JP4460687B2 - ジアルコキシアルキル燐酸エステルの精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は離型剤として有用なジアルコキシアルキル燐酸エステルの精製方法、並びにその精製方法によって得られたジアルコキシアルキル燐酸エステル離型剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な透明樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、PMMA、(メタ)アクリル樹脂等のオレフィン樹脂、ポリエン−ポリチオール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などが知られているが、これらは殆どの場合、射出成型又は注型重合によって成型される。その為、樹脂を成形型から離型させなければ製品は得られない。
【0003】
ところが、離型剤無しでそれらの樹脂を成型すると、離型の際に過大な応力がかかることにより、成型物が反る等の変形を起こしたり、内部に光学歪みを発生する等の好ましくない結果を与える場合がある為、通常、これらの樹脂の成型には、離型剤が使用される場合が多い。
【0004】
特に、エポキシ樹脂とウレタン樹脂は、金属やガラスの接着剤に用いられている事からも判る通り、極めて接着力の強い樹脂として知られており、離型剤の使用は必須である。
【0005】
離型剤は、成形型表面にスプレー等を利用して塗布する外部離型剤と、原料モノマーに予め添加しておく内部離型剤がある。外部離型剤は、離型能は優れているものの、離型剤の塗布操作が煩雑であるばかりでなく、離型膜が一定になりにくく成型物の面精度が低下するといった問題点がある。
【0006】
一方、内部離型剤として、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、トリグリセリド類、フッ素系界面活性剤、高級脂肪酸金属塩等が従来から知られているが、これらを使用した場合、離型能が不足していたり、樹脂内部及び表面に濁りを発生し易く、成形物の透明性を損ない易いといった欠点があった。
【0007】
透明性を損なう事は、高い透明性を利用した透明樹脂製成型物では特に問題である。そのなかでも通常の目視では到底判断できない程の僅かな曇りでも問題になる。プラスチックレンズに代表される光学材料の分野では、極めて致命的な欠点となる。
【0008】
この問題を解決する方法として、内部離型剤としてアルコキシアルキル燐酸エステルを用いる方法(特公平6−20752号公報,特開平3−287641号公報)か知られており、本発明者らも、新規なアルコキシアルキル燐酸エステルを用いる方法(特開平11−43493号公報)を提案している。
【0009】
本発明は、これらアルコキシアルキル燐酸エステルのジエステル体を、効率よく精製して高純度のジエステル体を得る方法を提案するものである。
【0010】
本発明に係わるジアルコキシアルキル燐酸エステル離型剤及びその製造方法は、本発明者らが先に提案した特開平11−43493号公報等によって、既に公知である。
【0011】
このジアルコキシアルキル燐酸エステルは、モノエステル体であるアルコキシアルキル燐酸エステルと比較して、以下のような特徴を有している。
▲1▼粘度が小さくなり易く操作性がより向上する。
▲2▼レンズ用モノマーに代表されるような各種モノマーに対してより溶解性が高い。
▲3▼離型能が安定している。
【0012】
一方、モノエステル体や原料アルコールの残存により、ジエステル体の純度が低下すると、上記で述べたような好ましい特徴が失われる他に、保存中に着色する等、保存安定性が低下したりする問題を生じる。
【0013】
従って、出来るだけ高純度の方が好ましいが、例えば、本発明者らが先に提案した特開平11−43493号公報等の提案に従って、ジエステル体を製造しようとした場合、反応を完結させるのは容易でなく、前駆体のモノエステル体及び原料のアルコキシアルコールが残存し、高純度になりにくい。
【0014】
反応を完結させて高純度品を製造する目的で、温度を高くした場合、反応は完結し易くなるものの、得られた製品が着色したり、ポリマー化が進行して逆に純度が低下する等の問題があった。
【0015】
一方、先に提案した特開平11−43493号公報の中にも記載した三ハロゲン化燐からジエステル体を選択的に合成する方法では、目的とするジエステル体を選択的に高純度で合成できる。
【0016】
しかしながら、反応副生物であるアルコキシアルキルクロライドと、目的中間体であるジアルコキシアルキル亜燐酸は、高沸点で蒸留留出しにくい場合が多く、また、双方の沸点が近い事があり、分離に高段数の蒸留塔が必要となる。
【0017】
さらに得られたジアルコキシアルキル亜燐酸をハロゲン化して、その後に加水分解してようやく目的物が得られる為、工程が長くなる等、先に述べたオキシハロゲン化燐とアルコキシアルコールから製造する方法と比較して、結局、コスト的に高くなったり、品質的に劣っていたり、煩雑であったりする場合があり、必ずしも満足できる製造方法とは言えなかった。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、オキシハロゲン化燐とアルコキシアルコールから製造された反応液を、簡便な操作で効率的に精製する事によって、目的とする高純度のジアルコキシアルキル燐酸エステルを低コストで提供する方法を見出すべく、鋭意検討を行った。
【0019】
【課題を解決するための手段】
結果、驚くべきことに、溶媒に誘電率2.1以下の溶媒を用いて、洗浄を繰り返すことで、高純度のジアルコキシアルキル燐酸エステルが、効率よく得られることを見出し、本発明に到達した。
【0020】
即ち、本発明は、
(A)下記式(1)
【0021】
【化5】
(式中、nは1〜5の整数を示し、R1は炭素数1〜20の残基を示し、R2,R3はそれぞれ水素原子、メチル基、エチル基を示す。)で表されるジアルコキシアルキル燐酸エステルのアルカリ金属塩、下記式(2)
【0022】
【化6】
(式中、nは1〜5の整数を示し、R1は炭素数1〜20の残基を示し、R2,R3はそれぞれ水素原子、メチル基、エチル基を示す。)
で表されるアルコキシアルコール、及び下記式(3)
【0023】
【化7】
(式中、nは1〜5の整数を示し、R1は炭素数1〜20の残基を示し、R2,R3はそれぞれ水素原子、メチル基、エチル基を示す。)
で表されるモノアルコキシアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩を含んでなる混合物を、誘電率2.1以下の溶媒で洗浄し、前記式(2)で表されるアルコキシアルコールを除去することを特徴とするジアルコキシアルキル燐酸エステルの精製方法。
【0024】
(B)誘電率2.1以下の溶媒が、ヘキサンである(A)記載のジアルコキシアルキル燐酸エステルの精製方法。
(C)ジアルコキシアルキル燐酸エステルが、下記式(4)
【0025】
【化8】
である(A)記載のジアルコキシアルキル燐酸エステルの精製方法。
【0026】
(D)誘電率2.1以下の溶媒が、ヘキサンである(C)記載のジアルコキシアルキル燐酸エステルの精製方法。
【0027】
(E)式(1)で表されるジアルコキシアルキル燐酸エステル、式(2)で表されるアルコキシアルコール及び式(3)で表されるモノアルコキシアルキルリン酸エステルを含んでなる混合物を誘電率2.1以下の溶媒に溶解した溶液を、水で洗浄し、式(3)で表されるモノアルコキシアルキル燐酸エステルを除去することを特徴とするジアルコキシアルキル燐酸エステルの精製方法。
【0028】
(F)誘電率2.1以下の溶媒がへキサンである(E)記載のジアルコキシアルキル燐酸エステルの精製方法。
【0029】
(G)上記(A)、(B)、(C)、(D)または(E)、(F)記載の精製方法を含む製造方法で得られた純度90%以上のジアルコキシアルキル燐酸エステル離型剤である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、発明を詳細に説明する。
本発明に係わる誘電率2.1以下の溶媒とは、20℃で測定された誘電率が2.1以下の有機溶媒である。それらの溶媒の中で、さらに限定するならば、誘電率2.0以下の溶媒が好ましく、1.9以下であればさらに好ましい。
【0031】
誘電率が2.1以下である溶媒の種類としては、例えば、直鎖状飽和炭化水素、分岐状飽和炭化水素、または環状飽和炭化水素等が挙げられる。
【0032】
具体的な溶媒としては、例えば、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、メチルペンタン、ジメチルブタン、ヘプタン、メチルヘキサン、ジメチルペンタン、オクタン、イソオクタン、トリメチルペンタン、ノナン、トリメチルヘキサン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の直鎖状飽和炭化水素または分岐状飽和炭化水素、
シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、イソプロピルメチルシクロヘキサン等の環状飽和炭化水素等が挙げられる。
【0033】
中でも、汎用性、操作性、コストの面から、ヘキサンが比較的に好ましい。尚、本発明は以上に列記した化合物のみに限定されるものではない。
【0034】
本発明に係わる式(1)
【0035】
【化9】
(式中、nは1〜5の整数を示し、R1は炭素数1〜20の残基を示し、R2,R3はそれぞれ水素原子、メチル基、エチル基を示す。)で表されるジアルコキしアルキル燐酸エステルは、(分岐アルキル)エチレングリコール骨格を有する燐酸ジエステルである。
【0036】
式(1)中のnは、(分岐アルキル)エチレングリコール骨格の繰り返し数を表し、1〜5の範囲である。1〜5の範囲であれば離型剤として優れた性能を発揮するが、その中でも2〜3の範囲がさらに好ましい。nが1の場合は、成型物の形状等によって離型性にムラが発生する場合があったり、離型性が劣る場合がある。4以上の場合は、原料が合成しにくかったり、コスト高になる場合がある。
【0037】
式(1)中のR2、R3は、水素、メチル基、エチル基を表す。R2、R3は共に水素でも良いが、少なくとも何れかがメチル基またはエチル基である燐酸ジエステルの方が、離型性が良い場合がある。
【0038】
式(1)で表されるR1は、炭素数1〜20で構成される有機残基であり、その炭素範囲は3〜15がより好ましい。但し、フェニル基の場合は、成型した樹脂を着色させる事がある。炭素数が20を越えると透明性が低下する場合がある。
【0039】
以下に代表的なR1の形態を例示するが、本発明がこれらの形態のみに限定されるものではない。
【0040】
R1の形態としては、例えば、直鎖状飽和アルキル基、直鎖状不飽和アルキル基、分岐状飽和アルキル基、分岐状不飽和アルキル基、直鎖状飽和アルキルアリール基、直鎖状不飽和アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルキレン基、アルキルアリールアルキレン基等が挙げられる。
【0041】
また、上記残基中にエーテル結合、チオエーテル結合、スルホキシ結合、スルホン結合、エステル結合、カルボニル結合、アミド結合、イミド結合、ヘテロ環、シクロアルキレン基等の異種原子、異種構造等も問題のない範囲で含んでも良い。
【0042】
さらにはこれらのR1を構成する水素原子の一部を、同様に問題のない範囲で、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子で置換しても良い。
【0043】
本発明に係わる式(1)で表されるジアルコキシアルキル燐酸エステルは、例えば、以下のような化合物が挙げられる。
【0044】
代表的な化合物としては、例えば、ジ(ブトキシエチル)燐酸、ジ(ヘキシロキシエチル)燐酸、ジ(オクチロキシエチル)燐酸、ジ(ノニロキシエチル)燐酸、ジ(デカロキシエチル)燐酸、(ドデカノキシエチル)燐酸、ジ(テトラデカロキシエチル)燐酸、ジ(ヘキサデカロキシエチル)燐酸、ジ(ステアロキシエチル)燐酸、ジ(エイコサロキシエチル)燐酸、ジ(ベンジロキシエチル)燐酸、ジ(ブチルフェノキシエチル)燐酸、ジ(ヘキシルフェノキシエチル)燐酸、ジ(オクチルフェノキシエチル)燐酸、ジ(ノニルフェノキシエチル)燐酸、ジ(ブトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ヘキシロキシエトキシエチル)燐酸、ジ(オクチロキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ノニロキシエトキシエチル)燐酸、ジ(デカロキシエトキシエチル)燐酸、(ドデカノキシエトキシエチル)燐酸、ジ(テトラデカロキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ヘキサデカロキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ステアロキシエトキシエチル)燐酸、ジ(エイコサロキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ベンジロキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ブチルフェノキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ヘキシルフェノキシエトキシエチル)燐酸、ジ(オクチルフェノキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ノニルフェノキシエトキシエチル)燐酸、
ジ(ブトキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ヘキシロキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(オクチロキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ノニロキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(デカロキシエトキシエトキシエチル)燐酸、(ドデカノキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(テトラデカロキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ヘキサデカロキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ステアロキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(エイコサロキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ベンジロキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ブチルフエノキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ヘキシルフエノキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(オクチルフエノキシエトキシエトキシエチル)燐酸、ジ(ノニルフェノキシエトキシエトキシエチル)燐酸等のエチレンオキサイド系ジアルコキシアルキル燐酸エステル、
【0045】
ジ(ブトキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(ヘキシロキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(オクチロキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(ノニロキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(デカロキシ−2−プロピル)燐酸、(ドデカノキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(テトラデカロキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(ヘキサデカロキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(ステアロキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(エイコサロキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(ベンジロキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(ブチルフェノキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(ヘキシルフェノキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(オクチルフェノキシ−2−プロピル)燐酸、ジ(ノニルフェノキシ−2−プロピル)燐酸、
ジ(1−(1−ブトキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−ヘキシロキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−オクチロキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル燐酸、ジ(1−(1−ノニロキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−デカロキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、(1−(1−ドデカノキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−テトラデカロキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−ヘキサデカロキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−ステアロキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−エイコサロキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−ベンジロキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−ブチルフェノキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−ヘキシルフェノキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−オクチルフェノキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−ノニルフェノキシ−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−ブトキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−ヘキシロキシー2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−オクチロキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−ノニロキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−デカロキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、(1−(1−(1−ドデカノキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−テトラデカロキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−ヘキサデカロキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−ステアロキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−エイコサロキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−ベンジロキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−ブチルフェノキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−ヘキシルフェノキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−オクチルフェノキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸、ジ(1−(1−(1−ノニルフェノキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸等のプロピレンオキサイド系ジアルコキシアルキル燐酸エステル、
【0046】
ジ(ブトキシ−2−ブチル)燐酸、ジ(ヘキシル−2−ブチル)燐酸、ジ(オクチル−2−ブチル)燐酸、ジ(ノニル−2−ブチル)燐酸、ジ(デシル−2−ブチル)燐酸、ジ(ウンデシル−2−ブチル)燐酸、ジ(ラウリル−2−ブチル)燐酸、ジ(ノニルフェノキシ−2−ブチル)燐酸、ジ(ブトキシ−3−ブチル)燐酸、ジ(ノニルフェノキシ−3−ブチル)燐酸、ジ((1−ブトキシ−2−ブチロキシ)−2−ブチル)燐酸、ジ(((ブトキシ−3−ブチロキシ)−3−ブチロキシ)−3−ブチル)燐酸、ジ((1−ノニルフェノキシ−2−ブチロキシ)−2−ブチル)燐酸、ジ(((ノニルフェノキシ−3−ブチロキシ)−3−ブチロキシ)−3−ブチル)燐酸等のブチレンオキサイド系ジアルコキシアルキル燐酸エステル等が挙げられる。
【0047】
尚、本発明は、以上に例示したジアルコキシアルキル燐酸エステルのみに限定されるものではない。
【0048】
本発明に係わる式(1)の燐酸エステルの精製方法は、上記に例示した化合物群の中では、プロピレンオキサイド系ジアルコキシアルキル燐酸エステルにおいて特に効果的であり、その中でも、下記式(4)
【0049】
【化10】
で表されるジ(1−(1−(1−ブトキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸であれば、さらに効果的である。
【0050】
本発明に係わる式(1)の燐酸エステルの精製操作は、具体的には、例えば、次のように行われる。
【0051】
本発明に係わる誘電率2.1以下の溶媒を反応溶媒として使用し、オキシ塩化燐、オキシ臭化燐等のオキシハロゲン化燐と、下記式(2)
【0052】
【化11】
(式中、nは1〜5の整数を示し、R1は炭素数1〜20の残基を示し、R2,R3はそれぞれ水素原子、メチル基、エチル基を示す。)
で表されるアルコキシアルコールから得られたジアルコキシアルキル燐酸ハライドを水で加水分解して、ジアルコキシアルキル燐酸エステルを得、次にアルカリ金属塩を形成させ、その金属塩溶液を反応溶媒と同じ誘電率2.1以下の溶媒で洗浄を行い、さらに酸で酸析すると同時に、誘電率2.1以下の溶媒で抽出し、酸洗を行って、最後に水洗を繰り返すだけで、高純度のジアルコキシアルキル燐酸エステルが得られる。
【0053】
本発明に係わるジアルコキシアルキル燐酸エステルを中和してアルカリ金属塩を形成せしめる塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等が挙げられるが、コストの面から水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0054】
次に、この生成したアルカリ金属塩水溶液は、溶媒で洗浄される事になるが、驚くべきことに、アルカリ金属塩を形成する前に誘電率2.1以下の溶媒を用いていれば、アルカリ金属塩を形成した段階で既に溶媒洗浄の形となり、撹拌を停止するだけでアルカリ金属塩層と溶媒層が分離する。
【0055】
さらに、分離された誘電率2.1以下の溶媒層に、不純物である未反応の残存アルコキシアルコールの大部分が分配される為、容易且つ極めて効率的に不純物であるアルコキシアルコールの除去が可能となる。
【0056】
次に、酸析及び酸洗浄に使用される酸は、通常、鉱酸が使用される。例えば、塩酸、硫酸、燐酸、ホウ酸等が挙げられるが、コストの面から塩酸または硫酸が好ましく用いられる。
【0057】
これらの溶媒洗浄または酸洗浄は、通常、1回行えば充分であるが、必要に応じて数回行っても良い。
【0058】
続いて行われる水洗は、通常、酸析及び酸洗浄に使用された酸の残分を除去する目的で行われるが、驚くべきことに、本発明では下記式(3)
【0059】
【化12】
(式中、nは1〜5の整数を示し、R1は炭素数1〜20の残基を示し、R2,R3はそれぞれ水素原子、メチル基、エチル基を示す。)
で表されるモノアルコキシアルキル燐酸エステルが、除かれる。つまり、本発明の第二の実施形態では、式(1)で表されるジアルコキシアルキル燐酸エステル、式(2)で表されるアルコキシアルコール及び式(3)で表されるモノアルコキシアルキル燐酸エステルを誘電率2.1以下の溶媒に溶解した混合溶液を水で洗浄することで式(3)で表されるモノアルコキシアルキル燐酸エステルを除去するジアルコキシアルキル燐酸エステルの精製方法が提供される。
【0060】
水洗回数は、精製するジアルコキシアルキル燐酸エステルの構造、水洗量、溶媒の種類、欲する純度等によって大きく変化するので特に限定できないが、凡そ1〜20回、好ましくは3〜10回、更に好ましくは4〜8回である。
【0061】
こうして得られた有機層は、その後、減圧蒸留等の適当な操作によって脱溶媒され、得られた残渣を濾過することによって、本発明に関わる式(1)で表されるジアルコキシアルキル燐酸エステルが高純度で得られる。
【0062】
式(1)で表されるジアルコキシアルキル燐酸エステルを高純度で含む本発明の離型剤は、すくなくとも純度が90%以上であることを条件とする離型剤である。
【0063】
90%未満の場合、場合によっては、保存時に経時的に着色したり、離型性が低下する等好ましくない結果を与える場合がある。90%以上であれば、ほぼ満足できる結果か得られるが、好ましくは95%以上で、さらに好ましくは97%以上である。
【0064】
本発明の離型剤の使用形態は、モノマーに予め添加する内部離型剤方式が好ましく用いられる。
【0065】
本発明の離型剤が使用される透明樹脂は、有機化合物を主成分とする透明樹脂であり、例えば、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、カーボネート樹脂、エステル樹脂、オレフィン−チオール樹脂、エポキシ−チオール樹脂、並びにそれらの併用透明樹脂等が挙げられる。
【0066】
また、本発明は以上に列記した樹脂のみに限定されるものではないが、特にポリチオウレタン樹脂の場合は効果的である。
【0067】
本発明の離型剤の使用は、例えば、次のように行う。
原料のモノマー、オリゴマー、またはポリマーペレットに本発明の燐酸エステルまたは離型剤を添加し、必要な場合は加熱して、混合溶解する。離型剤の添加量は原料によって大きく変化するため限定出来ないが、凡そ0.0001〜30重量%である。
【0068】
次に、必要に応じ減圧などの適当な方法で脱泡を行い、成形型に注入し、主に熱によって硬化させて透明樹脂成型物を取り出す。又、放射線を使用して硬化させることも可能であり、その場合は、主に400nm以下の紫外線が良く用いられる。紫外線の量は凡そ1〜1000mJ/secの強度で1〜7200sec照射される場合が多く、時には除熱や光学的に均一は成型物を得る目的で、照射前に冷却したり、照射を数回に分けて行なったりする。更に、熱硬化と放射線硬化を組み合わせて行なう場合もある。
【0069】
このようにして成形型から取り出された透明樹脂は、歪みを取ったり、より完全に重合を完結させる目的で、通常凡そ100℃以上の温度でアニールを行なう。
【0070】
以上の成形法において、熱触媒、光触媒、UV吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、油溶染料、充填剤、可塑剤、その他の離型剤、溶剤等の原料以外の有機化合物、無機化合物も問題の無い範囲で加える事ができる。
【0071】
また、得られた透明樹脂、透明光学材料、及びプラスチックレンズは、必要に応じ反射防止、高硬度付与、耐磨耗性向上、耐薬品性向上、防曇性付与、あるいはファッション性付与等の改良を行うため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、調光処理等の物理的あるいは化学的処理を施すことができる。
【0072】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。なお、得られた透明樹脂の屈折率、アッベ数、着色度、透明度、及び離型性は、以下の試験方法により評価した。
【0073】
・屈折率、アッベ数;プルフリッヒ屈折計を用い、20℃で測定した。
・着色度;9mm平板を作成し、ミノルタ色彩色差計にてYIを測定し、4.5以下を(○)、4.5を越えたものを(×)とした。
・透明度;厚さ9mm、φ75mmの円形平板を作成し、濃淡画像装置で測定を行なった。
・離型性;外径84mm高さ17mmと外径84mm高さ11mmのガラスモールドとテープで作製した凸型成型モールドを用いて評価した。各々5セット仕込み、重合終了後、室温まで放冷して、3枚以上が自然に離型した場合を(○)、3枚以上が無理な力を必要としたり、ガラスモールドが破損又は剥離した場合を(×)とした。
【0074】
実施例1
3リットル反応フラスコに、オキシ塩化燐320.0g(2.08モル)とヘキサン(誘電率1.89(20℃))1300mlを仕込み、1−(1−(1−n−ブトキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロパノール1036.7g(4.16モル)とピリジン345.5g(4.37モル)の混合液を、内温55〜60℃で滴下し、60℃で6時間熟成した。得られた反応液を濾過して、濾塊をヘキサン1000mlで洗浄した。濾液と洗液の混合液を減圧下で脱溶媒し、粗ジ(1−(1−(1−n−ブトキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸クロライドを1200.4g得た。
【0075】
次に、水1000mlが仕込まれた3リットル反応フラスコに、得られた粗ジ(1−(1−(1−n−ブトキシ)−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸クロライド1200.4gを、内温75〜80℃で滴下し、80℃で7時間熟成した。反応マスの組成は、ジ(1−(1−(1−n−ブトキシ)−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸クロライドが、85.3%(HPLC面積比)、原料アルコールが5.6%(HPLC面積比)、モノエステル体が9.4%(HPLC面積比)であった。
【0076】
室温まで冷却し、生成したジ(1−(1−(1−n−ブトキシ−2−プロポキン)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸を、ヘキサン1000mlで抽出し、下層の水層を分液廃棄した。得られた有機層に水600mlを加えた後、49%NaOH水190.0g(2.33モル)を、内温20〜30℃で、よく撹拌しながら滴下した。撹拌を停止して静置し、分離した上層のヘキサン層を分液除去した。次に、ヘキサン300mlを追加した後、同様に内温20〜30℃で、35%塩酸300.0g(2.88モル)を、よく撹拌しながら滴下した。撹拌を停止して、分離した下層の水層を分液廃棄した。
【0077】
得られた有機層に、活性炭(白鷺C)30gを加えて、室温で1時間撹拌後、濾過した。得られた濾液の組成は目的のジエステル体が88.0%(HPLC面積比)、原料アルコールが1.4%(HPLC面積比)、モノエステル体が10.6%(HPLC面積比)であった。
【0078】
得られた濾液を、さらに水1300mlで8回水洗した。最後に減圧下で脱溶媒とトッピングを行い、残った残渣を室温で濾過(3μm)した。
【0079】
結果、純度98.6%(HPLC面積比)のジ(1−(1−(1−n−ブトキシ−2−プロポキシ)−2−プロポキシ)−2−プロピル)燐酸833.0g(粗収率72%)を得た。得られた燐酸エステルの不純物は、原料のアルコールのみで、含有量は1.4%(HPLC面積比)であった。また、20℃で3ヶ月間の保存試験を行ったが、純度も低下せず、色相の変化もなかった(APHA;110→110)。結果を表1、2に掲載する。
【0080】
比較例1
反応溶媒にトルエン(誘電率2.24(20℃))を用いて、実施例1と同様の試験を行った。ところが、アルカリ金属塩にした時に、溶液が有機層と水層とに分離せずに、目的物を得ることが出来なかった。
【0081】
比較例2
比較例1と同様にトルエン(誘電率2.24(20℃))を用い、アルカリ金属塩にして溶媒洗浄を行う工程を省略して、実施例1と同様の試験を行った。
【0082】
結果、目的物を含む組成物が1100.0g(粗収率95%)得られたが、純度は、74.4%(HPLC面積比)であった。得られた燐酸エステルは、不純物が数種類存在し、原料アルコールの含有量が12.0%(HPLC面積比)、モノエステル体が11.6%(HPLC面積比)、その他の不純物の合計含有量が2.0%(HPLC面積比)であった。又、20℃で3ヶ月間の保存試験は、純度はほとんど低下しなかったが、色相が大きく悪化した(APHA;110→250)。結果を表2に掲載する。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
参考例1
メタキシリレンジイソシアナート305g(1.62モル)、ジブチル錫ジクロリド0.56g(80ppm)、実施例1の燐酸エステル離型剤1.05g(1500ppm)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)395g(0.81モル)を混合溶解し、減圧下で混合脱泡を行った。脱泡終了後、あらかじめ用意しておいた成型モールドに注入し、室温から120℃まで徐々に昇温し、40時間かけて加熱硬化させた。
冷却後、離型して得られたレンズは無色で、透明度はC輝度平均で39、屈折率Nd=1.594、アッベ数νd=36であった。結果を表3に掲載する。
【0086】
参考例2
比較例2で得られた燐酸エステルを用いて、参考例1と同様の試験を行った。得られたレンズは無色で、透明度はC輝度平均で49、屈折率Nd=1.594、アッベ数νd=36であったが、得られたレンズは参考例1のレンズと比較すると、若干透明度が劣っていた。結果を表3に掲載する。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例1より、アルカリ金属塩化後にヘキサンで洗浄することにより原料アルコールが十分に除去され、さらにこの工程に続いて水洗浄を実施することによりモノエステル体が除去され、極めて高純度のジアルキルアルコキシ燐酸エステルが得られている。
【0089】
これに対し、比較例1より、トルエンを溶媒として用いた場合、アルカリ金属塩化が不可能であり、さらに、比較例2のようにアルカリ金属塩化後の溶媒洗浄を省略すると原料アルコール及びモノエステル体の除去率が低下し、アルキルアルコキシ燐酸エステルの精製が不十分であることが分かる。
【0090】
又、参考例1及び2の比較から、ジエステル体の精製が不十分で低純度であると、得られるレンズの透明度が悪化することが分かる。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、離型性能に優れた純度90%以上のジアルコキシアルキル燐酸エステルが得られる。
Claims (8)
- 下記式(1)
- 誘電率2.1以下の溶媒が、ヘキサンである請求項1又は2記載のジアルコキシアルキル燐酸エステルの精製方法。
- 下記式(1)
- 誘電率2.1以下の溶媒がヘキサンである請求項4又は5記載のジアルコキシアルキル燐酸エステルの精製方法。
- 誘電率2.1以下の溶媒がヘキサンである請求項7記載のジアルコキシアルキル燐酸エステルの精製方法。
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