JP4467142B2 - 難燃性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂、層状化合物、およびリン系難燃剤を含有する難燃性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車部品、電子・電気部品、OA部品等に熱可塑性ポリエステル樹脂が幅広く利用されているが、これらの用途において、機械的特性や耐熱性および成形性のみならず、高度な難燃性を有する材料が要求されるようになっている。ポリエステル樹脂の難燃化にはリン系化合物を用いる方法が数多く提示されている(例えば、特公昭51−19858号、特公昭51−39271号、特開昭52−102255号等)。しかしながら、リン系化合物の使用によって機械的特性等が低下するほか、リン系化合物だけで難燃化しようとしても燃焼時に溶融した樹脂が火種と共に滴下(ドリッピング)するという問題があった。そして燃焼時の樹脂の滴下を抑制する目的から、一般に(i)フッ素系樹脂を併用する技術が知られている。別の技術としては(ii)平均粒径が0.5〜300μmの層状ケイ酸塩をリン系難燃剤と併用する技術も開示されている(特開平10−60160号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし従来技術(i)は燃焼時の滴下抑制にはある程度の効力を発揮するものの、例えばフッ素樹脂は、樹脂100重量部当たりの添加量を1重量部未満程度にするとフッ素系樹脂の分散不良の為に難燃性が安定して発現しなくなり、逆に添加量を増やすとコストアップ、フッ素系樹脂の分散不良による樹脂成形体の表面外観の低下、成形流動性・加工性が低下する等の問題があった。また従来技術(ii)では平均粒径が0.5〜300μmの層状ケイ酸塩を併用しても、粒径が大きすぎるので滴下抑制効果は決して十分ではなかった。また「平均粒径」とは粒子形状が不定形であるかあるいは概ね球状であると解されるが、充分な滴下抑制効果を効率的に得るためには粒子形状はアスペクト比が高い薄板状であることが必要である。
【0004】
以上のように、燃焼時に樹脂の滴下が起こらず、高度な難燃性を有し、かつ機械的特性等に優れ、成形体外観や成形流動性が低下しないポリエステル樹脂組成物は未だ見いだされておらず、上記のような従来の問題を解決する事が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成する為に鋭意検討した結果、リン系難燃剤と共に、非常に微細な層状化合物を併用することによって、燃焼時のポリエステル樹脂の滴下を抑制して難燃性を改善するのみならず、機械的特性が改善され表面外観や成形流動性の低下を引き起こすことがない難燃性ポリエステル樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部、環状炭化水素基を有するポリエーテル化合物で処理された層状化合物0.1重量部以上、150重量部以下、およびリン系難燃剤をリン量換算値として0.01重量部以上、15重量部以下を含有する、ポリエステル樹脂組成物であって、層状化合物が下記(a)、及び(c)の条件を満たす、難燃性ポリエステル樹脂組成物。
(a)ポリエステル樹脂組成物中の層状化合物のうち、等価面積円直径[D]が3000Å以下である層状化合物の比率が60%以上であること
(c)[N]値が70以上であり、ここで[N]値:が、樹脂組成物の面積100μm2中に存在する、層状化合物の単位重量比率当たりの粒子数であると定義されること
好ましい実施態様としては、層状化合物の平均層厚が500Å以下である、前記に記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0007】
さらに好ましい実施態様としては、層状化合物の最大層厚が2000Å以下である、前記いずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0008】
さらに好ましい実施態様としては、樹脂組成物中の層状化合物の平均アスペクト比(層長さ/層厚の比)が10〜300である、前記いずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0011】
さらに好ましい実施態様としては、ポリエーテル化合物が下記一般式(1)
【0012】
【化2】
(式中、−A−は、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、炭素数1〜20のアルキレン基または炭素数6〜20のアルキリデン基であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はいずれも水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜5の1価の炭化水素基、R9、R10はいずれも炭素数2〜5の2価の炭化水素基であり、R11、R12はいずれも水素原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。mはOR 9 単位の、nはOR 10 単位の繰り返し単位数を示し、2≦m+n≦50である。)で表されることを特徴する、請求項5に記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
【0013】
さらに好ましい実施態様としては、ポリエーテル化合物の水酸基価が30mgKOH/g以下であることを特徴とする、前記いずれかに記載のポリエステル樹脂組成物に関する。
【0015】
さらに好ましい実施態様としては、リン系難燃剤が、リン酸エステル系化合物および/または赤リン系化合物であることを特徴とする、前記いずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0016】
さらに好ましい実施態様としては、層状化合物が層状ケイ酸塩であることを特徴とする、前記いずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる熱可塑性ポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸化合物および/またはジカルボン酸のエステル形成性誘導体を主成分とする酸成分、及びジオール化合物および/またはジオール化合物のエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分との反応により得られる従来公知の任意の熱可塑性ポリエステル樹脂である。
【0018】
前記主成分とするとは、酸成分又はジオール成分中に占めるそれぞれの割合が80%以上、さらには90%以上であることを意図し、上限は100%である。
【0019】
上記の芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸等が挙げられ、これらの置換体(例えば、メチルイソフタル酸等のアルキル基置換体など)や誘導体(テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル等のようなアルキルエステル化合物など)も使用し得る。また、p−オキシ安息香酸及びp−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなオキシ酸及びこれらのエステル形成性誘導体も使用し得る。これらのモノマーの内の2種以上を混合して用いても良い。得られる難燃性ポリエステル樹脂組成物の特性を損なわない程度の少量であれば、これらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、セバシン酸等のような脂肪族ジカルボン酸を1種以上混合して使用し得る。
【0020】
上記酸成分の中では、得られるポリエステル樹脂の結晶性や強度、弾性率の点から、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、およびそれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0021】
また、上記のグリコール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール等のような脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のような脂環式グリコール等が挙げられ、これらの置換体や誘導体もまた使用し得る。また、ε−カプロラクトンのような環状エステルも使用し得る。これらの内の2種以上を混合して用いても良い。更に、ポリエステル樹脂の弾性率を著しく低下させない程度の少量であるならば、長鎖型のジオール化合物(例えば、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール)、及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加重合体等(例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加重合体等)などを組み合わせて使用しても良い。
【0022】
前記ジオール成分の中では、取り扱い性および得られるポリエステル樹脂の強度、弾性率等の点から、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0023】
熱可塑性ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ネオペンチルテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等、またはこれらの共重合ポリエステルを挙げることができる。それらは単独、または2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0024】
上記の熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、成形工程における成形流動性および最終製品の諸物性を考慮して選択され、低すぎても高すぎても好ましくなく適した分子量を設定する必要がある。すなわち、熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、フェノール/テトラクロロエタン(5/5重量比)混合溶媒を用いて、25℃で測定した対数粘度が0.3〜2.0(dl/g)であり、好ましくは0.35〜1.9(dl/g)であり、更に好ましくは0.4〜1.8(dl/g)である。対数粘度が0.3(dl/g)未満である場合、得られる難燃性ポリエステル樹脂組成物の成形品の機械的特性が低く、また2.0(dl/g)より大きい場合は成形時の流動性等の加工性に問題が生じる傾向がある。
【0025】
本発明で用いられる層状化合物とは、ケイ酸塩、リン酸ジルコニウム等のリン酸塩、チタン酸カリウム等のチタン酸塩、タングステン酸ナトリウム等のタングステン酸塩、ウラン酸ナトリウム等のウラン酸塩、バナジン酸カリウム等のバナジン酸塩、モリブデン酸マグネシウム等のモリブデン酸塩、ニオブ酸カリウム等のニオブ酸塩、黒鉛から成る群より選択される1種以上である。入手の容易性、取扱い性等の点から層状ケイ酸塩が好ましく用いられる。
【0026】
上記の層状ケイ酸塩とは、主として酸化ケイ素の四面体シートと、主として金属水酸化物の八面体シートから形成され、例えば、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母などが挙げられる。
【0027】
前記のスメクタイト族粘土は下記一般式(3)
X1 0.2〜0.6Y1 2〜3Z1 4O10(OH)2・nH2O (3)
(ただし、X1はK、Na、1/2Ca、及び1/2Mgから成る群より選ばれる1種以上であり、Y1はMg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、及びCrから成る群より選ばれる1種以上であり、Z1はSi、及びAlから成る群より選ばれる1種以上である。尚、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表すが、nは層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動する)で表される、天然または合成されたものである。該スメクタイト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト及びベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。前記スメクタイト族粘土の初期の凝集状態における底面間隔は約10〜17Åであり、凝集状態でのスメクタイト族粘土の平均粒径はおおよそ1000Å〜1000000Åである。
【0028】
また、前記の膨潤性雲母は下記一般式(4)
X2 0.5〜1.0Y2 2〜3(Z2 4O10)(F、OH)2 (4)
(ただし、X2はLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、及びSrから成る群より選ばれる1種以上であり、Y2はMg、Fe、Ni、Mn、Al、及びLiから成る群より選ばれる1種以上であり、Z2はSi、Ge、Al、Fe、及びBから成る群より選ばれる1種以上である。)で表される、天然または合成されたものである。これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性溶媒、及び水と該極性溶媒の混合溶媒中で膨潤する性質を有する物であり、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、及びナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。前記膨潤性雲母の初期の凝集状態における底面間隔はおおよそ10〜17Åであり、凝集状態での膨潤性雲母の平均粒径は約1000〜1000000Åである。
【0029】
上記の膨潤性雲母の中にはバーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、この様なバーミキュライト類相当品等も使用し得る。該バーミキュライト類相当品には3八面体型と2八面体型があり、下記一般式(5)
(Mg,Fe,Al)2〜3(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+ 1/2)x・nH2O (5)
(ただし、MはNa及びMg等のアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)で表されるものが挙げられる。前記バーミキュライト相当品の初期の凝集状態における底面間隔はおおよそ10〜17Åであり、凝集状態での平均粒径は約1000〜5000000Åである。
【0030】
層状ケイ酸塩の結晶構造は、c軸方向に規則正しく積み重なった純粋度が高いものが望ましいが、結晶周期が乱れ、複数種の結晶構造が混じり合った、いわゆる混合層鉱物も使用され得る。
【0031】
層状ケイ酸塩は単独で用いても良く、2種以上組み合わせて使用しても良い。これらの内では、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライトおよび層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母が、得られる難燃性ポリエステル樹脂組成物中での分散性および難燃性ポリエステル樹脂組成物の物性改善効果の点から好ましい。
【0032】
本発明で用いられる層状化合物は、ポリエーテル化合物で処理された物であり得る。上記のポリエーテル化合物とは、主鎖がポリオキシエチレンやポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体などのようなポリオキシアルキレンである化合物を意図し、繰り返し単位数が2から100程度のものを意図する。該ポリエーテル化合物の側鎖および/または主鎖中に、アルコキシシリル基やシラノール基など、Si−O−結合を形成し得る含Si原子官能基を除いた置換基を有していてもよく、熱可塑性ポリエステル樹脂や層状化合物に悪影響を与えない限りにおいて任意の置換基であり得る。該置換基の例としては、炭化水素基、エステル結合で結合している基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、末端にカルボニル基を有する基、アミド基、メルカプト基、スルホニル結合で結合している基、スルフィニル結合で結合している基、ニトロ基、ニトロソ基、ニトリル基、ハロゲン原子および水酸基などが挙げられる。これらの内の1種で置換されていても良く、2種以上で置換されていても良い。
【0033】
上記の炭化水素基とは、直鎖または分岐鎖(すなわち側鎖を有する)の飽和または不飽和の一価または多価の脂肪族炭化水素基、および芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基を意味し、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、シクロアルキル基等が挙げられる。本明細書において、「アルキル基」という場合は、特に指示が無い限り「アルキレン基」等の多価の炭化水素基を包含することを意図する。同様にアルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、及びシクロアルキル基は、それぞれアルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、ナフチレン基、及びシクロアルキレン基等を包含する。ポリエーテル化合物中の置換基の組成比は特に制限されるものではないが、ポリエーテル化合物が水または水を含有する極性溶媒に可溶である事が望ましい。具体的には、例えば、室温の水100gに対する溶解度が1g以上であり、好ましくは2g以上であり、よりに好ましくは5g以上であり、更に好ましくは10g以上であり、特に好ましくは20g以上である。ここでいう極性溶媒とは、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物、その他の溶媒としてピリジン、ジメチルスルホキシドやN−メチルピロリドン等が挙げられる。又、炭酸ジメチルや炭酸ジエチルような炭酸ジエステルも使用できる。これらの極性溶媒は単独で用いても良く2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0034】
本発明で用いられるポリエーテル化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジフェニルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルアリルエーテル、ポリエチレングリコールグリセリルエーテル、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ビス(ポリエチレングリコール)ブチルアミン、ビス(ポリエチレングリコール)オクチルアミン、ポリエチレングリコールビスフェノールAエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールビスフェノールAエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールユレイドプロピルエーテル、ポリエチレングリコールメルカプトプロピルエーテル、ポリエチレングリコールフェニルスルホニルプロピルエーテル、ポリエチレングリコールフェニルスルフィニルプロピルエーテル、ポリエチレングリコールニトロプロピルエーテル、ポリエチレングリコールニトロソプロピルエーテル、ポリエチレングリコールシアノエチルエーテル、ポリエチレングリコールシアノエチルエーテルなどが挙げられる。これらのポリエーテル化合物は、単独、又は2種以上組み合わせて使用され得る。
【0035】
本発明のポリエーテル化合物の中では、芳香族炭化水素基や脂環式炭化水素基などの環状炭化水素基を有するものが好ましく、中でも下記一般式(1)
【0036】
【化3】
(式中、−A−は、−O−、−S−、−SO−、−SO2-、−CO−、炭素数1〜20のアルキレン基または炭素数6〜20のアルキリデン基であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はいずれも水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜5の1価の炭化水素基、R9、R10はいずれも炭素数1〜5の2価の炭化水素基であり、R11、R12はいずれも水素原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。mおよびnはオキシアルキレン単位の繰り返し単位数を示し、2≦m+n≦50である。)
で表されるものが層状化合物の分散性および熱安定性の点から好ましい。
【0037】
また、本発明で用いられるポリエーテル化合物は、水酸基価が30mgKOH/g以下であり得、好ましくは28mgKOH/g以下であり得、より好ましくは25mgKOH/g以下であり得、更に好ましくは23mgKOH/g以下であり得、特に好ましくは20mgKOH/g以下であり得る。水酸基価が30mgKOH/g以下であると、樹脂の熱安定性の点で好ましい。水酸基価が30mgKOH/gより大きいと熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量が低下する傾向があり、結果としてポリエステル樹脂組成物の強度や靭性が低下する。
【0038】
上記の水酸基価の測定方法は特に限定されず任意の方法を行い得る。そのような例として、例えば、本発明で用いられるポリエーテル化合物1gを、塩化アセチル、無水酢酸、氷酢酸などでアセチル化する。次いで、水酸化ナトリウム等のアルカリ化合物で加水分解、すなわちケン化し、それによって生じる酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を水酸基価という。
【0039】
ポリエーテル化合物の使用量は、層状化合物と熱可塑性ポリエステル樹脂との親和性、難燃性ポリエステル樹脂組成物中での層状化合物の分散性が十分に高まるように調製し得る。必要であるならば、異種の官能基を有する複数種のポリエーテル化合物を併用し得る。従って、ポリエーテル化合物の使用量は一概に数値で限定されるものではないが、層状化合物100重量部に対する層状化合物の配合量の下限値は、0.1重量部であり、好ましくは0.2重量部であり、より好ましくは0.3重量部であり、更に好ましくは0.4重量部であり、特に好ましくは0.5重量部である。層状化合物100重量部に対する層状化合物の配合量の上限値は、200重量部であり、好ましくは180重量部であり、より好ましくは160重量部であり、更に好ましくは140重量部であり、特に好ましくは120重量部である。ポリエーテル化合物量の下限値が0.1重量部未満であると層状化合物の微分散化効果が充分で無くなる傾向がある。また、ポリエーテル化合物量の200重量部を越えると効果が変わらないので、200重量部より多く使用する必要はない。
【0040】
また、本発明で用いられる層状化合物は、下記一般式(2)
YnSiX4-n (2)
で表されるシラン系化合物で処理された物であり得る。
【0041】
一般式(2)中のnは0〜3の整数であり、Yは、置換基を有していても良い炭素数1〜25の炭化水素基である。炭素数1〜25の炭化水素基が置換基を有する場合の置換基の例としては、例えばエステル結合で結合している基、エーテル結合で結合している基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、末端にカルボニル基を有する基、アミド基、メルカプト基、スルホニル結合で結合している基、スルフィニル結合で結合している基、ニトロ基、ニトロソ基、ニトリル基、ハロゲン原子および水酸基などが挙げられる。これらの内の1種で置換されていても良く、2種以上で置換されていても良い。Xは加水分解性基および(または)水酸基であり、該加水分解性基の例としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基、アシルオキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、ハロゲン原子よりなる群から選択される1種以上である。一般式(2)中、nまたは4−nが2以上の場合、n個のYまたは4−n個のXはそれぞれ同種でも異種でも良い。
【0042】
本明細書において炭化水素基とは、直鎖または分岐鎖(すなわち側鎖を有する)の飽和または不飽和の一価または多価の脂肪族炭化水素基、および芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基を意味し、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、シクロアルキル基等が挙げられる。本明細書において、「アルキル基」という場合は、特に指示が無い限り「アルキレン基」等の多価の炭化水素基を包含することを意図する。同様にアルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、及びシクロアルキル基は、それぞれアルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、ナフチレン基、及びシクロアルキレン基等を包含する。
【0043】
上記一般式(2)において、Yが炭素数1〜25の炭化水素基である場合の例としては、デシルトリメトキシシランの様に直鎖長鎖アルキル基を有するもの、メチルトリメトキシシランの様に低級アルキル基を有するもの、2−ヘキセニルトリメトキシシランの様に不飽和炭化水素基を有するもの、2−エチルヘキシルトリメトキシシランの様に側鎖を有するアルキル基を有するもの、フェニルトリエトキシシランの様にフェニル基を有するもの、3−β−ナフチルプロピルトリメトキシシランの様にナフチル基を有するもの、及びp−ビニルベンジルトリメトキシシランの様にアラルキル基を有するものが挙げられる。Yが炭素数1〜25の炭化水素基の中でも特にビニル基を有する基である場合の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、及びビニルトリアセトキシシランが挙げられる。Yがエステル基で結合している基で置換されている基を有する基である場合の例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがエーテル基で結合している基で置換されている基を有する基である場合の例としては、γ−ポリオキシエチレンプロピルトリメトキシシラン、及び2−エトキシエチルトリメトキシシランが挙げられる。Yがエポキシ基で置換されている基である場合の例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがアミノ基で置換されている基である場合の例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ−アニリノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yが末端にカルボニル基を有する基で置換されている基である場合の例としては、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがメルカプト基で置換されている基である場合の例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがハロゲン原子で置換されている基である場合の例としては、γ−クロロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがスルホニル基で結合している基で置換されている基を有する基である場合の例としては、γ−フェニルスルホニルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがスルフィニル基で結合している基で置換されている基を有する基である場合の例としては、γ−フェニルスルフィニルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがニトロ基で置換されている基である場合の例としては、γ−ニトロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがニトロソ基で置換されている基である場合の例としては、γ−ニトロソプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがニトリル基で置換されている基である場合の例としては、γ−シアノエチルトリエトキシシランおよびγ−シアノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがカルボキシル基で置換されている基である場合の例としては、γ−(4−カルボキシフェニル)プロピルトリメトキシシランが挙げられる。前記以外にYが水酸基を有する基であるシラン系化合物もまた使用し得る。その様な例としては、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノ−3−プロピルトリエトキシシランが挙げられる。水酸基はまたシラノール基(SiOH)の形であり得る。
【0044】
上記の中では、Yがエステル基で結合している基で置換されている基を有する基であるもの、Yがエーテル基で結合している基で置換されている基を有する基であるもの、Yがエポキシ基で置換されている基であるもの、Yがアミノ基で置換されている基であるもの、Yがフェニル基を有するものが好ましく用いられる。
【0045】
上記のシラン系化合物の置換体、または誘導体もまた使用し得る。これらのシラン系化合物は、単独、又は2種以上組み合わせて使用され得る。
【0046】
シラン系化合物の使用量は、層状化合物と熱可塑性ポリエステル樹脂との親和性、難燃性ポリエステル樹脂組成物中での層状化合物の分散性が十分に高まるように調製し得る。必要であるならば、異種の官能基を有する複数種のシラン系化合物を併用し得る。従って、シラン系化合物物の使用量は一概に数値で限定されるものではないが、層状化合物100重量部に対するシラン系化合物の配合量の下限値は、0.1重量部であり、好ましくは0.2重量部であり、より好ましくは0.3重量部であり、更に好ましくは0.4重量部であり、特に好ましくは0.5重量部である。層状化合物100重量部に対するシラン系化合物の配合量の上限値は、200重量部であり、好ましくは180重量部であり、より好ましくは160重量部であり、更に好ましくは140重量部であり、特に好ましくは120重量部である。シラン系化合物量の下限値が0.1重量部未満であると層状化合物の微分散化効果が充分で無くなる傾向がある。また、シラン系化合物量の200重量部を越えると効果が変わらないので、200重量部より多く使用する必要はない。
【0047】
ここで、層状化合物がシラン系化合物で処理されたことは種々の方法で確認し得る。確認の方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0048】
まず、テトラヒドロフランやクロロホルムなどの有機溶剤を用いて処理後の層状化合物を洗浄する事によって、単に吸着しているシラン系化合物を洗浄し除去する。洗浄後の処理した層状化合物を乳鉢などで粉体状にしたのち充分に乾燥する。次いで、処理後の層状化合物を粉末状の臭化カリウム(KBr)等のような窓材質と所定の比率で充分に混合して加圧錠剤化し、フーリエ変換(FT)−IRを用い、透過法等により、シラン系化合物に由来する吸収帯を測定する。より正確に測定することが所望される場合、あるいは導入されたシラン系化合物量が少ない場合には、充分に乾燥した粉末状の処理後の層状化合物をそのまま拡散反射法(DRIFT)で測定することが望ましい。
【0049】
本発明において、ポリエーテル化合物やシラン系化合物で層状化合物を処理する方法は特に限定されず例えば、以下に示した方法で行い得る。
【0050】
まず、層状化合物と分散媒を撹拌混合する。前記分散媒とは水または水を含有する極性溶媒を意図する。具体的には既に上述しているのでここでは省略する。
【0051】
層状化合物と分散媒との攪拌の方法は特に限定されず、例えば、従来公知の湿式撹拌機を用いて行われる。該湿式撹拌機としては、撹拌翼が高速回転して撹拌する高速撹拌機、高剪断速度がかかっているローターとステーター間の間隙で試料を湿式粉砕する湿式ミル類、硬質媒体を利用した機械的湿式粉砕機類、ジェットノズルなどで試料を高速度で衝突させる湿式衝突粉砕機類、超音波を用いる湿式超音波粉砕機などを挙げることができる。より効率的に混合したい場合は、撹拌の回転数を1000rpm以上、好ましくは1500rpm以上、より好ましくは2000rpm以上にするか、あるいは500(1/s)以上、好ましくは1000(1/s)以上、より好ましくは1500(1/s)以上の剪断速度を加える。回転数の上限値は約25000rpmであり、剪断速度の上限値は約500000(1/s)である。上限値よりも大きい値で撹拌を行ったり、剪断を加えてもそれ以上変わらない傾向があるため、上限値よりも大きい値で撹拌を行う必要はない。また、混合に要する時間は1〜10分以上である。次いで、ポリエーテル化合物やシラン系化合物を加えてから同様の条件で更に撹拌を続け、十分に混合する。混合時の温度は室温で充分だが、必要に応じて加温しても良い。加温時の最高温度は用いるポリエーテル化合物やシラン系化合物の分解温度未満であり、かつ分散媒の沸点未満で有れば任意に設定されうる。その後、乾燥して必要に応じて粉体化する。
【0052】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物において、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対する層状化合物の配合量の下限値は、代表的には0.1重量部であり、好ましくは0.3重量部であり、より好ましくは0.5重量部であり、さらに好ましくは1.0重量部であり、特に好ましくは1.5重量部である。配合量の上限値は、代表的には150重量部であり、好ましくは100重量部であり、より好ましくは70重量部であり、更に好ましくは50重量部であり、特に好ましくは30重量部となるように調製される。層状化合物の配合量の下限値が0.1重量部未満であると燃焼時の樹脂の滴下抑制効果、機械的特性および低反り等の寸法精度の改善効果が不充分となる場合があり、上限値が150重量部を超えると成形体の表面外観などが損なわれる傾向がある。
【0053】
また、層状化合物に由来する難燃性ポリエステル樹脂組成物の灰分率の下限値は、代表的には0.1重量%であり、好ましくは0.3重量%であり、より好ましくは0.5重量%であり、さらに好ましくは1.0重量%であり、特に好ましくは1.5重量%と成るように調製され、灰分率の上限値は、代表的には60重量%であり、好ましくは50重量%であり、より好ましくは40重量%であり、更に好ましくは30重量%と成るように調製される。灰分率の下限値が0.1重量%未満であると燃焼時の樹脂の滴下抑制効果、機械的特性および低反りなどの寸法精度の改善効果が不充分となる場合があり、60重量%を超えると成形体の表面外観が損なわれる傾向がある。
【0054】
本発明で用いられるリン系難燃剤は特に限定されることはなく、通常一般に用いられるリン系難燃剤であり、代表的には、ホスフェート系化合物、ホスホネート系化合物、ホスフィネート系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホナイト系化合物、ホスフィナイト系化合物、ホスフィン系化合物等の有機リン系化合物や、赤リン系化合物が挙げられる。
【0055】
上記の有機リン系化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチルなどの他、下記一般式(6)で代表される縮合リン酸エステル系化合物が挙げられる。
【0056】
【化4】
(式中、R1〜R5は1価の芳香族基または脂肪族基、R6とR7は2価の芳香族基、nは0〜15を示し、n個のR3およびR6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
上記の縮合リン酸エステルの具体例としては、式(7)で表されるレゾルシノールポリフェニルホスフェート、式(8)で表されるレゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、式(9)で表されるビスフェノールAポリクレジルホスフェート、式(10)で表されるハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物が挙げられる
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
【化7】
【0060】
【化8】
上記式(7)〜(10)において、nは0〜15である。
【0061】
また、本発明で用いられる赤リン系化合物としては、未処理の赤リンのみでなく、熱硬化性樹脂被膜、金属水酸化物被膜、金属メッキ被膜から成る群より選ばれる1種以上の化合物被膜により処理された赤リン系化合物も好適に使用される。
【0062】
熱硬化性樹脂被膜の熱硬化性樹脂としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、アルキッド系樹脂などが挙げられる。金属水酸化物被膜の金属水酸化物としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等が挙げられる。金属メッキ被膜の金属としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Mn、Ti、Zr、Alまたはこれらの合金等が挙げられる。更に、これらの被膜は2種以上組み合わせて、あるいは2種以上に積層されていてもよい。
【0063】
以上のリン系難燃剤は単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用され得る。
【0064】
上記のリン系難燃剤の中で好ましい例としては、ホスフェート系化合物、ホスホネート系化合物、ホスフィネート系化合物等のリン酸エステル系化合物および赤リン系化合物が挙げられる。
【0065】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物において、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、リン系難燃剤の使用量の下限値はリン量換算値として、0.01重量部であり、好ましくは0.05重量部であり、より好ましくは0.1重量部であり、更に好ましくは0.2重量部であり、特に好ましくは0.5重量部である。上限値はリン量換算値として15重量部であり、好ましくは10重量部であり、より好ましくは8重量部であり更に好ましくは5重量部である。添加量が0.01重量部より少ないと難燃効果が得られ難くなり、15重量部より多いと機械的特性が損なわれる場合がある。
【0066】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物中で分散している層状化合物の構造は、使用前の層状化合物が有していたような、層が多数積層したμmサイズの凝集構造とは全く異なる。すなわち、層状化合物の層同士が劈開し、互いに独立して細分化する。その結果、層状化合物はポリエステル樹脂中で非常に細かく互いに独立した薄板状で分散し、その数は、使用前の層状化合物に比べて著しく増大する。この様な薄板状の層状化合物の分散状態は以下に述べる等価面積円直径[D]、アスペクト比(層長さ/層厚の比率)、分散粒子数、最大層厚及び平均層厚で表現され得る。
【0067】
まず、等価面積円直径[D]を、顕微鏡などで得られる像内で様々な形状で分散している個々の層状化合物の該顕微鏡像上での面積と等しい面積を有する円の直径であると定義する。その場合、樹脂組成物中に分散した層状化合物のうち、等価面積円直径[D]が3000Å以下である層状化合物の数の比率は20%以上であり、好ましくは35%以上であり、さらに好ましくは50%以上であり、特に好ましくは65%以上である。等価面積円直径[D]が3000Å以下である比率が20%未満であると難燃性ポリエステル樹脂組成物の燃焼時の滴下防止効果や機械的特性の改良効果が充分でなくなり、成形品の表面外観が損なわれる傾向がある。また、本発明のポリエステル樹脂組成物中の層状化合物の等価面積円直径[D]の平均値は5000Å以下であり、好ましくは4500Å以下であり、さらに好ましくは4000Å以下であり、特に好ましくは3500Å以下である。等価面積円直径[D]の平均値が5000Åより大きいと難燃性ポリエステル樹脂組成物の燃焼時の滴下防止効果や機械的特性の改良効果が充分でなくなり、成形品の表面外観が損なわれる傾向がある。下限値は特にないが、おおよそ100Å未満では効果はほとんど変わらなくなるので、100Å未満にする必要はない。等価面積円直径[D]の測定は、顕微鏡などを用いて撮影した像上で、100個以上の層状化合物の層を含む任意の領域を選択し、画像処理装置などを用いて画像化して計算機処理することによって定量化できる。
【0068】
平均アスペクト比を、樹脂組成物中に分散した層状化合物の層長さ/層厚の比の数平均値であると定義すると、本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物中の層状化合物の平均アスペクト比は10〜300であり、好ましくは15〜300であり、より好ましくは20〜300である。層状化合物の平均アスペクト比が10未満であると、本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物の燃焼時の滴下防止効果や機械的特性などの改善効果が十分に得られない場合がある。また、300より大きくても効果はそれ以上変わらないため、平均アスペクト比を300より大きくする必要はない。
【0069】
また、[N]値を、樹脂組成物の面積100μm2における、層状化合物の単位重量比率当たりの分散粒子数であると定義すると、本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物における層状化合物の[N]値は、30以上であり、好ましくは45以上であり、より好ましくは60以上である。上限値は特にないが、[N]値が1000程度を越えると、それ以上効果は変わらなくなるので、1000より大きくする必要はない。[N]値が30未満であるとポリエステル樹脂組成物の機械的特性や反りの改良効果が充分でなくなる場合がある。[N]値は、例えば、次のようにして求められ得る。すなわち、樹脂組成物を約50μm〜100μm厚の超薄切片に切り出し、該切片をTEM等で撮影した像上で、面積が100μm2の任意の領域に存在する層状化合物の粒子数を、用いた層状化合物の重量比率で除すことによって求められ得る。あるいは、TEM像上で、100個以上の粒子が存在する任意の領域(面積は測定しておく)を選んで該領域に存在する粒子数を、用いた層状化合物の重量比率で除し、面積100μm2に換算した値を[N]値としてもよい。従って、[N]値はポリエステル樹脂組成物のTEM写真等を用いることにより定量化できる。
【0070】
また、平均層厚を、薄板状で分散した層状化合物の層厚みの数平均値であると定義すると、本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物中の層状化合物の平均層厚の上限値は500Åであり、好ましくは450Åであり、より好ましくは400Åである。平均層厚が500Åより大きいと、本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物の燃焼時の滴下防止効果や機械的特性などの改良効果が十分に得られない場合がある。平均層厚の下限値は特に限定されないが、好ましくは50Åより大きく、より好ましくは60Å以上であり、更に好ましくは70Å以上である。
【0071】
また、最大層厚を、本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物中に薄板状に分散した層状化合物の層厚みの最大値であると定義すると、層状化合物の最大層厚の上限値は、2000Åであり、好ましくは1800Åであり、より好ましくは1500Åである。最大層厚が2000Åより大きいと、本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物の燃焼時の滴下防止効果や機械的特性が十分に得られない場合があり、表面外観が損なわれる場合がある。層状化合物の最大層厚の下限値は特に限定されないが、好ましくは100Åより大きく、より好ましくは150Åであり、更に好ましくは200Åである。
【0072】
層厚および層長さは、樹脂組成物を加熱溶融した後に、熱プレス成形あるいは延伸成形して得られるフィルム、および溶融樹脂を射出成形して得られる薄肉の成形品等を、顕微鏡等を用いて撮影される像から求めることができる。
【0073】
すなわち、いま仮に、X−Y面上に上記の方法で調製したフィルムの、あるいは肉厚が約0.5〜2mm程度の薄い平板状の射出成形した試験片を置いたと仮定する。上記のフィルムあるいは試験片をX−Z面あるいはY−Z面と平行な面で約50μm〜100μm厚の超薄切片を切り出し、該切片を透過型電子顕微鏡などを用い、約4〜10万倍以上の高倍率で観察して求められ得る。測定は、上記の方法で得られた透過型電子顕微鏡の象上に置いて、100個以上の層状化合物を含む任意の領域を選択し、画像処理装置などで画像化し、計算機処理する事等により定量化できる。あるいは、定規などを用いて計測しても求めることもできる。
【0074】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂とリン系難燃剤および層状化合物とを種々の一般的な混練機を用いて溶融混練する方法をあげることができる。混練機の例としては、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどが挙げられ、特に、剪断効率の高い混練機が好ましい。混練する順番は特に限定されず、熱可塑性ポリエステル樹脂とリン系難燃剤および層状化合物は上記の混練機に一括投入して溶融混練してもよく、あるいは熱可塑性ポリエステル樹脂と層状化合物を混練した後にリン系難燃剤を添加混練してもよく、また、予め溶融状態にした熱可塑性ポリエステル樹脂に層状化合物およびリン系難燃剤を添加混練しても良い。
【0075】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物には、難燃性を損なわない限りに置いて必要に応じ、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリルゴム、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、天然ゴム、塩素化ブチルゴム、α−オレフィンの単独重合体、2種以上のα−オレフィンの共重合体(ランダム、ブロック、グラフトなど、いずれの共重合体も含み、これらの混合物であっても良い)、またはオレフィン系エラストマーなどの耐衝撃性改良剤を添加することができる。これらは無水マレイン酸等の酸化合物、またはグリシジルメタクリレート等のエポキシ化合物で変性されていても良い。また、難燃性、機械的特性などを損なわない範囲で、他の任意の樹脂、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム質重合体強化スチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルフォン樹脂、及びポリアリレート樹脂等を単独または2種以上組み合わせて使用し得る。
【0076】
更に、本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物には、目的に応じて、顔料や染料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、及び帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物は、射出成形や熱プレス成形で成形しても良く、ブロー成形にも使用できる。
【0077】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物は各種の成形法により種々の形態、例えば各種成形品、シート、パイプ、ボトル等に成形することができる。また、本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物は、高度な難燃性、成形流動性、外観、機械的特性および耐熱性に優れる為、例えば、自動車部品、家庭用電気製品部品、精密機械部品、家庭日用品、包装・容器資材、磁気記録テープ基材、その他一般工業用資材に好適に用いられる。
【0078】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0079】
実施例、及び比較例で使用する主要原料を以下にまとめて示す。尚、特に断らない場合は、原料の精製は行っていない。
(原料)
・熱可塑性ポリエステル樹脂:ポリエチレンテレフタレート樹脂(鐘紡(株)のベルペットEFG85A、対数粘度(ηinh)=0.85(dl/g)、以降PETと称す)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(KOLON社製のKP210、以降PBTと称す)を用いた。
・層状化合物:モンモリロナイト(クニミネ工業(株)のクニピアF、以降クニピアFと称す)および膨潤性雲母(コープケミカル(株)のソマシフME100、以降ME100と称す)を用いた。
・ポリエーテル化合物:主鎖にビスフェノールA単位を含有するポリエチレングリコール(東邦化学(株)のビスオール18EN)、ポリエチレングリコール(三洋化成(株)のPEG1000)を用いた。
・シラン系化合物:γ−(ポリオキシエチレン)プロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)のA−1230、以降A1230と称す)を用いた。
・リン系難燃剤:フェノール樹脂被覆赤リン(燐化学工業(株)のノーバエクセル140、以降難燃剤F−1と称す)(平均粒子径25〜35μm)、ビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェート(大八化学(株)のCR747(以降難燃剤F−2と称す)、レゾルシノールビス(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート(大八化学(株)製のPX200、以降難燃剤F−3と称す)、メラミンピロホスフェート(ブッデンハイム社のBUDIT311、以降難燃剤F−4と称す)を用いた。
・メラミンシアヌル酸付加物:日産化学(株)のMC440(以降MC440と称す)を用いた。
【0080】
また、実施例および比較例における評価方法を以下にまとめて示す。
(分散状態の測定)
厚み50〜100μmの超薄切片を用いた。透過型電子顕微鏡(日本電子JEM−1200EX)を用い、加速電圧80kVで倍率4万〜100万倍で層状化合物の分散状態を観察撮影した。TEM写真において、100個以上の分散粒子が存在する任意の領域を選択し、層厚、層長、粒子数([N]値)、等価面積円直径[D]を、目盛り付きの定規を用いた手計測またはインタークエスト社の画像解析装置PIASIIIを用いて処理する事により測定した。
【0081】
等価面積円直径[D]はインタークエスト社の画像解析装置PIASIIIを用いて処理する事により測定した。[N]値の測定は以下のようにして行った。まず、TEM像上で、選択した領域に存在する層状化合物の粒子数を求める。これとは別に、層状化合物に由来する樹脂組成物の灰分率を測定する。上記粒子数を灰分率で除し、面積100μm2に換算した値を[N]値とした。平均層厚は個々の層状化合物の層厚の数平均値、最大層厚は個々の層状化合物の層厚の中で最大の値とした。分散粒子が大きく、TEMでの観察が不適当である場合は、光学顕微鏡(オリンパス光学(株)製の光学顕微鏡BH−2)を用いて上記と同様の方法で[N]値を求めた。ただし、必要に応じて、サンプルはLINKAM製のホットステージTHM600を用いて250〜270℃で溶融させ、溶融状態のままで分散粒子の状態を測定した。板状に分散しない分散粒子のアスペクト比は、長径/短径の値とした。ここで、長径とは、顕微鏡像等において、対象となる粒子の外接する長方形のうち面積が最小となる長方形を仮定すれば、その長方形の長辺を意図する。また、短径とは、上記最小となる長方形の短辺を意図する。平均アスペクト比は個々の層状化合物の層長と層厚の比の数平均値とした。
(難燃性)
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物を乾燥(140℃、5時間)した後、型締圧150tの射出成形機を用い、金型温度80℃、シリンダー温度250〜280℃にて、厚み約1.6mm、幅約12.7mm、長さ約127mmの試験片を作製した。
【0082】
上記の試験片を用い、UL−94規格に従って難燃性を測定した。尚、規格外とは、UL−94V規格に不適合であることを示す。
(曲げ特性)
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物を乾燥(140℃、5時間)した。型締圧80tの射出成形機を用い、シリンダー温度250〜280℃にて、厚み約6.4mm、幅約12.7mm、長さ約127mmの試験片を作製した。得られた試験片の曲げ特性を、ASTM D−790に従って測定した。
(反り)
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物を乾燥(140℃、5時間)した後、型締圧80tの射出成形機を用い、金型温度120℃、シリンダー温度250〜280℃にて、寸法約120×120×1mmの平板状試験片を作製した。平面上に上記の平板状試験片を置き、試験片の4隅の内の1カ所を押さえ、残り3隅の内、平面からの距離が最も大きい値を隙間ゲージやノギス等を用いて測定した。4隅それぞれを押さえ、得られた反り値の平均値を求めた。反り値は小さいほど優れている。
(表面光沢)
反りと同条件で成形した平板状試験片の表面光沢を測定した。ERICHSEN社のミニグロスマスターを用い、反射角60°で測定した。標準板50%に対する相対値とした。表面光沢値は大きいほど優れている。
(灰分率)
無機物に由来する、難燃性ポリエステル樹脂組成物の灰分率は、JIS K 7052に準じて測定した。
(製造例1)
反応機にジメチルテレフタレート(DMT)、DMT100重量部に対し、76重量部のプロピレングリコール、0.003重量部のヒンダードフェノール系安定剤(旭電化(株)アデカスタブAO60、以降AO60と称す)および0.00025重量部のTi(OBu)4を投入し、反応温度約150〜200℃で撹拌してDMTとプロピレングリコールをエステル交換させた。その後、0.00025重量部のSb2O3を添加し、反応温度270〜280℃、減圧下(0.8〜5.0torr)で溶融重縮合を行い、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)樹脂を得た。
(製造例2)
イオン交換水と層状化合物を混合した。ついでポリエーテル化合物またはシラン系化合物を添加して15〜60分間混合を続ける事によって処理した。その後、粉体化して処理粘土(粘土A−1〜A−4)を得た。製造例で用いた原料の重量比は表1に示す。
【0083】
【表1】
(実施例1〜5、比較例1〜5)表2に示す重量比のPET、製造例2で得た層状化合物、リン系難燃剤他を二軸押出機(日本製鋼(株)製、TEX44)を用いて設定温度230〜260℃で溶融混練することにより難燃性ポリエステル樹脂組成物を得、評価した。結果を表2に示す。
(比較例6、7)表2に示す重量比のPET、ME100、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(ダイキン工業(株)のポリフロンFA−500)、リン系難燃剤を実施例1と同様に溶融混練し、評価した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
表2より、比較例6では、2次凝集し、平均粒径が約40〜120μmのME100を分散させてもリン系難燃剤のみでは燃焼試験時に火種が滴下してUL94V規格外となった。また比較例7ではポリテトラフルオロエチレン樹脂を併用することで滴下は抑制されV−0となるものの、機械的特性や反り、光沢など他の物性が低く、バランスに優れるものは得られなかった。
(実施例6、7)表3に示す重量比のPBT、製造例2で得た層状化合物、リン系難燃剤他を実施例1と同様に溶融混練することにより難燃性ポリエステル樹脂組成物を得、評価した。結果を表3に示す。
(比較例8〜11)表3に示す重量比のPBT、ME100、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(ダイキン工業(株)のポリフロンFA−500)、リン系難燃剤を実施例1と同様に溶融混練し、評価した。結果を表3に示す。
【0085】
【表3】
表3より、比較例10では、2次凝集し、平均粒径が約40〜120μmのME100が分散してもリン系難燃剤のみでは燃焼試験時に火種が滴下してUL94V規格外となった。また比較例11では、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を併用することで滴下は抑制されV−0となるものの、機械的特性や反り、光沢など他の物性が低く、バランスに優れるものは得られなかった。
(実施例8、9(元実施例15、16))表4に示す重量比の製造例2で得たPPT、製造例1で得た層状化合物、リン系難燃剤他を実施例1と同様に溶融混練することにより難燃性ポリエステル樹脂組成物を得、評価した。結果を表4に示す。
(比較例12、13(元比較例5、6))表4に示す重量比の製造例2で得たP
PT、ME100、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(ダイキン工業(株)のポリフロンFA−500)、リン系難燃剤を実施例1と同様に溶融混練し、評価した。結果を表4に示す。
【0086】
【表4】
表4より、比較例12では、2次凝集し、平均粒径が約40〜120μmのME100が分散してもリン系難燃剤のみでは燃焼試験時に火種が滴下してUL94V規格外となった。比較例13では、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を併用することで滴下は抑制されV−0となるものの、機械的特性や反り、光沢など他の物性が低く、バランスに優れるものは得られなかった。
【0087】
【発明の効果】
本発明の難燃性ポリエステ得る樹脂組成物は、燃焼時の樹脂の滴下を抑制し、難燃性を付与することができる。更に樹脂組成物の機械的特性や反りが改良されかつ良好な表面外観を有する樹脂成形品を提供することができる。
Claims (8)
- 熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部、環状炭化水素基を有するポリエーテル化合物で処理された層状化合物0.1重量部以上、150重量部以下、およびリン系難燃剤をリン量換算値として0.01重量部以上、15重量部以下を含有する、ポリエステル樹脂組成物であって、層状化合物が下記(a)、及び(c)の条件を満たす、難燃性ポリエステル樹脂組成物。
(a)ポリエステル樹脂組成物中の層状化合物のうち、等価面積円直径[D]が3000Å以下である層状化合物の比率が60%以上であること
(c)[N]値が70以上であり、ここで[N]値が、樹脂組成物の面積100μm2中に存在する、層状化合物の単位重量比率当たりの粒子数であると定義されること - 層状化合物の平均層厚が500Å以下である、請求項1に記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
- 層状化合物の最大層厚が2000Å以下である、請求項1または2に難燃性記載のポリエステル樹脂組成物。
- 樹脂組成物中の層状化合物の平均アスペクト比(層長さ/層厚の比)が10〜300である、請求項1、2または3に記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
- ポリエーテル化合物が、下記一般式(1):
- ポリエーテル化合物の水酸基価が、30mgKOH/g以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
- リン系難燃剤が、リン酸エステル系化合物および/または赤リン系化合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
- 層状化合物が層状ケイ酸塩であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
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