JP5463528B2 - L−システイン生産菌及びl−システインの製造法 - Google Patents
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Description
これがより迅速かつ正確に進行するよう、S-S結合形成に関わる巧妙なシステムが存在することが明らかとなっている(非特許文献4)。例えば、大腸菌のペリプラズムでは、Dsb (Disulfide bond: DsbA, DsbB, DsbC: 非特許文献2, DsbD: 非特許文献5, DsbG: 非特許文献6) 因子という一連のタンパク質群がジスルフィド結合を作り出し、多くの蛋白質に導入している。ペリプラズムでDsbA(Disulfide oxidoreductase)が、基質タンパク質(AmpC, DsbB, LivK, OstA, RcsF: 非特許文献7)を酸化し、還元型となったDsbAのシステインペアは内膜蛋白質DsbBにより再酸化される。DsbBが受け取った電子は呼吸鎖成分であるユビキノン (UQ) に受け渡され、最終的にはチトクロム酸化酵素を介して酸素が電子受容体となることが分かっている(非特許文献8)。
すなわち本発明は以下のとおりである。
(1)L−システイン生産能を有し、かつ、dsbA遺伝子によりコードされるタンパク質の活性が増大するように改変された腸内細菌科に属する細菌。
(2)前記dsbA遺伝子の発現量を増大させること、及び/または、dsbA遺伝子の翻訳量を増大させることにより、前記タンパク質の活性が増大した、前記細菌。
(3)dsbA遺伝子のコピー数を高めること、又は同遺伝子の発現調節配列を改変することにより、dsbA遺伝子の発現量が増大された、前記細菌。
(4)前記タンパク質が、下記(A)または(B)に記載のタンパク質である前記細菌。
(A)配列番号2、4、6、8、10、又は12に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
(B)配列番号2、4、6、8、10、又は12に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、細菌内の活性を増大させたときにL−システイン生産能が向上するタンパク質。
(5)前記dsbA遺伝子が、下記(a)または(b)に記載のDNAである、前記細菌。
(a)配列番号1、3、5、7、9、又は11の塩基配列を含むDNA、または
(b)配列番号1、3、5、7、9、又は11の塩基配列の相補配列または同塩基配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、細菌内の活性を増大させたときにL−システイン生産能が向上するタンパク質をコードするD
NA。
(6)L−システインによるフィードバック阻害が低減された変異型セリンアセチルトランスフェラーゼを保持する(1)〜(5)のいずれかに記載の細菌。
(7)ydeD遺伝子によりコードされるタンパク質の活性が増大した、(1)〜(5)のいずれかに記載の細菌。
(8)セリンによるフィードバック阻害を受けない3−ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼを保持する、(1)〜(5)のいずれかに記載の細菌。
(9)ydeD遺伝子によりコードされるタンパク質の活性が増大した、(6)又は(8)に記載の細菌。
(10)エシェリヒア属細菌である、前記細菌。
(11)エシェリヒア・コリである、前記細菌。
(12)前記細菌を培地中で培養し、該培地からL−システイン、L−シスチン、それらの誘導体又は前駆体、又はこれらの混合物を採取することを特徴とする、L−システイン、L−シスチン、それらの誘導体又は前駆体、又はこれらの混合物の製造法。
(13)前記L−システインの誘導体がチアゾリジン誘導体である、前記方法。
(14)前記L−システインの前駆体がO−アセチルセリン又はN−アセチルセリンである、前記方法。
本発明の細菌は、L−システイン生産能を有し、かつ、dsbA遺伝子によりコードされるタンパク質の活性が増大するように改変された腸内細菌科に属する細菌である。ここで、L−システイン生産能とは、本発明の細菌を培地中で培養したときに、培地中または菌体内にL−システインを生成し、培地中または菌体から回収できる程度に蓄積する能力をいう。また、L−システイン生産能を有する細菌とは、野生株または親株よりも多い量のL−システインを生産し培地に蓄積することができる細菌を意味し、好ましくは、0.05g/L以上、より好ましくは0.1g/L以上、特に好ましくは0.2g/L以上の量のL−システインを生産し培地に蓄積することができる微生物を意味する。
coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology/Second Edition, American Society for Microbiology Press, Washington, D.C.)に挙げられるものが利用できる。その中では、例えばエシェリヒア・コリが挙げられる。エシェリヒア・コリとしては具体的には、プロトタイプの野生株K12株由来のエシェリヒア・コリ W3110 (ATCC 27325)、エシェリヒア・コリ MG1655 (ATCC 47076)等が挙げられる。
12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852 P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)より分譲を受けることが出来る。すなわち各菌株に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることが出来る(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。
agglomerans)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等、パントエア属細菌としてはパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)が挙げられる。尚、近年、エンテロバクター・アグロメランスは、16S rRNAの塩基配列解析などにより、パン
トエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)又はパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、パントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)に再分類されているものがある。本発明においては、腸内細菌科に分類されるものであれば、エンテロバクター属又はパントエア属のいずれに属するものであってもよい。
agglomerans)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等が挙げられる。具体的には、欧州特許出願公開952221号明細書に例示された菌株を使用することが出来る。 エンテロバクター属の代表的な株として、エンテロバクター・アグロメランスATCC12287株が挙げられる。
求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質は、単独でもよく、2種又は3種以上であってもよい。また、発現が増強されるL−システイン生合成系酵素も、単独であっても、2種又は3種以上であってもよい。さらに、栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質の付与と、生合成系酵素の増強が組み合わされてもよい。
JM15(米国特許第6,218,168号)、細胞に毒性の物質を排出するのに適したタンパク質をコードする過剰発現遺伝子を有するE. coli W3110 (米国特許第5,972,663号)、システインデスルフヒドラーゼ活性が低下したE. coli株 (特開平11-155571号公報)、cysB遺伝子によりコードされるシステインレギュロンの正の転写制御因子の活性が上昇したE. coli W3110 (WO01/27307)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられるが、これらに限定されない。
スルフヒドリラーゼB(cysM遺伝子産物、特開2005-245311)、及び、malY遺伝子産物(特開2005-245311)が知られている。これらのタンパク質の活性を低下させることにより、−システイン生産能が向上する。 本発明において、「タンパク質の活性が低下する」とは、同タンパク質の活性が野生株又は親株等の非改変株に対して低下していることを意味し、活性が完全に消失していることを含む。
Journal of Biological Chemistry 266, 20833-20839(1991))。
しくは3塩基以上である。また、コード領域を欠失させる場合は、標的タンパク質の機能が低下又は欠失するのであれば、欠失させる領域は、N末端領域、内部領域、C末端領域のいずれの領域であってもよく、コード領域全体であってよい。通常、欠失させる領域は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、欠失させる領域の上流と下流のリーディングフレームは一致しないことが好ましい。
L. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 97:6640-6645 (2000))、Redドリブンインテグレーション法とλファージ由来の切り出しシステム(Cho, E. H., Gumport, R. I., Gardner,
J. F. J. Bacteriol. 184: 5200-5203 (2002))とを組合わせた方法(WO2005/010175号参照)等の直鎖状DNAを用いる方法や、温度感受性複製起点を含むプラスミド、接合伝達可能なプラスミドを用いる方法、宿主内で複製起点を持たないスイサイドベクターを利用する方法などがある(米国特許第6303383号、または特開平05-007491号)。
spring Harbor (USA), 2001))。
in Enzymology 68, 326 (1979))あるいは受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M. and Higa,A.,J.Mol.Biol.,53,159(1970))、エレクトロポーレーションによる方法等、細菌の形質転換に通常用いられている方法を用いることができる。
を保持する細菌であり、より好ましいのは、フィードバック阻害耐性の変異型SATを保持し、かつ、YdeDタンパク質の活性が高められた細菌、フィードバック阻害耐性の変異型SATを保持し、かつ、セリンによるフィードバック阻害を受けないPGDタンパク質を保持する細菌、又は、YdeDタンパク質の活性が高められ、かつ、セリンによるフィードバック阻害を受けないPGDタンパク質を保持する細菌であり、特に好ましいのは、フィードバック阻害耐性の変異型SATを保持し、セリンによるフィードバック阻害を受けないPGDタンパク質を保持し、かつ、YdeDタンパク質の活性が高められた細菌である。
8))も応用できる。
mation)データベースのアクセション番号、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性(%)を示す。
クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)subsp. pneumoniae MGH 78578(KEGG Entry Name:KPN_04170、81.2%)
エルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)subsp. enterocolitica
8081(KEGG Entry Name:YE0020、70.7%)
フォトルハブダス・ルミネセンス(Photorhabdus luminescens)subsp. laumondii TTO1(KEGG Entry Name:plu0381、60.1)
パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)PM70(KEGG Entry Name:PM1801、48.1%)
リンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1% SDS、さらに好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度、温度で、1回、より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。
上記のようにして得られる本発明の細菌を培地中で培養し、該培地からL−システイン、L−シスチン、それらの誘導体もしくは前駆体、又はこれらの混合物を採取することにより、これらの化合物を製造することができる。L−システインの誘導体又は前駆体としては、前記したようなS−スルホシステイン、チアゾリジン誘導体、同チアゾリジン誘導体に相当するヘミチオケタール、O−アセチルセリン、又はN−アセチルセリン等が挙げられる。
システイン耐性に関与する遺伝子を網羅的に探索するため、Keio collection(E. coli
BW25113の必須遺伝子を除く一遺伝子欠損ライブラリー;Baba, T, et al., 2006; Mol. Syst. Biol. 2:2006.0008)の中からシステインに対して感受性を示すクローンのスクリーニングを行った。
Keio collection 3,985クローンを0.5 ml LB液体培地37℃、15時間培養した。この培養液を、異なる濃度(0, 15, 20, 25 mM)のシステインを含むLB寒天培地にスタンプし、37℃で一晩培養した。野生株のシステインによる生育阻害濃度以下(20 mM)で感受性になるクローンを目視で選抜した。具体的には、システイン15 mMを含むLBプレートでコロニーを形成しなかったクローンを候補として選抜した。これら候補の中から特に強く明確なシステイン感受性を示すものとして、dsbA遺伝子欠損株が取得された。
DsbAはペリプラズムに局在し、自身が持つ2つのシステイン残基の酸化状態(-S-S-)・還元状態(-SH/-SH)を利用して、基質タンパク質にジスルフィド結合(S-S結合)を形成させ、基質タンパク質のフォールディングを行うタンパク質である。基質タンパク質のS-S結合形成の際には、DsbAのシステイン残基は酸化型(-S-S-)から還元型(-SH/-SH)に変わる。こうしてできた還元型DsbAを酸化型にリサイクルするタンパク質としてDsbBが知られている。DsbBが受け取った電子は、呼吸鎖成分であるユビキノン (UQ) に受け渡され、最終的にはチトクロム酸化酵素を介して酸素が電子受容体となることが分かっている。従って、この一連のDsbA、DsbB、呼吸鎖のシステムは基質タンパク質上のシステイン残基同士の酸化的架橋反応の役割を担っている。このように、タンパク質中のシステイン残基を基質とすることは知られていたが、低分子であるシステインそのものの添加が同システムに何らかの影響を及ぼすことは意外性のあることであった。
Keio CollectionスクリーニングによりdsbA欠損株が取得されたため、同遺伝子欠損株のシステインに対する感受性をより詳細に解析するため、異なる濃度のシステインを含有する寒天培地上での生育を観察した。また、既に同様の手法で取得され、欠損によりシステイン感受性を示すことが知られているtolC遺伝子(特願2008-040167、Wiriyathanawudhiwong, N. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. (2009) 81:903-913)についてもtolC欠損株を用いて同様に実験を行った。ここで用いたdsbA欠損株、及びtolC欠損株は、それぞれJW3832株、JW5503株(いずれもKeio collection)、それらの親株はBW25113株(Andreas Haldimann, A. and Wanner, B. L., J. Bacteriol. 2001 November; 183(21): 6384-6393)である。また、相補実験用のdsbA遺伝子及びtolC遺伝子が搭載されたプラスミドは
pDsbA、pTolC(ASKA clone;(Kitagawa, M, et al., 2005; DNA Res. 12:291-299))、それらのベースとなるベクターはpCA24(ASKA cloneのためのベクター;(Kitagawa, M, et al., 2005; DNA Res. 12:291-299))である。
dsbA遺伝子の欠損によりシステイン感受性となることから、システインによる細胞への毒性とDsbAとの関連について実験を行った。
システインにより、DsbAタンパク質の酸化還元状態に何らかの影響が及ぼされているかを検討するため、システイン添加時もしくはシステイン排出因子であるYdeD高発現時のDsbAの酸化・還元状態の解析を行った。YdeDは細胞膜に局在する排出タンパク質であり、細胞質からペリプラズムへの輸送に関与することが知られている(Dasler, T. et al., Mol. Microbiol., 2000; 36:1101-1112)。従って、YdeDを高発現させた場合にはペリプラズムへのシステインの供給が高められると推測される。
et al., 2004. Science. 303, 534-537.)。野性株、dsbA欠損株、dsbB欠損株、野生株+pYdeD、dsbB欠損株+pDsbBを各3 ml LB培地において30℃で一晩培養したものを前培養液として用いた。LB培地に前培養液を1%植菌し、OD660が0.4〜0.5になるまで30℃で振とう培養した。そのとき、システインを最終濃度5 mMになるように添加し、菌体をシステインに
20分曝した。DsbAタンパク質の酸化還元状態は、Itoらの方法(Kobayashi, T, Kishigami, S, Sone, M, Inokuchi, H, Mogi, T and Ito K. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 94, 11857-11862.)で調べた。即ち、ストレス処理後、速やかに0.5 mlの培養液(OD660 0.5付近)に対し100μl TCA(トリクロロ酢酸、最終濃度16.7%)を加え攪拌後、氷上で20分静置し沈殿させ、遠心分離で菌体を集めた。次に得られた沈殿に700 μlのアセトンを加え攪拌後、氷上で20分静置し、再度遠心で菌体を集めた。沈殿を、使用直前に調製した1%
SDS, 50mM Tris-Cl (pH 6.8), 10mM 4-アセタミド-4'-マレイメジル-スチルベン-2,2'ジスルフォネート(AMS、インビトロジェン社)の溶液に溶かした。
システイン(還元ストレス)により還元型DsbAが蓄積することが明らかとなったことから、システインの毒性とペリプラズムのタンパク質の酸化・還元状態を調べることとした。OstAタンパク質は、生育に必須なペリプラズムのタンパク質であり、DsbAによるジスルフィド結合が必要なタンパク質である。OstAタンパク質の酸化・還元状態を調べるために、野生型の親株としてE. coli BW25113株、BW25113株由来のdsbA欠損株JW3832株を用い、ここにMycタグを融合したOstAを発現させるためのプラスミドpmyc-OstA(Kadokura, H. et al., 2004. Science. 303, 534-537.)を導入した。先述のDsbAの酸化・還元状態の実験と同様の培養条件で、L-システイン添加(最終濃度5 mM)、及び、AMS(4-アセタミド-4'-マレイメジル-スチルベン-2,2'ジスルフォネート)によるタンパク質の修飾を行い、ウエスタンブロティングによりOstAタンパク質を検出した。ただし、ここでは抗体にanti-Myc(マウス)を使用した。
L−システインによるフィードバック阻害が低減された変異型セリンアセチルトランス
フェラーゼをコードする変異型cysE、YdeD遺伝子、及びL−セリンによるフィードバック阻害が低減された3−ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼをコードする変異型SerA遺伝子が1つのプラスミドに載ったpACYC-DESをE. coli BW25113に導入することでシステイン生産菌を構築した。pACYC-DESの構築はEP1528108B1に記載されている。さらに、DsbA過剰発現によるシステイン生産への効果を調べるため、pDsbAとその対照となる空のベクターpCA24Nをそれぞれ導入したシステイン生産菌を構築した。
DsbAを強化したシステイン生産菌(E. coli BW25113/pACYC-DES/pDsbA株)とDsbAを強化していない対照株(E. coli BW25113/pACYC-DES/pCA24N株)をL培地(10 g/L Bacto trypton, 5g/L Bacto Yeast extract, 5g/L NaCl, テトラサイクリン (10μg/mL)、クロラムフェニコール (30μg/mL))5 mlに植菌し、30℃で、一晩培養した(前培養)。
一晩培養した菌液を250μlとり、25 mlの新しい培地(SM1+10% L培地)に加え、30℃で、140 rpmで振とう培養した。このときプラスミドを保持させるためにテトラサイクリン (10 mg/mL)、クロラムフェニコール (30 μg/mL)を培地に添加した。経時的にサンプリングを行い、各時間でのシステイン、シスチン及びシステイン関連化合物の生産量を分析した。なお、培養に用いたSM1培地の組成は次に示すとおりである;0.1 M KH2PO4-K2HPO4 buffer (pH 7.0), 30 g/L glucose, 10g/L (NH4)2SO4, 0.1 g/L NaCl, 7.2 μM FeSO4・7H2O, 0.6 μM Na2MoO4, 40.4 μM H3BO3, 2.9 μM CoCl2, 1 μM CuSO4, 8.1 μM MnCl2, 1 mM MgSO4, 0.1 mM CaCl2(Dassler, T. et al., 2000. Mol. Microbiol. 36, 1101-1112.)。
DsbBは、DsbAの再酸化を促進することから、DsbA強化と同じ効果が期待できる。またDsbA-DsbBのシステムと類似したDsbC-DsbDやDsbGの強化によっても、同様の効果が期待できる。DsbB、DsbC、DsbD、DsbGをシステイン生産菌にて強化することは、例えば、DsbA強化株と同様に各遺伝子のASKA cloneプラスミドをE. coli BW25113/pACYC-DES株に導入することで行うことができる。こうしてできた各システイン生産菌をDsbA強化株の実験で行った同じ手法で培養・分析することで、各遺伝子がシステイン生産を向上させる効果を持つことを示すことができる。
配列番号1:E. coli dsbA遺伝子の塩基配列
配列番号2:E. coli DsbAのアミノ酸配列
配列番号3:Shigella flexneri dsbA遺伝子ホモログの塩基配列
配列番号4:Shigella flexneri DsbAホモログのアミノ酸配列
配列番号5:Klebsiella pneumoniae dsbA遺伝子ホモログの塩基配列
配列番号6:Klebsiella pneumoniae DsbAホモログのアミノ酸配列
配列番号7:Yersinia enterocolitica dsbA遺伝子ホモログの塩基配列
配列番号8:Yersinia enterocolitica DsbAホモログのアミノ酸配列
配列番号9:Photorhabdus luminescens dsbA遺伝子ホモログの塩基配列
配列番号10:Photorhabdus luminescens DsbAホモログのアミノ酸配列
配列番号11:Pasteurella multocida dsbA遺伝子ホモログの塩基配列
配列番号12:Pasteurella multocida DsbAホモログのアミノ酸配列
配列番号13:ydeD遺伝子増幅用プライマーP1
配列番号14:ydeD遺伝子増幅用プライマーP2
Claims (11)
- L−システイン生産能を有し、かつ、dsbA遺伝子によりコードされるタンパク質の活性が増大するように改変された腸内細菌科に属する細菌を培地中で培養し、該培地からL−システイン、L−シスチン、それらの誘導体もしくは前駆体、又はこれらの混合物を採取することを特徴とする、L−システイン、L−シスチン、それらの誘導体もしくは前駆体、又はこれらの混合物の製造法であって、
前記誘導体はS-スルホシステイン、チアゾリジン誘導体、及びヘミチオケタールからなる群より選択され、前記前駆体はO-アセチルセリン及びN-アセチルセリンからなる群より選択されることを特徴とする方法。 - 前記dsbA遺伝子の発現量を増大させること、及び/または、dsbA遺伝子の翻訳量を増大させることにより、前記タンパク質の活性が増大した請求項1に記載の方法。
- dsbA遺伝子のコピー数を高めること、又は同遺伝子の発現調節配列を改変することにより、dsbA遺伝子の発現量が増大した、請求項2に記載の方法。
- 前記タンパク質が、下記(A)または(B)に記載のタンパク質である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
(A)配列番号2、4、6、8、10、又は12に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
(B)配列番号2、4、6、8、10、又は12に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、細菌内の活性を増大させたときにL−システイン生産能が向上するタンパク質。 - 前記dsbA遺伝子が、下記(a)または(b)に記載のDNAである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(a)配列番号1、3、5、7、9、又は11の塩基配列を含むDNA、または
(b)配列番号1、3、5、7、9、又は11の塩基配列と90%以上の相同性を有し、
かつ、細菌内の活性を増大させたときにL−システイン生産能が向上するタンパク質をコードするDNA。 - 前記細菌がL−システインによるフィードバック阻害が低減された変異型セリンアセチルトランスフェラーゼを保持する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記細菌がセリンによるフィードバック阻害を受けない3−ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼを保持する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記細菌においてydeD遺伝子によりコードされるタンパク質の活性が増大した、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記細菌がエシェリヒア属細菌である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- 前記細菌がエシェリヒア・コリである、請求項9に記載の方法。
- 前記L−システインの誘導体がチアゾリジン誘導体である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
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