JP4463370B2 - 車両のフロントバンパ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂又はプラスチック等で一体成形した車両のフロントバンパに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に車両には前方からの衝撃を吸収するためフロントバンパが取り付けられている。そしてフロントバンパには、低コストで製造可能な樹脂による一体成形品が多い。
【0003】
車両走行時、フロントバンパには前方からの風が最初に当たるため、できるだけ空気をスムーズに逃がし、後方に導くよう造形が施されるのが普通である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のフロントバンパを図5、図6に示す。このフロントバンパ51では、前輪52の付近における整流作用はそれほど考慮されていなかった。そのため、図6に示すように、高速走行時にフロントバンパ51の下側に潜り込んだ空気Aが前輪52に直接当たり、乱れながら流れてしまい、空気抵抗を増大させる要因となっていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、前輪付近における整流作用を高め、空気抵抗を減少することができる車両のフロントバンパを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、左右の前輪の前方にてそれぞれ舌状に下方に突出するエアスポイラを一体に設けた、樹脂又はプラスチックで一体成形した車両のフロントバンパであって、上記エアスポイラの下縁部の斜め下後方に折曲される折曲部が、上記前輪外周上の下端付近に接する接線上に配置されるよう形成されたものである。
【0007】
本発明によると、フロントバンパの下側に潜り込んだ空気を途中で遮り、前輪に直接当てなくすることができ、これによって前輪付近における整流作用を高め、空気抵抗を減少することができる。
【0008】
ここで、上記エアスポイラが、上記前輪の幅方向内側の部分を、前輪幅の約2/3だけ前方から覆うのが好ましい。
【0010】
また、上記エアスポイラの車幅方向外側の側縁部の外側斜め後方に折曲される折曲部が、上記前輪の外側角部上に接する接線上に配置されるよう形成されるのが好ましい。
【0011】
また、車幅方向両外側にそれぞれ下端前縁から後方に延出する下面部が一体に設けられ、それら下面部の後端に上記エアスポイラが折曲状に設けられるのが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0013】
図1は本発明に係る車両のフロントバンパを単体で示す。このフロントバンパ1は車体ないし車両の前端部に取り付けられる。ここでいうフロントバンパとは、ファシア(表皮)のことをいい、ファシアが取り付けられる車体側の部材即ちバンパレインフォースメント等は含まれない(図示も省略する)。フロントバンパ1は樹脂により一体成形されている。
【0014】
このフロントバンパ1は図に示した従来品と大略同様である。異なるのは、バンパ下側の車幅方向両側に、下面部3と、舌状のエアスポイラ2とを追加した点である。このように、従来品に小さな下面部3とエアスポイラ2とを追加しただけなので、同じ金型を流用でき、構造変更に伴うコスト増加は僅かで済む。しかも見栄えを殆ど変更せず、既存の車両デザインを壊さないで済む。
【0015】
図2乃至図4にも示すように、フロントバンパ1の車幅方向両外側に、下端前縁8から後方に延出する下面部3が一体に設けられ、エアスポイラ2はそれら下面部3の後端に折曲状に設けられる。エアスポイラ2は下面部3から下方に舌状に突出され、左右の前輪(フロントタイヤ)4の前方にそれぞれ位置される。特に図2に示すように、エアスポイラ2は、正面視形状が横長の略四角形であると共に、前輪幅Wの約2/3だけ、前輪4の幅方向内側の部分を前方から覆うようになっている。エアスポイラ2は前輪4の内側端の位置よりさらに内側に延出される。この延出長は空気力学上は長い方がよいが、あまり長くするとコストが増加するため、整流効果とコストとのバランスにおいて決定する。
【0016】
図3に示すように、エアスポイラ2の下縁部5が、前輪4の外周上における接線L1 に沿うよう後方に折曲される。特にフロントバンパ1の通常の設置位置の関係からして、下縁部5は斜め下後方に向けられ、前輪4の下端付近に接する接線L1 上に沿っている。なおこの図から分かるように、前輪4とエアスポイラ2(フロントバンパ1)との間に100mm程度の隙間6が設けられ、前輪4が操舵されたり上下動してもエアスポイラ2に当たらぬようになっている。
【0017】
図4に示すように、エアスポイラ2の車幅方向外側の側縁部7が、前輪4の外側角部9上における接線L2 に沿うよう後方に折曲される。側縁部7は外側斜め後方に向けられ、前輪4の外側角部上の接線L2 に沿っている。
【0018】
なお、フロントバンパ1における全ての折曲部には適当なアールが付けられており、空気抵抗の低減、見栄えの向上等が図られている。
【0019】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0020】
車両の高速走行時の空気の流れは図3、図4に矢印Aで示す通りである。なおこれら図において、走行方向を白抜き矢印Bで、前輪4の回転方向を矢印Cで示す。
【0021】
まず図3に示すように、フロントバンパ1の下側に潜り込んだ空気Aは、下面部3に沿って流れエアスポイラ2に衝突した後、その下縁部5に沿って斜め下後方に送られる。一方、前輪4の周囲ではその回転に沿った気流Rが発生しており、空気Aがその気流Rに接線方向から導入されるので、空気Aを気流Rに乗せてスムーズに送ることができる。
【0022】
次に図4に示すように、フロントバンパ1の下側に潜り込んだ空気Aは、エアスポイラ2に衝突した後、その側縁部7に沿っても外側斜め後方に送られる。そしてその空気Aを前輪4周囲の回転気流に乗せてスムーズに送ることができる。
【0023】
図3の場合、仮に下縁部5がより上向きとなっていたら、空気がA1 の如く流れ前輪4に直接当たり、回転気流Rにも乗らず、空気抵抗となるであろう。またより下向きとなっていたら、空気がA2 の如く路面に反射した後に回転気流R及び前輪4にぶつかるようになるため、回転気流Rにスムーズに導入されず、抵抗となるであろう。従って下縁部5の向きは上述のものが最良である。もっとも、このように下縁部5を折曲せずとも、エアスポイラ2があること自体で、従来に比べれば前輪への空気衝突量が大幅に低減されるので、空気抵抗減少効果が発揮されることになる。
【0024】
一方、図4の場合、仮に側縁部7がより内側向きとなっていたら、空気がA3 の如く前輪4に直接当たり空気抵抗となるであろう。またより外側向きとなっていたら、側縁部7を抜け出た空気A4 が、前輪4の外側を後方に抜ける空気A5 に側方から衝突するため、空気の乱れが生じ、やはり空気の流れが阻害されるであろう。従って側縁部7の向きも上述のものが最良である。もっとも、このように側縁部7を折曲せずとも、エアスポイラ2があること自体で従来より優れる点は前記同様である。
【0025】
このように前輪4の外側角部に接するように空気を流すため、エアスポイラ2は、前輪4の幅方向内側を前輪幅Wの約2/3だけ覆うようにするのがよい。こうすると側縁部7が最良の位置に位置され、且つ最良の方向に向けられるからである。
【0026】
このように、フロントバンパ1に、左右の前輪の前方にてそれぞれ舌状に下方に突出するエアスポイラ2を一体に設けたので、高速走行時にフロントバンパ1の下側に潜り込んだ空気を途中で遮り、前輪4に直接当てなくすることができ、これによって前輪付近における整流作用を高め、空気抵抗を減少することができる。そして、エアスポイラ2をフロントバンパ1に一体に設けるので、フロントバンパ1の一体成形時にエアスポイラ2を同時成形でき、別体のエアスポイラをフロントバンパに取り付ける場合等よりも低コストで実施でき、スポイラ取付作業も不要とすることができる。そして前輪4のみ覆う小形のものであるため、材料コスト、製造コストともに最小に抑えられ、見栄えにも影響を与えないで済む。
【0027】
また、下面部3を設けたので、空気を逃がすことなくスムーズにエアスポイラ2に導くことができ、エアスポイラ2の効果を最大に活かすことができる。
【0028】
本実施形態のフロントバンパ1を実際に製作し、車両に取り付けて風洞試験を行ってみたところ、従来に比べ抗力係数を0.007%、抗力を6.6%向上することができた。これにより本発明の効果が確認された。
【0029】
以上、本発明の実施の形態は上述のものに限られない。例えばフロントバンパはプラスチック等、他の材料で一体成形することも可能である。
【0030】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0031】
(1) 前輪付近の整流作用を高め、空気抵抗を減少することができる。
【0032】
(2) 低コストで実施でき、見栄えに影響を与えないで済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフロントバンパを単体で示す斜視図である。
【図2】取付状態におけるフロントバンパの部分正面図である。
【図3】同縦断左側面図で、図1の III−III 線相当断面図である。
【図4】取付状態におけるフロントバンパの左側を示す部分横断平面図で、図1のIV−IV線相当断面図である。
【図5】従来のフロントバンパを示す斜視図である。
【図6】取付状態におけるフロントバンパの部分縦断左側面図で、図5のVI−VI線断面図である。
【符号の説明】
1 フロントバンパ
2 エアスポイラ
3 下面部
4 前輪
5 下縁部
7 側縁部
8 下端前縁
9 外側角部
1 ,L2 接線
W 前輪の幅

Claims (4)

  1. 左右の前輪の前方にてそれぞれ舌状に下方に突出するエアスポイラを一体に設けた、樹脂又はプラスチックで一体成形した車両のフロントバンパであって、上記エアスポイラの下縁部の斜め下後方に折曲される折曲部が、上記前輪外周上の下端付近に接する接線上に配置されるよう形成されたことを特徴とする車両のフロントバンパ。
  2. 上記エアスポイラが、上記前輪の幅方向内側の部分を、前輪幅の約2/3だけ前方から覆う請求項1記載の車両のフロントバンパ。
  3. 上記エアスポイラの車幅方向外側の側縁部の外側斜め後方に折曲される折曲部が、上記前輪の外側角部上に接する接線上に配置されるよう形成された請求項1又は2記載の車両のフロントバンパ。
  4. 車幅方向両外側にそれぞれ下端前縁から後方に延出する下面部が一体に設けられ、それら下面部の後端に上記エアスポイラが折曲状に設けられる請求項1乃至3いずれかに記載の車両のフロントバンパ。
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