JP4465490B2 - 析出硬化型フェライト系耐熱鋼 - Google Patents

析出硬化型フェライト系耐熱鋼 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、析出硬化型フェライト系耐熱鋼に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、650℃を超える高温における長時間クリープ強度に優れ、しかも耐水蒸気酸化性の低下も少ない、発電用ボイラ・タービン、原子力発電設備、化学工業装置など高温、高圧下で操業される装置用材料のための熱交換用のボイラ関連鋼管あるいは圧力容器用の鋼板、タービン用材料等として有用な、新しいフェライト系耐熱鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来のボイラ用高Crフェライト鋼は、600℃を超える高温での長時間クリープ強度が低いという問題がある。これは最終安定組織が、フェライト母相+M236 、あるいはM6 C+MX+Laves相などの金属間化合物で、これら析出物による強化機構が高温では低下することが主因である。
【0003】
上記の組織を有するフェライト鋼のクリープ強度を高めるためには、マルテンサイトラス粒内を強化する方法と、旧オーステナイト粒界、およびマルテンサイトラス界面を強化する方法が考えられるが、これまで粒内強化にはMX、粒界・ラス界面強化にはM236 、Laves相等の金属間化合物の安定化が有効と考えられ、種々の合金設計が為されてきた。しかしながら、実際には、高温クリープ抵抗を飛躍的に向上させる方法は得られていなかった。
【0004】
そこでこの出願の発明は、以上のとおりの従来技術の限界を克服し、650℃を超えるような高温においても、長時間クリープ特性に優れた、新しい高Crフェライト系耐熱鋼を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、質量%で、C:0.06〜0.18%、Si:0〜1.0%、P:0.030%以下,S:0.015%以下、Cr:8.0〜15.0%、W:0〜4.0%、Mo:0〜2.0%、但し、W+2Mo≦4.0% V:0〜0.50%、Nb:0〜0.15%、Ta:0〜0.30%、Ti:0〜0.15%、Zr:0〜0.30%、Hf:0〜0.60%、N:0〜0.10%、B:0〜0.030%、Ag:0〜1.0%、O:0.010%以下、sol.Al:0.050%以下含有するとともに、Pd:0.01〜5.0%、Pt:0.01〜10.0%の少なくとも1種を0.01%≦Pd+1/2Pt≦5.0%の範囲で含有し、さらにMn、Re、Ru、Osの少なくとも1種を合計で0.01%≦Mn+1/2Re+Ru+1/2Os≦5.0%含有している残部:Feおよび不可避の不純物からなる化学組成を有するフェライトあるいは焼き戻しマルテンサイト組織を有するフェライト系耐熱鋼であって、組織粒内に強磁性あるいは反強磁性を示す金属間化合物相が均一析出されていることを特徴とする高温長時間クリープ強度を有する析出硬化型フェライト系耐熱鋼(但し、質量%で、C:0.06〜0.18%、Si:0〜1.0%、Mn:0〜1.5%、P:0.030%以下、S:0.015%以下、Cr:8.0〜13.0%、W:0〜4.0%、Mo:0〜2.0%(但し、W+2Mo≦4.0%)、Nb:0.030〜0.14%、V:0.10〜0.50%、N:0〜0.10%、B:0〜0.030%、O:0.010%以下、sol.Al:0〜0.050%含有し、さらにPdおよびPtの少なくとも1種を合計で0.3〜5.0%含有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有するフェライト系耐熱鋼、および、質量%で、C:0.06〜0.18%、Si:1.0%以下、Mn:0〜1.5%、P:0.030%以下、S:0.015%以下、Cr:8.0〜15.0%、W:0超〜4.0%、Mo:0〜2.0%(但し、W+2Mo≦4.0%)、Ta:0〜0.30%、Hf:0〜0.60%、N:0.10%以下、B:0〜0.03%、O:0.010%以下、sol.Al:0.050%以下を含有し、さらにPd:0〜5.0%およびPt:0〜10.0%の少なくとも1種を0.1≦Pd+1/2Pt≦5.0%の範囲で含有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有するフェライト系耐熱鋼を除く)を提供する。
【0007】
すなわち、この出願の発明者らは、粒内強化の全く新しい方法として、L10 型あるいはL12 型規則構造を有する金属間化合物の微細析出が極めて有効であることをすでに明らかにしたが、この出願の発明では、これまでの研究の過程で、FePd基L10 型金属間化合物は本来Fe−Pd2元系では規則−不規則変態温度Tcが650℃、強磁性変態温度Tmが490℃であるものが、PdをMn置換していくと、Tc、Tm何れも上昇し、それに伴い高温でのクリープ抵抗が向上できることが明らかとなったことに基づいている。
【0008】
FeMnは反強磁性を示すことが知られているが、通常高Crフェライト鋼ではMn量を10%程度まで高めてもFeMnとしては析出しない。ところが少量のPd,Pt等と共存させることによって、Fe(X,Mn)(XはPd,Pt)なる金属間化合物相を母相と整合性を有して微細分散析出することを見出した。この析出相は組成によって反強磁性、あるいは強磁性を示し、FePdのTc,Tmを著しく高める。
【0009】
高Crフェライト鋼においては、これまで析出相の磁性と高温クリープ抵抗との研究例はなく、この出願の発明において、初めて強磁性、あるいは反強磁性を示す析出物が、クリープ抵抗を飛躍的に向上させることを明示することになる。
さらにMnだけでなくRe,Ru,Osについても同様な効果が期待できることをもこの出願の発明は明らかにしているのである。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は以上のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
まず、この出願の発明のフェライト系耐熱鋼に含まれる各合金元素と鋼の特性との関係および各合金元素の含有量の範囲とその限定理由について説明する。
【0011】
C:Cは重要なオーステナイト生成元素としてδ−フェライト相の抑制効果を有すると共に、鋼の焼き入れ性を著しく高めてマルテンサイト相母相を形成するのに用いられる元素である。さらにMC型炭化物(MはV,Nb,Ta,Ti,Zr,Hf等の合金元素、MX型炭窒化物(MはMCの場合に同じ、X;C、N)の形態をとることもある)、M7 3 型炭化物(M;Cr,Fe,Mo,W等の合金元素)、M236 型炭化物(MはM7 3 に同じ)、あるいはM6 C型炭化物を形成する。これらの炭化物は、この発明の耐熱鋼の特性に著しい影響を及ぼす。従来の高Crフェライト鋼は、通常、焼きならしおよび焼きもどし処理によって焼きもどしマルテンサイト組織として使用される。630℃を超えるような高温下で長時間使用される場合には、MX等の微細な炭化物の析出が進行する。これらの炭化物は、長時間クリープ強度を維持する働きをする。この炭化物の効果を得るためには、0.06量%(以下、化学組成の%表示は量%)以上のCが必要である。一方、C含有量が0.18%を超えると、高温下で使用される際、初期段階から炭化物の凝集と粗大化が起こり、長時間のクリープ強度が低下する。したがって、C含有量は0.06〜0.18%が適当である。
【0012】
Si:Siは、溶鋼の脱酸剤として用いられる。この外、高温における耐水蒸気酸化性を向上させるのに有効な元素である。しかし、過剰な場合は、鋼の靱性が低下するので、1%以下がよい。溶鋼が十分なAl量で脱酸される場合には、特にSiを含む必要はない。
Mn,Re,Ru,Os:この発明の耐熱鋼においては、これらの元素がPd,Ptの一部を置換することによって強磁性、あるいは反強磁性を示すFe(Pd,X)(X;Mn,Re,Ru,Os)で代表される金属間化合物相の析出が促進され、さらに強磁性変態温度が高温側へ移行する。その結果、耐熱鋼の高温クリープ抵抗が飛躍的に向上する。その効果は微量でも明らかであるが、これらの含有量は0.01%≦Mn+1/2Re+Ru+1/2Os≦5.0%とする。
【0013】
Cr:Crは、この発明のフェライト系耐熱鋼の高温における耐食性、耐酸化性、特に耐水蒸気酸化性を確保するために、必要不可欠な元素である。Crを含有する場合には、鋼の表面にCr酸化物を主体とする緻密な酸化皮膜が形成される。この酸化皮膜が、この発明のフェライト系耐熱鋼の高温における耐食性や耐酸化性、特に耐水蒸気酸化性を向上させる。また、Crは、炭化物を形成してクリープ強度を向上させる働きを持っている。これらの効果を得るためには、Cr含有量8.0%以上が必要である。一方、15.0%を超えると、δ−フェライトが生成しやすくなるので、靱性の低下が起こる。したがって、Cr含有量は8.0〜15.0%とする。
【0014】
W:Wは、この発明のフェライト系耐熱鋼において、クリープ強度を高める上で有効な元素の1つである。Wは、固溶状態にあってはマルテンサイト相母相を強化し、さらに鋼が高温下で使用される場合には、Fe7 6 型のμ相、あるいはFe2 W型のLaves相などを主体とする金属間化合物を形成し、微細析出相を通して、長時間クリープ強度を向上させる。また、WはM236 等のCr炭化物中にも一部固溶し、炭化物の凝集、粗大化を抑制する働きがあるので、この発明のフェライト系耐熱鋼の高温における強度の維持にも有効な元素である。Wのこの効果を得るためには、微量添加では固溶強化、1%を超える添加では析出強化が顕著となる。一方、4.0%を超えるとδ−フェライトが生成しやすくなり、靱性が低下する。また、Mo(後述)と同時に添加する場合はその含有量をW+2Mo≦4.0%とするのが良い。さらに、他の強化元素で鋼が十分強化されている場合はWを含有させなくても良い。
【0015】
Mo:Moは、Wと同様に微量では固溶強化、1%超では析出強化に寄与し、クリープ強度を高めるが、析出強化の寄与する温度範囲はWに比べて低温側(600℃以下)で顕著である。またMoを含むM236 、あるいはM7 3 型炭化物は、高温で安定であるために、長時間クリープ強度の確保に対して有効な元素である。一方、2.0%を超えるとδ−フェライトが生成しやすくなり、靱性が低下する。また、W(前述)と同時に添加する場合はその含有量をW+2Mo≦4.0%の範囲とする。さらに、他の強化元素で鋼が十分強化されている場合はMoを含有させなくても良い。
【0016】
V:Vは、微細な炭窒化物を形成してクリープ強度の向上に寄与する元素である。Vの効果は、含有量0.10%以上で現れる。一方、含有量が0.50%を超えると、その効果は飽和するので、V含有量は0.10〜0.50%とする。
Nb:Nbは、窒化物および炭窒化物の形成により、鋼の強度および靱性を向上させる。その効果を得るには、Nb含有量0.03%以上を必要とする。ただし、0.14%を超えると、Nbの効果は飽和するので、Nb含有量は、0.03〜0.14%が適当である。
【0017】
N:NはC同様に重要なオーステナイト生成元素としてδ−フェライト相の抑制効果を有すると共に、鋼の焼き入れ性を高めてマルテンサイト相を形成する元素である。さらにMX型炭窒化物を形成し、この発明のフェライト系耐熱鋼の特性に著しい影響を及ぼすが、所望の性能に応じてCとNの添加割合を制御するのが重要である。すなわち、この発明のフェライト系耐熱鋼においては、CおよびPd,Pt等によりδ−フェライト相を十分抑制可能であり、かつ650℃を超える高温におけるクリープ強度を重視する場合にはNの多量添加は特に必要ない。一方、焼き入れ性を十分高めてδ−フェライト相を抑制することを重視する場合にはNを添加するのが良い。その場合にも多量添加による窒化物の粗大化が進行すると、靱性の低下が著しくなるので、N含有量は0〜0.10%とする。
【0018】
B:Bが微量、鋼中に含まれると、主にM236 型等の炭化物が微細に分散析出し凝集粗大化が抑制されるため、高温長時間クリープ強度が向上する。また、厚肉材などで熱処理後の冷却速度が遅い場合には、焼き入れ性を高めて高温強度を向上させる働きがある。この発明のフェライト系耐熱鋼では、Bを含有しなくてもよいが、高温強度を高める目的で含有させてもよい。Bの効果は、0.0005%以上で顕著となるので、含有させる場合は0.0005%以上とするのが望ましい。しかし、0.030%を超えると粗大な析出物を形成し、靱性を低下させるので、その上限は0.030%とする。
【0019】
sol.Al:Alは、おもに溶鋼の脱酸剤として添加される。鋼中には、酸化物としてのAlと、酸化物以外の形態で存在するAlがあり、通常後者のAlは分析上、塩酸可溶Al(sol.Al)として区別されている。脱酸効果を得るためには、sol.Al含有量として0.001%以上が必要である。一方、0.050%を超えるとクリープ強度の低下を招く。また、他の方法によって溶鋼を脱酸可能であれば、Alを添加しなくても良い。したがって、sol.Al含有量は、0.050%以下とする。
【0020】
Pd:この発明のフェライト系耐熱鋼にあっては主にL10 型あるいはL12 型規則構造を有する強磁性の金属間化合物の均一分散析出を促進する元素である。その効果はPdの場合、量%で0.01%以上で顕著となる。Pdは従来から鋼に含有させるとA1 変態点を著しく低下させると考えられていたが、Mo,Wを含有する高Crフェライト鋼ではA1 変態点の低下をほとんどなく、またNiのような炭窒化物の凝集粗大化の助長作用もないことが明らかとなった。その結果650℃を超える温度において長時間クリープ強度を低下させないことが明らかとなった。さらにMn,Re,Ru,Os等と一部置換することによって、Fe(Pd,X)なる強磁性−常磁性変態温度が上昇し、あるいは反強磁性となって、高温クリープ抵抗を著しく高めることが明らかとなった。しかし、フェライト系耐熱鋼にあっては5%を超える多量添加ではその効果は飽和するのでその添加量を0.01%〜5%とする。
【0021】
Pt:PtはPdと同様に主にL10 型あるいはL12 型規則構造を有する金属間化合物の均一分散析出を促進する元素である。母相と析出相の整合歪みの違いから、クリープ抵抗性を高める効果はPdの場合よりも大きくなる。その効果は量%で0.01%以上で顕著となる。Ptについても従来から鋼に含有させるとA1 変態点を著しく低下させると考えられていたが、Mo,Wを含有する高Crフェライト鋼ではA1 変態点の低下は顕著でなく、またNiのような炭窒化物の凝集粗大化の助長作用も全くないことが明らかとなった。その結果650℃を超える温度においても長時間クリープ強度を低下させないことが明らかとなった。さらにMn,Re,Ru,Os等と一部置換することによって、Fe(Pt,X)なる強靱性−常磁性変態温度が上昇し、あるいは反強磁性となって、高温クリープ抵抗を著しく高めることが明らかとなった。しかし、フェライト系耐熱鋼にあっては10.0%を超える多量添加ではその効果は飽和するのでその添加量を0.01%〜10.0%とする。
【0022】
PdとPtを同時に添加する場合には0.01%≦Pd+1/2Pt≦5.0%の範囲で所望の効果が得られる。
Ta:Taは、Nbと同様に窒化物および炭窒化物の形成により、微量添加でも鋼の強度および靱性を向上させる。ただし、0.30%を超えると、Taの効果は飽和するので、Ta含有量は0〜0.30%が適当である。
【0023】
Ti,Zr,Hf:Ti,Zr,Hfは、Nb、Taよりさらに強力な窒化物および炭窒化物の形成元素であり、微量添加でも鋼の強度および靱性を向上させる。さらに、粒界強化にも寄与し、高温クリープ抵抗を向上させる。ただし、それぞれ0.15%、0.30%、0.60%を超えると、その効果は飽和するので、それぞれの含有量は、Ti:0〜0.15%、Zr:0〜0.30%、Hf:0〜0.60%が適当である。
【0024】
Ag:この発明のフェライト系耐熱鋼にあっては主にL10 型あるいはL12 型規則構造を有する強磁性、あるいは反強磁性の金属間化合物相を均一分散析出させるのにPd,Ptが有効であるが、その一部をAgで置換可能である。その効果はAg:0〜1.0%で顕著であるが、多量添加は不要である。
P、S:PおよびSは、不可避の不純物として鋼中に含有され、熱間加工性、溶接部の靱性等に悪影響を及ぼす元素である。いずれも、含有量はできるだけ低い方がよい。P、Sの含有量は、それぞれ0.030%以下、0.015%以下が望ましい。
【0025】
O(酸素);Oは、不可避の不純物として鋼中に含有され、粗大な酸化物として偏在すると靱性等に悪影響を及ぼす元素である。特に、靱性を確保するためには、極力低い方がよい。O含有量0.020%以下の場合には、この発明のフェライト系耐熱鋼の靱性への影響は小さいので、上限は、0.020%とする。
なお、この発明のフェライト系耐熱鋼は、その化学組成から、質量%で、C:0.06〜0.18%、Si:0〜1.0%、Mn:0〜1.5%、P:0.030%以下、S:0.015%以下、Cr:8.0〜13.0%、W:0〜4.0%、Mo:0〜2.0%(但し、W+2Mo≦4.0%)、Nb:0.030〜0.14%、V:0.10〜0.50%、N:0〜0.10%、B:0〜0.030%、O:0.010%以下、sol.Al:0〜0.050%含有し、さらにPdおよびPtの少なくとも1種を合計で0.3〜5.0%含有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有するフェライト系耐熱鋼を除く。
また、この発明のフェライト系耐熱鋼は、その化学組成から、質量%で、C:0.06〜0.18%、Si:1.0%以下、Mn:0〜1.5%、P:0.030%以下、S:0.015%以下、Cr:8.0〜15.0%、W:0超〜4.0%、Mo:0〜2.0%(但し、W+2Mo≦4.0%)、Ta:0〜0.30%、Hf:0〜0.60%、N:0.10%以下、B:0〜0.03%、O:0.010%以下、sol.Al:0.050%以下を含有し、さらにPd:0〜5.0%およびPt:0〜10.0%の少なくとも1種を0.1≦Pd+1/2Pt≦5.0%の範囲で含有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有するフェライト系耐熱鋼も除く。
そして、この発明のフェライト系耐熱鋼は、通常工業的に用いられている製造設備および製造プロセスによって製造することができる。所要の化学組成の鋼を得るには、電気炉、転炉などの炉によって精錬し、脱酸剤および合金元素の添加によって成分調整すればよい。特に、厳密な成分調整を必要とする場合には、合金元素を添加する前に、溶鋼に真空処理を施す方法を採ってもよい。
【0026】
所定の化学組成に調整された溶鋼は、連続鋳造法または造塊法によって、スラブ、ビレットまたは鋼塊に鋳造される。これらのスラブ、鋼塊などから、鋼管、鋼板などを製造する。継ぎ目無し鋼管を製造する場合には、例えば、ビレットを押し出し、あるいは鍛造によって製管すればよい。また、鋼板を製造する場合には、スラブを熱間圧延することによって熱延鋼板を得ることができる。冷延鋼板を製造する場合には、熱延鋼板をさらに冷間圧延すればよい。なお、得られた鋼管、鋼板については、必要に応じて焼鈍等の熱処理を施し、所定の特性に調整する。また、熱間加工後、冷間圧延等の冷間加工を行う場合には、通常冷間加工に先だって、焼鈍および酸洗処理を施す。
【0027】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。もちろん、以下の実施例によってこの出願の発明が限定されることはない。
【0028】
【実施例】
<A>表1に性能試験に用いた供試材としての従来鋼と本発明鋼の化学組成を示した。なお、表中で、No.1,2は従来の高Crフェライト鋼(従来鋼)であり、No.1はASTM−A213−T91、No.2はDIN−X20CrMoWV121に規定されている化学組成の供試材である。
【0029】
【表1】
Figure 0004465490
【0030】
各供試材の製造方法は次のとおりである。すなわち、まず、容量10Kgの真空高周波誘導炉によって原料を溶解し、所定の化学組成に成分調整した後、直径70mmの鋼塊に鋳造した。得られたインゴットを温度1250℃〜1000℃で熱間鍛造して、45mm角、長さ400mmの供試材を作製した。その後熱間圧延にて1100℃から900℃にて、15mm角の試験材を得た。各試験材に対しては、次の熱処理を行った。No.1およびNo.2の供試材に対しては、通常、これらの鋼に施される950℃で1時間保持後、空冷の焼きならし処理と、さらに750℃で1時間保持後、空冷の焼きもどし処理を施した。その他の供試材に対しては、1100℃で1時間保持後、空冷の焼きならし処理と、さらに800℃で1時間保持後、空冷の焼きもどし処理を施した。これらから、鋼の水蒸気酸化性、および高温クリープ強度の試験片を採取した。
【0031】
<B>上記の試験片を用いて、耐水蒸気酸化性、高温クリープ強度の評価を行った。そのための方法は下記の通りとした。
〔耐水蒸気酸化性〕
耐水蒸気酸化性は、下記の試験条件による水蒸気酸化試験によって評価した。
試験環境:水蒸気雰囲気、温度650℃
保持時間:1000時間
測定項目:スケール層の厚さ
〔高温クリープ強度〕
高温クリープ強度は、下記の試験条件によるクリープ破断試験によって評価した。
【0032】
試験片:径8.0mm、標点距離40mm
試験温度:(1)650℃、(2)700℃
応 力:(1)120MPa、(2)120MPa
測定項目:クリープ破断時間
以上の試験の結果を表2に示した。
【0033】
【表2】
Figure 0004465490
【0034】
表2の高温クリープ特性をみると、本発明鋼の供試材は何れも、650℃、120MPaにおけるクリープ破断時間が3000時間以上、700℃、120MPaにおいてもクリープ破断時間は何れも200時間以上で、従来鋼や比較鋼に比べて、クリープ強度の向上が顕著である。特筆すべきは700℃の高温試験におけるクリープ破断時間の飛躍的な向上であり、これは従来鋼に比べて強磁性−常磁性の変態温度が高温化し、これに伴いマルテンサイト組織の回復・軟化が著しく抑制されていることを示すものである。
【0035】
また、耐水蒸気酸化性についも650℃×1000hの水蒸気酸化試験によるスケール層の厚さ測定結果から、本発明鋼においては全て20μm以下で、650℃以上の高温においても極めて安定な耐水蒸気酸化性が得られている。
一方、従来鋼の供試材No.1については、クリープ破断時間、水蒸気酸化スケール厚さともに本発明鋼よりも著しく劣り、特に700℃でのクリープ速度は極めて大きな値を示しており、クリープ強度は著しく劣っている。
【0036】
この結果から、本発明鋼は、650℃以上の高温においても耐水蒸気酸化性を低下することなく、650℃を超える高温クリープ強度が従来鋼に比べ飛躍的に向上していることが確認された。
<C>図1は、参考例の鋼(表1No.3)の700℃で1000時間時効材から採取した薄膜試験片の電界放射型電子顕微鏡写真である。写真の円盤状析出物は電子線回折像の同定の結果、Fe(Pd,X)タイプのL10 型金属間化合物であると判明した。
【0037】
電子顕微鏡内でエネルギー分散型X線分析により析出相の化学組成を定量したところ、図2のX線スペクトルが得られ、析出相はFe0.52(Pd0.21Mn0.21Cr0.06)であった。
同じ試料から非水溶媒(1%テトラメチルアンモニウムクロライド−10%アセチルアセトン−メタノール)を用いた電解抽出により、析出相を分離抽出し、振動試料型磁気特性測定装置で析出相の磁気変態温度を測定した結果を図3に示した。MnがPdを置換した析出相では室温〜660℃までは反強磁性、660℃〜780℃では強磁性を示すことが明らかとなり、FePd2元系の場合に比べて反強磁性の出現と、強磁性−常磁性変態温度Tmの高温化が顕著であることがわかった。
【0038】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明の耐熱鋼は、650℃を超える高温における長時間クリープ強度に優れ、しかも耐水蒸気酸化性の低下もない。したがって、この発明の耐熱鋼は、発電用ボイラー・タービン、原子力発電設備、化学工業装置など従来のフェライト鋼の使用限界温度と考えられていた650℃を超える高温、高圧下で操業される装置用材料、具体的には、熱鋼管用のボイラ関連鋼管あるいは圧力容器用の鋼板、タービン用材料等に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】LI0 型Fe(Pd,Mn)の電界放射型電子顕微鏡写真である。
【図2】電界放射型電子顕微鏡内にてエネルギー分散型X線分析により得られた析出相のX線スペクトルと析出物組成の定量結果を示した図である。
【図3】非水溶媒電解により抽出分離された析出物の温度−磁化曲線を示した図である。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.06〜0.18%、Si:0〜1.0%、P:0.030%以下,S:0.015%以下、Cr:8.0〜15.0%、W:0〜4.0%、Mo:0〜2.0%、但し、W+2Mo≦4.0% V:0〜0.50%、Nb:0〜0.15%、Ta:0〜0.30%、Ti:0〜0.15%、Zr:0〜0.30%、Hf:0〜0.60%、N:0〜0.10%、B:0〜0.030%、Ag:0〜1.0%、O:0.010%以下、sol.Al:0.050%以下含有するとともに、Pd:0.01〜5.0%、Pt:0.01〜10.0%の少なくとも1種を0.01%≦Pd+1/2Pt≦5.0%の範囲で含有し、さらにMn、Re、Ru、Osの少なくとも1種を合計で0.01%≦Mn+1/2Re+Ru+1/2Os≦5.0%含有している残部:Feおよび不可避の不純物からなる化学組成を有するフェライトあるいは焼き戻しマルテンサイト組織を有するフェライト系耐熱鋼であって、組織粒内に強磁性あるいは反強磁性を示す金属間化合物相が均一析出されていることを特徴とする高温長時間クリープ強度を有する析出硬化型フェライト系耐熱鋼(但し、質量%で、C:0.06〜0.18%、Si:0〜1.0%、Mn:0〜1.5%、P:0.030%以下、S:0.015%以下、Cr:8.0〜13.0%、W:0〜4.0%、Mo:0〜2.0%(但し、W+2Mo≦4.0%)、Nb:0.030〜0.14%、V:0.10〜0.50%、N:0〜0.10%、B:0〜0.030%、O:0.010%以下、sol.Al:0〜0.050%含有し、さらにPdおよびPtの少なくとも1種を合計で0.3〜5.0%含有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有するフェライト系耐熱鋼、および、質量%で、C:0.06〜0.18%、Si:1.0%以下、Mn:0〜1.5%、P:0.030%以下、S:0.015%以下、Cr:8.0〜15.0%、W:0超〜4.0%、Mo:0〜2.0%(但し、W+2Mo≦4.0%)、Ta:0〜0.30%、Hf:0〜0.60%、N:0.10%以下、B:0〜0.03%、O:0.010%以下、sol.Al:0.050%以下を含有し、さらにPd:0〜5.0%およびPt:0〜10.0%の少なくとも1種を0.1≦Pd+1/2Pt≦5.0%の範囲で含有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有するフェライト系耐熱鋼を除く)。
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