JP2000248341A - 析出硬化型フェライト系耐熱鋼 - Google Patents

析出硬化型フェライト系耐熱鋼

Info

Publication number
JP2000248341A
JP2000248341A JP11052005A JP5200599A JP2000248341A JP 2000248341 A JP2000248341 A JP 2000248341A JP 11052005 A JP11052005 A JP 11052005A JP 5200599 A JP5200599 A JP 5200599A JP 2000248341 A JP2000248341 A JP 2000248341A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel
creep
heat
temperature
ferritic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP11052005A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4465490B2 (ja
Inventor
Masaaki Igarashi
正晃 五十嵐
Masaichi Muneki
政一 宗木
Fujio Abe
冨士雄 阿部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Research Institute for Metals
Nippon Steel Corp
Original Assignee
National Research Institute for Metals
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Research Institute for Metals, Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical National Research Institute for Metals
Priority to JP05200599A priority Critical patent/JP4465490B2/ja
Publication of JP2000248341A publication Critical patent/JP2000248341A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4465490B2 publication Critical patent/JP4465490B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 650℃を超える高温においても長時間クリ
ープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼を提供する。 【解決手段】 フェライトあるいは焼き戻しマルテンサ
イト組織を有するフェライト系耐熱鋼であって、組織粒
内に強磁性あるいは反強磁性を示す金属間化合物相が均
一析出されている高温長時間クリープ強度を有する析出
硬化型フェライト系耐熱鋼とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、析出硬化
型フェライト系耐熱鋼に関するものである。さらに詳し
くは、この出願の発明は、650℃を超える高温におけ
る長時間クリープ強度に優れ、しかも耐水蒸気酸化性の
低下も少ない、発電用ボイラ・タービン、原子力発電設
備、化学工業装置など高温、高圧下で操業される装置用
材料のための熱交換用のボイラ関連鋼管あるいは圧力容
器用の鋼板、タービン用材料等として有用な、新しいフ
ェライト系耐熱鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来のボイラ用高Crフェラ
イト鋼は、600℃を超える高温での長時間クリープ強
度が低いという問題がある。これは最終安定組織が、フ
ェライト母相+M 236 、あるいはM6 C+MX+La
ves相などの金属間化合物で、これら析出物による強
化機構が高温では低下することが主因である。
【0003】上記の組織を有するフェライト鋼のクリー
プ強度を高めるためには、マルテンサイトラス粒内を強
化する方法と、旧オーステナイト粒界、およびマルテン
サイトラス界面を強化する方法が考えられるが、これま
で粒内強化にはMX、粒界・ラス界面強化にはM
236 、Laves相等の金属間化合物の安定化が有効
と考えられ、種々の合金設計が為されてきた。しかしな
がら、実際には、高温クリープ抵抗を飛躍的に向上させ
る方法は得られていなかった。
【0004】そこでこの出願の発明は、以上のとおりの
従来技術の限界を克服し、650℃を超えるような高温
においても、長時間クリープ特性に優れた、新しい高C
rフェライト系耐熱鋼を提供することを課題としてい
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、第1には、フェライトあ
るいは焼き戻しマルテンサイト組織を有するフェライト
系耐熱鋼であって、組織粒内に強磁性あるいは反強磁性
を示す金属間化合物相が均一析出されていることを特徴
とする高温長時間クリープ強度を有する析出硬化型フェ
ライト系耐熱鋼を提供する。
【0006】また、この出願の発明は、第2には、Cr
含有量が重量%で、8.0〜15.0%であって、Pd
およびPtの少なくとも1種が合計重量%で0.01%
≦Pd+1/2Pt≦5.0%含有され、さらにMn,
Re,Ru,Osの少なくとも1種が合計重量%で0.
01%≦Mn+1/2Re+Ru+1/2Os≦5.0
%含有されている前記のフェライト系耐熱鋼を、第3に
は、重量%で、C:0.06〜0.18%。Si:0〜
1.0%、P:0.030%以下,S:0.015%以
下 Cr:8.0〜15.0%、W:0〜4.0%、Mo:
0〜2.0%、但しW+2Mo≦4.0% V:0〜0.50%、Nb:0〜0.15%、Ta:0
〜0.30%、Ti:0〜0.15%、Zr:0〜0.
30%、Hf:0〜0.60%、N:0〜0.10%、
B:0〜0.030%、Ag:0〜1.0%、O:0.
010%以下、sol.Al:0.050%以下を含有
し、さらにPd:0.01〜5.0%、Pt:0.01
〜10.0%、の少なくとも1種を0.01%≦Pd+
1/2Pt≦5.0%の範囲で含有し、さらにMn,R
e,Ru,Osの少なくとも1種が合計重量%で0.0
1%≦Mn+1/2Re+Ru+1/2Os≦5.0%
含有されている残部:Feおよび不可避の不純物からな
る化学組成を備えた前記のフェライト系耐熱鋼を提供す
る。
【0007】すなわち、この出願の発明者らは、粒内強
化の全く新しい方法として、L10型あるいはL12
規則構造を有する金属間化合物の微細析出が極めて有効
であることをすでに明らかにしたが、この出願の発明で
は、これまでの研究の過程で、FePd基L10 型金属
間化合物は本来Fe−Pd2元系では規則−不規則変態
温度Tcが650℃、強磁性変態温度Tmが490℃で
あるものが、PdをMn置換していくと、Tc、Tm何
れも上昇し、それに伴い高温でのクリープ抵抗が向上で
きることが明らかとなったことに基づいている。
【0008】FeMnは反強磁性を示すことが知られて
いるが、通常高Crフェライト鋼ではMn量を10%程
度まで高めてもFeMnとしては析出しない。ところが
少量のPd,Pt等と共存させることによって、Fe
(X,Mn)(XはPd,Pt)なる金属間化合物相を
母相と整合性を有して微細分散析出することを見出し
た。この析出相は組成によって反強磁性、あるいは強磁
性を示し、FePdのTc,Tmを著しく高める。
【0009】高Crフェライト鋼においては、これまで
析出相の磁性と高温クリープ抵抗との研究例はなく、こ
の出願の発明において、初めて強磁性、あるいは反強磁
性を示す析出物が、クリープ抵抗を飛躍的に向上させる
ことを明示することになる。さらにMnだけでなくR
e,Ru,Osについても同様な効果が期待できること
をもこの出願の発明は明らかにしているのである。
【0010】
【発明の実施の形態】この出願の発明は以上のとおりの
特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態につい
て説明する。まず、この出願の発明のフェライト系耐熱
鋼に含まれる各合金元素と鋼の特性との関係および各合
金元素の含有量の範囲とその限定理由について説明す
る。
【0011】C:Cは重要なオーステナイト生成元素と
してδ−フェライト相の抑制効果を有すると共に、鋼の
焼き入れ性を著しく高めてマルテンサイト相母相を形成
するのに用いられる元素である。さらにMC型炭化物
(MはV,Nb,Ta,Ti,Zr,Hf等の合金元
素、MX型炭窒化物(MはMCの場合に同じ、X;C、
N)の形態をとることもある)、M7 3 型炭化物
(M;Cr,Fe,Mo,W等の合金元素)、M236
型炭化物(MはM7 3 に同じ)、あるいはM6 C型炭
化物を形成する。これらの炭化物は、この発明の耐熱鋼
の特性に著しい影響を及ぼす。従来の高Crフェライト
鋼は、通常、焼きならしおよび焼きもどし処理によって
焼きもどしマルテンサイト組織として使用される。63
0℃を超えるような高温下で長時間使用される場合に
は、MX等の微細な炭化物の析出が進行する。これらの
炭化物は、長時間クリープ強度を維持する働きをする。
この炭化物の効果を得るためには、0.06重量%(以
下、化学組成の%表示は重量%)以上のCが必要であ
る。一方、C含有量が0.18%を超えると、高温下で
使用される際、初期段階から炭化物の凝集と粗大化が起
こり、長時間のクリープ強度が低下する。したがって、
C含有量は0.06〜0.18%が適当である。
【0012】Si:Siは、溶鋼の脱酸剤として用いら
れる。この外、高温における耐水蒸気酸化性を向上させ
るのに有効な元素である。しかし、過剰な場合は、鋼の
靱性が低下するので、1%以下がよい。溶鋼が十分なA
l量で脱酸される場合には、特にSiを含む必要はな
い。 Mn,Re,Ru,Os:この発明の耐熱鋼において
は、これらの元素がPd,Ptの一部を置換することに
よって強磁性、あるいは反強磁性を示すFe(Pd,
X)(X;Mn,Re,Ru,Os)で代表される金属
間化合物相の析出が促進され、さらに強磁性変態温度が
高温側へ移行する。その結果、耐熱鋼の高温クリープ抵
抗が飛躍的に向上する。その効果は微量でも明らかであ
るが、これらの含有量は0.01%≦Mn+1/2Re
+Ru+1/2Os≦5.0%とする。
【0013】Cr:Crは、この発明のフェライト系耐
熱鋼の高温における耐食性、耐酸化性、特に耐水蒸気酸
化性を確保するために、必要不可欠な元素である。Cr
を含有する場合には、鋼の表面にCr酸化物を主体とす
る緻密な酸化皮膜が形成される。この酸化皮膜が、この
発明のフェライト系耐熱鋼の高温における耐食性や耐酸
化性、特に耐水蒸気酸化性を向上させる。また、Cr
は、炭化物を形成してクリープ強度を向上させる働きを
持っている。これらの効果を得るためには、Cr含有量
8.0%以上が必要である。一方、15.0%を超える
と、δ−フェライトが生成しやすくなるので、靱性の低
下が起こる。したがって、、Cr含有量は8.0〜1
5.0%とする。
【0014】W:Wは、この発明のフェライト系耐熱鋼
において、クリープ強度を高める上で有効な元素の1つ
である。Wは、固溶状態にあってはマルテンサイト相母
相を強化し、さらに鋼が高温下で使用される場合には、
Fe7 6 型のμ相、あるいはFe2 W型のLaves
相などを主体とする金属間化合物を形成し、微細析出相
を通して、長時間クリープ強度を向上させる。また、W
はM236 等のCr炭化物中にも一部固溶し、炭化物の
凝集、粗大化を抑制する働きがあるので、この発明のフ
ェライト系耐熱鋼の高温における強度の維持にも有効な
元素である。Wのこの効果を得るためには、微量添加で
は固溶強化、1%を超える添加では析出強化が顕著とな
る。一方、4.0%を超えるとδ−フェライトが生成し
やすくなり、靱性が低下する。また、Mo(後述)と同
時に添加する場合はその含有量をW+2Mo≦4.0%
とするのが良い。さらに、他の強化元素で鋼が十分強化
されている場合はWを含有させなくても良い。
【0015】Mo:Moは、Wと同様に微量では固溶強
化、1%超では析出強化に寄与し、クリープ強度を高め
るが、析出強化の寄与する温度範囲はWに比べて低温側
(600℃以下)で顕著である。またMoを含むM23
6 、あるいはM7 3 型炭化物は、高温で安定であるた
めに、長時間クリープ強度の確保に対して有効な元素で
ある。一方、2.0%を超えるとδ−フェライトが生成
しやすくなり、靱性が低下する。また、W(前述)と同
時に添加する場合はその含有量をW+2Mo≦4.0%
の範囲とする。さらに、他の強化元素で鋼が十分強化さ
れている場合はMoを含有させなくても良い。
【0016】V:Vは、微細な炭窒化物を形成してクリ
ープ強度の向上に寄与する元素である。Vの効果は、含
有量0.10%以上で現れる。一方、含有量が0.50
%を超えると、その効果は飽和するので、V含有量は
0.10〜0.50%とする。 Nb:Nbは、窒化物および炭窒化物の形成により、鋼
の強度および靱性を向上させる。その効果を得るには、
Nb含有量0.03%以上を必要とする。ただし、0.
14%を超えると、Nbの効果は飽和するので、Nb含
有量は、0.03〜0.14%が適当である。
【0017】N:NはC同様に重要なオーステナイト生
成元素としてδ−フェライト相の抑制効果を有すると共
に、鋼の焼き入れ性を高めてマルテンサイト相を形成す
る元素である。さらにMX型炭窒化物を形成し、この発
明のフェライト系耐熱鋼の特性に著しい影響を及ぼす
が、所望の性能に応じてCとNの添加割合を制御するの
が重要である。すなわち、この発明のフェライト系耐熱
鋼においては、CおよびPd,Pt等によりδ−フェラ
イト相を十分抑制可能であり、かつ650℃を超える高
温におけるクリープ強度を重視する場合にはNの多量添
加は特に必要ない。一方、焼き入れ性を十分高めてδ−
フェライト相を抑制することを重視する場合にはNを添
加するのが良い。その場合にも多量添加による窒化物の
粗大化が進行すると、靱性の低下が著しくなるので、N
含有量は0〜0.10%とする。
【0018】B:Bが微量、鋼中に含まれると、主にM
236 型等の炭化物が微細に分散析出し凝集粗大化が抑
制されるため、高温長時間クリープ強度が向上する。ま
た、厚肉材などで熱処理後の冷却速度が遅い場合には、
焼き入れ性を高めて高温強度を向上させる働きがある。
この発明のフェライト系耐熱鋼では、Bを含有しなくて
もよいが、高温強度を高める目的で含有させてもよい。
Bの効果は、0.0005%以上で顕著となるので、含
有させる場合は0.0005%以上とするのが望まし
い。しかし、0.030%を超えると粗大な析出物を形
成し、靱性を低下させるので、その上限は0.030%
とする。
【0019】sol.Al:Alは、おもに溶鋼の脱酸
剤として添加される。鋼中には、酸化物としてのAl
と、酸化物以外の形態で存在するAlがあり、通常後者
のAlは分析上、塩酸可溶Al(sol.Al)として
区別されている。脱酸効果を得るためには、sol.A
l含有量として0.001%以上が必要である。一方、
0.050%を超えるとクリープ強度の低下を招く。ま
た、他の方法によって溶鋼を脱酸可能であれば、Alを
添加しなくても良い。したがって、sol.Al含有量
は、0.050%以下とする。
【0020】Pd:この発明のフェライト系耐熱鋼にあ
っては主にL10 型あるいはL12型規則構造を有する
強磁性の金属間化合物の均一分散析出を促進する元素で
ある。その効果はPdの場合、重量%で0.01%以上
で顕著となる。Pdは従来から鋼に含有させるとA1
態点を著しく低下させると考えられていたが、Mo,W
を含有する高Crフェライト鋼ではA1 変態点の低下を
ほとんどなく、またNiのような炭窒化物の凝集粗大化
の助長作用もないことが明らかとなった。その結果65
0℃を超える温度において長時間クリープ強度を低下さ
せないことが明らかとなった。さらにMn,Re,R
u,Os等と一部置換することによって、Fe(Pd,
X)なる強磁性−常磁性変態温度が上昇し、あるいは反
強磁性となって、高温クリープ抵抗を著しく高めること
が明らかとなった。しかし、フェライト系耐熱鋼にあっ
ては5%を超える多量添加ではその効果は飽和するので
その添加量を0.01%〜5%とする。
【0021】Pt:PtはPdと同様に主にL10 型あ
るいはL12 型規則構造を有する金属間化合物の均一分
散析出を促進する元素である。母相と析出相の整合歪み
の違いから、クリープ抵抗性を高める効果はPdの場合
よりも大きくなる。その効果は重量%で0.01%以上
で顕著となる。Ptについても従来から鋼に含有させる
とA1 変態点を著しく低下させると考えられていたが、
Mo,Wを含有する高Crフェライト鋼ではA1 変態点
の低下は顕著でなく、またNiのような炭窒化物の凝集
粗大化の助長作用も全くないことが明らかとなった。そ
の結果650℃を超える温度においても長時間クリープ
強度を低下させないことが明らかとなった。さらにM
n,Re,Ru,Os等と一部置換することによって、
Fe(Pt,X)なる強靱性−常磁性変態温度が上昇
し、あるいは反強磁性となって、高温クリープ抵抗を著
しく高めることが明らかとなった。しかし、フェライト
系耐熱鋼にあっては5%を超える多量添加ではその効果
は飽和するのでその添加量を0.01%〜5%とする。
【0022】PdとPtを同時に添加する場合には0.
01%≦Pd+1/2Pt≦5.0%の範囲で所望の効
果が得られる。 Ta:Taは、Nbと同様に窒化物および炭窒化物の形
成により、微量添加でも鋼の強度および靱性を向上させ
る。ただし、0.30%を超えると、Taの効果は飽和
するので、Ta含有量は0〜0.30%が適当である。
【0023】Ti,Zr,Hf:Ti,Zr,Hfは、
Nb、Taよりさらに強力な窒化物および炭窒化物の形
成元素であり、微量添加でも鋼の強度および靱性を向上
させる。さらに、粒界強化にも寄与し、高温クリープ抵
抗を向上させる。ただし、それぞれ0.15%、0.3
0%、0.60%を超えると、その効果は飽和するの
で、それぞれの含有量は、Ti:0〜0.15%、Z
r:0〜0.30%、Hf:0〜0.60%が適当であ
る。
【0024】Ag:この発明のフェライト系耐熱鋼にあ
っては主にL10 型あるいはL12型規則構造を有する
強磁性、あるいは反強磁性の金属間化合物相を均一分散
析出させるのにPd,Ptが有効であるが、その一部を
Agで置換可能である。その効果はAg:0〜1.0%
で顕著であるが、多量添加は不要である。 P、S:PおよびSは、不可避の不純物として鋼中に含
有され、熱間加工性、溶接部の靱性等に悪影響を及ぼす
元素である。いずれも、含有量はできるだけ低い方がよ
い。P、Sの含有量は、それぞれ0.030%以下、
0.015%以下が望ましい。
【0025】O(酸素);Oは、不可避の不純物として
鋼中に含有され、粗大な酸化物として偏在すると靱性等
に悪影響を及ぼす元素である。特に、靱性を確保するた
めには、極力低い方がよい。O含有量0.020%以下
の場合には、この発明のフェライト系耐熱鋼の靱性への
影響は小さいので、上限は、0.020%とする。そし
て、この発明のフェライト系耐熱鋼は、通常工業的に用
いられている製造設備および製造プロセスによって製造
することができる。所要の化学組成の鋼を得るには、電
気炉、転炉などの炉によって精錬し、脱酸剤および合金
元素の添加によって成分調整すればよい。特に、厳密な
成分調整を必要とする場合には、合金元素を添加する前
に、溶鋼に真空処理を施す方法を採ってもよい。
【0026】所定の化学組成に調整された溶鋼は、連続
鋳造法または造塊法によって、スラブ、ビレットまたは
鋼塊に鋳造される。これらのスラブ、鋼塊などから、鋼
管、鋼板などを製造する。継ぎ目無し鋼管を製造する場
合には、例えば、ビレットを押し出し、あるいは鍛造に
よって製管すればよい。また、鋼板を製造する場合に
は、スラブを熱間圧延することによって熱延鋼板を得る
ことができる。冷延鋼板を製造する場合には、熱延鋼板
をさらに冷間圧延すればよい。なお、得られた鋼管、鋼
板については、必要に応じて焼鈍等の熱処理を施し、所
定の特性に調整する。また、熱間加工後、冷間圧延等の
冷間加工を行う場合には、通常冷間加工に先だって、焼
鈍および酸洗処理を施す。
【0027】そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく
この出願の発明について説明する。もちろん、以下の実
施例によってこの出願の発明が限定されることはない。
【0028】
【実施例】<A>表1に性能試験に用いた供試材として
の従来鋼と本発明鋼の化学組成を示した。なお、表中
で、No.1,2は従来の高Crフェライト鋼(従来
鋼)であり、No.1はASTM−A213−T91、
No.2はDIN−X20CrMoWV121に規定さ
れている化学組成の供試材である。
【0029】
【表1】
【0030】各供試材の製造方法は次のとおりである。
すなわち、まず、容量10Kgの真空高周波誘導炉によ
って原料を溶解し、所定の化学組成に成分調整した後、
直径70mmの鋼塊に鋳造した。得られたインゴットを
温度1250℃〜1000℃で熱間鍛造して、45mm
角、長さ400mmの供試材を作製した。その後熱間圧
延にて1100℃から900℃にて、15mm角の試験
材を得た。各試験材に対しては、次の熱処理を行った。
No.1およびNo.2の供試材に対しては、通常、こ
れらの鋼に施される950℃で1時間保持後、空冷の焼
きならし処理と、さらに750℃で1時間保持後、空冷
の焼きもどし処理を施した。その他の供試材に対して
は、1100℃で1時間保持後、空冷の焼きならし処理
と、さらに800℃で1時間保持後、空冷の焼きもどし
処理を施した。これらから、鋼の水蒸気酸化性、および
高温クリープ強度の試験片を採取した。
【0031】<B>上記の試験片を用いて、耐水蒸気酸
化性、高温クリープ強度の評価を行った。そのための方
法は下記の通りとした。 〔耐水蒸気酸化性〕耐水蒸気酸化性は、下記の試験条件
による水蒸気酸化試験によって評価した。 試験環境:水蒸気雰囲気、温度650℃ 保持時間:1000時間 測定項目:スケール層の厚さ 〔高温クリープ強度〕高温クリープ強度は、下記の試験
条件によるクリープ破断試験によって評価した。
【0032】 試験片:径8.0mm、標点距離40mm 試験温度:(1)650℃、(2)700℃ 応 力:(1)120MPa、(2)120MPa 測定項目:クリープ破断時間 以上の試験の結果を表2に示した。
【0033】
【表2】
【0034】表2の高温クリープ特性をみると、本発明
鋼の供試材は何れも、650℃、120MPaにおける
クリープ破断時間が3000時間以上、700℃、12
0MPaにおいてもクリープ破断時間は何れも200時
間以上で、従来鋼や比較鋼に比べて、クリープ強度の向
上が顕著である。特筆すべきは700℃の高温試験にお
けるクリープ破断時間の飛躍的な向上であり、これは従
来鋼に比べて強磁性−常磁性の変態温度が高温化し、こ
れに伴いマルテンサイト組織の回復・軟化が著しく抑制
されていることを示すものである。
【0035】また、耐水蒸気酸化性についも650℃×
1000hの水蒸気酸化試験によるスケール層の厚さ測
定結果から、本発明鋼においては全て20μm以下で、
650℃以上の高温においても極めて安定な耐水蒸気酸
化性が得られている。一方、従来鋼の供試材No.1に
ついては、クリープ破断時間、水蒸気酸化スケール厚さ
ともに本発明鋼よりも著しく劣り、特に700℃でのク
リープ速度は極めて大きな値を示しており、クリープ強
度は著しく劣っている。
【0036】この結果から、本発明鋼は、650℃以上
の高温においても耐水蒸気酸化性を低下することなく、
650℃を超える高温クリープ強度が従来鋼に比べ飛躍
的に向上していることが確認された。 <C>図1は、本発明鋼(表1No.3)の700℃で
1000時間時効材から採取した薄膜試験片の電界放射
型電子顕微鏡写真である。写真の円盤状析出物は電子線
回折像の同定の結果、Fe(Pd,X)タイプのL10
型金属間化合物であると判明した。
【0037】電子顕微鏡内でエネルギー分散型X線分析
により析出相の化学組成を定量したところ、図2のX線
スペクトルが得られ、析出相はFe0.52(Pd0.21Mn
0.21Cr0.06)であった。同じ試料から非水溶媒(1%
テトラメチルアンモニウムクロライド−10%アセチル
アセトン−メタノール)を用いた電解抽出により、析出
相を分離抽出し、振動試料型磁気特性測定装置で析出相
の磁気変態温度を測定した結果を図3に示した。Mnが
Pdを置換した析出相では室温〜660℃までは反強磁
性、660℃〜780℃では強磁性を示すことが明らか
となり、FePd2元系の場合に比べて反強磁性の出現
と、強磁性−常磁性変態温度Tmの高温化が顕著である
ことがわかった。
【0038】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この出願の
発明の耐熱鋼は、650℃を超える高温における長時間
クリープ強度に優れ、しかも耐水蒸気酸化性の低下もな
い。したがって、この発明の耐熱鋼は、発電用ボイラー
・タービン、原子力発電設備、化学工業装置など従来の
フェライト鋼の使用限界温度と考えられていた650℃
を超える高温、高圧下で操業される装置用材料、具体的
には、熱鋼管用のボイラ関連鋼管あるいは圧力容器用の
鋼板、タービン用材料等に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】LI0 型Fe(Pd,Mn)の電界放射型電子
顕微鏡写真である。
【図2】電界放射型電子顕微鏡内にてエネルギー分散型
X線分析により得られた析出相のX線スペクトルと析出
物組成の定量結果を示した図である。
【図3】非水溶媒電解により抽出分離された析出物の温
度−磁化曲線を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宗木 政一 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 科学 技術庁金属材料技術研究所内 (72)発明者 阿部 冨士雄 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 科学 技術庁金属材料技術研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェライトあるいは焼き戻しマルテンサ
    イト組織を有するフェライト系耐熱鋼であって、組織粒
    内に強磁性あるいは反強磁性を示す金属間化合物相が均
    一析出されていることを特徴とする高温長時間クリープ
    強度を有する析出硬化型フェライト系耐熱鋼。
  2. 【請求項2】 Cr含有量が重量%で、8.0〜15.
    0%であって、PdおよびPtの少なくとも1種が合計
    重量%で0.01%≦Pd+1/2Pt≦5.0%含有
    され、 さらにMn,Re,Ru、Osの少なくとも1種が合計
    重量%で0.01%≦Mn+1/2Re+Ru+1/2
    Os≦5.0%含有されている請求項1のフェライト系
    耐熱鋼。
  3. 【請求項3】 重量%で、C:0.06〜0.18%。
    Si:0〜1.0%、P:0.030%以下,S:0.
    015%以下 Cr:8.0〜15.0%、W:0〜4.0%、Mo:
    0〜2.0%、但しW+2Mo≦4.0% V:0〜0.50%、Nb:0〜0.15%、Ta:0
    〜0.30%、Ti:0〜0.15%、Zr:0〜0.
    30%、Hf:0〜0.60%、N:0〜0.10%、
    B:0〜0.030%、Ag:0〜1.0%、O:0.
    010%以下、sol.Al:0.050%以下を含有
    し、さらにPd:0.01〜5.0%、Pt:0.01
    〜10.0%、の少なくとも1種を0.01%≦Pd+
    1/2Pt≦5.0%の範囲で含有し、さらにMn,R
    e,Ru,Osの少なくとも1種が合計重量%で0.0
    1%≦Mn+1/2Re+Ru+1/2Os≦5.0%
    含有されている残部:Feおよび不可避の不純物からな
    る化学組成を備えた請求項1のフェライト系耐熱鋼。
JP05200599A 1999-02-26 1999-02-26 析出硬化型フェライト系耐熱鋼 Expired - Fee Related JP4465490B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP05200599A JP4465490B2 (ja) 1999-02-26 1999-02-26 析出硬化型フェライト系耐熱鋼

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP05200599A JP4465490B2 (ja) 1999-02-26 1999-02-26 析出硬化型フェライト系耐熱鋼

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000248341A true JP2000248341A (ja) 2000-09-12
JP4465490B2 JP4465490B2 (ja) 2010-05-19

Family

ID=12902722

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP05200599A Expired - Fee Related JP4465490B2 (ja) 1999-02-26 1999-02-26 析出硬化型フェライト系耐熱鋼

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4465490B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002146484A (ja) * 2000-11-10 2002-05-22 Sanyo Special Steel Co Ltd 高強度フェライト系耐熱鋼
JPWO2017154727A1 (ja) * 2016-03-11 2018-03-15 Jfeスチール株式会社 高強度薄鋼板およびその製造方法
CN115976426A (zh) * 2023-01-29 2023-04-18 襄阳金耐特机械股份有限公司 一种高强韧马氏体耐热钢

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002146484A (ja) * 2000-11-10 2002-05-22 Sanyo Special Steel Co Ltd 高強度フェライト系耐熱鋼
JPWO2017154727A1 (ja) * 2016-03-11 2018-03-15 Jfeスチール株式会社 高強度薄鋼板およびその製造方法
JP2019044269A (ja) * 2016-03-11 2019-03-22 Jfeスチール株式会社 高強度冷延薄鋼板
CN115976426A (zh) * 2023-01-29 2023-04-18 襄阳金耐特机械股份有限公司 一种高强韧马氏体耐热钢
CN115976426B (zh) * 2023-01-29 2023-07-04 襄阳金耐特机械股份有限公司 一种高强韧马氏体耐热钢

Also Published As

Publication number Publication date
JP4465490B2 (ja) 2010-05-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4221518B2 (ja) フェライト系耐熱鋼
JP4609491B2 (ja) フェライト系耐熱鋼
EP2885440B1 (en) High-chromium heat-resistant steel
AU2014294080B2 (en) High-strength steel material for oil well and oil well pipes
CN110168124B (zh) 双相不锈钢及其制造方法
WO2020078472A1 (zh) 一种800MPa级热冲压桥壳钢及其制造方法
WO2002099150A1 (fr) Acier inoxydable martensitique
JP2020509175A (ja) 強度及び軟性に優れた低合金鋼板
CN109355581A (zh) 一种汽轮机叶片和螺栓用耐热钢
JP4470617B2 (ja) 耐炭酸ガス腐食性に優れる油井用高強度ステンレス鋼管
CN101565798A (zh) 一种铁素体系耐热钢及其制造方法
JP2001073086A (ja) 高靱性・高耐食性継目無鋼管
RU2751629C1 (ru) Стойкая к низким температурам обсадная нефтяная труба, имеющая высокую прочность и высокую вязкость, а также способ ее изготовления
CN111961976A (zh) 钢材、制备方法及其应用
JP4465490B2 (ja) 析出硬化型フェライト系耐熱鋼
JPH1192881A (ja) ラスマルテンサイト組織のフェライト系耐熱鋼と その製造方法
JP3118566B2 (ja) 析出硬化型マルテンサイト系鉄基耐熱合金
JP3196587B2 (ja) 高Crフェライト系耐熱鋼
JP3777421B2 (ja) 高クロムフェライト耐熱鋼
JP2672437B2 (ja) 耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法
JP3969279B2 (ja) マルテンサイト系鉄基耐熱合金およびその製造方法
JP6690499B2 (ja) オーステナイト系ステンレス鋼板及びその製造方法
RU76647U1 (ru) Вал (варианты)
JP6627662B2 (ja) オーステナイト系ステンレス鋼
CN115992330B (zh) 一种高氮低钼超级奥氏体不锈钢及其合金成分优化设计方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 19990813

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 19991029

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20010110

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20010418

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051013

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070323

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070717

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070910

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071211

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A132

Effective date: 20090317

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090515

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091124

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091202

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100112

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100202

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130305

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130305

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130305

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130305

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140305

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees