JP4460128B2 - 軟質樹脂管の継手構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、袋ナットを締め込むことによりチャックリングを縮径して軟質樹脂管を継手本体に固定するようにした継手構造の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種一般的な継手構造は、図6に示したように、軟質樹脂管10の差込スリーブ21を有する継手本体20と、この継手本体20の胴部22に螺合可能な袋ナット30と、軟質樹脂管10を挿通した状態で袋ナット30に収容させる割りリング状のチャックリング40とからなる。そして、この一般的継手構造によれば、軟質樹脂管10を袋ナット30およびチャックリング40を介して継手本体20のスリーブ21に差し込み、袋ナット30を継手本体20の胴部22に締め込むことにより、チャックリング40を縮径させて、軟質樹脂管10を前記スリーブ21に締め付け固定することができる。
【0003】
しかしながら、上記一般的な継手構造は、袋ナット30を締め込むほどにチャックリング40が縮径する構造であったため、軟質樹脂管10の締め付け力を一定させることができない。従って、軟質樹脂管10の締め付け力は一定以上必要がないにも拘わらず、袋ナット30の締め込み不足や締め込み過ぎという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために本出願人は先に特願平11−214581号を出願している。この先願発明は、袋ナットの内面およびチャックリングの外面の形状に特徴を持たせ、袋ナットを一定以上締め込めば、その後当該トルクを一定させることで、軟質樹脂管の締め付け力に過不足が生じないようにしたものである。また、同時に軟質樹脂管が差込スリーブに十分に差し込まれていなければ、袋ナットを回すことができないようなストッパー構造も採用している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明でも解決しようとする課題は前記先願発明とほぼ同じである。つまり、本発明でも袋ナットの締め込みトルクを一定とすること、袋ナットの締め込み前に軟質樹脂管の差し込み不足を未然に防ぐことを目的とし、これを別構造により達成しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明では、継手本体のスリーブに差し込んだ軟質樹脂管を袋ナットの締め込みによりチャックリングを縮径して前記スリーブに締め付けるようにした軟質樹脂管の継手構造であって、前記チャックリングはその外面に先端テーパ部と水平部を連続形成した外形からなり、前記袋ナットはその内形を前記チャックリングの外形と相似形に形成すると共に、当該内径をチャックリングの外径よりもやや小径とするという手段を用いた。
【0007】
この手段によれば、袋ナットの内形とチャックリングの外形が相似形であるため、袋ナットの水平部がチャックリングの先端テーパ部を登り切った後の締め付けトルクを一定とすることができる。なお、本発明で「相似」あるいは「相似形」とは、対比する2つの要素が外形的に一致あるいはおおむね一致しておればよく、厳密に要素間の長さが等倍の関係にあるという数学的な意味ではない。
【0008】
また、袋ナットと継手本体の間にガイドリングを設けてなり、このガイドリングには窓を形成すると共に、チャックリングの後端には内側に屈曲した弾性片を介して目視片を形成し、軟質樹脂管の差し込み前後で前記目視片を前記窓に突出可能に収容するという手段を用いた。従って、目視片の位置により樹脂管の差し込み程度を視覚あるいは触覚により確認することができる。
【0009】
さらに請求項2では弾性片の屈曲部には軟質樹脂管に食い込み可能な突部を形成したので、軟質樹脂管の差し込み完了時に前記突部が該樹脂管に食い込み、仮固定することができる。
【0010】
また請求項3では、袋ナットの内面およびチャックリングの外面における水平部は前後に2段の水平部に形成され、両水平部の間を傾斜部で連続するという手段を用いた。この手段によれば袋ナットの締め込み量を減らすことができた。
【0011】
さらにまた、請求項4では、袋ナットの締め込み時にチャックリングが共回りしないように、継手本体にチャックリングの弾性片を挿通するスライド溝を形成し、該溝に前記弾性片を拘束するという手段を用いた。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は本発明の一実施形態に係る継手構造を示した分解斜視図であって、図中、1はポリエチレン管などの軟質樹脂管、2は軟質樹脂管1の差込スリーブ2aを有する例えば継手本体、3は継手本体2の胴部2bに設けた雄ねじ2cに螺合可能な袋ナット、4は常態で軟質樹脂管1の外径とほぼ一致した内径を有するチャックリング、5は継手本体2の胴部2bとナット部2dとの間に形成した段部2eに挿入可能なガイドリングである。なお、継手本体2は例えば砲金、袋ナット3は真鍮、チャックリング4およびガイドリング5は合成樹脂(例えばPOM)によって成型される。
【0013】
各部材の詳細な構造を組立後の一部断面を示した図2に従って説明とすると、先ずチャックリング4の後端にはチャックリング4の半径方向内側に屈曲した弾性片4aを介して目視片4bが形成されている。なお、4cは軸方向に形成されたスリットであり、チャックリング4を縮径可能とするための構造である。
【0014】
また、チャックリング4の外形は2つの水平部4d・4eを段設してなり、両水平部4d・4eは後端にかけて登りとなる傾斜部4fを介して連続するように形成されている。なお、4gは先端テーパ部である。
【0015】
さらに弾性片4aの屈曲部には突部4hを形成しており、さらにチャックリング4の内面には食い込み歯4i…4iを形成している。
【0016】
次に、袋ナット3はその内形をチャックリング4の外面形状とほぼ相似形に成形している。即ち、その内面には先端から後端にかけて、テーパ部3a、水平圧接部3b、傾斜部3c、さらに水平圧接部3dを順に形成しており、しかも、これら3aから3dは袋ナット3の先端テーパ部4g、水平部4d、傾斜部4fおよび水平部4eとほぼ同じ長さ、角度に形成されているのである。ここで袋ナット3はその締め込みによりチャックリング4を外側から圧縮して縮径させるものであるため、袋ナット3の内径はチャックリング4の外径よりも小径に形成されることはもちろんである。なお、3eは継手本体2の雄ねじ2cと螺合する雌ねじである。
【0017】
一方、ガイドリング5はチャックリング4の前記目視片4bを突出可能に収容する窓部5aを有する。
【0018】
さらに継手本体2の胴部2bには、チャックリング4の弾性片4aをスライド可能に挿通する溝2fが形成されている(図1と合わせて参照)。
【0019】
続いて、上記構成からなる本継手構造の機能を図2から図4に従って説明する。先ず、本継手構造を組み立てるには、継手本体2にガイドリング5を挿入し、次にガイドリング5にチャックリング4を挿入する。チャックリング4の挿入の際には目視片4bを手指でやや下向き(半径方向内側)に押し下げ、目視片4bがガイドリング5の窓5aに嵌るようにしてセットする。なお、ガイドリング5とチャックリング4の組立手順は逆であってもよい。要はチャックリング4の目視片4bがガイドリング5の窓5aに嵌ったものを継手本体2にセットできればよい。
【0020】
そして、最後に袋ナット3を継手本体2の胴部2bに螺合するが、このとき袋ナット3の後端はチャックリング4の目視片4bと当接するため、当接後は袋ナット3を締め込むことはできない。即ち、当該構成によって、軟質樹脂管1の差し込み前、あるいは差し込み不足の場合には袋ナット3を不用意に締め込むことができないようにしている。
【0021】
次に、図3に示すように軟質樹脂管1を継手本体2の差込スリーブ2aに挿入する。そして、軟質樹脂管1が差込スリーブ2aの奥端まで完全に差し込まれたならば、軟質樹脂管1の外面に押されてチャックリング4の弾性片4aがほぼ水平状態に塑性変形すると同時に、目視片4bが押し上げられ窓5aから視認することができる。よって、作業者は目視片4bが押し上げられたことを確認することで、軟質樹脂管1の差し込みが完了したことを知ることができる。また、本継手の取り付け箇所が視認しにくい、あるいは不可能なときは、指で目視片4bを探ることによっても軟質樹脂管1の差し込みを確認することができる。このとき目視片4bは樹脂管1の完全差し込み時に窓5aと面一あるいは窓5aから若干突出するように厚み等を設定することが好ましい。樹脂管1の差し込み前後の状態を明確に確認することができるからである。より好ましくはこの実施形態のように、目視片4bの上面に山型形状に成形する。つまり、目視片4bの突出具合は必ずしも目視のみによらず、手指で触って確認することもあり、特にのぞき込みが困難な狭小な場所に施工した場合は、上述した理由により目視片4bに山型形状を付与することが効果的である。なお、軟質樹脂管1の差し込み量が足りなければ、上述したような目視片4bの押し上げはないから、依然として袋ナット3を締め込むことはできないのはもちろんである。
【0022】
また、軟質樹脂管1の差し込みが完了したとき、弾性片4aが屈曲状態からほぼ水平状態に変形するが、当該変形は塑性変形であるため、元の状態に復元しようとする。この結果、弾性片4aに設けた突部4hが軟質樹脂管1に食い込むことによって、軟質樹脂管1が仮止めされる。また、同時にチャックリング4の内面に形成した食い込み歯4iも弾性片4aの復元力によって軟質樹脂管1に若干食い込み、より確実に軟質樹脂管1の位置決めおよび仮固定ができる。
【0023】
上記要領で軟質樹脂管1の差し込みが完了したならば、続いて図4に示すように袋ナット3の締め込みを行いう。袋ナット3の締め込み当初は図5に示したように、後端の水平圧接部3dがチャックリング4の傾斜部4fを登るため、傾斜部4fの角度に見合った締め込みトルクが必要となる。この間、締め込みトルクは上昇し、結果、チャックリング4を縮径して軟質樹脂管1を締め付けることができる。そして、前記後端側の水平圧接部3dがチャックリング4の傾斜部4fを登り切ったならば、その時点で一度締め付けトルクが低下し、その後、袋ナット3の締め付けトルクは低トルクの状態で一定となる。本発明では袋ナット3の内面形状とチャックリング3の外面形状を相似形としたからである。そして、当該構成により、袋ナット3によるチャックリング4の縮径の程度は均一となるため、チャックリング4の内面の何れの箇所においても同じ締め付け力をもって軟質樹脂管1を固定することができるのである。
【0024】
また、本実施形態では袋ナット3の内面とチャックリング4の外面について、その前後をほぼ二分するように水平部を2段に形成したため、袋ナット3の締め込み量を約半分とすることができ、作業性を向上させることができた。即ち、袋ナット3によりチャックリング4の縮径は、袋ナット3の後端側水平圧接部3dがチャックリング4の傾斜部4fを登り始めるときから発生する。従って、本実施形態のように傾斜部4fの位置が中間位置にある場合は、結果として袋ナット3の締め込み長さを短縮でき、当該締め込み量を低減することができるのである。
【0025】
さらにチャックリング4はその弾性片4aが継手本体2の溝2fに嵌合しているので、回転が拘束された状態にある。従って、袋ナット3の締め込み時にチャックリング4が不用意に回転することがなく、このような共回りがないことによって軟質樹脂管1の捻れも発生しない。
【0026】
なお、軟質樹脂管1あるいはこれに用いる継手の種類が複数ある場合には、ガイドリング5に着色を施すことによって、用いる継手等の種別を確認することができ、便利である。その他、着色の効果としては差込確認用の目視片4bを確認しやすいことが挙げられる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば袋ナットの締め付けトルクを一定の締め付け後、低トルクの状態で一定とさせたので、トルク全体を低減させることができ、作業性を高めることができた。また、トルクが低下あるいは前記一定となったときに締め込みが完了したことを確認することもできる。
【0028】
さらに、上述した目視片等を採用した構成にあっては、軟質樹脂管の差し込み不足では袋ナットの締め込みを不可とし、且つ完全に差し込まれたことは前記目視片の位置を視覚あるいは触覚により確認できるようにしたので、常に軟質樹脂管が完全に差し込まれた状態で締め込み作業を行うことができる。
【0029】
また、袋ナットおよびチャックリングの水平部を前後2段に分割した構成にあっては、袋ナットの締め込みは実質的に前後水平部間に形成された傾斜部を起点とするため、該傾斜部の位置に見合って袋ナットの締め込み量(長さ)を縮小することができた。
【0030】
さらにまた、チャックリングの弾性片を継手本体に形成した溝に挿通するようにした構成では、チャックリングの不用意な回転が防止される結果、袋ナットとの共回りも回避され、袋ナットの締め込み時に軟質樹脂管が捻れることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る継手構造の分解斜視図
【図2】同形態において軟質樹脂管を差し込む前の状態を示した断面図
【図3】同形態において軟質樹脂管の差し込みが完了した状態を示した断面図
【図4】同形態において袋ナットの締め込みが完了した状態を示した断面図
【図5】同実施形態における袋ナットの締め付けトルクの推移を示したグラフ
【図6】従来の継手構造を示した断面図
【符号の説明】
1 軟質樹脂管
2 継手本体
3 袋ナット
4 チャックリング
5 ガイドリング
Claims (4)
- 継手本体のスリーブに差し込んだ軟質樹脂管を袋ナットの締め込みによりチャックリングを縮径して前記スリーブに締め付けるようにした軟質樹脂管の継手構造であって、前記チャックリングはその外面に先端テーパ部と水平部を連続形成した外形からなり、前記袋ナットはその内形を前記チャックリングの外形と相似形に形成すると共に、当該内径をチャックリングの外径よりもやや小径とし、さらに、袋ナットと継手本体の間にガイドリングを設けてなり、このガイドリングには窓を形成すると共に、チャックリングの後端には内側に屈曲した弾性片を介して目視片を形成し、軟質樹脂管の差し込み前後で前記目視片を前記窓に突出可能に収容したことを特徴とする軟質樹脂管の継手構造。
- 弾性片の屈曲部には軟質樹脂管に食い込み可能な突部を形成した請求項1記載の軟質樹脂管の継手構造。
- 袋ナットの内面およびチャックリングの外面における水平部は前後に2段の水平部に形成され、両水平部の間を傾斜部で連続した請求項1または2記載の軟質樹脂管の継手構造。
- 継手本体にはチャックリングの弾性片を挿通するスライド溝を形成した請求項1、2または3記載の軟質樹脂管の継手構造。
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