JP2000248341A - 析出硬化型フェライト系耐熱鋼 - Google Patents
析出硬化型フェライト系耐熱鋼Info
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Abstract
ープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼を提供する。 【解決手段】 フェライトあるいは焼き戻しマルテンサ
イト組織を有するフェライト系耐熱鋼であって、組織粒
内に強磁性あるいは反強磁性を示す金属間化合物相が均
一析出されている高温長時間クリープ強度を有する析出
硬化型フェライト系耐熱鋼とする。
Description
型フェライト系耐熱鋼に関するものである。さらに詳し
くは、この出願の発明は、650℃を超える高温におけ
る長時間クリープ強度に優れ、しかも耐水蒸気酸化性の
低下も少ない、発電用ボイラ・タービン、原子力発電設
備、化学工業装置など高温、高圧下で操業される装置用
材料のための熱交換用のボイラ関連鋼管あるいは圧力容
器用の鋼板、タービン用材料等として有用な、新しいフ
ェライト系耐熱鋼に関するものである。
イト鋼は、600℃を超える高温での長時間クリープ強
度が低いという問題がある。これは最終安定組織が、フ
ェライト母相+M 23C6 、あるいはM6 C+MX+La
ves相などの金属間化合物で、これら析出物による強
化機構が高温では低下することが主因である。
プ強度を高めるためには、マルテンサイトラス粒内を強
化する方法と、旧オーステナイト粒界、およびマルテン
サイトラス界面を強化する方法が考えられるが、これま
で粒内強化にはMX、粒界・ラス界面強化にはM
23C6 、Laves相等の金属間化合物の安定化が有効
と考えられ、種々の合金設計が為されてきた。しかしな
がら、実際には、高温クリープ抵抗を飛躍的に向上させ
る方法は得られていなかった。
従来技術の限界を克服し、650℃を超えるような高温
においても、長時間クリープ特性に優れた、新しい高C
rフェライト系耐熱鋼を提供することを課題としてい
る。
の課題を解決するものとして、第1には、フェライトあ
るいは焼き戻しマルテンサイト組織を有するフェライト
系耐熱鋼であって、組織粒内に強磁性あるいは反強磁性
を示す金属間化合物相が均一析出されていることを特徴
とする高温長時間クリープ強度を有する析出硬化型フェ
ライト系耐熱鋼を提供する。
含有量が重量%で、8.0〜15.0%であって、Pd
およびPtの少なくとも1種が合計重量%で0.01%
≦Pd+1/2Pt≦5.0%含有され、さらにMn,
Re,Ru,Osの少なくとも1種が合計重量%で0.
01%≦Mn+1/2Re+Ru+1/2Os≦5.0
%含有されている前記のフェライト系耐熱鋼を、第3に
は、重量%で、C:0.06〜0.18%。Si:0〜
1.0%、P:0.030%以下,S:0.015%以
下 Cr:8.0〜15.0%、W:0〜4.0%、Mo:
0〜2.0%、但しW+2Mo≦4.0% V:0〜0.50%、Nb:0〜0.15%、Ta:0
〜0.30%、Ti:0〜0.15%、Zr:0〜0.
30%、Hf:0〜0.60%、N:0〜0.10%、
B:0〜0.030%、Ag:0〜1.0%、O:0.
010%以下、sol.Al:0.050%以下を含有
し、さらにPd:0.01〜5.0%、Pt:0.01
〜10.0%、の少なくとも1種を0.01%≦Pd+
1/2Pt≦5.0%の範囲で含有し、さらにMn,R
e,Ru,Osの少なくとも1種が合計重量%で0.0
1%≦Mn+1/2Re+Ru+1/2Os≦5.0%
含有されている残部:Feおよび不可避の不純物からな
る化学組成を備えた前記のフェライト系耐熱鋼を提供す
る。
化の全く新しい方法として、L10型あるいはL12 型
規則構造を有する金属間化合物の微細析出が極めて有効
であることをすでに明らかにしたが、この出願の発明で
は、これまでの研究の過程で、FePd基L10 型金属
間化合物は本来Fe−Pd2元系では規則−不規則変態
温度Tcが650℃、強磁性変態温度Tmが490℃で
あるものが、PdをMn置換していくと、Tc、Tm何
れも上昇し、それに伴い高温でのクリープ抵抗が向上で
きることが明らかとなったことに基づいている。
いるが、通常高Crフェライト鋼ではMn量を10%程
度まで高めてもFeMnとしては析出しない。ところが
少量のPd,Pt等と共存させることによって、Fe
(X,Mn)(XはPd,Pt)なる金属間化合物相を
母相と整合性を有して微細分散析出することを見出し
た。この析出相は組成によって反強磁性、あるいは強磁
性を示し、FePdのTc,Tmを著しく高める。
析出相の磁性と高温クリープ抵抗との研究例はなく、こ
の出願の発明において、初めて強磁性、あるいは反強磁
性を示す析出物が、クリープ抵抗を飛躍的に向上させる
ことを明示することになる。さらにMnだけでなくR
e,Ru,Osについても同様な効果が期待できること
をもこの出願の発明は明らかにしているのである。
特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態につい
て説明する。まず、この出願の発明のフェライト系耐熱
鋼に含まれる各合金元素と鋼の特性との関係および各合
金元素の含有量の範囲とその限定理由について説明す
る。
してδ−フェライト相の抑制効果を有すると共に、鋼の
焼き入れ性を著しく高めてマルテンサイト相母相を形成
するのに用いられる元素である。さらにMC型炭化物
(MはV,Nb,Ta,Ti,Zr,Hf等の合金元
素、MX型炭窒化物(MはMCの場合に同じ、X;C、
N)の形態をとることもある)、M7 C3 型炭化物
(M;Cr,Fe,Mo,W等の合金元素)、M23C6
型炭化物(MはM7 C3 に同じ)、あるいはM6 C型炭
化物を形成する。これらの炭化物は、この発明の耐熱鋼
の特性に著しい影響を及ぼす。従来の高Crフェライト
鋼は、通常、焼きならしおよび焼きもどし処理によって
焼きもどしマルテンサイト組織として使用される。63
0℃を超えるような高温下で長時間使用される場合に
は、MX等の微細な炭化物の析出が進行する。これらの
炭化物は、長時間クリープ強度を維持する働きをする。
この炭化物の効果を得るためには、0.06重量%(以
下、化学組成の%表示は重量%)以上のCが必要であ
る。一方、C含有量が0.18%を超えると、高温下で
使用される際、初期段階から炭化物の凝集と粗大化が起
こり、長時間のクリープ強度が低下する。したがって、
C含有量は0.06〜0.18%が適当である。
れる。この外、高温における耐水蒸気酸化性を向上させ
るのに有効な元素である。しかし、過剰な場合は、鋼の
靱性が低下するので、1%以下がよい。溶鋼が十分なA
l量で脱酸される場合には、特にSiを含む必要はな
い。 Mn,Re,Ru,Os:この発明の耐熱鋼において
は、これらの元素がPd,Ptの一部を置換することに
よって強磁性、あるいは反強磁性を示すFe(Pd,
X)(X;Mn,Re,Ru,Os)で代表される金属
間化合物相の析出が促進され、さらに強磁性変態温度が
高温側へ移行する。その結果、耐熱鋼の高温クリープ抵
抗が飛躍的に向上する。その効果は微量でも明らかであ
るが、これらの含有量は0.01%≦Mn+1/2Re
+Ru+1/2Os≦5.0%とする。
熱鋼の高温における耐食性、耐酸化性、特に耐水蒸気酸
化性を確保するために、必要不可欠な元素である。Cr
を含有する場合には、鋼の表面にCr酸化物を主体とす
る緻密な酸化皮膜が形成される。この酸化皮膜が、この
発明のフェライト系耐熱鋼の高温における耐食性や耐酸
化性、特に耐水蒸気酸化性を向上させる。また、Cr
は、炭化物を形成してクリープ強度を向上させる働きを
持っている。これらの効果を得るためには、Cr含有量
8.0%以上が必要である。一方、15.0%を超える
と、δ−フェライトが生成しやすくなるので、靱性の低
下が起こる。したがって、、Cr含有量は8.0〜1
5.0%とする。
において、クリープ強度を高める上で有効な元素の1つ
である。Wは、固溶状態にあってはマルテンサイト相母
相を強化し、さらに鋼が高温下で使用される場合には、
Fe7 W6 型のμ相、あるいはFe2 W型のLaves
相などを主体とする金属間化合物を形成し、微細析出相
を通して、長時間クリープ強度を向上させる。また、W
はM23C6 等のCr炭化物中にも一部固溶し、炭化物の
凝集、粗大化を抑制する働きがあるので、この発明のフ
ェライト系耐熱鋼の高温における強度の維持にも有効な
元素である。Wのこの効果を得るためには、微量添加で
は固溶強化、1%を超える添加では析出強化が顕著とな
る。一方、4.0%を超えるとδ−フェライトが生成し
やすくなり、靱性が低下する。また、Mo(後述)と同
時に添加する場合はその含有量をW+2Mo≦4.0%
とするのが良い。さらに、他の強化元素で鋼が十分強化
されている場合はWを含有させなくても良い。
化、1%超では析出強化に寄与し、クリープ強度を高め
るが、析出強化の寄与する温度範囲はWに比べて低温側
(600℃以下)で顕著である。またMoを含むM23C
6 、あるいはM7 C3 型炭化物は、高温で安定であるた
めに、長時間クリープ強度の確保に対して有効な元素で
ある。一方、2.0%を超えるとδ−フェライトが生成
しやすくなり、靱性が低下する。また、W(前述)と同
時に添加する場合はその含有量をW+2Mo≦4.0%
の範囲とする。さらに、他の強化元素で鋼が十分強化さ
れている場合はMoを含有させなくても良い。
ープ強度の向上に寄与する元素である。Vの効果は、含
有量0.10%以上で現れる。一方、含有量が0.50
%を超えると、その効果は飽和するので、V含有量は
0.10〜0.50%とする。 Nb:Nbは、窒化物および炭窒化物の形成により、鋼
の強度および靱性を向上させる。その効果を得るには、
Nb含有量0.03%以上を必要とする。ただし、0.
14%を超えると、Nbの効果は飽和するので、Nb含
有量は、0.03〜0.14%が適当である。
成元素としてδ−フェライト相の抑制効果を有すると共
に、鋼の焼き入れ性を高めてマルテンサイト相を形成す
る元素である。さらにMX型炭窒化物を形成し、この発
明のフェライト系耐熱鋼の特性に著しい影響を及ぼす
が、所望の性能に応じてCとNの添加割合を制御するの
が重要である。すなわち、この発明のフェライト系耐熱
鋼においては、CおよびPd,Pt等によりδ−フェラ
イト相を十分抑制可能であり、かつ650℃を超える高
温におけるクリープ強度を重視する場合にはNの多量添
加は特に必要ない。一方、焼き入れ性を十分高めてδ−
フェライト相を抑制することを重視する場合にはNを添
加するのが良い。その場合にも多量添加による窒化物の
粗大化が進行すると、靱性の低下が著しくなるので、N
含有量は0〜0.10%とする。
23C6 型等の炭化物が微細に分散析出し凝集粗大化が抑
制されるため、高温長時間クリープ強度が向上する。ま
た、厚肉材などで熱処理後の冷却速度が遅い場合には、
焼き入れ性を高めて高温強度を向上させる働きがある。
この発明のフェライト系耐熱鋼では、Bを含有しなくて
もよいが、高温強度を高める目的で含有させてもよい。
Bの効果は、0.0005%以上で顕著となるので、含
有させる場合は0.0005%以上とするのが望まし
い。しかし、0.030%を超えると粗大な析出物を形
成し、靱性を低下させるので、その上限は0.030%
とする。
剤として添加される。鋼中には、酸化物としてのAl
と、酸化物以外の形態で存在するAlがあり、通常後者
のAlは分析上、塩酸可溶Al(sol.Al)として
区別されている。脱酸効果を得るためには、sol.A
l含有量として0.001%以上が必要である。一方、
0.050%を超えるとクリープ強度の低下を招く。ま
た、他の方法によって溶鋼を脱酸可能であれば、Alを
添加しなくても良い。したがって、sol.Al含有量
は、0.050%以下とする。
っては主にL10 型あるいはL12型規則構造を有する
強磁性の金属間化合物の均一分散析出を促進する元素で
ある。その効果はPdの場合、重量%で0.01%以上
で顕著となる。Pdは従来から鋼に含有させるとA1 変
態点を著しく低下させると考えられていたが、Mo,W
を含有する高Crフェライト鋼ではA1 変態点の低下を
ほとんどなく、またNiのような炭窒化物の凝集粗大化
の助長作用もないことが明らかとなった。その結果65
0℃を超える温度において長時間クリープ強度を低下さ
せないことが明らかとなった。さらにMn,Re,R
u,Os等と一部置換することによって、Fe(Pd,
X)なる強磁性−常磁性変態温度が上昇し、あるいは反
強磁性となって、高温クリープ抵抗を著しく高めること
が明らかとなった。しかし、フェライト系耐熱鋼にあっ
ては5%を超える多量添加ではその効果は飽和するので
その添加量を0.01%〜5%とする。
るいはL12 型規則構造を有する金属間化合物の均一分
散析出を促進する元素である。母相と析出相の整合歪み
の違いから、クリープ抵抗性を高める効果はPdの場合
よりも大きくなる。その効果は重量%で0.01%以上
で顕著となる。Ptについても従来から鋼に含有させる
とA1 変態点を著しく低下させると考えられていたが、
Mo,Wを含有する高Crフェライト鋼ではA1 変態点
の低下は顕著でなく、またNiのような炭窒化物の凝集
粗大化の助長作用も全くないことが明らかとなった。そ
の結果650℃を超える温度においても長時間クリープ
強度を低下させないことが明らかとなった。さらにM
n,Re,Ru,Os等と一部置換することによって、
Fe(Pt,X)なる強靱性−常磁性変態温度が上昇
し、あるいは反強磁性となって、高温クリープ抵抗を著
しく高めることが明らかとなった。しかし、フェライト
系耐熱鋼にあっては5%を超える多量添加ではその効果
は飽和するのでその添加量を0.01%〜5%とする。
01%≦Pd+1/2Pt≦5.0%の範囲で所望の効
果が得られる。 Ta:Taは、Nbと同様に窒化物および炭窒化物の形
成により、微量添加でも鋼の強度および靱性を向上させ
る。ただし、0.30%を超えると、Taの効果は飽和
するので、Ta含有量は0〜0.30%が適当である。
Nb、Taよりさらに強力な窒化物および炭窒化物の形
成元素であり、微量添加でも鋼の強度および靱性を向上
させる。さらに、粒界強化にも寄与し、高温クリープ抵
抗を向上させる。ただし、それぞれ0.15%、0.3
0%、0.60%を超えると、その効果は飽和するの
で、それぞれの含有量は、Ti:0〜0.15%、Z
r:0〜0.30%、Hf:0〜0.60%が適当であ
る。
っては主にL10 型あるいはL12型規則構造を有する
強磁性、あるいは反強磁性の金属間化合物相を均一分散
析出させるのにPd,Ptが有効であるが、その一部を
Agで置換可能である。その効果はAg:0〜1.0%
で顕著であるが、多量添加は不要である。 P、S:PおよびSは、不可避の不純物として鋼中に含
有され、熱間加工性、溶接部の靱性等に悪影響を及ぼす
元素である。いずれも、含有量はできるだけ低い方がよ
い。P、Sの含有量は、それぞれ0.030%以下、
0.015%以下が望ましい。
鋼中に含有され、粗大な酸化物として偏在すると靱性等
に悪影響を及ぼす元素である。特に、靱性を確保するた
めには、極力低い方がよい。O含有量0.020%以下
の場合には、この発明のフェライト系耐熱鋼の靱性への
影響は小さいので、上限は、0.020%とする。そし
て、この発明のフェライト系耐熱鋼は、通常工業的に用
いられている製造設備および製造プロセスによって製造
することができる。所要の化学組成の鋼を得るには、電
気炉、転炉などの炉によって精錬し、脱酸剤および合金
元素の添加によって成分調整すればよい。特に、厳密な
成分調整を必要とする場合には、合金元素を添加する前
に、溶鋼に真空処理を施す方法を採ってもよい。
鋳造法または造塊法によって、スラブ、ビレットまたは
鋼塊に鋳造される。これらのスラブ、鋼塊などから、鋼
管、鋼板などを製造する。継ぎ目無し鋼管を製造する場
合には、例えば、ビレットを押し出し、あるいは鍛造に
よって製管すればよい。また、鋼板を製造する場合に
は、スラブを熱間圧延することによって熱延鋼板を得る
ことができる。冷延鋼板を製造する場合には、熱延鋼板
をさらに冷間圧延すればよい。なお、得られた鋼管、鋼
板については、必要に応じて焼鈍等の熱処理を施し、所
定の特性に調整する。また、熱間加工後、冷間圧延等の
冷間加工を行う場合には、通常冷間加工に先だって、焼
鈍および酸洗処理を施す。
この出願の発明について説明する。もちろん、以下の実
施例によってこの出願の発明が限定されることはない。
の従来鋼と本発明鋼の化学組成を示した。なお、表中
で、No.1,2は従来の高Crフェライト鋼(従来
鋼)であり、No.1はASTM−A213−T91、
No.2はDIN−X20CrMoWV121に規定さ
れている化学組成の供試材である。
すなわち、まず、容量10Kgの真空高周波誘導炉によ
って原料を溶解し、所定の化学組成に成分調整した後、
直径70mmの鋼塊に鋳造した。得られたインゴットを
温度1250℃〜1000℃で熱間鍛造して、45mm
角、長さ400mmの供試材を作製した。その後熱間圧
延にて1100℃から900℃にて、15mm角の試験
材を得た。各試験材に対しては、次の熱処理を行った。
No.1およびNo.2の供試材に対しては、通常、こ
れらの鋼に施される950℃で1時間保持後、空冷の焼
きならし処理と、さらに750℃で1時間保持後、空冷
の焼きもどし処理を施した。その他の供試材に対して
は、1100℃で1時間保持後、空冷の焼きならし処理
と、さらに800℃で1時間保持後、空冷の焼きもどし
処理を施した。これらから、鋼の水蒸気酸化性、および
高温クリープ強度の試験片を採取した。
化性、高温クリープ強度の評価を行った。そのための方
法は下記の通りとした。 〔耐水蒸気酸化性〕耐水蒸気酸化性は、下記の試験条件
による水蒸気酸化試験によって評価した。 試験環境:水蒸気雰囲気、温度650℃ 保持時間:1000時間 測定項目:スケール層の厚さ 〔高温クリープ強度〕高温クリープ強度は、下記の試験
条件によるクリープ破断試験によって評価した。
鋼の供試材は何れも、650℃、120MPaにおける
クリープ破断時間が3000時間以上、700℃、12
0MPaにおいてもクリープ破断時間は何れも200時
間以上で、従来鋼や比較鋼に比べて、クリープ強度の向
上が顕著である。特筆すべきは700℃の高温試験にお
けるクリープ破断時間の飛躍的な向上であり、これは従
来鋼に比べて強磁性−常磁性の変態温度が高温化し、こ
れに伴いマルテンサイト組織の回復・軟化が著しく抑制
されていることを示すものである。
1000hの水蒸気酸化試験によるスケール層の厚さ測
定結果から、本発明鋼においては全て20μm以下で、
650℃以上の高温においても極めて安定な耐水蒸気酸
化性が得られている。一方、従来鋼の供試材No.1に
ついては、クリープ破断時間、水蒸気酸化スケール厚さ
ともに本発明鋼よりも著しく劣り、特に700℃でのク
リープ速度は極めて大きな値を示しており、クリープ強
度は著しく劣っている。
の高温においても耐水蒸気酸化性を低下することなく、
650℃を超える高温クリープ強度が従来鋼に比べ飛躍
的に向上していることが確認された。 <C>図1は、本発明鋼(表1No.3)の700℃で
1000時間時効材から採取した薄膜試験片の電界放射
型電子顕微鏡写真である。写真の円盤状析出物は電子線
回折像の同定の結果、Fe(Pd,X)タイプのL10
型金属間化合物であると判明した。
により析出相の化学組成を定量したところ、図2のX線
スペクトルが得られ、析出相はFe0.52(Pd0.21Mn
0.21Cr0.06)であった。同じ試料から非水溶媒(1%
テトラメチルアンモニウムクロライド−10%アセチル
アセトン−メタノール)を用いた電解抽出により、析出
相を分離抽出し、振動試料型磁気特性測定装置で析出相
の磁気変態温度を測定した結果を図3に示した。Mnが
Pdを置換した析出相では室温〜660℃までは反強磁
性、660℃〜780℃では強磁性を示すことが明らか
となり、FePd2元系の場合に比べて反強磁性の出現
と、強磁性−常磁性変態温度Tmの高温化が顕著である
ことがわかった。
発明の耐熱鋼は、650℃を超える高温における長時間
クリープ強度に優れ、しかも耐水蒸気酸化性の低下もな
い。したがって、この発明の耐熱鋼は、発電用ボイラー
・タービン、原子力発電設備、化学工業装置など従来の
フェライト鋼の使用限界温度と考えられていた650℃
を超える高温、高圧下で操業される装置用材料、具体的
には、熱鋼管用のボイラ関連鋼管あるいは圧力容器用の
鋼板、タービン用材料等に適している。
顕微鏡写真である。
X線分析により得られた析出相のX線スペクトルと析出
物組成の定量結果を示した図である。
度−磁化曲線を示した図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 フェライトあるいは焼き戻しマルテンサ
イト組織を有するフェライト系耐熱鋼であって、組織粒
内に強磁性あるいは反強磁性を示す金属間化合物相が均
一析出されていることを特徴とする高温長時間クリープ
強度を有する析出硬化型フェライト系耐熱鋼。 - 【請求項2】 Cr含有量が重量%で、8.0〜15.
0%であって、PdおよびPtの少なくとも1種が合計
重量%で0.01%≦Pd+1/2Pt≦5.0%含有
され、 さらにMn,Re,Ru、Osの少なくとも1種が合計
重量%で0.01%≦Mn+1/2Re+Ru+1/2
Os≦5.0%含有されている請求項1のフェライト系
耐熱鋼。 - 【請求項3】 重量%で、C:0.06〜0.18%。
Si:0〜1.0%、P:0.030%以下,S:0.
015%以下 Cr:8.0〜15.0%、W:0〜4.0%、Mo:
0〜2.0%、但しW+2Mo≦4.0% V:0〜0.50%、Nb:0〜0.15%、Ta:0
〜0.30%、Ti:0〜0.15%、Zr:0〜0.
30%、Hf:0〜0.60%、N:0〜0.10%、
B:0〜0.030%、Ag:0〜1.0%、O:0.
010%以下、sol.Al:0.050%以下を含有
し、さらにPd:0.01〜5.0%、Pt:0.01
〜10.0%、の少なくとも1種を0.01%≦Pd+
1/2Pt≦5.0%の範囲で含有し、さらにMn,R
e,Ru,Osの少なくとも1種が合計重量%で0.0
1%≦Mn+1/2Re+Ru+1/2Os≦5.0%
含有されている残部:Feおよび不可避の不純物からな
る化学組成を備えた請求項1のフェライト系耐熱鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP05200599A JP4465490B2 (ja) | 1999-02-26 | 1999-02-26 | 析出硬化型フェライト系耐熱鋼 |
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JP05200599A JP4465490B2 (ja) | 1999-02-26 | 1999-02-26 | 析出硬化型フェライト系耐熱鋼 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP (1) | JP4465490B2 (ja) |
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JPWO2017154727A1 (ja) * | 2016-03-11 | 2018-03-15 | Jfeスチール株式会社 | 高強度薄鋼板およびその製造方法 |
CN115976426A (zh) * | 2023-01-29 | 2023-04-18 | 襄阳金耐特机械股份有限公司 | 一种高强韧马氏体耐热钢 |
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