JP4461210B2 - 抗体発現系とその構築法 - Google Patents

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Description

(発明の分野)
本発明は一般に分子生物学及びタンパク質技術の分野に関する。より詳細には、本発明は組換え生産された抗体とその用途に関する。
(発明の背景)
近年、様々な疾患及び疾病の診断及び治療薬として抗体の使用が益々有望視されている。多くの研究及び臨床への応用には多量の機能性抗体又は抗体断片が必要であり、抗体を生産するためのスケールアップされているが経済的な系が求められている。特に有用なものは、大腸菌又は枯草菌のような原核生物から酵母、植物、昆虫細胞及び哺乳動物細胞までの範囲にわたる様々な発現宿主を使用する抗体の組換え生産である。Kipriyanov及びLittle (1999) Mol. Biotech. 12:173-201。
他の抗体生産系と比較すると、細菌、特に大腸菌は多くの独特な利点を提供する。使用される原材料(つまり細菌細胞)が安価で成長させ易く、よって製品コストを低減させる。原核生物宿主は例えば哺乳動物細胞よりもかなり速く成長するので、遺伝子操作の迅速な解析が可能になる。生産時間が短くなりスケールアップが容易になると、細菌発酵が、多量のタンパク質を生産するための更に魅力的な手段になる。大腸菌を含む多くの細菌種のゲノム構造と生物学的活性は十分に研究されており、広範囲の適切なベクターが入手でき、所望の抗体の発現をより簡便に行わせることができる。真核生物と比較すると、組換え遺伝子の操作、複数コピーの宿主中への安定な形質転換、発現誘導及び産物の特徴付けを含み、製造プロセスに関与する工程は少ない。Pluckthun及びPack (1997) Immunotech 3:83-105。また、大腸菌はランダムなアプローチに対する独特な接近法を可能にする。プラスミドによる形質転換又はファージによる形質移入の比類なき効率のために、大腸菌を多くのタイプの抗体変異体のファージライブラリーの構築に使用することができ、これは機能ゲノム研究に特に重要である。
細菌中で組換え抗体を作製するために様々なアプローチ法が使用されている。他の異種タンパク質と同様に、抗体分子は、細胞質中に発現された封入体のリフォールディングによるか、発現後の細菌細胞膜周辺への分泌によって、細菌から得ることができる。分泌とリフォールディングの選択は一般に幾つかの点を考慮することによって導かれる。分泌は、通常、抗体を生産するためのより速くより一般的に使用されている方策である。上掲のKipriyanov及びLittle (1999)。
Opper等の米国特許第6008023号は、標的とされる腫瘍治療で使用される酵素と抗体断片(例えばFabs)が融合している大腸菌細胞質発現系を記述している。Zemel-Dreasen等 (1984) Gene 27:315-322は大腸菌中での抗体軽鎖の分泌とプロセシングを報告している。Lo等のPCT公報WO93/07896はその重鎖にCH2領域を欠いている四量体抗体の大腸菌生産を報告している。軽鎖とCH2欠失重鎖をコードしている遺伝子が、一つの単一プロモーターの調節下で同じ発現ベクター中に構築されている。
原核生物系中での抗体の発現は異なったスケールで実施することができる。振盪フラスコ培養(2−5リットルの範囲)は典型的には5mg/リットル未満の産物を生じる。Carter等 (1992) Bio/Technology 10:12-16は、抗体断片の高レベルの発現(2g/リットルまで)が得られる高細胞密度発酵系を開発した。Carter等によって得られたFab'のリットル当たりのグラム力価は、主として、単純な振盪フラスコのものより正確に制御された環境の発酵槽から得られる高細胞密度による。その系は軽鎖及び重鎖断片を同時発現するように設計されたジシストロン性オペロンを含んでいる。ジシストロン性オペロンはホスフェート飢餓により誘導できる単一の大腸菌phoAプロモーターの調節下にある。各抗体鎖の前には細胞膜周辺腔への分泌を指令する大腸菌熱安定性エンテロトキシンII(stII)シグナル配列がある。Carter等(1992)によって記載された系はここで更に後述する。
大腸菌中での抗体の生産の総説については、Pluckthun及びPack (1997) Immunotech 3:83-105;Pluckthun等 (1996) ANTIBODY ENGINEERING: A PRACTICAL APPROACH, pp203-252 (Oxford Press);Pluckthun (1994) HANDBOOK OF EXP PHARMCOL VOL 3: THE PHARMCOL OF MONOCLONAL ANTIBODIES, pp269-315 (M. Rosenberg及びG.P. Moore; Springer-Verlag, Berlin)を参照のこと。
多くの生物学的アッセイ(例えばX線構造結晶解析)及び臨床への応用(例えばタンパク質療法)には多量の抗体を必要とする。従って、適切に組み合わされた可溶性で機能的な抗体を製造するための高収量であるが単純な系に対する必要性が存在している。
(発明の概要)
本発明は、原核生物又は真核生物宿主細胞のような宿主細胞中で機能的な抗体又は抗体断片を組換え的に製造するための新規な方法と組成物を提供する。一実施態様では、本発明は、原核生物細胞のような宿主細胞中で抗体の軽鎖と重鎖の発現を時間的に分け、それによって組み合わされる機能的な抗体分子の収量を増大させる方法を提供する。特に、本方法は、宿主細胞を、軽鎖及び重鎖をそれぞれコードしている二つの別個の翻訳単位で形質転換し;軽鎖と重鎖が逐次的な形で発現される好適な条件下で細胞を培養して、軽鎖と重鎖の生産を時間的に分け;軽鎖と重鎖を集めて機能的抗体又はその断片にすることを含む。好適な一側面では、軽鎖と重鎖の時間的に分けた発現は、軽鎖と重鎖を別個に調節する二つの異なったプロモーターを用いて達成され、ここで異なったプロモーターは異なった条件下で活性化される。例えば、軽鎖と重鎖をコードしているDNAsを、一つのプラスミドベクター中ではあるが、それぞれが異なったプロモーターで調節される二つの翻訳単位中に導入することができる。一方のプロモーター(例えば第一のプロモーター)は構成的であるか誘導性であり得、他方のプロモーター(例えば第二のプロモーター)は誘導性である。従って、そのようなベクターで形質転換した宿主細胞を、一方のプロモーター(例えば第一のプロモーター)を活性化させるのに適した条件下で培養すると、一方の鎖のみ(例えば軽鎖)が発現される。ついで、第一の鎖(例えば軽鎖)の発現の所望期間後に、培養条件を、他方のプロモーター(例えば第二のプロモーター)の活性化に適したものに変え、それによって第二の鎖(例えば重鎖)の発現を誘導する。好適な一実施態様では、軽鎖が最初に発現され、重鎖が続く。他の実施態様では、重鎖が最初に発現され、軽鎖が続く。
また本発明は、原核生物又は真核生物宿主細胞中において機能的抗体又はその断片を生産させるための組換えベクターを提供し、該ベクターは、軽鎖に作用可能に結合した分泌シグナルをコードしている第一翻訳単位に先行する第一プロモーターと;重鎖に作用可能に結合した分泌シグナルをコードしている第二翻訳単位に先行する第二プロモーターを含む。第一及び第二プロモーターは異なった条件下で誘導性である。
多くの原核生物及び真核生物種を、本発明に係る抗体発現のための宿主として使用することができる。好ましくは、原核生物宿主はグラム陰性菌である。より好ましくは、宿主は大腸菌である。一側面では、宿主細胞は異種タンパク質を多量に生産するのに適した遺伝子改変大腸菌株である。例えば、宿主細胞は、プロテアーゼのための突然変異遺伝子、及びdsb遺伝子の余分なコピーを含む大腸菌株でありうる。多くの既知のプロモーターは、構成的であれ誘導性であれ、それらが他のプロモーターと組み合わせて効率的に使用できる限り、本発明での使用に適している。
本発明の方法と組成物は、無傷の抗体又はFab、Fab'、F(ab')、F(ab')−ロイシンジッパー融合体、Fv及びdsFvのような抗体断片を含む広範囲の構築抗体分子を多量に製造するために使用することができる。更に、本発明の抗体分子はヒト、キメラ、ヒト化又は親和性成熟化したものでありうる。抗体は任意の適切な抗原、好ましくはその生物学的に重要なポリペプチドに特異的であり得る。抗体断片は二量体化ドメイン、例えばロイシンジッパードメインに融合していてもよい。
また考えられるのはここに記載された方法によって作成された抗体の様々な診断及び治療的使用である。一治療的応用では、組換え的に作成された抗体又はその断片が治療において他の治療剤と組み合わせて使用される。
(好適な実施態様の詳細な説明)
本発明の主要な実施態様は、大腸菌発酵系のような宿主細胞系での適切に構築された可溶型抗体の収量が、軽鎖の発現と重鎖の発現の誘導を時間的に分けることによって劇的に増大させることができるという驚くべき発見に基づいている。一方の鎖(例えば軽鎖)が、第二の鎖(例えば重鎖)の誘導前に発現された新規な組換え系を用いて、軽鎖と重鎖が同時に発現された比較系に対して構築抗体力価の約2倍の改善が達成された。
抗体は、軽鎖と重鎖をコードしている遺伝子が単一プロモーターの調節下にあるジシストロン性ベクターを使用して、大腸菌のような宿主細胞中で常套的に生産した。プロモーターの活性化に適した培養条件下で、軽鎖遺伝子と重鎖遺伝子の両方が同時に発現される。例えば、Carter等 (1992) Bio/Technology 10:163-167は、ホスフェート飢餓によって誘導可能である単一大腸菌phoAプロモーターの調節下での軽鎖及び重鎖断片のジシストロン性オペロンを記述している。各抗体鎖の前には、分泌を細胞膜周辺腔へ指令する大腸菌熱安定エンテロトキシンII(stII)シグナル配列がある。このベクターを用いて所定の抗体の生産を実施すると、特に軽鎖と重鎖の両方の発現レベルが高い場合、有意な量の個々の鎖分子は凝集し、可溶性で機能的な抗体には構築できなかった。(軽鎖と重鎖の両方の発現に対して単一のプロモーターを有する)ジシストロン性ベクターにおける凝集の問題は以下に記載する実施例で更に例証する。
特定の理論に限定されるものではないが、凝集の問題は、少なくとも部分的には、上述の条件下でフォールドする個々の鎖の能力が制約されるためであろう。抗体の個々の鎖は発現、分泌及び機能的抗体への組立ての間、異なった形で挙動しうる。例えば、一方の鎖(例えば軽鎖)は宿主細胞の細胞膜周辺腔中に単独で分泌された後、大部分は可溶性のままでありうるが、他方の鎖(例えば重鎖)は、組立てられた抗体複合体の一部として存在していない場合は、殆どは凝集し分泌後に不溶性になる。このように、より可溶性の鎖の早期の発現により、可溶性が低い鎖のフォールディングと続く二つの鎖の組立てが容易になる。また、宿主細胞は、その分泌装置を介して発現ポリペプチドを転位置させる能力に制約があるかもしれない。分泌能力の限界を、例えば複数のポリペプチドが同時に発現される場合、又は多量の前駆体タンパク質が強い翻訳強さを持つベクターによって発現されるか、又は大きなサイズのタンパク質が発現される場合、あるいはその任意の組合せのような所定の状況で越えうる。その結果、成熟度の低いタンパク質が分泌され、抗体複合体への組立てに利用される。
メカニズムにかかわらず、本発明は、組立てされた可溶性で機能的な抗体分子が有意に増大した収量で抗体を生産するための新規な(原核生物又は真核生物)系を提供する。本発明の二重プロモーター発現ベクターを使用して、一方の鎖を最初に合成する。所定量の最初の鎖が発現した後、第二の鎖の発現を、変えた培養条件に応答する第二のプロモーター下で誘導することができる。ついで、新たに発現された第二の鎖は、利用可能な既に作成された第一の鎖と複合体化して、可溶性抗体又はその断片を形成することができるであろう。しかして、二つの鎖の発現のタイミングを操作することによって、より多くの発現抗体鎖を可溶型抗体複合体に方向付けることができ、その全収量を増大させる。
本発明の時間的に分離した発現系は主として抗体とその断片の生産によって例証するが、ここに記載されたアプローチ法は、複数のタンパク質単位/鎖を製造し、中間体又は最終タンパク質複合体が機能的であるために個々の単位/鎖の適切な組立てを必要とする任意の系に適用可能である。このアプローチ法は免疫グロブリン様ドメインを含むタンパク質複合体、例えば抗体、T細胞レセプター、クラスI及びクラスII MHC分子、インテグリン、CD8及びCD28分子、並びにその関連断片、誘導体、変異体及び融合タンパク質の生産に特に有用である。
抗体
「抗体」という用語は最も広義で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、およびそれらが所望の生物学的活性を示す限り抗体断片を含む。天然に生じる抗体は、2つの同一の重(H)鎖とジスルヒド結合によって相互連結された2つの同一の軽(L)鎖である4つのポリペプチド鎖を含む。各重鎖は重鎖可変領域(V)と重鎖定常領域からなり、これはその天然型ではCH1、CH2、CH3の3つのドメインからなっている。各軽鎖は軽鎖可変領域(V)と軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域はCの一つのドメインからなる。V及びV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域が散在した相補性決定領域(CDR)と呼ばれる高頻度可変領域に更に細かく分類できる。各V及びVは、次の順序でアミノ末端からカルボキシ末端までに配された3つのCDRsと4つのFRsからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
任意の脊椎動物種由来の抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる二つの明確に区別されるタイプの一つに割り当てることができる。
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主たるクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらの幾つかは更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgA1、IgA2等々に分けられる。免疫グロブリンの異なったクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造と三次元構造はよく知られており、一般に例えば、Abbas等, Cellular and Mol. Immunology, 4版 (2000)に記載されている。
抗体は、一又は他のタンパク質又はペプチドと抗体又は抗体断片の共有又は非共有結合により形成されたより大きな融合分子の一部であってもよい。そのような融合タンパク質の例には、四量体scFv分子の作製のためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov等, (1995) Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)及び二価でビオチン標識されたscFv分子の作製のためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov,S.M.等 (1994) Mol. Immunol. 31:1047-1058)が含まれる。
本発明はモノクローナル抗体を包含する。ここで用いられる「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団、つまり、集団を構成する個々の抗体が少量で存在しうる自然に起こりうる突然変異を除くと同一である集団から得られる抗体を意味する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位を対象とする。更に、異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基を対象とする。
ここで、モノクローナル抗体は、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りが他の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限りにおいてそれらの抗体の断片である「キメラ」抗体を含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851-6855 (1984))。
「機能的」又は「生物学的に活性な」抗体は構造的、調節、生化学的又は生物学的事象においてその天然の活性の一又は複数を作用させ得るものである。例えば、機能的抗体は抗原に特異的に結合する能力を持ち得、ついでその結合はシグナル伝達又は酵素活性のような細胞又は分子の事象を誘発又は改変し得る。機能的抗体はまたレセプターのリガンド活性化を阻止し又はアゴニスト抗体として作用し得る。その天然の活性の一又は複数を作用させる抗体の能力は、正しいフォールディング及びポリペプチド鎖の組立てを含む幾つかの要因に依存する。ここで使用されるところでは、開示された方法によって製造される機能的抗体は、典型的には、二つの同一のL鎖と複数のジスルフィド結合によって結合され正しく折り畳まれた二つの同一のH鎖を有するヘテロ四量体である。ある側面では、本発明は阻止抗体、抗体アンタゴニスト及び/又は抗体アゴニストを包含する。「阻止」抗体又は抗体「アンタゴニスト」はそれが結合する抗原の生物学的活性を阻害又は低減させるものである。そのような阻止は、任意の手段、例えばレセプターへのリガンドの結合、レセプター複合体の形成、レセプター複合体中のチロシンキナーゼレセプターのチロシンキナーゼ活性及び/又はレセプター中の又はレセプターによるチロシンキナーゼ残基(群)のリン酸化を妨害することによって、起こり得る。例えば、VEGFアンタゴニスト抗体はVEGFに結合し、血管内皮細胞の増殖を誘導するVEGFの能力を阻害する。好適な阻止抗体又はアンタゴニスト抗体は抗原の生物学的活性を完全に阻害する。
「抗体アゴニスト」はレセプターのような抗原に結合しこれを活性化させる抗体である。一般に、アゴニスト抗体のレセプター活性化能はレセプターの天然アゴニストリガンドと少なくとも定性的に類似している(また本質的に定量的に類似している)。
抗原特異性
本発明は任意の適切な抗原結合特異性を有する抗体又は抗体断片に適用できる。好ましくは、本発明の抗体は、生物学的に重要なポリペプチドである抗原に特異的である。より好ましくは、本発明の抗体は哺乳動物の疾病又は疾患の治療又は診断に有用である。本発明によって得られる抗体又は抗体断片は、阻止抗体、抗体アゴニスト又は抗体抱合体のような治療剤として特に有用である。治療用抗体の非限定的な例には、抗VEGF、抗IgE、抗CD11、抗CD18、抗組織因子及び抗TrkC抗体が含まれる。非ポリペプチド抗原(例えば腫瘍関連糖脂質抗原)に対する抗体もまた考えられる。
「抗原」という用語は当該分野でよく理解されており、免疫原性である物質、つまり免疫原、並びに免疫学的無応答性又はアネルギーを誘導する物質、つまりアネルゲンを含む。抗原がポリペプチドである場合、抗原は膜貫通分子(例えばレセプター)あるいはリガンド、例えば成長因子でありうる。抗原の例には、例えば、レニン;ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インシュリンA-鎖;インシュリンB-鎖;プロインシュリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;VIIIC因子、IX因子、組織因子(TF)、及びフォン・ウィルブランド因子等の凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性物質;ウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)等のプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血性成長因子;腫瘍壊死因子-α及び-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β-ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNアーゼ;IgE;CTLA-4のような細胞毒性Tリンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は成長因子のレセプター;プロテインA又はD;リウマチ因子;脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又はNGF-β等の神経成長因子等の神経栄養因子;血小板誘導成長因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の線維芽細胞成長因子;表皮成長因子(EGF);TGF-α及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含む、TGF-βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF);インシュリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インシュリン様成長因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20等のCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばM-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1からIL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス性抗原、例えばAIDSエンベロープの一部等;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えばHER2、HER3又はHER4レセプター;及び上に列挙したポリペプチドの何れかの断片が含まれる。
本発明に包含される抗体に対する好適な抗原には、CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、CD11a、CD11b、CD18、CD19、CD20、CD34及びCD46;ErbBレセプターファミリーのメンバー、例えばEGFレセプター、HER2、HER3又はHER4レセプター;細胞接着分子、例えばLFA-1、Mac1、p150.95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、α4/β7インテグリン及びそのα又はβサブユニットを何れか含むαv/β3インテグリン;成長因子、例えばVEGF;組織因子(TF)、及びTGF-βアルファインターフェロン(α-IFN);インターロイキン、例えばIL-8;IgE;血液型抗原Apo2、デスレセプター;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA-4;プロテインC等々が含まれる。ここでの最も好ましい標的はVEGF、TF、CD19、CD20、CD40、TGF-β、CD11a、CD18、Apo2及びC24である。
他の分子と場合によっては抱合していてもよい可溶型抗原又はその断片を、抗体を産生するための免疫原として使用することができる。レセプターのような膜貫通分子に対しては、これらの分子の断片(例えばレセプターの細胞外ドメイン)を免疫原として使用することができる。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞を免疫原として使用することもできる。そのような細胞は天然源(例えば癌株化細胞)から取り出すことができ、又は膜貫通分子を発現するように組換え技術により形質転換された細胞であってもよい。抗体の調製に有用な他の抗原とその型は当業者には明らかであろう。
本発明の抗体は、単一特異的、二重特異的、三重特異的又は更に高次の多重特異的なものでありうる。多重特異的抗体は単一の分子の異なったエピトープに特異的であるか又は異なった分子のエピトープに特異的でありうる。多重特異的抗体を設計し作製する方法は当該分野において知られている。例えば、Millstein等 (1983) Nature 305:537-539; Kostelny等 (1992) J. Immunol. 148:1547-1553;国際公開93/17715を参照のこと。
抗体断片
本発明は抗体又は抗体断片の原核生物又は真核生物での生産を考慮している。多くの形態の抗体断片が従来から知られ、ここに包含される。「抗体断片」は、一般には無傷の抗体の抗原結合部位を含み、よって抗原に結合する能力を保持している無傷の抗体の一部のみを含む。本定義に包含される抗体断片の例には、(i)VL、CL、VH及びCH1ドメインを持つFab断片;(ii)CH1ドメインのC末端に一又は複数のシステイン残基を持つFab断片であるFab'断片;(iii)VH及びCH1ドメインを持つFd断片;(iv)CH1ドメインのC末端に一又は複数のシステイン残基とVH及びCH1ドメインを持つFd'断片;(v)抗体の単一アームのVL及びVHドメインを持つFv断片;(vi)VHドメインからなるdAb断片(Ward等, Nature 341, 544-546 (1989));(vii)単離されたCDR領域;(viii)ヒンジ領域がジスルフィド架橋によって結合された2つのFab'断片を含む二価断片であるF(ab')断片;(ix)単鎖抗体分子(例えば単鎖Fv;scFv)(Bird等, Science 242:423-426 (1988);及びHuston等, PNAS (USA) 85:5879-5883 (1988));(x)同一のポリペプチド鎖中で軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含む、2つの抗原結合部位を持つ「ダイアボディ(diabodies)」(例えば、EP404097;国際公開93/11161;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照);(xi)相補的軽鎖ポリペプチドと共に抗原結合領域対を形成するタンデムFdセグメント対(VH-CH1-VH-CH1)を含む「線形抗体」(Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062(1995);及び米国特許第5641870号)が含まれる。
更に、本発明は、その安定性を改善するように、及び/又は多価の抗体複合体をつくり出すように改変された抗体断片を考慮する。多くの医療用途においては、抗体断片は変性又はタンパク質分解条件に対して十分に安定でなければならず、抗体断片は理想的には高い親和性をもって標的抗原に結合しなければならない。安定化された及び/又は多価抗体断片を提供するために多様な方法と材料が開発されている。本発明の抗体断片は二量体化ドメインに融合されていてもよい。好適な実施態様では、本発明の抗体断片はロイシンジッパーのような二量体化ドメインの結合により二量体化される。
「ロイシンジッパー」は、それが二つのDNA結合ドメインを、転写エンハンサー配列への結合のために適切な近位に配するように作用する、多くの真核生物転写因子中に見出されるタンパク質二量体化モチーフである。ロイシンジッパーの二量体化は、高次螺旋ねじれに互いに巻かれた一対のαヘリックスを持つ、短い平行なコイルドコイルの形成を介して生じる。Zhu等, (2000) J. Mol. Biol. 300:1377-1387。7番目の位置毎にロイシンが優先しているために「ロイシンジッパー」と呼ばれるこれらのコイルドコイル構造は、抗体を含む他のタンパク質において二量体化装置としても使用されている。Hu等 (1990) Science 250:1400-1403;Blondel及びBedouelle (1991) Protein Eng. 4:457。ロイシンジッパーの幾つかの種は二量体及び四量体抗体コンストラクトに特に有用であるものとして特定されている。Pluckthun及びPack (1997) Immunotech. 3:83-105;Kostelny等 (1992) J. Immunol. 148:1547-1553。
抗体変異体
抗体又はその断片のアミノ酸配列修飾(群)が考えられる。例えば、結合親和性及び/又は抗体の他の生物学的活性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体の核酸中に適切なヌクレオチド変化を導入するか又はペプチド合成によって調製される。そのような修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、及び/又はアミノ酸配列中への残基の挿入、及び/又は残基の置換が含まれる。欠失、挿入及び置換の任意の組合せを施して、最終コンストラクトが所望の特性を有すると仮定して、最終コンストラクトが得られる。アミノ酸変更は配列が作製されるときに主題の抗体アミノ酸配列に導入されうる。
突然変異誘発に適した好ましい位置にある抗体の所定の残基又は領域の同定のために有用な方法は、Cunningham及びWells (1989) Science 244: 1081-1085に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、残基又は標的残基の群は、同定され(例えば、arg, asp, his, lys,及びglu等の荷電残基)、中性又は負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラリン)によって置き換えられ、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。ついで置換に対する機能的感受性を証明するこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又は置換部位に対して更なる又は他の変異を導入することにより精密にされる。しかして、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、突然変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における突然変異の性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現された抗体を所望の活性についてスクリーニングする。
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合体、並びに一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入体を含む。末端挿入体の例は、N末端メチオニル残基を持つ抗体又は細胞障害ポリペプチドに融合した抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体の血清半減期を向上させる酵素(例えばADEPT)又はポリペプチドの抗体N末端又はC末端への融合体を含む。
他の型の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子中の少なくとも一つのアミノ酸残基が異なる残基で置き換えられる。置換突然変異誘発に対して最も関心ある部位は高頻度可変領域を含むが、FR変化もまた考慮される。保存的置換は、「好適な置換」と題して表1に示す。かかる置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表1に「置換例」と名前を付けられ、又はアミノ酸クラスを参照して以下に更に記載される、多くの実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてよい。
Figure 0004461210
抗体の生物学的特性における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はへリックス構造、(b)標的部位における分子の電荷又は疎水性、もしくは(c)側鎖の嵩を、維持する効果について有意に異なる置換基を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいてグループ分けできる:
(1)疎水性:ノルロイシン, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:asn, gln, his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, pro; 及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類のものに交換することが必要であろう。
抗体の適切な立体配置の維持に関与しない任意のシステイン残基は、一般にセリンで、置換し、分子の酸化的安定性を向上させて異常な架橋を防止する。逆に、抗体にシステイン結合を付加して、その安定性を向上させてもよい。
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体(例えばヒト化又はヒト抗体)の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般に、更なる発展のために選択されて得られた変異体は、それらが生成された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を生成する簡便な方法はファージディスプレイを使用する親和性成熟化である。簡単に述べれば、高頻度可変領域部位(例えば6-7部位)を突然変異させて各部位において全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このようにして生成された抗体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物との融合体として表示される。ファージディスプレイ変異体は、ついで、ここに開示されるそれらの生物学的活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾の候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。あるいは、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原との接触点を同定するのが有利である。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体がひとたび生成されたら、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた種々の方法によって調製される。これらの方法は、これらに限られないが、天然源からの単離(自然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又はオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及び抗体の初期調製された変異体又は非変異体型のカセット突然変異誘発による調製を含む。
本発明の抗体のFc領域に一又は複数のアミノ酸修飾を導入し、よってFc領域変異体を産生するのが望ましい場合がある。Fc領域変異体は一又は複数のアミノ酸位置においてアミノ酸修飾(例えば置換)を有するヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4Fc領域)を持ちうる。
一実施態様では、Fc領域変異体は、改変された新生仔Fcレセプター(FcRn)結合親和性を示しうる。そのような変異体Fc領域は、Fc領域のアミノ酸位置238、252、253、254、255、256、265、272、286、288、303、305、307、309、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、386、388、400、413、415、424、433、434、435、436、439又は447の任意の一又は複数においてのアミノ酸修飾を含み得、ここでFc領域の残基の番号付けはKabatにおけるEUインデックスのものである。FcRnへの結合性が低減させられたFc領域変異体は、Fc領域のアミノ酸位置252、253、254、255、288、309、386、388、400、415、433、435、436、439又は447の任意の一又は複数においてのアミノ酸修飾を含み得、ここでFc領域の残基の番号付けはKabatにおけるEUインデックスのものである。上述のFc領域変異体は、あるいは、FcRnに対して増加した結合性を示し、Fc領域のアミノ酸位置238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434の任意の一又は複数においてのアミノ酸修飾を含み得、ここでFc領域の残基の番号付けはKabatにおけるEUインデックスのものである。
FcγRへの結合性が低減させられたFc領域変異体は、Fc領域のアミノ酸位置238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、292、293、294、295、296、298、301、303、322、324、327、329、333、335、338、340、373、376、382、388、389、414、416、419、434、435、437、438又は439の任意の一又は複数においてのアミノ酸修飾を含み得、ここでFc領域の残基の番号付けはKabatにおけるEUインデックスのものである。
例えば、Fc領域変異体はFcγRIへの減少した結合性を示し得、Fc領域のアミノ酸位置238、265、269、270、327又は329の任意の一又は複数においてアミノ酸修飾を含み、ここでFc領域の残基の番号付けはKabatにおけるEUインデックスのものである。
Fc領域変異体はFcγRIIへの減少した結合性を示し得、Fc領域のアミノ酸位置238、265、269、270、292、294、295、298、303、324、327、329、333、335、338、373、376、414、416、419、435、438又は439の一又は複数においてアミノ酸修飾を含み得、ここでFc領域の残基の番号付けはKabatにおけるEUインデックスのものである。
興味のあるFc領域変異体はFcγRIIIへの減少した結合性を示し得、Fc領域のアミノ酸位置238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、293、294、295、296、301、303、322、327、329、338、340、373、376、382、388、389、416、434、435又は437の一又は複数においてのアミノ酸修飾を含み得、ここでFc領域の残基の番号付けはKabatにおけるEUインデックスのものである。
改変された(すなわち改善されたか減少させられた)C1q結合性及び/又は補体依存性細胞障害性(CDC)を持つFc領域変異体は国際公開第99/51642号に記載されている。そのような変異体はFc領域のアミノ酸位置270、322、326、327、329、331、333又は334の一又は複数においてのアミノ酸置換を含みうる。Fc領域変異体については、Duncan及びWinter Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5648260号;米国特許第5624821号;及び国際公開第94/29351号をまた参照のこと。
ヒト、ヒト化又は親和性成熟抗体
「ヒト抗体」は、ヒトにより作られた抗体のアミノ酸配列と一致するアミノ酸配列を有するもの及び/又はここで記載されるヒト抗体を作製する技術の任意のものを使用して、作製されたものである。このヒト抗体の定義は、特に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除く。
本発明はヒト抗体及びヒト化抗体の両方を包含する。非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、そのレシピエントの高頻度可変領域からの残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などの非ヒト種の高頻度可変領域(ドナー抗体)に由来する所望の特異性、親和性及び能力を持つ残基で置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基で置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、抗体の性能を更に精密にするために施される。一般に、ヒト化抗体は、高頻度可変ループの全て又は実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRsの全て又は実質上全てがヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全部を含有するであろう。また場合によっては、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部を含むであろう。更なる詳細については、Jones等, Nature 321: 522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。また次の総説文献とそこで引用されている文献を参照のこと:Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle及びGross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994)。
「親和性成熟」抗体とは、一以上のCDRsにおける変化を有しない親抗体と比較し、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じせしめる、抗体の一以上のCDRにおける一以上の改良を伴うものである。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該分野において知られている方法によって生産される。Marks等. Bio/Technology, 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメイン混合による親和性成熟について記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、Barbas等, Proc Nat Acad. Sci, USA 91: 3809-3813(1994); Schier 等, Gene, 169:147-155(1995);Yelton等, J. Immunol., 155:1994-2004(1995);Jackson等, J. Immunol., 154(7):3310-9(1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol., 226:889-896(1992)に記載されている。
非ヒト抗体のヒト化方法は、この分野で周知である。例えばヒト化は、本質的にはWinter及び共同研究者等の方法(Jones等 (1986) Nature 321:522-525; Riechmann等 (1988) Nature 332:323-327; Verhoeyen等 (1988) Science 239: 1534-1536)に従って、高頻度可変領域配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより行われ得る。従って、そのような「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4816567号)、そこでは実質的に無傷のヒト可変領域未満の部分が非ヒト種に由来する対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は、典型的には幾つかの高頻度可変領域残基と場合によっては幾つかのFR残基が、齧歯類抗体の類似部位に由来する残基によって置換されたヒト抗体である。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Sims等 (1993) J. Immunol. 151:2296;Chothia等 (1987) J. Mol. Biol. 196:901)。他の方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等 (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 ;Presta等 (1993) J. Immunol., 151:2623)。
抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持させた状態でヒト化することが更に重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムが購入可能である。これらのディスプレイを見ると、候補免疫グロブリン配列の機能化における残基の可能な役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性の増大のような、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、高頻度可変領域残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
抗体誘導体
本発明の抗体及び抗体変異体は当該分野において知られ直ぐに利用できる更なる非タンパク質性部分を含むように更に修飾することができる。誘導体化は抗体又はその断片の生物学的性質を改善し又は回復させるのに特に有用である。例えば、抗体断片のPEG修飾は安定性、インビボでの循環半減期、結合親和性、溶解度及びタンパク質分解に対する耐性を改変しうる。
好ましくは、抗体の誘導体化に適した部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例には、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーかランダムコポリマー)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が含まれる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは水中におけるその安定性のために製造の際に有利であろう。ポリマーは任意の分子量であってよく、分枝状でも非分枝状でもよい。抗体に結合するポリマーの数は変化してもよく、一を超えるポリマーが結合する場合、それらは同じでも異なった分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、限定されるものではないが、定まった条件下での治療に使用されるかどうか、改善される抗体の特定の性質又は機能を含む考慮事項に基づいて決定することができる。
一般に、ここに記載された原核生物発現系によって産生される抗体又は抗体断片はグリコシル化されておらず、Fc領域の検出可能なエフェクター活性を欠く。ある場合には、天然抗体の一又は複数のエフェクター機能を少なくとも部分的に回復させることが望ましい場合がある。従って、本発明は非グリコシル化抗体のFc領域中において特定された残基部位に適切な部分を結合させることによって、エフェクター機能を回復させる方法を考慮する。この提案に対する好適な部分はPEGであるが、他の炭水化物ポリマーを使用することもできる。ペグ化は当該分野で知られている任意のペグ化反応の何れかによって実施することができる。例えば、EP0401384;EP0154316;WO98/48837を参照のこと。一実施態様では、抗体の特定された位置、例えば抗体又は抗体変異体が通常はグリコシル化されている部分又は抗体の表面上の部分の、残基をシステイン残基に最初に置き換える。好ましくは、一又は複数の位置297、298、299、264、265及び239(番号付けはKabatのEUインデックスによる)の残基をシステインに置き換える。発現後に、システイン置換抗体変異体は、遊離のシステイン残基に化学的に結合した様々な形態のPEG(又は前もって合成された炭化水素)を持ちうる。
抗体の生産
ベクター構築
ここで使用される「ベクター」という用語は、それが結合している他の核酸を輸送することのできる核酸分子を意味するものである。一つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは付加的なDNAセグメントが結合されうる円形の二重鎖DNAループを意味する。他の型のベクターはウイルスベクターであり、付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムへ結合させうる。所定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内において自己複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクターとエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、宿主ゲノムと共に複製する。更に、所定のベクターは、それらが作用可能に結合している遺伝子の発現を指令し得る。このようなベクターはここでは「組換え発現ベクター」(又は単に「組換えベクター」)と呼ぶ。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形をとる。本明細書では、プラスミドが最も広く使用されているベクターの形態であるので、「プラスミド」と「ベクター」を相互交換可能に使用する場合が多い。
ここで使用されるところの「翻訳単位」という用語は、ポリペプチド鎖をコードしているヌクレオチド鎖及び隣接する調節領域を含む遺伝子エレメントを意味するものである。「隣接する調節領域」には、例えば翻訳開始領域(TIR;ここでは後で定義)及び終結領域が含まれる。
ここで使用されるところの「翻訳開始領域」又はTIRは対象の遺伝子の翻訳開始の効率をもたらす核酸領域を意味する。一般に、特定の翻訳単位内のTIRはリボソーム結合部位(RBS)及びRBSの5'及び3'配列を包含する。RBSは、最低限、シャインダルガーノ領域と開始コドン(AUG)を含むものと定義される。従って、TIRは翻訳される核酸配列の少なくとも一部をまた含む。好ましくは、TIRは、翻訳単位内に軽鎖又は重鎖をコードしている配列に先行する分泌シグナルペプチドをコードしている配列を含む。TIR変異体は、後でここに定義されるその翻訳強さのような、TIRの効率を改変させる配列変異体(特に置換)をTIR領域内に含む。好ましくは、本発明のTIR変異体は、翻訳単位内の軽鎖又は重鎖をコードしている配列に先行する最初の2から約14、好ましくは約4から12、より好ましくは約6のコドンのシグナル配列を含む。
ここで使用されるところの「翻訳強さ」なる用語は、TIRの一又は複数の変異体がポリペプチドの分泌を指令するのに使用される調節系における分泌ポリペプチドの測定値を意味し、同じ培養及びアッセイ条件での野生型TIR又はある種の他のコントロールと比較した結果を意味する。如何なる理論にも限定されるものではないが、ここで使用されるところの「翻訳強さ」は、例えばmRNA安定性、リボソーム結合部位へのリボソームの結合効率及び膜を貫通する転位置モードの測定値を含みうる。
「分泌シグナル配列」又は「分泌シグナルペプチド」は、対象の新たに合成されたタンパク質を細胞膜、例えば原核生物の内膜又は内膜と外膜の両方を通過するようにするために使用することができる短いアミノ酸配列を意味する。よって、例えば原核細胞においては、軽鎖又は重鎖ポリペプチドのような対象のタンパク質は原核生物宿主細胞の細胞膜周辺中又は培養培地中に分泌される。分泌シグナル配列は宿主細胞に内因性でありうるか、又はそれらは外因性であり得、発現されるポリペプチドに対して未変性のシグナル配列を含む。分泌シグナル配列は典型的にはポリペプチドのN末端部分にあり、典型的には生合成と細胞質からのポリペプチドの分泌の間に酵素的に除去される。よって、分泌シグナル配列は通常は最終のタンパク質産物中には存在しない。
ここで使用されるところの「宿主細胞」(又は「組換体宿主細胞」)という用語は、遺伝子的に改変されたか、又は外因性ポリヌクレオチド、例えば組換えプラスミド又はベクターの導入によって遺伝子的に改変され得る細胞を意味するものである。このような用語は特定の対象細胞だけではなく、そのような細胞の子孫をも意味するものと理解されなければならない。突然変異か又は環境の影響の何れかによりある種の修飾が、次の世代で生じるため、実際は、このような子孫は親細胞と同一ではない可能性があるが、やはりここで使用されるところの「宿主細胞」という用語の範囲に含まれる。
本発明の抗体分子の軽鎖及び重鎖をコードしているDNA配列は標準的な組換えDNA技術を使用して得ることができる。所望のDNA配列はハイブリドーマ細胞のような抗体産生細胞から単離し配列決定することができる。あるいは、DNAはヌクレオチド合成機又はPCR法を使用して合成することができる。ひとたび得られると、軽鎖及び重鎖をコードしているDNAsは原核生物又は真核生物宿主中で異種ポリヌクレオチドを複製し、発現し、分泌することが可能な組換えベクター中に挿入される。当該分野において入手でき知られている多くのベクターを本発明の目的のために使用することができる。適切なベクターの選択は、主として、挿入される核酸のサイズとそのベクターで形質転換される特定の宿主に依存する。
一般には、レプリコン及び宿主細胞と適合性のある種に由来するコントロール配列を含んでいる組換えベクターが、本発明の特定のベクターの構築のための親ベクターとして使用される。そのベクターは、通常、骨格成分として、複製開始点並びに形質転換細胞において表現型の選択を提供可能なマーキング配列を有する。複製開始点部位は、一又は複数の選択された宿主細胞中でベクターが複製するようにする核酸配列である。一般に、クローニングベクターにおいては、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAとは独立に複製するようにするものであり、複製開始点又は自己複製配列を含む。このような配列は様々な細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322由来の複製開始点は殆どのグラム陰性菌に適している。
発現及びクローニングベクターは選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含みうる。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリに対するD-アラニンラセマーゼコード遺伝子のような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。選択スキームの一例は薬物を利用して宿主細胞の成長を抑止することである。異種遺伝子で成功裏に形質転換された細胞は薬物耐性を示すタンパク質を生産し、よって選択計画において生存する。大腸菌の形質転換に適したプラスミドベクターの例はpBR322である。pBR322はアンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性のコード遺伝子を含んでおり、よって形質転換細胞を同定するための簡単な手段を提供する。pBR322又は他の微生物プラスミド又はバクテリオファージの誘導体も親ベクターとして使用することができる。特定の抗体の発現に使用されるpBR322誘導体の例はCarter等の米国特許第5648237号に詳細に記載されている。
また、レプリコン及び宿主微生物と適合性のあるコントロール配列を含んでいるファージベクターを、これらの宿主との関連でトランスフォーミングベクターとして使用することができる。例えば、λGEM.TM.-11のようなバクテリオファージを、大腸菌LE392のような感受性の宿主細胞を形質転換するために使用できる組換えベクターを作製する際に利用することができる。
一実施態様によれば、本発明の組換えベクターは、一方は軽鎖の発現のためで、他方は重鎖の発現のための、少なくとも二つの翻訳単位を含む。更に、軽鎖と重鎖のための二つの翻訳単位は異なったプロモーターの調節下にある。プロモーターはその発現を調節するコード配列(一般に約100から1000bp内)の開始点の上流(5')に位置している未翻訳配列である。このようなプロモーターは典型的には誘導性と構成的との二つのクラスのものがある。誘導性プロモーターは、例えば栄養分の有無又は温度もしくはpHの変化のような、培養条件のある変化に応答してその調節下でDNAからの増大したレベルの転写を開始させるプロモーターである。
本発明の目的のためには、構成的又は誘導性の何れかのプロモーターを、時間的に第一の鎖の発現を調節する最初のプロモーターとして使用することができ、誘導性プロモーターを続く第二鎖の発現を調節する第二のプロモーターとして使用する。好適な実施態様では、第一プロモーターと第二プロモーターの双方が緊縮的調節下で誘導性プロモーターである。様々な潜在的な宿主細胞によって認識される非常に多くのプロモーターはよく知られている。選択されたプロモーター配列を、制限酵素による消化によって供給源DNAから単離することができ、本発明のベクター中に挿入することができる。あるいは、選択されたプロモーター配列は合成することができる。天然プロモーター配列と多くの異種プロモーターの双方を、標的遺伝子の増幅及び/又は発現を生じさせるために使用することができる。しかしながら、天然の標的ポリペプチドプロモーターと比較して発現された標的遺伝子のより大なる転写とより高い収量を一般に可能にすることから、異種プロモーターが好ましい。
原核生物宿主での使用に好適なプロモーターには、PhoAプロモーター、βラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系及びハイブリッドプロモーター、例えばtac又はtrcプロモーターが含まれる。しかし、細菌中で機能性である他のプロモーター(例えば他の既知の細菌又はファージプロモーター)も好適である。そのヌクレオチド配列は発表されており、よって当業者は、任意の必要とされる制限部位を供給するリンカー又はアダプターを使用して標的軽鎖及び重鎖をコードする翻訳単位にそれらを作用可能に結合させることができる(Siebenlist等 (1980) Cell 20:269)。この発明での使用により好適なプロモーターはPhoAプロモーターとTacIIプロモーターである。真核生物宿主細胞において機能的であるプロモーターは、例えば米国特許第6331415号に記載されているように、当該分野においてよく知られている。そのようなプロモーターの例には、ポリオーマ、アデノウイルス2又はシミアンウイルス40(SV40)から誘導されたものが含まれうる。
本発明の組換えベクターの各翻訳単位は挿入された遺伝子の十分な発現に必要な更なる未翻訳配列を含んでいる。組換えベクターのそのような本質的な配列は当該分野で知られており、例えば、開始コドンに5'末端が位置したシャイン-ダルガーノ領域及び翻訳単位の3'末端に位置している転写終結因子(例えばλto)が含まれる。
組換えベクターの各翻訳単位は、膜を貫通して発現された鎖ポリペプチドを分泌させるシグナル配列成分を更に含む。一般に、分泌シグナル配列はベクターの成分でありうるか、ベクター中に挿入される標的ポリペプチドDNAの一部でありうる。この発明の目的のために選択される分泌シグナル配列は宿主細胞によって認識されプロセシングされる(つまりシグナルペプチダーゼにより切断される)ものでなければならない。異種ポリペプチドに天然のシグナル配列を認識せずプロセシングしない原核生物宿主細胞に対しては、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ippあるいは熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA及びMBPからなる群から選択される原核生物シグナル配列によって置換される。本発明の好適な実施態様では、発現系の双方の翻訳単位において使用されるシグナル配列はSTIIシグナル配列又はその変異体である。好ましくは、そのようなシグナル配列をコードしているDNAは軽鎖又は重鎖をコードしているDNAの5'末端に読み枠を一致させて結合され、融合ポリペプチドが得られる。ひとたび宿主細胞の細胞質から分泌されると、シグナルペプチド配列が成熟ポリペプチドから酵素的に切断される。
本発明のある側面では、分泌され正しく組み合わされる抗体又はその断片の収量を最大にするために、発現のタイミングに加えて、軽鎖と重鎖の発現の定量的比率がまた調節される。そのような調節は、本発明の組換えベクター上の軽鎖と重鎖に対する翻訳強さを同時に調節することによって達成される。翻訳強さを調節する一つの方法は、Simmons等の米国特許第5840523号に開示されている。簡単に述べると、このアプローチは翻訳単位内の翻訳開始領域(TIR)の変異体を利用する。与えられたTIRに対して、ある範囲の翻訳強さを持つ一群のアミノ酸又は核酸配列変異体をつくり出すことができ、それによって、所望の発現レベルの特異的鎖に対してこの因子を調節するための簡便な手段を提供する。TIR変異体はアミノ酸配列を改変することができるコドン変化を生じる一般的な突然変異誘発法によって産生することができるが、ヌクレオチド配列のサイレント変化(以下に記載する)が好ましい。TIRの変化には、例えばシグナル配列の変更と共に、シャイン-ダルガーノ配列の数又は間隔の変更が含まれうる。変異体シグナル配列を作成するための好適な一方法はシグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(つまり変化がサイレントである)コード配列の最初での「コドンバンク」の産生である。これは、各コドンの第三のヌクレオチド位置を変化させることによって、達成できる;加えて、幾つかのアミノ酸、例えばロイシン、セリン、及びアルギニンはバンクの作製に複雑さを付加し得る複数の第一及び第二の位置を有している。この突然変異誘発の方法はYansura等(1992) METHODS: A Companion to Methods in Enzymol. 4:151-158に詳細に記載されている。
好ましくは、そこの各翻訳単位に対してある範囲のTIR強さを有する一群のベクターが産生される。この制限された群は各鎖の発現レベルと様々なTIR強さの組合せ下で抗体産物の収量の比較をもたらす。TIR強さはSimmons等の米国特許第5840523号に記載されているレポーター遺伝子の発現レベルを定量することによって決定することができる。この発明の目的において、ベクター内の特定対のTIRsに対する翻訳強さの組合せは(N-軽、M-重)によって表され、ここで、Nは軽鎖の相対TIR強さであり、Mは重鎖の相対TIR強さである。例えば、(7-軽、3-重)は、ベクターが軽鎖の発現に対しての約7の相対TIR強さと重鎖の発現に対しての約3の相対TIR強さを提供することを意味する。翻訳強さの比較に基づいて、所望の個々のTIRsが選択されて、本発明の発現ベクターコンストラクト中で組み合わされる。
上に列挙した成分の一又は複数を含む適切なベクターの構築には標準的なライゲーション技術及び/又は当該分野で既知の他の分子クローニング法が用いられる。単離されたプラスミド又はDNA断片は切断され、目的に合わせて最適化され、必要とされるプラスミドを産生するために望ましい形態に再結合される。
構築されたプラスミド中の配列が正しいかを確認する分析には、ライゲーション混合物を用いて大腸菌株を形質転換させ、成功した形質転換体を適切な場合にはアンピシリン又はテトラサイクリン耐性によって選択する。形質転換体からプラスミドが調製され、制限エンドヌクレアーゼ消化によって分析され、及び/又はSanger等 (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:5463-5467又はMessing等 (1981) Nucleic Acids Res. 9:309の方法、又はMaxam等 (1980) Methods in Enzymology 65:499の方法によって配列決定される。多くの市販の自動シークエンサーを用いてプラスミドの配列決定を行うことができる。例えば、ABI PRISM3700DNAアナライザー(Applied Biosystems, Foster City, CA)は蛍光標識されたDNA断片を分析する自動キャピラリー電気泳動法シークエンサーである。試料準備の説明は装置に添えられているシークエンシングケミストリーガイドに与えられている。
本発明の抗体を発現するのに適した原核生物宿主細胞には、古細菌及び真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物が含まれる。有用な細菌の例には、エシェリキア属(例えば大腸菌)、バシラス属(例えば枯草菌)、エンテロバクター属、シュードモナス種(例えば緑膿菌)、ネズミチフス菌、霊菌(Serratia marcescans)、クレブシエラ属、プロテウス属、赤痢菌、根粒菌、ビトレオシラ(Vitreoscilla)又はパラコッカス(Paracoccus)が含まれる。好ましくはグラム陰性菌が使用される。より好ましくは大腸菌細胞が本発明の宿主として使用される。
多くの大腸菌株がここでの発現宿主として又は改変発現宿主をつくり出すことができる親宿主として好適である。当該分野で知られており入手可能な大腸菌株には、限定されるものではないが、大腸菌W3110(ATCC27325)、大腸菌294(ATCC31446)、大腸菌B、大腸菌1776(ATCC31537)及び大腸菌RV308(ATCC31608)が含まれる。上述の細菌の何れかの変異体細胞もまた用いることができる。勿論、細菌細胞中でのレプリコンの複製能を考慮して適した細菌を選択することが必要である。pBR322、pBR325、pACYC177、又はpKN410のようなよく知られたプラスミドを使用してレプリコンを供給する場合、例えば、大腸菌、セラシア属、又はサルモネラ種を宿主として好適に用いることができる。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌しなければならず、望ましくは更なるプロテアーゼインヒビターを細胞培養中に導入することができる。
好適な真核生物宿主細胞もまた当該分野で知られている。例えば宿主細胞には、酵母、VERO、HeLa、CHO、W138、BHK、COS-7及びMDCK細胞が含まれうる。
宿主細胞の形質転換と増殖
上述した組換えベクターで宿主細胞を形質転換又は形質移入し(「形質転換」と「形質移入」という用語はここでは交換可能に使用される)、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように修飾された通常の栄養培地中で培養する。
形質転換とは、DNAを原核生物宿主中に導入し、そのDNAを染色体外要素として、又は染色体組込みによって複製可能にすることを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換はそのような細胞に適した標準的技術を使用してなされる。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理は実質的な細胞壁障害を含む細菌細胞のために一般に使用される。形質転換のための他の方法はポリエチレングリコール/DMSOを用いる。さらに別の方法はエレクトロポレーションである。形質移入とは、何れかのコード化配列が実際に発現されるか否かによらず、宿主細胞によって発現ベクターが取り込まれることを意味する。形質移入の多くの方法が、当業者に知られており、例えばCaPO沈殿及びエレクトロポレーションである。このベクターの操作の何れかの徴候が宿主細胞内で生じたときに、形質移入の成功が一般に認められる。
本発明のポリペプチドを生産するために使用される原核生物細胞は当該分野で知られ、選択された宿主細胞の培養に適した培地中で増殖させられる。好適な培地の例には、ルリア培地(LB)プラス必須栄養分サプリメントが含まれる。好適な実施態様では、培地は発現ベクターを含む原核生物細胞の増殖を選択的に可能にするために、発現ベクターの構成に基づいて選択される選択剤をまた含む。例えば、アンピシリンがアンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖用培地に加えられる。炭素、窒素及び無機リン酸源の他に任意の必要なサプリメントを、単独で、又は複合窒素源のような他のサプリメント又は培地との混合物として導入される適切な濃度で含有させられうる。場合によっては、培養培地はグルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトール及びジチオトレイトールからなる群から選択される一又は複数の還元剤を含みうる。
原核生物宿主細胞は適切な温度で培養される。例えば、大腸菌の増殖に対しては、好適な温度は約20℃から約39℃、より好ましくは約25℃から約37℃の範囲、更により好ましくは約30℃である。培地のpHは、主として宿主生物に応じて、約5から約9の範囲の任意のpHでありうる。大腸菌に対しては、pHは好ましくは約6.8から約7.4、より好ましくは約7.0である。
本発明の抗体を生産するために使用される真核生物宿主細胞は当該分野で知られている様々な培地中で培養することができる。例えば、ハム(Ham)のF10(Sigma)、最小必須培地((MEM), Sigma)、RPMI−1640(Sigma)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM), Sigma)のような市販培地が哺乳動物真核宿主細胞を培養するのに適している。また、Ham及びWallace, Meth. Enz.,58:44(1979), Barnes及びSato, Anal. Biochem., 102:255(1980)、米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号又は同4560655号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;米国特許再発行特許第30985号;又は米国特許第5122469号で、その全ての開示が出典を明記してここに取り込まれるこれらの文献に記載されている任意の培地を宿主細胞の培養培地として用いることができる。これらの培地には何れも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシンTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物と定義される)、及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要なサプリメントもまた当業者に知られている適当な濃度で含めることができる。例えば温度、pHのような培養条件は、発現のために選択された宿主細胞にこれまで用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
軽鎖と重鎖の時間的に分離した発現
ひとたび宿主細胞がある密度まで増殖させられると、培養条件はタンパク質(群)の合成を促進するように変更される。本発明によれば、軽鎖と重鎖は合成段階の間の異なったときに誘導される。一側面では、軽鎖と重鎖の時間的に分離した発現は、上述した二重プロモーターベクターを使用して実現される。誘導性プロモーター(群)が本発明の二重プロモーターベクターに使用される場合、タンパク質の発現はプロモーターの活性化に適した条件下で誘導される。好適な実施態様では、両方のプロモーターが誘導性である。より好ましくは、二重プロモーターはそれぞれphoA及びTacIIである。例えば、軽鎖の転写を調節するためにphoAプロモーターが使用されるベクターを構築することができ、重鎖の転写を調節するためにTacIIプロモーターを使用する。誘導の最初の段階の間、そのようなphoA/TacII二重プロモーターベクターで形質転換された原核生物宿主細胞はphoAプロモーターの誘導と軽鎖の発現のためのリン酸塩制限培地中で培養される。軽鎖の発現に対して所望の時間の後に、十分な量のIPTGを、TacIIプロモーターの誘導と重鎖の生産のために培養に添加する。
一側面では、本発明の抗体又は抗体断片は宿主細菌細胞の細胞質中で発現することができる。大腸菌細胞質中での可溶型の機能的抗体又は抗体断片の生産を改善するために様々な方法を使用することができる。例えば、trxB遺伝子を欠く大腸菌株は細胞質中のジスルフィド結合の形成を亢進することが見出されており、よって細胞質中での適切なジスルフィド結合形成を伴う機能的抗体分子の発言を促進させるのに有用である。Proba等 (1995) Gene 159:203-207。抗体断片変異体は、V及びVの両方において変異体がジスルフィド結合の形成を必要としないようにシステイン残基を置き換えて作成することができ、しばしば「細胞内発現抗体(intrabodies)」と称されるそのような抗体断片変異体を、細菌細胞質におけるように、効率的なジスルフィド架橋の形成とは適合性がない還元環境下で作成することができる。Proba等 (1998) J.Mol.Biol. 275:245-253。
本発明のベクターに分泌シグナル配列が用いられる場合、発現された軽鎖及び重鎖ポリペプチドは宿主細胞の細胞膜周辺中に分泌され、そこから回収される。タンパク質の回収は、一般的には浸透圧ショック、超音波処理又は溶解のような手段によって典型的には微生物を破壊することを含む。ひとたび細胞が破壊されると、細胞片又は全細胞を遠心分離又は濾過によって除去することができる。タンパク質は、例えばアフィニティー樹脂クロマトグラフィーによって更に精製することができる。あるいは、タンパク質は培養培地に輸送しそこで分離することができる。細胞を培養物から除去することができ、培養上清は濾過され、生成したタンパク質の更なる精製のために濃縮される。発現されたポリペプチドを更に単離し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)及びウェスタンブロットアッセイ法のような一般的に知られている方法を使用して同定することができる。
本発明の一側面では、抗体は発酵法によって多量に製造される。組換えタンパク質の生産には様々な大規模流加発酵法を利用することができる。大規模発酵は少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1000から100000リットルの容量である。これらの発酵槽は、酸素と栄養分、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分散させる撹拌翼又は他の適切な手段を使用する。小規模発酵とは一般におよそ100リットル以下の容積で、約1リットルから約100リットルの範囲でありうる発酵槽での発酵を意味する。
発酵法では、タンパク質の発現の誘導は、典型的には、細胞が適切な条件下で所望の密度、例えば約180−270のOD550まで増殖したところで開始される。当該分野で知られ上述されているように、用いられるベクターコンストラクトに応じて、様々なインデューサーを用いることができる。細胞を誘導前の短い時間の間、増殖させてもよい。細胞は通常約12−50時間の間、誘導されるが、更に長い又は短い誘導時間としてもよい。
本発明の抗体分子の生産収量と品質を更に改善するために、様々な発酵条件を変更することができる。例えば、分泌される抗体ポリペプチドの正しい組み立てとフォールディングを改善するために、例えばDsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD及び/又はDsbG)又はFkpA(シャペロン活性を持つペプチジルプロピルシス、トランス-イソメラーゼ)のようなシャペロンタンパク質を過剰発現する更なるベクターを用いて宿主原核細胞を同時形質転換させることができる。シャペロンタンパク質は細菌宿主細胞中で生産される異種性タンパク質の適切な折り畳みと溶解性を容易にすることが実証されている。Chen等 (1999) J Bio Chem 274:19601-19605;Georgiou等, 米国特許第6083715号;Georgiou等, 米国特許第6027888号;Bothmann及びPluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17100-17105;Ramm及びPluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17106-17113;Arie等 (2001) Mol. Microbiol. 39:199-210。十分なジスルフィド結合は、二つの重鎖と二つの軽鎖を有する完全長二価抗体の形成とフォールディングに特に重要である。
例えば原核生物宿主細胞におけるような、発現された異種タンパク質(特にタンパク分解を受けやすいもの)のタンパク質分解を最小にするために、タンパク質分解酵素を欠くある種の宿主株を本発明に用いることができる。例えば、原核生物宿主細胞株を改変して、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI及びその組合せのような既知の細菌プロテアーゼをコードしている遺伝子に遺伝子突然変異を生じさせることができる。幾つかの大腸菌プロテアーゼ欠損株が利用でき、例えば、上掲のJoly等 (1998);Georgiou等, 米国特許第5264365号;Georgiou等, 米国特許第5508192号;Hara等 (1996) Microbial Drug Resistance 2:63-72に記載されている。
抗体の精製
宿主細胞から調製された抗体組成物は好ましくは少なくとも一の精製工程にかけられる。適切な精製工程の例には、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーが含まれ、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしての特定のタンパク質の適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFc領域のアイソタイプ及び種に依存する。例えば、プロテインAを、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる。Lindmark等, (1983) J. Immunol. Meth. 62:1-13。プロテインGが、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨される。Guss等, (1986) EMBO J. 5:15671575 。アフィニティーリガンドが結合するマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他のマトリクスも使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースによって達成できるものより速い流速と短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、ベーカーボンド(Bakerbond)ABXTM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(登録商標)クロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン交換樹脂(例えばポリアスパラギン酸カラム)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などの他のタンパク質精製技術もまた回収される抗体に応じて利用可能である。
好適な実施態様では、ここで生産される抗体は、更なるアッセイと使用のためにより実質的に均一である調製物を得るために更に精製される。例えば、疎水的相互作用クロマトグラフィー(HIC)、特に米国特許第5641870号に記載されているような低pHのHIC(LPHIC)を更なる精製のために使用することができる。特に、LPHICは不必要な汚染物(例えば、不正確に結合された軽鎖重鎖断片)から正しく折り畳まれジスルフィド結合した抗体を取り除く方法を提供する。
活性のアッセイ
本発明の抗体は当該分野で知られている様々なアッセイによってその物理的/化学的性質及び生物学的機能について特徴付けることができる。本発明の一側面では、本発明の二重プロモーター系において作成された抗体を、異なった発現ベクター設計又は異なった宿主細胞系のような他の発現系において作成された類似の抗体と比較することが重要である。特に、本発明の二重プロモーターベクターによって発現される組み立て抗体複合体の量を、様々な多シストロン性ベクターによって発現されるものと比較することができる。タンパク質の定量法は当該分野においてよく知られている。例えば、発現されたタンパク質の試料を、クーマシー染色SDS-PAGEでのその定量強度について比較することができる。あるいは、対象の特定のバンド(例えば組み合わせられたバンド)を、例えばウェスタンブロットゲル分析によって検出することができる。
精製された抗体は、限定されるものではないが、N末端シークエンシング、アミノ酸解析、非変性サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析、イオン交換クロマトグラフィー及びパパイン消化を含む一連のアッセイによって更に特徴付けることができる。
本発明の所定の実施態様では、ここで生産された抗体はその生物学的活性について分析される。好ましくは、本発明の抗体はその抗原結合活性について試験される。当該分野で知られ、ここで使用することができる抗原結合アッセイには、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、エライザ(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドウィッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、及びプロテインAイムノアッセイのような技術を使用する任意の直接的又は競合的結合アッセイが制限なく含まれる。抗原結合アッセイの例は実施例の欄に後記される。
抗体の用途
本発明の抗体は、様々な疾患又は疾病のためのインビトロとインビボの双方の診断、予防又は治療法を含む、それが認識する特異的ポリペプチドを、例えば精製し、検出し、標的とするために使用できる。
「疾患」は抗体で治療することで恩恵を得るあらゆる症状のことである。これには、問題の疾患に哺乳動物を罹患させる素因になる病理状態を含む、慢性及び急性の疾患又は疾病が含まれる。ここで治療される疾患の非限定的例には、悪性及び良性の腫瘍;非白血病及びリンパ悪性腫瘍;ニューロン、神経膠、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、間質性及び割腔の疾患;及び炎症、血管形成及び免疫性疾患が含まれる。
ここで「自己免疫疾患」とは、個人の自身の組織から生じる、また該組織に対する非悪性疾患又は障害のことである。ここでの自己免疫疾患には、特に悪性又は癌腫の疾患又は病状は含まれず、なかでも、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球リンパ腫(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、毛様細胞白血病及び慢性骨髄芽球白血病は含まれない。自己免疫疾患又は障害の例には、これらに限るものではないが、炎症反応、例えば乾癬及び皮膚炎(例えばアトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚病;全身性強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎)に関連した反応;呼吸困難症候群(成人性呼吸困難症候群;ARDS);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギーによる病状、例えば湿疹及び喘息及びT細胞の浸潤に関連した他の病状及び慢性炎症反応;アテローム性動脈硬化症;白血球付着欠損症;リウマチ様関節炎;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病(例えばI型真性糖尿病又はインシュリン依存性真性糖尿病);多発性硬化症;レノー症候群;自己免疫甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;ショルゲン(Sjorgen)症候群;若年発症糖尿病;及び結核に典型的に見出されるTリンパ球及びサイトカインにより媒介される急性及び遅延高血圧に関連した免疫反応、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽種症及び血管炎;悪性貧血(アジソン病);白血球血管外遊出に関連した疾患;中枢神経系(CNS)炎症疾病;多臓器傷害症候群;溶血性貧血(限定するものではないが、クリオグロブリン血症又はクームズ陽性貧血を含む);重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランベルト-イートン筋無力症症候群;類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター病;スティフマン症候群;ベーチット疾患;巨細胞動脈炎;免疫複合体腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;免疫血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫血小板減少病等が含まれる。
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺腫、肺の扁平上皮癌腫、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頚癌、卵巣癌、肝癌(liver cancer)、膀胱癌、肝臓癌(hepatoma)、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝細胞癌及び様々な種類の頭部及び頸部の癌が含まれる。
ここで使用されるところの「治療」とは、治療されている個人又は細胞の自然の過程を改変するための臨床的処置を意味し、予防のため又は臨床病理の過程の何れかで実施することができる。治療の所望される効果には、疾病の発症又は再発の防止、徴候の緩和、疾病のあらゆる直接的又は間接的な病的結果の消失、転移の防止、疾病の進行速さの低減、疾病状態の改善又は緩和、及び沈静化又は予後の改善が含まれる。
「有効量」とは、所望の治療又は予防効果を達成するための、必要な用量及び時間の有効量を意味する。抗体の「治療的有効量」は個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重のような因子と、個体における所望の反応を誘発する抗体の能力に応じて変化しうる。治療的有効量はまた抗体の任意の毒性又は致命的な影響より治療的に有益な効果がより勝るものである。「予防的有効量」とは所望の予防的効果を達成するための、必要な用量及び時間の有効量を意味する。典型的には、予防的投薬は疾患の初期段階の前又は初期段階の患者に使用されるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ない。
一側面では、本発明の抗体は生物学的試料中の特異的抗原を定性的かつ定量的に測定するためのイムノアッセイにおいて使用することができる。抗原-抗体結合を検出する一般的な方法には、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(エライザ)、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は組織免疫組織化学法が含まれる。多くの方法は、検出目的のために抗体に結合した標識を使用しうる。抗体に使用される標識は抗体へのその結合に干渉しない任意の検出可能な官能性である。放射性同位体32P、32S、14C、125I、H及び131I、フルオロフォア、例えば希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン(umbelliferone)、ルセリフェラーゼ(luceriferases)、例えばホタルルシフェラーゼ及びバクテリアルシフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、複素環オキシダーゼ、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定フリーラジカル、イメージング放射性核種(テクネチウム)等々を含む多くの標識が知られている。
これらの標識を共有結合的に抗体ポリペプチドと結合させるためには、常套的な方法が利用できる。例えば、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、ビス-イミデート、ビス-ジアゾ化ベンジジン等のカップリング剤を、上述の蛍光、化学発光、及び酵素標識で抗体をタグ化するのに用いることができる。例えば、米国特許3940475号(蛍光定量法)及び3645090号(酵素法);Hunter等, Nature 144:945 (1962);David等, Biochemistry 13:1014-1021 (1974);Pain等, J. Immunol. Methods 40:219-230 (1981);及びNygren J. Histochem. and Cytochem. 30:407-412 (1982)を参照のこと。ここでの好ましい標識は西洋ワサビペルオキシダーゼ及びアルカリフォスファターゼのような酵素である。酵素を含むこのような標識の抗体ポリペプチドへの結合は、イムノアッセイ技術における当業者にとって、標準的な操作可能な方法である。例えば、O'Sullivan等,"Methods for the Preparation of Enzyme-antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay," Methods in Enzymology,. J.J.Langone 及びH. Van Vunakis編, Vol.73 (Academic Press, New York, New York, 1981), pp147-166を参照のこと。このような結合法はこの発明の抗体ポリペプチドの場合に用いて好適である。
抗体の標識の代わりに、未標識抗体と検出可能な物質で標識した競合抗原標準物質を利用する競合イムノアッセイによって生物学的流体中の抗原をアッセイすることができる。このアッセイでは、生物学的試料と標識抗原標準物質と抗体が組み合わされ、未標識抗体に結合した標識抗原標準物質の量が決定される。生物学的試料中の試験抗原の量は抗体に結合した標識抗原標準物質の量に反比例する。
一側面では、本発明の抗体はインビトロ又はインビボで特異的表面抗原の発現を検出し特徴付けるのに特に有用である。表面抗原は特定の細胞又は組織型に特異的であり得、よってその細胞又は組織型のマーカーとなる。好ましくは、表面抗原マーカーは特定の細胞又は組織型の様々な分化段階に差次的に発現される。よって、そのような表面抗原に対する抗体はマーカーを発現する細胞又は組織集団のスクリーニングに使用することができる。例えば、本発明の抗体は幹細胞、例えば胚性幹細胞、造血幹細胞及び間葉幹細胞のスクリーニング及び単離に使用することができる。本発明の抗体はまたHER2、HER3又はHER4レセプターのような腫瘍関連表面抗原を発現している腫瘍細胞を検出するために使用することができる。
本発明の抗体はアフィニティー精製剤として使用することができる。この方法では、抗体は、当該分野でよく知られた方法を使用して、固相、例えばセファデックス樹脂又は濾過紙に固定される。固定化抗体は精製すべき抗原を含む試料に接触させられた後、支持体を、固定化抗体に結合している、精製される抗原を除いて試料中の実質的に全ての物質を除く適切な溶媒で洗浄する。最後に、抗体から抗原を引き離すグリシンバッファーpH5.0のような他の適切な溶媒で支持体を洗浄する。
本発明の抗体はインビトロとインビボの双方で特異的抗原活性を部分的又は完全に阻止するアンタゴニストとして使用することができる。更に、本発明の抗体の少なくとも幾つかは他の種からの抗原活性を中和することができる。従って、本発明の抗体は、例えば抗原を含む細胞培養物中において、ヒトの患者において、又は本発明の抗体が交差反応する抗原を有する他の哺乳動物被検体(例えば、チンパンジー、ヒヒ、マーモセット、カニクイザル及びアカゲザル、ブタ又はマウス)において、特異的抗原活性を阻害するために使用することができる。
他の実施態様では、本発明の抗体は、抗原活性が致命的な疾患を煩っている患者において抗原を阻害する方法であって、患者の抗原活性が阻害されるように本発明の抗体を患者に投与することを含む方法において使用することができる。好ましくは、抗原はヒトタンパク質分子であり、患者はヒト患者である。あるいは、患者は、本発明の抗体が結合する抗原を発現する哺乳動物でありうる。また更に患者は抗原が(例えば抗原の投与によって又は抗原導入遺伝子の発現によって)導入されている哺乳動物でありうる。本発明の抗体は治療目的のためにヒト患者に投与され得る。更に、本発明の抗体は、獣医目的のために又はヒト疾病の動物モデルとして抗体が交差反応する抗原を発現する非ヒト哺乳動物(例えば霊長類、ブタ又はマウス)に投与することができる。後者に関しては、そのような動物モデルは本発明の抗体の治療効果を評価(例えば用量及び投与の時間的経過の試験)するのに有用でありうる。治療的に有用な本発明の阻止抗体には、限定されるものではないが、例えば抗VEGF、抗IgE、抗CD11及び抗組織因子抗体が含まれる。本発明の阻止抗体は、制限されるものではないが、悪性及び良性腫瘍;非白血病及びリンパ悪性腫瘍;ニューロン、神経膠、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、間質性及び割腔の疾患;及び炎症、血管形成及び免疫性疾患を含む、一又は複数の抗原分子の活性及び/又は異常発現に関連した疾病、疾患又は症状を診断、治療、阻害又は防止するために使用することができる
一側面では、本発明の阻止抗体はリガンド抗原に特異的であり、リガンド抗原を含むリガンド-レセプター相互作用を阻止又は妨害することにより抗原活性を阻害し、よって対応するシグナル経路及び他の分子又は細胞性事象を阻害する。本発明はまたリガンド結合を必ずしも防止しないがレセプター活性化を妨害するレセプター特異的抗体を特色とし、リガンド結合によって通常は開始されるであろう任意の応答を阻害する。本発明はまた好ましくは又は排他的にリガンド-レセプター複合体に結合する抗体を包含する。本発明の抗体はまた特定の抗原レセプターのアゴニストとして作用し得、それによってリガンド媒介レセプター活性化の全ての又は部分的な活性を増強し、亢進し又は活性化する。
ある実施態様では、細胞毒性剤と結合させた抗体を含む免疫複合体が作成され使用される。好ましくは免疫複合体及び/又はそれが結合する抗原は細胞によって内部移行させられ、それが結合する標的細胞を殺す免疫複合体の治療効果を増大させる。好適な実施態様では、細胞毒性剤は標的細胞中の核酸を標的とし又はそれを妨害する。
ここで使用されるところの「細胞毒性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質を意味する。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位元素)、化学治療薬、及び細菌、真菌、植物又は動物起源の酵素活性毒素又は小分子毒素等の毒素で、それらの断片及び/又は変異体を含むことを意図する。
「化学治療薬」は、癌の治療に有用な化合物である。化学治療薬の例には、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXANTM);スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン(piposulfan);アジリジン類、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa);アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン類(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトセシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ズオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCBI-TMIを含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ 及びカリケアマイシンθ 、例えばAgnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186(1994)参照のこと;ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素蛋白エネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリン類似体、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)、5-FU;アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類、例えばパクリタキセル(Taxol(商品名), Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)及びドキセタキセル(Taxotere(商品名), Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲムシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナ類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;マイトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ネイブルビン(navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFG2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン(capecitabine);及び上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。また、この定義に含まれるのは、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、4(5)-イミダゾール類を抑制するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、及びLY117018、オナプリストン(onapristone)及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体などの腫瘍へのホルモン作用を調節又は抑制するように作用する抗ホルモン剤である。
また、ここではカリケアマイシン(calicheamicin)、メイタンシン(maytansine)(米国特許第5208020号)、トリコセン(trichothene)、及びCC1065等の、一又は複数の小分子毒素と抗体とのコンジュゲートが考えられる。
本発明の好適な一実施態様では、抗体は一又は複数のメイタンシン分子(例えば、抗体1分子当たり、メイタンシン約1〜約10分子)とコンジュゲートされる。例えば、メイタンシンはMay-SH3に還元され、修飾された抗体と反応するMay-SS-Meに転化され(Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992))、メイタンシノイド-抗体免疫コンジュゲートを生産する。
興味のある他の免疫複合体は一又は複数のカリケアマイシン分子にコンジュゲートされた抗体を含む。カリケアマイシンファミリーの抗生物質はサブピコモル濃度で二本鎖DNA破損体を生産することができる。使用されるカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ 、α 、α 、N-アセチル-γ 、PSAG及びθ が含まれる(Hinman等, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)及びLode等, Cancer Research, 58:2925-2928(1998))。また米国特許第5714586号;同第5712374号;同第5264586号;及び同第5773001号を参照のこと。
使用可能な酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば1993年10月28日に公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明では、ヌクレオチド鎖切断活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)と抗体とからなる免疫複合体を更に考慮する。
種々の放射活性同位体も放射コンジュゲート抗体の製造に利用できる。例にはAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体が含まれる。
抗体と細胞毒性剤のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは細胞中の細胞毒性剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチターゼ過敏性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chari等 Cancer Research, 52:127-131(1992))。
別法として、抗体及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。
他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いてキレート剤を使用し、循環から未結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
本発明の抗体は、治療において単独に又は他の組成物と組み合わせて使用することができる。例えば、抗体は、別の抗体、化学療法剤(群)(化学療法剤のカクテルを含む)、他の細胞毒性剤(群)、抗血管形成剤(群)、サイトカイン、及び/又は成長阻害剤(群)と共に同時投与されうる。抗体が腫瘍成長を阻害する場合、腫瘍の成長をまた阻害する一又は複数の他の治療剤(群)と抗体を組み合わせることが特に望ましいであろう。例えば、VEGF活性を阻止する抗VEGF抗体を、転移性乳癌の治療において抗ErbB抗体(例えばハーセプチン(登録商標)抗HER2抗体)と組み合わせることができる。別法として、又は付加的に、患者は併用放射線療法(例えば外的ビーム照射あるいは抗体のような放射標識剤での治療法)を受けてもよい。上に言及したそのような併用療法には併用投与(2又はそれ以上の薬剤が同一の又は別の製剤中に含まれる)、及び別個の投与が含まれ、後者の場合は、抗体の投与が補助療法又は療法の投与の前、及び/又はそれに続いて行われ得る。
抗体(及び補助治療剤)は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、及び鼻内、及び局所的な治療が必要な場合の病変部内投与を含む適切な手段で投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下投与が含まれる。また、抗体は、特に減じた抗体用量で、パルス注入によって適切に投与される。好ましくは、投与は注射により、最も好ましくは、部分的には投与が短時間か慢性的かに応じて、静脈内又は皮下注射によってなされる。
本発明の抗体組成物は、良好な医療実務に合致した形で製剤され、用量決定され、投与される。この点で考慮される要因には、治療されている特定の疾患、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療実務家に既知の他の要因が含まれる。抗体は、必要ではないが、場合によっては、問題の疾患を防止又は治療するために現在使用されている一又は複数の薬剤と共に製剤される。そのような他の薬剤の有効量は製剤中に存在する抗体の量、疾患又は治療のタイプ、及び上で検討した他の因子に依存する。これらは一般に又上述のものと同じ用量及び投与経路で、あるいはこれまで用いられた用量の約1ないし99%で使用される。
疾病の防止又は治療のためには、(単独で又は化学療法剤のような他の薬剤と組み合わせて使用される場合)抗体の適切な用量は、治療すべき疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重篤さ及び経過、抗体が予防的か治療目的で投与されるか、従前の治療、患者の臨床履歴及び抗体に対する反応、及び担当医師の裁量に依存する。抗体は、一度で又は一連の治療にわたって適切に患者に投与される。疾患のタイプと重篤さに応じて、約1μg/kgから15mg/kg(例えば、0.1mg/kg−10mg/kg)の抗体が、患者への投与の初期候補用量であり、例えば一又は複数の別々の投与か、連続注入かは問わない。典型的な1日の用量は、上記の要因に依存して、約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上の範囲である。数日間以上にわたる繰り返し投与については、状態に応じて、望まれる疾患状態の抑制が起こるまで治療を続ける。抗体の好適な用量は、約0.05mg/kgから10mg/kgの範囲である。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はその任意の組合せ)の一又は複数の用量を患者に投与することができる。そのような用量は、断続的に、例えば毎週又は3週毎に(例えば患者が約2から約20まで、例えば約6用量の抗体を服用するように)投与されうる。最初に高負荷用量で、一又は複数の低用量が続くようにして投与しうる。例示的な投与計画は、約4mg/kgの初期負荷用量の後に、約2mg/kgの抗体の毎週の維持用量を続ける。しかし、他の用量計画も有用でありうる。この治療の進行は常套的な技術及びアッセイによって容易にモニターされる。
医薬製剤
抗体の治療用製剤は、所望の純度を持つ抗体と、場合によっては生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤を混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A. 編 (1980))、水溶液、凍結乾燥又は他の乾燥製剤の形態に調製されて保存される。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる用量と濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、ヒスチジン及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
ここでの製剤は、治療される特定の徴候のために必要ならば一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を持つものも含んでよい。そのような分子は、好適には、意図する目的のために有効な量で組み合わされて存在する。
また活性成分は、例えばコアセルベーション技術あるいは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、コロイド状ドラッグデリバリー系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)に、あるいはマクロエマルションに捕捉させてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A.編 (1980)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
徐放性調合物を調製してもよい。徐放性調合物の好ましい例は、抗体を含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは、分子を100日以上かけて放出することを可能にするが、ある種のヒドロゲルはタンパク質をより短い時間で放出する。カプセル化された抗体が体内に長時間残ると、37℃の水分に暴露された結果として変性又は凝集し、生物活性を喪失させ免疫原性を変化させるおそれがある。合理的な戦略を、関与するメカニズムに応じて安定化のために案出することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による分子間S-S結合の形成であることが見いだされた場合、安定化はスルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含有量を制御し、適当な添加剤を使用し、また特定のポリマーマトリクス組成物を開発することによって達成されうる。
製造品
本発明の他の実施態様では、上記の疾患の治療に有用な物質を含む製造品が提供される。該製造品は容器と該容器の又は該容器に付随するラベル又はパッケージ挿入物を具備する。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等々が含まれる。容器は、様々な材料、例えばガラス又はプラスチックから形成されうる。容器は、症状を治療するのに有効な組成物を収容し、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は皮下注射針が貫通可能なストッパーを有するバイアル又は静脈内投与溶液バッグでありうる)。組成物中の少なくとも一つの活性剤は本発明の抗体である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が癌のような選択した症状の治療に使用されることを示す。更に、製造品は、(a)組成物を中に収容し、その組成物が抗体を含む第一の容器と;(b)組成物を中に収容し、その組成物が更なる細胞毒性剤を含む第二の容器とを含みうる。本発明のこの実施態様における製造品は、第一及び第二抗体組成物を癌の治療に使用することができることを示しているパッケージ挿入物を更に含む。あるいは、もしくは付加的に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第二の(又は第三の)容器を更に具備してもよい。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジを含む、商業上及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
次の実施例は本発明の実施を単に例証するためのもので限定するものではない。ここで引用した全ての特許と科学文献の開示は出典明示によりその全体が取り込まれる。
実施例1.抗CD18抗体断片の製造
材料と方法
プラスミドの構築
コントロールプラスミドpS1130を、抗CD18F(ab')のジシストロン性発現のために設計したが、これはCarter等 (1992) Bio/Technology 10:163-167によって記載されているベクターに基づいている。この設計は、単一のphoAプロモーターの調節下でC末端ロイシンジッパーを持つ重鎖断片及び軽鎖断片双方の遺伝子の転写を行う。転写は、重鎖-ロイシンジッパーに対してコード配列の下流に位置するλt転写終結因子で終了する(Scholtissek及びGrosse (1987) Nucleic Acids Res. 15(7): 3185)。熱安定エンテロトキシンIIシグナル配列(STII)は各鎖のコード化配列の前にあり、細胞膜周辺中へのポリペプチドの分泌を指令する(Lee等(1983) Infect. Immun. 42: 264-268; Picken等 (1983) Infect. Immun. 42: 269-275)。ロイシンジッパーは重鎖断片のC末端に結合して二つのFab'アームの二量体化を促進する。
二つの別個の翻訳単位を含む二重プロモータープラスミドpxCD18-7T3は重鎖の転写から軽鎖の転写を時間的に分離する。pS1130におけるように、軽鎖はphoAプロモーターの調節下のままである。しかし、pxCD18-7T3では、λt転写終結因子が軽鎖コード配列に続く。この終結因子の下流に、重鎖断片/C末端ロイシンジッパーの転写を調節するためにTacIIプロモーターを加えた(DeBoer等 (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:21-25)。第二のλt転写終結因子がこのコード配列に続く。STIIシグナル配列のサイレントコドン変異体を用いて両方の鎖の分泌を指令した(Simmons及びYansura (1996) Nature Biotechnology 14:629-634)。
単一のプロモーターコントロールプラスミドと二重プロモータープラスミドの概略的比較を図1に示す。pxCD18-7T3の発現カセット配列は図2(配列番号:3)に提供され、二つの翻訳単位のアミノ酸配列は図3(配列番号:4)に示す。
発酵
発酵に使用される宿主株は59A7と命名された大腸菌W3110の誘導体であった。59A7の完全な遺伝子型はW3110ΔfhuA phoAΔE15 Δ(argF-lac)169deoC2degP41(ΔpstI-Kan)IN(rrnD-rrnE)1ilvG2096(Val)Δprc prc-サプレッサーである。59A7宿主細胞をpS1130又はpxCD18-7T3プラスミドの何れかで形質転換させ、成功した形質転換体を選択し培養で成長させた。二重プロモータープラスミドの場合、更なるプラスミドpMS421をpxCD18-7T3と共に同時形質転換させた。この更なるプラスミドpMS421は、TacIIプロモーターの調節を改善するためにlacIqを提供し、スペクチノマイシン及びストレプトマイシン耐性をまた付与するpSC101系プラスミドである。
各10リットルの発酵に対して、10−15%DMSO中1.5mlの培養物を含む単一のバイアルを解凍させて、0.5mlのテトラサイクリン溶液(5mg/ml)と2.5mlの1Mリン酸ナトリウム溶液を補填した500mlのLB培地を含む1Lの振盪フラスコ中に入れた。この種培養を30℃で約16時間成長させ、ついで10リットルの発酵槽に播種するのに使用した。
発酵槽は、最初は、約4.4.gのグルコース、100mlの1M硫酸マグネシウム、10mlの微量元素溶液(最終1リットルの容量中に100mlの塩酸、27gの塩化第二鉄六水和物、8gの硫酸亜鉛七水和物、7gの塩化コバルト六水和物、7gのモリブデン酸ナトリウム二水和物、8gの硫酸銅五水和物、2gのホウ酸、5gの硫酸マンガン一水和物)、20mlのテトラサイクリン溶液(エタノール中5mg/ml)、10mlのFermaxアジュバント27(又はある種の等価な消泡剤)、1袋のHCD塩(37.5gの硫酸アンモニウム、19.5gの二塩基リン酸カリウム、9.75gのリン酸ナトリウム一塩基二水和物、7.5gのクエン酸ナトリウム二水和物、11.3gの一塩基リン酸カリウム)、及び200gのNZアミンA(タンパク質加水分解物)を含むおよそ6.5リットルの培地で始めた。発酵は10slpmの空気流れで30℃にて実施され、7.0±0.2のpHに制御された(この範囲を超える場合も時折ありうる)。発酵槽の背圧と撹拌速度を操作して、発酵槽中の酸素移動速度を操作し、それによって細胞呼吸速度を調節した。
振盪フラスコからの細胞含有培地での発酵槽の播種に続いて、培養物をコンピュータベースのアルゴリズムを使用して濃縮グルコース溶液を発酵槽に供給して、高細胞密度になるまで発酵槽で成長させた。水酸化アンモニウム(58%溶液)と硫酸(24%溶液)を必要に応じてpHを制御するために発酵槽にまた供給した。消泡剤の更なる添加もまたある場合には発泡を制御するためになされる。培養物がおよそ40OD550の細胞密度に達したところで、更に100mlの1M硫酸マグネシウムを発酵槽に加えた。また、培養物がおよそ20OD550の細胞密度に達したところで、発酵槽への濃縮塩(1Lの水中におよそ10gの硫酸アンモニウム、26gのリン酸カリウム二塩基、13gの一塩基リン酸ナトリウム二水和物、2gのクエン酸ナトリウム二水和物及び15gの一塩基リン酸カリウムからなる)の供給を2.5ml/分の速度で開始し、約1250mlが発酵槽に加えられるまで継続させた。発酵は典型的には72−80時間継続した。
発酵中に、発酵のための溶存酸素設定値に達すると、溶存酸素濃度を設定値に制御するために溶存酸素プローブ信号に基づいて濃縮グルコース溶液が供給された。従って、この制御スキームでは、発酵の酸素移送能に影響を及ぼす撹拌速度又は背圧のような発酵槽操作パラメータの操作により、相応して、細胞の酸素取り込み速度又は代謝速度を操作した。
質量分析計を用いて、発酵からのオフガス組成物をモニターし、発酵中の酸素取り込みと二酸化炭素放出速度の計算が可能になった。
培養物がおよそ220OD550の細胞密度に達したところで、撹拌をおよそ12時間かけて1000rpmの初期速度からおよそ725rpmまで減少させた。(重鎖の発現の調節にTacIIプロモーターを使用した)pxCD18-7T3系の発酵に対して、培養物が220OD550の細胞密度に達した後約12時間経ったところで、50mlの200mM IPTGを添加して、重鎖合成を誘導した。
生成物のアッセイ
発酵において製造された抗体断片の量を評価するために多くのタンパク質アッセイ法を使用した。構築された抗CD18F(ab')-ロイシンジッパー複合体の量を決定するために、プロテインGアッセイを使用した。Derrich及びWigley (1992)Nature 359:752-4。このアッセイのための試料を調製するために、全発酵ブロスを最初に超音波処理し50mMの硫酸マグネシウムで2.4Xに希釈した。ポリエチレンイミン(PEI)を0.1%の最終濃度まで添加した。20分のインキュベーション後に、試料を微量遠心管で約14000xgにて約20分間、遠心分離した。ついで、上清をリン酸緩衝生理食塩水で2Xに希釈し、HP1090又はHP1100HPLC系を使用してプロテインGカラム(Poros G/Mカラム)に充填した。カラムを10mMのPO4/300mMのNaCl(pH8)で最初に平衡化した7分のアッセイを使用した。試料の注入に続いて、約5.5分の間(2.1x30mmのカラム中、約3mlのバッファーを使用して)平衡バッファーですすいだ後、30mMのPO4/150mMのNaCl/0.01%TFA(pH1.9)を使用して段階溶出を行った。
プロテインGが確かに構築F(ab')複合体を表していることを確認するために、イオン交換を含む複数のクロマトグラフィー工程を通し、固定化ペプシンを使用したロイシンジッパー部分の除去後に、付加的なイオン交換カラム及びフェニルセファロースHICカラムを使用して、生成物をまた精製した。精製した生成物は多くの常套的な方法、例えば陽イオン交換アッセイ、キャピラリーゾーン電気泳動非ゲル篩いアッセイ、及びSDS-PAGEゲルによって特徴付けた。
発酵で生産した軽鎖及び重鎖の断片の全量を評価するために、別の逆相HPLCアッセイを用いた。このアッセイに使用される試料をプロテインGアッセイについて上述したようにして調製した。可溶型溶解物試料を6Mのグアニジン-HCl、50mMのTRIS、pH9に希釈した(典型的には100μlの試料を650μlのグアニジン溶液で希釈した)。50μlの2Mジチオトレイトール(新たに解凍)をついで加えた。HPLCに充填する前に、200μlのアセトニトリルを加え、0.2μmのフィルターで濾過した。
逆相法に対して、Perspective PorosTMR-1逆相カラムと共にヒューレットパッカードTM1100HPLCを使用した。60−80℃に加熱したカラムで分析を実施し、278nmのUV吸光度をモニターした。カラムを0.1%トリフルオロ酢酸を含む水中28%のアセトニトリル溶液中で平衡にした。ついで、25μlの試料をカラムに充填し、20分にわたって28%から38%の線形勾配を使用して溶出させ、続いて95%のアセトニトリルで17分間の再生を実施し、28%のアセトニトリルで再平衡化させた。軽鎖及び重鎖関連種のピークを標準物質との比較と確認のための質量分析計を使用した分析によって特定した。重鎖と軽鎖の配列を含んでいないプラスミドを用いている点以外は同じ宿主を用いたブランク実験からの発酵試料を同様にして調製し、分析のための適切なベースラインを決定するために分析した。ピーク面積の積分をヒューレットパッカードTM1100ソフトウェアを用いて実施し、標準をブランク実験試料にスパイクし、試料中の様々な種の相対量を定量するための校正曲線を作成した。
また、不溶性溶解液試料を、950μlの6Mグアニジン/HCl、50mMのTRIS、pH9+50μlの2Mジチオトレイトール中に細胞溶解液から得られた不溶性ペレットを懸濁させることによって同様に分析した。ペレットを再溶解させるのを支援するために超音波処理(5ないし10パルス)を典型的に実施し、ついで650μlのグアニジン溶液+50μlの2Mジチオトレイトール+200mMのアセトニトリルに100μlの再懸濁ペレットを希釈した。ついで試料を濾過し、可溶性溶解液試料についてと同じ方法を使用して分析した。
結果
一連の抗CD18F(ab')発酵実験を、pS1130単一プロモーター系又はpxCD18-7T3二重プロモーター系の何れかを使用して実施した。構築された抗CD18F(ab')複合体の収量を、方法と材料の欄に記載したタンパク質アッセイを使用して測定し計算した。発酵収量(g/L)を表す棒グラフである図4に示されているように、株59A7でのphoA-tac二重プロモーターベクターの使用は、構築されたF(ab')の収量を、同定された最善のpS1130/59A7形質転換体に対して約2.5g/Lから約4.6±0.5g/Lまで約2倍増加させた。
二重プロモーター系の改善された性質を更に例証するために、全重鎖、可溶型軽鎖及び構築F(ab')複合体の発現プロフィールを、単一プロモーター系(pS1130/59A7)及び二重プロモーター系(pxCD18-7T3/59A7)に対して樹立し、結果を図5及び6にそれぞれ示す。顕著なことに、軽鎖が最初に発現されて細胞膜周辺に分泌され、続いて重鎖の生産の長い期間が続く二重プロモーター系では、重鎖の発現の誘導のほぼ直後にF(ab')組立て体が生じた(図6);一方、単一プロモーター系では、軽鎖と重鎖の双方の誘導後の最初のF(ab')組立て体は比較的少量であった(図5)。特定の一理論に拘束されることは意図しないが、これらの結果は、F(ab')組立て体は、有意な量の可溶性軽鎖が細胞膜周辺に蓄積するまで、十分ではないことを示唆している。
二つの系を、合成した重鎖の全量に対するF(ab')複合体中の重鎖の比率として定義される、その組合せ効率について更に比較した。図7に示されるように、二重プロモーター系は重鎖の合成の特に初期期間(最初の10時間)の間、伝統的な単一プロモーター系と比較して組合せ効率を増加させる。二つの系の重鎖の発現レベルの比較は、二重プロモーター系の使用により図7に証明されているように、合成された重鎖の全量をまた増大させたことを示している。
従って、結果は、軽鎖と重鎖の合成を時間的に分離することによって、構築抗CD18F(ab')の収量が有意に増加するようになることを示している。この新規な系と知見は複数のタンパク質単位が発現されて組み合わされる他の系において広く応用できる。
実施例2.抗組織因子IgG1の製造
この実施例は、大腸菌系中で完全長抗体を生産する更なる努力を例証する。強いTIRを使用して軽鎖と完全長重鎖の両方を同時に共発現させると、有意な量の発現前駆体ポリペプチドが蓄積し、少量の成熟軽鎖と重鎖並びに適切に組み合わされた完全長抗体が得られる。この実施例は、前駆体の蓄積が軽鎖及び重鎖の発現を時間的に分離させることによって解消することができることを示している。異なったプロモーターの調節下に各鎖を配することは各鎖を別個の時間に発現させることによって分泌ブロックを避ける。このアプローチ法は同時の発現に使用することができるよりも強いTIRの使用を可能にしており、潜在的に各鎖に対してより高い分泌レベルを生じる。個々の鎖のより高い発現レベルを伴うそのような発現構造は完全長の適切に組み合わされた抗体の収量を改善するには有利である。
材料と方法
プラスミドの構築
コントロールプラスミドpaTF130に対する発現カセットは、5'から3'の、(1)phoAプロモーター(Kikuchi等, Nucleic Acids Res.9(21):5671-5678(1981));(2)trpシャイン-ダルガーノ(Yanofsky等, Nucleic Acids Res.9:6647-6668(1981));(3)STIIシグナル配列のTIR変異体(TIR相対強さ〜7)(Simmons及びYansura, Nature Biotechnology 14:629-634 (1996));(4)抗組織因子軽鎖のコード配列;(5)λt終結因子(Scholtissek及びGrosse, Nucleic Acids Res. 15:3185 (1987));(6)第二phoAプロモーター;(7)第二trpシャイン-ダルガーノ;(8)STIIシグナル配列の第二サイレントコドン変異体(TIR相対強さ〜3);(9)抗組織因子完全長重鎖のコード配列;及び(10)第二λt終結因子を含む。この発現カセットを大腸菌プラスミドpBR322のフレームワーク中にクローニングした。Sutcliffe (1978) Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 43:77-90。このようにして、このプラスミドにおいて重鎖から軽鎖の独立した転写が、各遺伝子をそれ自身のphoAプロモーターの調節下に配することによって達成された;しかし、両方のphoAプロモーターは同一条件下で誘導性であり、両方の鎖は同時に発現される。
あるいは、pxTF-7T3FLのベクター設計により、二つの同一のプロモーターではなく二つの異なったプロモーターを使用することにより各鎖の発現を時間的に分離することが可能になる。このプラスミドでは、軽鎖はphoAプロモーターの調節下のままである。しかし、tacIIプロモーター(DeBoer等, Proc. Natl. Sci. USA 80:21-25 (1983))が重鎖の転写を調節するために使用される。当該分野で知られているように、phoA及びtacIIプロモーターは実質的に異なった条件下で誘導される。paTF130及びpxTF-7T3FLの概略的な比較は図8に示されている。pxTF-7T3FLの核酸配列及びそれがコードするポリペプチド配列はそれぞれ図9及び図10に付与される。
発現の誘導、試料調製及び分析
各コンストラクトの小規模発現に対しては、遺伝子型(W3110kan ΔfhuA (ΔtonA)ptr3 phoAΔE15 lacIq lacL8 ompT Δ(nmpc-fepE)degP)を持つ大腸菌株33D3を宿主細胞として使用した。形質転換に続いて、選択された形質転換体ピック(picks)をカルベニシリン(50ug/ml)を補填した5mlのルリア-ベルターニ培地中に播種し、培養ホイールで30℃にて一晩成長させた。ついで、各培養物を希釈(1:50)して、C.R.A.P.ホスフェート制限培地(3.57g(NH4)2SO4、0.71gクエン酸ナトリウム-2H2O、1.07gKCl、5.36g酵母エキス(真性)、5.36gHycaseSF-Sheffield、KOHでpH7.3に調節、SQ H2Oで872mlにしてオートクレーブ処理;55℃まで冷却し、110mlの1M MOPS pH7.3、11mlの50%グルコース、7mlの1M MgSO4を補填)にした。ついでカルベニシリンを50ug/mlの濃度で誘導培養物に加え、特記しない限り、全ての振盪フラスコでの誘導を2ml容積で実施した。
誘導培地中への播種後に、プロモーターとプロモーター誘導のタイミングに応じて各試料について条件を変化させた。軽鎖と重鎖の両方の遺伝子の転写を制御するためにphoAプロモーターを使用するベクターpaTF130の場合は、誘導を、培養物には他に何も添加しないで〜24時間の間、振盪することにより30℃で実施した。この試料中のホスフェートの十分な枯渇により、軽鎖と重鎖の両方の転写を調節するphoAプロモーターの同時の誘導を生じる。軽鎖の発現を調節するにはphoAプロモーターを使用するが重鎖の発現を調節するにはtacIIプロモーターを使用するベクターのpxTF-7T3FLの場合は、paTF130に対して使用したものと同じ培養条件で誘導を最初に実施した。30℃で振盪しながら〜16時間後、リン酸カリウムバッファー(pH7.4)を1mMの最終濃度になるまで添加した。およそ45分後、tacIIプロモーターを誘導するために1mMの最終濃度になるまでIPTGを培養物に添加した。ついで、30℃で振盪しながら更に〜8時間、誘導を続けた。このようにして、paTF130系は、軽鎖と重鎖の両方の転写が同時に誘導される環境を表す。他方、pxTF-7T3FL系は、最初にphoAプロモーターを誘導させ、軽鎖の転写を調節し、ついで後にtacIIプロモーターを誘導して重鎖の転写を調節することにより各鎖の発現を時間的に分離するように設計された条件下で培養した。
誘導された培養物からの非還元全細胞溶解物を次のようにして調製した:(1)1OD600-mlのペレットを微量遠心管で遠心分離した;(2)各ペレットを90ulのTE(10mMのトリスpH7.6、1mMのEDTA)中に再懸濁させた;(3)10ulの100mMヨード酢酸(シグマI-2512)を各試料に添加して、任意の遊離のシステインをブロックし、ジスルフィドシャフリングを防止した;(4)20ulの10%SDSを各試料に添加した。試料をボルテックスし、〜3分間、約90℃まで加熱した後、再びボルテックスした。試料を室温まで冷却した後、〜750ulのアセトンを加えてタンパク質を沈殿させた。試料をボルテックスし、約15分間、室温のまま置いた。微量遠心管中で5分間遠心分離した後、各試料の上清を吸引し、各タンパク質ペレットを50ulのdHO+50ulの2X NOVEX試料バッファー中に再懸濁させた。ついで試料を約90℃にて〜3−5分間、加熱し、十分にボルテックスし、室温まで冷却した。ついで最後の5分の遠心分離を実施し、上清を清浄なチューブに移した。
還元試料を、工程(2)において10ulの1M DTTを細胞再懸濁液に加え、工程(3)においてIAAの添加を省いた他は、非還元試料に対して上述したものと同様の次の工程によって調製した。タンパク質沈殿物を2X試料バッファー+dHOに再懸濁させたときに還元剤をまた100mMの濃度まで添加した。
調製後に、5ulの各試料を、10ウェルの1.0mmのNOVEX製の12%トリス-グリシンSDS-PAGに充填し、1.5−2時間の間、〜120ボルトで電気泳動させた。生じたゲルをイムノブロット分析に使用した。
イムノブロット分析では、SDS-PAGEゲルを、ニトロセルロースメンブラン(NOVEX)上にエレクトロブロットした。ついで、1XのNET(150mMのNaCl、5mMのEDTA、50mMのトリスpH7.4、0.05%のトリトンX-100)+0.5%のゼラチンの溶液を用いて室温でおよそ30分から1時間振動させてメンブランをブロックした。ブロック工程に続いて、メンブランを、非還元試料に対しては1XのNET+0.5%ゼラチン+抗Fab抗体(ヒトIgG Fabへのペルオキシダーゼ結合ヤギIgGフラクション;CAPPEL#55223)、還元試料に対しては1XのNET+0.5%ゼラチン+抗Fab抗体+抗Fc抗体(Jackson Immuno Research Labs #109−035−008)の溶液に配した。抗Fab抗体の希釈は抗体のロットに応じて1:50000から1:1000000の範囲であり、抗Fc抗体は1:1000000に希釈した。メンブランを振動させながら室温にて一晩抗体溶液中に置いた。翌朝、メンブランを1XのNET+0.5%ゼラチン中で最少3x10分、ついでTBS(20mMのトリスpH7.5、500mMのNaCl)中で1x15分、洗浄した。抗体が結合したタンパク質バンドを、Amersham Pharmacia Biotech ECL検出器を用いて可視化しメンブランをX線フィルムに現像した。
結果
抗組織因子IgG1の産生用のプラスミドpaTF130及びpxTF-7T3FLを構築し、株33D3中に形質転換しこれまで記載されているようにして誘導させた。ついで非還元及び還元全細胞溶解液試料を調製し、イムノブロットによって分析した。結果を図11A及び図11Bに示す。軽鎖に対して7、重鎖に対して3のTIRを使用して、これらの遺伝子を制御するプロモーターを同時に誘導させると、paTF130の還元試料によって示されているような(図11A)、分泌の阻害が生じる。重鎖と軽鎖の両方の前駆体の蓄積がこのレーンにはっきりと確認される。成熟軽鎖と成熟重鎖はほんの少ししか検出されず、タンパク質の大部分は前駆体として蓄積する。しかし、pxTF-7T3FLの場合のように、重鎖と軽鎖の発現が時間的に分離されると、有意な量の成熟軽鎖が蓄積する(図11A)。少量の軽鎖前駆体がこの試料中に尚も検出されるが、このレベルは軽鎖の分泌に対しても重鎖の分泌に対しても、問題を生じるようには思われない。また、時間的な発現により、paTF130で得られるよりも有意に大なるレベルまで成熟重鎖の効率的な分泌が達成され、前駆体の蓄積の証拠はない。
完全長抗体の組立て体との効率的な分泌の相関は非還元試料によって示されている(図11B)。完全長抗体は双方の試料で検出されるが、量は劇的に変化する。矢印が示すように、paTF130試料にはほんのかすかな完全長バンドが検出されるに過ぎない。このバンドはpxTF-7T3FL試料では更により顕著になる。
実施例3.抗組織因子F(ab')の生産
この実施例では、単一のプロモータープラスミドpCYC56をコントロールとして用いた。pCYC56はpS1130と構造的に類似しているが、挿入配列が抗組織因子抗体の軽鎖及び重鎖断片をコードしている点は異なる。二重プロモータープラスミドpxTF-7T3を、実施例1の二重プロモータープラスミドpxCD18-7T3と同様にして作成し、抗組織因子軽鎖及び重鎖の発現の時間的分離を可能にするために使用した。プラスミドpMS421由来のlacI配列をまたpxTF-7T3に導入して、二重プロモーターpJVG3ILを作った。lacIの付加はpMS421での同時発現の必要性を排除する。
これらの発酵に用いられた宿主株は60H4と命名された大腸菌W3110の誘導体であった。60H4の完全な遺伝子型は、W3110 ΔfhuAΔmanA phoAΔE15 Δ(argF-lac)169deoC2degP41(ΔpstI-Kan)IN(rrnD-rrnE)1 ilvG2096(Val)Δprc prc-サプレッサーである。60H4宿主細胞は、pCYC56、pJVG3IL又はpxTF-7T3とpMS421の組合せの何れかで形質転換し、成功した形質転換体を選択して培養で増殖させた。
発酵は、実施例1に記載した抗CD18F(ab')のものと同様な条件で実施したが、実施強さが約72時間と114時間の間で変わり、OD550が220の培養の達成に続いておよそ4から12時間IPTGを使用して重鎖を誘導した点は原理的に異なる。
抗CD18F(ab')に対して用いたプロテインGアッセイをまた使用して、抗組織因子F(ab')産物を分析したが、抗組織因子F(ab')標準物質を用いて標準曲線を作成した点は異なる。
一連の抗組織因子F(ab')の発酵実験を、上述のプロモーター系を使用して実施した。組立てた抗組織因子F(ab')複合体の収量は、単一プロモーター系での1g/Lから、pJVG3ILでの二重プロモーター系を使用して、2.6±0.3g/L(n=13)まで増大した。
従って、この結果は、軽鎖と重鎖の合成を時間的に分離することによって、組立てられた抗組織因子F(ab')の収量の有意な増加が達成されることを実証している。
上記では特定の実施態様について言及したが、本発明はそれらに限定されるものではないことが理解されよう。本発明の総括的な概念を逸脱しない限り、開示した実施態様に対して様々な変形を施しうることは当業者には理解されよう。そのような変形は全て本発明の範囲に入るものである。
抗CD18F(ab')(-ロイシンジッパー)プラスミドpS1130(単一プロモーター)及びpxCD18-7T3(二重プロモーター)の構造の概略図である。 二重プロモーターコンストラクトpxCD18-7T3の挿入核酸配列を示す。 コンストラクトpxCD18-7T3内の二つの翻訳単位によってコードされているアミノ酸配列を示す。N末端STII分泌シグナル配列には下線が付されている。 単一プロモーター系(pS1130/59A7)と二重プロモーター系(pxCD18-7T3/59A7)を用いて組み合わせたF(ab')の収量を比較するものである。 単一プロモーター発現系(pS1130)での抗CD18の発現プロフィールを示す。 二重プロモーター発現系(pxCD18-7T3)での抗CD18の発現プロフィールを示す。 単一プロモーター発現系(pS1130)と二重プロモーター発現系(pxCD18-7T3)の重鎖全収量と構築効率を比較するものである。構築効率は最初の10時間の重鎖合成中にF(ab')に構築される重鎖の割合を表す。 抗組織因子IgG1プラスミドpaTF130(PhoA/PhoAプロモーター)及びpxTF-7T3FL(PhoA/TacII-プロモーター)の概略図である。 PhoA/TacII-プロモーターコンストラクトpxTF-7T3FLの挿入核酸配列を示す。 コンストラクトpxTF-7T3FL内の二つの翻訳単位によってコードされているアミノ酸配列を示す。N末端STII分泌シグナル配列には下線を付している。 図11A及び11Bは、同じプロモーター系(PhoA/PhoA)及び二重プロモーター系(PhoA/TacII)を使用する抗組織因子IgG1の発現を比較する、還元(11A)又は非還元(11B)条件下でのウェスタンブロットの結果である。

Claims (57)

  1. 機能的抗体又はその断片を、該抗体又はその断片の軽鎖及び重鎖をそれぞれコードしている二つの別個の翻訳単位で形質転換した宿主細胞中で産生させる方法であって、a)宿主細胞を、二つの別個の翻訳単位が異なったプロモーターによって調節されており軽鎖と重鎖が逐次的な形で発現される好適な条件下で培養して、軽鎖と重鎖の生産を時間的に分ける工程と;b)軽鎖と重鎖を集めて機能的抗体又はその断片を形成する工程を具備する方法。
  2. 宿主細胞が原核生物であり、各翻訳単位が、原核生物分泌シグナルをコードしているヌクレオチド配列又は軽鎖もしくは重鎖のN'末端に作用可能に結合したその変異体を更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
  3. 二つの翻訳単位が、単一の組換えベクター上に位置せしめられている、請求項に記載の方法。
  4. 分泌シグナルが、STII、OmpA、PhoE、LamB、MBP及びPhoAからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
  5. 分泌シグナルがSTIIである、請求項に記載の方法。
  6. 各翻訳単位が異なった誘導性プロモーターに作用可能に結合している、請求項1に記載の方法。
  7. 誘導性プロモーターが、phoA、TacI、TacII、lpp、lac−lpp、lac、ara、trp、trc及びT7プロモーターからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
  8. 一方のプロモーターがphoAプロモーターであり、他方のプロモーターがTacIIプロモーターである、請求項7に記載の方法。
  9. 抗体断片が、Fab、Fab'、F(ab')2、F(ab')2−ロイシンジッパー、Fv及びdsFvからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  10. 抗体が、VEGF、IgE、CD11、CD18及び組織因子(TF)からなる群から選択される抗原に特異的である、請求項1に記載の方法。
  11. 抗体が抗CD18抗体又は抗TF抗体である、請求項10に記載の方法。
  12. 抗体がキメラ抗体である、請求項1に記載の方法。
  13. 抗体がヒト化抗体である、請求項1に記載の方法。
  14. 抗体がヒト抗体である、請求項1に記載の方法。
  15. 宿主細胞が、大腸菌株由来の原核細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
  16. 大腸菌株が、DsbA、DsbC、DsbG及びFkpAからなる群から選択される少なくとも一のシャペロンタンパク質を過剰発現するように遺伝子操作されている、請求項15に記載の方法。
  17. 大腸菌株が内因性プロテアーゼ活性を欠く、請求項15に記載の方法。
  18. 大腸菌株の遺伝子型がΔprcprcサプレッサーを含む、請求項15に記載の方法。
  19. 抗体の重鎖が完全長である、請求項1に記載の方法。
  20. 軽鎖が最初に発現され、完全長重鎖が次に発現される、請求項19に記載の方法。
  21. 組換えベクターで形質転換された宿主細胞を含んでなる、抗体又はその断片の軽鎖及び重鎖の逐次的発現系であって、上記ベクターが、軽鎖及び重鎖をそれぞれコードしている二つの別個の翻訳単位を含み、各翻訳単位が異なるプロモーターに作用可能に結合し、適切な条件下で、二つの翻訳単位の活性化が時間的に分けられて、軽鎖と重鎖の逐次的な発現が生じる系。
  22. 宿主細胞が原核生物であり、各翻訳単位が、軽鎖もしくは重鎖をコードしている核酸の5'末端に作用可能に結合した原核生物分泌シグナルをコードしているヌクレオチド配列を更に含む、請求項21に記載の系。
  23. 分泌シグナルが、STII、OmpA、PhoE、LamB、MBP及びPhoAからなる群から選択される、請求項22に記載の系。
  24. 分泌シグナルがSTIIである、請求項23に記載の系。
  25. 二つのSTII変異体が二つの翻訳単位にそれぞれ使用され、翻訳強さの組合せが軽鎖:重鎖に対し7:3をもたらす、請求項24に記載の系。
  26. 各翻訳単位が異なった誘導性プロモーターに作用可能に結合している、請求項21に記載の系。
  27. 誘導性プロモーターが、phoA、TacI、TacII、lpp、lac−lpp、lac、ara、trp、trc及びT7プロモーターからなる群から選択される、請求項26に記載の系。
  28. 一方のプロモーターがphoAプロモーターであり、他方のプロモーターがTacIIプロモーターである、請求項27に記載の系。
  29. 抗体断片が、Fab、Fab'、F(ab')2、F(ab')2−ロイシンジッパー、Fv及びdsFvからなる群から選択される、請求項21に記載の系。
  30. 抗体が、VEGF、IgE、CD11、CD18及び組織因子(TF)からなる群から選択される抗原に特異的である、請求項21に記載の系。
  31. 抗体が抗CD18抗体又は抗組織因子抗体である、請求項30に記載の系。
  32. 抗体がキメラ抗体である、請求項21に記載の系。
  33. 抗体がヒト化抗体である、請求項21に記載の系。
  34. 抗体がヒト抗体である、請求項21に記載の系。
  35. 宿主細胞が、大腸菌株由来の原核細胞である、請求項21又は22に記載の系。
  36. 大腸菌株が、DsbA、DsbC、DsbG及びFkpAからなる群から選択される少なくとも一のシャペロンタンパク質を過剰発現するように遺伝子操作されている、請求項35に記載の系。
  37. 大腸菌株が内因性プロテアーゼ活性を欠く、請求項35に記載の系。
  38. 大腸菌株の遺伝子型がΔprcprcサプレッサーを含む、請求項37に記載の系。
  39. 抗体の重鎖が完全長である、請求項21に記載の系。
  40. 軽鎖が最初に発現され、完全長重鎖が次に発現される、請求項39に記載の系。
  41. 宿主細胞中において機能的抗体又はその断片を生産させるための組換えベクターにおいて、a)軽鎖に作用可能に結合した分泌シグナルをコードしている第一翻訳単位に先行する第一プロモーターと、b)重鎖に作用可能に結合した分泌シグナルをコードしている第二翻訳単位に先行する第二プロモーターを含むベクターであって、上記第一及び第二プロモーターが異なった条件下で誘導性である組換えベクター。
  42. 第一及び第二プロモーターが、phoA、TacI、TacII、lpp、lac−lpp、lac、ara、trp、trc及びT7プロモーターからなる群から選択される、請求項41に記載の組換えベクター。
  43. 第一プロモーターがphoAプロモーターであり、第二プロモーターがTacIIプロモーターである、請求項42に記載の組換えベクター。
  44. 分泌シグナルが、STII、OmpA、PhoE、LamB、MBP及びPhoAからなる群から選択される、請求項41に記載の組換えベクター。
  45. 分泌シグナルがSTIIである、請求項44に記載の組換えベクター。
  46. 抗体断片が、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv及びdsFvからなる群から選択される、請求項41に記載の組換えベクター。
  47. 抗体断片が二量体化ドメインに融合している、請求項46に記載の組換えベクター。
  48. 抗体が、VEGF、IgE、CD11、CD18及び組織因子(TF)からなる群から選択される抗原に特異的である、請求項41に記載の組換えベクター。
  49. 抗体が抗CD18抗体である、請求項48に記載の組換えベクター。
  50. 抗体が、抗CD18 F(ab')2−ロイシンジッパー融合体である、請求項49に記載の組換えベクター。
  51. 上記抗体が配列番号:1の軽鎖を含む、請求項50に記載の組換えベクター。
  52. 上記抗体が配列番号:2の重鎖を含む、請求項50に記載の組換えベクター。
  53. 配列番号:3の核酸配列を含んでなるクターである、請求項50に記載の組換えベクター。
  54. 抗体が抗TF抗体である、請求項48に記載の組換えベクター。
  55. 上記抗体が配列番号:4の軽鎖を含む、請求項54に記載の組換えベクター。
  56. 上記抗体が配列番号:5の重鎖を含む、請求項54に記載の組換えベクター。
  57. 配列番号:6の核酸配列を含んでなるクターである、請求項54に記載の組換えベクター。
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