層が2層以上積層された積層膜を具備し、前記第1の強磁性層と積層形成された磁化結合層と、
    前記磁化結合層を介して前記第1の強磁性層と積層形成され、前記第1方向と直交方向の磁化を備える、外部磁場において、前記磁化方向が実質的に変化しない磁化固着層と、
    中間非磁性層と、
    前記中間非磁性層を介して前記磁化固着層と積層形成され、外部磁場がゼロの状態で第1方向と同方向の磁化を備える、外部磁場の変動に伴い前記磁化の方向が変化する磁化自由層とを有する磁気抵抗効果膜を備える磁気抵抗効果ヘッドを搭載することを特徴とする磁気再生装置。
  15. 前記磁気抵抗効果膜の膜面に対して垂直な方向にセンス電流を通電するために前記磁気抵抗効果膜に電気的に接続された一対の電極を備えることを特徴とする請求項14記載の磁気再生装置。
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