JP4458611B2 - 多孔質炭化珪素フィルター - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質炭化珪素フィルターに関し、特に、高温及び腐蝕性の強い液体又はガスの濾過処理に好適に用いることができる多孔質炭化珪素フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液体やガスの濾過処理には、紙製、布製、樹脂製、セラミック製等からなる様々な種類のフィルターが使用されている。
【0003】
このようなフィルターは、通常、濾過対象物である粒子等の固形物や半固形物を含む液体、ガス等が通過する容器中に設置され、上記フィルター中を上記濾過対象物が通過する際、粒子等がフィルターの網目や気孔等に補足され、これにより粒子等が除去された液体やガス等を得ることができる。
【0004】
このようなフィルターとしては、例えば、製造したリン酸、塩酸、硫酸等の鉱酸中の懸濁粒子等を除去する目的に使用されるフィルターが挙げられるが、特に高温の鉱酸等を濾過するために用いられるフィルターは、過酷な条件で使用されるため、使用中に網目や気孔等が破損したり変質し、このため、濾過効率の低下や濾材の劣化等が発生し、耐久性及び濾過効率の点で問題があった。
【0005】
このような問題を解決することが可能なフィルターとして、極めて耐熱性、耐薬品性、耐熱衝撃性等に優れた多孔質炭化珪素を材料とするフィルターが挙げられる。
【0006】
しかしながら、この多孔質炭化珪素の表面には、開放気孔が露出しているため、この材料をそのままフィルターとして使用しようとすると、濾過対象物が多孔質炭化珪素の表面から漏れてしまう。従って、濾過対象物の入口と出口以外は、多孔質炭化珪素の表面を他の材料で被覆することにより塞ぐ必要がある。
【0007】
通常、このようなセラミックの表面を被覆する方法としては、シリカゾルやアルミナゾル等の無機物質を含む液を塗布した後、加熱、乾燥させることにより、表面にシリカ、アルミナ等を含む被覆層を形成する方法等が挙げられる。
【0008】
しかしながら、濾過対象物の入口と出口以外の部分にシリカ、アルミナ等を含む被覆層を形成した多孔質炭化珪素フィルターは、フィルター部と被覆層とが異なる物質からなるものであるため、実際に使用し、該多孔質炭化珪素フィルターが冷熱サイクルを受ける環境下におかれると、多孔質炭化珪素とシリカ、アルミナ等との熱膨張率の差に起因して、フィルター部と外周部との間に隙間やクラックが生じ、この隙間やクラックから外部に濾過対象物が流出してしまうという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、耐熱性、耐薬品性、耐熱衝撃性等に優れるとともに、冷熱サイクルを繰り返しても良好に濾過を行うことができる、耐久性に優れた多孔質炭化珪素フィルターを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の多孔質炭化珪素フィルターは、炭化珪素結晶によって構成される多孔質炭化珪素部材からなり、表面に化学蒸着法による炭化珪素被覆層が形成されている面と、表面に炭化珪素被覆層が形成されていない流入口及び流出口とを有することを特徴とするものである。
また、本発明の多孔質炭化珪素フィルターの製造方法は、多孔質炭化珪素部材を製造する工程と、上記多孔質炭化珪素部材の表面に化学蒸着法により炭化珪素被覆層を形成する工程と、切削加工により炭化珪素被覆層の一部を除去して流入口及び流出口を形成する工程とを行うことを特徴とするものである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1(a)は、本発明の多孔質炭化珪素フィルターを模式的に示した斜視図であり、(b)は、その部分拡大断面図である。また、図2は、本発明の多孔質炭化珪素フィルターの別の実施形態を模式的に示した斜視図である。
【0012】
図1に示した通り、本発明の多孔質炭化珪素フィルター(以下、SiCフィルターともいう)は、円柱形状の多孔質炭化珪素部材(以下、SiC部材ともいう)11と、化学蒸着法(以下、CVD法ともいう)により、SiC部材11の外周に緻密に積層形成された炭化珪素からなる被覆層12とから構成されている。なお、当然のことながら、濾過対象物の入口と出口の濾過面11a、11bには、被覆層12は、形成されていない。
【0013】
このSiCフィルターを構成するSiC部材11は、平均粒径が2〜150μmの炭化珪素結晶からなるものであることが好ましく、10〜70μmがより好ましい。上記炭化珪素結晶の平均粒径が2μm未満であると、SiC部材11の内部に存在する気孔の気孔径が小さくなりすぎ、直ぐに目詰まりを起こすため、フィルターとして機能することが困難となるからである。一方、上記炭化珪素結晶の平均粒径が150μmを超えると、その内部に存在する気孔の気孔径が大きくなりすぎ、SiC部材11の強度が低下してしまうおそれがあるからである。また、所定の割合の開放気孔を有し、平均粒径が150μmを超えるような炭化珪素結晶を有するSiC部材11を製造すること自体が余り容易でない。
【0014】
このSiC部材11は、多数の炭化珪素結晶が焼結の際のネッキングにより、接着され、多孔質焼結体を形成したものであり、これら炭化珪素結晶の間に所定の大きさの開放気孔が形成されており、この開放気孔に濾過対象物に含まれる粒子が補足され、濾過対象物から粒子等が取り除かれる。
【0015】
なお、開放気孔とは、焼結体の表面から内部に向かって連続的に気孔が形成され、内部に形成された気孔が外気と通じているものをいう。上記多孔質炭化珪素フィルターが機能するためには、一方の濾過面11aに形成された気孔が、他方の濾過面11bと通じている必要があるが、本発明では、原料の粒度や焼成条件等を制御することにより、炭化珪素結晶の大きさや気効径等を制御し、これにより上記機能を有するフィルターとすることができる。
【0016】
SiC部材11に存在する開放気孔の気孔径は、0.5〜100μmであることが好ましい。上記気孔径が0.5μm未満であると、上記気孔径が小さすぎるため、直ぐに目詰まりが発生し、フィルターとして機能することが困難となり、一方、上記気孔径が100μmを超えると、上記気孔径が大きすぎるため濾過対象物を通過させても目的の物質を全て捕集することが困難となり、さらに、SiC部材11の強度が低下してしまうおそれがあるからである。また、図1(b)に示した通り、被覆層12の一部は、SiC部材11の外周部に存在する気孔中に形成されているため、SiC部材11の外周部に100μmを超える大きな気孔が存在すると、被覆層12の厚さを厚くする必要が生じ、経済的でない。なお、図1(b)に示すように、被覆層12は、CVD法により形成された炭化珪素単層からなる層のみでなく、CVD法により多孔質炭化珪素部材中に形成された炭化珪素層も含むものとする。
【0017】
上述したように、被覆層12は、CVD法により緻密に積層形成された炭化珪素からなる層であり、被覆層12中には、殆ど開放気孔が存在しない。
【0018】
被覆層12の厚さは、50μm〜1mmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。この被覆層12の厚さは、SiC部材11内部に存在する気孔の気孔径に合わせて適宜調整される。すなわち、上記気孔径が小さければ、多孔質炭化珪素部材中に形成する被覆層12の厚さを薄くしても、この層から濾過対象物が漏れるのを防止することができるため、そのため、被覆層12の厚さを薄くすることができ、一方、上記気孔径が大きければ充分に被覆層12の厚さを厚くしなければ、濾過対象物が漏れるのを防止することが困難となるため被覆層12の厚さは厚くしなければならない。
【0019】
これは、被覆層を形成する際、最初は、多孔質炭化珪素部材の表面に露出した炭化珪素結晶を均一の厚さで被覆するように被覆層12が形成されるため、炭化珪素結晶が大きく、気孔も大きい場合には、その厚さをかなり厚くしなければ、気孔を完全に充填することができないからである。被覆層12を構成する炭化珪素の密度は、2.95g/cm3 以上が好ましい。
【0020】
本発明のSiCフィルターの形状は、濾過対象物が流入する入口と出口とが存在すれば、図1に示したような円柱形状のものに限定されない。
図2は、本発明のSiCフィルターの別の実施形態を示したものであるが、このように、SiC部材21及び被覆層22からなるSiCフィルター20が、湾曲した円柱形状のものであってもよく、三角柱、四角柱のような多角柱形状のものであってもよく、さらに、入口の形状が楕円等であってもよい。また、その大きさも、目的に応じて、適宜、変化させることができる。
【0021】
本発明のSiCフィルターの大きさは特に限定されないが、例えば、図1に示したような円柱形状のものでは、その直径は、10〜100mmが好ましく、厚さは、2〜100mmが好ましい。
【0022】
本発明のSiCフィルターにおける濾過対象物としては特に限定されず、例えば、濃硫酸、濃硝酸、濃塩酸水溶液等の液体物質、塩素ガス、臭素ガス等のハロゲンガス等を挙げることができる。本発明のSiCフィルターは、上記物質の温度が高く、高腐食性となる場合に特に有効である。
【0023】
上述したように、濾過対象物が、本発明のSiCフィルターを通過する際に、上記濾過対象物中に含まれる粒子や懸濁物等が上記気孔中に捕捉されるが、その量がある一定量以上に達すると、濾過が不可能になるので、上記SiCフィルターの再生処理を行う必要が生じる。
【0024】
上記SiCフィルターの再生処理としては特に限定されず、例えば、出口から液体を流すことにより粒子等を入口より流出させる逆洗浄法、上記SiCフィルターを加熱し、上記不純物等を燃焼する方法、上記SiCフィルターをアルカリ洗浄する等の薬品で処理する方法、上記SiCフィルターの出口からガス圧をかけることにより上記不純物等を吹き飛ばす方法等を挙げることができる。
【0025】
本発明のフィルターは、炭化珪素により構成されており、耐熱性、耐薬品性等が極めて高く、加熱の場合には、1500〜1600℃程度の高温にすることができ、薬品を使用する場合にも、高濃度の酸やアルカル等を使用することができるため、上記再生処理を短時間で容易に行うことができ、かつ、フィルタに補足された粒子等を完全に除去することができる。
【0026】
本発明の多孔質炭化珪素フィルターは、上述したような構成からなり、全体がSiC部材から構成されているため、耐熱性、耐薬品性及び耐熱衝撃性に優れ、高温物質や腐食性の液体、ガス等の濾過に用いることができるとともに、再生の際も、効率よく再生することができ、フィルター中に補足された粒子等を完全に取り除くことができる。また、SiC部材と被覆部とは共に炭化珪素からなるので、上記多孔質炭化珪素フィルターの使用や、再生処理等において発生する冷熱サイクルにより、上記SiC部材と上記被覆層との間に隙間やクラックが発生することはない。従って、本発明の多孔質炭化珪素フィルターは、耐久性にも優れたものとなる。
【0027】
次に、本発明の多孔質炭化珪素フィルターを製造する方法について説明する。
まず、多孔質炭化珪素フィルターを構成する多孔質炭化珪素部材を製造する。この場合には、最初に、炭化珪素粉末に、有機樹脂バインダー及び溶媒等が混合されたスラリーを調整する。
主原料である炭化珪素粉末は、α型炭化珪素粉末及びβ型炭化珪素粉末のいずれも使用することが可能であるばかりでなく、両者を混合して使用することも可能である。
【0028】
上記炭化珪素粉末の平均粒径は、0.3〜80μmの範囲内が好ましく、2〜15μmの範囲がより好ましい。平均粒径が0.3μm未満であると、焼結後の粒径が小さすぎて、フィルターとして使用することが困難となるおそれがあり、一方、平均粒径が80μmより大きいと、焼結後における基材の強度が小さくなってしまい、使用に値しないものとなる場合がある。
【0029】
上記有機樹脂バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂等を使用することができ、溶媒としては、アルコール、水、ベンゼン等が使用することができる。
これら炭化珪素粉末に、有機樹脂バインダー及び溶媒等を配合し、振動ミル等よって混合した後、ニーダ等を用いて混練することにより、スラリーを調製することができる。
【0030】
次に、このスラリーをスプレードライ法により造粒し、粒径50〜200μmの顆粒を作製する。そして、この作製した顆粒を、プレス成形法により圧力0.1〜3ton/cm2 の条件で所望の形状に成形する。なお、上記顆粒を作製する工程を経ず、上記スラリーをラバープレス成形法、射出成形法、押出成形法、鋳込み成形法等によって、所望の形状に成形してもよい。
【0031】
得られた成形体は、脱枠、乾燥及び脱脂の各工程を経た後に、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下にて1600〜2300℃前後の温度で焼成する。この温度が1600℃未満であると、成形体が完全に焼結せず、所望の焼結体が得られない。一方、この温度が2300℃を超えると、炭化珪素の分解が進行し、焼結体の強度が極めて小さなものとなり、また、気孔のコントロールも難しくなる。
なお、上記焼成は常圧焼結法にて行うことが望ましいが、ホットプレス法等の別法での焼結も可能である。
【0032】
上記焼成により炭化珪素成形体は、多孔質炭化珪素部材となり、その密度も1.6〜2.4g/cm3 程度となる。また、多孔質炭化珪素部材には必要に応じて機械加工等が施される。
【0033】
次いで、多孔質炭化珪素部材表面の少なくとも一部に、CVD処理により炭化珪素被覆層を形成する。このとき、形成する炭化珪素被覆層の厚さは、上述した通り50μm〜1mmであることが好ましい。
【0034】
「少なくとも一部」であるから、上記多孔質炭化珪素部材表面の全面に炭化珪素被覆層を形成してもよい。但し、この場合、濾過対象物の流入口及び流出口となる部分を形成するために切削加工を行う必要がある。また、例えば、円柱状の長い多孔質炭化珪素部材に被覆層を形成しておき、これを輪切りにすることにより、一度に多数のフィルターを作製することもできる。
さらに、予め上記流入口及び流出口となる部分に上記炭化珪素被覆層を形成しないようにするためには、当該箇所にシール材を張り付けておき、CVD処理を施した後、このシール材を剥ぎ取ればよい。
【0035】
上記CVD処理工程において、炭化珪素被覆層を形成するための原料ガスとしては特に限定されず、例えば、SiCl4 +CH4 +H2 、SiH4 +CH4 +H2 、SiCl(CH33 +H2 、SiCl2 (CH32 +H2 等を挙げることができる。
【0036】
被覆を行う際には、それぞれのガスを別々の管から反応系に導入するか、又は、これらの混合ガスを反応系に導入し、多孔質炭化珪素部材又はその周囲を反応が進行する温度とする。これにより、CVD反応が進行し、上記多孔質炭化珪素部材の表面に炭化珪素からなる層が積層形成される。このときの加熱温度としては、1300〜1400℃程度が好ましい。また、プラズマCVD法等を用いることにより、比較的低温で炭化珪素からなる被覆層を形成することができる。
【0037】
上記CVDによる炭化珪素被覆層を上記多孔質炭化珪素部材の表面に形成し、必要に応じてこの炭化珪素被覆層に機械加工等を施すことにより、本発明の多孔質炭化珪素フィルターの製造が完了する。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
実施例1
まず、出発材料として、平均粒径1.4μmのβ型炭化珪素粉末を原料として用いた。
そして、この炭化珪素粉末100重量部に対し、ポリビニルアルコール5重量部、フェノールレジン3重量部、水50重量部を配合した後、ボールミル中にて5時間混合することにより、均一な混合物を得た。
【0040】
この混合物を所定時間乾燥させて水分をある程度除去した後、その乾燥混合物を適量採取し、顆粒化した。このとき、顆粒の水分含有量を約0.8重量%になるように調整した。次いで、この顆粒を、金属製の押し型を用いて0.3t/cm2 のプレス圧で成形し、直径50mm、厚さ50mmの円柱形状の生成形体を作成した。この生成形体の密度は、1.7g/cm3 であった。
【0041】
次いで、上記生成形体を黒鉛製ルツボに入れ、タンマン型焼成炉を使用してその焼成を行った。焼成は、1気圧のアルゴン雰囲気中において実施した。また、焼成時においては、10℃/分の昇温速度で最高温度である2000℃まで加熱し、その後は、その温度で4時間保持した。
【0042】
このようにして得られたSiC部材は、図1に示すSiC部材11のような円柱形状であり、このSiC部材を構成する炭化珪素結晶の平均粒径は、15μmであり、その平均気孔径は、5μmであった。表面の切削加工等を行って所定の形状とした。
【0043】
次に、この得られたSiC部材の表面にCVD法により炭化珪素被覆層を形成した。このときの条件は、温度1350℃、原料ガスは、SiCl(CH33 +H2 であり、形成された被覆層の厚さは200μmであった。
【0044】
続いて、この全面に炭化珪素被覆層が形成されたSiC部材に濾過対象物の流入口及び流出口となる部分を切削加工により形成した。そして、研磨加工等を施し、SiC部材の表面に緻密な炭化珪素被覆層が形成された多孔質炭化珪素フィルターを得た。
【0045】
比較例1
シリカゾル(日産化学社製、スノーテックス)に、シリカ粉末を混合してスラリーを調製した後、このスラリーを用いて、実施例1で製造したSiC部材の表面にコーティングした以外は、実施例1と同様にして多孔質炭化珪素フィルターを得た。
【0046】
実施例1及び比較例1に係る多孔質炭化珪素フィルターを濾過装置に設置し、温度が90℃で懸濁粒子が混在し、濁った状態の98重量%の熱濃硫酸を濾過した。そして、濾過後の硫酸を可視光を用いた透過率測定装置にかけ、その透過率を測定した。また、これとは別の粒子等が完全に除かれた硫酸を、同様の透過率測定装置にかけ、その透過率を測定したところ、両者の透過率は殆ど変わらず、実施例及び比較例に係るフィルターにより濾過された硫酸は、懸濁粒子が完全に除去されていることがわかった。
【0047】
この後、同様の試験を100回繰り返したところ、実施例1に係る多孔質炭化珪素フィルターにより濾過された硫酸は、100回後も略完全に粒子が除去されていたのに対し、比較例1に係るフィルターを用いて濾過した硫酸は、終わりに近ずくにつれ、次第に濁り始めた。
なお、上記実施例1及び比較例1に係る多孔質炭化珪素フィルター再生処理としては、上記試験を10回繰り返す度に、希硫酸を用いて逆洗浄法を行い、さらに、上記試験を50回繰り返した後に、600℃まで加熱して、有機物等を取り除く処理を施した。
【0048】
この後、それぞれの多孔質炭化珪素フィルターの状態を観察したところ、実施例1に係る多孔質炭化珪素フィルターには、特に異常は観察されなかったが、比較例1に係る多孔質炭化珪素フィルターには、SiC部材とシリカゾルとの間に隙間やクラックが観察された。
【0049】
【発明の効果】
本発明の多孔質炭化珪素フィルターは、上記のように構成されているので、端熱性、耐薬品性、耐熱衝撃性等に優れ、さらに、冷熱サイクルを繰り返しても、炭化珪素部材と被覆層との間に隙間が生じない、耐久性に優れた多孔質炭化珪素フィルターとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の多孔質炭化珪素フィルターの一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、その部分拡大断面図である。
【図2】本発明の多孔質炭化珪素フィルターの他の一例を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
10 多孔質炭化珪素フィルター
11 炭化珪素部材
12 被覆層

Claims (3)

  1. 炭化珪素結晶によって構成される多孔質炭化珪素部材からなり、
    表面に化学蒸着法による炭化珪素被覆層が形成されている面と、
    表面に炭化珪素被覆層が形成されていない流入口及び流出口とを有することを特徴とする多孔質炭化珪素フィルター。
  2. 多孔質炭化珪素フィルターを構成する炭化珪素結晶の平均粒径は、2〜150μmであり、前記多孔質炭化珪素フィルターの気孔径は、0.5〜150μmである請求項1記載の多孔質炭化珪素フィルター。
  3. 多孔質炭化珪素部材を製造する工程と、
    前記多孔質炭化珪素部材の表面に化学蒸着法により炭化珪素被覆層を形成する工程と、
    切削加工により炭化珪素被覆層の一部を除去して流入口及び流出口を形成する工程とを行うことを特徴とする多孔質炭化珪素フィルターの製造方法。
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